JP2005005007A - ナトリウム硫黄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池を提供する。
【解決手段】ナトリウムを収納した負極容器2と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極容器3と、前記負極容器/正極容器間を分離した固体電解質1とを含むナトリウム硫黄電池であって、前記正極容器内に設けられた多孔質導電材17と前記固体電解質との間にガラス繊維又はガラス粒子から成る多孔質材13,13'が設置され、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が80重量%以上である。
【選択図】 図4
【解決手段】ナトリウムを収納した負極容器2と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極容器3と、前記負極容器/正極容器間を分離した固体電解質1とを含むナトリウム硫黄電池であって、前記正極容器内に設けられた多孔質導電材17と前記固体電解質との間にガラス繊維又はガラス粒子から成る多孔質材13,13'が設置され、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が80重量%以上である。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム硫黄電池に係り、特に、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極容器内に液体ナトリウム、正極容器内に硫黄や多硫化ナトリウムなどの正極活物質を充填し、負極容器と正極容器間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車などへの利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、この電池の実用化と普及を促進するためには、ナトリウム硫黄電池の有効利用を目的として、電池容量を高めることや、運転時の電流密度増加による電池性能劣化を低減することが重要である。ここで、固体電解質の寸法を増加することなく電池容量を高めることによって、ナトリウム硫黄電池の低コスト化が実現される。また、充放電時の電流密度を高めた運転が可能となれば、比較的大きい消費電力のピークカットや電力料金低減に対応する充放電が容易に実現され、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点が得られる。
【0004】
一般のナトリウム硫黄電池においては、放電時には負極容器から正極容器に移動したナトリウムイオンが硫黄と反応して多硫化ナトリウムを形成し、このために、硫黄を浸透し易い炭素繊維や炭素粒子が多孔質導電材として正極容器内に設けられる。一方、充電時には正極容器に存在する多硫化ナトリウムが電気分解され、ナトリウムイオンが負極容器内へ移動すると共に、正極容器内に硫黄が蓄積する。なお、この際に硫黄が固体電解質と接触すると電池抵抗が増加して、電池効率や電池容量が低下するために、固体電解質と多孔質導電材との間に、多硫化ナトリウムを浸透しやすい酸化アルミニウムなどの金属酸化物やガラスの繊維や粒子から成る多孔質材が設けられ、多孔質材内に多硫化ナトリウムを保持することによって、固体電解質への硫黄の接触を防止することが一般に行われている。
【0005】
【特許文献1】
実公昭55−42392号公報
【特許文献2】
特開昭51−129624号公報
【特許文献3】
特開昭52−121730号公報
【特許文献4】
特開昭56−35374号公報
【特許文献5】
特開平7−94210号公報
【特許文献6】
特開2001−273924号公報
【特許文献7】
特開2003−68354号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ナトリウム硫黄電池を有効に利用するために電流密度を大きくした場合には、従来の多孔質材では多硫化ナトリウムの浸透性が不十分で、充電時には多孔質材中に存在する多硫化ナトリウムの量が低減し、電気分解で多孔質材中に蓄積した硫黄によって電池抵抗が増加するという問題が発生する。一方、電流密度の大きい放電時には、多孔質材中に存在する多硫化ナトリウムに含まれるナトリウム量が増加して、電池の起電力が低下するという問題が発生する。これらの結果、(起電力−電流×抵抗)/(起電力+電流×抵抗)から成る電池効率の減少により、電池特性や電池容量が低下して電池性能が劣化し、ナトリウム硫黄電池の有効利用が困難になるという問題があった。
【0007】
なお、多孔質材に関しては、例えば実公昭55−42392号公報,特開昭51−129624号公報,特開昭52−121730号公報,特開昭56−35374号公報,特開平7−94210号公報,特開2001−273924号公報や特開2003−68354号公報などに、ガラス繊維やセラミックス繊維から成る多孔質材を固体電解質と多孔質導電材との間に設置したり、多孔質材を多孔質導電材内にニードルパンチングする方法が述べられているが、電流密度を高めた際にも電池性能劣化を低減するのに適した多孔質材の組成に関する記載は無い。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を除き、ナトリウム硫黄電池の有効利用を図るために、電池容量を向上したり、電流密度の増加による電池性能劣化を低減したりするのに適したナトリウム硫黄電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のナトリウム硫黄電池は、上記目的を達成するために、ナトリウムを収納した負極容器と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極容器と、前記負極容器と正極容器間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池であって、前記正極容器内に設けられた多孔質導電材と前記固体電解質との間にガラス繊維又はガラス粒子から成る多孔質材が設置され、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が80重量%以上であることを特徴としている。
【0010】
