JP2000309887A - クロメート系防錆膜の除去方法および配線基板の製造方法 - Google Patents

クロメート系防錆膜の除去方法および配線基板の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 クロム金属層および酸化クロム層からなる防
錆膜で被覆された銅箔あるいは銅板に、有機絶縁層を形
成した回路基板の有機絶縁層を部分的に除去して、銅箔
あるいは銅板の銅金属を露出させる場合に、該防錆膜を
簡単に除去しうる方法を提供する。 【解決手段】 有機絶縁層を除去した後、塩素イオンを
含んだ溶液あるいはガス中に、回路基板を浸漬し酸化ク
ロム層を少なくともミクロ的に溶解させ、クロム金属
層、クロム合金層を少なくともミクロ的に露出させた後
に、アルカリ性過マンガン酸溶液に浸漬させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として金属板に
形成されたクロメート系防錆膜の除去工程を経て回路材
料と金属板を電気的に接続したり金属板に金メッキを行
うなどのプリント回路基板用、特に半導体回路基板用の
配線基板の製造を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】電子回路が搭載される電子機器の軽薄短
小化やその動作速度の高速化に伴って、電子回路自体の
高密度実装化や高速化が進んでいる。高密度実装、高速
動作を行った場合、一般には消費電力が増加して電子回
路の発熱量が増すことから、これら高速動作、高密度実
装には放熱性を考慮した構造が必用である。近年、放熱
性が良好である金属板を用いた金属ベース回路基板や金
属ベース半導体基板が広く用いられてきている。これら
の回路基板や半導体基板は加工出発点の基本構成として
は少なくとも金属板と有機絶縁層から構成される。それ
らの界面接着性は基本的に環境信頼性上、重要であり、
有機絶縁層に接合する金属板の表面処理は接着信頼性に
取り極めて重要であり種々の方法が提案され、使用され
ている。
【0003】また、金属基板、有機絶縁層、導電性回路
材料から構成される金属ベース回路基板、金属ベース半
導体基板は回路の信号伝送上、金属板を電気的グランド
として用いることは極めて有用であり重要な方法である
ことも知られている。
【0004】この金属板をグランドとして用いるために
は導電性回路材料と金属板とを電気的に接合しなければ
ならないが、その一般的な方法としては種々提案されて
いる。例を上げると、次のような方法である。 1)金属板に有機絶縁材料を形成した基板の有機材料の
一部に穴をあけ、金属板を露出させた後、金属メッキを
全面に形成し有機絶縁層に新たに形成した金属層と基板
の金属を電気的に接続する方法。 2)金属基板、有機絶縁層、導電性回路材料からなるプ
リント回路基板の回路材料上からドリルなどの機械的方
法で絶縁層、金属板を貫通させた孔をあけ、その後金属
メッキ、導電性ペーストなどの方法で回路材料と金属板
を電気的に接続する方法。 3)前記プリント回路基板の回路材料の一部を円などの
パターン状に除去し、その後、回路材料をレジストにし
て露出した有機絶縁層部分のみを液体エッチング材料、
プラズマガスあるいはレーザーで除去して金属板表面を
露出させる。その後、金属メッキ、半田ペーストあるい
は導電性ペーストで回路材料と金属板表面を電気的に接
続する方法。
【0005】この中で、1)、3)の方法は近年の回路
加工にとり重要であり、この方法では有機絶縁層を部分
的に除去すると金属板の表面処理層が露出する。表面処
理層が電気的抵抗が大きければ、その層を除去する必要
がある。前記の金属板と有機絶縁層との接着性は特開平
8−125295号で開示されているように金属板をク
ロメート処理(JIS−Z−0103で広義に表現され
ている)した場合が優れている。このクロメート処理の
中でも、クロムを含む金属層及び酸化クロム層からなる
クロメート系防錆膜が特に優れている。
【0006】しかしながら、このクロメート系防錆膜は
電気抵抗が大きいため電気的接合のためには除去しなけ
ればならない。このクロメート系防錆膜は耐食性に優れ
ているために、砥粒を衝突させたり、研磨したりするな
どの物理的除去以外には、その除去は困難であった。
【0007】一方、電子回路の進展に伴って回路材料と
