JP2004268657A - 衝撃吸収式ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステアリングコラムが支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において、車体の一部に対する拘束を解除されるようにした。
【解決手段】ステアリングコラム12を車体の一部20に対して所定量移動可能に支持する支持機構Sbを備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラム12の移動によって吸収する衝突エネルギー吸収部材80を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、車両の衝突時における乗員からの入力Fにより、ステアリングコラム12が支持機構Sbにて車体の一部20に対して支持された状態で移動端に移動したときに、ステアリングコラム12を車体の一部20から離脱させるカプセル72を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】ステアリングコラム12を車体の一部20に対して所定量移動可能に支持する支持機構Sbを備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラム12の移動によって吸収する衝突エネルギー吸収部材80を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、車両の衝突時における乗員からの入力Fにより、ステアリングコラム12が支持機構Sbにて車体の一部20に対して支持された状態で移動端に移動したときに、ステアリングコラム12を車体の一部20から離脱させるカプセル72を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突時における乗員(運転者)の二次衝突エネルギーをステアリングコラムの移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のステアリングコラム装置の一つとして、ステアリングコラムの上方部位を車体の一部に対して前方へ移動離脱可能に支持する上方支持機構と、前記ステアリングコラムの下方部位を車体の一部に対して前方へ所定量移動可能に支持する下方支持機構を備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラムの前方への移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−62624号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のステアリングコラム装置では、車両の衝突時、乗員からの入力によりステアリングコラムが下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で前方に移動し、衝突エネルギー吸収手段がステアリングコラムの前方への移動によって乗員の二次衝突エネルギーを吸収する。しかし、ステアリングコラムが下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態にて移動端に移動したときには、ステアリングコラムがその下方部位を車体の一部に下方支持機構を介して支持されて拘束される。このため、ステアリングコラムは下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において底付してしまう。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、ステアリングコラムを車体の一部に対して所定量移動可能に支持する支持機構を備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを前記ステアリングコラムの移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、車両の衝突時における乗員からの入力により、前記ステアリングコラムが前記支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構を設けたことに特徴がある。
【0006】
この場合において、前記支持機構は、前記ステアリングコラムの上方部位を車体の一部に対して前方へ移動離脱可能に支持する上方支持機構と、前記ステアリングコラムの下方部位を車体の一部に対して前方へ所定量移動可能に支持する下方支持機構を備えた支持機構であり、前記離脱機構は、前記ステアリングコラムの下方部位が前記下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記下方支持機構を車体の一部から離脱させて前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構であることも可能である。
【0007】
このようにすれば、車両の衝突時、乗員からの入力によりステアリングコラムが支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動し、衝突エネルギー吸収手段がステアリングコラムの移動によって乗員の二次衝突エネルギーを吸収する。しかも、ステアリングコラムが支持機構にて車体の一部に対して支持された状態にて移動端に移動したときには、離脱機構がステアリングコラムを車体の一部から離脱させる。このため、ステアリングコラムは、支持機構にて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において、車体の一部に対する拘束を解除されて底付を抑制される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の一実施形態を示していて、この実施形態においては、ステアリングシャフト11を回転自在かつ軸方向移動不能に支持するステアリングコラム12が上方支持機構Saと下方支持機構Sbによって所定の傾斜角θにて車体の一部であるステアリング取付部材20にチルト可能および前方へ移動離脱可能に支持されている。
