JP2001152013A - 熱安定性半導電ポリアミド酸組成物及びその使用 - Google Patents

熱安定性半導電ポリアミド酸組成物及びその使用

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JP2001152013A
JP2001152013A JP33576499A JP33576499A JP2001152013A JP 2001152013 A JP2001152013 A JP 2001152013A JP 33576499 A JP33576499 A JP 33576499A JP 33576499 A JP33576499 A JP 33576499A JP 2001152013 A JP2001152013 A JP 2001152013A
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film
polyamic acid
semiconductive
aromatic polyimide
belt
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Naoki Nishiura
直樹 西浦
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Original Assignee
Gunze Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】より熱的に安定した電気抵抗特性を有する半導
電ポリアミド酸組成物とその使用例を提供すること。 【解決手段】カ−ボンブラックの有するDBP吸油量
(g/100g)を揮発分(重量%)で除した値をスト
ラクチャ−指数とし、これが100以下であるカ−ボン
ブラック25〜10重量%とポリアミド酸75〜90重
量%とが混合されていることを特徴とする熱安定性半導
電ポリアミド酸組成物。該組成物の中の例えば熱硬化性
芳香族ポリイミドの前駆体を相当する無端管状芳香族ポ
リイミドフイルムとして得た成形体は、カラー複写機の
中間転写・加熱定着用ベルトの基体として有効に使用さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、より改良された熱
安定性半導電ポリアミド酸組成物とその使用に関する。
該組成物は種々の形態で成形(型)されるが、中でも熱
安定性半導電無端管状芳香族ポリイミドフイルムは、カ
ラー複写機の中間転写・加熱定着用ベルトとしての使用
が有効である。
【0002】
【従来の技術】一般に可能な限り導電性の高いカ−ボン
ブラックを使い、これを可能な限り少量、ポリイミドに
混合分散し半導電性を付与して、例えばこれを半導電性
無端管状フイルムに成形したものを、トナ−複写機の熱
定着を兼ねた中間転写用ベルトとして使用する試みが成
されている。該ベルトは、基体がポリイミドであること
で耐熱性、機械的性質、耐薬品性については卓越してい
るが、しかしながら特に高温・連続使用下での半導電性
(電気抵抗特性)の安定性については、十分なる満足を
見ていないのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記問題になっている
電気抵抗特性は、特にトナ−の加熱定着動作の長期間の
反復による電気抵抗値性の変動である。この原因は、加
熱−冷却を長期間繰り返すことで、ポリイミド中のカ−
ボンブラックの分散状態(ストラクチャ−破壊か?、移
動による凝集か?)が変化するためではないかと考えら
れるが定かではない。中間転写方式によるカラ−複写に
おいて、加熱定着も同時に行うことは種々の点で極めて
価値の高いものであるが、この電気抵抗値性の変動は画
像品質にとって致命的欠点になる。ポリイミドをベ−ス
にもってこれを転写兼加熱定着用ベルトとして長期間に
渡って安心して実用できるものにするためには、前記問
題の解決は避けて通れない事項である。本発明は、この
中間転写兼加熱定着方式のカラ−複写の問題に限らず、
特に長期間に渡る加熱−冷却を反復するような用途に対
しても問題となるような電気抵抗の変動をきたさない手
段について鋭意検討した結果、達成したものである。そ
の解決手段は次の通りである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は請求項1を
特定発明とし、更にこれに従属して請求項2〜4を好ま
しい発明として提供し、そして関連発明として、請求項
5で用途も特徴として提供し解決をはかるものである。
その特定発明は、カ−ボンブラックの有するDBP吸油
量(g/100g)を揮発分(重量%)で除した値をス
トラクチャ−指数とし、これが100以下であるカ−ボ
ンブラック25〜10重量%とポリアミド酸75〜90
重量%とが混合された熱安定性半導電ポリアミド酸組成
物を特徴とするものである。以下本発明を次の実施形態
で詳細に説明する。
【0005】
【発明の実施の形態】まず本発明のマトリックス樹脂と
なるポリアミド酸について説明する。ポリアミド酸(ポ
リアミック酸とも呼んでいる)(以下PAdと略す)
は、一般に脂肪族又は芳香族の有機ジアミンと脂肪族又
は芳香族の有機テトラカルボン酸2無水物との当モル量
を重縮合反応(一般に有機極性溶媒中で常温以下の低
温)して得るポリイミド(以下PIと略す)の前駆体で
あるが、本発明では脂肪族又は芳香族の有機ジアミンと
脂肪族又は芳香族の有機トリカルボン酸1無水物との当
モル量を重縮合反応して得るポリアミドイミド(以下P
AIと略す)の前駆体も含んでいる。従ってこのPAd
は加熱処理等により、分子内イミド化反応して最終のP
