JP2004258179A - 投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置の製造方法、露光装置、露光方法、および光学系の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することのできる製造方法。
【解決手段】第1面(3)の像を第2面(7)上に投影する投影光学系(6)の製造方法。製品分割鏡筒内に光学部材を組み込む第1組込工程と、仮組分割鏡筒内に光学部材を組み込む第2組込工程と、製品分割鏡筒と仮組分割鏡筒とを用いて投影光学系を組み立てる組立工程と、組み立てられた投影光学系の収差を測定する収差測定工程と、測定された投影光学系の収差を補正するために仮組分割鏡筒内に収納された光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、調整工程を経た仮組分割鏡筒から光学部材を取り出して、対応する製品分割鏡筒に組み込む置換工程とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】第1面(3)の像を第2面(7)上に投影する投影光学系(6)の製造方法。製品分割鏡筒内に光学部材を組み込む第1組込工程と、仮組分割鏡筒内に光学部材を組み込む第2組込工程と、製品分割鏡筒と仮組分割鏡筒とを用いて投影光学系を組み立てる組立工程と、組み立てられた投影光学系の収差を測定する収差測定工程と、測定された投影光学系の収差を補正するために仮組分割鏡筒内に収納された光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、調整工程を経た仮組分割鏡筒から光学部材を取り出して、対応する製品分割鏡筒に組み込む置換工程とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置の製造方法、露光装置、露光方法、および光学系の製造方法に関する。本発明は、特に半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に用いられる投影光学系の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LSIの製造において、回路パターンを形成するリソグラフィー工程では紫外線を光源とする半導体露光装置が用いられている。この種の半導体露光装置にはマスク上のパターンをウェハ上のレジストに転写する投影光学系が組み込まれ、投影光学系には収差を極限まで低減することが求められている。LSIの集積度は3年で2倍の速度で増大しているが、露光装置(ひいては投影光学系)やレジストの解像力の向上により、LSIの高集積化の要請に合ったスピードで加工の微細化を実現している。
【0003】
ところが、近年、露光装置やレジストの解像性能の向上速度がLSIの微細化の速度よりも低いため、解像力の余裕がなくなりつつある。その結果、解像性能の限界に近い条件で、LSIのパターン形成がなされるようになっている。例えば、k1ファクターと呼ばれるパラメータは10年前には約0.8であったが、現在では約0.6であり、今後は約0.4を前提とした開発が進んでいる。このような状況においては、投影光学系の収差により回路パターンの線幅や形状がばらつき易い。したがって、回路の特性のばらつきを良好に抑え、ひいてはLSIの品質を良好に保つには、投影光学系の収差を一定範囲に抑えることが必須となっている。
【0004】
一般に、露光装置に搭載される投影光学系は20枚以上のレンズ(レンズ要素)から構成され、投影光学系の収差は光学設計の段階では所定の値以下に抑えられている。しかしながら、実際に作られる個々のレンズは、製造誤差により設計値からずれた特性を有する。例えば、個々のレンズを形成する光学材料(レンズ材料)として屈折率が均一な合成石英を入手しようとしても、実際に入手可能な光学材料には屈折率の均一性について限界があり、光学材料の屈折率ムラ(屈折率分布)が最終的に投影光学系の収差を劣化させる要因の1つとなる。
【0005】
また、レンズ表面の研磨工程では干渉計で面形状を随時計測しながら研磨を繰り返すが、投影光学系の工業生産を経済的に行うには、その収差にある程度影響を与えるような加工誤差を残さざるを得ない。すなわち、レンズの面形状の誤差も、投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。また、多数のレンズを用いて投影光学系を組み立てる際にも組立誤差が発生し、この組立誤差も投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。
【0006】
さらに、多数のレンズを用いて組み立てられた投影光学系の収差を小さく抑えるように光学調整する調整工程では、レンズを光軸に沿って移動させてレンズ間の間隔を変化させる間隔調整や、レンズを光軸に対して垂直にシフト(移動)させたりチルト(傾斜)させたりする偏芯調整により、投影光学系を最小の収差状態にする。また、投影光学系の収差をさらに低減するために、レンズを光軸廻りに回転させる回転調整によりレンズの回転非対称な誤差の影響を低減することも合わせて行われる。しかしながら、間隔調整や偏芯調整や回転調整においても、その設定(レンズの移動量、シフト量、チルト量、回転角度など)に誤差が残り、この設定誤差も投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。
【0007】
従来の投影光学系の製造方法では、1つまたは複数のレンズ(光学部材)を複数の分割鏡筒内にそれぞれ組み込み、これらの複数の分割鏡筒を用いて投影光学系を組み立てる。次いで、組み立てられた投影光学系を収差測定装置に設置して、投影光学系の残存収差を測定する。さらに、収差測定装置から取り外した投影光学系をレンズ調整装置に設置して、分割鏡筒単位でレンズ調整(間隔調整や偏芯調整や回転調整)を行うことにより投影光学系の残存収差を補正する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術では、投影光学系を収差測定装置に設置して残存収差を測定する収差測定工程と、収差測定装置から取り外した投影光学系をレンズ調整装置に設置して分割鏡筒単位でレンズ調整を行うレンズ調整工程とが、投影光学系の残存収差が所望の範囲に収まるまで、必要に応じて複数回繰り返される。この場合、収差測定装置から投影光学系を取り外してレンズ調整装置に設置する工程と、レンズ調整装置から投影光学系を取り外して投影光学系を収差測定装置に設置する工程との繰り返しに時間がかかり、投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができないという不都合があった。
【0009】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を備えた露光装置を効率的に且つ迅速に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像度で良好な露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、第1面の像を第2面上に投影する投影光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記投影光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記投影光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記投影光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする投影光学系の製造方法を提供する。
【0011】
第1形態の好ましい態様によれば、前記収差測定工程は、所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置して前記投影光学系の収差を補正し、前記調整工程は、前記所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置した状態で各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する。また、前記調整工程を経た前記投影光学系に残存する収差を補正するために少なくとも1つの光学部材の光学面を非球面形状に加工する非球面加工工程をさらに含むことが好ましい。この場合、前記少なくとも1つの光学部材は、球面状の光学面を有する球面レンズとして設計されていることが好ましい。
【0012】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記非球面加工工程は、第1の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程と、第2の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程とを含み、前記第1の光学部材および前記第2の光学部材は、前記第1の光学部材の光学面の有効径に対する前記第1面上の所定の1点からの光束が前記第1の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比と、前記第2の光学部材の光学面の有効径に対する前記所定の1点からの光束が前記第2の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比とが実質的に異なるように選定されることが好ましい。
【0013】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内に単体で収納される光学部材を含む。あるいは、前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内において最も第1面側に配置される光学部材を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の第2形態では、第1形態の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0015】
本発明の第3形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置の製造方法において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための前記投影光学系を第1形態の製造方法を用いて製造する製造工程と、
製造された前記投影光学系を前記露光装置に組み込む組込工程とを含むことを特徴とする露光装置の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第4形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための第1形態の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
【0017】
本発明の第5形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光方法において、
第1形態の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を介して、前記第1面に設定された前記マスクのパターンを前記第2面に設定された前記感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0018】
本発明の第6形態では、光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする光学系の製造方法を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる製造方法で製造された投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、図1において、投影光学系の光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。
