JP2004257404A - 回転軸のダンパ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】1個のダンパマスにより回転軸の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が得られ、かつ耐久性に優れた回転軸のダンパ装置を提供する。
【解決手段】回転軸1に取り付けられるハブ11と、筒状のダンパマス21と、これらの間に介在する弾性部材31とを備え、ハブ11の円筒部14に半径方向外側に突出して回転中心軸線aと略直交する平面状の側面19a、19bを有するハブ側突出部19を設け、上記ダンパマス21に半径方向内側に突出してハブ側突出部19の側面19aおよび19bにそれぞれ対向すると共に回転中心軸線aと略直交する平面状の側面24a、25aを有する第1マス側突出部24および第2マス側突出部25を設け、ハブ側突出部19の外径に対し第1マス側突出部24および第2マス側突出部の内径を小径に設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】回転軸1に取り付けられるハブ11と、筒状のダンパマス21と、これらの間に介在する弾性部材31とを備え、ハブ11の円筒部14に半径方向外側に突出して回転中心軸線aと略直交する平面状の側面19a、19bを有するハブ側突出部19を設け、上記ダンパマス21に半径方向内側に突出してハブ側突出部19の側面19aおよび19bにそれぞれ対向すると共に回転中心軸線aと略直交する平面状の側面24a、25aを有する第1マス側突出部24および第2マス側突出部25を設け、ハブ側突出部19の外径に対し第1マス側突出部24および第2マス側突出部の内径を小径に設定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸のダンパ装置に関し、特にエンジンのクランクシャフト等の回転軸の捩じり振動、軸振動および曲げ振動を1個のダンパマスによって減衰するシングルマスタイプのデュアルモードダンパ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジンのクランクシャフト等の回転軸が回転する際には、回転軸に複雑なトルク変動が発生する。このトルク変動に起因してクランクシャフト等の回転軸に発生する振動は、主として捩じり振動、軸振動および曲げ振動の3つの振動が複雑に複合して回転軸およびエンジンの支持状態に応じて種々の振動モードを示す。これらの振動は騒音の発生要因となると共に回転軸自体の応力を低減させる要因になる。
【0003】
そこで、従来、ダンパマスと弾性部材から構成されるダンパ装置を減衰すべき振動方向に対応して複数個配設していた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしダンパマスと弾性部材によって構成されたダンパ装置を複数配設することから、構成が複雑になると共にダンパ装置による広範囲の占有スペースが必要になる。この対策として回転軸の捩じり振動、軸振動および曲げ振動を1個のダンパマスによって減衰するシングルマスタイプのデュアルモードダンパ装置が提案されている。
【0005】
このダンパ装置について、図11に示す断面図を参照して説明する。このダンパ装置は、回転軸101に取り付けられるハブ102と、ダンパマス106と、これらハブ102とダンパマス106との間に介装する弾性部材109とによって構成される。ハブ102は回転軸101の端部に取り付けられるボス部103およびボス部103に連結部104を介して結合された円筒部105を有し、円筒部105は周方向に沿った第1外周面105aと第2外周面105bの間に突出して形成された凸部105cを有している。
【0006】
ダンパマス106は、第1分割ダンパマス107と第2分割ダンパマス108からなり、第1分割ダンパマス107はハブ102の円筒部105の半径方向外側に配置され、内周面が周方向に沿った第1内周面107a、第2内周面107bおよび、第1内周面107aと第2内周面107bとを繋ぐ傾斜面107cとから形成され、第1内周面107aの内径はハブ102の凸部105cの外径より大きく形成され、第2内周面107bの内径は凸部105cの外径より小さく形成されている。第2分割ダンパ108は外周面が第1分割ダンパマス107の第1内周面107aに圧接によって固着され、かつ凸部105cに対向する傾斜面108aを有している。
【0007】
ここで、捩じり振動の減衰動作は、弾性部材109の剪断方向に作用する。すなわちハブ102の円筒部105とダンパマス106との間に配設された弾性部材109の剪断方向に作用して、捩じり振動を減衰することができる。
【0008】
また、軸振動および曲げ振動減衰動作は、第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105cとの間の部分109aおよび第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cとの間の部分109bの圧縮方向に作用する。この弾性部材109の部分109aと109bとが交互に圧縮されて軸振動および曲げ振動が減衰される(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開昭64−26045号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平10−141440号公報(段落番号0009〜0012、図1、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記図11に示すダンパ装置によると、回転軸101の端部に設けられたハブ102に弾性部材109を介装して支持した単一のダンパマス106によって、回転軸101の捩じり振動、軸振動、曲げ振動を減衰することができる。
【0011】
しかし、軸振動および曲げ振動の減衰は、振動方向、すなわち回転軸101の回転中心軸線aに対して大きく傾斜した第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105c、および第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cによって弾性部材109の部分109aと109bを交互に圧縮して振動を減衰することから、凸部105cによって弾性部材109の部分109aおよび部分109bに付与される押圧力がその傾斜によって分散され、第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105cおよび第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cとの間による弾性部材109の部分109a、109bの有効的な圧縮付与が阻害されて十分な振動減衰が達成できないことが懸念される。
【0012】
また、ハブ102と弾性部材109および弾性部材109とダンパマス106との固着面積が制限されて十分な固着力の確保が困難で耐久性の低下を招くと共に十分なダンパの機能が確保できないおそれがある。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、1個のダンパマスにより回転軸の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が得られると共に、耐久性および安全性に優れた回転軸のダンパー装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に記載の回転軸のダンパ装置の発明は、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、上記ハブは、上記回転軸に取り付けられるボス部と、該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で周方向に沿う第1外周面および第2外周面と、これら第1外周面と第2外周面との間で半径方向外側に突出して回転中心軸線と直交する平面状の第1側面および第2側面を有するハブ側突出部を有する円筒部とを備え、上記ダンパマスは、上記ハブのハブ側突出部の外周面に対向する内周面を有する円筒状の基部と、該基部の内周面を隔てて半径方向内側に突出して上記ハブ側突出部の第1側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第1マス側突出部および、上記ハブ側突出部の第2側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第2マス側突出部とを備え、上記弾性部材は、上記ハブの円筒部の第2外周面と第2マス側突出部の内周面との間の第1部分と、上記ハブ側突出部の第2側面と第2マス側突出部の側面との間の第2部分と、上記ハブ側突出部の外周面と基部の内周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の第1側面と第1マス側突出部の側面との間の第4部分と、円筒部の第1外周面と第1マス側突出部の内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項1の発明によると、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して剪断剛性を発生し、この剪断剛性により捩り振動を減衰することができる。また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、振動方向となる回転中心軸線に対して直交する平面状に形成されたハブ側突出部の第2側面と第2マス側突出部の側面による弾性部材の第2部分の圧縮および、ハブ側突出部の第1側面と第1マス側突出部の側面による弾性部材の第4部分の圧縮が有効的に交互になされ、この弾性部材の第2部分および第4部分に交互に発生する圧縮剛性によって効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材の第1部分、第3部分、第5部分が共に剪断剛性を発生させ、軸振動および曲げ振動を減衰する。従って、単一のダンパマスによって回転軸の捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰が効率的に図られ、シングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0016】
また、弾性部材はハブ側において円筒部の第1外周面、第2外周面、ハブ側突出部の第1側面、第2側面、外周面の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス側においてダンパマスの基部の内周面、第1マス側突出部の側面と内周面、第2マス側突出部の側面と内周面の広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材の結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1の回転軸のダンパ装置において、上記ダンパマスは、上記基部および第1マス側突出部を備えた第1分割ダンパマスと、上記第2マス側突出部を備えた第2分割ダンパマスと、上記第1分割ダンパマスと第2分割ダンパマスを一体結合する締結手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明によると、ダンパマスを締結手段によって一体結合可能な、基部および第1マス側突出部を備えた第1分割ダンパマスと、第2マス側突出部を備えた第2分割ダンパマスに分割することによって、ハブ側突出部を備えたハブと、このハブ側突出部より小径の内周面を有する第1マス側突出部および第2マス側突出部を有するダンパマスとの組み付けが容易になる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2の回転軸のダンパ装置において、上記第2分割マスは、上記第1分割マスに同軸上に凹設された第2分割ダンパマス嵌合部に先端側から挿入して嵌合する円筒状の基部を有し、該基部の先端側に半径方向内側に上記第2マス側突出部が突出形成されたことを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明によると、第2分割ダンパマスの基部の内周面においての弾性部材が結合されてダンパマスと弾性部材の固着強度が向上すると共に、ダンパ装置の製造にあたり、ハブとダンパマスとによって形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保されたハブの基部と第2分割ダンパマスの基部の内周面との間から供給することが可能になり、比較的粘性の高い溶融材料の供給が容易になり、広範囲のダンパ特性を容易にチューニングすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1の回転軸のダンパ装置において、上記ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、上記第1マス側突出部は、上記隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明によると、ハブ側突出部を円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設する一方、第1マス側突出部を隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設することによって、ハブに形成された隣接するハブ側突出部の間からダンパマスに形成された各第1マス側突出部を挿通し、かつ回転して各ハブ側突出部と第1マス側突出部を対向させることによってハブとダンパマスが容易に組み立てられる。また、ハブおよびダンパマスをそれぞれブロック状の1部材として形成することができて構成部材の削減および組み立て作業の簡素化が得られる。
【0023】
請求項5に記載の回転軸のダンパ装置の発明は、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、上記ハブは、上記回転軸に取り付けられるボス部と、該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で外周面が周方向に沿う円筒部と、該円筒部に上記外周面を隔てて半径方向外側に突出して互いの対向する側面が回転中心軸線と直交する平面状の第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部とを備え、上記ダンパマスは、上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面に対向する第1内周面および第2内周面とこれら第1内周面と第2内周面の間で半径方向内側に突出して上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部のそれぞれの側面に対向する第1側面および第2側面を有し、内周面が上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面より小径であるマス側突出部とを備え、上記弾性部材は、上記第2ハブ側突出部とダンパマスの第2内周面との間の第1部分と、上記第2ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第2側面との間の第2部分と、上記マス側突出部の内周面とハブの円筒部の外周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第1側面との間の第4部分と、上記第1ハブ側突出部とダンパマスの内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明によると、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、捩り振動を減衰することができる。