金属板を電気的に繋ぐパターンが小さく、直径0.5m
m以下、特に0.2mm以下のような場合には、前記の
物理的手段では防錆膜の除去が困難である。直径0.5
mmより大きい場合でも有機材料の壁面付近の防錆膜の
除去は厳密には困難である。また、その物理的除去を強
行した場合、回路材料の傷や、反りの発生等を引きおこ
し易いので、近年の微細な加工にとり好ましい結果が得
られにくい。他方、片面をクロメート系防錆膜で表面処
理された金属板と、該防錆膜上に形成された有機絶縁層
からなる基板の金属板をエッチングし、表面処理されて
いない金属板側から円形などのパターンを形成すると、
該絶縁層上にクロメート層が露出する。このクロメート
層は特開平10−126039号などに開示されている
ように、1規定以上の濃度で35℃以上の温度の塩酸水
溶液で除去することができる。しかし、この方法では本
課題の微細なパターンの場合、有機絶縁層を除去して露
出した金属板上のクロメート層の除去はできないのであ
る。以上のようにクロム金属層および酸化クロム層から
なるクロメート系防錆処理を施した金属板は、有機絶縁
材料との接着性に優れているが、回路材料と金属板を電
気的に繋ぐ場合には、クロメート系防錆膜を除去する必
要があり、その耐久性が良いため除去が困難である。電
気的に接続するパターンが微細で、直径0.5mm以
下、特に0.2mm以下のような場合には特に困難であ
った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】有機絶縁材料と金属板
との接着性を顕著に向上させるクロメート系防錆膜処理
の利点を生かしながら、有機絶縁層を除去して露出した
クロメート系防錆膜を効率よく、完全に除去すること
は、金属ベース回路基板や金属ベース半導体基板にとり
極めて有用である。本発明の目的は、このクロメート系
防錆膜を実用的な手段で完全に除去する方法、さらにこ
の方法を用いて信頼性の高い配線基板の製造方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、有機絶縁層を除
去して露出したクロムを含む金属層と酸化クロム層から
なるクロメート系防錆膜をハロゲンイオンを含んだ溶液
あるいはガス中に浸漬した後、アルカリ性過マンガン酸
溶液に浸漬することによって容易に除去でき、金属板の
素材の金属を露出させる事ができる事を見いだした。
【0010】すなわち本発明は、クロムを含む金属層お
よび酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜で被覆さ
れた金属板に有機絶縁層を形成した基板の有機絶縁層を
部分的に除去した後、金属板の金属を露出させるに際し
て、該有機絶縁層を除去した部分に露出した該防錆膜を
ハロゲンイオンを含んだ溶液あるいはガス中に曝した
後、アルカリ性過マンガン酸溶液に曝すことを特徴とす
る基板のクロメート系防錆膜の除去方法である。
【0011】また本発明は、クロムを含む金属層および
酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜で被覆された
金属板に有機絶縁層と導電性回路材料を形成した配線基
板の導電性材料と有機絶縁層を部分的に除去した後、金
属板の金属を露出させるに際して、該有機絶縁層を除去
した部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオンを含んだ
溶液あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過マンガン
酸溶液に曝すことを特徴とする配線基板のクロメート系
防錆膜の除去方法である。
【0012】さらに本発明は、表面にクロムを含む金属
層および酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜が被
覆された金属板にさらに有機絶縁層を形成してなる基板
を加工して得られる配線基板の製造方法において、前記
有機絶縁層を部分的に除去した後、金属板の金属を露出
させるに際して、該有機絶縁層を除去した部分に露出し
た該防錆膜をハロゲンイオンを含んだ溶液あるいはガス
中に曝した後、アルカリ性過マンガン酸溶液に曝して該
部分の防錆膜を除去し、その後金属メッキを行い、有機