【0020】
図1に示す露光装置は、照明光(露光光)を供給するための光源1として、たとえばKrFエキシマレーザー光源(波長248nm)やArFエキシマレーザー光源(波長193nm)を備えている。光源1から射出された光は、照明光学系2を介して、所定のパターンが形成されたマスク(レチクル)3を照明する。マスク3は、マスクホルダ4を介して、マスクステージ5上においてXY平面に平行に保持されている。また、マスクステージ5は、図示を省略した駆動系の作用により、マスク面(すなわちXY平面)に沿って移動可能であり、その位置座標はマスク干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0021】
マスク3に形成されたパターンからの光は、投影光学系6を介して、感光性基板であるウェハ7上にマスクパターン像を形成する。ウェハ7は、ウェハテーブル(ウェハホルダ)8を介して、ウェハステージ9上においてXY平面に平行に保持されている。また、ウェハステージ9は、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って移動可能であり、その位置座標はウェハ干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。こうして、投影光学系6の光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハ7を二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハ7の各露光領域にはマスク3のパターンが逐次露光される。
【0022】
図2は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法の基本工程を概略的に示すフローチャートである。図2を参照すると、本実施形態の製造方法は、投影光学系6を組み立てる組立工程S1と、組立工程S1で組み立てられた投影光学系6の収差を測定する収差測定工程S2と、収差測定工程S2で測定された投影光学系6の残存収差を補正するためのレンズ調整工程S3と、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6の残存収差を補正するために所定の光学面を非球面形状に加工する非球面加工工程S4と、非球面加工工程S4を経て投影光学系6を再び組み立てる再組立工程S5と、再組立工程S5で組み立てられた投影光学系6の収差を測定する第2収差測定工程S6と、第2収差測定工程S6で測定された投影光学系6の残存収差を補正するための第2レンズ調整工程S7と、第2レンズ調整工程S7を経た投影光学系6に微調整機構を取り付ける微調整機構取付工程8とを含んでいる。
【0023】
図3は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における組立工程S1から再組立工程S5までの工程を概略的に説明する図である。また、図4は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における再組立工程S5から微調整機構取付工程8までの工程を概略的に説明する図である。さらに、図5は、本実施形態の製造方法における組立工程S1の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【0024】
本実施形態の製造方法における組立工程S1では、各レンズを形成すべきブロック硝材(ブランクス)を製造した後、製造されたブロック硝材の屈折率の絶対値および屈折率分布を、たとえば図6に示す干渉計装置を用いて計測する(S11)。図6では、オイル101が充填された試料ケース102の中の所定位置に被検物体であるブロック硝材103を設置する。そして、制御系104に制御された干渉計ユニット105からの射出光が、フィゾーステージ106a上に支持されたフィゾーフラット(フィゾー平面)106に入射する。ここで、フィゾーフラット106で反射された光は参照光となり、干渉計ユニット105へ戻る。
【0025】
一方、フィゾーフラット106を透過した光は測定光となり、試料ケース102内の被検物体103に入射する。被検物体103を透過した光は、反射平面107によって反射され、被検物体103およびフィゾーフラット106を介して干渉計ユニット105へ戻る。こうして、干渉計ユニット105へ戻った参照光と測定光との位相ずれに基づいて、光学材料としての各ブロック硝材103の屈折率分布による波面収差が計測される。なお、屈折率均質性の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平8−5505号公報などを参照することができる。
【0026】
次いで、屈折率分布が計測されたブロック硝材から必要に応じて研削されたブロック硝材を用いて、投影光学系6を構成すべき各レンズを製造する。すなわち、周知の研磨工程にしたがって、設計値を目標として各レンズの表面を研磨加工する(S12)。研磨工程では、各レンズの面形状の誤差を干渉計で計測しながら研磨を繰り返し、各レンズの面形状を目標面形状に近づける。こうして、各レンズの面形状誤差が所定の範囲に入ると、各レンズの面形状の誤差を、たとえば図7に示すさらに精密な干渉計装置を用いて計測する(S13)。
【0027】
図7では、制御系111に制御された干渉計ユニット112からの射出光が、フィゾーステージ113a上に支持されたフィゾーレンズ113に入射する。ここで、フィゾーレンズ113の参照面(フィゾー面)で反射された光は参照光となり、干渉計ユニット112へ戻る。なお、図7では、フィゾーレンズ113を単レンズで示しているが、実際のフィゾーレンズは複数のレンズ(レンズ群)で構成されている。一方、フィゾーレンズ113を透過した光は測定光となり、被検レンズ114の被検光学面に入射する。
【0028】
被検レンズ114の被検光学面で反射された測定光は、フィゾーレンズ113を介して干渉計ユニット112へ戻る。こうして、干渉計ユニット112へ戻った参照光と測定光との位相ずれに基づいて、被検レンズ114の被検光学面の基準面に対する波面収差が、ひいては被検レンズ114の面形状の誤差が計測される。なお、レンズの面形状誤差の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平7−12535号、特開平7−113609号、特開平10−154657号公報などを参照することができる。
【0029】
次いで、各製品分割鏡筒に1つまたは複数のレンズ(一般には光学部材)を組み込み(S14)、各仮組分割鏡筒に1つまたは複数のレンズを組み込む(S15)。ここで、各製品分割鏡筒に組み込まれるのは、レンズ調整の対象となっていないレンズである。一方、各仮組分割鏡筒に組み込まれるのは、設計にしたがって予めレンズ調整の対象となっているレンズ(以下、「調整対象レンズ」という)、または調整対象レンズを含むレンズ群である。
【0030】
なお、仮組分割鏡筒は、レンズを光軸に沿って移動させてレンズ間の間隔を変化させる間隔調整や、レンズを光軸に対して垂直にシフト(移動)させたりチルト(傾斜)させたりする偏芯調整や、レンズを光軸廻りに回転させる回転調整を、各レンズ毎に(すなわちレンズ単位で)行う機構を内蔵した形態の分割鏡筒である。本実施形態に適用可能な仮組分割鏡筒として、たとえば特開2002−131605号公報に開示の鏡筒において、調整ワッシャ99および調整ボタン100によって駆動レバー85aおよび85bへ変位を与えるところを、マイクロメータによって駆動レバー85aおよび85bへ変位を与えるように変更したものを用いることができる。
【0031】
最後に、1つまたは複数のレンズが組み込まれた製品分割鏡筒と1つまたは複数のレンズが組み込まれた仮組分割鏡筒とを用いて投影光学系6を組み立てる(S16)。具体的には、図3に示すように、所定の組立装置10を用い、設計にしたがって1つまたは複数のレンズを各分割鏡筒に組み込み、1つまたは複数のレンズをそれぞれ収納した複数の分割鏡筒を組み立てることにより投影光学系6を得る。なお、図3では、製品分割鏡筒を矩形状の斜線部で示し、仮組分割鏡筒を矩形状の空白部で示している。また、各分割鏡筒へのレンズの組込みおよび複数の分割鏡筒の組立てに用いられる組立装置10に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0032】
図8は、本実施形態の製造方法における収差測定工程S2およびレンズ調整工程S3の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における収差測定工程S2では、図3に示すように、組立工程S1を経て組み立てられた投影光学系6を所定の収差測定装置11に設置して投影光学系6の波面収差を測定する(S21)。具体的には、収差測定装置11として、たとえば特開平10−38757号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を測定することができる。
【0033】
図9は、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するフィゾー干渉計方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。図9に示すように、露光光とほぼ同じ波長を有するレーザー光(たとえばArレーザー光の第2高調波)を、ハーフプリズム60およびフィゾーレンズ61のフィゾー面61aを介して、被検光学系としての投影光学系6に入射させる。このとき、フィゾー面61aで反射された光は、いわゆる参照光となり、フィゾーレンズ61およびハーフプリズム60を介して、CCDのような撮像素子62に達する。
【0034】
一方、フィゾー面61aを透過した光は、いわゆる測定光となり、投影光学系6を介して、反射球面63に入射する。反射球面63で反射された測定光は、投影光学系6、フィゾーレンズ61およびハーフプリズム60を介して、CCD62に達する。こうして、参照光と測定光との干渉に基づいて、投影光学系6に残存する波面収差が測定される。同様に、収差測定装置11として、たとえば特開平10−38758号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、超高圧水銀ランプ(たとえばi線)を使用する投影光学系の波面収差を測定することもできる。
【0035】
また、収差測定装置11として、たとえば特開2000−97616号公報に開示された、いわゆるPDI(Phase Diffraction Interferometer:位相回折干渉計)方式の波面収差測定機を用いて、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を測定することもできる。図10は、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。図10に示すように、光源1(図10では不図示)から射出されて照明光学系2を介した露光用照明光が、マスク設定位置に位置決めされた第1のピンホール71に入射する。
【0036】
第1のピンホール71を介して形成された球面波は、被検光学系としての投影光学系6を透過して、グレーティング(一次元回折格子)72に入射する。グレーティング72をそのまま透過した0次回折光は、マスク73に形成された第2のピンホール(不図示)に入射する。一方、グレーティング72で回折作用を受けて発生した1次回折光は、マスク73に形成された開口部(不図示)のほぼ中央に入射する。第2のピンホールを介した0次回折光および開口部を通過した1次回折光は、コリメータレンズ74を介して、CCDのような撮像素子75に達する。
