JP2004253289A - ナトリウム硫黄電池およびその運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適な、電池効率向上と大容量化との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池を提供する。
【解決手段】固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池であって、前記固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池であって、前記固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池およびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極室内に液体ナトリウム,正極室内に硫黄,多硫化ナトリウムなどの正極活物質を充填し、負極室/正極室間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質袋管で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車などへの利用が期待されている。この電池の実用化のためには、電池の特性向上と共に低コスト化が不可欠であり、このためには、電池が高出力運転できるように内部抵抗を低減して電池効率を向上したり、単電池を大型化してkWやkWh当たりの電池数を低減することが望ましいが、従来の電池ではそのための対策が不十分であった。なお、電池効率が低下すると電池出力が低下するため、結果としてkWやkWh当たりの電池必要数が増して、コストは高くなる。
【0003】
特に、低コスト化のためには、単電池を大型化して大容量化することが極めて有効であるが、このためには固体電解質袋管の軸方向又は/及び径方向の長さを増加させる必要がある。しかしながら、固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくした場合には、固体電解質内のナトリウムイオンが固体電解質袋管の軸方向に移動するために、固体電解質袋管の軸方向の正極室内に正極活物質の濃度分布や組成分布が付きやすくなり、この結果、電池内に起電力分布を生じて循環電流が流れ、電池の効率が低下しやすくなるという問題があった。すなわち、固体電解質袋管を用いたナトリウム硫黄電池においては、充放電時に固体電解質袋管を通してナトリウムイオンが移動するが、電池効率向上のためにはナトリウムイオンを主に固体電解質袋管の径方向に移動させ、軸方向への移動を低減させることが有効である。なお、ナトリウムイオンが固体電解質袋管の軸方向へ移動すると、固体電解質袋管表面近傍での電気化学反応(2Na++xS+2e−⇔Na2Sx)が軸方向に沿って不均一に進行して、その結果として、正極室内の正極活物質であるSやNa2Sxの組成分布が軸方向で異なり、起電力が分布して、循環電流による電池効率低下を招きやすくなる。
【0004】
一方、固体電解質袋管の軸方向の代わりに径方向の長さを大きくすることも可能であるが、この場合には固体電解質袋管の容積と表面積との比が大きくなって、固体電解質袋管内に充填されたナトリウムを所定時間内に反応させるためには運転時の電流密度を増加させる必要があり、その結果、内部抵抗の影響で電池効率が低下するという問題も有った。なお、電池効率は一般に、(起電力−電流×内部抵抗)/(起電力+電流×内部抵抗)で与えられる。
【0005】
このように、従来のナトリウム硫黄電池においては、低コスト化のための電池大容量化と効率向上との両立は困難であった。
【0006】
これらの問題に対する対策として、先に固体電解質袋管を横置きして、水平または斜めに寝かせて電池効率を向上させたナトリウム硫黄電池について特開2001−76754号公報,特開2001−243975号公報,特開2002−8712号公報,特開2002−8714号公報,特開2002−15767号公報,特開2002−75437号公報,特開2002−260723号公報,特願2001−256372号に記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−76754号公報
【特許文献2】
特開2001−243975号公報
【特許文献3】
特開2002−8712号公報
【特許文献4】
特開2002−8714号公報
【特許文献5】
特開2002−15767号公報
【特許文献6】
特開2002−75437号公報
【特許文献7】
特開2002−260723号公報
【特許文献8】
特願2001−256372号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、次のような課題があった。
【0009】
すなわち、これらの従来技術においては、電池を大容量化するために固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくするための低コスト化の工夫や、固体電解質袋管の軸方向へのナトリウムイオンの移動を低減するための工夫は行われていない。このため、低コスト化を目指して電池容量や電池効率を特に向上するための検討は不十分であり、一層の低コスト化を図るには、電池を構成する固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくするための構造改良が必要である。
【0010】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を除き、電池大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池、又は、電池大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池、および、その運転方法を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のナトリウム硫黄電池は、固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池であって、前記固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されていることを特徴としている。ここで、前記接合材がガラス半田であることが望ましく、前記接合材のナトリウムイオン伝導率が前記固体電解質のナトリウムイオン伝導率よりも小さいこと、又は/及び、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したことが特に望ましい。
【0012】
この電池構造を用いることにより、電池大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池、又は、電池大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池が実現される。
【0013】
また、本発明のナトリウム硫黄電池の運転方法は、固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されており、前記固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池を用いて、前記固体電解質袋管を水平方向又は斜め方向に寝かせて充放電することを特徴としている。ここで、前記接合材としてガラス半田を用いることが望ましく、前記接合材として、前記固体電解質袋管よりもナトリウムイオン伝導率の小さい接合材を用いること、又は/及び、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したナトリウム硫黄電池を用いることが特に望ましい。
【0014】
この運転方法を用いることにより、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池の運転方法が実現される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の第一の実施形態によるナトリウム硫黄電池の構造を示す断面図である。図1において、ナトリウムイオン導電性の固体電解質袋管1には、普通β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成る固体電解質が用いられ、図1では固体電解質袋管1の軸方向を水平方向に寝かせ、横置きに配置して電池を充放電している。なお、図示されていないが、固体電解質袋管1の軸方向を鉛直方向や斜め方向に配置して、電池を充放電することも可能である。また、固体電解質袋管1は固体電解質101,102,103同士を軸方向に接合して構成され、図2で後述のように、これらの固体電解質間は接合材3で接合されている。また、固体電解質101と絶縁部材2とは、一般にガラス半田などの接合材で接合されたり、一体焼結などの方法で接続される。