絶縁層及び露出した金属に金属メッキ層を形成すること
により、有機絶縁層に新たに形成された金属メッキ層と
基板の金属板を電気的に結合することを特徴とする配線
基板の製造方法である。
【0013】また本発明は、表面にクロムを含む金属層
および酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜が被覆
された金属板に、さらに有機絶縁層と導電性材料を形成
してなる基板を加工して得られる配線基板の製造方法に
おいて、前記導電性材料と有機絶縁層を部分的に除去し
た後、金属板の金属を露出させるに際して、該有機絶縁
層を除去した部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオン
を含んだ溶液あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過
マンガン酸溶液に曝して該部分の防錆膜を除去し、その
後さらに金属メッキを行い、導電性材料、有機絶縁層、
及び露出した金属に金属メッキ層を形成することによ
り、導電性材料と基板の金属板を電気的に結合すること
を特徴とする配線基板の製造方法である。
【0014】また本発明は、表面にクロムを含む金属層
および酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜が被覆
された金属板に、さらに有機絶縁層と導電性材料を形成
してなる基板を加工して得られる配線基板の製造方法に
おいて、前記導電性材料と有機絶縁層を部分的に除去し
た後、金属板の金属を露出させるに際して、該有機絶縁
層を除去した部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオン
を含んだ溶液あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過
マンガン酸溶液に曝して該部分の防錆膜を除去し、さら
に導電性材料と露出した金属とが導電性ペーストあるい
は半田ペーストを用いて電気的に結合されたことを特徴
とする配線基板の製造方法である。
【0015】これらの発明においてクロムを含む金属層
および酸化クロム層からなるクロメート系防錆膜の酸化
クロム層が鱗片状をした結晶であり、1片の大きさが
0.05μm以上、1μm以下であり、外観上黒色をし
ていることが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明のクロメート系防錆膜
の除去方法と応用について説明する。発明の概要は次の
通りである。
【0017】クロムを含む金属層および酸化クロム層か
らなるクロメート系防錆膜(以下クロメート系防錆膜と
する)は広義のクロメート処理である。このクロメート
処理はJIS−Z−0103に規定されているクロム酸
または重クロム酸塩を主成分とする溶液で金属表面を処
理し防錆皮膜を生成させる方法をいう。ただし、該防錆
膜にはクロム合金層が含まれていてもよい。すなわちク
ロムを含む金属層は、クロム金属層または銅クロム合金
のようなクロム合金である。
【0018】本発明のクロメート層の厚みは特に限定す
るものでは無いが、通常0.05μm以上、3μm以下
が好ましい。これが薄薄すぎると処理ムラが大きくなっ
たり、接着力が低下する。また、厚くすぎるとクロメー
ト層の除去速度が遅くなり実用的でなくなる。
【0019】また、本発明者はクロメート系防錆膜の中
でも、酸化クロム層が鱗片状をした結晶であり、1片の
大きさが0.05μm以上、1μm以下、より好ましく
は0.1μm以上0.4μm以下であり、外観上黒色を
しているクロメート系防錆膜が特に接着性に優れかつ除
去する際の除去性に優れている事を見いだした。
【0020】クロメート系防錆膜で処理された銅板など
の金属板に有機絶縁層を形成した基板の有機絶縁層を、
レーザー、プラズマガスあるいは液体エッチング液(有
機絶縁層がポリイミドで有ればヒドラジン系のアルカリ
性エッチング液などがその例である)で部分的に除去す
ると、クロメート系防錆膜が露出してくる。また、クロ
メート系防錆膜で処理された銅板などの金属板に、有機
絶縁層、銅箔などの導電性回路材料を積層したプリント
回路基板の回路材料の一部を除去して、回路材料をレジ
ストにして、有機絶縁層を同様にしてレーザー、プラズ
