JP2004255630A - ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能な、ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の円筒状部材の製造方法は、全芳香族ポリアミド酸塗膜を金型に形成し、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。そして、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、金型から取り外すことを特徴としている。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の円筒状部材の製造方法は、全芳香族ポリアミド酸塗膜を金型に形成し、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。そして、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、金型から取り外すことを特徴としている。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
複写機やプリンタ等の静電複写方式の画像形成装置に用いる、ポリイミドベルト等のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電複写プロセス用の円筒状部材に用いるポリマーは難燃性,強度,電気安定性等が要求され、フッ素樹脂,ポリイミド樹脂が用いられている。なかでも、全芳香族ポリイミドは強度/耐熱性の点で非常に優れた材料である。この、全芳香族ポリイミドを用いて円筒状部材、例えば無端状ベルトを作製する際の問題点としては、イミド転化後のベルトが金型から抜き取り難いといったことが挙げられる。
【0003】
特開平1−141009号公報には、3,3′,4,4′−ビフエニルテトラカルボン酸二無水物とパラフエニレンジアミンを、N,N′−ジメチルアセトアミド中で反応させて得られるポリアミド酸溶液を、1.5×10−5cm/℃以上の線膨張係数を有する金型外面に塗布、乾燥して、イミド転化せしめた後、金型を抜取ることが示されている。
【0004】
また、特許3103084には、金型外面に離型性樹脂(例えばフツ化樹脂、シリコンポリイミド、ポリアミド、フエノ−ル、ポリプロピレン、エポキシ等の樹脂)を使用又は被覆し、その外面に親水性を有する薄い塗布膜を形成して、その上に粘度の低いポリイミド又はポリイミド前駆体を塗布すると、溶液がはじかれることなく一様に塗布される。次いで、加熱すると、ポリイミド前駆体溶液からポリイミドに転化し、強固なポリイミド円筒状部材が得られる。然る後、金型(例えばシリンダ)からの分離は、離型性樹脂の有する離型効果により容易に離脱させることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−141009号公報
【特許文献2】
特許3103084
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらのように、ポリイミド樹脂製円筒状部材を、イミド転化後に金型より抜き取るために、金型の材質を工夫したり、金型表面の材質を工夫することが必要であったため、工程数の増加や、コスト面でも問題があり、より簡易にポリイミド樹脂製円筒状部材を、イミド転化後に金型より抜き取る方法が求められている。
【0007】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能な、ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1) 金型に全芳香族ポリアミド酸溶液を塗布し、全芳香族ポリアミド酸塗膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリアミド酸塗膜を、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、前記金型から取り外す工程と、を有することを特徴とするポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0009】
(2)前記全芳香族ポリイミド皮膜を、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下に放置することで吸湿させることを特徴とする前記(1)に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0010】
(3)前記全芳香族ポリイミド皮膜を、水又は水蒸気に接触させることで吸湿させることを特徴とする前記(1)に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0011】
(4)前記全芳香族ポリイミド皮膜の50度相対湿度90%での飽和吸湿量が、ポリイミド樹脂100gに対し、1.1g〜2.9gであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の円筒状部材の製造方法は、全芳香族ポリアミド酸塗膜を金型に形成し、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。そして、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜を、その吸湿量の50%以上吸湿させた後、金型から取り外すことを特徴としている。
【0013】
本発明の円筒状部材の製造方法では、具体的には、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させると、金型から容易に取り外し可能になるまで膨張するため、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能となり、低コスト化、工程数削減が図れる。これは、金型は湿度で変化しないが、ポリイミドベルトが吸湿することで膨張し長さが長くなるためであると思われる。