【0037】
こうして、第2のピンホールを介して形成された球面波を参照波面とし、開口部を通過した1次回折光の波面を測定波面とし、参照波面と測定波面との干渉に基づいて投影光学系6に残存する波面収差が測定される。なお、収差測定工程S21では、仮組部材としてのパージカバー(不図示)を投影光学系6に取り付け、投影光学系6の光路の雰囲気を所望の状態に維持しつつ波面収差の測定を行う。また、従来技術では、投影光学系の波面収差を測定した後に、投影光学系を介して所定のパターン(たとえば理想格子)の像をウェハに転写し、その転写結果から投影光学系のディストーション(歪曲収差)を求めていた。しかしながら、本実施形態では、投影光学系6の波面収差の測定結果に基づいてディストーション成分を求め、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。
【0038】
次いで、収差測定工程S21で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっているか否かを判定する(S22)。判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていると判定した場合(図8中YESの場合)、非球面加工工程S4へ移行する。一方、判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていないと判定した場合(図8中NOの場合)、本実施形態の製造方法におけるレンズ調整工程S3として、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、各仮組分割鏡筒に組み込まれた調整対象レンズを内蔵機構により微動させて、上述の間隔調整や偏芯調整や回転調整によるレンズ調整をレンズ毎に(レンズ単位で)行う(S31)。
【0039】
こうして、間隔調整や偏芯調整や回転調整によりレンズ単位でレンズ調整された投影光学系6の波面収差を再び測定する(S21)。そして、収差測定工程S21で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっているか否かを再度判定する(S22)。判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていると判定した場合には、非球面加工工程S4へ移行する。しかしながら、判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S22においてYESの判定が得られるまで、レンズ調整工程S31および収差測定工程S21をさらに繰り返す。
【0040】
図11は、本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4、再組立工程S5、第2収差測定工程S6、および第2レンズ調整工程S7の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4では、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6に残存している波面収差を補正するのに適したレンズ、すなわち設計にしたがって予め非球面加工の対象となっている非球面加工対象レンズを分割鏡筒(製品分割鏡筒または仮組分割鏡筒)から取り出す(S41)。
【0041】
図12は、非球面形状に加工される光学面の位置と光学面の非球面化により効果的に補正される収差成分との関係を説明する図である。図12に示すように、マスク3上の物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2とが分離した位置を通過する光学部材e1の光学面を非球面化することにより、像面座標依存性の高い収差成分(ディストーション、像面湾曲等)を効果的に補正することができる。
【0042】
また、物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2とがほぼ全面を通過する光学部材e5の光学面を非球面化することにより、瞳座標依存性の高い収差成分(例えば球面収差、偏心コマ収差等)を効果的に補正することができる。さらに、物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2との重なり程度が中間的となる光学部材(例えば光学部材e2等)の光学面を非球面化することにより、像面座標依存性と瞳座標依存性とが同等に近い収差成分(例えばコマ収差等)を効果的に補正することができる。
【0043】
一般に、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6に残存する波面収差を良好に補正するには、少なくとも2つの非球面加工対象レンズの光学面を非球面形状に加工することが好ましい。この場合、様々な収差成分を効果的に補正することができるように、2つの非球面加工対象レンズは、第1の非球面加工対象レンズの光学面の有効径に対する、マスク3上の所定の1点からの光束が第1の非球面加工対象レンズの上記光学面を通過するときの光束径の比と、第2の非球面加工対象レンズの光学面の有効径に対する、上記所定の1点からの光束が第2の非球面加工対象レンズの上記光学面を通過するときの光束径の比とが実質的に異なるように選定されることが好ましい。
【0044】
また、非球面加工対象レンズを分割鏡筒内に単体で収納するように設計することにより、投影光学系の他の部分に悪影響を及ぼすことなく非球面加工対象レンズを取り出すことができる。あるいは、非球面加工対象レンズを含む複数のレンズが1つの分割鏡筒内に収納される場合には、非球面加工対象レンズが当該分割鏡筒内において最もマスク側に配置されるように設計することにより、投影光学系の他の部分に悪影響を及ぼすことなく非球面加工対象レンズを取り出すことができる。
【0045】
次いで、取り出した非球面加工対象レンズの光学面を所定の非球面形状に加工する(S42)。なお、加工工程S42に先立って、非球面加工対象レンズの光学面に形成すべき非球面形状は、上述の収差測定工程S21の最終測定結果に基づいて、たとえばツェルニケ多項式で表わされる非球面(一般には光軸に関して回転非対称な非球面)として算出される。以下、ツェルニケ多項式について基本的な事項を簡単に説明する。ツェルニケ多項式の表現では、座標系として極座標(ρ,θ)を用い、直交関数系としてツェルニケの円筒関数を用いる。すなわち、非球面形状W(ρ,θ)は、ツェルニケの円筒関数Zi(ρ,θ)を用いて、次の式(a)に示すように展開される。
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、Ciは、ツェルニケ多項式の各項の係数である。以下、ツェルニケ多項式の各項の関数系Zi(ρ,θ)のうち、第1項〜第36項にかかる関数Z1〜Z36を、次の表(1)に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
加工工程S42では、非球面加工前の光学面の面形状と非球面加工後の光学面の面形状との差(加工量)を指標として、非球面加工対象レンズの光学面を所望の非球面形状に加工する。したがって、設計において非球面加工対象レンズとして球面レンズを選択することにより、光学面が所望の非球面形状に加工されたことを確認し易くなり、ひいては非球面の加工精度を向上させることができる。なお、加工工程S42では、必ずしも非球面加工の対象となっているすべてのレンズに非球面加工を施すわけではなく、必要に応じて1つまたは複数の非球面加工対象レンズに非球面加工を施す。また、非球面加工対象レンズの一方の光学面に非球面加工を施すのが通常であるが、双方の光学面に非球面加工を施すこともできる。
【0050】
次いで、図3に示すように、本実施形態の製造方法における再組立工程S5では、各仮組分割鏡筒からレンズを取り出して、対応する製品分割鏡筒12にそれぞれ組み込み(S51)、各製品分割鏡筒から取り出した非球面加工対象レンズを元の製品分割鏡筒の元の位置へ戻す(S52)。なお、各仮組分割鏡筒からレンズを取り出して対応する製品分割鏡筒に組み込む置換工程S51では、非球面加工のために各仮組分割鏡筒から取り出された非球面加工対象レンズと、各仮組分割鏡筒から取り出されて非球面加工されなかったレンズとが、対応する製品分割鏡筒12にそれぞれ組み込まれる。
【0051】
さらに、図4に示すように、所定の組立装置10を用いて、複数の製品分割鏡筒を組み上げることにより投影光学系6を再度組み立てる(S53)。そして、本実施形態の製造方法における第2収差測定工程S6では、再度組み立てられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して波面収差を測定する(S61)。なお、収差測定工程S61では、製品部材としてのパージカバー(不図示)を投影光学系6に取り付け、投影光学系6の光路の雰囲気を所望の状態に維持しつつ波面収差の測定を行う。また、収差測定工程S61においても収差測定工程S21と同様に、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。そして、収差測定工程S61で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっているか否かを判定する(S62)。判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていると判定した場合(図11中YESの場合)、微調整機構取付工程S8へ移行する。
【0052】
一方、判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていないと判定した場合(図11中NOの場合)、本実施形態の製造方法における第2レンズ調整工程S7として、間隔調整や偏芯調整によるレンズ調整を行う(S71)。ここで、レンズ調整工程S71は、上述のレンズ調整工程S31と異なり、レンズの回転調整を含まないことが多い。これは、上述したように、加工工程S42において光学面が光軸に関して回転非対称な非球面形状に加工されるのが一般的であるからである。なお、この回転非対称な非球面形状に加工された光学面を持つレンズを回転調整しても良い。
【0053】
また、レンズ調整工程S71では、上述のレンズ調整工程S31と異なり、図4に示すように、収差測定装置11から取り外した投影光学系6をレンズ調整装置13に設置して分割鏡筒単位でレンズ調整を行う。なお、分割鏡筒単位でレンズ調整を行うレンズ調整装置13に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。次いで、レンズ調整工程S71を経て間隔調整や偏芯調整により光学調整された投影光学系6をレンズ調整装置13から取り外し、取り外した投影光学系6を収差測定装置11に設置して、投影光学系6の波面収差を再び測定する(S61)。
【0054】
そして、収差測定工程S61で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっているか否かを再度判定する(S62)。判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていると判定した場合には、微調整機構取付工程S8へ移行する。しかしながら、判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S62においてYESの判定が得られるまで、レンズ調整工程S71および収差測定工程S61をさらに繰り返す。
【0055】
図13は、本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8では、第2レンズ調整工程S7を経た投影光学系6に対して、図4に示すように、レンズ間の間隔を変化させる間隔調整やレンズを光軸に対してチルト(傾斜)させるチルト調整を行うための微調整機構14を取り付ける(S81)。なお、間隔調整やチルト調整を行う微調整機構14に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0056】
