JP2004262029A - ヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルム - Google Patents
ヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルム Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】基材層の少なくとも片面にヒートシール層を積層してなる積層フィルムであって、
基材層を構成する樹脂が、L−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が、100/0〜97/3であるポリ乳酸系樹脂(A)と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)とからなり、その質量比(A/B)が、100/0〜60/40であり、かつ、
ヒートシール層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、3元以上の共重合体(D)とからなり、その質量比(C/D)が90/10〜30/70であることを特徴とするヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーバーラッピング包装を含む食品や日用雑貨全般の包装を目的としたポリ乳酸系二軸延伸フィルムに関し、ヒートシール性に優れ、しかも収縮しわや波打ちのないシール外観にも優れたヒートシール性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械的強度や耐熱性や寸法安定性に優れる材料としてポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートが知られており、これらを用いた二軸延伸フィルムが産業界で幅広く使用されている。しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、その使用後に廃棄処理される際に、焼却処理を行うと、焼却時の発熱量が高いためその処理中に焼却炉を傷める恐れがあり、埋め立てによる廃棄処理を行うと、これらのプラスチック類は、化学的、生物学的安定性のためにほとんど分解せずに残留する。そのため、近年の環境保全に対する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解可能な生分解性を有し、コンポストでの堆肥化処理が可能な生分解性を有する樹脂からなるフィルムが要求されている。
【0003】
生分解性樹脂の中でもポリ乳酸は、各種でんぷん、糖類などを発酵して得られる乳酸を重合した植物由来の原料で、最終的には再び炭酸ガスと水となって地球的規模で環境リサイクルされる理想的なポリマー原料として各種用途に利用され始めている。ポリ乳酸系延伸フィルムは、引張り強度、引張り弾性率、衝撃強度といった機械的物性に優れるとともに光沢、透明性にも優れており、食品包装を中心とする分野への拡大が期待されている。
【0004】
ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを食品包装用途に適用する場合には、内容物の密封方法として通常はヒートシールが採用されることが多いため、ヒートシール性が強く要求される。しかしながらポリ乳酸系二軸延伸フィルム自身は自己ヒートシール性に乏しく、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1〜3には、ポリ乳酸からなる延伸フィルムに接着剤を介して未延伸フィルムをシーラント材としてラミネートし、ヒートシール性を付与したフィルムが開示されている。しかしながら、これらのフィルムは、ヒートシール性を満足するものの未延伸フィルムの脆さによる衝撃強度低下や異種ポリマーブレンドによる透明性低下は避けられず、用途が限定されやすい。また工程が複数であることから製造コスト、省エネルギー、フィルムロス等省資源の観点からは多大なエネルギーロスとなる。また、コーティングによる積層例として特許文献4では、アクリル樹脂系コーティングが示されているが、未だヒートシール性が十分とは言えない。
【0005】
また、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムにおいては、原料のポリ乳酸樹脂のD%が結晶性、融点を支配しており、D%が3%以下の場合は高結晶性となる。このような原料を主原料とする二軸延伸フィルムは、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性に優れるが、ヒートシール層との密着性が劣るため、ヒートシール性を満足させることは困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特許第3084239号公報
【特許文献2】
特開2001−122289号公報
【特許文献3】
特開2002−173589号公報
【特許文献4】
特開2000−185380号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムに関する従来の上記問題を解決し、ヒートシール性に優れ、しかも収縮しわや波打ちのないシール外観にも優れたヒートシール性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリ乳酸系樹脂又はポリ乳酸系樹脂と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる二軸延伸フィルムを基材層とし、これに特定のポリオレフィン系樹脂からなる層を基材層の少なくとも片面に積層することにより、ヒートシール可能なフィルムが得られることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明は、基材層の少なくとも片面にヒートシール層を積層してなる積層フィルムであって、
