JP2004256946A - 生分解性多層フラットヤーン - Google Patents

生分解性多層フラットヤーン Download PDF

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智之 谷口
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Abstract

【課題】生分解性を有するポリ乳酸系生分解性樹脂を用いて、滑り性、ブロッキング防止性及び縦割れ防止性の改善された、耐熱性及び機械的強度に優れ、柔軟性のある多層フラットヤーンを提供することを目的とする。
【解決手段】2種以上の生分解性樹脂からなる多層フラットヤーンであって、中間層がポリ乳酸系樹脂に無機充填剤を0.5〜5重量%を配合させてなり、一方、両外層が脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を0.5〜5重量%配合させてなることを特徴とする生分解性多層フラットヤーン、である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、生分解性を有するポリ乳酸を用いた耐熱性及び機械的強度に優れた柔軟性を有する多層フラットヤーン及びそれを用いたクロスシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装用資材、農業用資材、土嚢、フレコンバッグ等は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなるフラットヤーンが使用されているが、一旦その使命を終え廃棄処分をする際には、フラットヤーンを引き剥がすのに非常に多大な労力を要したり、更に引き剥がしたフラットヤーンを焼却処分を行う際にも、有毒ガスの発生があり、これにより大気中に拡散される可能性がある等、環境汚染等の問題が懸念される。これら問題を解決するために、近年、生分解性機能を備えた生分解性プラスチック、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸等を用いたフイルムやフラットヤーンが注目されている。
【0003】
しかしながら、生分解性プラスチック、例えば、ポリ乳酸系生分解性樹脂を用いてフイルムまたはフラットヤーンに成形した場合、フイルムまたはフラットヤーンの表面の滑り性が悪く、また、フイルムまたはフラットヤーンがブロッキングしやすいという問題があり、さらにフイルムをスリットした後、延伸処理してフラットヤーンに成形した際、縦割れして切れやすくなるという問題点があり、これらの問題を改善する手段が提案されている。
【0004】
まず、ポリ乳酸に滑剤を含有してなるフイルムから得られるフラットヤーンの滑り性を向上することが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、生分解性ポリエステル樹脂を中間層とし、その両面に中間層と同じポリエステル樹脂にアンチブロッキング剤および滑剤を配合した表面層を積層してなる多層フラットヤーンとすることにより、フラットヤーンの滑性の改善とブロッキングを防止することが提案されている(例えば、特許文献2)。
さらに、ポリ乳酸系生分解性樹脂に特定の脂肪酸エステルを特定量添加してフイルム成形及び延伸成形することにより、得られるフラットヤーンの縦割れを防止することが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−131827号公報(2頁)
【特許文献2】
特開2002−115138号公報(2頁)
【特許文献3】
特開2002−155440号公報(2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案ではそれぞれの問題を単独で改善するものであるが、それらの全てを改善することができず、また、得られるフイルムまたはフラットヤーンを熱融着させる際、ポリ乳酸系生分解性樹脂の融点が高いため、熱融着が高温になり、ポリ乳酸系生分解性樹脂が熱劣化して、強度が低下することが懸念される。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、生分解性を有するポリ乳酸系生分解性樹脂を用いて、滑り性、ブロッキング防止性及び縦割れ防止性の改善された、耐熱性及び機械的強度に優れ、柔軟性のある多層フラットヤーンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決すべく、鋭意検討した結果、2種以上の生分解性樹脂を用いて、中間層としてポリ乳酸系樹脂に無機充填剤、特にタルクを配合させ、一方、両外層として脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を配合した構成の生分解性多層フラットヤーンとすることにより、フラットヤーン成形時における滑り性、ブロッキング防止性及び縦割れ防止性が大幅に改善され、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明の要旨は、2種以上の生分解性樹脂からなる多層フラットヤーンであって、中間層がポリ乳酸系樹脂に無機充填剤を0.5〜5重量%を配合させてなり、一方、両外層が脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を0.5〜5重量%配合させてなることを特徴とする生分解性多層フラットヤーン、存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用されるポリ乳酸系樹脂は乳酸重合単位を主成分としたポリ乳酸樹脂である。