次いで、微調整機構14が取り付けられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して、投影光学系6の波面収差を測定する(S82)。収差測定工程S82においても収差測定工程S61および収差測定工程S21と同様に、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。最後に、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、収差測定工程S82で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲C内に収まるように、微調整機構14を用いてレンズ調整を行う(S83)。こうして、本実施形態にしたがう投影光学系6の製造が終了する。
【0057】
本実施形態では、マスク3のパターン像をウェハ(感光性基板)7上に形成するための投影光学系6を上述の製造方法を用いて製造し、製造された投影光学系6を所定の位置に組み込むことにより露光装置が得られる。なお、レンズ調整工程S83における許容範囲Cは、投影光学系6の波面収差に関する最終的な目標値としての許容範囲である。これに対して、上述の判定工程S22における許容範囲Aおよび判定工程S62における許容範囲Bは、非球面化工工程S4および微調整機構取付工程S8へそれぞれ移行するのに設定した中間的な許容範囲である。
【0058】
以上のように、本実施形態では、レンズ調整の対象となっていないレンズを通常の製品分割鏡筒に組み込み、調整対象レンズまたは調整対象レンズを含むレンズ群を、レンズ単位でレンズ調整を行う機構を内蔵した形態の仮組分割鏡筒に組み込む。そして、製品分割鏡筒と仮組分割鏡筒とを用いて組み立てられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して残存収差を測定した後に、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、各仮組分割鏡筒に組み込まれた調整対象レンズを内蔵機構により微動させて、間隔調整や偏芯調整や回転調整によるレンズ調整をレンズ単位で行う。
【0059】
このように、本実施形態では、レンズ調整工程と波面収差工程との繰り返しに際して収差測定装置とレンズ調整装置との間で投影光学系を設置し直す従来技術とは異なり、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態でレンズ調整工程と波面収差工程とを繰り返すので、投影光学系6の残存収差を非球面加工工程S4に必要な所望の範囲(収差測定装置のダイナミックレンジ)に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。また、本実施形態では、分割鏡筒単位でレンズ調整を行う従来技術とは異なり、仮組分割鏡筒の作用によりレンズ単位でレンズ調整を行うので、投影光学系6の残存収差を非球面加工工程S4に必要な所望の範囲に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
さらに、収差測定工程S21、収差測定工程S61および収差測定工程S82では、従来技術とは異なり、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略しているので、投影光学系6の残存収差を測定する時間を大幅に短縮することができる。こうして、本実施形態の製造方法では、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができる。
【0061】
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図14のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
先ず、図14のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0063】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0064】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図15のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図15において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0065】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0066】
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、KrFエキシマ レーザー光源またはArFエキシマ レーザー光源を用いる露光装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、所定の波長光を供給する他の適当な光源を用いる露光装置に本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系の製造方法に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な光学系の製造方法に本発明を適用することもできる。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による投影光学系の製造方法では、投影光学系を収差測定装置に設置した状態でレンズ調整工程と波面収差工程とを繰り返し、仮組分割鏡筒の作用によりレンズ単位でレンズ調整を行うので、投影光学系の残存収差を所望の範囲に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。その結果、本発明では、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができる。
【0069】
したがって、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を用いる露光装置および露光方法では、高解像で良好な露光を行うことができ、ひいては高解像で良好な露光条件のもとで良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる製造方法で製造された投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法の基本工程を概略的に示すフローチャートである。
【図3】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における組立工程S1から再組立工程S5までの工程を概略的に説明する図である。
【図4】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における再組立工程S5から微調整機構取付工程8までの工程を概略的に説明する図である。
【図5】本実施形態の製造方法における組立工程S1の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図6】各レンズを形成すべきブロック硝材の屈折率の絶対値および屈折率分布を測定する干渉計装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】各レンズの面形状誤差を測定する干渉計装置の構成を概略的に示す図である。
【図8】本実施形態の製造方法における収差測定工程S2およびレンズ調整工程S3の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図9】KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するフィゾー干渉計方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図10】ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図11】本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4、再組立工程S5、第2収差測定工程S6、および第2レンズ調整工程S7の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図12】非球面形状に加工される光学面の位置と光学面の非球面化により効果的に補正される収差成分との関係を説明する図である。
【図13】本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図14】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図15】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 光源
2 照明光学系
3 マスク(レチクル)
5 マスクステージ
6 投影光学系
7 ウェハ(感光性基板)
9 ウェハステージ
10 組立装置
11 収差測定装置
13 レンズ調整装置
14 微調整機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系の製造方法、投影光学系、露光装置の製造方法、露光装置、露光方法、および光学系の製造方法に関する。本発明は、特に半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に用いられる投影光学系の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LSIの製造において、回路パターンを形成するリソグラフィー工程では紫外線を光源とする半導体露光装置が用いられている。この種の半導体露光装置にはマスク上のパターンをウェハ上のレジストに転写する投影光学系が組み込まれ、投影光学系には収差を極限まで低減することが求められている。LSIの集積度は3年で2倍の速度で増大しているが、露光装置(ひいては投影光学系)やレジストの解像力の向上により、LSIの高集積化の要請に合ったスピードで加工の微細化を実現している。
【0003】
ところが、近年、露光装置やレジストの解像性能の向上速度がLSIの微細化の速度よりも低いため、解像力の余裕がなくなりつつある。その結果、解像性能の限界に近い条件で、LSIのパターン形成がなされるようになっている。例えば、k1ファクターと呼ばれるパラメータは10年前には約0.8であったが、現在では約0.6であり、今後は約0.4を前提とした開発が進んでいる。このような状況においては、投影光学系の収差により回路パターンの線幅や形状がばらつき易い。したがって、回路の特性のばらつきを良好に抑え、ひいてはLSIの品質を良好に保つには、投影光学系の収差を一定範囲に抑えることが必須となっている。
【0004】
一般に、露光装置に搭載される投影光学系は20枚以上のレンズ(レンズ要素)から構成され、投影光学系の収差は光学設計の段階では所定の値以下に抑えられている。しかしながら、実際に作られる個々のレンズは、製造誤差により設計値からずれた特性を有する。例えば、個々のレンズを形成する光学材料(レンズ材料)として屈折率が均一な合成石英を入手しようとしても、実際に入手可能な光学材料には屈折率の均一性について限界があり、光学材料の屈折率ムラ(屈折率分布)が最終的に投影光学系の収差を劣化させる要因の1つとなる。
【0005】