ここで、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が90重量%以上であること、又は/及び、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムが0.2重量%以下であることが特に望ましく、また、前記固体電解質として有底袋管状の固体電解質が用いられ、前記有底袋管状の固体電解質の軸方向を水平又は斜めに設置することが望ましい。
【0011】
本発明のナトリウム硫黄電池に用いる多孔質材は、多硫化ナトリウムの浸透性が高いために電池容量が向上すると共に、電流密度を高めても電池性能劣化が低減でき、有効利用が可能なナトリウム硫黄電池が実現される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明のナトリウム硫黄電池の第一の実施形態の構造例を示す断面図である。図1において、ナトリウムイオン導電性の固体電解質1には普通、β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成る有底袋管が用いられるが、場合によっては平板状の固体電解質を用いることもできる。また、負極容器2,正極容器3は固体電解質1と共にそれぞれ負極室4,正極室5を構成し、その材料としてはAl,Al合金やFe,Fe合金,SUS又はこれらの表面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,Moなどを主体とする耐食層を設けたものや、Al合金とSUS等とのクラッド材が普通に用いられる。
【0014】
一方、絶縁リング6は負極容器2と正極容器3とを絶縁分離すると共に、これらと接合されている。また、絶縁リング6には普通αアルミナなどのセラミックスを用いて、図示されていないが、固体電解質1とガラス接合されたり、αアルミナやマグネシウムアルミニウムスピネルなどのセラミックスを用いて、固体電解質1と一体焼結されている。さらに、負極容器2や正極容器3と絶縁リング6との接合には、図示されていないが、AlやAl合金を接合材として用いて、接合材の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して加圧接合する熱圧接法が一般に行われている。
【0015】
また、負極室4内にはナトリウム8を収納するSUS,Fe合金やAl合金などの金属製ナトリウム容器7が設けられている。ここで、ナトリウム8はナトリウム収納部11よりナトリウム容器7内に収納され、放電時には重力や、負極室4の一部であるナトリウム容器7内に充填された窒素ガスやArガスなどの不活性ガス9の圧力で押され、一方充電時には固体電解質1を通して負極室4内に侵入するナトリウムの圧力で押されて、ナトリウム容器7に設けた貫通孔10を出入りする。このようにナトリウム容器7を設けることにより、固体電解質1に隣接して存在するナトリウム8の量が少なくできて、固体電解質1が破損した際の電池の安全性が向上する。なお、図1においては、ナトリウム容器7は負極容器2と一体化されているが、後述の図4のように、ナトリウム容器7と負極容器2とを分離した構造も可能である。
【0016】
さらに、多孔質導電材12が正極室5へ収納され、内部に正極活物質14が含浸されて正極モールドを構成しており、放電時には負極室4から供給されるナトリウムイオンと正極活物質との電気化学反応に、充電時には正極活物質14の電気分解反応に対応している。なお、正極活物質14としては硫黄や多硫化ナトリウムが用いられ、多孔質導電材12としては、1300〜2000℃で加熱されたPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の炭素繊維や炭素粒子などから成る炭素材の集合体が一般に用いられる。一方、固体電解質1と多孔質導電材12との間には多孔質材13が設けられ、この多孔質材13は固体電解質1に沿った厚さが0.1〜0.5mm程度で、後述のように、二酸化珪素が80重量%又は90重量%以上のガラス繊維又はガラス粒子を用いることが望ましい。また、この多孔質材13は多硫化ナトリウムを保持する性質を持ち、ナトリウム硫黄電池の充電時の抵抗上昇を押さえ、電池特性の低下を防止する効果を持っている。なお、場合によっては、多孔質材13を固体電解質1に接触すると共に、多孔質導電材12内にニードルパンチングすることも可能である。
【0017】
このように、ナトリウム硫黄電池においては、放電時には負極容器から正極容器に移動したナトリウムイオンが硫黄と反応して多硫化ナトリウムを形成し、このために、硫黄を浸透し易い多孔質導電材12が正極容器3内に設けられる。一方、充電時には正極容器3内に存在する多硫化ナトリウムが電気分解され、ナトリウムイオンが負極容器2内へ移動すると共に、正極容器内に硫黄が蓄積する。ここで、多孔質材13中に硫黄が充填されて固体電解質1と接触すると、電池抵抗が増加して電池特性や電池容量が低下するために、多孔質材13として多硫化ナトリウムを保持し易い材料を用いることが、ナトリウム硫黄電池の性能劣化低減のために特に重要である。
【0018】
図2は、この問題の解決のために多孔質材13の組成と五硫化ナトリウムの浸透高さとの関係を測定した結果を示す特性図であり、横軸は多孔質材を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%、縦軸は五硫化ナトリウムの浸透高さを示している。なお、充電時の電気分解の際には、多硫化ナトリウムの内で五硫化ナトリウムが主に硫黄を生成するために、五硫化ナトリウムの浸透高さが大きい多孔質材13を用いることが特に望ましい。
【0019】
図2においては、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子には、二酸化珪素以外に酸化アルミニウム,酸化ナトリウム,酸化鉄,酸化チタン,酸化マグネシウムや酸化ホウ素などが含まれているが、五硫化ナトリウムの浸透高さには二酸化珪素の量が大きく関係し、二酸化珪素の重量%が大きいほど浸透高さが大きくなるという効果が得られる。ここで、浸透高さが特に大きくなる条件としては、二酸化珪素の重量%が80%以上、望ましくは90%以上であることが適しており、この結果として、電池高さの大きいナトリウム硫黄電池の電池容量の低下防止が可能となり、ナトリウム硫黄電池の有効利用が実現される。なお、この問題はナトリウム硫黄電池の充電末の充電特性に特に関係しており、正極活物質14を構成する五硫化ナトリウムは硫黄に溶解せず、また、硫黄よりも密度が大きくて正極容器の下側に溜まるため、五硫化ナトリウムの液面が下がって多孔質材13と接触しなくなる点が充電末となることが、電池の有効利用のために適している。したがって、充電末まで五硫化ナトリウムが多孔質材13の全面に浸透して、電池抵抗の増加を防止することが望ましく、このためには五硫化ナトリウムの浸透高さが大きい多孔質材13の使用が重要である。また、図示されていないが、多孔質材13を正極容器3の下部に接触して、電池容量を向上することも可能である。