ポリ乳酸系樹脂の製造方法は、特に制限されない。ポリ乳酸は、乳酸を直接脱水重縮合する方法、例えば、特開平6−65360号には、ポリ乳酸及び構造単位に乳酸を有する乳酸系樹脂の製造方法が開示されている。すなわち、乳酸又は乳酸及び乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸等を有機溶媒及び触媒の存在下、そのまま脱水縮合する直接脱水縮合法である。また、乳酸の環状二量体を開環重合する方法、例えば、米国特許第2,703,316号には、乳酸又は乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を各々、一旦、脱水し環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0009】
乳酸にはL体、D体の2種の光学異性体が存在するが、それらのいずれでも良く、またそれら光学異性体の共重合体も本発明共重合物の成分として用いられる。光学純度が低い場合にはポリマーの結晶性は低くなりポリマーの耐熱性、機械的強度特性が低下するため好ましくない。また原料の乳酸を発酵法で製造する場合はL−乳酸を製造する方が能率的、低コストであり好ましい。従って上述の面から考慮するとL体の含有率は95%以上であるものが好ましい。
【0010】
本発明は、ポリ乳酸は単独の重合体のみに限られず、乳酸重合単位とそれ以外の生分解性あるいは非生分解性重合単位とのランダムあるいはブロックした共重合物またはポリ乳酸樹脂と他の樹脂とブレンドした樹脂組成物に対しても適用することが可能である。
【0011】
本発明で用いるポリ乳酸系樹脂(単独重合体、共重合物やブレンド物)は、融点が140℃以上、好ましくは145〜180℃、望ましくは155〜170℃範囲であって、乳酸重合単位を80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。融点が下限未満であると、ポリ乳酸の耐熱性、機械的強度特性が低下するため好ましくない。なお、融点とは示差熱分析にて20℃/分の昇温速度で測定し、融点ピークの極値の温度を指す。
【0012】
一方、本発明で用いられる脂肪族系ポリエステルとは、主としてグリコール類と脂肪族二塩基酸またはその酸無水物とから合成されるポリエステルを主成分とするものであり、分子量を充分に高くするため、末端にヒドロキシル基を有する比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを合成した後、カップリング剤により、さらにこれらプレポリマーをカップリングさせたものである。
【0013】
上記ポリエステルプレポリマーは、末端基が実質的にヒドロキシル基を有するが、そのためには合成反応に使用するグリコール類及び二塩基酸(またはその酸無水物)の使用割合は、グリコール類をいくぶん過剰に使用する必要がある。
【0014】
原料のグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。エチレンオキシドも利用することができる。これらのグリコール類は併用しても良い。
【0015】
グリコール類と反応して脂肪族系ポリエステルを形成する脂肪族二塩基酸またはその誘導体としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、無水コハク酸、無水アジピン酸あるいはそのジメチルエステル等の低級アルコールエステルなどがあり、また、テレフタル酸などの有機酸であってもよい。
【0016】
また、比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを合成するには、エステル化に続く脱グリコール反応の際に、脱グリコール反応触媒を使用することが必要である。脱グリコール反応触媒としては、例えばアセトアセトイル型チタンキレート化合物、並びに有機アルコキシチタン化合物等のチタン化合物が挙げられる。これらのチタン化合物は併用もできる。これらの例としては、例えばジアセトアセトキシオキシチタン(日本化学産業(株)社製“ナーセムチタン”)、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等が挙げられる。チタン化合物の使用割合は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対して0.001〜1重量部、望ましくは0.01〜0.1重量部である。チタン化合物はエステル化の最初から加えても良く、また脱グリコール反応の直前に加えても良い。
【0017】
