JP3888365B2 - ステアリング装置 - Google Patents

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本発明は、車両に装備されるステアリング装置に関する。
車両に装備されるステアリング装置の一つとして、例えば特開平7−144646号公報に、ステアリングコラムの上部を上下方向へ移動可能かつ前方へ離脱可能に支持する上方支持機構と、同ステアリングコラムの下部をコラム軸方向へ移動可能かつ傾動可能に支持する下方支持機構とによって、当該ステアリングコラムを所定の傾斜角にて車体に支持するステアリング装置が開示されている。
この公報のステアリング装置においては、下方支持機構を構成するコラム側ブラケットにコラム軸方向の長孔が設けられていて、車体側ブラケットに一体的に組付けた連結手段によって車体側ブラケットに対してコラム側ブラケットがコラム軸方向へ移動可能かつ傾動可能に連結されており、連結手段が長孔に嵌合される樹脂製ブッシュと、この樹脂製ブッシュを貫通した状態にて車体側ブラケットに一体的に組付けられるカラー及び連結軸を備える構成とされている。
特開平7−144646号公報
上記した公報に記載のステアリング装置においては、上方支持機構及び下方支持機構でのステアリングコラムの移動可能方向について特別な配慮がなされていないため、ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が加わったときに、上方支持機構及び下方支持機構の各支持部にて大きなこじりや摩擦が発生して、ステアリングコラムがスムーズに移動しないことがあり、所期の性能を的確に確保することが難しい。
本発明は、上記した問題に対処するため、ステアリングコラムの上部を上下方向へ移動可能かつ前方へ離脱可能に支持する上方支持機構と、同ステアリングコラムの下部をコラム軸方向へ移動可能かつ傾動可能に支持する下方支持機構とによって、当該ステアリングコラムを所定の傾斜角にて車体に支持するステアリング装置において、
前記ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が入力したとき同ステアリングコラムの前方への上部離脱方向をコラム軸方向に対して上方へ所定角度偏向させる係脱手段を前記上方支持機構に設けるとともに、前記ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が入力したとき同ステアリングコラムの下方への下部移動方向をコラム軸方向に対して下方へ所定角度偏向させる連結手段を前記下方支持機構に設けたことを特徴とするステアリング装置を提供するものである。
上記のように構成した本発明によるステアリング装置においては、ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が入力したとき、同ステアリングコラムの前方への上部離脱方向をコラム軸方向に対して上方へ所定角度偏向させるとともに、同ステアリングコラムの下方への下部移動方向をコラム軸方向に対して下方へ所定角度偏向させたため、ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が加わったときに上方支持機構と下方支持機構の各支持部にて生じるこじりや摩擦を低減することができ、ステアリングコラムのスムーズな移動を確保して所期の性能を的確に確保することができる。
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示した本発明によるステアリング装置においては、ステアリングシャフト11を回転自在に支持するステアリングコラム12が上方支持機構Aと下方支持機構Bによって所定の傾斜角にて車体(インパネ補強部材)20にチルト可能に支持されている。ステアリングシャフト11は、その下端にて自在継手(図示省略)を介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸(図示省略)に連結されるようになっていて、この中間軸は自在継手(図示省略)を介してステアリングギヤボックス(図示省略)に連結されるようになっている。また、ステアリングシャフト11の上端にはエアーバッグを装着したステアリングホイール13が一体回転可能に組付けられるようになっている。
上方支持機構Aは、ステアリングコラム12の上部を上下方向へ移動可能かつ前方へ離脱可能に支持するものであり、図1〜図3に示したように、下方に延びる左右一対のアーム31aを有して車体20に一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット31と、上方に延びて車体側ブラケット31の各アーム31aに外側から摺動可能に係合する左右一対のアーム32aを有してステアリングコラム12に一体的に固定された鉄板製のコラム側ブラケット32と、このコラム側ブラケット32の両アーム32aを車体側ブラケット31の両アーム31aに対して摩擦係合により固定または解除させる係脱手段40と、この係脱手段40を操作する操作レバー50を備えている。
係脱手段40は、コラム側ブラケット32の両アーム32aに形成した円弧状長孔32a1及び車体側ブラケット31の両アーム31aに形成した切欠31a1をそれぞれ貫通する回転不能のロックボルト41と、コラム側ブラケット32の両アーム32a間にてロックボルト41の外周に嵌合されて左右両端部にて各切欠31a1に嵌合するカラー42と、ロックボルト41のねじ部に螺着されて操作レバー50によって回転されるナット43によって構成されていて、操作レバー50が図1の時計方向へ回動されることによりナット43がロックボルト41に締め付けられて、両ブラケット31,32の各アーム31a,32a間にそれぞれ所定の摩擦係合が得られるように、また操作レバー50が図1の反時計方向へ回動されることによりナット43が緩められて、上記した各摩擦係合が解除されるようになっている。