【0020】
ここで、図1においては、ナトリウム硫黄電池は縦置きされているために、多孔質材13の鉛直方向の高さは、図4に示した横置きナトリウム硫黄電池の場合よりも大きく、有底袋管状の固体電解質1に普通に用いられる軸方向の長さである400〜700mm程度が一般的である。このため、充電末まで抵抗増加を防止するには、五硫化ナトリウムの浸透高さが多孔質材13の鉛直方向の高さ以上であることが望ましい。すなわち、固体電解質1の軸方向の長さが500mm程度の場合には、正極容器3内に設けられた多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透高さとしては500mm以上であることが電池抵抗の増加防止のために望ましく、二酸化珪素の重量%としては80%以上であることが適している。一方、固体電解質1の軸方向の長さが700mm程度の場合には、正極容器3内に設けられた多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透高さとしては700mm以上であることが電池抵抗の増加防止のために望ましく、二酸化珪素の重量%としては90%以上であることが適している。
【0021】
このような多孔質材13を用いることにより、縦置きしたナトリウム硫黄電池においても、五硫化ナトリウムが多孔質材13と接触しなくなる点まで電池抵抗が増加することなく充電が進み、従来の多孔質材13を用いた場合に比べて電池容量が増加して、ナトリウム硫黄電池の低コスト化の利点が得られる。なお、従来の多孔質材13を用いた場合には、充電の途中で抵抗が増加して、五硫化ナトリウムが多孔質材13と接触しなくなる点まで充電が進まないことが一般的であり、この結果として、電池容量は本発明のナトリウム硫黄電池よりも小さくなる。ここで、この問題は充電の電流密度が大きい場合に特に起こり易い。
【0022】
一方、図3は、図2と同じ組成の多孔質材13を用いて、五硫化ナトリウムの浸透速度を測定した結果の特性図であり、横軸は多孔質材を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%、縦軸は五硫化ナトリウムの浸透速度を示している。図3においては、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子に含まれる二酸化珪素の重量%が大きいほど浸透速度が大きくなるという効果が得られる。ここで、浸透速度が特に大きくなる条件は、浸透高さの場合と同様に、二酸化珪素の重量%が80%以上、望ましくは90%以上であることが適しており、この結果として、電流密度の大きいナトリウム硫黄電池の電池特性の劣化低減が可能となり、ナトリウム硫黄電池の有効利用が実現される。
【0023】
即ち、後述の図4で示したように、ナトリウム硫黄電池を横置きした電池においては、多孔質材13の鉛直方向の高さは小さくなり、五硫化ナトリウムの浸透高さが400mm以下でも充電末の抵抗増加の問題は起こりにくくなるという利点が得られる。しかしながら、電流密度を大きくして、ナトリウム硫黄電池の有効利用を実現するためには、図3に示されたように多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%を80%以上、好ましくは90%以上にすることが望ましい。こうすることによって、多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透速度が大きくなって、電流密度が大きくても電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止ができるという利点が得られる。
【0024】
なお、充電時には五硫化ナトリウムが電気分解されて硫黄が生成するため、充電電流が大きくて五硫化ナトリウムの電気分解速度が多孔質材13への移動速度よりも大きくなると、充電抵抗が増加して電池特性が劣化すると共に、充電容量が低下する。一方、放電時にはナトリウムイオンが負極容器2から多孔質材13へ移動するため、放電電流によるナトリウムイオンの移動速度が五硫化ナトリウムの移動速度よりも大きいと、多硫化ナトリウムに含まれるナトリウム量が増加して、電池の起電力低下により、電池効率が低減して放電容量が低下する。これらの問題に対して、図4のように、ナトリウム硫黄電池を横置きすると共に、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%を80%以上にすることにより、固体電解質1に対する電流密度が0.4A/cm2でも電池容量の低下は起こらず、また、90%以上では電流密度が0.5A/cm2でも電池容量の低下が起こらないために、ナトリウム硫黄電池の有効利用に特に優れているという利点が得られる。なお、従来のナトリウム硫黄電池の充放電の電流密度は0.2A/cm2程度又はそれ以下が一般的である。
【0025】
ここで、電池効率は(起電力−電流×抵抗)/(起電力+電流×抵抗)で与えられ、充電電流密度の増加によって電池抵抗が増加すると、電流×抵抗が大きくなって、電池効率が劣化して、電池特性や電池容量が低下する。一方、放電電流密度が増加すると起電力が低下し、その結果として電池効率が大きく劣化して、電池特性や電池容量が低下する。したがって、これらの問題に対応するためには、多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透速度を高めて、電池抵抗の増加や起電力の低下を防止することが重要である。なお、電流密度は電流/固体電解質の通電面積で表され、また、電池抵抗は固体電解質の通電面積にほぼ反比例するのが一般的である。すなわち、電流密度が増加すると電流×抵抗はその分だけ増加するが、五硫化ナトリウムの浸透速度を高めて、起電力や抵抗の変化を防止した場合には、五硫化ナトリウムの浸透速度が小さい場合に比べて電池効率の低下は極めて小さくなる。この結果として、電池容量の低下防止と共に電池特性の劣化低減が可能となり、電流密度の向上によるナトリウム硫黄電池の利用範囲の拡大や電池の有効利用が可能になるという利点が得られる。
【0026】
