JP2004259937A - 多層プリント配線板の製造方法及びそれにより得られる多層プリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造時の取扱が容易で,積層接着時の被膜変形や錆の発生がなく、また内層銅とプリプレグとの密着性及びはんだ耐熱性に優れた多層プリント配線板の製造方法及びそれを用いた多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】回路を形成した絶縁基板上の内層回路に表面処理を施し、プリプレグを重ね合せて積層接着する多層プリント配線板の製造方法において,該表面処理が貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させる工程を含む多層プリント配線板の製造方法及びそれを用いた多層プリント配線板。
【選択図】 なし
【解決手段】回路を形成した絶縁基板上の内層回路に表面処理を施し、プリプレグを重ね合せて積層接着する多層プリント配線板の製造方法において,該表面処理が貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させる工程を含む多層プリント配線板の製造方法及びそれを用いた多層プリント配線板。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内層回路の金属箔面とプリプレグの密着性に優れる多層プリント配線板の製造方法及びその製造方法により得られる多層プリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体チップ等の電子部品はその集積密度が非常に高くなって来ており、そのためこれを実装するプリント配線板も配線間隔や接続穴間隔の狭小化により高密度化が進んでいる。多層プリント配線板は予め複数の基板に導体回路を形成しておき(以下、内層板)、これらをお互いに接合することにより多層配線化し、より高密度化しており、内層板にプリプレグを重ね合せて多層化される。
【0003】
この内層板表面の内層回路(内層銅)は一般的に、酸化剤を含む液で表面を酸化処理したり,更に還元処理して微細な針状形状を形成する方法で,プリプレグとのアンカー効果を得て密着性を向上させている。このような多層プリント配線板の製造法において、内層銅パターン表面とプリプレグ等の絶縁材料との耐薬品性に優れた接着力を得るために、特公昭64−8479号公報では、酸化剤を含むアルカリ性水溶液を使用して、内層銅パターン表面に微細な凹凸形状をもつ酸化銅を形成した後、還元剤を含むアルカリ性水溶液と接触させるという内層銅パターンの処理法が、また同じ目的で酸化銅の還元剤にジメチルアミンボランを用いる方法が、特開昭61−176192号公報に開示されている。
【0004】
しかし近年,作業が容易な内層処理の要求が高まり、硫酸/過酸化水素水系の処理液(エッチング液)等で内層銅表面をエッチングにより溶解させ、内層銅表面を1〜5μm程度凹凸化させる粗化処理が使用されるようになってきている。例えばエッチング液としては、特開平10−96088号公報にオキソ酸としての硫酸および過酸化物としての過酸化水素を含む主剤に、アゾールとしてのベンゾトリアゾールおよびハロゲン化物としての塩化ナトリウムを含む助剤を配合した液が開示されている。また同様に特開平6−112646号公報及び特許第2740768号にも、過酸化水素、無機酸などを含む水性組成物を用いる方法が開示されている。なおこれらの処理法の場合、防錆剤を予め処理液(エッチング液)に添加しておくか、また粗化処理(エッチング処理)後、防錆処理を行う必要がある。
【0005】
【特許文献1】
特公昭64−8479号公報
【特許文献2】
特開昭61−176192号公報
【特許文献3】
特開平10−96088号公報
【特許文献4】
特開平6−112646号公報
【特許文献5】
特許第2740768号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の酸化処理や還元処理を行なう工法では、処理皮膜が比較的もろく,積層接着時のプレス圧力で変形してしまい,性能異常を起こす場合がある。また,硫酸/過酸化水素水系の粗化処理では、処理後の錆対策等が必要で品質の安定化が難しい。また,酸化処理に比較して密着強度が得られにくいなどの問題がある。
【0007】
本発明は、製造時の取扱が容易で、積層接着時の被膜変形や錆の発生がなく、また内層金属とプリプレグとの密着性及びはんだ耐熱性に優れた多層プリント配線板の製造方法及びそれにより得られる多層プリント配線板を提供することを目的とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、回路を形成した絶縁基板上の内層回路に表面処理を施し、プリプレグを重ね合せて積層接着する多層プリント配線板の製造方法において、該表面処理が貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させる工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、貴金属イオンがパラジウムイオンであり,酸性処理液が塩酸酸性処理液であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させて表面処理した後,シランカップリング剤を塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法によって得られる多層プリント配線板である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、内層銅表面に貴金属イオンと銅イオンを含む酸性の処理液を接触させて銅表面を粗化しつつ、銅と貴金属イオンを置換させることを特徴とする処理技術である。