I又はPAIに変わるポリマと言うものである。しかし
仮にPAdの生成が、更に進んでイミド化反応してもそ
れが有機極性溶媒に溶解している状態で得られるのであ
るならば該PAdの範疇とする。尚該イミド化反応が進
んでも有機極性溶媒に溶解するものは、PIでは熱可塑
性のPIそしてPAIそのものにその傾向が見られる。
【0006】前記PIのPAdは、より高い耐熱性、耐
薬品性、機械的性質を有する成形(型)体が得られるこ
とから、芳香族PAdであるのがよい。合成の具体的方
法を例示すると次の通りである。まず熱可塑性のPIに
対しては、例えばピロメリット酸2無水物、2、2′、
3、3′―ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、3、
3′、4、4′―ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無
水物、ビス(2、3―ジカルボキシフェニル)メタン2
無水物等の有機酸2無水物のいずれか1種(2〜3種で
も良い)と、ビス[4―{3―(4―アミノフェノキ
シ)ベンゾイル}フェニル]エーテル、4、4′―ビス
(3―アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4―(3
―アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2、2′―
ビス[4―(3―アミノフェノキシ)フェニル]プロパ
ン、3、3′―ジアミノベンゾフェノン等の有機ジアミ
ンのいずれか1種(2〜3種でも良い)との当モル量を
ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメ
チルスルホオキシド、Nーメチルピロリドン等の非プロ
トン性の極性溶媒中で重縮合反応する。この時の反応温
度を常温以下とすればPAd溶液として得られるが、常
温以上の加熱下であればイミド化まで進んでイミド基の
多いPI溶液として得られる。尚、熱可塑性のPIは前
記原料からも判るように、ポリマ主鎖中に2〜3個の−
O−、−SO2―、―CO−、アルキレン基(C3以
上)等を有するものに見られる。これらはPIでも柔軟
性があってTgも低い。このことがPIの状態になって
も前記溶媒に溶解し易い理由と考えられる。
【0007】一方熱硬化性のPIでは、前記熱可塑性P
Iとは異なり、PAdの状態でのみ前記溶媒に溶解する
ので、イミド化までも進むような重縮合反応をしてはな
らない。つまり該反応は常温以下で行ない、イミド化反
応を止める必要がある。但しイミド化反応が起こっても
該溶媒に溶解しない程度であればそれは許容される。具
体的には例えば前記の有機酸2無水物とP―フェニレン
ジアミン、4、4′―ジアミノジフェニル、4、4′―
ジアミノジフェニルメタン、4、4′―ジアミノジフェ
ニルエーテル等のいずれか1種(2〜3種混合でもよ
い)の有機ジアミンとを当モル量、前記溶媒中で10〜
20°C程度の低温を維持しながら反応させる。
【0008】又PAIの場合には、有機トリカルボン酸
1無水物として、例えばトリメリット酸1無水物、有機
ジアミンとしては前記例示するものが組み合わされて、
これも当モル量で前記溶媒中で重縮合反応することで得
られる。PAIではアミド基を有するためかイミド化ま
で反応が進んでも該溶媒に溶解し易いので反応温度を常
温より高くしてイミド化もしてPAI溶液の状態で得て
も良い。尚、前記PAdに於いていずれの場合も、該溶
媒に溶解するとか、溶融して成形できるようであれば、
可能な限りイミド化は進行したPAdであるのがよい。
これによって後述するCBとの混合分散性を改悪するよ
うなこともない。
【0009】次に前記ストラクチャ−指数(以下S指数
と呼ぶ)として特定される100以下のカ−ボンブラッ
ク(以下単にCBと呼ぶ)について説明する。まず本発
明は前記課題を解決するために種々検討する間に、本来
CBの有するDBP吸油量(g/100g)を、同じく
有する揮発分(重量%)で除したもの(DBP吸油量/
揮発分)を因子として、これをもって検討すると容易に
解決できる見通しを得、更にその値について依存の有無
を見ると、ほぼ100を境にそれ以下であるCBの使用
に、より効果的解決を見ることができ達成を見たもので
ある。従って該指数は、前記PAdに対して課題解決の
ためにそれ固有のものとして見い出されたものであり、
仮りに同一課題でもって他の樹脂に適用しても本発明に
言う課題は解決されるものではないと言うことになる。
ここでDBP吸油量は、JIS K6221 A法によ
り測定されたDBP(ヂブチルフタレ−トの吸収量でg
/100gで示し、そして揮発分は、各製造法により得
られたCBを950°Cで7分間加熱した場合の減量を
重量%で示したものである。尚、S指数は換言するとC
Bの有するストラクチャ−の発達の度合いを意味するも
のといえるが、本発明はこのストラクチャ−が、特に半
導電性に対して、熱的に安定性を保つと言う新たな知見
の上に立って成り、しかもそのストラクチャ−も余りに
も過分な発達よりも、むしろ低発達のストラクチャ−を
有するCBを選択すると言うことになる。
【0010】CBの有するDBP吸油量及び揮発分(以
下諸特性と呼ぶ)は、製造方法によって異なるが、基本
的にはその各量には関係なく、前記S指数の値がほぼ1
00以下、好ましくは80以下、更には60以下になれ
ばよいことになる。この様な条件にあるCBであること
で、PAdとの親和性もより良化され混合分散性も良く
なり、所望する半導電性も安定した状態で効率的に付与
された上で、本発明の前記課題をより高いレベルで一挙