【0014】
本発明の円筒状部材の製造方法においては、まず、ポリイミド前駆体である全芳香族ポリアミド酸溶液を、例えば円筒状金型外周面或いは内周面に塗布し、塗膜を形成する。この塗布方法としては、浸漬塗布法、遠心成形やディッピング法など公知の塗布法により行なうことができる。
【0015】
ポリイミド前駆体である全芳香族ポリアミド酸溶液は、テトラカルボン酸の無水物とジアミンを反応させることで得ることができる。テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの混合物が挙げられる、ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0016】
また、全芳香族ポリアミド酸溶液の溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系溶媒等が挙げられ、粘度調整等の目的でこれらの溶媒に芳香族系炭化水素等を少量混合してもよい。
【0017】
また、全芳香族ポリアミド酸溶液には、抵抗調整用にカーボンブラックや導電性ポリマーや金属酸化物を添加してもよい。
【0018】
次に、金型に形成された全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。
【0019】
全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜のイミド転化の前には、乾燥して溶媒を除去することが行なわれるが、この溶媒を除去した全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を金型から取り外し、他の金型に取り付けることも行なわれる。この他の金型は、溶媒と除去した全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜の径よりも若干小さい径のものを使用する。これは、全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜がイミド転化の際に、大きく収縮してしまう場合があり、この収縮により、形成されるポリイミド樹脂皮膜の変形を防止するために行なわれる。
【0020】
そして、溶媒が除去された全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を、加熱することで、イミド転化を施し、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0021】
次に、金型(或いは他の金型)の外周面に形成された全芳香族ポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、金型から取り外す。全芳香族ポリイミド樹脂皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることで、十分に膨張し、金型から容易に取り外すことができる。
【0022】
このポリイミド樹脂皮膜を吸湿させる方法としては、例えば、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下に放置したり、水又は水蒸気に接触させることで行なわれる。
【0023】
絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下にポリイミド樹脂皮膜を放置して吸湿させる場合、例えば、絶対湿度が0.0166884Kg/Kg(DA)以上(好ましくは、0.0243779Kg/Kg(DA)以上、より好ましくは0.0436551Kg/Kg(DA)以上となるように湿度、温度を調整した室に8〜48時間、好ましくは12〜24時間、ポリイミド樹脂皮膜を放置することで、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることができる。
【0024】
また、水又は水蒸気に接触させてポリイミド樹脂皮膜を吸湿させる場合、例えば、ポリイミド樹脂皮膜を、水に浸漬させたり、霧吹きでスプレーしたり、スチーム(水蒸気)を当てたり、蒸したりすることで、ポリイミド樹脂皮膜吸湿量に対しポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることができる。ここで、水の温度としては、30℃以上が好ましく、より好ましくは、50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。水温は高いほうが、短時間で吸湿させることができる観点から、スチームを当てたり、蒸したりすることが好適に行なわれる。
【0025】
ポリイミド樹脂皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることが好ましく、より好ましくは、1g〜3gであり、吸湿量が多過ぎると乾燥に時間がかかるため、好ましくない。
【0026】
ここで、ポリイミド樹脂皮膜(ポリイミド樹脂製円筒状部材)の吸湿量は、当該皮膜をを120℃の乾燥機中に2時間放置し、乾燥前後の質量差を乾燥後の重量で除して算出される。
【0027】
また、ポリイミド樹脂皮膜は、50度相対湿度90%での吸湿量がポリイミド樹脂100gに対し、1.1g〜2.9gであることが好ましい。また、飽和吸水率としては、特にされないが、好ましくは2g以上のものが使用される。
【0028】
以下、代表的なポリイミド樹脂製円筒状部材である中間転写体を例に説明する。
まず、ポリアミド酸溶液にカーボンブラックを分散した溶液を、浸漬塗布法、遠心成形やディッピング法で円筒状金型外周面或いは内周面に塗布して、ポリアミド酸溶液からなる塗膜を形成する。
【0029】