車体側ブラケット31の両アーム31aに形成した切欠31a1は、前方に向けて開口していて、その開口方向(ステアリングコラム12の前方への上部離脱方向)はステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに上方支持機構Aの支持部に発生する力Faの方向に向けてコラム軸方向に対して上方へ所定角度θ1偏向させてある。コラム側ブラケット32の両アーム32aに形成した円弧状長孔32a1は、下方支持機構Bの支持中心を中心とする円弧形状に形成されている。
下方支持機構Bは、ステアリングコラム12の下部をコラム軸方向へ移動可能かつ傾動(回動)可能に支持するものであり、図1、図2、図4及び図5に示したように、下方に延びる左右一対のアーム61aを有して車体20に一体的に固定された鉄板製の車体側ブラケット61と、山形コ字状に形成されてステアリングコラム12の下部外周に一体的に固定された鉄板製のコラム側ブラケット62と、車体側ブラケット61に対してコラム側ブラケット62をコラム軸方向へ移動可能かつ傾動可能に連結する連結手段70によって構成されている。
連結手段70は、図5に示したように、コラム側ブラケット62に形成したコラム軸方向に長い左右一対の長孔62aに嵌合によって組付けられる左右一対の樹脂製ブッシュ71,72と、これら両樹脂製ブッシュ71,72に嵌合されて両端面にて車体側ブラケット61の各アーム61aに係合するカラー73と、このカラー73及び車体側ブラケット61の各アーム61aに形成した取付丸孔61a1(図1参照)を貫通して両樹脂製ブッシュ71,72及びカラー73を車体側ブラケット61に一体的に連結するボルト74と、このボルト74に螺着固定されるナット75によって構成されている。
コラム側ブラケット62に形成した各長孔62aは、コラム側ブラケット62にプレスの打ち抜き加工によって形成されていて、その配置方向(ステアリングコラム12の下部移動方向)はステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに下方支持機構Bの支持部に発生する力Fbの方向に向けてコラム軸方向に対して下方へ所定の角度θ2偏向させてある。また、各長孔62aの下側端面、すなわちステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに各樹脂製ブッシュ71,72が離れる側の長孔端面には凸部62a1が設けられている。各凸部62a1は、各長孔62aの一部を幅狭として各樹脂製ブッシュ71,72の位置決めとステアリングコラム12の前方への離脱荷重を設定する機能を有している。
各樹脂製ブッシュ71,72は、図5〜図8にて詳細に示したように、C形形状とされていて縮径可能であり、各長孔62aに嵌合して回り止めするガイド71a,72aが設けられるとともに、各長孔62aへの外側からの嵌合時にストッパとして機能するフランジ71b,72bと嵌合後に抜け止めするフランジ71c,72cが設けられている。
また、本実施形態においては、コラム側ブラケット62内にカラー73に対応して衝撃吸収板80が組付けられている。衝撃吸収板80は、車両の正面衝突時における二次衝突時において生じ得る両ブラケット61,62の設定値以上の相対移動時に塑性変形して衝撃エネルギーを吸収する細幅長板であり、カラー73を囲むようにU字状に湾曲形成されていて、図示下方部位にてステアリングコラム12に一体的に固定されている。
上記のように構成した本実施形態においては、上方支持機構Aにおいて操作レバー50を操作して係脱手段40による固定を解除すれば、ステアリングコラム12がコラム側ブラケット32の長孔32a1に沿って所定量移動可能になるとともに、下方支持機構Bにおいてコラム側ブラケット62が車体側ブラケット61に対して常に傾動可能であるため、ステアリングコラム12を移動可能範囲にて移動してステアリングホイール13の位置を適宜にチルト調節することが可能である。
また、本実施形態においては、車両の正面衝突時における二次衝突時においてステアリングホイール13に車両前方への荷重F1が作用し、上方の車体側ブラケット31に対してコラム側ブラケット32が前方へ離脱するとともに、下方の車体側ブラケット61に対してコラム側ブラケット62が前方へ移動すると、衝撃吸収板80がカラー73によって塑性変形されて衝撃エネルギーが吸収される。また、このときには、ステアリングホイール13に装着したエアーバッグが展開してステアリングホイール13への衝突を緩衝する。
ところで、本実施形態においては、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに各樹脂製ブッシュ71,72が離れる側の各長孔面に、各長孔62aの一部を幅狭として各樹脂製ブッシュ71,72の位置決めとステアリングコラム12の前方への離脱荷重を設定する凸部62a1を設けたため、ステアリングコラム12にコラム軸に沿った前方への荷重F2が入力してステアリングコラム12がコラム軸方向に移動するとき(軸方向入力時)の各凸部62a1による各樹脂製ブッシュ71,72の削り代S1に比して、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力してステアリングコラム12が前方へ移動するとき(水平方向入力時)の各凸部62a1による各樹脂製ブッシュ71,72の削り代S2を少なくすることができて、軸方向入力時の軸方向離脱荷重に比して、水平方向入力時のコラム離脱荷重を小さくすることができる。