基材層を構成する樹脂が、L−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が、100/0〜97/3であるポリ乳酸系樹脂(A)と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)とからなり、その質量比(A/B)が、100/0〜60/40であり、かつ、
ヒートシール層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、バーサチック酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸よりなる群から選ばれた3元以上の共重合体(D)とからなり、その質量比(C/D)が90/10〜30/70であることを特徴とするヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
本発明のヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、基材層の少なくとも片面にヒートシール層を積層してなる積層フィルムであって、基材層を構成するポリ乳酸系樹脂(A)は、L−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が100/0〜97/3であることが必要であり、99/1〜98/2であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂(A)に占めるD−乳酸の比率が3モル%を超えると、ポリ乳酸系樹脂は明確な融点を示さなくなり、結晶性に乏しいものとなる。その結果、厚み精度が著しく悪化し、なおかつ延伸後の熱固定処理による配向結晶化が進行しなくなるため、フィルムの巻き取り時にフィルムに割れや裂けが発生するという問題が生じるだけでなく、二次加工の面でもフィルムテンションによる破断や、ブロッキングによるトラブルが発生する。また、L−乳酸を単独で使用してもよいが、D−乳酸が配合されている方が結晶性が緩和され、製膜性の良いものが得られる。なお、L−乳酸とD−乳酸とは、上記の割合で配合されていれば共重合体であってもよいし、ブレンド体であってもよい。
【0010】
また、ポリ乳酸系樹脂(A)の数平均分子量は5万〜30万の範囲であることが好ましく、より好ましくは8万〜15万である。数平均分子量が5万以下の場合、得られるフィルムの機械的強度が不十分となり、かつ延伸、巻き取り工程中での切断も頻繁に起こり操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を超えると加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0011】
ポリ乳酸系樹脂を得るための重合法としては、縮合重合法及び開環重合法のいずれの方法を採用することも可能であり、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物等を使用してもよい。
【0012】
本発明において、基材層を構成する樹脂は、前記のポリ乳酸系樹脂(A)に加えて、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)を併用することが好ましい。脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)をポリ乳酸系樹脂(A)と併用すると、基材層とヒートシール層との密着性や柔軟性を向上することができる。
【0013】
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)とは、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分からなる共重合ポリエステルを指す。ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、両端にアルコール性水酸基を有するビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。本発明において好ましい具体例としては、脂肪族成分としてアジピン酸と1,4−ブタンジオール、芳香族成分としてテレフタル酸を有する共重合ポリエステルが挙げられる。また、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合等を導入することも出来る。
【0014】
本発明において基材層を構成するポリ乳酸系樹脂(A)と脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の質量比(A/B)は、100/0〜60/40であることが好ましく、95/5〜80/20であることがより好ましい。脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の含有量が40質量%を超えると、透明性が低下すると共に、製膜性や延伸性等の操業性を悪化させ、厚み精度や外観むらに劣るものしか得られない。たとえフィルムが得られたとしても、フィルムの弾性率や透明性が大きく低下すると同時に、熱収縮率が高くなるため、印刷、接着剤コーティング、ヒートシール等の二次加工時に収縮しわや波打ちが発生しシール部の外観不良を招くことになる。前述のように、基材層に脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)を含有させると、基材層とヒートシール層との密着性や柔軟性が向上する。したがって、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の含有量は、要求性能に応じて調整すればよい。例えば、透明性を最重視するならば脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の含有量を少なくし、柔軟性やヒートシール強度を最重視するなら脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の含有量を増やせばよい。
【0015】