【0017】
一方、負極容器4,正極容器5は固体電解質袋管1と共にそれぞれ負極室6,正極室7を構成しており、その材料としてはAl合金やFe合金,SUS又はこれらの表面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,Moなどを主体とする耐食層を設けたものやAl合金とSUS等とのクラッド材が普通に用いられる。また、絶縁部材2は負極容器4と正極容器5とを絶縁分離し、且つ、これらと接合されており、普通αアルミナセラミックスが用いられている。ここで、負極容器4や正極容器5と絶縁部材2との接合には、図示されていないが、AlやAl合金を接合剤として用いて、接合剤の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して、加圧接合する熱圧接法が一般に行われている。
【0018】
また、負極室6内にはナトリウム8を収納するSUS,Fe合金やAl合金などの金属製ナトリウム容器9が設けられており、ナトリウム8は放電時には重力や負極室6の一部であるナトリウム容器9内に充填された窒素ガスやArガスなどの不活性ガス10の圧力で押され、一方充電時には固体電解質袋管1を通して侵入するナトリウムの圧力で押されて、ナトリウム容器9に設けた貫通孔11を出入りする。このようにナトリウム容器9を設けることにより、固体電解質袋管1に隣接して存在するナトリウム8の量が少なくできて、固体電解質袋管1が破損した際の電池の安全性が向上する。なお、図1においては、ナトリウム容器9は負極容器4と一体化されているが、後述の図3のように、ナトリウム容器9と負極容器4とを分離した構造も可能である。
【0019】
さらに、正極室7内の固体電解質袋管1の胴部外面に沿って、多孔質材12と多孔質導電材13が設置されている。また、正極室7内には硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14が充填されており、この正極活物質14が多孔質材12や多孔質導電材13に含浸されて、電池反応を促進している。
【0020】
ここで、多孔質導電材13には炭素繊維や炭素粉末の集合体が用いられ、特に固体電解質袋管1の胴部近傍に沿った径方向の厚さが1〜20mm程度の、1300〜2000℃で加熱されたPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の炭素繊維マットを用いることが望ましい。また、炭素繊維が面方向に配列したリング形状などのマットを用いて、炭素繊維マットの面方向が固体電解質袋管1の胴部に垂直になるように設置することにより、固体電解質袋管1の胴部径方向に沿った炭素繊維マットの抵抗を低減して、電池効率が向上できる。
【0021】
同様な効果は、多孔質導電材13として短冊状や台形状の炭素繊維マットを用いた場合にも実現され、炭素繊維の大半を炭素繊維マット面に平行に配置し、炭素繊維マット面に垂直にこの炭素繊維マットを短冊状や台形状に切断して、炭素繊維マット面が固体電解質袋管1の胴部に垂直になるように短冊状や台形状の炭素繊維マットをラセン状又は円周状に巻きつけることにより、炭素繊維マットの抵抗低減の効果が得られる。なお、炭素繊維マットを台形状に切断して、台形の短い方を固体電解質袋管1の近くに、台形の長い方を固体電解質袋管1の遠くに配置して巻きつけることにより、炭素繊維マット密度を比較的均一にすることができる。
【0022】
一方、多孔質材12には普通アルミナなどのセラミックスやシリカなどのガラスの繊維や粒子の集合体が用いられ、固体電解質袋管1の胴部に沿った径方向の厚さを0.1〜0.5mm 程度にすることが望ましい。ここで、図示されていないが、炭素繊維マットを固体電解質袋管1の軸方向に積層して充填し、積層された炭素繊維マット同志の間に多孔質材を充填したり、貫通部を設けた金属板,セラミックスやガラス板などを設けて、正極活物質14が多孔質導電材13内部を移動し易くすることも可能である。
【0023】
図1の構造のナトリウム硫黄電池においては、固体電解質袋管1の胴部が複数の固体電解質101,102,103を接合材3で軸方向に接合した構造となっているために、固体電解質袋管1の軸方向の長さを大きくすることができ、電池の大容量化が可能である。なお、従来の成形,焼結の方法で固体電解質袋管を製作する場合には、軸方向の長さが大きいと、成形や焼結のための設備が大型化されて製作が困難になったり、設備費用が増加すると共に、固体電解質袋管が製造時に軸方向に曲がって、製造歩留まりが低下し易くなるという問題があり、大容量電池に用いる固体電解質袋管の歩留まり向上や低コスト化は比較的困難である。一方、本発明のナトリウム硫黄電池においては、従来と同様な設備を用いて製作された、適当な軸方向長さの固体電解質同士を接合材で接合することによって、軸方向に長い固体電解質袋管1が容易に製作され、これを用いて低コストの大容量電池が実現される。
【0024】
さらに、一般に電池を大容量化すると単位時間当りに流れる電流値が大きくなって、電池の内部抵抗による電池効率低下が起こりやすくなるが、本発明の構造のように、複数個の固体電解質同士を軸方向に接合することにより、固体電解質袋管1の容積増加にほぼ比例して軸方向の長さが長くなり、固体電解質袋管1の面積が大きくなって電池の内部抵抗が低減する。その結果として、電池の大容量化によって単位時間当りに流れる電流値が大きくなった場合にも、電流値の増加にほぼ反比例して電池の内部抵抗が低減され、電池の効率低下が防止出来るという効果が得られる。
【0025】
ここで、固体電解質同士を接合する接合材3としては、ガラス半田のように、電子伝導性のほとんど無いものを用いるか、電子伝導性のある金属などの接合材を用いる場合には接合材を径方向に分離して、接合材3によって正極と負極との間が電子移動しないように考慮する必要がある。
【0026】
さらに、結合材3として低イオン伝導率の材料を用いることにより、固体電解質内のナトリウムイオンが固体電解質袋管1の軸方向へイオン伝導することが制限され、電気化学反応(2Na++xS+2e−⇔Na2Sx)が軸方向に沿って不均一に進行することが防止されて、正極室内の正極活物質14であるSやNa2Sxの組成分布や濃度分布が軸方向で比較的均一化され、起電力分布に基づく循環電流による電池効率低下の防止が可能となる。従って、後述の図2で示したように固体電解質間をガラス半田接合する際には、ガラス半田として固体電解質よりもナトリウムイオン伝導率の小さいガラス材料を用いることが望ましく、こうすることにより、固体電解質同士がガラス半田によって軸方向に電気的に分離され、固体電解質袋管の軸方向へのナトリウムイオンの移動が制限されて、電池効率が向上するという利点が得られる。また、接合部のイオン伝導性を特に低下するためには、図示されていないが、固体電解質同士の間にαアルミナのような絶縁性セラミックスを設けて、固体電解質と絶縁性セラミックスとを接合材3で接合することによって、固体電解質同士を接合することも可能である。
【0027】
なお、この問題は軸方向に長い固体電解質袋管を用いた場合に特に重要であり、軸方向の長さが長いと軸方向のイオン移動の影響が大きくなって、軸方向の正極活物質分布が不均一になり、効率低下が起こり易いが、軸方向のイオン移動をガラス半田などの接合材3で防止することにより、軸方向の長い固体電解質袋管を用いた場合にも電池効率低下が防止されて、大容量化と高効率化とが両立した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能となる。
【0028】
ここで、固体電解質袋管1を構成する固体電解質としてはβ″アルミナセラミックスが一般的に用いられ、そのナトリウムイオン伝導率は300℃で約0.4Ω−1cm−1である。また、接合材3のナトリウムイオン伝導率としては固体電解質の1/10以下であることが望ましく、例えば0.04Ω−1cm−1 以下のガラス材料を用いることにより、電池効率向上が可能となる。
【0029】
さらに、図1においては、電池を水平方向に寝かせた構造で充放電運転しているために、長さが直径よりも大きい固体電解質袋管1を用いた際には、電池の鉛直方向の高さが固体電解質袋管1を直立した場合よりも小さくなり、正極室7内の上下方向に重力による正極活物質14の濃度分布や組成分布が付きにくくなって、電池内に起電力分布やそれに基づく循環電流が起こりにくく、これらの結果として電池の効率が特に向上する。この効果は単電池を大容量化するために固体電解質袋管1の長さを大きくした場合に顕著で、本発明の構造のように複数個の固体電解質同士を軸方向に接合して、固体電解質袋管1の軸方向の長さを大きくすることにより、電池の大容量化と効率向上との両立が特に可能となる。