本発明の脂肪族系ポリエステルを得るためには、上記で得られた数平均分子量が5,000以上、望ましくは10,000以上の末端基が実質的にヒドロキシル基を有するポリエステルプレポリマーに、更に数平均分子量を高めるためにカップリング剤が使用される。カップリング剤としては、ジイソシアナート、オキサゾリン、ジエポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、特にジイソシアナートが好適である。なお、オキサゾリンやジエポキシ化合物の場合はヒドロキシル基を酸無水物等と反応させ、末端をカルボキシル基に変換してからカップリング剤を使用することが必要である。
【0018】
ジイソシアナートには特に制限はないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリレンジイソシアナートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナートが挙げられ、特にヘキサメチレンジイソシアナートが生成樹脂の色相、ポリエステル添加時の反応性等の点から好ましい。これらカップリング剤の添加量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対して0.1〜5重量部、望ましくは0.5〜3重量部である。
【0019】
本発明で用いられる脂肪族系ポリエステルとしては、融点が120℃以下、好ましくは90〜120℃系、コハク酸と1,4ーブタンジオールと共重合させたポリブチレンサクシネート(融点115℃)、コハク酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールとを共重合させたポリブチレンサクシネート・アジペート(融点95℃)、コハク酸とテレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを共重合させたポリブチレンサクシネート・テレフタレート(融点110℃)、アジピン酸とテレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを共重合させたポリブチレンアジペート・テレフタレート(融点115℃)等が好適である。脂肪族系ポリエステルの融点が上限より高いとフイルムの柔軟性が改善されず、フイルムが硬くなりシワが発生し易くなる。
【0020】
本発明は、2種以上の生分解性樹脂からなる多層フラットヤーンであって、中間層がポリ乳酸系樹脂、好ましくはポリ乳酸系樹脂と脂肪酸系エステルの組成物に無機充填剤を0.5〜5重量%を配合させてなり、一方、両外層が脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を0.5〜5重量%を配合させてなることを特徴とするするものである。
【0021】
中間層にポリ乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルとの組成物を用いる場合の組成割合としては、ポリ乳酸系樹脂50〜95重量%及び脂肪族系ポリエステル5〜50重量%の範囲であり、好ましくはポリ乳酸系樹脂60〜90重量%及び脂肪族系ポリエステル10〜40重量%の範囲である。上記脂肪族系ポリエステルの配合量が5重量%より少ないと、フイルムの柔軟性が不十分でシワになり易く、且つ、フラットヤーンに際に縦割れし易くなり、また、40重量%より多いと、フイルムの延伸性が低下するので、好ましくない。
【0022】
本発明において、上記中間層のポリ乳酸系樹脂単層またはこのポリ乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルとの組成物層に、無機充填材を配合して、フラットヤーンの縦割れを防止し、且つ、両外層との層間剥離を防止することを特徴としている。
【0023】
無機充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ハイドロタルサイト等が好適に用いられる。これらのうちではタルクは中間層の強度を向上させる効果を有しているので好ましい。無機充填材の配合量は、上記ポリ乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルとの組成物に対して、0.5〜5重量%の範囲であり、好ましくは、1〜3重量%の範囲である。配合量が0.5重量%より少ないとフラットヤーンの縦割れ防止及び両外層との層間剥離の防止効果が低下し、一方、5重量%を超えるとフラットヤーンの柔軟性が失われるとともに糸切れが生じて好ましくない。無機充填材を配合する方法としては、上記無機充填材を直接上記ポリ乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルとの組成物に配合してもよいが、高濃度のマスターバッチを製造し、これを所定濃度になるように配合するのが分散性が良好となるので好ましい。
【0024】