基材層を構成する樹脂には、製造工程あるいは二次加工工程でのハンドリング、フィルム走行性の面から滑剤を添加してもよい。滑剤としては、シリカ、二酸化チタン、タルク、アルミナ等の安定な金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム等の安定な金属塩、またはポリ乳酸に対して不活性な有機樹脂からなるいわゆる有機系ビーズなどが好適に用いることが出来る。これらの滑剤はいずれか1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0016】
本発明において、基材層はポリ乳酸系樹脂(A)、又はポリ乳酸系樹脂(A)と脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)とからなる樹脂を二軸延伸したフィルムである。次に、基材層フィルムの製造方法について、一例を挙げて説明する。基材層フィルムの製造方法は、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示できるが、Tダイを用いて溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法により製造する場合には、ポリ乳酸系樹脂(A)に必要に応じて脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)、滑剤、帯電防止剤、可塑剤等を適量配合した樹脂組成物を押出機に供給し、例えばシリンダー温度180〜250℃、Tダイ温度200〜250℃で溶融混練し、20〜40℃に制御された冷却ロールで冷却して、厚み100〜500μmの未延伸シートを得る。
【0017】
未延伸シートの二軸延伸方法としては、テンター方式による同時二軸延伸法、金属ロール及びテンターによる逐次二軸延伸いずれでもよい。例えば、未延伸フィルムを逐次二軸延伸法によってフィルム化する場合には、得られた未延伸フィルムを駆動ロールの回転速度比によってロール表面温度50〜80℃で縦方向に延伸し、引き続き連続して延伸温度70〜100℃で横方向に延伸する。延伸倍率は、特に限定されるものではないが、フィルムの機械的特性を考慮すると、少なくとも縦延伸倍率が2.5倍以上であることが好ましく、かつ面倍率が8倍以上であることが好ましい。縦横の延伸倍率が2.5倍未満であると十分な機械的物性が得られず、実用性に劣るものとなる。また延伸倍率の上限は特に限定されるものではないが、8倍を超えるとフィルム破断が起こりやすくなるため、縦横共に2.5〜8.0倍とすることが好ましく、縦延伸倍率が2.5〜5.0倍、横延伸倍率が2.5〜8.0倍であることが好ましい。上記の延伸処理が行われた後、温度100〜150℃で熱固定処理が施され、リラックス率2〜8%の条件下で熱弛緩処理が行われる。
【0018】
本発明におけるヒートシール層を構成する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)、及びエチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、バーサチック酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸よりなる群から選ばれた3元以上の共重合体(D)の混合物からなることが必要である。
【0019】
本発明において、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)は、酢酸ビニル単位を50〜100質量%含有することが好ましい。酢酸ビニル単位が50質量%より少ない場合、共重合性や安定性の悪化、コストアップを招くことがある。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)は塩素を含有しないことが好ましい。具体的には、塩素化ポリプロピレン等の塩素含有化合物を含まないことが好ましい。基材層フィルム中に塩素含有化合物を含有させることは本発明における環境配慮の意義から好ましくないものである。
【0020】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と混合する3元以上の共重合体(D)とは、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、バーサチック酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸よりなる群から選ばれた3元以上の共重合体であり、これらの3元以上の共重合体は単独で用いてもよいし、成分比率や単量体種の異なる共重合体を複数用いてもよい。特に好ましい形態としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸の3元共重合体である。
【0021】
ヒートシール層を構成する(C)と(D)の質量比(C/D)は、90/10〜30/70であることが必要である。この範囲外であるといずれも基材層への密着性が不足し、またヒートシール性に劣るものとなる。
【0022】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)及び3元共重合体(D)の製造方法には特別な限定はないが、最終の形態がエマルジョンであることが、安全性、作業環境の立場から望ましい。エマルジョンは乳化重合法によるのが一般的であり、重合温度、重合時間、各単量体の添加方法、重合開始剤などについては公知の条件、物を使用できる。
【0023】
また、ヒートシール層を構成する樹脂には、ブロッキングを防止するためのアンチブロッキング剤として、シリカ、コロイダルシリカ、アクリル等の微粒子を、また、滑剤としてカルナバワックス等のワックス類を配合してもよい。
【0024】
本発明のヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、基材層にヒートシール層を積層したものであり、基材層とヒートシール層との積層に際して、両者の密着性を高めるために、予め基材層に、コロナ放電処理、オゾン処理、火炎処理等の表面処理を施してもよい。これらの中では、簡便さの点からコロナ放電処理が最も好ましい。これらの表面処理により、ヒートシール層との積層側の表面張力を高めることが可能である。表面処理は、表面張力が40mN/m以上になるように行うことが好ましい。