【0030】
ここで、上記起電力分布及び循環電流の原因は、正極活物質14を構成する多硫化ナトリウムが硫黄に融けず、且つ、正極室7内に多硫化ナトリウムが存在する場所と硫黄が存在する場所とで、電池の起電力が異なり易いことに基づいている。なお、固体電解質袋管1の鉛直方向の高さの影響は、多硫化ナトリウムの比重が硫黄よりも大きいために正極室内の下側に溜まり易いことに基づいており、固体電解質袋管1の鉛直方向の高さが低いほど、起電力分布や循環電流は起こり難くなる。
【0031】
また、固体電解質袋管1を斜めに設置する場合、固体電解質袋管1の軸方向と水平方向との角度を±45°以下にして、電池の鉛直方向の高さを低減することが望ましい。また、多孔質材12や多孔質導電材13の表面張力による正極活物質14の吸い上げ高さを考慮すると、多孔質材12や多孔質導電材13の鉛直方向の高さが15cm以下になる角度に固体電解質袋管1を傾けることが望ましく、こうすることによって、正極活物質14が表面張力により必要場所へ提供されて、電池内の起電力分布の防止や循環電流の防止の効果が得られる。勿論、電池効率向上の目的で電池の鉛直方向の高さを小さくするためには、固体電解質袋管1を水平設置することが特に望ましい。
【0032】
さらに、固体電解質袋管1を横置きした電池を断熱容器内に設置してモジュールとして使用する場合、図1の構造では、電池の鉛直方向の高さが小さいためにモジュールの高さも小さくできて、一般家庭内や自動車内のように設置場所の高さに制限がある場合にも、モジュールの設置が可能となって、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点もある。
【0033】
このように、複数の固体電解質を軸方向に接合して固体電解質袋管1を形成することにより、軸方向に長い固体電解質袋管1が比較的簡単に低コスト製造され、且つ、電池が大容量化できる。また、固体電解質同士の接合にガラス半田のように、固体電解質袋管1よりもナトリウムイオンのイオン伝導性が小さい接合材3を用いることにより、固体電解質袋管1の軸方向のナトリウムイオン伝導が防止されて、電池効率が向上するという利点が得られる。さらに、この固体電解質袋管1を水平方向や斜め方向に寝かせてナトリウム硫黄電池を充放電運転することにより、上下方向に起電力分布や循環電流が起こりにくいために電池効率が特に向上するという利点が得られ、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池、及び、その運転方法が実現される。
【0034】
図2は、図1に示した固体電解質袋管1の構造の一部を示しており、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。図2に見られるように、図1に示した固体電解質袋管1を構成する固体電解質101と102,101とリング状の絶縁部材2、及び、図示されていないが固体電解質102と103とは、ガラス半田などで構成された接合材3によって接合されており、その結果として、固体電解質101と102,102と103との軸方向は接合材3によって電気的に分離されている。したがって、接合材3のナトリウムイオン伝導率を小さくすることによって、固体電解質袋管1の軸方向へのナトリウムイオンの移動を防止することができ、電池効率向上が可能となる。
【0035】
また、図2においては、固体電解質101の下側端部を絶縁部材2に設けたリング状の穴部で、固体電解質102の下側端部を固体電解質101の上側端部に設けたリング状の穴部で支えた状態で、ガラス半田などの接合材3を加熱して接合する方法を用いている。なお、図示されていないが、固体電解質102と103とも同様な方法で接合されている。このように、固体電解質袋管1の軸方向を垂直にして接合することによって、固体電解質同士の接合と固体電解質と絶縁部材との接合を同時に行うことができ、固体電解質袋管1の製作が簡略化されと共に、接合される固体電解質がきちんと支えられた状態で接合されるために、得られた固体電解質袋管1の軸方向の曲がりが起こりにくく、固体電解質袋管1の製造歩留まりが高くなる。これらの結果として、電池の大容量化に適した、軸方向に長い固体電解質袋管1の低コスト化が容易に実現するという利点が得られる。
【0036】
図3は本発明の第二の実施形態によるナトリウム硫黄電池の構造を示す断面図であり、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。ここで、図3においては固体電解質袋管1を水平方向又は、図示されていないが、斜め方向に寝かせ、横置きに配置して電池が充放電されると共に、固体電解質袋管1は固体電解質101と102との軸方向をガラス接合などの接合材3で接合することによって構成されており、図1の場合と同様に、電池の大容量化と高効率化とが両立した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能である。さらに、絶縁部材2と接合された固体電解質袋管1の接合部分及びその近傍の肉厚を比較的厚くして、接合部や接合部近傍の固体電解質袋管1の強度を増加し、横置き電池の機械的信頼性向上を図っている。
【0037】
また、固体電解質袋管1の内側に負極室6が、外側に正極室7が設けられ、正極室7内の固体電解質袋管1の胴部に沿って、正極容器5と軸方向端部で接続した集電体15が設けられ、集電体15と固体電解質袋管1の胴部との間に多孔質材12と多孔質導電材13が設置されている。さらに、正極室7内には硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14が充填されており、この正極活物質14が多孔質材12や多孔質導電材13に含浸されて、電池反応を促進している。また、正極活物質14の体積を多孔質材12や多孔質導電材13の空隙体積よりも大きくして、多孔質材12や多孔質導電材13に含浸される以外に、正極室7内の集電体15の外側に正極活物質14の液相を形成し、集電体15に貫通部16を設けて多孔質導電材13の内外に正極活物質14を移動させることにより、電池容量の拡大を図ることができる。
【0038】
なお、集電体15としては厚さ0.3 〜5mm程度のAl,Al合金やこれらとSUS等とのクラッド材を用い、多孔質導電材13との接触面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,MoやCr,Moの炭化物や窒化物などの耐食性導電層を溶射やメッキなどの方法で設けたり、これらの耐食性粒子や繊維をAlやAl合金の表面へ接合又は埋め込んだものが用いられる。さらに、貫通部16としては直径や幅,長さが1〜10mm程度の円形や直方体の孔、又は、これらの間に幅1〜10mmのスリットを設けたものを用い、面積割合としては集電体15の面積の5〜50%程度が望ましい。
【0039】
ここで、正極室7内の固体電解質袋管1に沿って設けた集電体15を用いて集電することにより、固体電解質袋管1の側部と集電体15との間隙に存在する多孔質導電材13の厚さを比較的小さくして、その抵抗低減により電池効率を特に向上することができる。さらに、地震や運搬時の振動、あるいは運搬時の衝突事故などによって電池に大きな加速度が加わった場合にも、多孔質材12や多孔質導電材13がクッションの役目をするために、固体電解質袋管1が故障することは無く、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性を特に高めることができる。
【0040】
なお、同様な効果は集電体15を設けずに、図1のように、固体電解質袋管1と正極容器5との間に多孔質導電材や多孔質材を充填した際にもある程度実現できる。しかしながら、図3においては集電体15が設けられているために、同じ電池容量であっても固体電解質袋管1に近接した多孔質材12や多孔質導電材13の厚さが比較的薄くでき、固体電解質袋管1を支持し易くなったり、逆に多孔質材12や多孔質導電材13の厚さが同じ場合には電池容量が大きくできて、その結果としてナトリウム硫黄電池の機械的信頼性向上と電池容量向上との両立が可能になるという利点がある。
【0041】
さらに、ナトリウム硫黄電池の充電時には、正極活物質14である多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13の表面張力によって集電体15の外側の正極活物質14の液相から吸い上げられ、多孔質導電材13の内部などで電気分解されて、生成したナトリウムイオンが固体電解質袋管1を通って負極室6内へ移動する必要がある。また、充電が進むにつれて正極室7内の正極活物質14の液面が低下して、正極活物質14を構成する多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13と接触しなくなると、充電が停止するという問題がある。この問題に対処して電池容量を向上するためには、正極室7内の空間に存在する多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13に接触し易い構造を採用することが望ましい。