マガスあるいは液体エッチング液で部分的に除去すると
クロメート系防錆膜が露出してくる。次にこれらの基板
をハロゲンイオンを含んだ溶液あるいはガス中に浸漬す
ると、クロメート系防錆膜の酸化クロム層が部分的に除
去される。この際に酸化クロム層を全面的に除去しない
ことが好ましい。次にこれらの基板を加熱したアルカリ
性過マンガン酸溶液に浸漬することによってクロム金属
あるいはクロム合金層が効率良く除去されるのである。
【0021】以下に詳細を記す。本発明の配線基板は、
片面あるいは両面をクロメート系防錆膜を被覆した金属
板の片面あるいは両面に有機絶縁層を形成したものや、
または片面あるいは両面をクロメート系防錆膜で処理し
た金属板の片面あるいは両面に有機絶縁材料と導電性材
料を形成したものをいう。有機絶縁層の積層にはシート
状材料の積層やいわゆるビルドアップなどように塗布す
る方法が採られる。導電性材料の積層にはシート状導電
性材料の積層、金属メッキ、あるいは導電性材料の塗布
などの方法が採られるが、方法は特に規定するものでは
ない。
【0022】金属板の金属の種類は目的とする熱伝導性
から考えて銅、銅系リードフレーム材が特に好適である
が、洋白や真鍮などの銅合金、アルミニウム、鉄、SU
S等も用いる事ができる。有機絶縁層は回路基板の絶縁
層として耐えれば特に規定するものではない。好適には
熱可塑性ポリイミドを接着層としたポリイミド樹脂、ポ
リアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、感光性エポキシ樹
脂等がある。
【0023】導電性回路材料としては接着する側を粗化
した市販の銅箔、SUS箔、アルミニウム箔などの箔
材、有機絶縁層上にメッキにより形成積層したメッキ
銅、メッキニッケルなどのメッキ金属、及び導電性ペー
ストの塗布膜など導電性材料であれば特にこだわらな
い。導電性回路材料と金属板の熱膨張率差は、10pp
m以内、好ましくは5ppm以内で有ることが形状の安
定性から好ましい。
【0024】有機絶縁層を除去して露出したクロメート
系防錆膜の除去は、露出したクロメート系防錆膜を含む
基板あるいは回路基板をハロゲンイオンを含んだ溶液、
あるいガス中に浸漬して、露出した酸化クロム層を部分
的に除去する。ハロゲンイオンを含んだガスとしては、
フッ化水素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガスが好まし
い。またハロゲンイオンを含んだ溶液としては、フッ化
水素、塩化水素、臭化水素のそれぞれの水溶液や、塩素
酸液、次亜塩素酸液、塩化鉄や塩化銅の水溶液が好まし
い。なかでも有効塩素イオンの多い塩化水素ガスまたは
塩酸が酸化クロム層の部分的除去の速度が速くさらに好
ましい。
【0025】好ましい塩素イオン濃度は水溶液で3%以
上、36%以下であり、好ましい液の温度は15℃以
上、50℃以下である。気中濃度は水溶液濃度が15%
以上、36%以下の場合、液温が20℃以上、60℃以
下で平衡状態のガス中濃度が好適に使用される。処理時
間として、酸化クロム層が部分的に除去され薄いクロム
金属層あるいはクロム合金層が部分的に露出し、下地の
金属色(例えば銅であればピンク色)が現れるような時
間が、次の過マンガン酸溶液での除去が促進されるの
で、精密な回路加工上好ましい。その時間は塩素イオン
濃度、温度に依存する。
【0026】クロメート系防錆膜の中でも、酸化クロム
層が鱗片状をした結晶であり、1片の大きさが0.05
μm以上、1μm以下、より好ましくは0.1μm以
上、0.4μm以下である。外観上黒色をしているクロ
メート系防錆膜の場合は微小斑点状に酸化クロム層が除
去され、全面的に黒色であった面が微小部分的に薄いク
ロム金属層あるいはクロム合金層が部分的に露出し、下
地の金属色(例えば銅であればピンク色)が現れる状態
が次の過マンガン酸溶液での除去性など回路加工上優れ
ている。酸化クロム層の除去が不十分で下地の金属色が
微視的にも見えない状態ではアルカリ性過マンガン酸溶
液で処理してもクロメート防錆膜は実用的には除去でき
ない。
【0027】一方、有機絶縁層を除去した部分の酸化ク
ロム層を全て除去するまでハロゲンイオンで処理する
と、処理液あるいは処理ガスが有機絶縁層と金属板の間
のクロメート防錆膜を一部浸食する傾向にあり、さら