【0025】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、軸振動方向となる回転中心軸線に対して略直交する平面状に形成されたハブ側の第2ハブ側突出部の側面とダンパマス側のマス側突出部の第2側面による弾性部材の第2部分および第1ハブ側突出部の側面と第2マス側突出部の側面によって第4部分が有効的に交互に圧縮付与され、効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。従って、単一のダンパマスによって回転軸の捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰が効率的に図られ、シングルマスタイプのデュアルモードダンパとして機能が確保できる。
【0026】
また、弾性部材はハブ側において円筒部の外周面、第1ハブ側突出部の側面、第2ハブ側突出部の側面の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス側においてダンパマスの基部の第1内周面、第2内周面、マス側突出部の第1側面、第2側面内周面の広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材との固着強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項5の回転軸のダンパ装置において、上記第1ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、上記マス側突出部は、上記隣接する第1ハブ側突出部の間を挿通可能な形状で上記ダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする。
【0028】
請求項6の発明によると、第1ハブ側突出部を円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設する一方、マス側突出部を隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設することによって、ハブに形成された隣接する第1ハブ側突出部の間にダンパマスに形成された各マス側突出部を挿通して回転することによって各第1ハブ側突出部とマス側突出部を対向することのよってハブとダンパマスが組み立てられ、ハブおよびダンパマスをそれぞれブロック状の1部材として形成することができ、構成部材の削減および組み立て作業の簡素化が得られる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下本発明による回転軸のダンパ装置の各実施の形態を図を参照して説明する。
【0030】
(第1実施の形態)
図1はダンパ装置の断面図であり、図2は図1のA部拡大図、図3は弾性部材を省略した分解斜視図である。
【0031】
ダンパ装置10は、クランクシャフト等の回転軸1の端部にボルト2等によって同軸上に取り付けられるハブ11と、プーリとしての機能を兼備するダンパマス21と、ハブ11とダンパマス21との間に介在するゴム等の弾性部材31を主要部としている。
【0032】
ハブ11は、第1分割ハブ12と、第2分割ハブ16と、これら第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を結合する締結手段であるファスナ20によって構成されている。
【0033】
第1分割ハブ12は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13の半径方向外側に位置して第1外周面である外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、ボス部13と円筒部14をつなぐ連結部15とを有し、円筒部14の端部から連結部15に亘って回転軸1およびダンパ装置10の回転中心軸線aと直交する平坦なリング状の接合面14bが形成され、接合面14bにネジ孔14cが穿設されている。
【0034】
第2分割ハブ16は、第1分割ハブ12の円筒部14の外周面14aと同径で周方向に沿った第2外周面である外周面17aを有する円筒部17と、円筒部17の基端側から半径方向内側にリング状に突出すると共に第1分割ハブ12の接合面14bに接合する接合面18bおよび接合面18bの外周に連続形成されて円筒部14の外周面14aの端縁に嵌合する係合面18aが形成され、かつネジ孔14cに対応する取付孔18cが穿設された取付フランジ部18と、円筒部17の基端から半径方向外側にリング状に突出するハブ側突出部19と有している。ハブ側突出部19の第1側面である側面19aおよび第2側面である側面19bは回転中心軸線aと略直交する平面状、換言すると外周面17aに対して垂直な面に形成されている。更にハブ側突出部19には両側面19a側と19b側を連通する複数の貫通孔19dが穿設されている。
【0035】
この第1分割ハブ12と第2分割ハブ16は、互いの接合面14bと18bを接面し、かつ嵌合面18aと円筒部14の外周面14aの端縁を嵌合させて互いの位置決めをすると共に、取付孔18cを挿通しネジ孔14cに螺合するファスナ20によって一体的に結合される。
【0036】
この結合によりボス部13と同軸上に第1分割ハブ16の円筒部14の外周面14aと第2分割ハブ16の円筒部17が一体的に連続し、円筒部24の外周面14aと円筒部17の外周面17aとの間よりハブ側突出部19が半径方向外側にリング状に突出形成される。
【0037】
ダンパマス21は、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26と、これら第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合する締結手段であるファスナ29によって構成されている。
【0038】
第1分割ダンパマス22は、ハブ11の半径方向外側に同軸上で配置し、内周面23aがハブ側突出部19の外周面19cと対向しかつ外周面23bにプーリ溝が形成された円筒状の基部23を有し、この基部23の回転軸1側の端部から半径方向内側にリング状に突出する第1マス側突出部24が形成されている。第1マス側突出部24の側面24aは、外周が基部23の内周面23aに連続すると共に回転中心軸線aと直交する平面状でハブ側突出部19の側面19aと対向し、かつ内周面24cが円筒部14の外周面14aと対向している。更に第1マス側突出部24には側面24aと外部とを連通する複数の貫通孔24dが穿設されている。
【0039】
第1分割ダンパマス22の回転軸1の反対側の端部には、基部23の内周面23aから半径方向外側に延在するリング状の接合面25aおよび接合面25aの外周に連続する同軸上の嵌合面25bを有して有底の円筒状に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25が凹設されている。また、回転中心軸線aと直交する平面状に形成された接合面25aに複数のネジ孔25dが穿設されている。
【0040】
第2分割ダンパマス26は、第1分割ダンパマス22に凹設された第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bに嵌合する外周面27bおよび基部23の内周面23aと同径の内周面27aを有すると共に接合面25bに接面する接合面27cが形成される円筒状の基部27を有し、基部27の接合面27c側となる先端部側に第2マス側突出部28が半径方向内側に突出形成されている。第2マス側突出部28の側面28aは接合面25aに連続すると共に回転中心軸線aと直交する平面状のリング状でハブ側突出部19の側面19bと対向し、かつ内周面28cが円筒部17の外周面17aと対向している。更に第2マス側突出部28には複数の貫通孔28dが穿設されている。また、基部27には第1分割ダンパマス22のネジ孔25dに対応して取付孔27dが穿設されている。
【0041】
この第1分割ダンパマス22に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25内に第2分割ダンパマス26を挿入して、互いの接合面25bと28cを接面し、かつ嵌合面25bと外周面27bが嵌合して互いの位置決めをすると共に、取付孔27dを挿通しネジ孔25dに螺合するファスナ29によって一体的に結合される。第1分割ダンパマス22と第2ダンパマス26が結合されたダンパマス21は、内周面23aを隔てて第1マス側突出部24と第2マス側突出部28が対向して半径方向内側にリング状に突出形成される。
【0042】
ここで、図2に示すように第1分割ダンパマス22の基部23の内周面23aおよび第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aの内径をDA、第2分割ハブ16に形成されたハブ側突出部19の外周面19cの外径をDB、第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26にそれぞれ形成された第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の内周面24c、28cの内径をDC、第1分割ハブ12および第2分割ハブ16のそれぞれの円筒部14、17の外周面14aおよび17aの外径をDEとすると、第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27aの内径DAは、第2分割ハブ16に形成されたハブ側突出部19の外周面19cの外径DBより大きく(DA>DB)設定され、ハブ側突出部19の外周面19cの外径DBは第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の内周面24c、28cの内径DCより大きく(DB>DC)設定され、第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の外周面24c、28cの内径DCは第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17aの外径DEより大きく(DC>DE)設定される。
【0043】
ハブ11とダンパマス21との間に介装される弾性部材31は筒状であって、第2分割ハブ16の円筒部17の外周面17aと第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aから第2マス側突出部28の内周面28cとの間の第1部分31A、ハブ側突出部19の側面19bと第2マス側突出部28の側面28aとの間の第2部分31Bと、ハブ側突出部19の外周面19cと第1分割ダンパマス22の基部23の内周面23aとの間の第3部分31Cと、ハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aとの間の第4部分31Dと、第1分割ハブ12の円筒部14の外周面14aと第1マス側突出部24の内周面24cとの間の第5部分31Eとによって構成される(図2参照)。
【0044】
なお、弾性部材31の第1部分31A、第2部分31B、第3部分31C、第4部分31D、第5部分31Eは、ハブ11とダンパマス21の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生する。一方、軸方向の相対変位に対して第2部分31Bおよび第4部分31Dは圧縮剛性を発生し、第1部分31A、第3部分31C、第5部分31E共に剪断剛性を発生する。また、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26は1個のダンパマス21として機能し、ダンパマス21と弾性部材31は捩り振動、軸振動および曲げ振動をそれぞれ減衰するデュアルモードダンパとして機能するものである。
【0045】
このように構成されたダンパ装置10の製造は、予め第1分割ハブ12、第2分割ハブ16、第1分割ダンパマス22、第2分割ダンパマス26を鋳造および機械加工等により製造する。
【0046】
次に、第1分割ハブ12と第2分割ハブ16の互いの接合面14bと18bを接面し、かつ嵌合面18aと円筒部14の外周面14aの端縁を嵌合させて互いに位置決めすると共に、ファスナ20を取付孔18cから挿通してネジ孔14cに螺合することによって一体的に結合してハブ11を組み立てる。さらに、第1分割ダンパマス22の第1マス側突出部24と第2分割ダンパマス26の第2マス側突出部28をハブ11のハブ側突出部19を隔てて両側から対向させ、かつ第1分割ダンパマス22に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25内に第2分割ダンパマス26をその先端側から挿入して、互いの接合面25aと27cを接面させて互いの位置決めし、ファスナ29の取付孔27dから挿通およびネジ孔25dに螺合させて第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパ26を一体結合してダンパマス21を組み立てる。
【0047】
このように、ダンパマス21を基部23および第1マス側突出部24を備えた第1分割ダンパマス22と、第2マス側突出部28を備えた第2分割ダンパマス26に分割し、これらを互いに結合することによってハブ側突出部19を備えたハブ11と、このハブ側突出部11より小径の内周面24c、28cを有する第1マス側突出部24および第2マス側突出部28を有するダンパマス11との組み立て容易に行われる。
【0048】
しかる後、組み立てられたハブ11およびダンパマス21は、例えば射出成形型にセットされ、ハブ11とダンパマス21との間に形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料が第2分割ハブ16の円筒部17と第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aとの間から射出供給され、ハブ11とダンパマス21との間に形成された迷路状の間隙およびハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の貫通孔19d、24d、28d内を流動してて充填され、凝固して弾性部材31となる。
【0049】