に解決することができるのである。尚下限については可
能な限り小さい程、より効果は大きくなるが、あまりに
も小さいと、所望する電気抵抗を発現するに要するCB
の混合量をより多くする必要がある。これは成形(型)
性を悪くするばかりではなく、ポリイミド自身の機械的
特性を改悪することになる。これ等のことを考慮すると
下限のS指数は5程度、好ましくは10、更には20と
するのがよい。
【0011】また前記諸特性の各値は、S指数100以
下を前提で特定されるが、前記好ましい範囲のS指数の
CBという点から、DBP吸油量は70〜600g/1
00g、揮発分は1.5〜25重量%の中で選ぶことを
目安とするのがよい。
【0012】前記S指数100以下のCBの選択に当た
っては、まずDBP吸油量はより少なく、揮発分はより
多いものと言うことになる。これは従来技術に見られる
DBP吸油量は、より多く、つまりストラクチャ−の発
達が良いものを選ぶこと。そして揮発分(CBの製造過
程で形成される副成分、つまり有機酸化物(カルボキシ
ル、ヒドロキシル、キノン、ラクトン等)であると言わ
れている)は少ないもの、つまり純度の高いものを選ぶ
ことがよいとされたこととは、本発明は逆の新しい技術
概念で成り立っていると言える。これは混合するPAd
自身が他の樹脂とは全く異なることによって、CBとの
間で特異な分散挙動をとることによるためと考えられ
る。つまり加熱−冷却を反復するような使い方の場合の
電気抵抗の安定性は、ストラクチャ−よりもCBの分散
性が支配的になり、これを揮発成分が左右していると言
える。この分散は単に物理的に分散しているのではな
く、揮発成分がPAd、更にはPIとの間でバインダ−
的作用(水素結合も考えられる)をし、その結果極めて
高度に発達した分散状態を形成する。この特異で強固な
分散状態は加熱−冷却によって変わることがない。とこ
ろがストラクチャ−はその発達度が大きい程、加熱−冷
却による破壊が大きく、その結果電気抵抗の変化と言う
ことになって現れたではないかと考えられ。尚揮発分
は、前記の通り酸性を示すものと、中性を示すものとに
よっているが、その多少はPHの測定によって判る。こ
のPHの範囲は一般に1〜10程度であるが、このPH
から見るとより小さい、即ち酸性度の大きい揮発分を含
有するCBを選択するのも好ましいことである。また本
発明におけるCBは、前記の通り吸油量と揮発分とによ
って特定される。従って他の特性(粒子径、比表面積
等)への影響は実質的にないので、これについては一般
に知られている範囲で使用されてよい。
【0013】次に前記PAd組成物の調製手段について
説明する。まず該組成物の形態には、溶液状と固形状が
ある。溶液状の場合は、最終的に得られるPIが熱硬化
性PIは勿論のこと、該PIが熱可塑性でもそれが使用
上液状であるのが望ましい場合である。一方固形状の場
合は、熱可塑性PI(PAIも含む)で、これが使用上
固形状であるのが望ましい場合である。
【0014】前記溶液状の場合には、一般には前記各原
料を有機極性溶媒中で重縮合反応して、まずPAd溶液
を得て、これに必要な前記CBを混合して均一に分散す
る。この時に溶液粘度調整のために該溶媒を追加する場
合もある。他に得られた該PAd溶液に非溶媒(例えば
アルコ−ル)を添加して、一旦PAdを析出して粉末と
して得る。そして必要によってCBと共に、又は別個に
該溶媒に溶解して溶液組成物とすることもできる。
【0015】一方固形状の場合には、まず前記原料によ
って得られた熱可塑性PI溶液に非溶媒(例えばアルコ
−ル)を添加して熱可塑性PI粉末として得る。これに
CBを混合分散するが、十分なる混合分散を行うため
に、まず粉末状で一次的に混合分散し、そして一次混合
粉体を2軸押出機に供給して溶融混練してペレットとし
て得る。つまりペレッット状の固形組成物とする。
【0016】前記における各成分の組成比は液状、固形
状に関係なく、前記S指数100以下のCB25〜1
0、好ましくは22〜12重量%とPAd又はPI75
〜90、好ましくは78〜88重量%とするのが良い。
この時液状の場合は、有機極性溶媒が加わるが、該溶媒
の量は、使用上(つまりある用途のために成形に有利な
溶液粘度)有効な液状を呈する量である。従って特定さ
れない。尚、前記組成比は最終得られる前記PIに半導
電性、つまり表面抵抗値で約10 〜1015、好まし
くは10〜1014Ω/□(体積抵抗値で約10
1014、好ましくは10〜1012Ω・cm)を付
与し、且つ該PI自身の特性を損なわない量と言うこと
で決められたものであり、かかる組成比に特異の意義の
あるものではない。又前記組成化の場合に、必要によっ
て微量の添加剤、例えばフッ素系の界面活性剤、セラミ
ック系熱伝導剤等を添加しても良いので、前記成分に限
られるものでない。
【0017】前記の通り調製されたPAd組成物は、各
々の用途によって各々の成形(型)手段で成形され使用
される。得られる成形体は、極めて優れた耐熱性、耐薬
品性、機械的性質は勿論、半導電性を有し、それも特に
高温下(勿論低温下でも)での連続使用でもその半導電
性に変化がないものになっている。常温に限らず、高温
下でも使用できる該成形体であることで、より一層その
用途は、拡大されることになる。例えば電磁波をシ−ル
する耐熱性シ−ル剤、耐熱性帯電防止剤(必要な場所へ
のコ−テングによるとか、繊維状又は短冊フイルム状で
の使用とか、ロ−ル状にして搬送用、練り用での使用
等)、更にはより高い機能性を有する機能部材へと用途
展開を計ることができる。このより高い機能部材の使用
例として、例えば中間転写方式のトナ−複写機(特にカ
ラ−)における中間転写・加熱定着用ベルトがある(こ
の詳細は後述する)。