その後、塗膜から溶剤を除去し、この溶剤を除去した塗膜(カーボンブラック分散ポリアミド酸フィルム)を、金型から取り外す。取り外したカーボンブラック分散ポリアミド酸フィルムを、成形時の円筒状金型より径が少し小さな金型に挿入し、加熱することでイミド転化を行い、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0030】
そして、イミド転化したポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させて膨張させることで、円筒状金型より取り外し、適当な幅に切断することでポリイミド樹脂製中間転写体を得る。
【0031】
得られたポリイミド樹脂皮膜には、用途に応じて、例えば、離型層などを表面に形成して筒状部材とすることもできる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0033】
(実施例1)
宇部興産製ユーワニスA(3,3,4,4−ビフェニールテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸のNMP溶液で固形分率が18wt%)にカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製 PH3,揮発分14wt%)を23phr添加した溶液を、ディップ法でφ305の金型外面に塗布後、175℃に設定した乾燥機中に入れ溶剤であるNMPを約70%除去した。この金型を取り出し冷却後、できた円筒状のポリアミド酸フィルムを取り外し、φ302径のステンレス製金型に挿入した。その後、ポリアミド酸をイミド転化するために320℃まで加熱した。
【0034】
このポリイミドベルト付き金型を加熱炉から取り出し、室温まで冷却させた後、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)(28℃:70%)の環境下に24時間放置したところ、容易に金型から抜くことができた。このポリイミドベルトの放置後の吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し0.55gであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を23℃の水中に24時間放置したところ、ポリイミドベルトを金型から容易に抜くことができた。この放置後の吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し1.3gであった。
【0036】
(実施例3)
東レ製トレニース#3000(ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸のNMP溶液で固形分率が21.6wt%)にカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製 PH3,揮発分14wt%)を23phr添加した溶液をディップ法でφ302のステンレス金型外面に塗布後、175℃に設定した乾燥機中に入れ溶剤であるNMPを約70%除去した。この金型を取り出し冷却後、円筒状のポリアミド酸をイミド転化するために380℃まで加熱した。
【0037】
このポリイミドベルト付き金型を加熱炉から取り出し、室温まで冷却させた後、絶対湿度0.0191459Kg/Kg(DA)(28℃:80%)の環境に24時間放置したところ、容易に金型から抜くことができた。このポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し1.15gであった。
【0038】
(実施例4)
実施例3のポリイミドベルト付き金型に、霧吹きスプレーにより 50 ℃の水を十分振り掛けたところ、ポリイミドベルトを金型から容易に抜くことができた。この水を十分振り掛けた後のポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し0.75gであった。
【0039】
(実施例5)
実施例3のポリイミドベルト付き金型を、およそ100℃のスチーム(水蒸気)を十分当てたところ、ポリイミドベルトは金型から容易に抜くことができた。
このスチーム(水蒸気)を十分当てた後のポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し3.4gであった。
【0040】
(比較例1)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を加熱炉より取り出し常温に戻った直後に試した所、ポリイミドベルトを抜くことはできなかった。ベルトを切断して抜き取り吸湿量を測定したところ、ポリイミド樹脂100gに対し0.07gであった。
【0041】
(比較例2)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を、絶対湿度0.0087475Kg/Kg(DA)(23℃:50%)の環境に24時間放置しても金型から抜くことができなかった。このベルトを切断して抜き取り、吸湿量を測定したところ、ポリイミド樹脂100gに対し0.45gであった。
【0042】
以上、実施例から、ポリアミド酸フィルム(溶剤を除去したポリアミド溶液からなる塗膜)を金型に取付け、イミド転化後に吸湿量をポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上にすることで、金型材質や金型表面を気にすることなく容易に抜き取りることが可能なのがわかる。
【0043】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能な、ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