ここで、多孔質材13としては、ガラスの代わりに酸化アルミニウムなどのセラミックスの繊維や粒子を用いることも可能であるが、これらの材料の五硫化ナトリウムの浸透高さは約300mm以下、浸透速度は約1.5g/cm2・s以下と比較的小さく、本発明のように、二酸化珪素の重量%が80%又は90%以上のガラス繊維やガラス粒子を用いる方が、ナトリウム硫黄電池の電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止のために適している。さらに、ガラス繊維の径やガラス粒子の径は一般に約1〜15μmであり、この径がこの範囲以外になると、五硫化ナトリウムの浸透高さや浸透速度は図2や図3の特性図から少し変化するが、浸透高さや浸透速度を大きくするためには、二酸化珪素の重量%は80%又は90%以上が望ましいことは同等である。
【0027】
なお、ナトリウム硫黄電池に用いる多孔質材13は、多孔質導電材12で押されて固体電解質1に接触した構造となっているために、ガラス繊維同士又はガラス粒子同士が接触して、接触したガラス繊維間又は接触したガラス粒子間の隙間を通って、五硫化ナトリウムが浸透するのが一般的である。また、ガラス繊維やガラス粒子としては、二酸化珪素に酸化カルシウムや酸化カリウムを設けたものも存在するが、酸化カルシウムや酸化カリウムは正極活物質14に溶解し、固体電解質1と反応して、固体電解質1を破損させる問題があるため、酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムの重量%が0.2% 以下のガラス繊維やガラス粒子を用いることが望ましい。こうすることによって、正極活物質14に溶解した酸化カルシウムや酸化カリウムの量が少なくなって、固体電解質1の破損が防止できるという利点が得られる。一方、酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムの重量%が0.2%を超えると、ナトリウム硫黄電池を長期間運転した際に固体電解質1が劣化し、その結果として、電池寿命低下の問題が発生し易くなるという欠点がある。
【0028】
図4は本発明のナトリウム硫黄電池の第二の実施形態の構造を示す断面図であり、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。ここで、図4においては有底袋管状の固体電解質1を水平方向、又は、図示されていないが斜め方向に寝かせ、横置きに配置した電池が用いられている。また、固体電解質1の内側に負極室4が、外側に正極室5が設けられ、正極室5内の固体電解質1の胴部に沿って、正極容器3と軸方向端部で接続した集電体15が設けられて、集電体15と固体電解質1の胴部との間に多孔質導電材12と多孔質材13が設置されている。また、この構造においては、多孔質導電材12は有底袋管状の固体電解質1の軸方向に積層して設置され、多孔質導電材12同士の間にも多孔質材13′を設けて、正極室5内に充填された硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14の移動による電池反応を促進している。さらに、正極活物質14の体積を多孔質導電材12や多孔質材13,13′の空隙体積よりも大きくして、多孔質導電材12や多孔質材13,13′に含浸される以外に、正極室5内の集電体15の外側に正極活物質14の液相を形成し、集電体15に貫通部16を設けて、集電体15の内外に正極活物質14を移動させることにより、固体電解質1の寸法を増加することなく、電池容量の拡大を可能としている。
【0029】
ここで、有底袋管状の固体電解質1を斜めに設置することも可能であるが、この場合には固体電解質1の軸方向と水平方向との角度を±45°以下にして、電池の鉛直方向の高さを低減することが望ましい。勿論、電池特性向上の目的で電池の鉛直方向の高さを小さくするためには、固体電解質1を水平設置することが特に望ましい。さらに、固体電解質1を横置きした電池を断熱容器内に設置してモジュールとして使用する場合、図4の構造では、電池の鉛直方向の高さが小さいためにモジュールの高さも小さくできて、店舗内,小型ビル内,一般家庭内や自動車内のように設置場所の高さに制限がある場合にも、モジュールの設置が可能となって、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点がある。また、ナトリウム硫黄電池のモジュールをビル内に設置する場合、電池の上下方向の積層数を減らすことにより、単位面積当たりのモジュールの重量が減少できて、ビルなどの屋内設置や屋上設置が容易に行えるという利点もある。一方、電池の上下方向の積層数を増せば、その分モジュールの設置面積が低減でき、狭い面積の場所にもモジュールが設置できるという利点がある。
【0030】
なお、集電体15としては厚さ0.3〜5mm程度のAl,Al合金やこれらとSUS等とのクラッド材を用い、多孔質導電材12との接触面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,MoやCr,Moの炭化物や窒化物などの耐食性導電層を溶射やメッキなどの方法で設けたり、これらの耐食性粒子や繊維をAlやAl合金の表面へ接合又は埋め込んだものが用いられる。さらに、貫通部16としては直径や幅、長さが1〜10mm程度の円形や直方体の孔、又は、これらの間に幅1〜10mmのスリットを設けたものを用い、面積割合としては集電体15の面積の5〜50%程度が望ましい。
【0031】
ここで、正極室5内の固体電解質1に沿って設けた集電体15を用いて集電することにより、固体電解質1の側部と集電体15との間隙に存在する多孔質導電材12の厚さを1〜10mm程度と比較的小さくして、その抵抗低減により電池効率を特に向上することができる。さらに、地震や運搬時の振動、あるいは運搬時の衝突事故などによって電池に大きな加速度が加わった場合にも、多孔質導電材12や多孔質材13がクッションの役目をするために、固体電解質1が故障することは無く、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性を特に高めることができる。
【0032】
なお、同様な機械的信頼性の効果は集電体15を設けずに、図1のように、固体電解質1と正極容器3との間に多孔質導電材12や多孔質材13を充填した際にもある程度実現できる。しかしながら、図4においては集電体15が設けられているために、同じ電池容量であっても、固体電解質1に近接した多孔質導電材12や多孔質材13の厚さが比較的薄くでき、固体電解質1を支持し易くなる。また、逆に多孔質導電材12や多孔質材13の厚さが同じ場合には電池容量が大きくできて、これらの結果として、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性向上と電池容量向上との両立による低コスト化が可能になるという利点が得られる。