【0018】そこで前記中間転写・加熱定着用ベルトと
しての使用の場合、該ベルトの製造例を以下に説明す
る。まず前記ベルトとしては、より高い耐熱性と機械的
性質(特に耐屈曲性、耐伸縮性)を有し無端管状のフイ
ルムとして得ることが望まれるので、(組成物)原料と
しては、熱硬化性芳香族PIの前駆体PAdの有機溶媒
溶液を使用し、回転成型によって該フイルムを得る、回
転成型法が好ましく採用される。
【0019】そこで、まず前記の回転成型法による無端
管状フイルムの成型について説明する。該法は、一般に
金属ドラムの内面に前記PAd溶液を注入して回転し、
その遠心力によって管状に流延、乾燥して得る、いわゆ
る遠心注型によるものである。この場合の該溶液の粘
度、回転速度、乾燥等の成型条件は、適宜事前にテスト
して最適条件を決めるのが良い。但し乾燥は加熱によっ
て行うが、この温度は溶媒が効果的に系外に排出される
ような温度であることが望ましく、イミド化まで進行す
るような温度は好ましくない。これはここでイミド化ま
で行われるような温度で加熱してしまうと、得られる該
フイルムに気泡が入りやすく、また電気抵抗にもバラツ
キも出やすくなるからである。
【0020】又前記従来法とは異なる実質的無遠心力下
での回転成型によっても成型することができる。本発明
ではより好ましい方法として提供できる。それは、無遠
心力であるために分散するCBが偏在(表面部分)する
ようなことはなく、全体に均一に分散する状態を採るこ
と、厚み精度により優れること、より大口径(例えば周
長1,000〜5000mm)の無端管状フイルムをよ
り精度良くつくるのが容易であること、成型時間がより
短縮できる等の理由による。ここで実質的無遠心力とい
うのは、該CBの偏在が実質的に起こらないと言うこと
である。これを数字的に示すと、遠心力Fが約30kg
m/s以下、好ましくは20kgm/s以下になる
範囲である。尚遠心力Fは、一般に求められる次の数式
1によるものである。ここでmはPAd溶液の比重、r
は金属ドラムの内半径(m)、ωは回転数に係わるもの
で、角速度(rad・s−1)を現す。
【0021】(数式1)
【0022】前記実質的無遠心力下での成型を具体的に
例示する次の2通りがある(A法、B法)。その1つA
法は、まず金属ドラムをゆっくりと,例えばω=1〜3
(10〜30rpm)で回転しながら、溶液粘度0.4
〜0.8Pasの低粘度のPAd溶液をノズルから所定
量液状態で供給する。この時の供給は、該ノズルは所定
幅のスリットとして、左右に揺動する機構にするのがよ
い。回転に合わせて所定幅だけ移動させて内面全体に均
一になるように塗布する。塗布されたら該ドラムの側面
を100〜150°Cに加熱すると共に、回転速度を徐
々に上げてω=5〜10に到達させる。これにより、よ
り一層内面全体に精度よく流延されると共に、溶媒の蒸
発が始まるので、これは速やかに系外に排出する。該排
出は、該ドラム内面にスリットノズルを横設して、積極
的に吸排するのが良い。大部分の溶媒が蒸発除去された
ところで、加熱を停止して常温に冷却したら、管状フイ
ルムを該ドラムから剥離する。ここでの該フイルムは、
溶媒を若干含むPAd無端管状フイルムである。
【0023】もう1つのB法は、前記A法に準ずるが、
PAd溶液の粘度を2〜4Pasの高粘度に変え、そし
てスリットノズルからの該溶液供給を噴霧状で行うもの
である。以上の2つの方法の中でもB法がより好まし
い。これはより高濃度の該溶液を、しかも加圧噴霧とし
て金属ドラム内面に噴きつけて塗布するような状態での
成型であるので、より低速度での回転で良いので芯ブレ
もなくなり、より大口径の無端管状フイルムを得ること
ができること、該フイルムの厚さも薄いものから厚いも
のまで精度良く自由に変えて得ることができること、溶
媒量がより少ないことから、成型時間をより短縮できる
こと等の理由による。
【0024】前記2法により得られたPAd無端管状フ
イルムは、更に完全脱溶媒と共にイミド化を行って、目
的の熱安定性半導電の無端管状(熱硬化芳香族)ポリイ
ミドフイルム(SLフイルムと呼ぶ)とする必要があ
る。これに変える方法は、次のような方法で好ましく行
われる。まず該PAd無端管状フイルムを微細孔を穿設
した円形金属管金型に嵌挿する(隙間のない状態)。そ
してこれを熱風乾燥機に投入する。加熱温度と時間は、
まず約150〜200°Cに上昇してこの温度で1〜2
時間、次に250〜340°Cに上げて30〜50分
間、更に350〜470°Cに昇温して50〜100分
間加熱する(最終加熱処理段階)。冷却して嵌脱して該
目的のフイルムを得る。
【0025】尚前記の設定温度と時間の中で、特に前記
最終加熱処理段階での加熱では、未閉環のアミド酸基が
残存する場合には、そのイミド化が優先するが、大部分
の時間が、完全イミド化したフイルム自身の後熱処理
(アニ−リング)的な作用として費やされる。これによ
り、より一層熱安定性が増した半導電性のPIフイルム
へと変化する。従って前記最終加熱処理段階は、イミド
化とは別の意味をもつ、より好ましい工程と言える。
【0026】そして前記いずれかの方法で得られたSL
フイルムは、各々の用途に応じて所定サイズに切断し、
そのまま又は何らかの加工をして使用される。その加工
の1つとして例えば離型性付与加工がある。この離型性
の付与されたSLフイルムは、種々の用途があるが、そ
の1つにトナ−多色複写機の中間転写・加熱定着用ベル
トがある。次にその離型性付与加工法と使用例を例示し
説明する。
【0027】まず前記離型性付与加工法について例示す
る。該加工法は、前記SLフイルムの表面を例えば離型
性に優れる、つまり表面張力の大きい樹脂でもって被覆