本発明で使用できる貴金属イオンは金,銀,パラジウムなどの銅との接触で置換させられる貴金属であればよく、コストなどの点からパラジウムが好ましい。パラジウムとしては、例えば塩化パラジウムなど、市販品されている物であれば使用できる。
【0013】
また、貴金属は一般に高価なので、効果とコストのバランスを考慮すると処理液中の貴金属イオンの濃度は20ppmから500ppmが望ましい。20ppm未満の場合、置換ムラが発生し易い。また500ppmを超しても置換の程度は変わりがない。
【0014】
銅イオンは例えば市販の塩化第二銅を建浴して液中に供給すれば良く、その濃度は内層銅との反応速度(粗化速度)で調整することが望ましく、銅イオンとして0.1g/L〜30g/Lが作業上操作し易い濃度である。30g/Lを超えると反応速度(粗化速度)が増し銅の溶解度が上昇し,処理後の回路厚みが減少してしまう。また0.1g/L未満では、反応速度(粗化速度)が減少し作業上効率的ではない。
【0015】
酸性処理液としては、塩酸、硫酸、硝酸などが使用できるが、塩酸がより望ましい。また酸濃度は、pH0〜pH3.5が望ましく、pH2.0〜3.0がより望ましい。
【0016】
酸性処理液と内層銅との接触の方法は一般的に使用される浸漬処理やスプレー処理であれば良く,特に制限しない。
【0017】
本発明の酸性処理液で内層銅を粗化後、シランカップリング剤処理を行うことが望ましい。使用できるシランカップリング剤としては、一般式RSiX3で表されるものであれば良い(R:有機官能基(アミノ基,エポキシ基など),Si:珪素,X:加水分解性基(エトキシ基,メトキシ基などのアルコキシル基、水酸基を含む))。例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシトリメトキシシランなどが使用できる。
【0018】
シランカップリング剤の塗布方法は,0.5〜10重量%水溶液として、一般的に使用される,例えば浸漬,スプレー方式で塗布すれば良く、特に制限しない。
【0019】
本発明の酸性処理液を用いると内層銅表面を粗化しながらパラジウムイオンが置換して表面にパラジウム層が形成される。これは、積層時の圧力による変形に対して、酸化処理皮膜より強く、安定性に優れる貴金属皮膜である。また本発明により、内層銅表面が酸化されにくい貴金属で被覆されているため、硫酸/過酸化水素系粗化液のような錆対策が不要になる。また,シランカップリング剤を用いることで内層銅表面と有機物(プリプレグ樹脂)との化学的カップリング効果により、内層銅表面と有機物(プリプレグ樹脂)との密着強度が増加する。
【0020】
したがって,本法を用いることで取扱が容易で,内層銅とプリプレグとの密着性に優れる多層プリント配線板を容易に得ることができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)を二塩化パラジウム0.23g/L、塩化第二銅10.6g/Lを含むpH2.5に調整した塩酸酸性処理液を入れた容器に、常温(25℃)で3分間浸漬処理した。銅箔表面をパラジウムで置換・粗化した後,80℃、20分間基板を乾燥して内層板を得た。今回の処理では重量法で1μmの粗化量の内層板が得られた。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0022】
実施例2
実施例1と同様に処理した後,γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1重量%水溶液に常温(25℃),1分間浸漬してカップリング剤塗布後,80℃、20分間基板を乾燥して内層板を得た。引き続き,実施例1と同様に多層板を作製した。
【0023】
比較例1
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)をNaOHが40g/L、液温50℃の水溶液に3分間浸漬してアルカリ脱脂し、水洗し、次にペルオキソ二硫酸アンモニウムが100g/L、液温40℃の水溶液に浸漬して表面をソフトエッチングし、水洗し、亜塩素酸ナトリウムが30g/L、リン酸三ナトリウム12水塩が30g/L、NaOHが20g/L、液温が85℃の酸化銅処理液に2分間浸漬して銅表面に酸化処理を行い酸化銅皮膜を形成した。次に、還元剤としてジメチルアミンボラン4g/L(pH:12.5)に、液温40℃で150秒浸漬、還元し、内層板を得た。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0024】
比較例2