に、アルカリ性過マンガン酸溶液でのクロム金属層ある
いはクロム合金層の除去の際にも有機絶縁層と金属板の
間のクロメート防錆膜をより大きく浸食する。
【0028】酸化クロム層を部分的に除去した後、これ
らの基板を加熱したアルカリ性過マンガン酸溶液に浸漬
することによって、クロム金属またはクロム合金層が効
率良く除去され金属板が露出する。アルカリ性過マンガ
ン酸溶液の条件としては特にこだわらないが、例として
は過マンガン酸カリの濃度を20g/l以上、75g/
l以下、カセイソダーの濃度を20g/l以上、50g
/l以下の様な水溶液で、温度が20〜90℃、より好
ましくは50〜85℃の液条件が加工効率上好ましい。
この処理で、完全にクロム金属層あるいはクロム合金層
が除去される。その後、水洗、酸による中和、水洗をす
る事によってメッキなどの次工程に進めることができ
る。
【0029】以上のようにして、金属板の表面を接着性
に優れたクロメート防錆膜で処理し、その上を有機絶縁
層で被覆した基板あるいは有機絶縁層と導電性回路材料
を積層した基板において部分的に有機絶縁層を除去し、
その部分のクロメート防錆膜を除去した配線基板は下記
の様に応用する事ができる。 1)基板に金属メッキを行い、有機絶縁層、及び露出し
た金属に金属メッキ層を形成することにより、有機絶縁
層に新たに形成された金属メッキ層と金属板が電気的に
結合でき、いわゆる2層プリント回路基板や3層プリン
ト回路基板が製造できる。 2)回路基板に金属メッキを行い、導電性回路材料、有
機絶縁層、および露出した金属に金属メッキを形成する
ことにより、導電性回路材料と金属板が電気的に結合さ
れ、いわゆる2層プリント回路基板や3層プリント回路
基板が製造できる。 3)回路基板の有機絶縁層を除去した穴に市販の銀ペー
ストや銅ペーストなどの導電性ペーストを充填、硬化さ
せる、あるいは半田ペーストを充填、溶融させることで
導電性回路材料と金属板とを電気的に結合させ、2層プ
リント回路基板や3層プリント回路基板を製造できる。 これらの1)乃至3)で形成された2層プリント回路基
板は有機絶縁層に新たに形成された金属層あるいは導電
性回路材料を常法に従って回路を形成し信号層とし、金
属板を電気的グランド層にすると電位が安定した優れた
2層プリント配線板が形成できる。
【0030】この2層プリント配線板は有機絶縁層と金
属板の接着信頼性に優れ、電気的グランドの電位が安定
しているために半導体用基板として優れている。特に有
機絶縁層が電気的特性に優れた耐熱性熱可塑性樹脂であ
る場合には半導体用基板として好適である。この耐熱性
熱可塑性樹脂の中でも接着層に熱可塑性ポリイミド、ポ
リアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを用いたポリ
イミド系樹脂である場合には特に誘電特性、絶縁特性な
どの電気的特性、耐熱性、曲げ絞り加工性などに優れ半
導体用基板として好適である。以下に実施例に基づき具
体的に説明する。
【0031】
【実施例】(実施例1)厚さ0.4mmの銅板(JIS
C−1220)の片面にクロメート防錆膜を形成し
た。これは図1に断面を示すように、ベース銅板1と酸
化クロム層3の間には金属クロム層あるいは金属銅クロ
ム合金層である金属層2が50nm以下の厚さで形成さ
れていた。酸化クロム層は鱗片状をした結晶であり、1
片の大きさは平均的には0.3μmであった。この酸化
クロム層は外観的に黒色をしていた。この表面処理した
基板は三菱伸銅(株)からプラメイトの商品名で市販さ
れている。このクロメート防錆膜側に絶縁層4としてポ
リエーテルイミドの25μm厚みのフィルム(三菱樹脂
(株)のスペリオ)、銅箔5として18μm厚みの市販
電解銅箔を積層し、真空プレスを用いて260℃、50
kgf/cm2 で60分間圧締して銅ベースの銅張り積
層板を得た。図1に断面の概念図を記した。図の中の寸
法は実サイズを表していない、以降の図も同様である。
この銅ベース銅張り積層板にエッチングレジストを両面
に形成し、常法に従って露光、現像、エッチングを行
い、銅箔の所定の位置に0.2mmΦの銅箔が除去され
た部分6を形成し、ポリエーテルイミド層を露出させ
た。図2に断面の概念図を示した。
【0032】次に、図3の断面の概念図に示すように、
NF3 ガスのプラズマ処理によって露出したポリエーテ