【0033】
また、ナトリウム硫黄電池の充電時には、正極活物質14である多硫化ナトリウム、特に五硫化ナトリウムが多孔質材13や13′の表面張力によって集電体15の外側の正極活物質14の液相から吸い上げられ、多孔質導電材12の内部などで電気分解されて、生成したナトリウムイオンが固体電解質1を通って負極室4内へ移動する必要がある。また、充電が進むにつれて正極室5内の正極活物質14を構成する五硫化ナトリウムの液面が低下して、多孔質材13や13′への浸透が低下すると、電池抵抗が増加するという問題がある。この問題に対して、図4の構造では、固体電解質1を横置きしているために多孔質材13の鉛直方向の長さが小さくなり、多孔質材13内への五硫化ナトリウムの浸透が容易に行われて、電池抵抗の増加が防止できる。また、多孔質材13や13′として、二酸化珪素の重量%が80%又は90%以上のガラス繊維やガラス粒子を用いることにより、固体電解質1に対する電流密度が0.4A/cm2又は0.5A/cm2でも電池容量の低下防止や電池特性の劣化低減が可能となり、電池容量の大きいナトリウム硫黄電池の有効利用が可能で、ナトリウム硫黄電池の利用範囲の拡大や低コスト化が可能になるという利点が得られる。
【0034】
さらに、図4に示したナトリウム硫黄電池の構造においては、正極の抵抗は主に集電体15と多孔質導電材12及び多孔質材13や13′で決まり、正極容器3の容積は電池抵抗にあまり関係しないため、固体電解質1と集電体15との間隙を小さくすることによって、多孔質導電材12の抵抗が小さくできて電池効率が向上すると共に、正極容器3や負極容器2を軸方向に広げたり、軸方向に垂直な方向に広げたりして正極室や負極室内の容積を大きくすることにより、電池の大容量化が達成される。すなわち、これらの結果、電池抵抗を低減して電池効率が向上すると共に、構成部品をあまり増やすこと無く電池の大容量化が可能で、低コスト化が容易に実現できる実用性の高い高効率大容量電池が得られる。
【0035】
具体例として、図4に示すように、固体電解質1としてリチウムドープ又はマグネシウムドープのβ″アルミナ焼結体からなる外径約50mm,長さ約540mm,肉厚約1.5mm の円筒状の有底袋管を用いて、固体電解質1とαアルミナから成る絶縁リング6とをガラス半田で接合した。また、負極容器2,正極容器3の材料にはAl合金,ナトリウム容器7の材料にはSUS,集電体15にはAl合金AA3003を用い、集電体の表面にクロムをメッキ、又は鉄/クロム合金、ステライトー6やCo−Cr−Al−Y系合金であるコクラリーを溶射したものを用いた。
【0036】
次に、絶縁リング6の表面に負極容器2,正極容器3の端部を配置し、Al系の合金箔から成る接合剤を用いて、負極容器2,正極容器3の端部と絶縁リング6とを熱圧接した。また、貫通孔10をハンダで封止した状態で、ナトリウム収納部11よりナトリウム容器7内にナトリウム8と約0.02MPa のArから成る不活性ガス9を充填して、ナトリウム収納部11を封止した。そして、このナトリウム容器7を負極室4内に収納し、負極容器2を真空封止した後に温度を上昇することにより、ハンダが融けて、不活性ガス9の圧力によってナトリウム8がナトリウム容器7の胴部下側に設けた貫通孔10を通り、固体電解質1の内表面を覆うようにした。
【0037】
最後に、有底袋管状の固体電解質1の胴部と集電体15の胴部との間に、平均繊維径が約6μmのガラス繊維集合体から成る厚さ約0.3mm の多孔質材13,13′と共に、径方向の厚さが約9mmのリング状のPAN系炭素繊維マットから成る多孔質導電材12を積層して充填し、正極室5内に正極活物質14として硫黄を含浸した後に、正極容器3を封止してナトリウム硫黄電池を作製した。また、多孔質材の重量%としては、SiO2 が95.3%、Al2O3が4.0%、Na2Oが0.2%、Fe2O3が0.2%、CaOが0.1%、K2Oが0.1%、TiO2が0.1%のものを用いた。
【0038】
得られたナトリウム硫黄電池を水平に寝かせて330℃で充放電運転した結果、電池容量は約1400Ahと大きく、且つ、内部抵抗は約1mΩと小さくでき、電池の大容量化と高効率化の両立が可能であった。また、電流密度を約0.5A/cm2(電池電流は約420A)で運転しても、正極活物質である五硫化ナトリウムの浸透速度が大きいために電池容量の低下は起こらず、電池の有効利用に適した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能となった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、電池容量が向上すると共に、電流密度を高めても電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止が可能となり、有効利用が可能なナトリウム硫黄電池が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のナトリウム硫黄電池の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に採用される多孔質材の組成と五硫化ナトリウムの浸透高さとの関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施例に採用される多孔質材の組成と五硫化ナトリウムの浸透速度との関係を示す特性図である。
【図4】本発明のナトリウム硫黄電池の他の実施例を示す特性図である。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…負極容器、3…正極容器、4…負極室、5…正極室、6…絶縁リング、7…ナトリウム容器、8…ナトリウム、9…不活性ガス、10…貫通孔、11…ナトリウム収納部、12…多孔質導電材、13,13′…多孔質材、14…正極活物質、15…集電体、16…貫通部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナトリウム硫黄電池に係り、特に、電力貯蔵装置や電気自動車などに用いるに好適なナトリウム硫黄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極容器内に液体ナトリウム、正極容器内に硫黄や多硫化ナトリウムなどの正極活物質を充填し、負極容器と正極容器間をβ型やβ″型のベータアルミナセラミックス製の固体電解質で分離した構造のナトリウム硫黄電池は、長寿命でエネルギー密度が大きいことから注目され、電力貯蔵装置やハイブリッド自動車を含めた電気自動車などへの利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、この電池の実用化と普及を促進するためには、ナトリウム硫黄電池の有効利用を目的として、電池容量を高めることや、運転時の電流密度増加による電池性能劣化を低減することが重要である。ここで、固体電解質の寸法を増加することなく電池容量を高めることによって、ナトリウム硫黄電池の低コスト化が実現される。また、充放電時の電流密度を高めた運転が可能となれば、比較的大きい消費電力のピークカットや電力料金低減に対応する充放電が容易に実現され、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点が得られる。