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)を、硫酸90g/L、過酸化水素80g/L、塩化ナトリウム0.2g/L、ベンゾトリアゾール5g/Lを含む粗化処理液(エッチング液)に浸漬させて、基板の銅箔表面を粗化し、内層板を得た。今回の処理では重量法で1.5μmの粗化量の内層板が得られた。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0025】
上記多層板及び内層板について、取扱い性(錆び易さ)、積層成型時の皮膜変形、内層ピール強度及びはんだ耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
<評価方法>
(1)取扱い性(錆び易さ)
内層銅表面を処理後、24時間放置し、その処理表面を目視観察した。結果を,〇:異常なし,△:部分的に錆発生,×:全面に錆発生で評価した。
【0028】
(2)積層成型時の皮膜変形
外層銅箔を全面エッチング除去後、多層板状態でプリプレグ層を透過させて内層処理面の皮膜の変形を色相変化で目視観察した。結果を、〇:異常なし,△:色相変化が部分的に発生,×:全面に色相変化(注:皮膜変形すると可視光線の反射が変わり,色相が変化)で評価した。
【0029】
(3)内層ピール強度
内層銅とプリプレグとの密着強度を引き剥がし試験により求めた(引き剥がし幅:10mm、引き剥がし速度:50mm/分)。
【0030】
(4)はんだ耐熱性
多層板を260℃のはんだ槽に10秒浸漬し,外層銅箔を全面エッチング除去後、内層銅処理面−プリプレグ界面部分の異常を目視観察した。結果を、〇:異常なし,△:ミーズリング発生,×:ふくれ発生で評価した。
【0031】
表1に示したように、本発明の貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させて得られた多層板は、錆や処理面の皮膜変形がなく、また、プリプレグとの密着性に優れる。これに対し、比較例1の酸化、還元した処理では、錆の発生、皮膜の変形が見られ、プリプレグとの密着性に少し劣る。比較例2の粗化処理では、錆の発生が見られ、内層ピール強度とはんだ耐熱性に劣る。
【0032】
【発明の効果】
本発明法を用いることで、製造時の取扱が容易で,積層接着時の被膜変形や錆の発生がなく、内層銅とプリプレグとの密着性及びはんだ耐熱性に優れた多層プリント配線板を容易に得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、内層回路の金属箔面とプリプレグの密着性に優れる多層プリント配線板の製造方法及びその製造方法により得られる多層プリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体チップ等の電子部品はその集積密度が非常に高くなって来ており、そのためこれを実装するプリント配線板も配線間隔や接続穴間隔の狭小化により高密度化が進んでいる。多層プリント配線板は予め複数の基板に導体回路を形成しておき(以下、内層板)、これらをお互いに接合することにより多層配線化し、より高密度化しており、内層板にプリプレグを重ね合せて多層化される。
【0003】
この内層板表面の内層回路(内層銅)は一般的に、酸化剤を含む液で表面を酸化処理したり,更に還元処理して微細な針状形状を形成する方法で,プリプレグとのアンカー効果を得て密着性を向上させている。このような多層プリント配線板の製造法において、内層銅パターン表面とプリプレグ等の絶縁材料との耐薬品性に優れた接着力を得るために、特公昭64−8479号公報では、酸化剤を含むアルカリ性水溶液を使用して、内層銅パターン表面に微細な凹凸形状をもつ酸化銅を形成した後、還元剤を含むアルカリ性水溶液と接触させるという内層銅パターンの処理法が、また同じ目的で酸化銅の還元剤にジメチルアミンボランを用いる方法が、特開昭61−176192号公報に開示されている。
【0004】
しかし近年,作業が容易な内層処理の要求が高まり、硫酸/過酸化水素水系の処理液(エッチング液)等で内層銅表面をエッチングにより溶解させ、内層銅表面を1〜5μm程度凹凸化させる粗化処理が使用されるようになってきている。例えばエッチング液としては、特開平10−96088号公報にオキソ酸としての硫酸および過酸化物としての過酸化水素を含む主剤に、アゾールとしてのベンゾトリアゾールおよびハロゲン化物としての塩化ナトリウムを含む助剤を配合した液が開示されている。また同様に特開平6−112646号公報及び特許第2740768号にも、過酸化水素、無機酸などを含む水性組成物を用いる方法が開示されている。なおこれらの処理法の場合、防錆剤を予め処理液(エッチング液)に添加しておくか、また粗化処理(エッチング処理)後、防錆処理を行う必要がある。
【0005】
【特許文献1】
特公昭64−8479号公報
【特許文献2】
特開昭61−176192号公報
【特許文献3】
特開平10−96088号公報
【特許文献4】
特開平6−112646号公報
【特許文献5】
特許第2740768号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の酸化処理や還元処理を行なう工法では、処理皮膜が比較的もろく,積層接着時のプレス圧力で変形してしまい,性能異常を起こす場合がある。また,硫酸/過酸化水素水系の粗化処理では、処理後の錆対策等が必要で品質の安定化が難しい。また,酸化処理に比較して密着強度が得られにくいなどの問題がある。