ルイミド層からなる絶縁層4を除去し、絶縁層が除去さ
れた部分7には黒色のクロメート防錆膜層を露出させ
た。穴の側面はポリエーテルイミドが露出している。
【0033】次に、塩酸濃度10%の塩化第二鉄水溶液
を約40℃にし、その中に防錆膜層を露出させた積層板
を約90秒間浸漬したところ、黒色のクロメート防錆膜
の一部が除去され、酸化クロム層が部分的に除去された
部分8には微小な面積の銅色をした面が黒色の中に多数
露出した。図4に断面の概念図を示した。
【0034】次に、約5%の過マンガン酸カリと約4%
の苛性ソーダを主成分とする水溶液を約80℃にし、そ
の中に防錆膜の一部が除去された基板を約30秒間浸漬
し、水洗後観察した。黒色の防錆膜が完全に除去された
部分9は銅金属の色をしていた。また、ポリエーテルイ
ミド層の下の黒色防錆膜は全く変化していなかった。概
念図を図5に示した。また、銅金属色をした面をX線マ
イクロアナライザーで観察したところクロムは全く検出
されなかった。
【0035】次に、常法に則って無電解銅メッキおよび
電解銅メッキを銅箔、銅板、露出したポリエーテルイミ
ドの上に行い、銅箔と銅板を電気的に結合した。(この
結合部分は通常ビアホールと呼ばれているので、以降、
この結合部分をビアホール10で表す。) 次に、図6にその断面を示すように、銅メッキ層11が
形成された銅箔側をパターン加工し、ビアホール10の
周囲をビアホールの中心から0.4mmΦの部分の銅箔
を残して他の銅箔面を除去した。
【0036】このパターンを持った基板のビアホール部
に0.76mmΦの半田ボールを載せ、加熱し、ハンダ
ボールをビアホール部の上に固定した。その後半田ボー
ルを垂直に引き上げたが、半田が破壊して剥がれたり、
ポリエーテルイミド上の銅箔だけが半田と一緒に剥がれ
たが銅板の上の銅メッキは剥がれず半田が破壊した。こ
のように、銅メッキと銅板の結合は強固であった。次
に、このパターン加工した基板をヒドラジン水和物と苛
性カリの混合溶液に浸漬しポリエーテルイミドを溶解除
去した。このパターン部分をピンセットで摘み引き上げ
たところ銅箔が材破し、銅メッキと銅板は接合したまま
であった。また、ビアホールの銅メッキと銅板の接合度
合いを断面観察した。方法は断面を精密研磨した後、5
000倍でSEM観察した。銅メッキと銅板は完全に一
体化しており、境界は見られなかった。
【0037】(比較例1)実施例1の加工工程で概念
図、図3のようにクロメート防錆膜を露出させる段階ま
でを、実施例1と同様に行った。次に、20%濃度の塩
酸水溶液を約50℃にし、その中に防錆膜層を露出させ
た積層板を約5分間浸漬したところ、黒色のクロメート
防錆膜の黒色の層が完全に除去され、ややくすんだ銅色
の面が露出した。この際図7に示すように、ポリエーテ
ルイミドの下の防錆膜が一部浸食されてポリエーテルイ
ミドのオーバーハング12が生じていた。ややくすんだ
銅色の面をX線マイクロアナライザーで検査したところ
クロムが検出された。次に、常法に則って無電解銅メッ
キおよび電解銅メッキを銅箔、銅板、露出したポリエー
テルイミドの上に行い、ビアホールを形成した。次に、
実施例1と同様に銅メッキされた銅箔側をパターン加工
し、ビアホールの周囲をビアホールの中心から0.4m
mΦの部分の銅箔を残して他の銅箔面を除去した。
【0038】このパターンを持った基板のビアホール部
に0.76mmΦの半田ボールを載せ、加熱しハンダボ
ールをビアホール部の上に固定した。その後半田ボール
を垂直に引き上げた所、半田ボールがビアホール部の銅
パターンと一緒に剥離した。
【0039】次に、このパターン加工した基板をヒドラ
ジン水和物と苛性カリの混合溶液に浸漬しポリエーテル
イミドを溶解除去した。このパターン部分をピンセット
で摘み引き上げたところビアホール部の銅箔が銅板から
容易に剥離した。
【0040】(比較例2)実施例1の加工工程で概念
図、図3のようにクロメート防錆膜を露出させる段階ま
でを、実施例1と同様に行った。次に、約5%の過マン
ガン酸カリと約4%の苛性ソーダを主成分とする水溶液
を約80℃にし、その中に防錆膜の一部を露出させた基
板を約5分間浸漬した。水洗後観察すると、黒色の防錆
膜がほとんど除去されず、銅色をした面は露出されなか
った。
【0041】(実施例2)厚さ0.5mmの銅板(JI