この弾性部材31はハブ11側において第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17a、ハブ側突出部19の側面19a、19bおよび外周面19cの広範囲に亘って固着し、かつダンパマス21側において第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27a、第1マス側突出部24の側面24aと内周面24c、第2マス側突出部28の側面28a、28bおよび内周面28cの広範囲に亘って固着されると共に、ハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の各貫通孔19d、24d、28dにおいても固着される。
【0050】
この構成のダンパ装置10の捩り振動および軸振動、曲げ振動を減衰する動作について説明する。
【0051】
捩り振動の減衰動作は、弾性部材31の剪断方向に作用する。すなわち弾性部材31の第1部分31A、第2部分31B、第3部分31C、第4部分31D、第5部分31Eは、ハブ11とダンパマス21の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、これにより捩り振動を減衰することができる。
【0052】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、主に弾性部材31の第2部分31Bと第4部分31Dを圧縮する方向に作用する。例えば、図示左方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ11側のハブ側突出部19の側面19bとダンパマス21側の第2マス側突出部28の側面28aによって第2部分31Bが圧縮される。一方、右方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aによって第4部分31Dが圧縮される。
【0053】
ここで、ハブ側突出部19の側面19bおよび第2マス側の側面28aは回転軸1の回転中心軸線aを直交する平面状、すなわち軸振動方向に対して直交する平面で対向して形成されることから、押圧力が分散されることなくハブ側突出部19の側面19bと第2マス側の側面28aによって弾性部材31の第2部分31Bに有効的な圧縮力の付与がなされ、かつハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aによって弾性部材31の第4部分31Dに圧縮力が有効的に付与できる。この弾性部材31の第2部分31Bと第4部分31Dに交互に発生する圧縮剛性によって効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材31の第1部分31A、第3部分31C、第5部分31Eは共に剪断剛性を発生し、これによりさらに軸振動および曲げ振動を減衰する。
【0054】
また、弾性部材31はハブ11側において第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17a、ハブ側突出部19の側面19a、19bおよび外周面19cの広範囲に亘って固着し、かつダンパマス21側において第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27a、第1マス側突出部24の側面24aと内周面24c、第2マス側突出部28の側面28a、28bおよび内周面28cの広範囲に亘って固着されると共に、ハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の各貫通孔19d、24d、28dにおいても固着される。
【0055】
従ってハブ11およびダンパマス21との固着面積が確保されて、さらに各貫通孔19d、24d、28dの部分においてもハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28において弾性部材31と結合されてハブ11と弾性部材31およびダンパマス21と弾性部材31との十分な結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰する動作が得られシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0056】
また、ハブ11とダンパマス21とによって形成された間隙に溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保された第2分割ハブ16の円筒部17と第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aとの間から射出供給することから比較的粘性の高い材料でも容易に供給でき、ダンパ特性を広範囲に亘って容易にチューニングすることができる。換言すると広範囲の周波数に亘る回転軸1の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が可能になる。
【0057】
なお、ハブ側突出部19の外径が第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の内径より大きく設定されることから、万一、ハブ11とダンパマス21との間に介在する弾性部材31が破損したときであっても、ダンパマス21がハブ11から抜け出すことはなく、安全性が維持される。
【0058】
(第2実施の形態)
図4を参照して本発明の第2実施の形態を説明する。なお、図4において上記図1乃至図3と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0059】
図4は第2実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ダンパマス21が第1実施の実施の形態と同様に、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26によって構成されている。
【0060】
第1分割ダンパマス22に形成される第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bと、第2分割ダンパマス26の基部27の外周面27bとは回転中心軸線aを中心とする同軸上に形成され、第2分割ダンパマス26の基部27を第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入して接合面25aと27cを当接させて一体結合する。さらに、圧接する第1分割ダンパマス22の嵌合面25bと第2分割ダンパマス26の外周面27bの加締め部30を加締め固定する。他の構成は第1実施の形態と同様である。
【0061】
このように構成された第2実施の形態のダンパ装置10によると、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を圧入結合すると共に加締めて固定する締結手段によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合することから、第1実施の形態に加え、第1実施の形態のファスナ29によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合してダンパマス21を構成する場合に比べ、ファスナ29や第1分割ダンパマス22のネジ孔25dおよび第2分割ダンパマス26の取付孔27d等が不要になり構成の簡素化が得れると共に、組み立て作業が容易になる。
【0062】
また、第2分割ダンパマス26の基部27と第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入結合のみにより、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26との結合剛性が十分に確保できる場合には、加締め固定を省略することによってさらに簡素化を図ることができる。
【0063】
(第3実施の形態)
図5を参照して本発明の第3実施の形態を説明する。なお、図5において上記図1と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0064】
図5は第3実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ハブ11は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13に連結部15を介して結合されると共にボス部13の半径方向外側に同心上で位置して外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、この円筒部14と連続形成された外周面17aを有する円筒部17と、円筒部14および17の連続部分から半径方向内側にリング状に突出するハブ側突出部19とが鋳造等によって一体形成された、いわば第1実施の形態の第1分割ハブ12と第2分割ハブ16が一体結合された形状に構成されている。
【0065】
このように構成された第3実施の形態のダンパ装置10によると、第1実施の形態のにおける第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を鋳造等により一体化した形状にハブ11を構成することから、第1実施の形態に比べ構成部品点数の削減が得れると共に、第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を結合する等の作業が不要になり製造コストの削減が期待できる。
【0066】
(第4実施の形態)
図6を参照して本発明の第4実施の形態を説明する。なお、図6において上記図1と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0067】
図6は第4実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ハブ11は第3実施の形態と同様に、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13に連結部15を介して結合されると共にボス部13の半径方向外側に位置して外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、この円筒部14と連続形成された外周面17aを有する円筒部17と、円筒部14および17の連続部分から半径方向内側にリング状に突出するハブ側突出部19とが鋳造等によって一体形成された、いわば第1実施の形態の第1分割ハブ12と第2分割ハブ16が一体結合された形状に構成されている。
【0068】
一方、ダンパマス21は、第2実施の形態と同様に、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26によって構成され、第1分割ダンパマス22に形成される第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bと、第2分割ダンパマス26の基部27の外周面27bとは回転中心軸線aを中心とする同軸上に形成され、第2分割ダンパマス26の基部27を第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入して接合面25aと27cを当接させて一体結合し、さらに、圧接する第1分割ダンパマス22の嵌合面25bと第2分割ダンパマス26の外周面27bを加締め部30を加締め固定して形成される。
【0069】
このように構成された第4実施の形態のダンパ装置10によると、第3実施の形態に加え、さらに第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を圧入結合すると共に加締めて固定する締結手段によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合することから、第3実施の形態のファスナ29によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合してダンパマス21を構成する場合に比べ、ファスナ29や第1分割ダンパマス22のネジ孔25dおよび第2分割ダンパマス26の取付孔27d等が不要になり構成の簡素化が得れると共に、組み立て作業が容易になる。
【0070】
また、第2分割ダンパマス26の基部27と第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入結合のみにより、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26と結合剛性が十分に確保できる場合には、加締め固定を省略することによってさらに簡素化を図ることができる。
【0071】
(第5実施の形態)
図7乃至図10により本発明の第5実施の形態を説明する。図7は本実施の形態によるダンパ装置10の正面図、図8は図7のI−I断面図、図9は弾性部材を省略した分解斜視図である。
【0072】
ダンパ装置10は、クランクシャフト等の回転軸1の端部にボルト2等によって取り付けられるハブ51と、プーリとしての機能を兼備するダンパマス61と、ハブ51とダンパマス61との間に介在するゴム等の弾性部材71を主要部としている。
【0073】
ハブ51は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部52と、このボス部52の半径方向外側に位置して外周面53aが周方向に沿った円筒部53と、ボス部52と円筒部53をつなぐ連結部54とを有し、円筒部53の一方の端部、本実施の形態では回転軸1側の端部から半径方向外側にリング状に突出する第1ハブ側突出部55と他方の端部から半径方向外側に突出する複数、本実施の形態では4つの第2ハブ側突出部56が形成されている。
【0074】
第1ハブ側突出部55の第2ハブ側突出部56と対向する側面55aは回転中心軸線aと略直交する平坦面、換言すると円筒部53の外周面53aに対して垂直な面に形成されている。
【0075】
各第2ハブ側突出部56は、円筒部53の端部に沿って等間隔で離間してリング状に列設されて放射状に外周面53aから突出し、各第2ハブ側突出部55の第1ハブ側突出部55と対向する側面56aは、回転中心軸線aと略直交する平面状、換言すると円筒部53の外周面53aに対して垂直な面に形成されている。
【0076】
ダンパマス61は、ハブ51の半径方向外側に同心的に配置されて外周面62aにプーリ溝が形成された円筒状の基部62と、基部62の半径方向内側に等間隔で離間してリング状に列設されて突出する4つのマス側突出部63を有し、列設されたマス側突出63によって基部62の内周を第1内周面である内周面62bと第2内周面である内周面62cに区画している。基部62の内周面62bおよび内周面62cはそれぞれ第1ハブ側突出部55の外周面55cおよび第2ハブ側突出部56の外周面56cと対向している。
【0077】
基部62から半径方向内側にリング状に列設された各マス側突出部63は、それぞれ隣接する第2ハブ側突出部56の間を若干の間隙を有して挿通可能な形状であって、第1側面となる側面63aは回転中心軸線aと略直交する平面で第1ハブ側突出部55の側面55aと対向し、第2側面である側面63bは回転中心軸線aと略直交する平面で第2ハブ側突出部56の側面56aと対向すると共に内周面63cがハブ51の円筒部53の外周面53aと対向している。
【0078】