また、レンズ表面の研磨工程では干渉計で面形状を随時計測しながら研磨を繰り返すが、投影光学系の工業生産を経済的に行うには、その収差にある程度影響を与えるような加工誤差を残さざるを得ない。すなわち、レンズの面形状の誤差も、投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。また、多数のレンズを用いて投影光学系を組み立てる際にも組立誤差が発生し、この組立誤差も投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。
【0006】
さらに、多数のレンズを用いて組み立てられた投影光学系の収差を小さく抑えるように光学調整する調整工程では、レンズを光軸に沿って移動させてレンズ間の間隔を変化させる間隔調整や、レンズを光軸に対して垂直にシフト(移動)させたりチルト(傾斜)させたりする偏芯調整により、投影光学系を最小の収差状態にする。また、投影光学系の収差をさらに低減するために、レンズを光軸廻りに回転させる回転調整によりレンズの回転非対称な誤差の影響を低減することも合わせて行われる。しかしながら、間隔調整や偏芯調整や回転調整においても、その設定(レンズの移動量、シフト量、チルト量、回転角度など)に誤差が残り、この設定誤差も投影光学系における収差発生の要因の1つとなる。
【0007】
従来の投影光学系の製造方法では、1つまたは複数のレンズ(光学部材)を複数の分割鏡筒内にそれぞれ組み込み、これらの複数の分割鏡筒を用いて投影光学系を組み立てる。次いで、組み立てられた投影光学系を収差測定装置に設置して、投影光学系の残存収差を測定する。さらに、収差測定装置から取り外した投影光学系をレンズ調整装置に設置して、分割鏡筒単位でレンズ調整(間隔調整や偏芯調整や回転調整)を行うことにより投影光学系の残存収差を補正する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術では、投影光学系を収差測定装置に設置して残存収差を測定する収差測定工程と、収差測定装置から取り外した投影光学系をレンズ調整装置に設置して分割鏡筒単位でレンズ調整を行うレンズ調整工程とが、投影光学系の残存収差が所望の範囲に収まるまで、必要に応じて複数回繰り返される。この場合、収差測定装置から投影光学系を取り外してレンズ調整装置に設置する工程と、レンズ調整装置から投影光学系を取り外して投影光学系を収差測定装置に設置する工程との繰り返しに時間がかかり、投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができないという不都合があった。
【0009】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を備えた露光装置を効率的に且つ迅速に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を用いて、高解像度で良好な露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、第1面の像を第2面上に投影する投影光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記投影光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記投影光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記投影光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする投影光学系の製造方法を提供する。
【0011】
第1形態の好ましい態様によれば、前記収差測定工程は、所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置して前記投影光学系の収差を補正し、前記調整工程は、前記所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置した状態で各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する。また、前記調整工程を経た前記投影光学系に残存する収差を補正するために少なくとも1つの光学部材の光学面を非球面形状に加工する非球面加工工程をさらに含むことが好ましい。この場合、前記少なくとも1つの光学部材は、球面状の光学面を有する球面レンズとして設計されていることが好ましい。
【0012】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記非球面加工工程は、第1の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程と、第2の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程とを含み、前記第1の光学部材および前記第2の光学部材は、前記第1の光学部材の光学面の有効径に対する前記第1面上の所定の1点からの光束が前記第1の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比と、前記第2の光学部材の光学面の有効径に対する前記所定の1点からの光束が前記第2の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比とが実質的に異なるように選定されることが好ましい。
【0013】
また、第1形態の好ましい態様によれば、前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内に単体で収納される光学部材を含む。あるいは、前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内において最も第1面側に配置される光学部材を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の第2形態では、第1形態の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系を提供する。
【0015】
本発明の第3形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置の製造方法において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための前記投影光学系を第1形態の製造方法を用いて製造する製造工程と、
製造された前記投影光学系を前記露光装置に組み込む組込工程とを含むことを特徴とする露光装置の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第4形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための第1形態の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
【0017】
本発明の第5形態では、マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光方法において、
第1形態の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を介して、前記第1面に設定された前記マスクのパターンを前記第2面に設定された前記感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法を提供する。
【0018】
本発明の第6形態では、光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする光学系の製造方法を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる製造方法で製造された投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、図1において、投影光学系の光軸AXに平行にZ軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、光軸AXに垂直な面内において図1の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。
【0020】
図1に示す露光装置は、照明光(露光光)を供給するための光源1として、たとえばKrFエキシマレーザー光源(波長248nm)やArFエキシマレーザー光源(波長193nm)を備えている。光源1から射出された光は、照明光学系2を介して、所定のパターンが形成されたマスク(レチクル)3を照明する。マスク3は、マスクホルダ4を介して、マスクステージ5上においてXY平面に平行に保持されている。また、マスクステージ5は、図示を省略した駆動系の作用により、マスク面(すなわちXY平面)に沿って移動可能であり、その位置座標はマスク干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。
【0021】
マスク3に形成されたパターンからの光は、投影光学系6を介して、感光性基板であるウェハ7上にマスクパターン像を形成する。ウェハ7は、ウェハテーブル(ウェハホルダ)8を介して、ウェハステージ9上においてXY平面に平行に保持されている。また、ウェハステージ9は、図示を省略した駆動系の作用によりウェハ面(すなわちXY平面)に沿って移動可能であり、その位置座標はウェハ干渉計(不図示)によって計測され且つ位置制御されるように構成されている。こうして、投影光学系6の光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハ7を二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハ7の各露光領域にはマスク3のパターンが逐次露光される。
【0022】
図2は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法の基本工程を概略的に示すフローチャートである。図2を参照すると、本実施形態の製造方法は、投影光学系6を組み立てる組立工程S1と、組立工程S1で組み立てられた投影光学系6の収差を測定する収差測定工程S2と、収差測定工程S2で測定された投影光学系6の残存収差を補正するためのレンズ調整工程S3と、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6の残存収差を補正するために所定の光学面を非球面形状に加工する非球面加工工程S4と、非球面加工工程S4を経て投影光学系6を再び組み立てる再組立工程S5と、再組立工程S5で組み立てられた投影光学系6の収差を測定する第2収差測定工程S6と、第2収差測定工程S6で測定された投影光学系6の残存収差を補正するための第2レンズ調整工程S7と、第2レンズ調整工程S7を経た投影光学系6に微調整機構を取り付ける微調整機構取付工程8とを含んでいる。
【0023】
図3は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における組立工程S1から再組立工程S5までの工程を概略的に説明する図である。また、図4は、本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における再組立工程S5から微調整機構取付工程8までの工程を概略的に説明する図である。さらに、図5は、本実施形態の製造方法における組立工程S1の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【0024】
本実施形態の製造方法における組立工程S1では、各レンズを形成すべきブロック硝材(ブランクス)を製造した後、製造されたブロック硝材の屈折率の絶対値および屈折率分布を、たとえば図6に示す干渉計装置を用いて計測する(S11)。図6では、オイル101が充填された試料ケース102の中の所定位置に被検物体であるブロック硝材103を設置する。そして、制御系104に制御された干渉計ユニット105からの射出光が、フィゾーステージ106a上に支持されたフィゾーフラット(フィゾー平面)106に入射する。ここで、フィゾーフラット106で反射された光は参照光となり、干渉計ユニット105へ戻る。