【0009】
ステアリングシャフト11は、その下方端(前端)にて自在継手を介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸(共に図示省略)に連結されるようになっていて、中間軸は自在継手を介してステアリングギヤボックス(共に図示省略)に連結されるようになっている。また、ステアリングシャフト11の上方端(後端)にはエアバッグ装置を装着したステアリングホイール13が一体回転可能に組付けられるようになっている。
【0010】
上方支持機構Saは、ステアリングコラム12の上方部位を上下方向へ移動調整可能(チルト調整可能)かつ前方へ移動離脱可能に支持するものであり、
図1および図2に示したように、下方に延びる左右一対のアーム31a,31bを有してステアリング取付部材20に左右一対の取付ボルト39を用いて一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット31と、上方に延びる左右一対のアーム32a,32bを有してステアリングコラム12に溶接によって一体的に固着された鉄板製のコラム側ブラケット32と、このコラム側ブラケット32の両アーム32a,32bを車体側ブラケット31の両アーム31a,31bに対して摩擦係合により固定または解除させる係脱手段40と、この係脱手段40を操作する操作レバー50を備えている。
【0011】
ステアリング取付部材20は、図1および図2に示したように、上方部位に上方支持機構Saの取付部21を有し下方部位に下方支持機構Sbの取付部22を有している。上方支持機構Saの取付部21は、図2に示したように、断面略U字状に形成されていて、下端に略V字状凸面S1を有している。また、この取付部21には、各取付ボルト39が挿通される左右一対のボルト挿通孔(図示省略)が形成されていて、これら各ボルト挿通孔に対応して各取付ボルト39が螺着される左右一対のナット23,24が溶接によって一体的に固着されている。
【0012】
車体側ブラケット31は、図1および図2に示したように、断面略M字状に形成されて頂部にステアリング取付部材20の略V字状凸面S1に密に接合される略V字状凹面S2を有する基板31Aと、この基板31Aの下縁部に左右両端部にて溶接によって固着されて基板31Aを補強する補強板31Bによって構成されていて、基板31Aには下方に延びる左右一対のアーム31a,31bが形成されている。また、基板31Aには、各取付ボルト39が挿通される左右一対のボルト挿通孔(図示省略)が設けられている。また、各アーム31a,31bには、前方に向けて開口する一対の支持孔31a1,31b1が形成されている。
【0013】
コラム側ブラケット32は、図1および図2にて示したように、上方に延びて車体側ブラケット31の各アーム31a,31bに外側から摺動可能に係合する左右一対のアーム32a,32bを有していて、各アーム32a,32bには下方支持機構Sbの支持中心O1を中心とする円弧状の長孔32a1,32b1が形成されている。
【0014】
係脱手段40は、図1および図2に示したように、コラム側ブラケット32の両アーム32a,32bに形成した円弧状長孔32a1,32b1および車体側ブラケット31の両アーム31a,31bに形成した支持孔31a1,31b1をそれぞれ貫通する回転不能のロックボルト41と、コラム側ブラケット32の両アーム32a,32b間にてロックボルト41の外周に嵌合されて左右両端部にて支持孔31a1,31b1に嵌合するカラー42と、ロックボルト41のねじ部41aに螺着されて操作レバー50によって回転されるナット43と、コラム側ブラケット32の左方のアーム32aと操作レバー50間にてロックボルト41上に組付けられた左右一対のカムプレート44によって構成されている。なお、左右一対のカムプレート44の詳細な構成は、特開2000−62624号公報に記載されているカムプレートの構成と同じであるため、その説明は省略する。
【0015】
この係脱手段40においては、操作レバー50が図1の反時計方向へ回動されることにより、ナット43がロックボルト41に締め付けられるとともに、両カムプレート44によって操作レバー50の回転がロックボルト41の軸方向移動に変換されて、両ブラケット31,32の各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間にそれぞれ所定の摩擦係合が得られ、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32が固定(ロック)されるように、また操作レバー50が図1の時計方向へ回動されることにより、ナット43が緩められるとともに、上記した各摩擦係合が解除され、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32がチルト可能となるようになっている。
【0016】
下方支持機構Sbは、ステアリングコラム12の下方部位を前方へ所定量移動可能かつ傾動(回動)可能に支持するものであり、図1および図3に示したように、下方に延びる左右一対のアーム61aを有してステアリング取付部材20に一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット61と、山形コ字状に形成されてステアリングコラム12の下方上部外周に溶接によって一体的に固着された鉄板製のコラム側ブラケット62と、車体側ブラケット61に対してコラム側ブラケット62を、コラム軸方向へ所定量移動可能かつ下方支持機構Sbの支持中心O1回りに傾動可能に、また下方(詳細には、コラム軸方向に対して略直交する下方)に向けて離脱可能に連結する連結手段70によって構成されている。