したがって、ステアリングホイール13に装着されるエアーバッグの展開時に必要な軸方向離脱荷重(エアーバッグの機能に関連する荷重)を確保した上で、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときのコラム離脱荷重(車両正面衝突時における二次衝突時の緩衝作用に関連する荷重)を十分に下げることができて、当該ステアリング装置において必要な所期の性能を的確に確保することができる。
また、本実施形態においては、下方支持機構Bの各樹脂製ブッシュ71,72をC形形状として縮径可能とし、同樹脂製ブッシュ71,72に各長孔62aに嵌合して回り止めするガイド71a,72aを設けるとともに各長孔62aへの嵌合後に抜け止めするフランジ71c,72cを設けたため、各樹脂製ブッシュ71,72の各長孔62aへの嵌合組付に際して、各樹脂製ブッシュ71,72を縮径して各長孔62aに容易に組付けることができるとともに、その後の各樹脂製ブッシュ71,72へのカラー73の貫通組付に際して各樹脂製ブッシュ71,72に設けたフランジ71c,72cによる抜け止め機能によりカラー73を各樹脂製ブッシュ71,72に容易に組付けることができる。
また、各樹脂製ブッシュ71,72、カラー73及びボルト(連結軸)74等の組付後においては、各樹脂製ブッシュ71,72に設けたガイド71a,72aによる回転止め機能により、下方支持機構Bでの回転許容部位を各樹脂製ブッシュ71,72の内周面とカラー73の外周面(長孔加工面より容易に加工精度を上げることができる部位)間のみとすることができて、各樹脂製ブッシュ71,72の耐久性を容易に向上させることができ、所期の性能を長期間安定して得ることができるとともに、各樹脂製ブッシュ71,72における合口位置(C形によって形成される周方向隙間の位置)を常に設定位置とすることができて、各樹脂製ブッシュ71,72が各長孔62aに設けた凸部62a1にて削られる場合のコラム離脱荷重を安定して得ることができる。
しかして、本実施形態においては、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに上方支持機構Aの支持部に発生する力Faの方向に向けてステアリングコラム12の上部離脱方向をコラム軸方向に対して上方へ所定角度θ1偏向させるとともに、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに下方支持機構Bの支持部に発生する力Fbの方向に向けてステアリングコラム12の下部移動方向をコラム軸方向に対して下方へ所定角度θ2偏向させたため、ステアリングコラム12の上端部に前方への略水平方向の荷重F1が入力したときに上方支持機構A及び下方支持機構Bの各支持部にて生じるこじりや摩擦を低減することができ、ステアリングコラム12のスムーズな移動を確保して所期の性能を的確に確保することができる。
本発明によるステアリング装置の一実施形態を示す側面図である。 図1に示したステアリングコラムの側面図である。 図1に示した上方の車体側ブラケットとこれに組付けられるカラー及びボルトの関係を示す側面図である。 図1に示した下方のコラム側ブラケットとこれに組付けられる樹脂製ブッシュとこれを貫通するカラーの関係を示す一部破断側面図である。 図4に示した下方のコラム側ブラケット、樹脂製ブッシュ及びカラーと樹脂製ブッシュ及びカラーを車体側ブラケットに固定するためのボルト及びナットの分解斜視図である。 図1、図4及び図5に示した樹脂製ブッシュ単体の正面図である。 図6に示した樹脂製ブッシュ単体の平面図である。 図6の8−8線に沿った断面図である。
符号の説明
11…ステアリングシャフト、12…ステアリングコラム、13…ステアリングホイール、20…車体、A…上方支持機構、31…車体側ブラケット、31a1…切欠、32…コラム側ブラケット、32a1…円弧状長孔、40…係脱手段、50…操作レバー、B…下方支持機構、61…車体側ブラケット、61a1…取付丸孔、62…コラム側ブラケット、62a…長孔、62a1…凸部、71,72…樹脂製ブッシュ、71a,72a…ガイド、71b,72b、71c,72c…フランジ、73…カラー、74…ボルト(連結軸)、75…ナット。

Claims (2)

  1. ステアリングコラムの上部を上下方向へ移動可能かつ前方へ離脱可能に支持する上方支持機構と、同ステアリングコラムの下部をコラム軸方向へ移動可能かつ傾動可能に支持する下方支持機構とによって、当該ステアリングコラムを所定の傾斜角にて車体に支持するステアリング装置において、
    前記ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が入力したとき同ステアリングコラムの前方への上部離脱方向をコラム軸方向に対して上方へ所定角度偏向させる係脱手段を前記上方支持機構に設けるとともに、前記ステアリングコラムの上端部に前方への略水平方向の荷重が入力したとき同ステアリングコラムの下方への下部移動方向をコラム軸方向に対して下方へ所定角度偏向させる連結手段を前記下方支持機構に設けたことを特徴とするステアリング装置。
  2. 記下方支持機構が、車体に固定した車体側ブラケットと、前記ステアリングコラムに固定したコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットに形成したコラム軸方向に長い前後方向の長孔に嵌合した樹脂製ブッシュと、この樹脂製ブッシュを貫通した状態にて前記車体側ブラケットに一体的に組付けたカラーと連結軸とにより構成され、記樹脂製ブッシュとして縮径可能な樹脂製ブッシュを採用し、同樹脂製ブッシュに前記長孔の上側内端面と下側内端面に係合して回り止めされるガイドを形成するとともに前記長孔への嵌合後に抜け止めされるフランジを形成したことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
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