複写機やプリンタ等の静電複写方式の画像形成装置に用いる、ポリイミドベルト等のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電複写プロセス用の円筒状部材に用いるポリマーは難燃性,強度,電気安定性等が要求され、フッ素樹脂,ポリイミド樹脂が用いられている。なかでも、全芳香族ポリイミドは強度/耐熱性の点で非常に優れた材料である。この、全芳香族ポリイミドを用いて円筒状部材、例えば無端状ベルトを作製する際の問題点としては、イミド転化後のベルトが金型から抜き取り難いといったことが挙げられる。
【0003】
特開平1−141009号公報には、3,3′,4,4′−ビフエニルテトラカルボン酸二無水物とパラフエニレンジアミンを、N,N′−ジメチルアセトアミド中で反応させて得られるポリアミド酸溶液を、1.5×10−5cm/℃以上の線膨張係数を有する金型外面に塗布、乾燥して、イミド転化せしめた後、金型を抜取ることが示されている。
【0004】
また、特許3103084には、金型外面に離型性樹脂(例えばフツ化樹脂、シリコンポリイミド、ポリアミド、フエノ−ル、ポリプロピレン、エポキシ等の樹脂)を使用又は被覆し、その外面に親水性を有する薄い塗布膜を形成して、その上に粘度の低いポリイミド又はポリイミド前駆体を塗布すると、溶液がはじかれることなく一様に塗布される。次いで、加熱すると、ポリイミド前駆体溶液からポリイミドに転化し、強固なポリイミド円筒状部材が得られる。然る後、金型(例えばシリンダ)からの分離は、離型性樹脂の有する離型効果により容易に離脱させることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−141009号公報
【特許文献2】
特許3103084
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらのように、ポリイミド樹脂製円筒状部材を、イミド転化後に金型より抜き取るために、金型の材質を工夫したり、金型表面の材質を工夫することが必要であったため、工程数の増加や、コスト面でも問題があり、より簡易にポリイミド樹脂製円筒状部材を、イミド転化後に金型より抜き取る方法が求められている。
【0007】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能な、ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1) 金型に全芳香族ポリアミド酸溶液を塗布し、全芳香族ポリアミド酸塗膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリアミド酸塗膜を、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、前記金型から取り外す工程と、を有することを特徴とするポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0009】
(2)前記全芳香族ポリイミド皮膜を、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下に放置することで吸湿させることを特徴とする前記(1)に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0010】
(3)前記全芳香族ポリイミド皮膜を、水又は水蒸気に接触させることで吸湿させることを特徴とする前記(1)に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0011】
(4)前記全芳香族ポリイミド皮膜の50度相対湿度90%での飽和吸湿量が、ポリイミド樹脂100gに対し、1.1g〜2.9gであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の円筒状部材の製造方法は、全芳香族ポリアミド酸塗膜を金型に形成し、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。そして、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜を、その吸湿量の50%以上吸湿させた後、金型から取り外すことを特徴としている。
【0013】
本発明の円筒状部材の製造方法では、具体的には、金型に形成された全芳香族ポリイミド皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させると、金型から容易に取り外し可能になるまで膨張するため、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能となり、低コスト化、工程数削減が図れる。これは、金型は湿度で変化しないが、ポリイミドベルトが吸湿することで膨張し長さが長くなるためであると思われる。
【0014】
本発明の円筒状部材の製造方法においては、まず、ポリイミド前駆体である全芳香族ポリアミド酸溶液を、例えば円筒状金型外周面或いは内周面に塗布し、塗膜を形成する。この塗布方法としては、浸漬塗布法、遠心成形やディッピング法など公知の塗布法により行なうことができる。
【0015】
ポリイミド前駆体である全芳香族ポリアミド酸溶液は、テトラカルボン酸の無水物とジアミンを反応させることで得ることができる。テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの混合物が挙げられる、ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0016】
また、全芳香族ポリアミド酸溶液の溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系溶媒等が挙げられ、粘度調整等の目的でこれらの溶媒に芳香族系炭化水素等を少量混合してもよい。
【0017】
また、全芳香族ポリアミド酸溶液には、抵抗調整用にカーボンブラックや導電性ポリマーや金属酸化物を添加してもよい。
【0018】
次に、金型に形成された全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する。