ここで図8に示すように、ダンパマス61の基部62の内周面62b、62cの内径をDa、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径をDb、マス側突出部63の内周面63cの内径をDc、ハブ52の円筒部53の外周面53aの外径をDdとすると、ダンパマス61の基部62の内周面62b、62cの内径Daは第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径Dbより大きく(Da>Db)設定され、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径Dbはマス側突出部63の内周面63cの内径Dcより大きく(Db>Dc)設定され、マス側突出部63の内周面63cの内径Dcはハブ52の円筒部53の外周面53aの外径Ddより大きく(Dc>Dd)設定される。
【0079】
ハブ51とダンパマス61との間に介装される弾性部材71は筒状であって、ハブ51の第2ハブ側突出部56の外周面56cとダンパハブ61の内周面62cとの間の第1部分71A、第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bとの間の第2部分71B、マス側突出部63の内周面63cとハブ51の円筒部53の外周面53aとの間の第3部分71C、第1ハブ側突出部55の側面55aとマス側突出部63の側面63aとの間の第4部分71D、ハブ側突出部55とダンパマス61の内周面62bとの間の第5部分71Eとによって構成される(図8参照)。
【0080】
なお、弾性部材71の第1部分71A、第2部分71B、第3部分71C、第4部分71D、第5部分71Eは、ハブ51とダンパマス61の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性が発生する。また、軸方向の相対変位に対して第2部分71Bおよび第4部分71Dは圧縮剛性を発生し、かつ第1部分71A、第3部分71C、第5部分71E共に剪断剛性を発生する。従って、ダンパマス61と弾性部材71は捩り振動、軸振動および曲げ振動をそれぞれ減衰するデュアルモードダンパとして機能するものである。
【0081】
このように構成されたダンパ装置10の製造は、予め、ハブ51およびダンパマス61を鋳造および機械加工等により製造する。
【0082】
次に、図10に示すように、ハブ51とダンパマス61を同軸上でハブ51の円筒部53から放射状に突出する各第2ハブ側突出部56のそれぞれの間にダンパマス61の基部62から突出する各マス側突出部63を対応させる。その状態でダンパマス61を回転中心軸線aに沿ってハブ51側に移動せて、各マス側突出部63が各第2ハブ側突出部56の間を通過した後に、ハブ51を回転させて図7に各マス側突出部63を破線で示すように第2ハブ側突出部56と対向させてハブ51とダンパマス61を位置決めする。
【0083】
しかる後、組み立てられたハブ51およびダンパマス61は、例えば射出成形型にセットされ、ハブ51とダンパマス61との間に形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料がハブ61の第2ハブ側突出部56とダンパマス61の基部62の内周面62cとの間から射出供給されて充填され、凝固して弾性部材71となる。この弾性部材71はハブ61側において円筒部53の外周面53aおよび第1ハブ側突出部55、第2ハブ側突出部56の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス61側において基部62の内周面62b、62cおよびマス側突出部63の広範囲に亘って固着される。
【0084】
この構成のダンパ装置10の捩り振動および軸振動、曲げ振動を減衰する動作について説明する。
【0085】
捩り振動の減衰動作は、弾性部材71の剪断方向に作用する。すなわち弾性部材71の第1部分71A、第2部分71B、第3部分71C、第4部分71D、第5部分71Eは、ハブ51とダンパマス61の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、これにより捩り振動を減衰することができる。
【0086】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、主に弾性部材71の第2部分71Bと第4部分71Dを圧縮する方向に作用する。例えば、図示左方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ51側の第1ハブ側突出部55の側面51aとダンパマス61側のマス側突出部63の側面63aによって第4部分71Dが圧縮される一方、右方向の軸振動あるいは曲げ振動では第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bによって第2部分71Dが圧縮される。
【0087】
ここで、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の側面55a、56aおよびマス側突出部63の側面63a、63bは回転軸1の回転中心軸線aを直交する平面状、すなわち軸振動方向に対して直交する平面に形成され、第1ハブ側突出部55の側面55aとマス側突出部63の側面63aによって弾性部材71の第4部分31Dに効率的な圧縮力の付与がなされ、かつ第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bによって弾性部材71の第2部分71Dに圧縮力を効率的に付与できる。このように効率的に弾性部材71の第4部分31Dと第2部分71Bとが交互に圧縮されるため有効的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材71の第1部分71A、第3部分71C、第5部分71Eは共に剪断剛性を発生し、これによりさらに軸振動および曲げ振動を減衰する。
【0088】
また、弾性部材71はハブ51側において円筒部53の外周面53aおよび第1ハブ側突出部55、第2ハブ側突出部56の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス61側において基部62の62b、62cおよびマス側突出部63の広範囲に亘って溶着されて、ハブ51およびダンパマス61との固着面積は確保されて、ハブ51と弾性部材71およびダンパマス61と弾性部材71との十分な結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ装置10の機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0089】
また、ハブ51とダンパマス61とによって形成された間隙に溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保されたハブ61の第2ハブ側突出部56とダンパマス61の基部62の内周面62cとの間から射出供給されて充填されることから、比較的粘性の高い部材でも容易に供給でき、ダンパ特性を広範囲に亘って容易にチューニングすることができる。換言すると広範囲の周波数に亘る回転軸1の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が可能になりシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0090】
従って、上記第1実施の形態乃至第4実施の形態に加え、ハブ51およびダンパマス61が各々鋳造等によって1部材として構成することから、構成部品点数の削減が得れると共に、組み立て作業の簡素化が可能になり製造コストの削減が期待できる。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記第1実施の形態乃至第4実施の形態では、ハブ51側に1つのハブ側突出部19を設け、ダンパマス21側に第1マス側突出部24と第2マス側突出部28の2つのマス側突出部を設けたが、ハブ51側に2つのハブ側突出部を設け、ダンパマス21側にこのハブ側突出部を隔てて両側に位置する2つのマス側ダンパを設けることも可能であり、またハブ51側およびダンパマス21側にそれぞれ複数のハブ側突出部およびマス側突出部を設けることも可能である。
【0092】
また、上記第5実施の形態では、ハブ51に第1ハブ側突出部55およびリング状に配列された複数の第2ハブ側突出部56を設け、ダンパマス61側にリング状に複数配列されたダンパ側突出部63を設けたが、ハブに第1外周面および第2外周面およびこれら第1外周面と第2外周面との間で半径方向外側に突出して回転中心軸線と略直交する平面状の第1側面および第2側面を有する複数のハブ側突出部を等間隔でリング状に複数列設し、かつダンパマスの円筒状の基部の内周面を隔ててハブ側突出部の第1側面と対向すると共に回転中心軸線と略直交する平面状の側面を有しかつ隣接するハブ側突出部間を挿通可能な形状の複数の第1マス側突出部をリング状に配列し、ハブ側突出部の第2側面と対向すると共に回転中心軸線と略直交する平面状の側面を有する第2マス側突出部を設けることもできる。
【0093】
また、上記各実施の形態では射出成形型にハブおよびダンパマスをセットして溶融材料をハブとダンパマスとの間に射出供給したが、ハブおよびダンパマスを押出成形型にセットし、溶融材料を押し出しにより供給することもできる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明した本発明の回転軸のダンパ装置によると、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに結合される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、ハブの円筒部に半径方向外側に突出するハブ側突出部を突出形成する一方、ダンパハブの円筒状の基部に半径方向内側に突出し、かつ内周面が突出部の外周面より小径のマス側突出部を形成し、これら対向するハブ側突出部の側面およびハブ側突出部の側面を回転中心軸線と略直交する平面状に形成することによって、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、捩り振動を減衰することができると共に、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、ハブ側突出部の側面とマス側突出部の側面によって弾性部材が有効的に圧縮され、効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができるシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0095】
また、弾性部材はハブ側およびダンパマス側において広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材との結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ装置の機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0096】
さらに、ハブ側突出部の外径が第1マス側突出部および第2マス側突出部の内径より大きく設定されることから、万一、ハブとダンパマスとの間に介在する弾性部材が破損したときであっても、ダンパマスがハブから抜け出すことはなく、安全性が維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるダンパ装置の第1実施の形態の概要を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1の弾性部材を省略した分解斜視図である。
【図4】本発明によるダンパ装置の第2実施の形態の概要を示す断面図である。
【図5】本発明によるダンパ装置の第3実施の形態の概要を示す断面図である。
【図6】本発明によるダンパ装置の第4実施の形態の概要を示す断面図である。
【図7】本発明によるダンパ装置の第5実施の形態の概要を示す正面図である。
【図8】図7のI−I断面図である。
【図9】図7の弾性部材を省略した分解斜視図である。
【図10】ダンパ装置の組み立て状態を示す説明図である。
【図11】従来のダンパ装置の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
1 回転軸
10 ダンパ装置
11 ハブ
12 第1分割ハブ
13 ボス部
14 円筒部
14a 外周面(第1外周面)
14b 接合面
14c ネジ孔
15 連結部
16 第2分割ハブ
17 円筒部
17a 外周面(第2外周面)
19 ハブ側突出部
19a 側面(第1側面)
19b 側面(第2側面)
19c 外周面
20 ファスナ(締結手段)
21 ダンパマス
22 第1分割ダンパマス
29 ファスナ(締結手段)
23 基部
23a 内周面
23b 外周面
24 第1マス側突出部
24a 側面
24c 内周面
25 第2分割ダンパマス嵌合部
25a 接合面
25b 嵌合面
26 第2分割ダンパマス
27 基部
27a 内周面
27b 外周面
28 第2マス側突出部
28a 側面
28c 内周面
29 ファスナ(締結手段)
31 弾性部材
51 ハブ
61 ダンパマス
71 弾性部材
52 ボス部
53 円筒部
53a 外周面
55 第1ハブ側突出部
55a 側面
55c 外周面
56 第2ハブ側突出部
56a 側面
56c 外周面
62 基部
62a 外周面
62b 内周面(第1内周面)
62c 内周面(第2内周面)
63 マス側突出部
63a 側面(第1側面)
63b 側面(第2側面)
63c 内周面
71 弾性部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸のダンパ装置に関し、特にエンジンのクランクシャフト等の回転軸の捩じり振動、軸振動および曲げ振動を1個のダンパマスによって減衰するシングルマスタイプのデュアルモードダンパ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジンのクランクシャフト等の回転軸が回転する際には、回転軸に複雑なトルク変動が発生する。このトルク変動に起因してクランクシャフト等の回転軸に発生する振動は、主として捩じり振動、軸振動および曲げ振動の3つの振動が複雑に複合して回転軸およびエンジンの支持状態に応じて種々の振動モードを示す。これらの振動は騒音の発生要因となると共に回転軸自体の応力を低減させる要因になる。
【0003】
そこで、従来、ダンパマスと弾性部材から構成されるダンパ装置を減衰すべき振動方向に対応して複数個配設していた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしダンパマスと弾性部材によって構成されたダンパ装置を複数配設することから、構成が複雑になると共にダンパ装置による広範囲の占有スペースが必要になる。この対策として回転軸の捩じり振動、軸振動および曲げ振動を1個のダンパマスによって減衰するシングルマスタイプのデュアルモードダンパ装置が提案されている。