【0025】
基材層とヒートシール層との積層方法としては、特別な限定はないが、ヒートシール層を構成する樹脂を溶媒に溶解あるいは分散させた塗剤を、基材層に塗工し、熱風乾燥する方法が好ましい。また、未延伸あるいは一軸延伸フィルムに塗工し、その直後に二軸延伸あるいは二段目の延伸を行うフィルム製造工程中での塗工も可能である。上記のヒートシール層を構成する樹脂を溶解、分散するための溶媒は、使用する素材によって適宜選択すればよく、有機溶剤、水等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。他に、ヒートシール層をホットメルトコーティングにより基材層に形成する方法、フィルムロール状の両者を、ウレタン等の接着剤を介して貼り合わせる方法が挙げられる。
【0026】
本発明におけるヒートシール層は、基材層の片面あるいは両面の全部に形成されるが、製袋上必要な部分のみに形成されていてもよい。部分的にヒートシール層を形成する場合には、一般的なグラビア印刷機を用いることができる。
【0027】
上記方法によって形成されるヒートシール層の厚みは特に限定されないが、0.3〜10μmの範囲が好ましく、さらに1〜5μmの範囲が好ましい。
【0028】
本発明のヒートシール性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、通常のヒートシーラーを用いて、ヒートシールすることができるが、ヒートシール強度は、1N/cm以上であることが好ましく、さらに2N/cm以上であることが好ましい。ヒートシール強度が1N/cm未満であると、包装材料の包装適性が低下する。本発明の積層フィルムは、上記構成のヒートシール層を有するため、低温及び短時間でのヒートシールが可能である。
【0029】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの厚みは特に制限なく、用途、要求性能、価格等によって適宜設定すればよい。一般的には、10〜100μm程度の厚みが適当である。
【0030】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムにおいては、必要に応じて顔料、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等を任意の割合で添加あるいは表面塗布することができる。
【0031】
本発明のヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、基材層の少なくとも片面にヒートシール層を積層してなる積層フィルムであり、この構成単独で包装材料として使用することが可能であるが、他の素材と積層して、包装材料とすることもできる。他の素材としては紙、アルミニウム、樹脂フィルム、印刷インキ等を使用することができ、その構成や積層方法は特に限定されない。
【0032】
【実施例】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものでない。なお、実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
【0033】
(1)ヒートシール強度
MD方向に巾15mm、長さ150mmに切り出したフィルムサンプルを、100℃〜120℃の温度範囲内で、圧力0.1MPa、時間1秒の条件下、ヒートシーラー(テスター産業社製)を用い、フィルムのヒートシール層同志を重ね合わせ熱融着させた。シールバーの巾は10mmとする。ヒートシールサンプルを300mm/minの剥離速度でT型剥離試験を行い、剥離時のピーク値をヒートシール強度とした。本発明においては、ヒートシール強度が1N/cm以上を合格とした。
◎:2N/cm以上
○:1N/cm以上
△:0.5〜1N/cm
×:0.5N/cm以下
【0034】
(2)シール外観
ヒートシール部外観の良いものを○、収縮じわや波打ち現象が見られたものを×とした。
【0035】
(3)熱収縮率
試料長(MD方向)が150mm、試料幅(TD方向)が10mmの試料片を作製し、この試験片を熱風乾燥機に100℃で5分間熱処理した。そして、下記式より、試験片の100℃における縦方向(MD方向)の熱収縮率を求めた。また、試料長(TD方向)が150mm、試料幅(MD方向)が10mmの試料片を作製し、上記と同じ方法により横方向(TD方向)の熱収縮率を求めた。本発明においては、MD、TD方向共に熱収縮率が5%以下であるものを合格とした。
熱収縮率(%)=[(熱処理前試料長−熱処理後試料長)/熱処理前試料長]×100
【0036】
実施例1
ポリ乳酸系樹脂(A)としてカーギル・ダウ・ポリマー社製ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=98.5/1.5(モル比)、融点165℃、数平均分子量105,000)100質量部と、アンチブロッキング剤として不定形シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P、平均粒径1.4μm)0.1質量部とを配合した樹脂組成物を、90mmφの単軸押出機にてTダイ温度230℃で溶融押出し、20℃に温度制御されたキャストロールに密着急冷し、厚み230μmの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムを同時二軸延伸機に導き、ステンター内では予熱温度78℃、延伸温度75℃で3.0倍×3.0倍の同時二軸延伸を行い、続いて横方向の弛緩率を5%として135℃で10秒間熱固定処理を施した後、片面にコロナ放電処理を行い、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた基材層フィルムのコロナ放電処理面に、塩素を含有しないエチレン−酢酸ビニル共重合体(C)とエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸からなる3元共重合体(D)との混合物(質量比70/30)の水系エマルジョン(中央理化工業社製MC−3800、固形分40%)をマイヤーバー8番を用いて塗布後、80℃で1分間乾燥させて厚み5μmのヒートシール層を積層し、ヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0037】