【0042】
この問題に対処するためには、図示されていないが、図3の構造において固体電解質袋管1の中心軸を正極容器5の中央部よりも下部に位置するように配置したり、正極容器5の軸方向に垂直な断面下側の肉厚を上側よりも大きくすることにより、集電体15の軸方向に垂直な断面下側と正極容器5との間隙を狭くしたり、両者を接触又は接合することが望ましい。また、集電体15の断面下側と正極容器5との間に多孔質材又は/及び多孔質導電材を充填したり、固体電解質袋管1と集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を貫通部16や集電体15の端部を通して、集電体15の断面下側に伸ばすことも可能である。こうすることにより、充電が進んで、正極室7内の下側に存在する多硫化ナトリウムの液面高さが小さくなっても、多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13と接触できるために充電が進み易くなり、電池の容量が向上する。
【0043】
なお、上記のように集電体15の断面下側と正極容器5との間隙を狭くした場合には、集電体15の断面上側と正極容器5との間に多孔質材又は/及び多孔質導電材を充填したり、固体電解質袋管1と集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を貫通部16や集電体15の端部を通して、集電体15の断面上側に伸ばすことも可能である。こうすることにより、放電が進んで多硫化ナトリウムの液上面、即ち硫黄の液下面が集電体15の上部を超えた場合にも、集電体15の断面上部に設けた多孔質材や多孔質導電材によって正極活物質14の上部に存在する硫黄が吸収され、放電反応が進んで、電池容量が大きくできるという利点が得られる。
【0044】
また、集電体15の断面下側を正極容器5と接触又は接合させることも可能であり、こうすることによって、充電の向上による電池容量の増加と共に、横置きされた固体電解質袋管1が、集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を介して正極容器5で支持され、電池の機械的信頼性が向上する。
【0045】
さらに、図3に示したナトリウム硫黄電池の構造においては、正極の抵抗は主に集電体15と多孔質材12及び多孔質導電材13で決まり、正極容器5の容積は電池抵抗にあまり関係しないため、固体電解質袋管1の胴部と集電体15との間隙を小さくすることによって、多孔質導電材13の径方向の抵抗が小さくでき、電池効率が向上すると共に、正極容器5を軸方向に広げたり、軸方向に垂直な方向に広げたりして正極室内の容積を大きくすることにより、電池の大容量化が達成される。すなわち、これらの結果、電池抵抗を低減して電池効率が向上すると共に、構成部品をあまり増やすこと無く電池の大容量化が可能で、低コスト化が容易に実現できる実用性の高い高効率大容量電池が得られる。
【0046】
また、図3において、Al又はAl合金製のナトリウム容器9を用いて、約330℃の電池運転温度での固体電解質袋管1とナトリウム容器9との間隙を0.1mm 以下にすることが望ましい。こうすることにより、固体電解質袋管1として内径が約40mm以上のβ管やβ″管を用いた場合、固体電解質袋管1の破損などで電池温度が約450〜500℃以上に上昇すると、熱膨張によってナトリウム容器9の外面が固体電解質袋管1の内面と接触し、ナトリウム容器9からのナトリウム8の移動が防止されて、電池の安全性が向上するという利点が得られる。また、この構造のナトリウム容器9の製造には、固体電解質袋管1内にナトリウム容器9を収納し、約450〜500℃で内部にガス圧を加えてナトリウム容器9を変形させ、ナトリウム容器9の外面を固体電解質袋管1の内面に接触させた後に冷却する方法を用いることができる。なお、ナトリウム容器9としてSUS製のものを用いることも可能であり、この場合にも固体電解質袋管1との間隙を0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下にすれば、この間隙に存在するナトリウム8の量が少なくなるために、固体電解質袋管1が破損した場合に正極室7に含まれた硫黄との反応量が少なくできて、電池の安全性が向上する。
【0047】
具体例として、図1に示すように、固体電解質101,102又は103としてリチウムドープ又はマグネシウムドープのβ″アルミナ焼結体からなる外径約60mm,長さ約500mm,肉厚約1.5mm の円筒、又は、円筒状の袋管を用いて、図2に示した方法により、固体電解質同士をガラス半田から成る接合材3で接合して固体電解質袋管1を製作すると共に、固体電解質101とαアルミナから成るリング状の絶縁部材2とをガラス半田で接合した。なお、ガラス半田としては、イオン伝導性がほとんど無いSiO2 −B2O3−Al2O3−BaO−MgO系ガラスや、SiO2−Na2O−Al2O3−B2O3系、又は、SiO2−Na2O−Al2O3−MgO−B2O3系ガラスを用いた。また、負極容器4,正極容器5の材料にはAl合金、ナトリウム容器9の材料にはAlのAA3003を用い、正極容器5の胴部表面にクロムをメッキ、又は鉄/クロム合金,ステライト−6やCo−Cr−Al−Y系合金であるコクラリーを溶射したものを用いた。
【0048】
次に、絶縁部材2の表面に負極容器4,正極容器5の端部を配置し、Al−Si系の合金箔から成る接合剤を用いて、負極容器4,正極容器5の端部と絶縁部材2とを熱圧接した。また、負極容器4と接合されたナトリウム容器9内にナトリウム8と約0.01MPa のArから成る不活性ガス10を充填して封止し、このガス圧でナトリウム8がナトリウム容器9の胴部下側に設けた貫通孔11を通って、固体電解質袋管1の内表面を覆うようにした。
【0049】
最後に、固体電解質袋管1の胴部と正極容器5の胴部との間に、アルミナ繊維集合体から成る厚さ約0.3mm の多孔質材12と共に、径方向の厚さが約10mmのリング状のPAN系炭素繊維マットから成る多孔質導電材13を積層して充填し、正極室5内に正極活物質14として硫黄を含浸した後に、正極容器5を封止してナトリウム硫黄電池を作製した。
【0050】
得られたナトリウム硫黄電池を水平に寝かせて330℃で充放電運転した結果、電池容量は約3000Ahと大きく、且つ、内部抵抗は約0.5mΩ と小さくでき、大容量化と高効率化の両立が可能であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明のナトリウム硫黄電池においては、複数の固体電解質を軸方向に接合して固体電解質袋管1を形成することにより、大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池が実現され、また、固体電解質同士を接合する接合材3としてナトリウムイオン伝導性の小さい材料を用いることにより、電池効率が向上する。さらに、この固体電解質袋管1を水平方向又は斜め方向に寝かせて充放電運転することにより、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池の運転方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を表わすナトリウム硫黄電池の縦断面図。
【図2】本発明の固体電解質袋管の縦断面図。
【図3】本発明の第2の実施例を表わすナトリウム硫黄電池の縦断面図。
【符号の説明】
1…固体電解質袋管、2…絶縁部材、3…接合材、4…負極容器、5…正極容器、6…負極室、7…正極室、8…ナトリウム、9…ナトリウム容器、10…不活性ガス、11…貫通孔、12…多孔質材、13…多孔質導電材、14…正極活物質、15…集電体、16…貫通部、101,102,103…固体電解質。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池およびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極室内に液体ナトリウム,正極室内に硫黄,多硫化ナトリウムなどの正極活物質を充填し、負極室/正極室間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質袋管で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車などへの利用が期待されている。この電池の実用化のためには、電池の特性向上と共に低コスト化が不可欠であり、このためには、電池が高出力運転できるように内部抵抗を低減して電池効率を向上したり、単電池を大型化してkWやkWh当たりの電池数を低減することが望ましいが、従来の電池ではそのための対策が不十分であった。なお、電池効率が低下すると電池出力が低下するため、結果としてkWやkWh当たりの電池必要数が増して、コストは高くなる。