【0007】
本発明は、製造時の取扱が容易で、積層接着時の被膜変形や錆の発生がなく、また内層金属とプリプレグとの密着性及びはんだ耐熱性に優れた多層プリント配線板の製造方法及びそれにより得られる多層プリント配線板を提供することを目的とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、回路を形成した絶縁基板上の内層回路に表面処理を施し、プリプレグを重ね合せて積層接着する多層プリント配線板の製造方法において、該表面処理が貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させる工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、貴金属イオンがパラジウムイオンであり,酸性処理液が塩酸酸性処理液であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させて表面処理した後,シランカップリング剤を塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法によって得られる多層プリント配線板である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、内層銅表面に貴金属イオンと銅イオンを含む酸性の処理液を接触させて銅表面を粗化しつつ、銅と貴金属イオンを置換させることを特徴とする処理技術である。
本発明で使用できる貴金属イオンは金,銀,パラジウムなどの銅との接触で置換させられる貴金属であればよく、コストなどの点からパラジウムが好ましい。パラジウムとしては、例えば塩化パラジウムなど、市販品されている物であれば使用できる。
【0013】
また、貴金属は一般に高価なので、効果とコストのバランスを考慮すると処理液中の貴金属イオンの濃度は20ppmから500ppmが望ましい。20ppm未満の場合、置換ムラが発生し易い。また500ppmを超しても置換の程度は変わりがない。
【0014】
銅イオンは例えば市販の塩化第二銅を建浴して液中に供給すれば良く、その濃度は内層銅との反応速度(粗化速度)で調整することが望ましく、銅イオンとして0.1g/L〜30g/Lが作業上操作し易い濃度である。30g/Lを超えると反応速度(粗化速度)が増し銅の溶解度が上昇し,処理後の回路厚みが減少してしまう。また0.1g/L未満では、反応速度(粗化速度)が減少し作業上効率的ではない。
【0015】
酸性処理液としては、塩酸、硫酸、硝酸などが使用できるが、塩酸がより望ましい。また酸濃度は、pH0〜pH3.5が望ましく、pH2.0〜3.0がより望ましい。
【0016】
酸性処理液と内層銅との接触の方法は一般的に使用される浸漬処理やスプレー処理であれば良く,特に制限しない。
【0017】
本発明の酸性処理液で内層銅を粗化後、シランカップリング剤処理を行うことが望ましい。使用できるシランカップリング剤としては、一般式RSiX3で表されるものであれば良い(R:有機官能基(アミノ基,エポキシ基など),Si:珪素,X:加水分解性基(エトキシ基,メトキシ基などのアルコキシル基、水酸基を含む))。例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシトリメトキシシランなどが使用できる。
【0018】
シランカップリング剤の塗布方法は,0.5〜10重量%水溶液として、一般的に使用される,例えば浸漬,スプレー方式で塗布すれば良く、特に制限しない。
【0019】
本発明の酸性処理液を用いると内層銅表面を粗化しながらパラジウムイオンが置換して表面にパラジウム層が形成される。これは、積層時の圧力による変形に対して、酸化処理皮膜より強く、安定性に優れる貴金属皮膜である。また本発明により、内層銅表面が酸化されにくい貴金属で被覆されているため、硫酸/過酸化水素系粗化液のような錆対策が不要になる。また,シランカップリング剤を用いることで内層銅表面と有機物(プリプレグ樹脂)との化学的カップリング効果により、内層銅表面と有機物(プリプレグ樹脂)との密着強度が増加する。
【0020】
したがって,本法を用いることで取扱が容易で,内層銅とプリプレグとの密着性に優れる多層プリント配線板を容易に得ることができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)を二塩化パラジウム0.23g/L、塩化第二銅10.6g/Lを含むpH2.5に調整した塩酸酸性処理液を入れた容器に、常温(25℃)で3分間浸漬処理した。銅箔表面をパラジウムで置換・粗化した後,80℃、20分間基板を乾燥して内層板を得た。今回の処理では重量法で1μmの粗化量の内層板が得られた。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0022】
実施例2
実施例1と同様に処理した後,γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1重量%水溶液に常温(25℃),1分間浸漬してカップリング剤塗布後,80℃、20分間基板を乾燥して内層板を得た。引き続き,実施例1と同様に多層板を作製した。
【0023】
比較例1