し、より優れた離型性を有する積層SLフイルムを得る
ことである。該樹脂としては、一般に知られている耐熱
性にも、耐薬品性にも優れるフッ素系樹脂、シリコ−ン
系樹脂、フロロシリコ−ン系樹脂が例示できる。これら
樹脂は成分の種類、結合形態、分子量等によって種々の
性質のものが知られているので、用途によって適宜選ら
ぶことが必要である。例えば該SLフイルム上に担持さ
れた物体を、押圧によって他に移すような使い方の場合
(例えば中間転写・熱定着方式のカラ−複写機における
ベルトとしての使用)では、硬質よりも軟質で弾性のあ
る該樹脂を選んで使う方が望ましい。これは該ベルト上
に転移したトナ−画像を複写用紙に、軽い押圧でもって
より完全に確実に、しかも相互に損傷したりするような
こともなく転写固定するのにより効果的であるからであ
る。
【0028】前記各樹脂は例へば次のようなものであ
る。まずフッ素系樹脂としては、単独よりも共重合ポリ
マが好ましく、それには非弾性であるテトラフルオロエ
チレンとヘキサフルオロプロピレン又はエチレンとのコ
ポリマ、そしてクロロトリフルオロエチレンとエチレン
とのコポリマ。弾性であるテトラフルオロエチレンとパ
−フルオロメチルビニルエ−テル又はプロピレンとの共
重合体をベ−スとするもの及びビニリデンフルオライド
とクロロトリフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロ
ピレンとの共重合体をベ−スとするものを挙げることが
できる。一方シリコ−ン系樹脂としては、非弾性である
メチル基、フエニル基等が置換した直鎖状ポリシロキサ
ン、メチル基、フエニル基、ビニル基等が置換したポリ
シロキサンが架橋(常温架橋又は加熱架橋)した弾性ポ
リシロキサンが例示できる。そしてフロロシリコ−ン系
樹脂としては、前記シリコ−ン樹脂におけるメチル基、
フエニル基、ビニル基等の1部又は全部がフッ素置換ア
ルキル基で置換された非弾性又は弾性(架橋)のシリコ
−ン樹脂を例示できる。
【0029】SLフイルム面への前記各樹脂の被覆方法
は、一般に次の方法で行われる。フッ素系樹脂では弾
性、非弾性を問わず、そのエマルジョン液(ラテック
ス)又はその溶液でもってコ−テングし乾燥・焼成(そ
の樹脂の有する融点より高い温度)するか、又は予め収
縮性無端管状フイルムに成形し、これをSLフイルムに
嵌着(嵌入後、熱収縮する)する方法。一方シリコ−ン
系樹脂とフッ化シリコ−ン系樹脂では、非弾性の直鎖状
ポリシロキサンの場合は、該ポリマを有機溶剤に溶解し
てこれをコ−テングし乾燥する方法、弾性の架橋ポリシ
ロキサンの場合は、予め未架橋のプリポリマ(液状)を
コ−テングした後常温で放置するか又は加熱して架橋
(加硫)する。又は前記フッ素系樹脂のように、予め無
端管状フイルムに成形しこれをSLフイルムに嵌着する
方法等がある。ここで被覆厚さは、後述する電気的条件
と耐久性とを考慮し適正厚さを設定する。尚特に前記弾
性を有する各樹脂による被覆層では、その層面に微細凹
凸を付与することは、転写効率をより高めることで好ま
しい場合があるので、このような表面加工を施しても良
い。
【0030】次に前記各樹脂で被覆された積層SLフイ
ルムは、各用途に適合して有効に使用されるが、その中
で特に弾性樹脂でもって被覆した積層SLフイルムを、
中間転写・熱定着方式のカラ−複写機におけるベルト部
材として使用する場合について詳述する。該ベルトとし
ての使用は、予め所定周長をもって得られた該SLフイ
ルムを、そのまま所定幅にカットしてこれを該複写機の
ロ−ルに張架して使用してもよいが、より効果的な転写
・加熱定着とより高品質画像でもって安定した複写を持
続するためには、更に次のような電気的条件を満足する
ように被覆加工したものを使用するのがよい。
【0031】つまり前記電気的条件とは、前記いずれか
の樹脂でもって被覆して得た積層SLフイルム(全体)
が導電率1μS/cm以下、好ましくは0.5μS/
cm 以下で、そして静電容量10〜400pF/cm
、好ましくは15〜300pF/cmの範囲以内に
あるのが良いと言うことである。これは好ましい条件範
囲として設定されるが、これによってまず該積層SLフ
イルムの表面に、より低電圧印加でも必要な帯電荷を容
易に形成することができること。そして該帯電荷の作用
でもって感光ドラム上に形成されたトナ−顕像がベルト
上に忠実に転移でき、そして転移されたトナ−画像が位
置ずれを起すようなこともなく、しっかりと保持されて
待機する中間転写・加熱定着部まで搬送するたことがで
きること。そして該転移画像は、該部で軽押圧でもって
容易に複写紙へ転写され、定着することができること。
更には転写・定着が終わり、最初の位置(感光ドラム)
に復帰するまでにベルト上に残存する電荷を素速く、容
易に且つ完全に除電(これも可能な限り低電圧印加でも
って)すること等をより効果的に行うことができる。以
上の作用効果が有効に反復されることは、極めて安定し
て高品質画像でもってカラ−複写を続けることができる
と言うことになる。
【0032】前記電気的条件は、主として前記積層する
樹脂の種類、被覆厚さによって左右される。従ってこの
様な該条件を満足するように被覆することが必要にな
る。例えば該樹脂の種類としては、表面抵抗値が10
15Ω/□以上の絶縁性樹脂でもって被覆し、その厚さ
を10〜150μm程度の範囲にする。この厚さについ
ては、被覆層の強度(層間接着、摩耗破損等)にも影響
するので、最終的にはこのことも加味して該範囲以内で
適正厚みを決め被覆するのがよい。尚該導電率、静電容
量は次のようにして測定した値である。つまり該積層S
Lフイルムの両面に電極を設け、この電極に周波数1.
