JP2004211003A - (メタ)アクリル系樹脂組成物 - Google Patents

(メタ)アクリル系樹脂組成物 Download PDF

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雄一 川田
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Abstract

【課題】無着色で透明性に優れ、機械的強度も良好な硬化物を効率よく得ることのできる(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなるアクリルシラップと、ハイドロパーオキサイド系硬化剤およびチオ尿素系硬化促進剤とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物において、ラジカル重合性単量体成分中、多官能単量体の量が単官能単量体100質量部に対して7質量部以下(0質量部を含む)であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工大理石等の成形品やコーティング剤として広く用いられている(メタ)アクリル系樹脂組成物に関し、詳細には、比較的低温でも速やかに硬化して、無色・透明であり機械的物性等にも優れた硬化物を得ることのできる(メタ)アクリル系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
重合体とラジカル重合性単量体との混合物であるシラップと呼ばれる液状物を硬化させることにより成形品を製造することが知られている。重合体として(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いるものは、いわゆるアクリルシラップと言われ、耐候性や外観・表面光沢に優れていることから、種々の成形品の材料やコーティング剤として多用されている。
【0003】
これまでは、ベンゾイルパーオキサイドを硬化剤として、アミン類を硬化促進剤としてそれぞれ用い、アクリルシラップを硬化させることが多かったが、この硬化システムでは、加熱硬化時に硬化物が着色(初期着色)してしまったり、硬化物が経時的に着色してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、ハイドロパーオキサイド系硬化剤とチオ尿素系硬化促進剤を組み合わせて、着色の少ない硬化物を得ることが考えられた(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この特許文献では、硬化物の透明性(クリア度合い)には全く考慮が払われていない。本発明者等が検討した結果、着色度合いが小さくなっても、濁りがある硬化物では、所望の色合いがうまく再現できないことが判明している。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−3187号公報 (請求項2、表3)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、上記従来技術の問題を考慮して、無着色で透明性に優れ、、機械的強度も良好な硬化物を効率よく得ることのできる(メタ)アクリル系樹脂組成物の提供を課題として掲げた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、(メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなるアクリルシラップと、ハイドロパーオキサイド系硬化剤およびチオ尿素系硬化促進剤とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物において、ラジカル重合性単量体成分中、多官能単量体の量が単官能単量体100質量部に対して7質量部以下(0質量部を含む)であるところに特徴を有している。
【0009】
多官能単量体の量を一定量以下に抑制することで、無色で非常に透明性に優れた硬化物を得ることができるようになった。
【0010】
アクリルシラップ中、(メタ)アクリル系重合体は5〜50質量%、ラジカル重合性単量体は95〜50質量%にすることが好ましい。
【0011】
また、本発明には、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られたものである(メタ)アクリル系樹脂硬化物も含まれる。
【0012】
【発明の実施の態様】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなるアクリルシラップと、ハイドロパーオキサイド系硬化剤およびチオ尿素系硬化促進剤を必須成分とするものである。
【0013】
上記アクリルシラップにおける(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリレート(メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル)が50質量%以上含まれている単量体原料(100質量%)から得られた(共)重合体を意味する。