S C−1020)の片面にクロメート防錆膜を形成し
た。銅板と酸化クロム層の間には金属クロム層あるいは
金属銅クロム合金層が50nm以下の厚さで形成されて
いた。酸化クロム層は鱗片状をした結晶であり、1片の
大きさは平均的には0.2μmであった。この酸化クロ
ム層は外観的に黒色をしていた。この表面処理した基板
のクロメート防錆膜側にエポキシ樹脂を塗布、乾燥、硬
化させて50μmの均一な厚みの絶縁層を形成した。次
に、所定の場所を炭酸ガスレーザーを用いてエポキシ樹
脂を0.3mmΦの円形に除去した。その結果、エポキ
シ樹脂の残さが若干残ったが黒色の防錆膜が露出した。
この基板を、約6%の過マンガン酸カリと約4%の苛性
ソーダを主成分とする約80℃の水溶液に浸漬してエポ
キシ樹脂の残さを除去した。次に、20%濃度の塩酸水
溶液を約50℃にし、その中に防錆膜層を露出させた積
層板を約30秒間浸漬したところ、黒色のクロメート防
錆膜の一部が除去され微小な面積の銅色をした面が黒色
の中に多数露出した。
【0042】次に、約5.5%の過マンガン酸カリと約
5%の苛性ソーダを主成分とする水溶液を約80℃に
し、その中に防錆膜の一部が除去された基板を約20秒
間浸漬した。水洗後観察すると、黒色の防錆膜が完全に
除去され、銅金属の色をしていた。また、エポキシ樹脂
層の下の黒色防錆膜は全く変化していなかった。また、
銅金属色をした面をX線マイクロアナライザーで観察し
たところクロムは全く検出されなかった。
【0043】次に、常法に則って無電解銅メッキおよび
電解銅メッキをエポキシ樹脂層、露出した銅板上に行
い、そのメッキによりエポキシ樹脂上に形成した銅メッ
キと銅板がを電気的に結合され、前記のビアホールを形
成した。銅メッキの厚みは15μmであった。次に、エ
ポキシ樹脂上の銅メッキされた部分をパターン加工し、
ビアホールの周囲をビアホールの中心から0.45mm
Φの部分の銅箔を残して他の銅箔面を除去した。
【0044】このパターンを持った基板のビアホール部
に0.76mmΦの半田ボールを載せ、加熱しハンダボ
ールをビアホール部の上に固定した。その後半田ボール
を垂直に引き上げたが半田が破壊して剥がれたり、エポ
キシ樹脂上の銅箔だけが半田と一緒に剥がれたが銅板の
上の銅メッキは剥がれず半田が破壊した。このように、
銅メッキと銅板の結合は強固であった。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、有機絶縁材料と金属板
との接着性を顕著に向上させるクロメート系防錆膜処理
の利点を生かしながら、有機絶縁層を除去して露出した
クロメート系防錆膜を効率よく、完全に除去しうる。そ
の結果、金属板と金属めっき層の密着性が強固になり、
信頼性の高い配線基板が得られる。従って本発明は、金
属ベース回路基板や金属ベース半導体基板にとり極めて
有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】銅ベースの銅張り積層板の断面概念図
【図2】銅箔に約0.2mmΦの穴を形成した積層板の
断面概念図
【図3】所定の場所の絶縁層をエッチングした積層板の
断面概念図
【図4】所定の場所の酸化クロム層が部分的に除去され
た状態の断面概念図
【図5】所定の場所のクロメート防錆膜が全て除去され
た状態の断面概念図
【図6】ビアホールを形成し0.4mmΦの銅部分が残
された断面概念図
【図7】絶縁層下の酸化クロム層の一部が除去された状
態の断面概念図
【符号の説明】
1・・・・ベース銅板 2・・・・金属層 3・・・・酸化クロム層 4・・・・絶縁層 5・・・・銅箔 6・・・・銅箔が除去された部分 7・・・・絶縁層が除去された部分 8・・・・酸化クロム層が部分的に除去された部分 9・・・・クロメート防錆膜が全て除去された部分 10・・・・ビアホール 11・・・・銅メッキ層 12・・・・オーバーハング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H05K 3/38 H05K 3/38 B 3/44 3/44 Z

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムを含む金属層および酸化クロム層
    からなるクロメート系防錆膜で被覆された金属板に有機