【0004】
一般のナトリウム硫黄電池においては、放電時には負極容器から正極容器に移動したナトリウムイオンが硫黄と反応して多硫化ナトリウムを形成し、このために、硫黄を浸透し易い炭素繊維や炭素粒子が多孔質導電材として正極容器内に設けられる。一方、充電時には正極容器に存在する多硫化ナトリウムが電気分解され、ナトリウムイオンが負極容器内へ移動すると共に、正極容器内に硫黄が蓄積する。なお、この際に硫黄が固体電解質と接触すると電池抵抗が増加して、電池効率や電池容量が低下するために、固体電解質と多孔質導電材との間に、多硫化ナトリウムを浸透しやすい酸化アルミニウムなどの金属酸化物やガラスの繊維や粒子から成る多孔質材が設けられ、多孔質材内に多硫化ナトリウムを保持することによって、固体電解質への硫黄の接触を防止することが一般に行われている。
【0005】
【特許文献1】
実公昭55−42392号公報
【特許文献2】
特開昭51−129624号公報
【特許文献3】
特開昭52−121730号公報
【特許文献4】
特開昭56−35374号公報
【特許文献5】
特開平7−94210号公報
【特許文献6】
特開2001−273924号公報
【特許文献7】
特開2003−68354号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ナトリウム硫黄電池を有効に利用するために電流密度を大きくした場合には、従来の多孔質材では多硫化ナトリウムの浸透性が不十分で、充電時には多孔質材中に存在する多硫化ナトリウムの量が低減し、電気分解で多孔質材中に蓄積した硫黄によって電池抵抗が増加するという問題が発生する。一方、電流密度の大きい放電時には、多孔質材中に存在する多硫化ナトリウムに含まれるナトリウム量が増加して、電池の起電力が低下するという問題が発生する。これらの結果、(起電力−電流×抵抗)/(起電力+電流×抵抗)から成る電池効率の減少により、電池特性や電池容量が低下して電池性能が劣化し、ナトリウム硫黄電池の有効利用が困難になるという問題があった。
【0007】
なお、多孔質材に関しては、例えば実公昭55−42392号公報,特開昭51−129624号公報,特開昭52−121730号公報,特開昭56−35374号公報,特開平7−94210号公報,特開2001−273924号公報や特開2003−68354号公報などに、ガラス繊維やセラミックス繊維から成る多孔質材を固体電解質と多孔質導電材との間に設置したり、多孔質材を多孔質導電材内にニードルパンチングする方法が述べられているが、電流密度を高めた際にも電池性能劣化を低減するのに適した多孔質材の組成に関する記載は無い。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を除き、ナトリウム硫黄電池の有効利用を図るために、電池容量を向上したり、電流密度の増加による電池性能劣化を低減したりするのに適したナトリウム硫黄電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のナトリウム硫黄電池は、上記目的を達成するために、ナトリウムを収納した負極容器と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極容器と、前記負極容器と正極容器間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池であって、前記正極容器内に設けられた多孔質導電材と前記固体電解質との間にガラス繊維又はガラス粒子から成る多孔質材が設置され、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が80重量%以上であることを特徴としている。
【0010】
ここで、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が90重量%以上であること、又は/及び、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムが0.2重量%以下であることが特に望ましく、また、前記固体電解質として有底袋管状の固体電解質が用いられ、前記有底袋管状の固体電解質の軸方向を水平又は斜めに設置することが望ましい。
【0011】
本発明のナトリウム硫黄電池に用いる多孔質材は、多硫化ナトリウムの浸透性が高いために電池容量が向上すると共に、電流密度を高めても電池性能劣化が低減でき、有効利用が可能なナトリウム硫黄電池が実現される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明のナトリウム硫黄電池の第一の実施形態の構造例を示す断面図である。図1において、ナトリウムイオン導電性の固体電解質1には普通、β型やβ″型のベータアルミナセラミックスから成る有底袋管が用いられるが、場合によっては平板状の固体電解質を用いることもできる。また、負極容器2,正極容器3は固体電解質1と共にそれぞれ負極室4,正極室5を構成し、その材料としてはAl,Al合金やFe,Fe合金,SUS又はこれらの表面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,Moなどを主体とする耐食層を設けたものや、Al合金とSUS等とのクラッド材が普通に用いられる。
【0014】
一方、絶縁リング6は負極容器2と正極容器3とを絶縁分離すると共に、これらと接合されている。また、絶縁リング6には普通αアルミナなどのセラミックスを用いて、図示されていないが、固体電解質1とガラス接合されたり、αアルミナやマグネシウムアルミニウムスピネルなどのセラミックスを用いて、固体電解質1と一体焼結されている。さらに、負極容器2や正極容器3と絶縁リング6との接合には、図示されていないが、AlやAl合金を接合材として用いて、接合材の液相線温度以下や固相線温度以下に加熱して加圧接合する熱圧接法が一般に行われている。