0KH−電圧1.0V(DC)の電源を印加して、ヒ
ュ−レット・パッカ−ド(HEWLETT・PACKA
RD)社製のLCRメ−タ・4284A型測定機にて直
接測定した値である。
【0033】前記中間転写・加熱定着ベルトとしての使
用の場合の使用形態を図1(側面から見た主要概略図)
を参照して例示しておく。該図において、まず感光ドラ
ムC(青)、Y(黄)、M(赤)、B(黒)が等間隔で
4連横設されている。そして前記被覆SLベルト1は、
該ドラムに対面して逆直角3角形状に配設された2本の
張架・回転ロ−ラ2、2aと1本の張架・回転加熱ロ−
ラ3とによって張架される。これの転写・定着機構は、
次の通りである。該感光ドラムC、Y、M、Bに触接す
る該ベルト1の近辺を帯電(該感光ドラムとは逆電荷)
させるために、コロトロン帯電器4を該ベルト1の裏面
に配設しておく。各感光ドラム上に形成されたトナ−顕
像はB、M、YそしてCの順で該ベルト上に転移され、
一つの多重画像Maとなって紙転写・加熱定着部3aに
送られる。そして多重画像Maは、ここでタイムリ−に
給紙されてきた複写紙7へ転写し、加熱定着して排紙
(7a)して複写される。転写を終えた該ベルト1は、
コロトロン除電器5で除電、引き続きクリナ−6での表
面クリ−ニングを経て、元位置に返り1つのカ−ラ複写
を終了する。尚該中間転写・加熱定着ベルト1は、加熱
定着部を併用しない単なる中間転写ベルトとしても、よ
り一層有効に使用されることは勿論である。
【0034】尚前記SLフイルムは、全くの継目なしの
シ−ムレスの管状フイルムを意味し、その作製を回転成
型法によることを例示しているが、ウェッブ状フイルム
に成形したものを、必要によって所定サイズにカットし
て、その両端を公知の手段で繋いで継目のない状態に加
工したものを使用することを妨げるものではない。
【0035】
【実施例】以下に比較例と共に実施例によって更に詳述
する。尚、各例で言う表面抵抗値(Ω/□)、体積抵抗
値(Ω・cm)、電気抵抗値の熱安定性(単に熱安定性
と呼ぶ)は、次の通り測定したものである。 ◎表面抵抗値、体積抵抗値・・JIS K6911に基
づいて作製された三菱化学株式会社製の抵抗測定器“ハ
イレスタ・HRブロ−ブ”を使って100V(DC)印
加の下、10秒後の測定値である。 ◎熱安定性・・(独自に製作した)図2(主要概略側
面)に示す測定試験機を用いて、サンプルを3本ロ−ラ
9、HRに張架し加熱ロ−ラHRの温度230°C、加
圧ロ−ラ10(圧調整機構付き)の負荷圧5×10
a、回転速度0.2m/sにて24時間連続加熱した時
点で表面抵抗値を測定し、原サンプルと比較して表し
た。
【0036】(実施例1)(請求項1,2に対応) まずピロメリット酸2無水物と4、4′−ジアミノジフ
ェニルエ−テルとの当モル量をジメチルアセトアミド溶
媒中で、20°Cで重縮合反応して固形分濃度16.5
重量%の芳香族PAd(熱硬化PIの前駆体)溶液2k
gを得た。
【0037】そして前記溶液から1kgを採取し、これ
にS指数28(DBP吸油量280g/100g、揮発
分10重量%(PH3)のCBを使用し、前者を後者で
除した値)のCB粉体を32.8g(16.6重量%)
添加し、ボ−ルミルにて混合・分散して半導電性の芳香
族PAd組成物を得た(溶液粘度3.2Pas)(以下
A組成物と呼ぶ)。尚該組成物の1部を採取し、混合C
B粉体の分散状態を拡大顕微鏡で観察すると極めて均一
であり、2週間後に再度観察したが、当初と全く差は見
られず同じ分酸状態を保っていた。
【0038】(実施例2)(請求項1、2に対応) まず3、3′、4、4′―ベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸2無水物と4、4′−ジアミノジフェニルメタンと
の当モル量をジメチルアセトアミド溶媒中で、20°C
で重縮合反応して固形分濃度16.5重量%の芳香族P
Ad(熱硬化PIの前駆体)溶液1.5kgを得た。
【0039】そして前記溶液1.5kgから1kgを採
取し、これにS指数77(DBP吸油量123g/10
0g、揮発分1.6重量%(PH9)により求めた値)
のCB粉体を19.5g(10.6重量%)添加し、ボ
−ルミルにて混合・分散して半導電性の芳香族PAd組
成物を得た(溶液粘度2.8Pas)(以下B組成物と
呼ぶ)。尚該組成物の1部を採取し、混合CB粉体の分
散状態を拡大顕微鏡で観察すると極めて均一であり、2
週間後に再度観察したが、当初と全く差は見られず同じ
分酸状態を保っていた。
【0040】(実施例3)(請求項1、2に対応−PA
Iをマトリックス樹脂とする場合) トリメリット酸1無水物と4、4′−ジアミノジフェニ
ルエ−テルとの当モル量を、N−メチルピロリドン溶媒
中、30°Cで重縮合反応して固形分濃度24重量%の
芳香族PAI溶液1kgを得た(該溶液の1部を採って
1R分析したところ、未閉環のアミド酸に基づく吸収は
数%程度で、殆んどがイミ基に基づく吸収であった)。
【0041】そして前記溶液1kgから680g採取
し、これに実施例1のS指数42.5(DBP吸油量8
5g/100g、揮発分2重量%(PH3.5)により
求めた値)のCB粉体を23g添加(12.4重量%)
し、ボ−ルミルにて混合・分散して半導電性の芳香族P
AI組成物を得た。そして該組成物の1部を採って、ガ
ラス板に流延し、熱風乾燥機に入れてまず140°Cで
90分間、次に260°Cで80分間加熱して取り出し