【0025】
一方、フィゾーフラット106を透過した光は測定光となり、試料ケース102内の被検物体103に入射する。被検物体103を透過した光は、反射平面107によって反射され、被検物体103およびフィゾーフラット106を介して干渉計ユニット105へ戻る。こうして、干渉計ユニット105へ戻った参照光と測定光との位相ずれに基づいて、光学材料としての各ブロック硝材103の屈折率分布による波面収差が計測される。なお、屈折率均質性の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平8−5505号公報などを参照することができる。
【0026】
次いで、屈折率分布が計測されたブロック硝材から必要に応じて研削されたブロック硝材を用いて、投影光学系6を構成すべき各レンズを製造する。すなわち、周知の研磨工程にしたがって、設計値を目標として各レンズの表面を研磨加工する(S12)。研磨工程では、各レンズの面形状の誤差を干渉計で計測しながら研磨を繰り返し、各レンズの面形状を目標面形状に近づける。こうして、各レンズの面形状誤差が所定の範囲に入ると、各レンズの面形状の誤差を、たとえば図7に示すさらに精密な干渉計装置を用いて計測する(S13)。
【0027】
図7では、制御系111に制御された干渉計ユニット112からの射出光が、フィゾーステージ113a上に支持されたフィゾーレンズ113に入射する。ここで、フィゾーレンズ113の参照面(フィゾー面)で反射された光は参照光となり、干渉計ユニット112へ戻る。なお、図7では、フィゾーレンズ113を単レンズで示しているが、実際のフィゾーレンズは複数のレンズ(レンズ群)で構成されている。一方、フィゾーレンズ113を透過した光は測定光となり、被検レンズ114の被検光学面に入射する。
【0028】
被検レンズ114の被検光学面で反射された測定光は、フィゾーレンズ113を介して干渉計ユニット112へ戻る。こうして、干渉計ユニット112へ戻った参照光と測定光との位相ずれに基づいて、被検レンズ114の被検光学面の基準面に対する波面収差が、ひいては被検レンズ114の面形状の誤差が計測される。なお、レンズの面形状誤差の干渉計による計測に関する詳細については、たとえば特開平7−12535号、特開平7−113609号、特開平10−154657号公報などを参照することができる。
【0029】
次いで、各製品分割鏡筒に1つまたは複数のレンズ(一般には光学部材)を組み込み(S14)、各仮組分割鏡筒に1つまたは複数のレンズを組み込む(S15)。ここで、各製品分割鏡筒に組み込まれるのは、レンズ調整の対象となっていないレンズである。一方、各仮組分割鏡筒に組み込まれるのは、設計にしたがって予めレンズ調整の対象となっているレンズ(以下、「調整対象レンズ」という)、または調整対象レンズを含むレンズ群である。
【0030】
なお、仮組分割鏡筒は、レンズを光軸に沿って移動させてレンズ間の間隔を変化させる間隔調整や、レンズを光軸に対して垂直にシフト(移動)させたりチルト(傾斜)させたりする偏芯調整や、レンズを光軸廻りに回転させる回転調整を、各レンズ毎に(すなわちレンズ単位で)行う機構を内蔵した形態の分割鏡筒である。本実施形態に適用可能な仮組分割鏡筒として、たとえば特開2002−131605号公報に開示の鏡筒において、調整ワッシャ99および調整ボタン100によって駆動レバー85aおよび85bへ変位を与えるところを、マイクロメータによって駆動レバー85aおよび85bへ変位を与えるように変更したものを用いることができる。
【0031】
最後に、1つまたは複数のレンズが組み込まれた製品分割鏡筒と1つまたは複数のレンズが組み込まれた仮組分割鏡筒とを用いて投影光学系6を組み立てる(S16)。具体的には、図3に示すように、所定の組立装置10を用い、設計にしたがって1つまたは複数のレンズを各分割鏡筒に組み込み、1つまたは複数のレンズをそれぞれ収納した複数の分割鏡筒を組み立てることにより投影光学系6を得る。なお、図3では、製品分割鏡筒を矩形状の斜線部で示し、仮組分割鏡筒を矩形状の空白部で示している。また、各分割鏡筒へのレンズの組込みおよび複数の分割鏡筒の組立てに用いられる組立装置10に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0032】
図8は、本実施形態の製造方法における収差測定工程S2およびレンズ調整工程S3の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における収差測定工程S2では、図3に示すように、組立工程S1を経て組み立てられた投影光学系6を所定の収差測定装置11に設置して投影光学系6の波面収差を測定する(S21)。具体的には、収差測定装置11として、たとえば特開平10−38757号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を測定することができる。
【0033】
図9は、KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するフィゾー干渉計方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。図9に示すように、露光光とほぼ同じ波長を有するレーザー光(たとえばArレーザー光の第2高調波)を、ハーフプリズム60およびフィゾーレンズ61のフィゾー面61aを介して、被検光学系としての投影光学系6に入射させる。このとき、フィゾー面61aで反射された光は、いわゆる参照光となり、フィゾーレンズ61およびハーフプリズム60を介して、CCDのような撮像素子62に達する。
【0034】
一方、フィゾー面61aを透過した光は、いわゆる測定光となり、投影光学系6を介して、反射球面63に入射する。反射球面63で反射された測定光は、投影光学系6、フィゾーレンズ61およびハーフプリズム60を介して、CCD62に達する。こうして、参照光と測定光との干渉に基づいて、投影光学系6に残存する波面収差が測定される。同様に、収差測定装置11として、たとえば特開平10−38758号公報に開示されたフィゾー干渉計方式の波面収差測定機を用いて、超高圧水銀ランプ(たとえばi線)を使用する投影光学系の波面収差を測定することもできる。
【0035】
また、収差測定装置11として、たとえば特開2000−97616号公報に開示された、いわゆるPDI(Phase Diffraction Interferometer:位相回折干渉計)方式の波面収差測定機を用いて、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を測定することもできる。図10は、ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。図10に示すように、光源1(図10では不図示)から射出されて照明光学系2を介した露光用照明光が、マスク設定位置に位置決めされた第1のピンホール71に入射する。
【0036】
第1のピンホール71を介して形成された球面波は、被検光学系としての投影光学系6を透過して、グレーティング(一次元回折格子)72に入射する。グレーティング72をそのまま透過した0次回折光は、マスク73に形成された第2のピンホール(不図示)に入射する。一方、グレーティング72で回折作用を受けて発生した1次回折光は、マスク73に形成された開口部(不図示)のほぼ中央に入射する。第2のピンホールを介した0次回折光および開口部を通過した1次回折光は、コリメータレンズ74を介して、CCDのような撮像素子75に達する。
【0037】
こうして、第2のピンホールを介して形成された球面波を参照波面とし、開口部を通過した1次回折光の波面を測定波面とし、参照波面と測定波面との干渉に基づいて投影光学系6に残存する波面収差が測定される。なお、収差測定工程S21では、仮組部材としてのパージカバー(不図示)を投影光学系6に取り付け、投影光学系6の光路の雰囲気を所望の状態に維持しつつ波面収差の測定を行う。また、従来技術では、投影光学系の波面収差を測定した後に、投影光学系を介して所定のパターン(たとえば理想格子)の像をウェハに転写し、その転写結果から投影光学系のディストーション(歪曲収差)を求めていた。しかしながら、本実施形態では、投影光学系6の波面収差の測定結果に基づいてディストーション成分を求め、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。
【0038】
次いで、収差測定工程S21で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっているか否かを判定する(S22)。判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていると判定した場合(図8中YESの場合)、非球面加工工程S4へ移行する。一方、判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていないと判定した場合(図8中NOの場合)、本実施形態の製造方法におけるレンズ調整工程S3として、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、各仮組分割鏡筒に組み込まれた調整対象レンズを内蔵機構により微動させて、上述の間隔調整や偏芯調整や回転調整によるレンズ調整をレンズ毎に(レンズ単位で)行う(S31)。
【0039】
こうして、間隔調整や偏芯調整や回転調整によりレンズ単位でレンズ調整された投影光学系6の波面収差を再び測定する(S21)。そして、収差測定工程S21で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっているか否かを再度判定する(S22)。判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていると判定した場合には、非球面加工工程S4へ移行する。しかしながら、判定工程S22において投影光学系6の波面収差が許容範囲A内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S22においてYESの判定が得られるまで、レンズ調整工程S31および収差測定工程S21をさらに繰り返す。
【0040】
図11は、本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4、再組立工程S5、第2収差測定工程S6、および第2レンズ調整工程S7の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4では、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6に残存している波面収差を補正するのに適したレンズ、すなわち設計にしたがって予め非球面加工の対象となっている非球面加工対象レンズを分割鏡筒(製品分割鏡筒または仮組分割鏡筒)から取り出す(S41)。
【0041】
図12は、非球面形状に加工される光学面の位置と光学面の非球面化により効果的に補正される収差成分との関係を説明する図である。図12に示すように、マスク3上の物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2とが分離した位置を通過する光学部材e1の光学面を非球面化することにより、像面座標依存性の高い収差成分(ディストーション、像面湾曲等)を効果的に補正することができる。
【0042】