(メタ)アクリレートは、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル類;ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の塩基性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いる他、2種以上併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル類が好ましく、硬化物の耐候性、透明性、耐水性、機械的特性等に優れているメチルメタクリレートが特に好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル系重合体を得る際に用いることのできる(メタ)アクリレート以外のラジカル重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル等のアリル化合物;(メタ)アクリロニトリル;N−メトキシメチルアクリルアミド;N−エトキシメチルアクリルアミド等のN−アルコキシ置換(メタ)アクリルアミド;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド等のマレイミド系単量体;不飽和塩基性単量体;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸類等が挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリレート類と必要に応じて用いられるその他の単量体を、公知のラジカル重合開始剤を用いて、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法で重合することで、(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。塊状重合法において重合を途中で停止させる部分重合法を採用すれば、重合体と単量体成分との混合物が1工程で得られ、アクリルシラップとしてそのまま利用できるため、簡便で好ましい。もちろん、この混合物に別途単量体を加えてもよく、また、(メタ)アクリル系重合体の重合を完了させて、その後、単量体を加えてシラップ化しても構わない。
【0017】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は1万〜200万が好ましい。Mwが1万未満では、硬化物の耐熱性が不充分となるおそれがあるが、200万を超えると樹脂組成物の粘度が高くなるので、成形の際の作業性が低下するため好ましくない。より好ましいMwの下限は3万、さらに好ましい下限は5万である。また、より好ましいMwの上限は100万、さらに好ましい上限は80万である。重合体の分子量の分散度合いを示す重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、透明性の点で2.5以下が好ましい。
【0018】
本発明のアクリルシラップの第2の必須成分であるラジカル重合性単量体は、(メタ)アクリル系重合体の原料として例示した単官能の単量体がいずれも使用できる。単官能単量体としては、透明性の観点からは(メタ)アクリル系重合体との相溶性に優れる重合体を形成することのできる(メタ)アクリレート類が好ましく、ラジカル重合性単量体成分100質量%(単官能単量体と多官能単量体との合計量)中、80質量%以上は(メタ)アクリレートとすることが好ましい。また、(メタ)アクリレート類の中では、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が好ましい。
【0019】
本発明の最大の特徴は、多官能単量体の量を、単官能単量体100質量部に対し7質量部以下(0質量部を含む)に抑制したところにある。ここで、単官能単量体とは、1分子中にラジカル重合性二重結合を1個有している単量体であり、多官能単量体とは、1分子中にラジカル重合性二重結合を2個以上有している単量体である。
【0020】
この多官能単量体は、硬化物の耐熱性を向上させたり、耐薬品性を高める目的で、架橋成分として添加され、3次元化された高分子ネットワークを形成する。ところが、本発明者等が硬化物の透明性を上げるために種々検討したところ、多官能単量体を多く含む単量体成分が重合硬化して形成される重合体は、3次元化された重合体であって、アクリルシラップ中の主成分である熱可塑性の(メタ)アクリル系重合体との相溶性・親和性があまり良好ではなく、このことが透明性の低下を招いていることが判明した。
【0021】
そこで本発明では、多官能単量体の量を、単官能単量体100質量部に対し、7質量部以下(0質量部を含む)に抑制することとした。多官能単量体の量が7質量部を超えると、上記した理由によって透明性が低下し、所望の色合いの成形品が得られなくなる。また、機械的強度も、3次元ネットワークによる強靱化の効果よりも、脆くなるデメリットの方が強く現れる。さらに、多官能単量体量が多い場合、得られる重合体が硬化収縮にうまく追随できず、硬化初期の段階で型離れを起こして、硬化物(成形品)表面に数cm〜数十cmの凹凸ができてしまうことがある。これらの不都合を回避するためにも、多官能単量体の量は7質量部以下が好ましい。多官能単量体の量は、6質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。一方、透明性や機械的強度の点からは多官能単量体が0質量部でも構わないが、透明性と機械的強度が良好で、かつ耐薬品性も良好な成形品を得るには、多官能単量体の量を1〜5質量部の範囲にすることが最も好ましい。
【0022】
多官能単量体の量を上記のように定めたので、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂硬化物は透明性が高く、着色剤や充填材等の透明性を阻害する添加剤を何ら添加せずに硬化させた場合の硬化物では、JIS K 7105のヘーズ(曇価)測定法に準じて測定したヘーズは10%以下となる。また、JIS K 7105の光線透過率測定法に準じて測定した光線透過率で示せば70%以上である。中でも非常に透明性に優れたものは、ヘーズが6%以下、光線透過率が80%以上となる。本発明の樹脂硬化物は、このように優れた透明性を示すため、例えば、着色剤や顔料等を添加したときでも所望の色合いを忠実に再現でき、美観に優れた成形品を得ることができる。