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)をNaOHが40g/L、液温50℃の水溶液に3分間浸漬してアルカリ脱脂し、水洗し、次にペルオキソ二硫酸アンモニウムが100g/L、液温40℃の水溶液に浸漬して表面をソフトエッチングし、水洗し、亜塩素酸ナトリウムが30g/L、リン酸三ナトリウム12水塩が30g/L、NaOHが20g/L、液温が85℃の酸化銅処理液に2分間浸漬して銅表面に酸化処理を行い酸化銅皮膜を形成した。次に、還元剤としてジメチルアミンボラン4g/L(pH:12.5)に、液温40℃で150秒浸漬、還元し、内層板を得た。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0024】
比較例2
銅張り積層板(日立化成工業株式会社製商品名:MCL−E−67,銅箔厚み35μm)を、硫酸90g/L、過酸化水素80g/L、塩化ナトリウム0.2g/L、ベンゾトリアゾール5g/Lを含む粗化処理液(エッチング液)に浸漬させて、基板の銅箔表面を粗化し、内層板を得た。今回の処理では重量法で1.5μmの粗化量の内層板が得られた。引き続き,上記内層板を厚さ35μmの外層用銅箔とガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製商品名:GEA−67N)に重ね合せて、3MPa,175℃,90分間加熱加圧し積層一体化して多層板を作製した。
【0025】
上記多層板及び内層板について、取扱い性(錆び易さ)、積層成型時の皮膜変形、内層ピール強度及びはんだ耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
<評価方法>
(1)取扱い性(錆び易さ)
内層銅表面を処理後、24時間放置し、その処理表面を目視観察した。結果を,〇:異常なし,△:部分的に錆発生,×:全面に錆発生で評価した。
【0028】
(2)積層成型時の皮膜変形
外層銅箔を全面エッチング除去後、多層板状態でプリプレグ層を透過させて内層処理面の皮膜の変形を色相変化で目視観察した。結果を、〇:異常なし,△:色相変化が部分的に発生,×:全面に色相変化(注:皮膜変形すると可視光線の反射が変わり,色相が変化)で評価した。
【0029】
(3)内層ピール強度
内層銅とプリプレグとの密着強度を引き剥がし試験により求めた(引き剥がし幅:10mm、引き剥がし速度:50mm/分)。
【0030】
(4)はんだ耐熱性
多層板を260℃のはんだ槽に10秒浸漬し,外層銅箔を全面エッチング除去後、内層銅処理面−プリプレグ界面部分の異常を目視観察した。結果を、〇:異常なし,△:ミーズリング発生,×:ふくれ発生で評価した。
【0031】
表1に示したように、本発明の貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させて得られた多層板は、錆や処理面の皮膜変形がなく、また、プリプレグとの密着性に優れる。これに対し、比較例1の酸化、還元した処理では、錆の発生、皮膜の変形が見られ、プリプレグとの密着性に少し劣る。比較例2の粗化処理では、錆の発生が見られ、内層ピール強度とはんだ耐熱性に劣る。
【0032】
【発明の効果】
本発明法を用いることで、製造時の取扱が容易で,積層接着時の被膜変形や錆の発生がなく、内層銅とプリプレグとの密着性及びはんだ耐熱性に優れた多層プリント配線板を容易に得ることができる。
Claims (4)
- 回路を形成した絶縁基板上の内層回路に表面処理を施し、プリプレグを重ね合せて積層接着する多層プリント配線板の製造方法において,該表面処理が貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させる工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
- 貴金属イオンがパラジウムイオンであり,酸性処理液が塩酸酸性処理液であることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 貴金属イオンと銅イオンを含む酸性処理液に内層回路の金属箔面を接触させて表面処理した後,シランカップリング剤を塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法によって得られる多層プリント配線板。
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JP2003049081A JP2004259937A (ja) | 2003-02-26 | 2003-02-26 | 多層プリント配線板の製造方法及びそれにより得られる多層プリント配線板 |
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JP2008088542A (ja) * | 2006-09-06 | 2008-04-17 | Hitachi Chem Co Ltd | 銅の表面処理方法 |
-
2003
- 2003-02-26 JP JP2003049081A patent/JP2004259937A/ja active Pending
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