【0019】
全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜のイミド転化の前には、乾燥して溶媒を除去することが行なわれるが、この溶媒を除去した全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を金型から取り外し、他の金型に取り付けることも行なわれる。この他の金型は、溶媒と除去した全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜の径よりも若干小さい径のものを使用する。これは、全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜がイミド転化の際に、大きく収縮してしまう場合があり、この収縮により、形成されるポリイミド樹脂皮膜の変形を防止するために行なわれる。
【0020】
そして、溶媒が除去された全芳香族ポリアミド酸溶液塗膜を、加熱することで、イミド転化を施し、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0021】
次に、金型(或いは他の金型)の外周面に形成された全芳香族ポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、金型から取り外す。全芳香族ポリイミド樹脂皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることで、十分に膨張し、金型から容易に取り外すことができる。
【0022】
このポリイミド樹脂皮膜を吸湿させる方法としては、例えば、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下に放置したり、水又は水蒸気に接触させることで行なわれる。
【0023】
絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下にポリイミド樹脂皮膜を放置して吸湿させる場合、例えば、絶対湿度が0.0166884Kg/Kg(DA)以上(好ましくは、0.0243779Kg/Kg(DA)以上、より好ましくは0.0436551Kg/Kg(DA)以上となるように湿度、温度を調整した室に8〜48時間、好ましくは12〜24時間、ポリイミド樹脂皮膜を放置することで、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることができる。
【0024】
また、水又は水蒸気に接触させてポリイミド樹脂皮膜を吸湿させる場合、例えば、ポリイミド樹脂皮膜を、水に浸漬させたり、霧吹きでスプレーしたり、スチーム(水蒸気)を当てたり、蒸したりすることで、ポリイミド樹脂皮膜吸湿量に対しポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることができる。ここで、水の温度としては、30℃以上が好ましく、より好ましくは、50℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。水温は高いほうが、短時間で吸湿させることができる観点から、スチームを当てたり、蒸したりすることが好適に行なわれる。
【0025】
ポリイミド樹脂皮膜は、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させることが好ましく、より好ましくは、1g〜3gであり、吸湿量が多過ぎると乾燥に時間がかかるため、好ましくない。
【0026】
ここで、ポリイミド樹脂皮膜(ポリイミド樹脂製円筒状部材)の吸湿量は、当該皮膜をを120℃の乾燥機中に2時間放置し、乾燥前後の質量差を乾燥後の重量で除して算出される。
【0027】
また、ポリイミド樹脂皮膜は、50度相対湿度90%での吸湿量がポリイミド樹脂100gに対し、1.1g〜2.9gであることが好ましい。また、飽和吸水率としては、特にされないが、好ましくは2g以上のものが使用される。
【0028】
以下、代表的なポリイミド樹脂製円筒状部材である中間転写体を例に説明する。
まず、ポリアミド酸溶液にカーボンブラックを分散した溶液を、浸漬塗布法、遠心成形やディッピング法で円筒状金型外周面或いは内周面に塗布して、ポリアミド酸溶液からなる塗膜を形成する。
【0029】
その後、塗膜から溶剤を除去し、この溶剤を除去した塗膜(カーボンブラック分散ポリアミド酸フィルム)を、金型から取り外す。取り外したカーボンブラック分散ポリアミド酸フィルムを、成形時の円筒状金型より径が少し小さな金型に挿入し、加熱することでイミド転化を行い、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0030】
そして、イミド転化したポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させて膨張させることで、円筒状金型より取り外し、適当な幅に切断することでポリイミド樹脂製中間転写体を得る。
【0031】
得られたポリイミド樹脂皮膜には、用途に応じて、例えば、離型層などを表面に形成して筒状部材とすることもできる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0033】
(実施例1)
宇部興産製ユーワニスA(3,3,4,4−ビフェニールテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸のNMP溶液で固形分率が18wt%)にカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製 PH3,揮発分14wt%)を23phr添加した溶液を、ディップ法でφ305の金型外面に塗布後、175℃に設定した乾燥機中に入れ溶剤であるNMPを約70%除去した。この金型を取り出し冷却後、できた円筒状のポリアミド酸フィルムを取り外し、φ302径のステンレス製金型に挿入した。その後、ポリアミド酸をイミド転化するために320℃まで加熱した。