【0005】
このダンパ装置について、図11に示す断面図を参照して説明する。このダンパ装置は、回転軸101に取り付けられるハブ102と、ダンパマス106と、これらハブ102とダンパマス106との間に介装する弾性部材109とによって構成される。ハブ102は回転軸101の端部に取り付けられるボス部103およびボス部103に連結部104を介して結合された円筒部105を有し、円筒部105は周方向に沿った第1外周面105aと第2外周面105bの間に突出して形成された凸部105cを有している。
【0006】
ダンパマス106は、第1分割ダンパマス107と第2分割ダンパマス108からなり、第1分割ダンパマス107はハブ102の円筒部105の半径方向外側に配置され、内周面が周方向に沿った第1内周面107a、第2内周面107bおよび、第1内周面107aと第2内周面107bとを繋ぐ傾斜面107cとから形成され、第1内周面107aの内径はハブ102の凸部105cの外径より大きく形成され、第2内周面107bの内径は凸部105cの外径より小さく形成されている。第2分割ダンパ108は外周面が第1分割ダンパマス107の第1内周面107aに圧接によって固着され、かつ凸部105cに対向する傾斜面108aを有している。
【0007】
ここで、捩じり振動の減衰動作は、弾性部材109の剪断方向に作用する。すなわちハブ102の円筒部105とダンパマス106との間に配設された弾性部材109の剪断方向に作用して、捩じり振動を減衰することができる。
【0008】
また、軸振動および曲げ振動減衰動作は、第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105cとの間の部分109aおよび第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cとの間の部分109bの圧縮方向に作用する。この弾性部材109の部分109aと109bとが交互に圧縮されて軸振動および曲げ振動が減衰される(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開昭64−26045号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平10−141440号公報(段落番号0009〜0012、図1、図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記図11に示すダンパ装置によると、回転軸101の端部に設けられたハブ102に弾性部材109を介装して支持した単一のダンパマス106によって、回転軸101の捩じり振動、軸振動、曲げ振動を減衰することができる。
【0011】
しかし、軸振動および曲げ振動の減衰は、振動方向、すなわち回転軸101の回転中心軸線aに対して大きく傾斜した第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105c、および第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cによって弾性部材109の部分109aと109bを交互に圧縮して振動を減衰することから、凸部105cによって弾性部材109の部分109aおよび部分109bに付与される押圧力がその傾斜によって分散され、第2分割ダンパマス108の傾斜面108aと凸部105cおよび第1分割ダンパマス107の傾斜面107cと凸部105cとの間による弾性部材109の部分109a、109bの有効的な圧縮付与が阻害されて十分な振動減衰が達成できないことが懸念される。
【0012】
また、ハブ102と弾性部材109および弾性部材109とダンパマス106との固着面積が制限されて十分な固着力の確保が困難で耐久性の低下を招くと共に十分なダンパの機能が確保できないおそれがある。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、1個のダンパマスにより回転軸の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が得られると共に、耐久性および安全性に優れた回転軸のダンパー装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に記載の回転軸のダンパ装置の発明は、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、上記ハブは、上記回転軸に取り付けられるボス部と、該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で周方向に沿う第1外周面および第2外周面と、これら第1外周面と第2外周面との間で半径方向外側に突出して回転中心軸線と直交する平面状の第1側面および第2側面を有するハブ側突出部を有する円筒部とを備え、上記ダンパマスは、上記ハブのハブ側突出部の外周面に対向する内周面を有する円筒状の基部と、該基部の内周面を隔てて半径方向内側に突出して上記ハブ側突出部の第1側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第1マス側突出部および、上記ハブ側突出部の第2側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第2マス側突出部とを備え、上記弾性部材は、上記ハブの円筒部の第2外周面と第2マス側突出部の内周面との間の第1部分と、上記ハブ側突出部の第2側面と第2マス側突出部の側面との間の第2部分と、上記ハブ側突出部の外周面と基部の内周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の第1側面と第1マス側突出部の側面との間の第4部分と、円筒部の第1外周面と第1マス側突出部の内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項1の発明によると、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して剪断剛性を発生し、この剪断剛性により捩り振動を減衰することができる。また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、振動方向となる回転中心軸線に対して直交する平面状に形成されたハブ側突出部の第2側面と第2マス側突出部の側面による弾性部材の第2部分の圧縮および、ハブ側突出部の第1側面と第1マス側突出部の側面による弾性部材の第4部分の圧縮が有効的に交互になされ、この弾性部材の第2部分および第4部分に交互に発生する圧縮剛性によって効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材の第1部分、第3部分、第5部分が共に剪断剛性を発生させ、軸振動および曲げ振動を減衰する。従って、単一のダンパマスによって回転軸の捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰が効率的に図られ、シングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0016】
また、弾性部材はハブ側において円筒部の第1外周面、第2外周面、ハブ側突出部の第1側面、第2側面、外周面の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス側においてダンパマスの基部の内周面、第1マス側突出部の側面と内周面、第2マス側突出部の側面と内周面の広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材の結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1の回転軸のダンパ装置において、上記ダンパマスは、上記基部および第1マス側突出部を備えた第1分割ダンパマスと、上記第2マス側突出部を備えた第2分割ダンパマスと、上記第1分割ダンパマスと第2分割ダンパマスを一体結合する締結手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明によると、ダンパマスを締結手段によって一体結合可能な、基部および第1マス側突出部を備えた第1分割ダンパマスと、第2マス側突出部を備えた第2分割ダンパマスに分割することによって、ハブ側突出部を備えたハブと、このハブ側突出部より小径の内周面を有する第1マス側突出部および第2マス側突出部を有するダンパマスとの組み付けが容易になる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2の回転軸のダンパ装置において、上記第2分割マスは、上記第1分割マスに同軸上に凹設された第2分割ダンパマス嵌合部に先端側から挿入して嵌合する円筒状の基部を有し、該基部の先端側に半径方向内側に上記第2マス側突出部が突出形成されたことを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明によると、第2分割ダンパマスの基部の内周面においての弾性部材が結合されてダンパマスと弾性部材の固着強度が向上すると共に、ダンパ装置の製造にあたり、ハブとダンパマスとによって形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保されたハブの基部と第2分割ダンパマスの基部の内周面との間から供給することが可能になり、比較的粘性の高い溶融材料の供給が容易になり、広範囲のダンパ特性を容易にチューニングすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1の回転軸のダンパ装置において、上記ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、上記第1マス側突出部は、上記隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明によると、ハブ側突出部を円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設する一方、第1マス側突出部を隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設することによって、ハブに形成された隣接するハブ側突出部の間からダンパマスに形成された各第1マス側突出部を挿通し、かつ回転して各ハブ側突出部と第1マス側突出部を対向させることによってハブとダンパマスが容易に組み立てられる。また、ハブおよびダンパマスをそれぞれブロック状の1部材として形成することができて構成部材の削減および組み立て作業の簡素化が得られる。
【0023】
請求項5に記載の回転軸のダンパ装置の発明は、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、上記ハブは、上記回転軸に取り付けられるボス部と、該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で外周面が周方向に沿う円筒部と、該円筒部に上記外周面を隔てて半径方向外側に突出して互いの対向する側面が回転中心軸線と直交する平面状の第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部とを備え、上記ダンパマスは、上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面に対向する第1内周面および第2内周面とこれら第1内周面と第2内周面の間で半径方向内側に突出して上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部のそれぞれの側面に対向する第1側面および第2側面を有し、内周面が上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面より小径であるマス側突出部とを備え、上記弾性部材は、上記第2ハブ側突出部とダンパマスの第2内周面との間の第1部分と、上記第2ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第2側面との間の第2部分と、上記マス側突出部の内周面とハブの円筒部の外周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第1側面との間の第4部分と、上記第1ハブ側突出部とダンパマスの内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明によると、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、捩り振動を減衰することができる。
【0025】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、軸振動方向となる回転中心軸線に対して略直交する平面状に形成されたハブ側の第2ハブ側突出部の側面とダンパマス側のマス側突出部の第2側面による弾性部材の第2部分および第1ハブ側突出部の側面と第2マス側突出部の側面によって第4部分が有効的に交互に圧縮付与され、効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。従って、単一のダンパマスによって回転軸の捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰が効率的に図られ、シングルマスタイプのデュアルモードダンパとして機能が確保できる。
【0026】
また、弾性部材はハブ側において円筒部の外周面、第1ハブ側突出部の側面、第2ハブ側突出部の側面の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス側においてダンパマスの基部の第1内周面、第2内周面、マス側突出部の第1側面、第2側面内周面の広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材との固着強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項5の回転軸のダンパ装置において、上記第1ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、上記マス側突出部は、上記隣接する第1ハブ側突出部の間を挿通可能な形状で上記ダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする。
【0028】
請求項6の発明によると、第1ハブ側突出部を円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設する一方、マス側突出部を隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設することによって、ハブに形成された隣接する第1ハブ側突出部の間にダンパマスに形成された各マス側突出部を挿通して回転することによって各第1ハブ側突出部とマス側突出部を対向することのよってハブとダンパマスが組み立てられ、ハブおよびダンパマスをそれぞれブロック状の1部材として形成することができ、構成部材の削減および組み立て作業の簡素化が得られる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下本発明による回転軸のダンパ装置の各実施の形態を図を参照して説明する。