また、物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2とがほぼ全面を通過する光学部材e5の光学面を非球面化することにより、瞳座標依存性の高い収差成分(例えば球面収差、偏心コマ収差等)を効果的に補正することができる。さらに、物点Q1からの光束L1と物点Q2からの光束L2との重なり程度が中間的となる光学部材(例えば光学部材e2等)の光学面を非球面化することにより、像面座標依存性と瞳座標依存性とが同等に近い収差成分(例えばコマ収差等)を効果的に補正することができる。
【0043】
一般に、レンズ調整工程S3を経た投影光学系6に残存する波面収差を良好に補正するには、少なくとも2つの非球面加工対象レンズの光学面を非球面形状に加工することが好ましい。この場合、様々な収差成分を効果的に補正することができるように、2つの非球面加工対象レンズは、第1の非球面加工対象レンズの光学面の有効径に対する、マスク3上の所定の1点からの光束が第1の非球面加工対象レンズの上記光学面を通過するときの光束径の比と、第2の非球面加工対象レンズの光学面の有効径に対する、上記所定の1点からの光束が第2の非球面加工対象レンズの上記光学面を通過するときの光束径の比とが実質的に異なるように選定されることが好ましい。
【0044】
また、非球面加工対象レンズを分割鏡筒内に単体で収納するように設計することにより、投影光学系の他の部分に悪影響を及ぼすことなく非球面加工対象レンズを取り出すことができる。あるいは、非球面加工対象レンズを含む複数のレンズが1つの分割鏡筒内に収納される場合には、非球面加工対象レンズが当該分割鏡筒内において最もマスク側に配置されるように設計することにより、投影光学系の他の部分に悪影響を及ぼすことなく非球面加工対象レンズを取り出すことができる。
【0045】
次いで、取り出した非球面加工対象レンズの光学面を所定の非球面形状に加工する(S42)。なお、加工工程S42に先立って、非球面加工対象レンズの光学面に形成すべき非球面形状は、上述の収差測定工程S21の最終測定結果に基づいて、たとえばツェルニケ多項式で表わされる非球面(一般には光軸に関して回転非対称な非球面)として算出される。以下、ツェルニケ多項式について基本的な事項を簡単に説明する。ツェルニケ多項式の表現では、座標系として極座標(ρ,θ)を用い、直交関数系としてツェルニケの円筒関数を用いる。すなわち、非球面形状W(ρ,θ)は、ツェルニケの円筒関数Zi(ρ,θ)を用いて、次の式(a)に示すように展開される。
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、Ciは、ツェルニケ多項式の各項の係数である。以下、ツェルニケ多項式の各項の関数系Zi(ρ,θ)のうち、第1項〜第36項にかかる関数Z1〜Z36を、次の表(1)に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
加工工程S42では、非球面加工前の光学面の面形状と非球面加工後の光学面の面形状との差(加工量)を指標として、非球面加工対象レンズの光学面を所望の非球面形状に加工する。したがって、設計において非球面加工対象レンズとして球面レンズを選択することにより、光学面が所望の非球面形状に加工されたことを確認し易くなり、ひいては非球面の加工精度を向上させることができる。なお、加工工程S42では、必ずしも非球面加工の対象となっているすべてのレンズに非球面加工を施すわけではなく、必要に応じて1つまたは複数の非球面加工対象レンズに非球面加工を施す。また、非球面加工対象レンズの一方の光学面に非球面加工を施すのが通常であるが、双方の光学面に非球面加工を施すこともできる。
【0050】
次いで、図3に示すように、本実施形態の製造方法における再組立工程S5では、各仮組分割鏡筒からレンズを取り出して、対応する製品分割鏡筒12にそれぞれ組み込み(S51)、各製品分割鏡筒から取り出した非球面加工対象レンズを元の製品分割鏡筒の元の位置へ戻す(S52)。なお、各仮組分割鏡筒からレンズを取り出して対応する製品分割鏡筒に組み込む置換工程S51では、非球面加工のために各仮組分割鏡筒から取り出された非球面加工対象レンズと、各仮組分割鏡筒から取り出されて非球面加工されなかったレンズとが、対応する製品分割鏡筒12にそれぞれ組み込まれる。
【0051】
さらに、図4に示すように、所定の組立装置10を用いて、複数の製品分割鏡筒を組み上げることにより投影光学系6を再度組み立てる(S53)。そして、本実施形態の製造方法における第2収差測定工程S6では、再度組み立てられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して波面収差を測定する(S61)。なお、収差測定工程S61では、製品部材としてのパージカバー(不図示)を投影光学系6に取り付け、投影光学系6の光路の雰囲気を所望の状態に維持しつつ波面収差の測定を行う。また、収差測定工程S61においても収差測定工程S21と同様に、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。そして、収差測定工程S61で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっているか否かを判定する(S62)。判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていると判定した場合(図11中YESの場合)、微調整機構取付工程S8へ移行する。
【0052】
一方、判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていないと判定した場合(図11中NOの場合)、本実施形態の製造方法における第2レンズ調整工程S7として、間隔調整や偏芯調整によるレンズ調整を行う(S71)。ここで、レンズ調整工程S71は、上述のレンズ調整工程S31と異なり、レンズの回転調整を含まないことが多い。これは、上述したように、加工工程S42において光学面が光軸に関して回転非対称な非球面形状に加工されるのが一般的であるからである。なお、この回転非対称な非球面形状に加工された光学面を持つレンズを回転調整しても良い。
【0053】
また、レンズ調整工程S71では、上述のレンズ調整工程S31と異なり、図4に示すように、収差測定装置11から取り外した投影光学系6をレンズ調整装置13に設置して分割鏡筒単位でレンズ調整を行う。なお、分割鏡筒単位でレンズ調整を行うレンズ調整装置13に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。次いで、レンズ調整工程S71を経て間隔調整や偏芯調整により光学調整された投影光学系6をレンズ調整装置13から取り外し、取り外した投影光学系6を収差測定装置11に設置して、投影光学系6の波面収差を再び測定する(S61)。
【0054】
そして、収差測定工程S61で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっているか否かを再度判定する(S62)。判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていると判定した場合には、微調整機構取付工程S8へ移行する。しかしながら、判定工程S62において投影光学系6の波面収差が許容範囲B内に収まっていないと判定した場合には、判定工程S62においてYESの判定が得られるまで、レンズ調整工程S71および収差測定工程S61をさらに繰り返す。
【0055】
図13は、本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8の内部工程を概略的に示すフローチャートである。本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8では、第2レンズ調整工程S7を経た投影光学系6に対して、図4に示すように、レンズ間の間隔を変化させる間隔調整やレンズを光軸に対してチルト(傾斜)させるチルト調整を行うための微調整機構14を取り付ける(S81)。なお、間隔調整やチルト調整を行う微調整機構14に関する詳細については、たとえば特開2002−258131号公報などを参照することができる。
【0056】
次いで、微調整機構14が取り付けられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して、投影光学系6の波面収差を測定する(S82)。収差測定工程S82においても収差測定工程S61および収差測定工程S21と同様に、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略する。最後に、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、収差測定工程S82で測定した投影光学系6の波面収差が許容範囲C内に収まるように、微調整機構14を用いてレンズ調整を行う(S83)。こうして、本実施形態にしたがう投影光学系6の製造が終了する。
【0057】
本実施形態では、マスク3のパターン像をウェハ(感光性基板)7上に形成するための投影光学系6を上述の製造方法を用いて製造し、製造された投影光学系6を所定の位置に組み込むことにより露光装置が得られる。なお、レンズ調整工程S83における許容範囲Cは、投影光学系6の波面収差に関する最終的な目標値としての許容範囲である。これに対して、上述の判定工程S22における許容範囲Aおよび判定工程S62における許容範囲Bは、非球面化工工程S4および微調整機構取付工程S8へそれぞれ移行するのに設定した中間的な許容範囲である。
【0058】
以上のように、本実施形態では、レンズ調整の対象となっていないレンズを通常の製品分割鏡筒に組み込み、調整対象レンズまたは調整対象レンズを含むレンズ群を、レンズ単位でレンズ調整を行う機構を内蔵した形態の仮組分割鏡筒に組み込む。そして、製品分割鏡筒と仮組分割鏡筒とを用いて組み立てられた投影光学系6を収差測定装置11に設置して残存収差を測定した後に、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態で、各仮組分割鏡筒に組み込まれた調整対象レンズを内蔵機構により微動させて、間隔調整や偏芯調整や回転調整によるレンズ調整をレンズ単位で行う。
【0059】
このように、本実施形態では、レンズ調整工程と波面収差工程との繰り返しに際して収差測定装置とレンズ調整装置との間で投影光学系を設置し直す従来技術とは異なり、投影光学系6を収差測定装置11に設置した状態でレンズ調整工程と波面収差工程とを繰り返すので、投影光学系6の残存収差を非球面加工工程S4に必要な所望の範囲(収差測定装置のダイナミックレンジ)に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。また、本実施形態では、分割鏡筒単位でレンズ調整を行う従来技術とは異なり、仮組分割鏡筒の作用によりレンズ単位でレンズ調整を行うので、投影光学系6の残存収差を非球面加工工程S4に必要な所望の範囲に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
さらに、収差測定工程S21、収差測定工程S61および収差測定工程S82では、従来技術とは異なり、所定パターンの焼付けによるディストーションの測定工程を省略しているので、投影光学系6の残存収差を測定する時間を大幅に短縮することができる。こうして、本実施形態の製造方法では、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができる。
【0061】
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウェハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図14のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