【0015】
また、負極室4内にはナトリウム8を収納するSUS,Fe合金やAl合金などの金属製ナトリウム容器7が設けられている。ここで、ナトリウム8はナトリウム収納部11よりナトリウム容器7内に収納され、放電時には重力や、負極室4の一部であるナトリウム容器7内に充填された窒素ガスやArガスなどの不活性ガス9の圧力で押され、一方充電時には固体電解質1を通して負極室4内に侵入するナトリウムの圧力で押されて、ナトリウム容器7に設けた貫通孔10を出入りする。このようにナトリウム容器7を設けることにより、固体電解質1に隣接して存在するナトリウム8の量が少なくできて、固体電解質1が破損した際の電池の安全性が向上する。なお、図1においては、ナトリウム容器7は負極容器2と一体化されているが、後述の図4のように、ナトリウム容器7と負極容器2とを分離した構造も可能である。
【0016】
さらに、多孔質導電材12が正極室5へ収納され、内部に正極活物質14が含浸されて正極モールドを構成しており、放電時には負極室4から供給されるナトリウムイオンと正極活物質との電気化学反応に、充電時には正極活物質14の電気分解反応に対応している。なお、正極活物質14としては硫黄や多硫化ナトリウムが用いられ、多孔質導電材12としては、1300〜2000℃で加熱されたPAN(ポリアクリロニトリル)系やピッチ系の炭素繊維や炭素粒子などから成る炭素材の集合体が一般に用いられる。一方、固体電解質1と多孔質導電材12との間には多孔質材13が設けられ、この多孔質材13は固体電解質1に沿った厚さが0.1〜0.5mm程度で、後述のように、二酸化珪素が80重量%又は90重量%以上のガラス繊維又はガラス粒子を用いることが望ましい。また、この多孔質材13は多硫化ナトリウムを保持する性質を持ち、ナトリウム硫黄電池の充電時の抵抗上昇を押さえ、電池特性の低下を防止する効果を持っている。なお、場合によっては、多孔質材13を固体電解質1に接触すると共に、多孔質導電材12内にニードルパンチングすることも可能である。
【0017】
このように、ナトリウム硫黄電池においては、放電時には負極容器から正極容器に移動したナトリウムイオンが硫黄と反応して多硫化ナトリウムを形成し、このために、硫黄を浸透し易い多孔質導電材12が正極容器3内に設けられる。一方、充電時には正極容器3内に存在する多硫化ナトリウムが電気分解され、ナトリウムイオンが負極容器2内へ移動すると共に、正極容器内に硫黄が蓄積する。ここで、多孔質材13中に硫黄が充填されて固体電解質1と接触すると、電池抵抗が増加して電池特性や電池容量が低下するために、多孔質材13として多硫化ナトリウムを保持し易い材料を用いることが、ナトリウム硫黄電池の性能劣化低減のために特に重要である。
【0018】
図2は、この問題の解決のために多孔質材13の組成と五硫化ナトリウムの浸透高さとの関係を測定した結果を示す特性図であり、横軸は多孔質材を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%、縦軸は五硫化ナトリウムの浸透高さを示している。なお、充電時の電気分解の際には、多硫化ナトリウムの内で五硫化ナトリウムが主に硫黄を生成するために、五硫化ナトリウムの浸透高さが大きい多孔質材13を用いることが特に望ましい。
【0019】
図2においては、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子には、二酸化珪素以外に酸化アルミニウム,酸化ナトリウム,酸化鉄,酸化チタン,酸化マグネシウムや酸化ホウ素などが含まれているが、五硫化ナトリウムの浸透高さには二酸化珪素の量が大きく関係し、二酸化珪素の重量%が大きいほど浸透高さが大きくなるという効果が得られる。ここで、浸透高さが特に大きくなる条件としては、二酸化珪素の重量%が80%以上、望ましくは90%以上であることが適しており、この結果として、電池高さの大きいナトリウム硫黄電池の電池容量の低下防止が可能となり、ナトリウム硫黄電池の有効利用が実現される。なお、この問題はナトリウム硫黄電池の充電末の充電特性に特に関係しており、正極活物質14を構成する五硫化ナトリウムは硫黄に溶解せず、また、硫黄よりも密度が大きくて正極容器の下側に溜まるため、五硫化ナトリウムの液面が下がって多孔質材13と接触しなくなる点が充電末となることが、電池の有効利用のために適している。したがって、充電末まで五硫化ナトリウムが多孔質材13の全面に浸透して、電池抵抗の増加を防止することが望ましく、このためには五硫化ナトリウムの浸透高さが大きい多孔質材13の使用が重要である。また、図示されていないが、多孔質材13を正極容器3の下部に接触して、電池容量を向上することも可能である。
【0020】
ここで、図1においては、ナトリウム硫黄電池は縦置きされているために、多孔質材13の鉛直方向の高さは、図4に示した横置きナトリウム硫黄電池の場合よりも大きく、有底袋管状の固体電解質1に普通に用いられる軸方向の長さである400〜700mm程度が一般的である。このため、充電末まで抵抗増加を防止するには、五硫化ナトリウムの浸透高さが多孔質材13の鉛直方向の高さ以上であることが望ましい。すなわち、固体電解質1の軸方向の長さが500mm程度の場合には、正極容器3内に設けられた多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透高さとしては500mm以上であることが電池抵抗の増加防止のために望ましく、二酸化珪素の重量%としては80%以上であることが適している。一方、固体電解質1の軸方向の長さが700mm程度の場合には、正極容器3内に設けられた多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透高さとしては700mm以上であることが電池抵抗の増加防止のために望ましく、二酸化珪素の重量%としては90%以上であることが適している。
【0021】
このような多孔質材13を用いることにより、縦置きしたナトリウム硫黄電池においても、五硫化ナトリウムが多孔質材13と接触しなくなる点まで電池抵抗が増加することなく充電が進み、従来の多孔質材13を用いた場合に比べて電池容量が増加して、ナトリウム硫黄電池の低コスト化の利点が得られる。なお、従来の多孔質材13を用いた場合には、充電の途中で抵抗が増加して、五硫化ナトリウムが多孔質材13と接触しなくなる点まで充電が進まないことが一般的であり、この結果として、電池容量は本発明のナトリウム硫黄電池よりも小さくなる。ここで、この問題は充電の電流密度が大きい場合に特に起こり易い。
【0022】