【0030】
(第1実施の形態)
図1はダンパ装置の断面図であり、図2は図1のA部拡大図、図3は弾性部材を省略した分解斜視図である。
【0031】
ダンパ装置10は、クランクシャフト等の回転軸1の端部にボルト2等によって同軸上に取り付けられるハブ11と、プーリとしての機能を兼備するダンパマス21と、ハブ11とダンパマス21との間に介在するゴム等の弾性部材31を主要部としている。
【0032】
ハブ11は、第1分割ハブ12と、第2分割ハブ16と、これら第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を結合する締結手段であるファスナ20によって構成されている。
【0033】
第1分割ハブ12は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13の半径方向外側に位置して第1外周面である外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、ボス部13と円筒部14をつなぐ連結部15とを有し、円筒部14の端部から連結部15に亘って回転軸1およびダンパ装置10の回転中心軸線aと直交する平坦なリング状の接合面14bが形成され、接合面14bにネジ孔14cが穿設されている。
【0034】
第2分割ハブ16は、第1分割ハブ12の円筒部14の外周面14aと同径で周方向に沿った第2外周面である外周面17aを有する円筒部17と、円筒部17の基端側から半径方向内側にリング状に突出すると共に第1分割ハブ12の接合面14bに接合する接合面18bおよび接合面18bの外周に連続形成されて円筒部14の外周面14aの端縁に嵌合する係合面18aが形成され、かつネジ孔14cに対応する取付孔18cが穿設された取付フランジ部18と、円筒部17の基端から半径方向外側にリング状に突出するハブ側突出部19と有している。ハブ側突出部19の第1側面である側面19aおよび第2側面である側面19bは回転中心軸線aと略直交する平面状、換言すると外周面17aに対して垂直な面に形成されている。更にハブ側突出部19には両側面19a側と19b側を連通する複数の貫通孔19dが穿設されている。
【0035】
この第1分割ハブ12と第2分割ハブ16は、互いの接合面14bと18bを接面し、かつ嵌合面18aと円筒部14の外周面14aの端縁を嵌合させて互いの位置決めをすると共に、取付孔18cを挿通しネジ孔14cに螺合するファスナ20によって一体的に結合される。
【0036】
この結合によりボス部13と同軸上に第1分割ハブ16の円筒部14の外周面14aと第2分割ハブ16の円筒部17が一体的に連続し、円筒部24の外周面14aと円筒部17の外周面17aとの間よりハブ側突出部19が半径方向外側にリング状に突出形成される。
【0037】
ダンパマス21は、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26と、これら第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合する締結手段であるファスナ29によって構成されている。
【0038】
第1分割ダンパマス22は、ハブ11の半径方向外側に同軸上で配置し、内周面23aがハブ側突出部19の外周面19cと対向しかつ外周面23bにプーリ溝が形成された円筒状の基部23を有し、この基部23の回転軸1側の端部から半径方向内側にリング状に突出する第1マス側突出部24が形成されている。第1マス側突出部24の側面24aは、外周が基部23の内周面23aに連続すると共に回転中心軸線aと直交する平面状でハブ側突出部19の側面19aと対向し、かつ内周面24cが円筒部14の外周面14aと対向している。更に第1マス側突出部24には側面24aと外部とを連通する複数の貫通孔24dが穿設されている。
【0039】
第1分割ダンパマス22の回転軸1の反対側の端部には、基部23の内周面23aから半径方向外側に延在するリング状の接合面25aおよび接合面25aの外周に連続する同軸上の嵌合面25bを有して有底の円筒状に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25が凹設されている。また、回転中心軸線aと直交する平面状に形成された接合面25aに複数のネジ孔25dが穿設されている。
【0040】
第2分割ダンパマス26は、第1分割ダンパマス22に凹設された第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bに嵌合する外周面27bおよび基部23の内周面23aと同径の内周面27aを有すると共に接合面25bに接面する接合面27cが形成される円筒状の基部27を有し、基部27の接合面27c側となる先端部側に第2マス側突出部28が半径方向内側に突出形成されている。第2マス側突出部28の側面28aは接合面25aに連続すると共に回転中心軸線aと直交する平面状のリング状でハブ側突出部19の側面19bと対向し、かつ内周面28cが円筒部17の外周面17aと対向している。更に第2マス側突出部28には複数の貫通孔28dが穿設されている。また、基部27には第1分割ダンパマス22のネジ孔25dに対応して取付孔27dが穿設されている。
【0041】
この第1分割ダンパマス22に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25内に第2分割ダンパマス26を挿入して、互いの接合面25bと28cを接面し、かつ嵌合面25bと外周面27bが嵌合して互いの位置決めをすると共に、取付孔27dを挿通しネジ孔25dに螺合するファスナ29によって一体的に結合される。第1分割ダンパマス22と第2ダンパマス26が結合されたダンパマス21は、内周面23aを隔てて第1マス側突出部24と第2マス側突出部28が対向して半径方向内側にリング状に突出形成される。
【0042】
ここで、図2に示すように第1分割ダンパマス22の基部23の内周面23aおよび第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aの内径をDA、第2分割ハブ16に形成されたハブ側突出部19の外周面19cの外径をDB、第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26にそれぞれ形成された第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の内周面24c、28cの内径をDC、第1分割ハブ12および第2分割ハブ16のそれぞれの円筒部14、17の外周面14aおよび17aの外径をDEとすると、第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27aの内径DAは、第2分割ハブ16に形成されたハブ側突出部19の外周面19cの外径DBより大きく(DA>DB)設定され、ハブ側突出部19の外周面19cの外径DBは第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の内周面24c、28cの内径DCより大きく(DB>DC)設定され、第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の外周面24c、28cの内径DCは第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17aの外径DEより大きく(DC>DE)設定される。
【0043】
ハブ11とダンパマス21との間に介装される弾性部材31は筒状であって、第2分割ハブ16の円筒部17の外周面17aと第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aから第2マス側突出部28の内周面28cとの間の第1部分31A、ハブ側突出部19の側面19bと第2マス側突出部28の側面28aとの間の第2部分31Bと、ハブ側突出部19の外周面19cと第1分割ダンパマス22の基部23の内周面23aとの間の第3部分31Cと、ハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aとの間の第4部分31Dと、第1分割ハブ12の円筒部14の外周面14aと第1マス側突出部24の内周面24cとの間の第5部分31Eとによって構成される(図2参照)。
【0044】
なお、弾性部材31の第1部分31A、第2部分31B、第3部分31C、第4部分31D、第5部分31Eは、ハブ11とダンパマス21の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生する。一方、軸方向の相対変位に対して第2部分31Bおよび第4部分31Dは圧縮剛性を発生し、第1部分31A、第3部分31C、第5部分31E共に剪断剛性を発生する。また、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26は1個のダンパマス21として機能し、ダンパマス21と弾性部材31は捩り振動、軸振動および曲げ振動をそれぞれ減衰するデュアルモードダンパとして機能するものである。
【0045】
このように構成されたダンパ装置10の製造は、予め第1分割ハブ12、第2分割ハブ16、第1分割ダンパマス22、第2分割ダンパマス26を鋳造および機械加工等により製造する。
【0046】
次に、第1分割ハブ12と第2分割ハブ16の互いの接合面14bと18bを接面し、かつ嵌合面18aと円筒部14の外周面14aの端縁を嵌合させて互いに位置決めすると共に、ファスナ20を取付孔18cから挿通してネジ孔14cに螺合することによって一体的に結合してハブ11を組み立てる。さらに、第1分割ダンパマス22の第1マス側突出部24と第2分割ダンパマス26の第2マス側突出部28をハブ11のハブ側突出部19を隔てて両側から対向させ、かつ第1分割ダンパマス22に形成された第2分割ダンパマス嵌合部25内に第2分割ダンパマス26をその先端側から挿入して、互いの接合面25aと27cを接面させて互いの位置決めし、ファスナ29の取付孔27dから挿通およびネジ孔25dに螺合させて第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパ26を一体結合してダンパマス21を組み立てる。
【0047】
このように、ダンパマス21を基部23および第1マス側突出部24を備えた第1分割ダンパマス22と、第2マス側突出部28を備えた第2分割ダンパマス26に分割し、これらを互いに結合することによってハブ側突出部19を備えたハブ11と、このハブ側突出部11より小径の内周面24c、28cを有する第1マス側突出部24および第2マス側突出部28を有するダンパマス11との組み立て容易に行われる。
【0048】
しかる後、組み立てられたハブ11およびダンパマス21は、例えば射出成形型にセットされ、ハブ11とダンパマス21との間に形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料が第2分割ハブ16の円筒部17と第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aとの間から射出供給され、ハブ11とダンパマス21との間に形成された迷路状の間隙およびハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の貫通孔19d、24d、28d内を流動してて充填され、凝固して弾性部材31となる。
【0049】
この弾性部材31はハブ11側において第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17a、ハブ側突出部19の側面19a、19bおよび外周面19cの広範囲に亘って固着し、かつダンパマス21側において第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27a、第1マス側突出部24の側面24aと内周面24c、第2マス側突出部28の側面28a、28bおよび内周面28cの広範囲に亘って固着されると共に、ハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の各貫通孔19d、24d、28dにおいても固着される。
【0050】
この構成のダンパ装置10の捩り振動および軸振動、曲げ振動を減衰する動作について説明する。
【0051】
捩り振動の減衰動作は、弾性部材31の剪断方向に作用する。すなわち弾性部材31の第1部分31A、第2部分31B、第3部分31C、第4部分31D、第5部分31Eは、ハブ11とダンパマス21の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、これにより捩り振動を減衰することができる。
【0052】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、主に弾性部材31の第2部分31Bと第4部分31Dを圧縮する方向に作用する。例えば、図示左方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ11側のハブ側突出部19の側面19bとダンパマス21側の第2マス側突出部28の側面28aによって第2部分31Bが圧縮される。一方、右方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aによって第4部分31Dが圧縮される。
【0053】
ここで、ハブ側突出部19の側面19bおよび第2マス側の側面28aは回転軸1の回転中心軸線aを直交する平面状、すなわち軸振動方向に対して直交する平面で対向して形成されることから、押圧力が分散されることなくハブ側突出部19の側面19bと第2マス側の側面28aによって弾性部材31の第2部分31Bに有効的な圧縮力の付与がなされ、かつハブ側突出部19の側面19aと第1マス側突出部24の側面24aによって弾性部材31の第4部分31Dに圧縮力が有効的に付与できる。この弾性部材31の第2部分31Bと第4部分31Dに交互に発生する圧縮剛性によって効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材31の第1部分31A、第3部分31C、第5部分31Eは共に剪断剛性を発生し、これによりさらに軸振動および曲げ振動を減衰する。
【0054】
また、弾性部材31はハブ11側において第1分割ハブ12および第2分割ハブ16の円筒部14、17の外周面14a、17a、ハブ側突出部19の側面19a、19bおよび外周面19cの広範囲に亘って固着し、かつダンパマス21側において第1分割ダンパマス22および第2分割ダンパマス26の基部23、27の内周面23a、27a、第1マス側突出部24の側面24aと内周面24c、第2マス側突出部28の側面28a、28bおよび内周面28cの広範囲に亘って固着されると共に、ハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28の各貫通孔19d、24d、28dにおいても固着される。
【0055】