【0017】
連結手段70は、コラム側ブラケット62に形成したコラム軸方向に長くて後方に向けてステアリングコラム12から離れるように延びる左右一対の長孔62aに嵌合によって組付けられ所定の荷重で破損する左右一対の樹脂製ブッシュ71(図3および図5参照)と、車体側ブラケット61の各アーム61aに形成した下方に向けて開口した取付孔61a1に下方から抜き差し可能に組付けたカプセル72(図1、図3および図4参照)と、両樹脂製ブッシュ71に嵌合されて左右両端面にて両カプセル72に係合するカラー73(図3および図5参照)と、このカラー73および両カプセル72に形成した取付孔72aを貫通するボルト74(図1と図3〜図5参照)と、このボルト74に螺着固定されるナット75(図3参照)によって構成されている。
【0018】
また、この実施形態においては、図1、図3および図5にて示したように、コラム側ブラケット62にエネルギー吸収部材80が組付けられている。エネルギー吸収部材80は、ステアリングコラム12が前方へ移動する際にカラー73と係合して塑性変形し二次衝突エネルギーを吸収する長板であり、コラム側ブラケット62に一端部80a(図1参照)にて固着されていて、カラー73およびボルト74を包囲した状態で前方に向けて延出している。
【0019】
上記のように構成したこの実施形態においては、上方支持機構Saにおいて操作レバー50を図1の時計方向に回動操作して係脱手段40による固定を解除すれば、両ブラケット31,32における各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間の摩擦係合が解除されて、ステアリングコラム12がコラム側ブラケット32の長孔32a1,32b1に沿って所定量移動可能(チルト可能)となるため、また下方支持機構Sbにおいてコラム側ブラケット62が車体側ブラケット61に対して常に傾動可能であるため、ステアリングコラム12をチルト可能範囲にて上下方向に移動してステアリングホイール13の位置を適宜にチルト調整することが可能である。
【0020】
また、上方支持機構Saにおいて操作レバー50を図1の反時計方向に回動操作して係脱手段40を固定状態とすれば、両ブラケット31,32の各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間にそれぞれ所定の摩擦係合が得られて、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32が固定されるため、ステアリングコラム12が、上方支持機構Saと下方支持機構Sbによって、所定の傾斜角θにて車体の一部であるステアリング取付部材20に固定されて支持される。
【0021】
また、この実施形態においては、車両の衝突時、その二次衝突の際に乗員からステアリングホイール13を介してステアリングシャフト11に前方への入力Fが作用し、この入力Fのコラム軸方向分力F1(=F・cosθ)が上記した所定の摩擦係合と各ブッシュ71の破損荷重に打ち勝つことにより、ステアリングコラム12がその軸線方向に沿って前方へ移動する。
【0022】
このときには、上方支持機構Saのコラム側ブラケット32が車体側ブラケット31から前方へ移動離脱し、下方支持機構Sbのコラム側ブラケット62が車体側ブラケット61に固定されている連結手段70によってガイド支持された状態で車体側ブラケット61に対して前方へ移動する。このため、ステアリングコラム12が僅かに起立しながらその軸線方向に沿って前方へ移動する(図2の仮想線参照)。また、このときには、下方支持機構Sbにおいてカラー73がエネルギー吸収部材80を塑性変形させるため、二次衝突エネルギーがエネルギー吸収部材80の塑性変形により吸収される。
【0023】
また、ステアリングコラム12が下方支持機構Sbの連結手段70によってガイド支持された状態にて移動端に移動したときには、ステアリングシャフト11に作用する入力Fのコラム径方向分力F2(=F・sinθ)によるモーメントにより、連結手段70の両カプセル72が車体側ブラケット61から下方に抜けてステアリングコラム12の下方部位を車体側ブラケット61から離脱させる。このため、ステアリングコラム12は、下方支持機構Sbにて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において、車体の一部に対する拘束を解除されて底付を抑制される。
【0024】
上記実施形態においては、ステアリングコラム12の下方部位が下方支持機構Sbにて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、下方支持機構Sbを車体の一部から離脱させてステアリングコラム12を車体の一部から離脱させる離脱機構として、車体側ブラケット61の各アーム61aに形成した下方に向けて開口した取付孔61a1に下方から抜き差し可能に組付けられるカプセル72を採用して実施したが、カプセル72に代えて、図6および図7に示した樹脂製ストッパ172を採用して実施することも可能である。
【0025】
樹脂製ストッパ172は、ステアリングコラムが下方支持機構によってガイド支持された状態にて移動端に移動したとき、ステアリングシャフトに作用する入力のコラム径方向分力によるモーメントにより破断されるものであり、上記実施形態のカラー73に相当するカラー173の端部に嵌合された状態にて車体側ブラケット161の各アーム161aに形成した取付孔161a1に側方から組付けられ、上記実施形態のボルト74とナット75に相当するボルトとナット(図示省略)により抜け止め固定される。車体側ブラケット161の取付孔161a1は、下方に向けて開口していて、樹脂製ストッパ172が破断した状態ではカラー173が下方に向けて通過して離脱可能である。
【0026】