【0003】
特に、低コスト化のためには、単電池を大型化して大容量化することが極めて有効であるが、このためには固体電解質袋管の軸方向又は/及び径方向の長さを増加させる必要がある。しかしながら、固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくした場合には、固体電解質内のナトリウムイオンが固体電解質袋管の軸方向に移動するために、固体電解質袋管の軸方向の正極室内に正極活物質の濃度分布や組成分布が付きやすくなり、この結果、電池内に起電力分布を生じて循環電流が流れ、電池の効率が低下しやすくなるという問題があった。すなわち、固体電解質袋管を用いたナトリウム硫黄電池においては、充放電時に固体電解質袋管を通してナトリウムイオンが移動するが、電池効率向上のためにはナトリウムイオンを主に固体電解質袋管の径方向に移動させ、軸方向への移動を低減させることが有効である。なお、ナトリウムイオンが固体電解質袋管の軸方向へ移動すると、固体電解質袋管表面近傍での電気化学反応(2Na++xS+2e−⇔Na2Sx)が軸方向に沿って不均一に進行して、その結果として、正極室内の正極活物質であるSやNa2Sxの組成分布が軸方向で異なり、起電力が分布して、循環電流による電池効率低下を招きやすくなる。
【0004】
一方、固体電解質袋管の軸方向の代わりに径方向の長さを大きくすることも可能であるが、この場合には固体電解質袋管の容積と表面積との比が大きくなって、固体電解質袋管内に充填されたナトリウムを所定時間内に反応させるためには運転時の電流密度を増加させる必要があり、その結果、内部抵抗の影響で電池効率が低下するという問題も有った。なお、電池効率は一般に、(起電力−電流×内部抵抗)/(起電力+電流×内部抵抗)で与えられる。
【0005】
このように、従来のナトリウム硫黄電池においては、低コスト化のための電池大容量化と効率向上との両立は困難であった。
【0006】
これらの問題に対する対策として、先に固体電解質袋管を横置きして、水平または斜めに寝かせて電池効率を向上させたナトリウム硫黄電池について特開2001−76754号公報,特開2001−243975号公報,特開2002−8712号公報,特開2002−8714号公報,特開2002−15767号公報,特開2002−75437号公報,特開2002−260723号公報,特願2001−256372号に記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−76754号公報
【特許文献2】
特開2001−243975号公報
【特許文献3】
特開2002−8712号公報
【特許文献4】
特開2002−8714号公報
【特許文献5】
特開2002−15767号公報
【特許文献6】
特開2002−75437号公報
【特許文献7】
特開2002−260723号公報
【特許文献8】
特願2001−256372号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、次のような課題があった。
【0009】
すなわち、これらの従来技術においては、電池を大容量化するために固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくするための低コスト化の工夫や、固体電解質袋管の軸方向へのナトリウムイオンの移動を低減するための工夫は行われていない。このため、低コスト化を目指して電池容量や電池効率を特に向上するための検討は不十分であり、一層の低コスト化を図るには、電池を構成する固体電解質袋管の軸方向の長さを大きくするための構造改良が必要である。
【0010】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を除き、電池大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池、又は、電池大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池、および、その運転方法を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のナトリウム硫黄電池は、固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池であって、前記固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されていることを特徴としている。ここで、前記接合材がガラス半田であることが望ましく、前記接合材のナトリウムイオン伝導率が前記固体電解質のナトリウムイオン伝導率よりも小さいこと、又は/及び、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したことが特に望ましい。
【0012】
この電池構造を用いることにより、電池大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池、又は、電池大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池が実現される。
【0013】
また、本発明のナトリウム硫黄電池の運転方法は、固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されており、前記固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池を用いて、前記固体電解質袋管を水平方向又は斜め方向に寝かせて充放電することを特徴としている。ここで、前記接合材としてガラス半田を用いることが望ましく、前記接合材として、前記固体電解質袋管よりもナトリウムイオン伝導率の小さい接合材を用いること、又は/及び、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したナトリウム硫黄電池を用いることが特に望ましい。
【0014】
この運転方法を用いることにより、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池の運転方法が実現される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の第一の実施形態によるナトリウム硫黄電池の構造を示す断面図である。図1において、ナトリウムイオン導電性の固体電解質袋管1には、普通β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成る固体電解質が用いられ、図1では固体電解質袋管1の軸方向を水平方向に寝かせ、横置きに配置して電池を充放電している。なお、図示されていないが、固体電解質袋管1の軸方向を鉛直方向や斜め方向に配置して、電池を充放電することも可能である。また、固体電解質袋管1は固体電解質101,102,103同士を軸方向に接合して構成され、図2で後述のように、これらの固体電解質間は接合材3で接合されている。また、固体電解質101と絶縁部材2とは、一般にガラス半田などの接合材で接合されたり、一体焼結などの方法で接続される。
【0017】
一方、負極容器4,正極容器5は固体電解質袋管1と共にそれぞれ負極室6,正極室7を構成しており、その材料としてはAl合金やFe合金,SUS又はこれらの表面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,Moなどを主体とする耐食層を設けたものやAl合金とSUS等とのクラッド材が普通に用いられる。また、絶縁部材2は負極容器4と正極容器5とを絶縁分離し、且つ、これらと接合されており、普通αアルミナセラミックスが用いられている。ここで、負極容器4や正極容器5と絶縁部材2との接合には、図示されていないが、AlやAl合金を接合剤として用いて、接合剤の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して、加圧接合する熱圧接法が一般に行われている。
【0018】