先ず、図14のステップ301において、1ロットのウェハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、そのlロットのウェハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウェハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウェハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウェハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウェハ上の各ショット領域に形成される。
【0063】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウェハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウェハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0064】
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図15のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図15において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
【0065】
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0066】
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、KrFエキシマ レーザー光源またはArFエキシマ レーザー光源を用いる露光装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、所定の波長光を供給する他の適当な光源を用いる露光装置に本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系の製造方法に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な光学系の製造方法に本発明を適用することもできる。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による投影光学系の製造方法では、投影光学系を収差測定装置に設置した状態でレンズ調整工程と波面収差工程とを繰り返し、仮組分割鏡筒の作用によりレンズ単位でレンズ調整を行うので、投影光学系の残存収差を所望の範囲に収めるまでの時間を大幅に短縮することができる。その結果、本発明では、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を効率的に且つ迅速に製造することができる。
【0069】
したがって、残存収差が良好に抑えられて優れた光学性能を有する投影光学系を用いる露光装置および露光方法では、高解像で良好な露光を行うことができ、ひいては高解像で良好な露光条件のもとで良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる製造方法で製造された投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法の基本工程を概略的に示すフローチャートである。
【図3】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における組立工程S1から再組立工程S5までの工程を概略的に説明する図である。
【図4】本実施形態にかかる投影光学系の製造方法における再組立工程S5から微調整機構取付工程8までの工程を概略的に説明する図である。
【図5】本実施形態の製造方法における組立工程S1の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図6】各レンズを形成すべきブロック硝材の屈折率の絶対値および屈折率分布を測定する干渉計装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】各レンズの面形状誤差を測定する干渉計装置の構成を概略的に示す図である。
【図8】本実施形態の製造方法における収差測定工程S2およびレンズ調整工程S3の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図9】KrFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するフィゾー干渉計方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図10】ArFエキシマレーザー光源を使用する投影光学系の波面収差を計測するPDI方式の波面収差測定機の構成を概略的に示す図である。
【図11】本実施形態の製造方法における非球面加工工程S4、再組立工程S5、第2収差測定工程S6、および第2レンズ調整工程S7の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図12】非球面形状に加工される光学面の位置と光学面の非球面化により効果的に補正される収差成分との関係を説明する図である。
【図13】本実施形態の製造方法における微調整機構取付工程S8の内部工程を概略的に示すフローチャートである。
【図14】マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
【図15】マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 光源
2 照明光学系
3 マスク(レチクル)
5 マスクステージ
6 投影光学系
7 ウェハ(感光性基板)
9 ウェハステージ
10 組立装置
11 収差測定装置
13 レンズ調整装置
14 微調整機構
Claims (13)
- 第1面の像を第2面上に投影する投影光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記投影光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記投影光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記投影光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする投影光学系の製造方法。 - 前記収差測定工程は、所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置して前記投影光学系の収差を補正し、
前記調整工程は、前記所定の収差測定装置に前記投影光学系を設置した状態で各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整することを特徴とする請求項1に記載の投影光学系の製造方法。 - 前記調整工程を経た前記投影光学系に残存する収差を補正するために少なくとも1つの光学部材の光学面を非球面形状に加工する非球面加工工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の投影光学系の製造方法。
- 前記少なくとも1つの光学部材は、球面状の光学面を有する球面レンズとして設計されていることを特徴とする請求項3に記載の投影光学系の製造方法。
- 前記非球面加工工程は、前記少なくとも1つの光学部材の光学面を光軸に関して回転非対称な非球面形状に加工する工程を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の投影光学系の製造方法。
- 前記非球面加工工程は、第1の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程と、第2の光学部材の光学面を非球面形状に加工する工程とを含み、
前記第1の光学部材および前記第2の光学部材は、前記第1の光学部材の光学面の有効径に対する前記第1面上の所定の1点からの光束が前記第1の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比と、前記第2の光学部材の光学面の有効径に対する前記所定の1点からの光束が前記第2の光学部材の前記光学面を通過するときの光束径の比とが実質的に異なるように選定されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の投影光学系の製造方法。 - 前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内に単体で収納される光学部材を含むことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の投影光学系の製造方法。
- 前記少なくとも1つの光学部材は、所定の分割鏡筒内において最も第1面側に配置される光学部材を含むことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の投影光学系の製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする投影光学系。
- マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置の製造方法において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための前記投影光学系を請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造する製造工程と、
製造された前記投影光学系を前記露光装置に組み込む組込工程とを含むことを特徴とする露光装置の製造方法。 - マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光装置において、
前記第1面に設定された前記マスクのパターン像を前記第2面に設定された前記感光性基板上に形成するための請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を備えていることを特徴とする露光装置。 - マスクのパターンを感光性基板上に露光する露光方法において、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造された前記投影光学系を介して、前記第1面に設定された前記マスクのパターンを前記第2面に設定された前記感光性基板上に露光することを特徴とする露光方法。 - 光学系の製造方法において、
1つまたは複数の製品分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第1組込工程と、
1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に1つまたは複数の光学部材をそれぞれ組み込む第2組込工程と、
前記第1組込工程を経た前記1つまたは複数の製品分割鏡筒と前記第2組込工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒とを用いて前記光学系を組み立てる組立工程と、
組み立てられた前記光学系の収差を測定する収差測定工程と、
測定された前記光学系の収差を補正するために前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒内に収納された各光学部材の位置または姿勢をそれぞれ独立的に調整する調整工程と、
前記調整工程を経た前記1つまたは複数の仮組分割鏡筒から前記1つまたは複数の光学部材をそれぞれ取り出して、対応する1つまたは複数の製品分割鏡筒にそれぞれ組み込む置換工程とを含むことを特徴とする光学系の製造方法。
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