従ってハブ11およびダンパマス21との固着面積が確保されて、さらに各貫通孔19d、24d、28dの部分においてもハブ側突出部19、第1マス側突出部24、第2マス側突出部28において弾性部材31と結合されてハブ11と弾性部材31およびダンパマス21と弾性部材31との十分な結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動の減衰する動作が得られシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0056】
また、ハブ11とダンパマス21とによって形成された間隙に溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保された第2分割ハブ16の円筒部17と第2分割ダンパマス26の基部27の内周面27aとの間から射出供給することから比較的粘性の高い材料でも容易に供給でき、ダンパ特性を広範囲に亘って容易にチューニングすることができる。換言すると広範囲の周波数に亘る回転軸1の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が可能になる。
【0057】
なお、ハブ側突出部19の外径が第1マス側突出部24および第2マス側突出部28の内径より大きく設定されることから、万一、ハブ11とダンパマス21との間に介在する弾性部材31が破損したときであっても、ダンパマス21がハブ11から抜け出すことはなく、安全性が維持される。
【0058】
(第2実施の形態)
図4を参照して本発明の第2実施の形態を説明する。なお、図4において上記図1乃至図3と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0059】
図4は第2実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ダンパマス21が第1実施の実施の形態と同様に、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26によって構成されている。
【0060】
第1分割ダンパマス22に形成される第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bと、第2分割ダンパマス26の基部27の外周面27bとは回転中心軸線aを中心とする同軸上に形成され、第2分割ダンパマス26の基部27を第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入して接合面25aと27cを当接させて一体結合する。さらに、圧接する第1分割ダンパマス22の嵌合面25bと第2分割ダンパマス26の外周面27bの加締め部30を加締め固定する。他の構成は第1実施の形態と同様である。
【0061】
このように構成された第2実施の形態のダンパ装置10によると、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を圧入結合すると共に加締めて固定する締結手段によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合することから、第1実施の形態に加え、第1実施の形態のファスナ29によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合してダンパマス21を構成する場合に比べ、ファスナ29や第1分割ダンパマス22のネジ孔25dおよび第2分割ダンパマス26の取付孔27d等が不要になり構成の簡素化が得れると共に、組み立て作業が容易になる。
【0062】
また、第2分割ダンパマス26の基部27と第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入結合のみにより、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26との結合剛性が十分に確保できる場合には、加締め固定を省略することによってさらに簡素化を図ることができる。
【0063】
(第3実施の形態)
図5を参照して本発明の第3実施の形態を説明する。なお、図5において上記図1と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0064】
図5は第3実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ハブ11は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13に連結部15を介して結合されると共にボス部13の半径方向外側に同心上で位置して外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、この円筒部14と連続形成された外周面17aを有する円筒部17と、円筒部14および17の連続部分から半径方向内側にリング状に突出するハブ側突出部19とが鋳造等によって一体形成された、いわば第1実施の形態の第1分割ハブ12と第2分割ハブ16が一体結合された形状に構成されている。
【0065】
このように構成された第3実施の形態のダンパ装置10によると、第1実施の形態のにおける第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を鋳造等により一体化した形状にハブ11を構成することから、第1実施の形態に比べ構成部品点数の削減が得れると共に、第1分割ハブ12と第2分割ハブ16を結合する等の作業が不要になり製造コストの削減が期待できる。
【0066】
(第4実施の形態)
図6を参照して本発明の第4実施の形態を説明する。なお、図6において上記図1と同一部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0067】
図6は第4実施の形態におけるダンパ装置10の断面図であり、ハブ11は第3実施の形態と同様に、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部13と、このボス部13に連結部15を介して結合されると共にボス部13の半径方向外側に位置して外周面14aが周方向に沿った円筒部14と、この円筒部14と連続形成された外周面17aを有する円筒部17と、円筒部14および17の連続部分から半径方向内側にリング状に突出するハブ側突出部19とが鋳造等によって一体形成された、いわば第1実施の形態の第1分割ハブ12と第2分割ハブ16が一体結合された形状に構成されている。
【0068】
一方、ダンパマス21は、第2実施の形態と同様に、第1分割ダンパマス22と、第2分割ダンパマス26によって構成され、第1分割ダンパマス22に形成される第2分割ダンパマス嵌合部25の嵌合面25bと、第2分割ダンパマス26の基部27の外周面27bとは回転中心軸線aを中心とする同軸上に形成され、第2分割ダンパマス26の基部27を第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入して接合面25aと27cを当接させて一体結合し、さらに、圧接する第1分割ダンパマス22の嵌合面25bと第2分割ダンパマス26の外周面27bを加締め部30を加締め固定して形成される。
【0069】
このように構成された第4実施の形態のダンパ装置10によると、第3実施の形態に加え、さらに第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を圧入結合すると共に加締めて固定する締結手段によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合することから、第3実施の形態のファスナ29によって第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26を結合してダンパマス21を構成する場合に比べ、ファスナ29や第1分割ダンパマス22のネジ孔25dおよび第2分割ダンパマス26の取付孔27d等が不要になり構成の簡素化が得れると共に、組み立て作業が容易になる。
【0070】
また、第2分割ダンパマス26の基部27と第1分割ダンパ22の第2分割ダンパ嵌合部25の圧入結合のみにより、第1分割ダンパマス22と第2分割ダンパマス26と結合剛性が十分に確保できる場合には、加締め固定を省略することによってさらに簡素化を図ることができる。
【0071】
(第5実施の形態)
図7乃至図10により本発明の第5実施の形態を説明する。図7は本実施の形態によるダンパ装置10の正面図、図8は図7のI−I断面図、図9は弾性部材を省略した分解斜視図である。
【0072】
ダンパ装置10は、クランクシャフト等の回転軸1の端部にボルト2等によって取り付けられるハブ51と、プーリとしての機能を兼備するダンパマス61と、ハブ51とダンパマス61との間に介在するゴム等の弾性部材71を主要部としている。
【0073】
ハブ51は、回転軸1の端部に同軸上でボルト2等によって取り付けられるボス部52と、このボス部52の半径方向外側に位置して外周面53aが周方向に沿った円筒部53と、ボス部52と円筒部53をつなぐ連結部54とを有し、円筒部53の一方の端部、本実施の形態では回転軸1側の端部から半径方向外側にリング状に突出する第1ハブ側突出部55と他方の端部から半径方向外側に突出する複数、本実施の形態では4つの第2ハブ側突出部56が形成されている。
【0074】
第1ハブ側突出部55の第2ハブ側突出部56と対向する側面55aは回転中心軸線aと略直交する平坦面、換言すると円筒部53の外周面53aに対して垂直な面に形成されている。
【0075】
各第2ハブ側突出部56は、円筒部53の端部に沿って等間隔で離間してリング状に列設されて放射状に外周面53aから突出し、各第2ハブ側突出部55の第1ハブ側突出部55と対向する側面56aは、回転中心軸線aと略直交する平面状、換言すると円筒部53の外周面53aに対して垂直な面に形成されている。
【0076】
ダンパマス61は、ハブ51の半径方向外側に同心的に配置されて外周面62aにプーリ溝が形成された円筒状の基部62と、基部62の半径方向内側に等間隔で離間してリング状に列設されて突出する4つのマス側突出部63を有し、列設されたマス側突出63によって基部62の内周を第1内周面である内周面62bと第2内周面である内周面62cに区画している。基部62の内周面62bおよび内周面62cはそれぞれ第1ハブ側突出部55の外周面55cおよび第2ハブ側突出部56の外周面56cと対向している。
【0077】
基部62から半径方向内側にリング状に列設された各マス側突出部63は、それぞれ隣接する第2ハブ側突出部56の間を若干の間隙を有して挿通可能な形状であって、第1側面となる側面63aは回転中心軸線aと略直交する平面で第1ハブ側突出部55の側面55aと対向し、第2側面である側面63bは回転中心軸線aと略直交する平面で第2ハブ側突出部56の側面56aと対向すると共に内周面63cがハブ51の円筒部53の外周面53aと対向している。
【0078】
ここで図8に示すように、ダンパマス61の基部62の内周面62b、62cの内径をDa、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径をDb、マス側突出部63の内周面63cの内径をDc、ハブ52の円筒部53の外周面53aの外径をDdとすると、ダンパマス61の基部62の内周面62b、62cの内径Daは第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径Dbより大きく(Da>Db)設定され、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の外周面55c、56cの外径Dbはマス側突出部63の内周面63cの内径Dcより大きく(Db>Dc)設定され、マス側突出部63の内周面63cの内径Dcはハブ52の円筒部53の外周面53aの外径Ddより大きく(Dc>Dd)設定される。
【0079】
ハブ51とダンパマス61との間に介装される弾性部材71は筒状であって、ハブ51の第2ハブ側突出部56の外周面56cとダンパハブ61の内周面62cとの間の第1部分71A、第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bとの間の第2部分71B、マス側突出部63の内周面63cとハブ51の円筒部53の外周面53aとの間の第3部分71C、第1ハブ側突出部55の側面55aとマス側突出部63の側面63aとの間の第4部分71D、ハブ側突出部55とダンパマス61の内周面62bとの間の第5部分71Eとによって構成される(図8参照)。
【0080】
なお、弾性部材71の第1部分71A、第2部分71B、第3部分71C、第4部分71D、第5部分71Eは、ハブ51とダンパマス61の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性が発生する。また、軸方向の相対変位に対して第2部分71Bおよび第4部分71Dは圧縮剛性を発生し、かつ第1部分71A、第3部分71C、第5部分71E共に剪断剛性を発生する。従って、ダンパマス61と弾性部材71は捩り振動、軸振動および曲げ振動をそれぞれ減衰するデュアルモードダンパとして機能するものである。
【0081】
このように構成されたダンパ装置10の製造は、予め、ハブ51およびダンパマス61を鋳造および機械加工等により製造する。
【0082】
次に、図10に示すように、ハブ51とダンパマス61を同軸上でハブ51の円筒部53から放射状に突出する各第2ハブ側突出部56のそれぞれの間にダンパマス61の基部62から突出する各マス側突出部63を対応させる。その状態でダンパマス61を回転中心軸線aに沿ってハブ51側に移動せて、各マス側突出部63が各第2ハブ側突出部56の間を通過した後に、ハブ51を回転させて図7に各マス側突出部63を破線で示すように第2ハブ側突出部56と対向させてハブ51とダンパマス61を位置決めする。
【0083】
しかる後、組み立てられたハブ51およびダンパマス61は、例えば射出成形型にセットされ、ハブ51とダンパマス61との間に形成された間隙に溶融された弾性部材、すなわち溶融材料がハブ61の第2ハブ側突出部56とダンパマス61の基部62の内周面62cとの間から射出供給されて充填され、凝固して弾性部材71となる。この弾性部材71はハブ61側において円筒部53の外周面53aおよび第1ハブ側突出部55、第2ハブ側突出部56の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス61側において基部62の内周面62b、62cおよびマス側突出部63の広範囲に亘って固着される。
【0084】
この構成のダンパ装置10の捩り振動および軸振動、曲げ振動を減衰する動作について説明する。
【0085】
捩り振動の減衰動作は、弾性部材71の剪断方向に作用する。すなわち弾性部材71の第1部分71A、第2部分71B、第3部分71C、第4部分71D、第5部分71Eは、ハブ51とダンパマス61の捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、これにより捩り振動を減衰することができる。
【0086】