また、負極室6内にはナトリウム8を収納するSUS,Fe合金やAl合金などの金属製ナトリウム容器9が設けられており、ナトリウム8は放電時には重力や負極室6の一部であるナトリウム容器9内に充填された窒素ガスやArガスなどの不活性ガス10の圧力で押され、一方充電時には固体電解質袋管1を通して侵入するナトリウムの圧力で押されて、ナトリウム容器9に設けた貫通孔11を出入りする。このようにナトリウム容器9を設けることにより、固体電解質袋管1に隣接して存在するナトリウム8の量が少なくできて、固体電解質袋管1が破損した際の電池の安全性が向上する。なお、図1においては、ナトリウム容器9は負極容器4と一体化されているが、後述の図3のように、ナトリウム容器9と負極容器4とを分離した構造も可能である。
【0019】
さらに、正極室7内の固体電解質袋管1の胴部外面に沿って、多孔質材12と多孔質導電材13が設置されている。また、正極室7内には硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14が充填されており、この正極活物質14が多孔質材12や多孔質導電材13に含浸されて、電池反応を促進している。
【0020】
ここで、多孔質導電材13には炭素繊維や炭素粉末の集合体が用いられ、特に固体電解質袋管1の胴部近傍に沿った径方向の厚さが1〜20mm程度の、1300〜2000℃で加熱されたPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の炭素繊維マットを用いることが望ましい。また、炭素繊維が面方向に配列したリング形状などのマットを用いて、炭素繊維マットの面方向が固体電解質袋管1の胴部に垂直になるように設置することにより、固体電解質袋管1の胴部径方向に沿った炭素繊維マットの抵抗を低減して、電池効率が向上できる。
【0021】
同様な効果は、多孔質導電材13として短冊状や台形状の炭素繊維マットを用いた場合にも実現され、炭素繊維の大半を炭素繊維マット面に平行に配置し、炭素繊維マット面に垂直にこの炭素繊維マットを短冊状や台形状に切断して、炭素繊維マット面が固体電解質袋管1の胴部に垂直になるように短冊状や台形状の炭素繊維マットをラセン状又は円周状に巻きつけることにより、炭素繊維マットの抵抗低減の効果が得られる。なお、炭素繊維マットを台形状に切断して、台形の短い方を固体電解質袋管1の近くに、台形の長い方を固体電解質袋管1の遠くに配置して巻きつけることにより、炭素繊維マット密度を比較的均一にすることができる。
【0022】
一方、多孔質材12には普通アルミナなどのセラミックスやシリカなどのガラスの繊維や粒子の集合体が用いられ、固体電解質袋管1の胴部に沿った径方向の厚さを0.1〜0.5mm 程度にすることが望ましい。ここで、図示されていないが、炭素繊維マットを固体電解質袋管1の軸方向に積層して充填し、積層された炭素繊維マット同志の間に多孔質材を充填したり、貫通部を設けた金属板,セラミックスやガラス板などを設けて、正極活物質14が多孔質導電材13内部を移動し易くすることも可能である。
【0023】
図1の構造のナトリウム硫黄電池においては、固体電解質袋管1の胴部が複数の固体電解質101,102,103を接合材3で軸方向に接合した構造となっているために、固体電解質袋管1の軸方向の長さを大きくすることができ、電池の大容量化が可能である。なお、従来の成形,焼結の方法で固体電解質袋管を製作する場合には、軸方向の長さが大きいと、成形や焼結のための設備が大型化されて製作が困難になったり、設備費用が増加すると共に、固体電解質袋管が製造時に軸方向に曲がって、製造歩留まりが低下し易くなるという問題があり、大容量電池に用いる固体電解質袋管の歩留まり向上や低コスト化は比較的困難である。一方、本発明のナトリウム硫黄電池においては、従来と同様な設備を用いて製作された、適当な軸方向長さの固体電解質同士を接合材で接合することによって、軸方向に長い固体電解質袋管1が容易に製作され、これを用いて低コストの大容量電池が実現される。
【0024】
さらに、一般に電池を大容量化すると単位時間当りに流れる電流値が大きくなって、電池の内部抵抗による電池効率低下が起こりやすくなるが、本発明の構造のように、複数個の固体電解質同士を軸方向に接合することにより、固体電解質袋管1の容積増加にほぼ比例して軸方向の長さが長くなり、固体電解質袋管1の面積が大きくなって電池の内部抵抗が低減する。その結果として、電池の大容量化によって単位時間当りに流れる電流値が大きくなった場合にも、電流値の増加にほぼ反比例して電池の内部抵抗が低減され、電池の効率低下が防止出来るという効果が得られる。
【0025】
ここで、固体電解質同士を接合する接合材3としては、ガラス半田のように、電子伝導性のほとんど無いものを用いるか、電子伝導性のある金属などの接合材を用いる場合には接合材を径方向に分離して、接合材3によって正極と負極との間が電子移動しないように考慮する必要がある。
【0026】
さらに、結合材3として低イオン伝導率の材料を用いることにより、固体電解質内のナトリウムイオンが固体電解質袋管1の軸方向へイオン伝導することが制限され、電気化学反応(2Na++xS+2e−⇔Na2Sx)が軸方向に沿って不均一に進行することが防止されて、正極室内の正極活物質14であるSやNa2Sxの組成分布や濃度分布が軸方向で比較的均一化され、起電力分布に基づく循環電流による電池効率低下の防止が可能となる。従って、後述の図2で示したように固体電解質間をガラス半田接合する際には、ガラス半田として固体電解質よりもナトリウムイオン伝導率の小さいガラス材料を用いることが望ましく、こうすることにより、固体電解質同士がガラス半田によって軸方向に電気的に分離され、固体電解質袋管の軸方向へのナトリウムイオンの移動が制限されて、電池効率が向上するという利点が得られる。また、接合部のイオン伝導性を特に低下するためには、図示されていないが、固体電解質同士の間にαアルミナのような絶縁性セラミックスを設けて、固体電解質と絶縁性セラミックスとを接合材3で接合することによって、固体電解質同士を接合することも可能である。
【0027】
なお、この問題は軸方向に長い固体電解質袋管を用いた場合に特に重要であり、軸方向の長さが長いと軸方向のイオン移動の影響が大きくなって、軸方向の正極活物質分布が不均一になり、効率低下が起こり易いが、軸方向のイオン移動をガラス半田などの接合材3で防止することにより、軸方向の長い固体電解質袋管を用いた場合にも電池効率低下が防止されて、大容量化と高効率化とが両立した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能となる。
【0028】
ここで、固体電解質袋管1を構成する固体電解質としてはβ″アルミナセラミックスが一般的に用いられ、そのナトリウムイオン伝導率は300℃で約0.4Ω−1cm−1である。また、接合材3のナトリウムイオン伝導率としては固体電解質の1/10以下であることが望ましく、例えば0.04Ω−1cm−1 以下のガラス材料を用いることにより、電池効率向上が可能となる。
【0029】
さらに、図1においては、電池を水平方向に寝かせた構造で充放電運転しているために、長さが直径よりも大きい固体電解質袋管1を用いた際には、電池の鉛直方向の高さが固体電解質袋管1を直立した場合よりも小さくなり、正極室7内の上下方向に重力による正極活物質14の濃度分布や組成分布が付きにくくなって、電池内に起電力分布やそれに基づく循環電流が起こりにくく、これらの結果として電池の効率が特に向上する。この効果は単電池を大容量化するために固体電解質袋管1の長さを大きくした場合に顕著で、本発明の構造のように複数個の固体電解質同士を軸方向に接合して、固体電解質袋管1の軸方向の長さを大きくすることにより、電池の大容量化と効率向上との両立が特に可能となる。
【0030】
ここで、上記起電力分布及び循環電流の原因は、正極活物質14を構成する多硫化ナトリウムが硫黄に融けず、且つ、正極室7内に多硫化ナトリウムが存在する場所と硫黄が存在する場所とで、電池の起電力が異なり易いことに基づいている。なお、固体電解質袋管1の鉛直方向の高さの影響は、多硫化ナトリウムの比重が硫黄よりも大きいために正極室内の下側に溜まり易いことに基づいており、固体電解質袋管1の鉛直方向の高さが低いほど、起電力分布や循環電流は起こり難くなる。
【0031】
また、固体電解質袋管1を斜めに設置する場合、固体電解質袋管1の軸方向と水平方向との角度を±45°以下にして、電池の鉛直方向の高さを低減することが望ましい。また、多孔質材12や多孔質導電材13の表面張力による正極活物質14の吸い上げ高さを考慮すると、多孔質材12や多孔質導電材13の鉛直方向の高さが15cm以下になる角度に固体電解質袋管1を傾けることが望ましく、こうすることによって、正極活物質14が表面張力により必要場所へ提供されて、電池内の起電力分布の防止や循環電流の防止の効果が得られる。勿論、電池効率向上の目的で電池の鉛直方向の高さを小さくするためには、固体電解質袋管1を水平設置することが特に望ましい。