また、上記実施形態においては、ステアリングコラム12が車体の一部に対して上方支持機構Saと下方支持機構Sbからなる支持機構によって所定量移動可能に支持される実施形態に本発明を実施したが、本発明はステアリングコラムが車体の一部に対して単一の支持機構によって所定量移動可能に支持される実施形態にも同様に実施することが可能である。
【0027】
また、上記実施形態においては、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラム12の前方への移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段として、下方支持機構Sbのコラム側ブラケット62に組付けられてカラー73によって塑性変形されるエネルギー吸収部材80を採用して実施したが、乗員の二次衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段は他の構成のもの(例えば、ステアリングコラム自体に設けた衝突エネルギー吸収手段)を採用して実施することも可能であり、上記実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った上方支持機構の拡大断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿った下方支持機構の拡大断面図である。
【図4】図1に示した下方支持機構の車体側ブラケット、カプセルおよびボルトの関係を示す拡大側面図である。
【図5】図3の5−5線に沿った縦断側面図である。
【図6】本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の他の実施形態を示す図4相当の側面図である。
【図7】図6の7−7線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングコラム、13…ステアリングホイール、20…ステアリング取付部材(車体の一部)、Sa…上方支持機構、31…車体側ブラケット、32…コラム側ブラケット、40…係脱手段、50…操作レバー、Sb…下方支持機構、61…車体側ブラケット、62…コラム側ブラケット、70…連結装置、71…ブッシュ、72…カプセル、73…カラー、74…ボルト、75…ナット、80…エネルギー吸収部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突時における乗員(運転者)の二次衝突エネルギーをステアリングコラムの移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のステアリングコラム装置の一つとして、ステアリングコラムの上方部位を車体の一部に対して前方へ移動離脱可能に支持する上方支持機構と、前記ステアリングコラムの下方部位を車体の一部に対して前方へ所定量移動可能に支持する下方支持機構を備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラムの前方への移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−62624号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のステアリングコラム装置では、車両の衝突時、乗員からの入力によりステアリングコラムが下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で前方に移動し、衝突エネルギー吸収手段がステアリングコラムの前方への移動によって乗員の二次衝突エネルギーを吸収する。しかし、ステアリングコラムが下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態にて移動端に移動したときには、ステアリングコラムがその下方部位を車体の一部に下方支持機構を介して支持されて拘束される。このため、ステアリングコラムは下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において底付してしまう。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、ステアリングコラムを車体の一部に対して所定量移動可能に支持する支持機構を備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを前記ステアリングコラムの移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、車両の衝突時における乗員からの入力により、前記ステアリングコラムが前記支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構を設けたことに特徴がある。
【0006】
この場合において、前記支持機構は、前記ステアリングコラムの上方部位を車体の一部に対して前方へ移動離脱可能に支持する上方支持機構と、前記ステアリングコラムの下方部位を車体の一部に対して前方へ所定量移動可能に支持する下方支持機構を備えた支持機構であり、前記離脱機構は、前記ステアリングコラムの下方部位が前記下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記下方支持機構を車体の一部から離脱させて前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構であることも可能である。
【0007】