また、本発明では、多層フラットヤーンの両外層に用いる脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を配合して、フラットヤーンの滑性及びブロッキングを防止することをも特徴としている。脂肪族系ポリエステルとしては、上記したように、その融点が120℃の以下のもの、好ましくは90〜120℃の範囲のもの、例えば、ポリブチレンサクシネート(融点115℃)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(融点95℃)、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート(融点110℃)、ポリブチレンアジペート・テレフタレート(融点115℃)等が好ましい。
【0025】
ブロッキング防止剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等が挙げられ、単独または2種以上を併合して使用される。これらのうちでは炭酸カルシウムが少量で効果が大きいので好ましい。ブロッキング防止剤は、上記脂肪族ポリエステルに対して、0.5〜5重量%の範囲であり、好ましくは、1〜3重量%の範囲である。配合量が0.5重量%より少ないとフラットヤーンの滑性及びブロッキングを防止する効果が低下し、一方、5重量%を超えるとフラットヤーンの強度が低下するので好ましくない。ブロッキング防止剤を配合する方法としては、上記ブロッキング防止剤を直接上記脂肪族ポリエステルに配合してもよいが、高濃度のマスターバッチを製造し、これを所定濃度になるように配合するのが分散性が良好となるので好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施態様としては、(外層/中間層/外層)の構成として、(ポリブチレンサクシネート・アジペート/ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート・アジペート)、(ポリブチレンサクシネート・アジペート/ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート・アジペート)、(ポリブチレンサクシネート・アジペート/ポリ乳酸とポリブチレンアジペート・テレフタレートとの組成物/ポリブチレンサクシネート・アジペート)、(ポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸とポリブチレンポリブチレンサクシネートとの組成物/ポリブチレンサクシネート)等が挙げられる。
【0027】
さらに、上記の樹脂に対し、必要に応じて、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、結晶核剤、無機フィラー、カーボンブラック、増粘剤、粘度安定剤等を任意の割合で添加することができる。
【0028】
本発明の多層フラツトヤ−ンは、上記の両外層樹脂と中間層樹脂とを、例えば共押出による多層インフレ−ション法やTダイ押出機による多層Tダイ法等による3層フイルム、また、逐次押出ラミネ−ト法で積層された中間層と内外層で構成される3層フィルム、或いは、ドライラミネ−ション法等の種々の製膜法により3層フイルムを得、これをスリツトして延伸処理し、次いで、緩和熱処理を行う。
【0029】
延伸方法は湿式、乾式即ち浴中、スチーム熱ロール、オーブン熱板式の通常の延伸処理を用い、高温下で全延伸倍率は3〜9倍、好ましくは4〜8倍の範囲であり、延伸倍率により強度の調節が容易である。なお、延伸方法は、1段よりも2段延伸が良好である。
2段延伸の1段目の温度は60℃〜110℃で、好ましくは90℃〜105℃で全延伸倍率の30%〜90%、好ましくは60%〜85%の範囲で延伸する。第2段階目の温度は80℃〜120℃で、好ましくは90℃〜115℃の範囲内である。一段の温度が60℃以下でも延伸は可能であるが、耐分繊能力が低下して割れ易い。即ち織劣化が大きい。110℃を超過すると延伸切れし易くなる。
【0030】
更に緩和熱処理(アニール処理)は90℃〜140℃、好ましくは100℃〜130℃が良い。緩和率は5%〜30%が良いが、好ましくは5%〜15%である。緩和熱処理温度が90℃未満であったり、緩和率が5%未満の場合はフラットヤーン経時収縮率が増大する。逆に前者が140℃を超えたり、後者が30%を超えるとヤーン形状が昆布状となり巻姿が悪くなり、且つ生産性が極度の悪化する。
【0031】
上記多層フラツトヤ−ンにあっては、中間層の重量比が50〜90%、望ましくは60〜80%で、かつ両外層の合計重量比が50〜10%、望ましくは40〜20%であるように製造するのが好ましい。中間層の重量比が50%未満となると多層フラットヤーンの強度が不足し、且つ耐熱性が低下するので望ましくない。また、両外層の重量比が10%未満となると接着強度が不足するので望ましくない。このようにして得られた多層フラツトヤ−ンはクロスシートや他の素材、例えばシートや不織布のの補強材として用いられる。
【0032】
上記多層フラツトヤ−ンの繊度は、50デシテクス(dt)以上、望ましくは100〜5000dt、さらに望ましくは、100〜3000dtの範囲である。上記繊度が50dt未満では、強力がなく、シ−トの構成部材として耐久性に劣り望ましくない。また、多層フラツトヤ−ン形状のテープ幅は、1〜50mm、望ましくは1〜20mmの範囲が好適である。
【0033】