【0032】
さらに、固体電解質袋管1を横置きした電池を断熱容器内に設置してモジュールとして使用する場合、図1の構造では、電池の鉛直方向の高さが小さいためにモジュールの高さも小さくできて、一般家庭内や自動車内のように設置場所の高さに制限がある場合にも、モジュールの設置が可能となって、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点もある。
【0033】
このように、複数の固体電解質を軸方向に接合して固体電解質袋管1を形成することにより、軸方向に長い固体電解質袋管1が比較的簡単に低コスト製造され、且つ、電池が大容量化できる。また、固体電解質同士の接合にガラス半田のように、固体電解質袋管1よりもナトリウムイオンのイオン伝導性が小さい接合材3を用いることにより、固体電解質袋管1の軸方向のナトリウムイオン伝導が防止されて、電池効率が向上するという利点が得られる。さらに、この固体電解質袋管1を水平方向や斜め方向に寝かせてナトリウム硫黄電池を充放電運転することにより、上下方向に起電力分布や循環電流が起こりにくいために電池効率が特に向上するという利点が得られ、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池、及び、その運転方法が実現される。
【0034】
図2は、図1に示した固体電解質袋管1の構造の一部を示しており、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。図2に見られるように、図1に示した固体電解質袋管1を構成する固体電解質101と102,101とリング状の絶縁部材2、及び、図示されていないが固体電解質102と103とは、ガラス半田などで構成された接合材3によって接合されており、その結果として、固体電解質101と102,102と103との軸方向は接合材3によって電気的に分離されている。したがって、接合材3のナトリウムイオン伝導率を小さくすることによって、固体電解質袋管1の軸方向へのナトリウムイオンの移動を防止することができ、電池効率向上が可能となる。
【0035】
また、図2においては、固体電解質101の下側端部を絶縁部材2に設けたリング状の穴部で、固体電解質102の下側端部を固体電解質101の上側端部に設けたリング状の穴部で支えた状態で、ガラス半田などの接合材3を加熱して接合する方法を用いている。なお、図示されていないが、固体電解質102と103とも同様な方法で接合されている。このように、固体電解質袋管1の軸方向を垂直にして接合することによって、固体電解質同士の接合と固体電解質と絶縁部材との接合を同時に行うことができ、固体電解質袋管1の製作が簡略化されと共に、接合される固体電解質がきちんと支えられた状態で接合されるために、得られた固体電解質袋管1の軸方向の曲がりが起こりにくく、固体電解質袋管1の製造歩留まりが高くなる。これらの結果として、電池の大容量化に適した、軸方向に長い固体電解質袋管1の低コスト化が容易に実現するという利点が得られる。
【0036】
図3は本発明の第二の実施形態によるナトリウム硫黄電池の構造を示す断面図であり、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。ここで、図3においては固体電解質袋管1を水平方向又は、図示されていないが、斜め方向に寝かせ、横置きに配置して電池が充放電されると共に、固体電解質袋管1は固体電解質101と102との軸方向をガラス接合などの接合材3で接合することによって構成されており、図1の場合と同様に、電池の大容量化と高効率化とが両立した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能である。さらに、絶縁部材2と接合された固体電解質袋管1の接合部分及びその近傍の肉厚を比較的厚くして、接合部や接合部近傍の固体電解質袋管1の強度を増加し、横置き電池の機械的信頼性向上を図っている。
【0037】
また、固体電解質袋管1の内側に負極室6が、外側に正極室7が設けられ、正極室7内の固体電解質袋管1の胴部に沿って、正極容器5と軸方向端部で接続した集電体15が設けられ、集電体15と固体電解質袋管1の胴部との間に多孔質材12と多孔質導電材13が設置されている。さらに、正極室7内には硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14が充填されており、この正極活物質14が多孔質材12や多孔質導電材13に含浸されて、電池反応を促進している。また、正極活物質14の体積を多孔質材12や多孔質導電材13の空隙体積よりも大きくして、多孔質材12や多孔質導電材13に含浸される以外に、正極室7内の集電体15の外側に正極活物質14の液相を形成し、集電体15に貫通部16を設けて多孔質導電材13の内外に正極活物質14を移動させることにより、電池容量の拡大を図ることができる。
【0038】
なお、集電体15としては厚さ0.3 〜5mm程度のAl,Al合金やこれらとSUS等とのクラッド材を用い、多孔質導電材13との接触面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,MoやCr,Moの炭化物や窒化物などの耐食性導電層を溶射やメッキなどの方法で設けたり、これらの耐食性粒子や繊維をAlやAl合金の表面へ接合又は埋め込んだものが用いられる。さらに、貫通部16としては直径や幅,長さが1〜10mm程度の円形や直方体の孔、又は、これらの間に幅1〜10mmのスリットを設けたものを用い、面積割合としては集電体15の面積の5〜50%程度が望ましい。
【0039】
ここで、正極室7内の固体電解質袋管1に沿って設けた集電体15を用いて集電することにより、固体電解質袋管1の側部と集電体15との間隙に存在する多孔質導電材13の厚さを比較的小さくして、その抵抗低減により電池効率を特に向上することができる。さらに、地震や運搬時の振動、あるいは運搬時の衝突事故などによって電池に大きな加速度が加わった場合にも、多孔質材12や多孔質導電材13がクッションの役目をするために、固体電解質袋管1が故障することは無く、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性を特に高めることができる。
【0040】
なお、同様な効果は集電体15を設けずに、図1のように、固体電解質袋管1と正極容器5との間に多孔質導電材や多孔質材を充填した際にもある程度実現できる。しかしながら、図3においては集電体15が設けられているために、同じ電池容量であっても固体電解質袋管1に近接した多孔質材12や多孔質導電材13の厚さが比較的薄くでき、固体電解質袋管1を支持し易くなったり、逆に多孔質材12や多孔質導電材13の厚さが同じ場合には電池容量が大きくできて、その結果としてナトリウム硫黄電池の機械的信頼性向上と電池容量向上との両立が可能になるという利点がある。
【0041】
さらに、ナトリウム硫黄電池の充電時には、正極活物質14である多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13の表面張力によって集電体15の外側の正極活物質14の液相から吸い上げられ、多孔質導電材13の内部などで電気分解されて、生成したナトリウムイオンが固体電解質袋管1を通って負極室6内へ移動する必要がある。また、充電が進むにつれて正極室7内の正極活物質14の液面が低下して、正極活物質14を構成する多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13と接触しなくなると、充電が停止するという問題がある。この問題に対処して電池容量を向上するためには、正極室7内の空間に存在する多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13に接触し易い構造を採用することが望ましい。
【0042】
この問題に対処するためには、図示されていないが、図3の構造において固体電解質袋管1の中心軸を正極容器5の中央部よりも下部に位置するように配置したり、正極容器5の軸方向に垂直な断面下側の肉厚を上側よりも大きくすることにより、集電体15の軸方向に垂直な断面下側と正極容器5との間隙を狭くしたり、両者を接触又は接合することが望ましい。また、集電体15の断面下側と正極容器5との間に多孔質材又は/及び多孔質導電材を充填したり、固体電解質袋管1と集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を貫通部16や集電体15の端部を通して、集電体15の断面下側に伸ばすことも可能である。こうすることにより、充電が進んで、正極室7内の下側に存在する多硫化ナトリウムの液面高さが小さくなっても、多硫化ナトリウムが多孔質材12や多孔質導電材13と接触できるために充電が進み易くなり、電池の容量が向上する。