このようにすれば、車両の衝突時、乗員からの入力によりステアリングコラムが支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動し、衝突エネルギー吸収手段がステアリングコラムの移動によって乗員の二次衝突エネルギーを吸収する。しかも、ステアリングコラムが支持機構にて車体の一部に対して支持された状態にて移動端に移動したときには、離脱機構がステアリングコラムを車体の一部から離脱させる。このため、ステアリングコラムは、支持機構にて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において、車体の一部に対する拘束を解除されて底付を抑制される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の一実施形態を示していて、この実施形態においては、ステアリングシャフト11を回転自在かつ軸方向移動不能に支持するステアリングコラム12が上方支持機構Saと下方支持機構Sbによって所定の傾斜角θにて車体の一部であるステアリング取付部材20にチルト可能および前方へ移動離脱可能に支持されている。
【0009】
ステアリングシャフト11は、その下方端(前端)にて自在継手を介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸(共に図示省略)に連結されるようになっていて、中間軸は自在継手を介してステアリングギヤボックス(共に図示省略)に連結されるようになっている。また、ステアリングシャフト11の上方端(後端)にはエアバッグ装置を装着したステアリングホイール13が一体回転可能に組付けられるようになっている。
【0010】
上方支持機構Saは、ステアリングコラム12の上方部位を上下方向へ移動調整可能(チルト調整可能)かつ前方へ移動離脱可能に支持するものであり、
図1および図2に示したように、下方に延びる左右一対のアーム31a,31bを有してステアリング取付部材20に左右一対の取付ボルト39を用いて一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット31と、上方に延びる左右一対のアーム32a,32bを有してステアリングコラム12に溶接によって一体的に固着された鉄板製のコラム側ブラケット32と、このコラム側ブラケット32の両アーム32a,32bを車体側ブラケット31の両アーム31a,31bに対して摩擦係合により固定または解除させる係脱手段40と、この係脱手段40を操作する操作レバー50を備えている。
【0011】
ステアリング取付部材20は、図1および図2に示したように、上方部位に上方支持機構Saの取付部21を有し下方部位に下方支持機構Sbの取付部22を有している。上方支持機構Saの取付部21は、図2に示したように、断面略U字状に形成されていて、下端に略V字状凸面S1を有している。また、この取付部21には、各取付ボルト39が挿通される左右一対のボルト挿通孔(図示省略)が形成されていて、これら各ボルト挿通孔に対応して各取付ボルト39が螺着される左右一対のナット23,24が溶接によって一体的に固着されている。
【0012】
車体側ブラケット31は、図1および図2に示したように、断面略M字状に形成されて頂部にステアリング取付部材20の略V字状凸面S1に密に接合される略V字状凹面S2を有する基板31Aと、この基板31Aの下縁部に左右両端部にて溶接によって固着されて基板31Aを補強する補強板31Bによって構成されていて、基板31Aには下方に延びる左右一対のアーム31a,31bが形成されている。また、基板31Aには、各取付ボルト39が挿通される左右一対のボルト挿通孔(図示省略)が設けられている。また、各アーム31a,31bには、前方に向けて開口する一対の支持孔31a1,31b1が形成されている。
【0013】
コラム側ブラケット32は、図1および図2にて示したように、上方に延びて車体側ブラケット31の各アーム31a,31bに外側から摺動可能に係合する左右一対のアーム32a,32bを有していて、各アーム32a,32bには下方支持機構Sbの支持中心O1を中心とする円弧状の長孔32a1,32b1が形成されている。
【0014】
係脱手段40は、図1および図2に示したように、コラム側ブラケット32の両アーム32a,32bに形成した円弧状長孔32a1,32b1および車体側ブラケット31の両アーム31a,31bに形成した支持孔31a1,31b1をそれぞれ貫通する回転不能のロックボルト41と、コラム側ブラケット32の両アーム32a,32b間にてロックボルト41の外周に嵌合されて左右両端部にて支持孔31a1,31b1に嵌合するカラー42と、ロックボルト41のねじ部41aに螺着されて操作レバー50によって回転されるナット43と、コラム側ブラケット32の左方のアーム32aと操作レバー50間にてロックボルト41上に組付けられた左右一対のカムプレート44によって構成されている。なお、左右一対のカムプレート44の詳細な構成は、特開2000−62624号公報に記載されているカムプレートの構成と同じであるため、その説明は省略する。
【0015】
この係脱手段40においては、操作レバー50が図1の反時計方向へ回動されることにより、ナット43がロックボルト41に締め付けられるとともに、両カムプレート44によって操作レバー50の回転がロックボルト41の軸方向移動に変換されて、両ブラケット31,32の各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間にそれぞれ所定の摩擦係合が得られ、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32が固定(ロック)されるように、また操作レバー50が図1の時計方向へ回動されることにより、ナット43が緩められるとともに、上記した各摩擦係合が解除され、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32がチルト可能となるようになっている。
【0016】