た。得られたフイルムの厚さは70±5μm、表面抵抗
値は3.2×1012Ω/□であった。そしてこのフイ
ルムを190°Cで40時間加熱し、表面抵抗値を測定
したところ3.3×1012Ω/□であった。実質的に
変化なく熱的に安定した半導電性を保っていることが判
る。
【0042】(比較例1)(S指数が100を超えるC
B粉体の使用) 実施例1で得た芳香族PAd溶液の残り1kgにS指数
152(DBP吸油量760g/100g、揮発分5重
量%(PH4.5)のCBを使用し、前者を後者で除し
た値)のCB粉体を11g添加(6.3重量%)し、ボ
−ルミルにて混合・分散して比較用の半導電性の芳香族
PAd組成物を得た(溶液粘度2.6Pas)(以下C
組成物と呼ぶ)。尚、該組成物の1部を採取し、混合C
B粉体の分散状態を拡大顕微鏡で観察すると最初(混合
分散操作終了後)は実施例1との間に差は見られなかっ
たが、1週間後に再度観察すると小さいが部分的に塊り
が散見された。
【0043】(実施例4)(請求項3に対応) 前記実施例1、2及び比較例1で得たA、B、Cの各
(芳香族)PAd組成物(混合分散操作後、5時間経過
したもの)を2分して、まず次の条件で実質的無遠心力
下で回転成型しつつ脱溶媒して相当する管状PAdフイ
ルムを各々2本成型した。そしてこれを取り出して別途
後加熱処理して相当する管状の芳香族PIフイルムを得
た。 ◎使用する回転成型装置 内径515mm−幅500mmの内面鏡面仕上げ加工の
金属ドラム(両端内縁部には液漏れ防止用のベアラ−が
周設される)が、ヒ−タ内蔵の2本の回転ローラに載置
されている(該ローラの回転により該ドラムは間接的に
回転する)。そして該ドラムの上部外側には遠赤外線ヒ
ータが設けられ内面を加熱するようにしている。又加熱
により蒸発する溶媒は、吸引デバイスにより積極的に吸
気排出するようにしている。またスリットノズル付き噴
射デバイスを該ドラム内に設けて、該ドラム内への該各
組成物の供給は、これによって噴霧状で行う。噴射圧力
は2.8×10Paとした。 ◎回転成型条件 前記装置において、まず2rad・s−1で金属ドラム
の回転をスタ−トし、前記各組成物を2分した500g
を使って、これを内面全体に噴射した。そしてこの時点
で回転ロ−ラでの加熱と遠赤外線ヒータでの加熱をスタ
−トすると共に、回転速度を10.5rad・s−1
加速した。該ドラム内の温度が160°Cに達したら、
その温度で制御し120分回転しつつ加熱して溶媒を蒸
発除去(脱溶媒)した。そして加熱を停止し、そのまま
回転しつつ常温に冷却して、最後に該ドラムからり取り
出した。尚ここでの前記数式1から求めた遠心力Fは3
1kgmm/Sであり、遠心力の作用は実質なかっ
た。但し各組成物での比重は1.1であった。
【0044】次に前記得られた合計6本の無端管状PA
dフイルムについて、次の条件で後加熱処理を行い完全
な脱溶媒と共にイミド化を行って、相当するSLフイル
ムを得た。 ◎後加熱処理条件・・外径500mm、幅450mmの
穿設中空円筒金属金型(表面はR=3.0μmに研
磨)を用いて、これに前記各管状フイルムを嵌挿して熱
風乾燥機に投入した。徐々に昇温して350°Cに到達
したらその温度で30分間、更に昇温して450°Cに
到達したらその温度で30分間加熱した。そして各々該
乾燥機から取り出し常温にまで冷却して該金型から脱嵌
した。ここで得た成型体をA、B及びC組成物に関連し
て以後A・SLフイルム、B・SLフイルム及びC・S
Lフイルムと呼ぶ。
【0045】そして前記得られたA、B、Cの各SLフ
イルムのサイズ、表面抵抗値(体積抵抗値)は次の通り
であった。 ◎A・SLフイルム・・厚さ72±3μm、内径500
mm、幅450mmで、表面抵抗値2×1012Ω/□
(5×1010Ω・cm) ◎B・SLフイルム・・厚さ72±3μm、内径500
mm、幅450mmで、表面抵抗値値2.5×1012
Ω/□(6×1010Ω・cm) ◎C・SLフイルム・・厚さ70±4μm、内径500
mm、幅450mmで、表面抵抗値2.4×1012Ω
/□(5×1010Ω・cm)
【0046】そして前記A、B、Cの各SLフイルムの
1本を使って熱安定性試験を行った。その結果、A・S
Lフイルムは表面抵抗値2.1×1012Ω/□、B・
SLフイルムは表面抵抗値2.7×1012Ω/□、C
・SLフイルムは表面抵抗値2×1013Ω/□であっ
た。半導電性の熱的安定性の差が明白であることが判
る。
【00047】(実施例5)(請求項4、5に対応) 前記A、B、Cの各SLフイルムのもう1本を使って、
まずその表面を次の方法でコ−テングして被覆層を設け
た。つまり被覆樹脂原料としてビニリデンフルオライド
〜ヘキサフルオロプロピレン系のコポリマラテックス
(ダイキン工業製−ダイエルラッテクス−GLS−21
3)を用いて、これを前記各SLフイルム表面にスプレ
−で塗布して後、260°Cで30分間加熱・硬化して
膜厚22〜23μmの弾性被覆層を設けた。
【0048】前記設けられた弾性被覆層は各SLフイル
ム面と十分に密着し、各々その硬度(ゴム)は73〜7
6°、接触角(対水)は108〜110°の範囲にあっ
た。又導電率は各々0.03〜0.04μs/cm
静電容量は100〜103pF/cmの範囲内にあっ
た。
【0049】次に前記弾性被覆層の積層された各SLフ
イルムを幅300mmにカットし、これを図1に示す4
色複写機の中間転写・加熱定着ベルト1として装着し