【0043】
なお、上記のように集電体15の断面下側と正極容器5との間隙を狭くした場合には、集電体15の断面上側と正極容器5との間に多孔質材又は/及び多孔質導電材を充填したり、固体電解質袋管1と集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を貫通部16や集電体15の端部を通して、集電体15の断面上側に伸ばすことも可能である。こうすることにより、放電が進んで多硫化ナトリウムの液上面、即ち硫黄の液下面が集電体15の上部を超えた場合にも、集電体15の断面上部に設けた多孔質材や多孔質導電材によって正極活物質14の上部に存在する硫黄が吸収され、放電反応が進んで、電池容量が大きくできるという利点が得られる。
【0044】
また、集電体15の断面下側を正極容器5と接触又は接合させることも可能であり、こうすることによって、充電の向上による電池容量の増加と共に、横置きされた固体電解質袋管1が、集電体15との間に存在する多孔質材12や多孔質導電材13を介して正極容器5で支持され、電池の機械的信頼性が向上する。
【0045】
さらに、図3に示したナトリウム硫黄電池の構造においては、正極の抵抗は主に集電体15と多孔質材12及び多孔質導電材13で決まり、正極容器5の容積は電池抵抗にあまり関係しないため、固体電解質袋管1の胴部と集電体15との間隙を小さくすることによって、多孔質導電材13の径方向の抵抗が小さくでき、電池効率が向上すると共に、正極容器5を軸方向に広げたり、軸方向に垂直な方向に広げたりして正極室内の容積を大きくすることにより、電池の大容量化が達成される。すなわち、これらの結果、電池抵抗を低減して電池効率が向上すると共に、構成部品をあまり増やすこと無く電池の大容量化が可能で、低コスト化が容易に実現できる実用性の高い高効率大容量電池が得られる。
【0046】
また、図3において、Al又はAl合金製のナトリウム容器9を用いて、約330℃の電池運転温度での固体電解質袋管1とナトリウム容器9との間隙を0.1mm 以下にすることが望ましい。こうすることにより、固体電解質袋管1として内径が約40mm以上のβ管やβ″管を用いた場合、固体電解質袋管1の破損などで電池温度が約450〜500℃以上に上昇すると、熱膨張によってナトリウム容器9の外面が固体電解質袋管1の内面と接触し、ナトリウム容器9からのナトリウム8の移動が防止されて、電池の安全性が向上するという利点が得られる。また、この構造のナトリウム容器9の製造には、固体電解質袋管1内にナトリウム容器9を収納し、約450〜500℃で内部にガス圧を加えてナトリウム容器9を変形させ、ナトリウム容器9の外面を固体電解質袋管1の内面に接触させた後に冷却する方法を用いることができる。なお、ナトリウム容器9としてSUS製のものを用いることも可能であり、この場合にも固体電解質袋管1との間隙を0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下にすれば、この間隙に存在するナトリウム8の量が少なくなるために、固体電解質袋管1が破損した場合に正極室7に含まれた硫黄との反応量が少なくできて、電池の安全性が向上する。
【0047】
具体例として、図1に示すように、固体電解質101,102又は103としてリチウムドープ又はマグネシウムドープのβ″アルミナ焼結体からなる外径約60mm,長さ約500mm,肉厚約1.5mm の円筒、又は、円筒状の袋管を用いて、図2に示した方法により、固体電解質同士をガラス半田から成る接合材3で接合して固体電解質袋管1を製作すると共に、固体電解質101とαアルミナから成るリング状の絶縁部材2とをガラス半田で接合した。なお、ガラス半田としては、イオン伝導性がほとんど無いSiO2 −B2O3−Al2O3−BaO−MgO系ガラスや、SiO2−Na2O−Al2O3−B2O3系、又は、SiO2−Na2O−Al2O3−MgO−B2O3系ガラスを用いた。また、負極容器4,正極容器5の材料にはAl合金、ナトリウム容器9の材料にはAlのAA3003を用い、正極容器5の胴部表面にクロムをメッキ、又は鉄/クロム合金,ステライト−6やCo−Cr−Al−Y系合金であるコクラリーを溶射したものを用いた。
【0048】
次に、絶縁部材2の表面に負極容器4,正極容器5の端部を配置し、Al−Si系の合金箔から成る接合剤を用いて、負極容器4,正極容器5の端部と絶縁部材2とを熱圧接した。また、負極容器4と接合されたナトリウム容器9内にナトリウム8と約0.01MPa のArから成る不活性ガス10を充填して封止し、このガス圧でナトリウム8がナトリウム容器9の胴部下側に設けた貫通孔11を通って、固体電解質袋管1の内表面を覆うようにした。
【0049】
最後に、固体電解質袋管1の胴部と正極容器5の胴部との間に、アルミナ繊維集合体から成る厚さ約0.3mm の多孔質材12と共に、径方向の厚さが約10mmのリング状のPAN系炭素繊維マットから成る多孔質導電材13を積層して充填し、正極室5内に正極活物質14として硫黄を含浸した後に、正極容器5を封止してナトリウム硫黄電池を作製した。
【0050】
得られたナトリウム硫黄電池を水平に寝かせて330℃で充放電運転した結果、電池容量は約3000Ahと大きく、且つ、内部抵抗は約0.5mΩ と小さくでき、大容量化と高効率化の両立が可能であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明のナトリウム硫黄電池においては、複数の固体電解質を軸方向に接合して固体電解質袋管1を形成することにより、大容量化が可能な低コストナトリウム硫黄電池が実現され、また、固体電解質同士を接合する接合材3としてナトリウムイオン伝導性の小さい材料を用いることにより、電池効率が向上する。さらに、この固体電解質袋管1を水平方向又は斜め方向に寝かせて充放電運転することにより、大容量化と電池効率向上との両立が可能な低コストナトリウム硫黄電池の運転方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を表わすナトリウム硫黄電池の縦断面図。
【図2】本発明の固体電解質袋管の縦断面図。
【図3】本発明の第2の実施例を表わすナトリウム硫黄電池の縦断面図。
【符号の説明】
1…固体電解質袋管、2…絶縁部材、3…接合材、4…負極容器、5…正極容器、6…負極室、7…正極室、8…ナトリウム、9…ナトリウム容器、10…不活性ガス、11…貫通孔、12…多孔質材、13…多孔質導電材、14…正極活物質、15…集電体、16…貫通部、101,102,103…固体電解質。
Claims (8)
- 固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池であって、前記固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されていることを特徴とするナトリウム硫黄電池。
- 請求項1において、前記接合材がガラス半田であることを特徴とするナトリウム硫黄電池。
- 請求項1又は2において、前記接合材のナトリウムイオン伝導率が前記固体電解質袋管のナトリウムイオン伝導率よりも小さいことを特徴とするナトリウム硫黄電池。
- 請求項1,2又は3のいずれかにおいて、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したことを特徴とするナトリウム硫黄電池。
- 固体電解質袋管が固体電解質同士を接合材によって軸方向に接合して形成されており、前記固体電解質袋管によって負極室と正極室とが分離され、前記固体電解質袋管と負極容器とから成る前記負極室内にナトリウムを、前記固体電解質袋管と正極容器とから成る前記正極室内に硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納したナトリウム硫黄電池を用いて、前記固体電解質袋管を水平方向又は斜め方向に寝かせて充放電することを特徴とするナトリウム硫黄電池の運転方法。
- 請求項5において、前記接合材としてガラス半田を用いることを特徴とするナトリウム硫黄電池の運転方法。
- 請求項5又は6において、前記接合材として、前記固体電解質袋管よりもナトリウムイオン伝導率の小さい接合材を用いることを特徴とするナトリウム硫黄電池の運転方法。
- 請求項5,6又は7のいずれかにおいて、前記正極室内に集電体を設けて、前記固体電解質袋管の胴部と前記集電体との間隙に多孔質導電材又は/及び多孔質材を充填したナトリウム硫黄電池を用いることを特徴とするナトリウム硫黄電池の運転方法。
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