下方支持機構Sbは、ステアリングコラム12の下方部位を前方へ所定量移動可能かつ傾動(回動)可能に支持するものであり、図1および図3に示したように、下方に延びる左右一対のアーム61aを有してステアリング取付部材20に一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット61と、山形コ字状に形成されてステアリングコラム12の下方上部外周に溶接によって一体的に固着された鉄板製のコラム側ブラケット62と、車体側ブラケット61に対してコラム側ブラケット62を、コラム軸方向へ所定量移動可能かつ下方支持機構Sbの支持中心O1回りに傾動可能に、また下方(詳細には、コラム軸方向に対して略直交する下方)に向けて離脱可能に連結する連結手段70によって構成されている。
【0017】
連結手段70は、コラム側ブラケット62に形成したコラム軸方向に長くて後方に向けてステアリングコラム12から離れるように延びる左右一対の長孔62aに嵌合によって組付けられ所定の荷重で破損する左右一対の樹脂製ブッシュ71(図3および図5参照)と、車体側ブラケット61の各アーム61aに形成した下方に向けて開口した取付孔61a1に下方から抜き差し可能に組付けたカプセル72(図1、図3および図4参照)と、両樹脂製ブッシュ71に嵌合されて左右両端面にて両カプセル72に係合するカラー73(図3および図5参照)と、このカラー73および両カプセル72に形成した取付孔72aを貫通するボルト74(図1と図3〜図5参照)と、このボルト74に螺着固定されるナット75(図3参照)によって構成されている。
【0018】
また、この実施形態においては、図1、図3および図5にて示したように、コラム側ブラケット62にエネルギー吸収部材80が組付けられている。エネルギー吸収部材80は、ステアリングコラム12が前方へ移動する際にカラー73と係合して塑性変形し二次衝突エネルギーを吸収する長板であり、コラム側ブラケット62に一端部80a(図1参照)にて固着されていて、カラー73およびボルト74を包囲した状態で前方に向けて延出している。
【0019】
上記のように構成したこの実施形態においては、上方支持機構Saにおいて操作レバー50を図1の時計方向に回動操作して係脱手段40による固定を解除すれば、両ブラケット31,32における各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間の摩擦係合が解除されて、ステアリングコラム12がコラム側ブラケット32の長孔32a1,32b1に沿って所定量移動可能(チルト可能)となるため、また下方支持機構Sbにおいてコラム側ブラケット62が車体側ブラケット61に対して常に傾動可能であるため、ステアリングコラム12をチルト可能範囲にて上下方向に移動してステアリングホイール13の位置を適宜にチルト調整することが可能である。
【0020】
また、上方支持機構Saにおいて操作レバー50を図1の反時計方向に回動操作して係脱手段40を固定状態とすれば、両ブラケット31,32の各アーム31a,32a間と各アーム31b,32b間にそれぞれ所定の摩擦係合が得られて、車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32が固定されるため、ステアリングコラム12が、上方支持機構Saと下方支持機構Sbによって、所定の傾斜角θにて車体の一部であるステアリング取付部材20に固定されて支持される。
【0021】
また、この実施形態においては、車両の衝突時、その二次衝突の際に乗員からステアリングホイール13を介してステアリングシャフト11に前方への入力Fが作用し、この入力Fのコラム軸方向分力F1(=F・cosθ)が上記した所定の摩擦係合と各ブッシュ71の破損荷重に打ち勝つことにより、ステアリングコラム12がその軸線方向に沿って前方へ移動する。
【0022】
このときには、上方支持機構Saのコラム側ブラケット32が車体側ブラケット31から前方へ移動離脱し、下方支持機構Sbのコラム側ブラケット62が車体側ブラケット61に固定されている連結手段70によってガイド支持された状態で車体側ブラケット61に対して前方へ移動する。このため、ステアリングコラム12が僅かに起立しながらその軸線方向に沿って前方へ移動する(図2の仮想線参照)。また、このときには、下方支持機構Sbにおいてカラー73がエネルギー吸収部材80を塑性変形させるため、二次衝突エネルギーがエネルギー吸収部材80の塑性変形により吸収される。
【0023】
また、ステアリングコラム12が下方支持機構Sbの連結手段70によってガイド支持された状態にて移動端に移動したときには、ステアリングシャフト11に作用する入力Fのコラム径方向分力F2(=F・sinθ)によるモーメントにより、連結手段70の両カプセル72が車体側ブラケット61から下方に抜けてステアリングコラム12の下方部位を車体側ブラケット61から離脱させる。このため、ステアリングコラム12は、下方支持機構Sbにて車体の一部に対して支持された状態での前方への移動を完了した時点すなわちフルストローク時において、車体の一部に対する拘束を解除されて底付を抑制される。
【0024】
上記実施形態においては、ステアリングコラム12の下方部位が下方支持機構Sbにて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、下方支持機構Sbを車体の一部から離脱させてステアリングコラム12を車体の一部から離脱させる離脱機構として、車体側ブラケット61の各アーム61aに形成した下方に向けて開口した取付孔61a1に下方から抜き差し可能に組付けられるカプセル72を採用して実施したが、カプセル72に代えて、図6および図7に示した樹脂製ストッパ172を採用して実施することも可能である。
【0025】
樹脂製ストッパ172は、ステアリングコラムが下方支持機構によってガイド支持された状態にて移動端に移動したとき、ステアリングシャフトに作用する入力のコラム径方向分力によるモーメントにより破断されるものであり、上記実施形態のカラー73に相当するカラー173の端部に嵌合された状態にて車体側ブラケット161の各アーム161aに形成した取付孔161a1に側方から組付けられ、上記実施形態のボルト74とナット75に相当するボルトとナット(図示省略)により抜け止め固定される。車体側ブラケット161の取付孔161a1は、下方に向けて開口していて、樹脂製ストッパ172が破断した状態ではカラー173が下方に向けて通過して離脱可能である。