【0023】
多官能単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系多官能単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらを使用するときは、2種以上を併用してもよいが、合計量は上記規定範囲を上回らないようにする。
【0024】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の主成分であるアクリルシラップは、上述の(メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなるものであり、その比率は特に限定されないが、(メタ)アクリル系重合体は5〜50質量%、ラジカル重合性単量体成分は95〜50質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体が5質量%未満、すなわちラジカル重合性単量体成分が95質量%を超えると、成形時の硬化収縮が大きくなるため好ましくなく、(メタ)アクリル系重合体が50質量%を超える、すなわちラジカル重合性単量体成分が50質量%未満になると、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて成形性が悪くなるため好ましくない。より好ましいラジカル重合性単量体成分量の下限は60質量%、さらに好ましい下限は65質量%である。
【0025】
アクリルシラップは、前記したような部分重合によって得ることができ、また、予め重合して得られた重合体に、単量体成分を添加混合することによっても得ることができる。また、本発明では、説明の便宜上、アクリルシラップが(メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなり、他の成分を含まないものとして定義したが、例えば後述する添加剤等を含んでいてももちろん構わない。
【0026】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には、アクリルシラップと共に、ハイドロパーオキサイド系硬化剤およびチオ尿素系硬化促進剤とが含まれる。この硬化システムは、硬化が速く、短い成形サイクルでの成形を可能にすると共に、硬化物の着色も極めて少ない点で、非常に有利である。ラジカル重合性単量体成分100質量部に対し、ハイドロパーオキサイド系硬化剤は0.1〜5質量部、チオ尿素系硬化促進剤は0.05〜2質量部の範囲で使用することが好ましい。より好ましい使用量は、ハイドロパーオキサイド系硬化剤は0.3〜4質量部、チオ尿素系硬化促進剤は0.1〜1.5質量部である。
【0027】
ハイドロパーオキサイド系硬化剤の具体例としては、クメンパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等が挙げられる。特にクメンパーオキサイドが好ましい。
【0028】
チオ尿素系硬化促進剤としては、チオ尿素、エチレンチオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、ジメチルエチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジオルトトリルチオ尿素等が挙げられる。特に、エチレンチオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素が好ましい。なお、チオ尿素系硬化促進剤は常温では粉末状のものが多く、かつ、良溶剤が少ないが、例えば、N,N―ジメチルアセトアミド等に溶解させてアクリルシラップに添加するとよい。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、これまで説明したアクリルシラップとハイドロパーオキサイド系硬化剤とチオ尿素系硬化促進剤を必須的に含むが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、その他の硬化剤を併用してもよい。このような硬化剤には、ジラウリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系硬化剤;ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート系硬化剤;t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系硬化剤;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール系硬化剤;t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系硬化剤等が挙げられる。これらの併用のための硬化剤は、ラジカル重合性単量体成分100質量部に対し、0.05〜2質量部に抑えることが望ましい。また、これらの硬化剤の作用を促進する硬化促進剤も少量であれば使用してもよい。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には、コーティング剤分野または成形材料分野で従来公知の添加剤・充填材、例えば、強化繊維、無機・有機充填材、重合禁止剤、低収縮化剤、離型剤、増粘剤、泡消剤、揺変化剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、カップリング剤、可塑剤、パラフィン、ワックス、顔料、染料、他の熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート)等、本発明の目的を阻害しない限りは、いずれも使用可能である。添加量の目安としては、本発明の目的に反しない程度の量が好ましく、具体的には、アクリルシラップ100質量部に対し、添加剤の合計として1000質量部以下とするのが望ましい。より好ましい添加量の上限値は800質量部、さらに好ましい上限値は500質量部である。これらの添加剤は、アクリルシラップに混合して樹脂組成物とすることもできるし、予めアクリルシラップに混合して成形材料として使用することもできる。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、例えば、化粧板のトップコート層形成用樹脂組成物として利用可能である。このときは、公知のコート法を用いて化粧板上に塗布・乾燥すればよい。また、この樹脂組成物は、SMCやBMCとして利用できる他、注型成形等にも適用することができ、種々の成形品を形成するのに好適である。