【0034】
このポリイミドベルト付き金型を加熱炉から取り出し、室温まで冷却させた後、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)(28℃:70%)の環境下に24時間放置したところ、容易に金型から抜くことができた。このポリイミドベルトの放置後の吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し0.55gであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を23℃の水中に24時間放置したところ、ポリイミドベルトを金型から容易に抜くことができた。この放置後の吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し1.3gであった。
【0036】
(実施例3)
東レ製トレニース#3000(ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミド酸のNMP溶液で固形分率が21.6wt%)にカーボンブラック(Special Black 4 Degussa製 PH3,揮発分14wt%)を23phr添加した溶液をディップ法でφ302のステンレス金型外面に塗布後、175℃に設定した乾燥機中に入れ溶剤であるNMPを約70%除去した。この金型を取り出し冷却後、円筒状のポリアミド酸をイミド転化するために380℃まで加熱した。
【0037】
このポリイミドベルト付き金型を加熱炉から取り出し、室温まで冷却させた後、絶対湿度0.0191459Kg/Kg(DA)(28℃:80%)の環境に24時間放置したところ、容易に金型から抜くことができた。このポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し1.15gであった。
【0038】
(実施例4)
実施例3のポリイミドベルト付き金型に、霧吹きスプレーにより 50 ℃の水を十分振り掛けたところ、ポリイミドベルトを金型から容易に抜くことができた。この水を十分振り掛けた後のポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し0.75gであった。
【0039】
(実施例5)
実施例3のポリイミドベルト付き金型を、およそ100℃のスチーム(水蒸気)を十分当てたところ、ポリイミドベルトは金型から容易に抜くことができた。
このスチーム(水蒸気)を十分当てた後のポリイミドベルトの吸湿量はポリイミド樹脂100gに対し3.4gであった。
【0040】
(比較例1)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を加熱炉より取り出し常温に戻った直後に試した所、ポリイミドベルトを抜くことはできなかった。ベルトを切断して抜き取り吸湿量を測定したところ、ポリイミド樹脂100gに対し0.07gであった。
【0041】
(比較例2)
実施例1のポリイミドベルトベルト付き金型を、絶対湿度0.0087475Kg/Kg(DA)(23℃:50%)の環境に24時間放置しても金型から抜くことができなかった。このベルトを切断して抜き取り、吸湿量を測定したところ、ポリイミド樹脂100gに対し0.45gであった。
【0042】
以上、実施例から、ポリアミド酸フィルム(溶剤を除去したポリアミド溶液からなる塗膜)を金型に取付け、イミド転化後に吸湿量をポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上にすることで、金型材質や金型表面を気にすることなく容易に抜き取りることが可能なのがわかる。
【0043】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、金型の材質や表面材質の特別な工夫が必要なく、ポリイミド樹脂製円筒状部材を金型から容易に抜き取ることが可能な、ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 金型に全芳香族ポリアミド酸溶液を塗布し、全芳香族ポリアミド酸塗膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリアミド酸塗膜を、イミド転化させて全芳香族ポリイミド皮膜を形成する工程と、
前記全芳香族ポリイミド樹脂皮膜を、ポリイミド樹脂100gに対し0.5g以上吸湿させた後、前記金型から取り外す工程と、を有することを特徴とするポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。 - 前記全芳香族ポリイミド皮膜を、絶対湿度0.0166884Kg/Kg(DA)以上の環境下に放置することで吸湿させることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
- 前記全芳香族ポリイミド皮膜を、水又は水蒸気に接触させることで吸湿させることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
- 前記全芳香族ポリイミド皮膜の50度相対湿度90%での飽和吸湿量がポリイミド樹脂100gに対し、1.1g〜2.9gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法。
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JP2003046983A JP2004255630A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ポリイミド樹脂製円筒状部材の製造方法 |
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