実施例2
ヒートシール層の厚みを1μmにする以外は、実施例1と同様にして、ヒートシール性フィルムを得た。
【0038】
実施例3
ポリ乳酸系樹脂(A)90質量部と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)としてイーストマンケミカル社製イースターバイオウルトラ10質量部とを用いて基材層フィルムの樹脂構成とした以外は、実施例1と同様にしてヒートシール性フィルムを得た。
【0039】
実施例4
ポリ乳酸系樹脂(A)70質量部と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)としてイーストマンケミカル社製イースターバイオウルトラ30質量部とを用いて基材層フィルムの樹脂構成とした以外は、実施例1と同様にしてヒートシール性フィルムを得た。
【0040】
実施例5
ポリ乳酸系樹脂(A)として島津製作所製ポリ乳酸(ラクティ5000、L−乳酸/D−乳酸=99.5/0.5(モル比)、融点174℃、重量平均分子量200,000)100質量部を用いて基材層フィルムの樹脂構成とした以外は、実施例1と同様にしてヒートシール性フィルムを得た。
【0041】
比較例1
実施例1で得られた二軸延伸フィルムにヒートシール層を施すことなく、評価を行った。
【0042】
比較例2
実施例1で得られた二軸延伸フィルムに、エチレン−酢酸ビニル共重合体のみから構成される水系エマルジョン(中央理化工業社製EC1200、固形分50%)をマイヤーバー6番を用いて塗布後、80℃で1分間乾燥させて厚み5μmのヒートシール層を積層し、ヒートシール性フィルムを得た。
【0043】
比較例3
実施例1で得られた二軸延伸フィルムに、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸の3元共重合体(D)のみから構成される水系エマルジョン(中央理化工業社製アクアテックス909、固形分45%)をマイヤーバー6番を用いて塗布後、80℃で1分間乾燥させて厚み5μmのヒートシール層を積層し、ヒートシール性フィルムを得た。
【0044】
比較例4
基材フィルムの構成として、ポリ乳酸系樹脂(A)50質量部、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)50質量部とし、かつヒートシール層の厚みを1μmとする以外は、実施例1と同様にしてヒートシール性フィルムを得た。
【0045】
比較例5
ポリ乳酸系樹脂(A)としてカーギル・ダウ・ポリマー社製ポリ乳酸(L−乳酸/D−乳酸=96.0/4.0(モル比)、融点150℃、数平均分子量105,000)100質量部を用いて基材層フィルムの樹脂構成とした以外は、実施例1と同様にしてフィルム化を行った。
【0046】
比較例6
比較例5と同様にしてフィルム化を行った。ただし、熱固定処理は135℃から120℃に下げて実施した。得られたフィルムに実施例1と同様にしてヒートシール層を積層して、ヒートシール性フィルムを得た。
【表1】
【0047】
実施例に代表される本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、いずれもフィルム製造時の操業性、厚み精度は良好であり、ヒートシールした場合に収縮じわや波打ちが発生せず、良好な外観を有していた。
一方、比較例に代表される本発明を満足しないポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、ヒートシール性が不足したり、あるいは収縮じわや波打ちによるシール外観の悪化を引き起こした。なお、比較例5においては、D−乳酸の含量が高いためポリ乳酸系樹脂の結晶性が低く、フィルムが溶融したり極端な厚みむらが生じ、フィルム化が困難であった。また、比較例6においては、熱固定処理温度を低く設定しても、得られたフィルムの熱収縮率は高く、シール外観も悪いものであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、特定のポリ乳酸系基材フィルムとエチレン−酢酸ビニル共重合体及び3元以上の共重合体を主体とするヒートシール層との密着性に優れるため、ヒートシール強度に優れ、収縮じわや波打ちのないシール外観が得られ、食料品、衣料品、各種商品などの包装袋として好適に使用できる。
Claims (1)
- 基材層の少なくとも片面にヒートシール層を積層してなる積層フィルムであって、
基材層を構成する樹脂が、L−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が、100/0〜97/3であるポリ乳酸系樹脂(A)と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)とからなり、その質量比(A/B)が、100/0〜60/40であり、かつ、
ヒートシール層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)と、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、バーサチック酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸よりなる群から選ばれた3元以上の共重合体(D)とからなり、その質量比(C/D)が90/10〜30/70であることを特徴とするヒートシール性ポリ乳酸系二軸延伸フィルム。
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