【0032】
【実施例】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。なお実施例および比較例において特に断らない限り「部」とあるのは「質量部」、「%」とあるのは「質量%」である。
【0033】
合成例1(アクリルシラップ▲1▼の合成)
温度計、撹拌機、ガス導入管および還流冷却器を備えた容器に、メチルメタクリレート100部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.5部と、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル0.05部を添加して、窒素雰囲気下で4時間塊状重合を行った。重合完了前に、空気を吹き込むのと同時にハイドロキノンを0.01部加えた後、系を冷却して重合を途中で終了させ、アクリルシラップ▲1▼を得た。このアクリルシラップ▲1▼の固形分は33.3%、粘度は25℃で2900mPa・sであった。また、重合体の分子量をGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量Mwが9.5万、数平均分子量Mnが5.5万であった。
【0034】
合成例2(アクリルシラップ▲2▼の合成)
温度計、撹拌機、ガス導入管および還流冷却器を備えた容器に、メチルメタクリレート100部を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した。80℃に昇温し、n−ドデシルメルカプタン0.05部とアゾイソブチロニトリル0.007部を添加して、窒素雰囲気下で5時間塊状重合を行った。重合完了前に、空気を吹き込むのと同時にハイドロキノンを0.01部加えた後、系を冷却して重合を途中で終了させ、アクリルシラップ▲2▼を得た。このアクリルシラップ▲2▼の固形分は15.0%、粘度は25℃で3100mPa・sであった。また、重合体の分子量をGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量Mwが41.0万、数平均分子量Mnが20.5万であった。
【0035】
実施例1
アクリルシラップ▲1▼に、硬化剤としてクメンハイドロパーオキサイド1部(化薬アクゾ社製;商品名「カヤクメンH」)と、硬化促進剤としてエチレンチオ尿素(和光純薬社製;N,−N’−ジメチルアセトアミドに10%溶解させたもの)を5部(エチレンチオ尿素としては0.5部)添加混合し、樹脂組成物(1−1)とした。
【0036】
この樹脂組成物(1−1)を脱泡した後、ポリ塩化ビニル製のガスケットで挟まれた3mm厚のガラス型の中に注ぎ入れ、25℃で24時間放置した。脱型後、さらに90℃で2時間、110℃で4時間加熱して、硬化を完了させた。厚さ3mmの樹脂板が得られた。この樹脂板に対し、下記基準で評価を行い、結果を表2に示した。
【0037】
[成形性]
樹脂板の表面に凹凸が発生しているか否かを目視で観察し、下記基準で評価した。
○;樹脂板表面の凹凸が全くない
△;樹脂板表面に部分的に凹凸がある
×;樹脂板表面に凹凸が多数発生した。
【0038】
[ヘーズと光線透過率]
樹脂板のヘーズ(%)と光線透過率(%)を、JIS K 7105に準じて、積分球式光線透過率測定装置(日本電色株式会社製のシグマ90システム)を用いて測定した。
【0039】
[アイゾット衝撃強度]
JIS K 7110に準じ、ノッチなし試験片について、アイゾット衝撃強さ(kJ/m)を求めた。
【0040】
[耐薬品性]
アセトン、または10質量%濃度のメタノール水溶液を樹脂板表面に滴下し、その上から時計皿を被せて蒸発を防いで、24時間放置し、光沢変化を目視により下記基準で評価した。
○;樹脂板表面の光沢の変化が全くない
△;樹脂板表面の光沢が軽微に変化したが、実用性に問題なし
×;樹脂板表面の光沢の変化が大きく、実用性に劣る。
【0041】
次に、コーティング剤としての性能を評価するため、厚さ10mm、40cm×60cmの木製基材表面に化粧紙を貼り合わせた化粧板の化粧紙の上に、上記樹脂組成物(1−1)を0.5mm厚で塗布し、離型フィルムをかぶせて60℃で2時間硬化させた。離型フィルムを剥がし、成形性については前記樹脂板と同様にして評価し、外観は下記基準で目視で評価した。
【0042】
[外観]
○:化粧紙の絵柄が鮮明で色調も良好
△:化粧紙の絵柄がやや不鮮明
×:化粧紙の絵柄が不鮮明で、実用に耐えないレベルである。
【0043】
一方、人工大理石用途での特性評価実験も行った。このときは、上記樹脂組成物(1−1)100部に、無機充填剤として水酸化アルミニウム(昭和電工社製;商品名「ハイジライトH−320」)150部、泡消剤(ビックケミージャパン社製;商品名「A−515」)0.2部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名「チヌビン234」)0.1部、カップリング剤(日本ユニカー社製;商品名「A−174」)3部、パラフィンワックス(日本精鑞社製;商品名「130F」)0.3部を配合して、均一に混合して人工大理石用樹脂組成物(1−2)を得た。