この多層フラツトヤ−ンを経糸、緯糸の少なくとも1方の糸として用いて織成または編成してメッシュ状にして、織編布及び不織布が得られる。例えば、織布として平織、綾織、もじり織、絡み織など、編布としてトリコット編、ミラニ−ズ編、ラッセル編など、不織布としては、不織布製造装置などを用いた多数本配列された経糸群及び緯糸群を重ね合わせたものなどが例示される。
【0034】
上記織編布及び不織布は、その多層フラットヤーンの両外層の軟化点以上中間層の軟化点以下の温度に熱処理することにより、多層フラットヤ−ンの経緯交差部(交点)が熱接着され、目ずれが防止できるので好ましい。上記熱処理、すなわち、経緯交差部の目止め加工としては、熱板接触式、熱ロ−ル式、赤外線照射式、高周波ウエルダ−式、熱風テンタ−式などの公知の熱処理方法により行うことができる。ここで、目止め加工は、中間層の高融点成分の融点以下で、且つ、両外層の低融点成分の軟化点以上の温度範囲で行われるが、高融点樹脂の延伸効果を損なうことなく、低融点成分の熱融着が行われることが肝要である。
【0035】
【実施例】
実施例1
融点が160℃のポリ乳酸樹脂80重量%と融点が115℃のポリブチレンサクシネート20重量%とからなる樹脂組成物にタルク3重量%を配合したものをを中間層とし、その両面に融点が95℃のポリブチレンサクシネート・アジペートに炭酸カルシウム2重量%を配合したものを両外層とした3層共押出インフレーションフイルムを10mm巾にスリットして熱板延伸機で延伸し、次いで熱板で緩和熱処理を行った。延伸処理は温度95℃で延伸倍率5.0倍、緩和熱処理は100℃で緩和率6%、延伸速度は65m/分で5.0mm巾、1200dtのフラットヤーンを製造した。
得られたフラットヤーンの物性は引張強度2.4cN/d、破断伸度32.3%で、フラットヤーンは縦割れし難く、且つ、層間剥離し難かった。また、3層共押出インフレーションフイルムはブロッキングがなく、かつ滑性が良好で、フイルムのシワの発生はなく、チューブの安定は良好であった。なお、引張強度と破断伸度の物性はJIS L 1013の測定法に従って行った。
このフラットヤーンを経緯糸として用い、スルザー型織機で経緯10本×10本/2.54cmの打込密度で平織で織り、ついで加熱により95℃で目止め加工を施して織布とした。得られた織布は糸の縦割れもなく、また、層間剥離は見られず、織り適性は良好であった。
【0036】
実施例2
実施例1において、中間層にポリブチレンサクシネートを全く配合することなく、ポリ乳酸樹脂を単体で用いたこと以外は同様にして行った。得られたフラットヤーンは1200dtで、その物性は引張強度2.8g/d、破断伸度25.1%で、フラットヤーンは実施例1よりやや縦割れし易かったが、織り適性は良好であった。また、原反フイルムはシワの発生はなく、チューブの安定は良好であった。
【0037】
比較例1
実施例1において、両外層に炭酸カルシウムを全く添加することなく、且つ、中間層にタルクを全く添加せずに行った。得られる3層共押出インフレーションフイルムはシワが入りやすく、且つ、ブロッキングが激しかった。また、得られたフラットヤーンは1200dtで、その物性は引張強度1.9g/d、延伸伸度15.0%で、フラットヤーンは縦割れし易かった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の生分解性多層フラットヤーンは、特定のポリ乳酸系生分解性樹脂と特定の脂肪酸エステルとを多層構造でフイルム成形することにより、耐熱性及び機械的強度の優れ、且つ、生分解を有する多層フラットヤーンを製造することができる。得られた多層フラットヤーンは、梱包、農業、漁業、林業用のロープやネット用等の撚糸として使用することができる。または経糸、緯糸として用いて織成または編成してメッシュ状にして、織編布及び不織布として利用することが可能である。

Claims (7)

  1. 2種以上の生分解性樹脂からなる多層フラットヤーンであって、中間層がポリ乳酸系樹脂に無機充填剤を0.5〜5重量%を配合させてなり、一方、両外層が脂肪族系ポリエステルにブロッキング防止剤を0.5〜5重量%配合させてなることを特徴とする生分解性多層フラットヤーン
  2. ポリ乳酸系樹脂が融点145〜180℃範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーン。
  3. 脂肪族系ポリエステルが融点90〜120℃範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーン。
  4. 中間層がポリ乳酸系樹脂50〜95重量%及び脂肪族系ポリエステル5〜50重量%の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーン。
  5. 無機充填剤がタルクである請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーン。
  6. ブロッキング防止剤が炭酸カルシウムである請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーン。
  7. 請求項1に記載の生分解性多層フラットヤーンを経緯糸に用いたクロスシート。
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