【0026】
また、上記実施形態においては、ステアリングコラム12が車体の一部に対して上方支持機構Saと下方支持機構Sbからなる支持機構によって所定量移動可能に支持される実施形態に本発明を実施したが、本発明はステアリングコラムが車体の一部に対して単一の支持機構によって所定量移動可能に支持される実施形態にも同様に実施することが可能である。
【0027】
また、上記実施形態においては、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラム12の前方への移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段として、下方支持機構Sbのコラム側ブラケット62に組付けられてカラー73によって塑性変形されるエネルギー吸収部材80を採用して実施したが、乗員の二次衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段は他の構成のもの(例えば、ステアリングコラム自体に設けた衝突エネルギー吸収手段)を採用して実施することも可能であり、上記実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った上方支持機構の拡大断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿った下方支持機構の拡大断面図である。
【図4】図1に示した下方支持機構の車体側ブラケット、カプセルおよびボルトの関係を示す拡大側面図である。
【図5】図3の5−5線に沿った縦断側面図である。
【図6】本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の他の実施形態を示す図4相当の側面図である。
【図7】図6の7−7線に沿った断面図である。
【符号の説明】
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングコラム、13…ステアリングホイール、20…ステアリング取付部材(車体の一部)、Sa…上方支持機構、31…車体側ブラケット、32…コラム側ブラケット、40…係脱手段、50…操作レバー、Sb…下方支持機構、61…車体側ブラケット、62…コラム側ブラケット、70…連結装置、71…ブッシュ、72…カプセル、73…カラー、74…ボルト、75…ナット、80…エネルギー吸収部材。
Claims (2)
- ステアリングコラムを車体の一部に対して所定量移動可能に支持する支持機構を備えるとともに、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを前記ステアリングコラムの移動によって吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、車両の衝突時における乗員からの入力により、前記ステアリングコラムが前記支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構を設けたことを特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
- 請求項1に記載の衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、前記支持機構は、前記ステアリングコラムの上方部位を車体の一部に対して前方へ移動離脱可能に支持する上方支持機構と、前記ステアリングコラムの下方部位を車体の一部に対して前方へ所定量移動可能に支持する下方支持機構を備えた支持機構であり、前記離脱機構は、前記ステアリングコラムの下方部位が前記下方支持機構にて車体の一部に対して支持された状態で移動端に移動したときに、前記下方支持機構を車体の一部から離脱させて前記ステアリングコラムを車体の一部から離脱させる離脱機構であることを特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003059527A JP2004268657A (ja) | 2003-03-06 | 2003-03-06 | 衝撃吸収式ステアリングコラム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004268657A true JP2004268657A (ja) | 2004-09-30 |
Family
ID=33122318
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003059527A Withdrawn JP2004268657A (ja) | 2003-03-06 | 2003-03-06 | 衝撃吸収式ステアリングコラム装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004268657A (ja) |
-
2003
- 2003-03-06 JP JP2003059527A patent/JP2004268657A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060306 |
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A761 | Written withdrawal of application |
Effective date: 20071207 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 |