また、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、主に弾性部材71の第2部分71Bと第4部分71Dを圧縮する方向に作用する。例えば、図示左方向の軸振動あるいは曲げ振動ではハブ51側の第1ハブ側突出部55の側面51aとダンパマス61側のマス側突出部63の側面63aによって第4部分71Dが圧縮される一方、右方向の軸振動あるいは曲げ振動では第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bによって第2部分71Dが圧縮される。
【0087】
ここで、第1ハブ側突出部55および第2ハブ側突出部56の側面55a、56aおよびマス側突出部63の側面63a、63bは回転軸1の回転中心軸線aを直交する平面状、すなわち軸振動方向に対して直交する平面に形成され、第1ハブ側突出部55の側面55aとマス側突出部63の側面63aによって弾性部材71の第4部分31Dに効率的な圧縮力の付与がなされ、かつ第2ハブ側突出部56の側面56aとマス側突出部63の側面63bによって弾性部材71の第2部分71Dに圧縮力を効率的に付与できる。このように効率的に弾性部材71の第4部分31Dと第2部分71Bとが交互に圧縮されるため有効的に軸振動および曲げ振動を減衰することができる。さらに、この軸振動および曲げ振動の減衰動作は、弾性部材71の第1部分71A、第3部分71C、第5部分71Eは共に剪断剛性を発生し、これによりさらに軸振動および曲げ振動を減衰する。
【0088】
また、弾性部材71はハブ51側において円筒部53の外周面53aおよび第1ハブ側突出部55、第2ハブ側突出部56の広範囲に亘って固着し、かつダンパマス61側において基部62の62b、62cおよびマス側突出部63の広範囲に亘って溶着されて、ハブ51およびダンパマス61との固着面積は確保されて、ハブ51と弾性部材71およびダンパマス61と弾性部材71との十分な結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ装置10の機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0089】
また、ハブ51とダンパマス61とによって形成された間隙に溶融材料を充填する際、開口面積が十分確保されたハブ61の第2ハブ側突出部56とダンパマス61の基部62の内周面62cとの間から射出供給されて充填されることから、比較的粘性の高い部材でも容易に供給でき、ダンパ特性を広範囲に亘って容易にチューニングすることができる。換言すると広範囲の周波数に亘る回転軸1の捩じり振動、軸振動、曲げ振動の効率的な減衰が可能になりシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0090】
従って、上記第1実施の形態乃至第4実施の形態に加え、ハブ51およびダンパマス61が各々鋳造等によって1部材として構成することから、構成部品点数の削減が得れると共に、組み立て作業の簡素化が可能になり製造コストの削減が期待できる。
【0091】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記第1実施の形態乃至第4実施の形態では、ハブ51側に1つのハブ側突出部19を設け、ダンパマス21側に第1マス側突出部24と第2マス側突出部28の2つのマス側突出部を設けたが、ハブ51側に2つのハブ側突出部を設け、ダンパマス21側にこのハブ側突出部を隔てて両側に位置する2つのマス側ダンパを設けることも可能であり、またハブ51側およびダンパマス21側にそれぞれ複数のハブ側突出部およびマス側突出部を設けることも可能である。
【0092】
また、上記第5実施の形態では、ハブ51に第1ハブ側突出部55およびリング状に配列された複数の第2ハブ側突出部56を設け、ダンパマス61側にリング状に複数配列されたダンパ側突出部63を設けたが、ハブに第1外周面および第2外周面およびこれら第1外周面と第2外周面との間で半径方向外側に突出して回転中心軸線と略直交する平面状の第1側面および第2側面を有する複数のハブ側突出部を等間隔でリング状に複数列設し、かつダンパマスの円筒状の基部の内周面を隔ててハブ側突出部の第1側面と対向すると共に回転中心軸線と略直交する平面状の側面を有しかつ隣接するハブ側突出部間を挿通可能な形状の複数の第1マス側突出部をリング状に配列し、ハブ側突出部の第2側面と対向すると共に回転中心軸線と略直交する平面状の側面を有する第2マス側突出部を設けることもできる。
【0093】
また、上記各実施の形態では射出成形型にハブおよびダンパマスをセットして溶融材料をハブとダンパマスとの間に射出供給したが、ハブおよびダンパマスを押出成形型にセットし、溶融材料を押し出しにより供給することもできる。
【0094】
【発明の効果】
以上説明した本発明の回転軸のダンパ装置によると、回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに結合される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、ハブの円筒部に半径方向外側に突出するハブ側突出部を突出形成する一方、ダンパハブの円筒状の基部に半径方向内側に突出し、かつ内周面が突出部の外周面より小径のマス側突出部を形成し、これら対向するハブ側突出部の側面およびハブ側突出部の側面を回転中心軸線と略直交する平面状に形成することによって、回転軸の捩り振動の減衰動作は、弾性部材がハブとダンパマスの捩り方向の相対変位に対して共に剪断剛性を発生し、捩り振動を減衰することができると共に、軸振動および曲げ振動の減衰動作は、ハブ側突出部の側面とマス側突出部の側面によって弾性部材が有効的に圧縮され、効率的に軸振動および曲げ振動を減衰することができるシングルマスタイプのデュアルモードダンパとしての機能が確保できる。
【0095】
また、弾性部材はハブ側およびダンパマス側において広範囲に亘って固着されてハブおよびダンパマスとの固着面積が確保されて、ハブと弾性部材およびダンパマスと弾性部材との結合強度が確保でき、安定した捩り振動、軸振動、曲げ振動を減衰するダンパ装置の機能が確保できると共に耐久性の向上が期待できる。
【0096】
さらに、ハブ側突出部の外径が第1マス側突出部および第2マス側突出部の内径より大きく設定されることから、万一、ハブとダンパマスとの間に介在する弾性部材が破損したときであっても、ダンパマスがハブから抜け出すことはなく、安全性が維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるダンパ装置の第1実施の形態の概要を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1の弾性部材を省略した分解斜視図である。
【図4】本発明によるダンパ装置の第2実施の形態の概要を示す断面図である。
【図5】本発明によるダンパ装置の第3実施の形態の概要を示す断面図である。
【図6】本発明によるダンパ装置の第4実施の形態の概要を示す断面図である。
【図7】本発明によるダンパ装置の第5実施の形態の概要を示す正面図である。
【図8】図7のI−I断面図である。
【図9】図7の弾性部材を省略した分解斜視図である。
【図10】ダンパ装置の組み立て状態を示す説明図である。
【図11】従来のダンパ装置の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
1 回転軸
10 ダンパ装置
11 ハブ
12 第1分割ハブ
13 ボス部
14 円筒部
14a 外周面(第1外周面)
14b 接合面
14c ネジ孔
15 連結部
16 第2分割ハブ
17 円筒部
17a 外周面(第2外周面)
19 ハブ側突出部
19a 側面(第1側面)
19b 側面(第2側面)
19c 外周面
20 ファスナ(締結手段)
21 ダンパマス
22 第1分割ダンパマス
29 ファスナ(締結手段)
23 基部
23a 内周面
23b 外周面
24 第1マス側突出部
24a 側面
24c 内周面
25 第2分割ダンパマス嵌合部
25a 接合面
25b 嵌合面
26 第2分割ダンパマス
27 基部
27a 内周面
27b 外周面
28 第2マス側突出部
28a 側面
28c 内周面
29 ファスナ(締結手段)
31 弾性部材
51 ハブ
61 ダンパマス
71 弾性部材
52 ボス部
53 円筒部
53a 外周面
55 第1ハブ側突出部
55a 側面
55c 外周面
56 第2ハブ側突出部
56a 側面
56c 外周面
62 基部
62a 外周面
62b 内周面(第1内周面)
62c 内周面(第2内周面)
63 マス側突出部
63a 側面(第1側面)
63b 側面(第2側面)
63c 内周面
71 弾性部材
Claims (6)
- 回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、
上記ハブは、
上記回転軸に取り付けられるボス部と、
該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で周方向に沿う第1外周面および第2外周面と、これら第1外周面と第2外周面との間で半径方向外側に突出して回転中心軸線と直交する平面状の第1側面および第2側面を有するハブ側突出部を有する円筒部とを備え、
上記ダンパマスは、
上記ハブのハブ側突出部の外周面に対向する内周面を有する円筒状の基部と、該基部の内周面を隔てて半径方向内側に突出して上記ハブ側突出部の第1側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第1マス側突出部および、上記ハブ側突出部の第2側面と対向すると共に回転中心軸線と直交する平面状の側面を有しかつハブ側突出部の外周面より小径の第2マス側突出部とを備え、
上記弾性部材は、
上記ハブの円筒部の第2外周面と第2マス側突出部の内周面との間の第1部分と、上記ハブ側突出部の第2側面と第2マス側突出部の側面との間の第2部分と、上記ハブ側突出部の外周面と基部の内周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の第1側面と第1マス側突出部の側面との間の第4部分と、円筒部の第1外周面と第1マス側突出部の内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする回転軸のダンパ装置。 - 上記ダンパマスは、
上記基部および第1マス側突出部を備えた第1分割ダンパマスと、
上記第2マス側突出部を備えた第2分割ダンパマスと、
上記第1分割ダンパマスと第2分割ダンパマスを一体結合する締結手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の回転軸のダンパ装置。 - 上記第2分割マスは、
上記第1分割マスに同軸上に凹設された第2分割ダンパマス嵌合部に先端側から挿入して嵌合する円筒状の基部を有し、該基部の先端側に半径方向内側に上記第2マス側突出部が突出形成されたことを特徴とする請求項2に記載の回転軸のダンパ装置。 - 上記ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、
上記第1マス側突出部は、上記隣接するハブ側突出部の間を挿通可能な形状でダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする請求項1に記載の回転軸のダンパ装置。 - 回転軸に取り付けられるハブと、該ハブの半径方向外側に位置する筒状のダンパマスと、これらハブとダンパマスとの間に介在すると共にハブおよびダンパマスに固着される筒状の弾性部材とを備えた回転軸のダンパ装置において、
上記ハブは、
上記回転軸に取り付けられるボス部と、
該ボス部に連結されると共にボス部と同軸上で外周面が周方向に沿う円筒部と、
該円筒部に上記外周面を隔てて半径方向外側に突出して互いの対向する側面が回転中心軸線と直交する平面状の第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部とを備え、
上記ダンパマスは、
上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面に対向する第1内周面および第2内周面とこれら第1内周面と第2内周面の間で半径方向内側に突出して上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部のそれぞれの側面に対向する第1側面および第2側面を有し内周面が上記第1ハブ側突出部および第2ハブ側突出部の外周面より小径であるマス側突出部とを備え、
上記弾性部材は、
上記第2ハブ側突出部とダンパマスの第2内周面との間の第1部分と、上記第2ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第2側面との間の第2部分と、上記マス側突出部の内周面とハブの円筒部の外周面との間の第3部分と、上記ハブ側突出部の側面とマス側突出部の第1側面との間の第4部分と、上記第1ハブ側突出部とダンパマスの内周面との間の第5部分とを備えたことを特徴とする回転軸のダンパ装置。 - 上記第1ハブ側突出部は、上記円筒部の外周に等間隔でリング状に複数列設され、
上記マス側突出部は、上記隣接する第1ハブ側突出部の間を挿通可能な形状で上記ダンパマスの基部内周面に等間隔でリング状に複数列設されたことを特徴とする請求項5に記載の回転軸のダンパ装置。
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JP2003045471A JP2004257404A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 回転軸のダンパ装置 |
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GB2577096A (en) * | 2018-09-13 | 2020-03-18 | Ford Global Tech Llc | A pulley insert |
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-
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- 2003-02-24 JP JP2003045471A patent/JP2004257404A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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GB2577096A (en) * | 2018-09-13 | 2020-03-18 | Ford Global Tech Llc | A pulley insert |
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JP7249768B2 (ja) | 2018-12-17 | 2023-03-31 | Nok株式会社 | 動吸振器 |
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