【0044】
この組成物(1−2)を、厚さ8mmに設定された50cm角のガラスセル中に注ぎ、60℃で2時間硬化させた。脱型後、さらに90℃で2時間と110℃で4時間加熱して、硬化を完了させた。硬化作業と硬化物に対して、下記の評価を行い、結果を表3に示した。
【0045】
[成形性]
○:脱型したときに成形品表面に凹凸がなく外観が良好
△:成形品表面に凹凸が部分的に認められる
×:成形品表面に凹凸が多く、実用に耐えないレベルである。
【0046】
[耐熱サイクル性]
硬化物(人工大理石)を30cm角に切り出し、さらに、中央部に10cm角の穴を設けた。この穴のコーナー部(四隅)については5R、エッジ部(上下方向)については2Rに面取りをしておいた。次に、200℃のシリコンオイルが500mL入った直径15cm、容量1Lの金属製容器を5分間裁置し(容器の1/4が穴部の上に相当するように)、続いて、5℃の冷水が500mL入った同様の容器に取り替えてこれを10分間裁置する工程を1サイクルとし、穴の一つのコーナー部上で5サイクル行った。クラック等の発生状態を目視で確認し、下記基準で評価した。
○:コーナー部からのクラックの発生がない
×:5サイクル終了する前に、コーナー部からクラックが発生した。
【0047】
実施例2〜14
樹脂組成物の組成を表1に示したように変えた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(2−1)〜(14−1)を調製し、樹脂板および化粧板コート層の評価を行った。また、実施例1と同様にして人工大理石用樹脂組成物(2−2)〜(14−2)を調製し、人工大理石としての評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0048】
比較例1〜4
樹脂組成物の組成を表1に示したように変えた以外は、実施例1と同様にして比較用樹脂組成物(1−1)〜(4−1)を調製し、樹脂板および化粧板コート層の評価を行った。また、実施例1と同様にして比較用人工大理石用樹脂組成物(1−2)〜(4−2)を調製し、人工大理石としての評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0049】
なお、表1および表2で用いた略号は、以下の意味である。
【0050】
MMA :メチルメタクリレート
HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMA :シクロヘキシルメタクリレート
TBMA :t−ブチルメタクリレート
BA :ブチルアクリレート
EGDMA :エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学社製;商品名「ライトエステルEG」)
4EGDMA:ポリエチレングリコール(分子量200)のジメタクリレート(共栄社化学社製;商品名「ライトエステル4EG」)
9EGDMA:ポリエチレングリコール(分子量400)のジメタクリレート(共栄社化学社製;商品名「ライトエステル9EG」)
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0051】
【表1】
Figure 2004211003
【0052】
【表2】
Figure 2004211003
【0053】
【表3】
Figure 2004211003
【0054】
表3から明らかなように、本発明例は、成形性、透明性、機械的強度に優れた硬化物を作ることができ、化粧板や人工大理石としての特性にも優れている。実施例1および5では、多官能単量体を全く含まないため、耐薬品性が若干劣るが、実用性には問題のないレベルであった。一方、多官能単量体が多く含まれている比較例では、耐薬品性は良好であったが、これ以外の特性はいずれも実施例に比べて劣っていることが明らかとなった。
【0055】
【発明の効果】
本発明では、多官能単量体の量を抑制して、硬化物の透明性を上げることに成功したので、得られる硬化物のへーズは低く、光線透過率は極めて高い。従って、例えば、コーティング剤としてトップコート層等に用いると、内側の美的な外観を損なわずにきれいな保護膜を形成することができる。また、成形材料として用いれば、所望の色合いを再現することが容易であるので、外観や色合いの美麗な成形品を得ることができるようになった。
【0056】
従って、種々の用途のコーティング剤として、あるいは、SMC、BMCや注型材料として、キッチンカウンター、洗面化粧台、バスタブ、テーブル、インテリア素材、その他各種成形品に適用することができる。

Claims (3)

  1. (メタ)アクリル系重合体とラジカル重合性単量体成分とからなるアクリルシラップと、ハイドロパーオキサイド系硬化剤およびチオ尿素系硬化促進剤とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物において、ラジカル重合性単量体成分中、多官能単量体の量が単官能単量体100質量部に対して7質量部以下(0質量部を含む)であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  2. アクリルシラップ中、(メタ)アクリル系重合体が5〜50質量%、ラジカル重合性単量体が95〜50質量%である請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物から得られたことを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂硬化物。
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