    絶縁層を形成した基板の有機絶縁層を部分的に除去した
    後、金属板の金属を露出させるに際して、該有機絶縁層
    を除去した部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオンを
    含んだ溶液あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過マ
    ンガン酸溶液に曝すことを特徴とする基板のクロメート
    系防錆膜の除去方法。
  2. 【請求項2】 クロムを含む金属層および酸化クロム層
    からなるクロメート系防錆膜で被覆された金属板に有機
    絶縁層と導電性回路材料を形成した配線基板の導電性材
    料と有機絶縁層を部分的に除去した後、金属板の金属を
    露出させるに際して、該有機絶縁層を除去した部分に露
    出した該防錆膜をハロゲンイオンを含んだ溶液あるいは
    ガス中に曝した後、アルカリ性過マンガン酸溶液に曝す
    ことを特徴とする配線基板のクロメート系防錆膜の除去
    方法。
  3. 【請求項3】 表面にクロムを含む金属層および酸化ク
    ロム層からなるクロメート系防錆膜が被覆された金属板
    にさらに有機絶縁層を形成してなる基板を加工して得ら
    れる配線基板の製造方法において、前記有機絶縁層を部
    分的に除去した後、金属板の金属を露出させるに際し
    て、該有機絶縁層を除去した部分に露出した該防錆膜を
    ハロゲンイオンを含んだ溶液あるいはガス中に曝した
    後、アルカリ性過マンガン酸溶液に曝して該部分の防錆
    膜を除去し、その後金属メッキを行い、有機絶縁層及び
    露出した金属に金属メッキ層を形成することにより、有
    機絶縁層に新たに形成された金属メッキ層と基板の金属
    板を電気的に結合することを特徴とする配線基板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 表面にクロムを含む金属層および酸化ク
    ロム層からなるクロメート系防錆膜が被覆された金属板
    に、さらに有機絶縁層と導電性材料を形成してなる基板
    を加工して得られる配線基板の製造方法において、前記
    導電性材料と有機絶縁層を部分的に除去した後、金属板
    の金属を露出させるに際して、該有機絶縁層を除去した
    部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオンを含んだ溶液
    あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過マンガン酸溶
    液に曝して該部分の防錆膜を除去し、その後さらに金属
    メッキを行い、導電性材料、有機絶縁層、及び露出した
    金属に金属メッキ層を形成することにより、導電性材料
    と基板の金属板を電気的に結合することを特徴とする配
    線基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 表面にクロムを含む金属層および酸化ク
    ロム層からなるクロメート系防錆膜が被覆された金属板
    に、さらに有機絶縁層と導電性材料を形成してなる基板
    を加工して得られる配線基板の製造方法において、前記
    導電性材料と有機絶縁層を部分的に除去した後、金属板
    の金属を露出させるに際して、該有機絶縁層を除去した
    部分に露出した該防錆膜をハロゲンイオンを含んだ溶液
    あるいはガス中に曝した後、アルカリ性過マンガン酸溶
    液に曝して該部分の防錆膜を除去し、さらに導電性材料
    と露出した金属とが導電性ペーストあるいは半田ペース
    トを用いて電気的に結合されたことを特徴とする配線基
    板の製造方法。
  6. 【請求項6】 クロムを含む金属層および酸化クロム層
    からなるクロメート系防錆膜の酸化クロム層が鱗片状を
    した結晶であり、1片の大きさが0.05μm以上、1
    μm以下であり、外観上黒色をしていることを特徴とす
    る請求項3乃至5のいずれかに記載の配線基板の製造方
    法。
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