て、次の条件で複写テストを行った。ここで各々の該ベ
ルトは、該各SLフイルムに関連してSLベルトA、同
B、同Cと呼ことにする。 ◎複写原稿・・B5コ−ト紙に幅40mm、長さ150
mmの帯線で黒、赤、黄、青の順で作製したベタ画像 ◎加熱ロ−ラ3の温度・・230°C(各ベルトの表面
温度は約200°C、つまりトナ−定着温度) ◎複写枚数・・100〜4万枚 ◎複写速度・・一般商業速度
【0050】テスト結果は、複写紙100、5000、
1万、2万、3万、4万目毎に抜き取って複写画像の濃
度ムラ(全体に薄いとか、部分的ムラ)、白抜けをチエ
ックし、これを表1にまとめた。尚濃度ムラ及び白抜け
は、肉眼判定し、100枚目(初期)と比較した。該表
で問題なしは、100枚目との間に差はなく高画質を意
味する。該表から判るように、S指数152の比較例1
に対応するSLフイルムCでは、2万枚程度からまず濃
度ムラの発生が見られ、3万枚程度からは白抜けも散見
されるようになった。これは定着温度により表面抵抗値
の上昇で、ベルト面の帯電状態に変化があったことの証
明である。
【0051】(表1)
【0052】
【発明の効果】本発明は前記の通り構成されているの
で、次のような効果を奏する。
【0053】本発明による熱安定性半導電ポリアミド酸
組成物は、種々の用途に適合した形態で成形(型)で
き、特に加熱下で電気的安定性(電気抵抗)を維持する
用途分野に対してより一層広く使用することが可能にな
った。
【0054】例えば前記組成物を回転成型して無端管状
フイルムに成型した成形体は、例えば中間転写・加熱定
着方式のカラ−複写機の中間転写・加熱定着ベルトの基
体とし使用するのに極めて有効である。勿論非加熱下で
の電気的安定性は、より優れているので、加熱定着は別
工程で行う中間転写方式で使うベルトの基体としても使
用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】中間転写・加熱定着方式のカラ−複写機の主要
部を概略側面図で示す。
【図2】熱安定性測定試験機の主要該側面図である。
【符号の説明】
1 中間転写・加熱定着ベルト C・Y・M・B 各色感光ドラム 2、2a 張架・回転ロ−ル 3 張架・回転加熱ロ−ル 3a 中間転写・加熱定着部 4 コロトロン帯電器 7 複写紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 7/04 CFG C08J 7/04 CFGL 4J002 C08K 3/04 C08K 3/04 4J043 G03G 15/16 G03G 15/16 5G301 15/20 15/20 101 101 H01B 1/24 H01B 1/24 Z B // B29K 79:00 B29K 79:00 B29L 23:00 B29L 23:00 Fターム(参考) 2H032 BA09 BA21 2H033 AA02 BE03 BE09 4F006 AA39 AB19 AB39 BA11 CA01 4F071 AA60 AB03 AF37Y AF38Y AH12 BA02 BB02 BC01 BC05 4F205 AA16 AA33 AA40 AB18 AC05 AG03 AG08 AG16 GA02 GA05 GB01 GC04 GF01 GF25 GF27 GN01 GN13 GN22 GN29 4J002 CM041 DA036 FD116 4J043 PA19 QB26 QB31 QB32 RA05 RA34 SA06 SB01 TA13 TA14 TB01 UA122 UA131 UA132 UB021 UB121 UB301 ZA23 ZB11 ZB49 5G301 DA18 DA42 DA51 DD08 DD10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カ−ボンブラックの有するDBP吸油量
    (g/100g)を揮発分(重量%)で除した値をスト
    ラクチャ−指数とし、これが100以下であるカ−ボン
    ブラック25〜10重量%とポリアミド酸75〜90重
    量%とが混合されていることを特徴とする熱安定性半導
    電ポリアミド酸組成物。
  2. 【請求項2】前記ポリアミド酸が有機溶媒可溶の熱硬化
    性芳香族ポリイミドの前駆体又は芳香族ポリアミドイミ
    ドである請求項1に記載の熱安定性半導電ポリアミド酸
    組成物。
  3. 【請求項3】前記請求項2の熱安定性半導電ポリアミド
    酸組成物を実質的に無遠心力下で回転成型して得る熱安
    定性半導電無端管状芳香族ポリイミドフイルム。
  4. 【請求項4】前記請求項3の熱安定性半導電無端管状芳
    香族ポリイミドフイルムの表面を弾性シリコ−ン樹脂、
    弾性フッ素樹脂又は弾性フロロシリコ−ン樹脂のいずれ
    かで被覆して得た2層からなる該フイルムであって、該
    フイルム全体の有する導電率が1μs/cm以下、静
    電容量が10〜400pF/cmであることを特徴と
    する熱安定性半導電無端管状芳香族ポリイミドフイル
    ム。
  5. 【請求項5】カラー複写機の中間転写・加熱定着用ベル
    トとしての請求項4に記載の熱安定性半導電無端管状芳
    香族ポリイミドフイルムの使用。
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