一方、図3は、図2と同じ組成の多孔質材13を用いて、五硫化ナトリウムの浸透速度を測定した結果の特性図であり、横軸は多孔質材を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%、縦軸は五硫化ナトリウムの浸透速度を示している。図3においては、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子に含まれる二酸化珪素の重量%が大きいほど浸透速度が大きくなるという効果が得られる。ここで、浸透速度が特に大きくなる条件は、浸透高さの場合と同様に、二酸化珪素の重量%が80%以上、望ましくは90%以上であることが適しており、この結果として、電流密度の大きいナトリウム硫黄電池の電池特性の劣化低減が可能となり、ナトリウム硫黄電池の有効利用が実現される。
【0023】
即ち、後述の図4で示したように、ナトリウム硫黄電池を横置きした電池においては、多孔質材13の鉛直方向の高さは小さくなり、五硫化ナトリウムの浸透高さが400mm以下でも充電末の抵抗増加の問題は起こりにくくなるという利点が得られる。しかしながら、電流密度を大きくして、ナトリウム硫黄電池の有効利用を実現するためには、図3に示されたように多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%を80%以上、好ましくは90%以上にすることが望ましい。こうすることによって、多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透速度が大きくなって、電流密度が大きくても電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止ができるという利点が得られる。
【0024】
なお、充電時には五硫化ナトリウムが電気分解されて硫黄が生成するため、充電電流が大きくて五硫化ナトリウムの電気分解速度が多孔質材13への移動速度よりも大きくなると、充電抵抗が増加して電池特性が劣化すると共に、充電容量が低下する。一方、放電時にはナトリウムイオンが負極容器2から多孔質材13へ移動するため、放電電流によるナトリウムイオンの移動速度が五硫化ナトリウムの移動速度よりも大きいと、多硫化ナトリウムに含まれるナトリウム量が増加して、電池の起電力低下により、電池効率が低減して放電容量が低下する。これらの問題に対して、図4のように、ナトリウム硫黄電池を横置きすると共に、多孔質材13を構成するガラス繊維やガラス粒子中の二酸化珪素の重量%を80%以上にすることにより、固体電解質1に対する電流密度が0.4A/cm2でも電池容量の低下は起こらず、また、90%以上では電流密度が0.5A/cm2でも電池容量の低下が起こらないために、ナトリウム硫黄電池の有効利用に特に優れているという利点が得られる。なお、従来のナトリウム硫黄電池の充放電の電流密度は0.2A/cm2程度又はそれ以下が一般的である。
【0025】
ここで、電池効率は(起電力−電流×抵抗)/(起電力+電流×抵抗)で与えられ、充電電流密度の増加によって電池抵抗が増加すると、電流×抵抗が大きくなって、電池効率が劣化して、電池特性や電池容量が低下する。一方、放電電流密度が増加すると起電力が低下し、その結果として電池効率が大きく劣化して、電池特性や電池容量が低下する。したがって、これらの問題に対応するためには、多孔質材13への五硫化ナトリウムの浸透速度を高めて、電池抵抗の増加や起電力の低下を防止することが重要である。なお、電流密度は電流/固体電解質の通電面積で表され、また、電池抵抗は固体電解質の通電面積にほぼ反比例するのが一般的である。すなわち、電流密度が増加すると電流×抵抗はその分だけ増加するが、五硫化ナトリウムの浸透速度を高めて、起電力や抵抗の変化を防止した場合には、五硫化ナトリウムの浸透速度が小さい場合に比べて電池効率の低下は極めて小さくなる。この結果として、電池容量の低下防止と共に電池特性の劣化低減が可能となり、電流密度の向上によるナトリウム硫黄電池の利用範囲の拡大や電池の有効利用が可能になるという利点が得られる。
【0026】
ここで、多孔質材13としては、ガラスの代わりに酸化アルミニウムなどのセラミックスの繊維や粒子を用いることも可能であるが、これらの材料の五硫化ナトリウムの浸透高さは約300mm以下、浸透速度は約1.5g/cm2・s以下と比較的小さく、本発明のように、二酸化珪素の重量%が80%又は90%以上のガラス繊維やガラス粒子を用いる方が、ナトリウム硫黄電池の電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止のために適している。さらに、ガラス繊維の径やガラス粒子の径は一般に約1〜15μmであり、この径がこの範囲以外になると、五硫化ナトリウムの浸透高さや浸透速度は図2や図3の特性図から少し変化するが、浸透高さや浸透速度を大きくするためには、二酸化珪素の重量%は80%又は90%以上が望ましいことは同等である。
【0027】
なお、ナトリウム硫黄電池に用いる多孔質材13は、多孔質導電材12で押されて固体電解質1に接触した構造となっているために、ガラス繊維同士又はガラス粒子同士が接触して、接触したガラス繊維間又は接触したガラス粒子間の隙間を通って、五硫化ナトリウムが浸透するのが一般的である。また、ガラス繊維やガラス粒子としては、二酸化珪素に酸化カルシウムや酸化カリウムを設けたものも存在するが、酸化カルシウムや酸化カリウムは正極活物質14に溶解し、固体電解質1と反応して、固体電解質1を破損させる問題があるため、酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムの重量%が0.2% 以下のガラス繊維やガラス粒子を用いることが望ましい。こうすることによって、正極活物質14に溶解した酸化カルシウムや酸化カリウムの量が少なくなって、固体電解質1の破損が防止できるという利点が得られる。一方、酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムの重量%が0.2%を超えると、ナトリウム硫黄電池を長期間運転した際に固体電解質1が劣化し、その結果として、電池寿命低下の問題が発生し易くなるという欠点がある。
【0028】
図4は本発明のナトリウム硫黄電池の第二の実施形態の構造を示す断面図であり、図1と同じ符号で記載されたものは同じ部品を示している。ここで、図4においては有底袋管状の固体電解質1を水平方向、又は、図示されていないが斜め方向に寝かせ、横置きに配置した電池が用いられている。また、固体電解質1の内側に負極室4が、外側に正極室5が設けられ、正極室5内の固体電解質1の胴部に沿って、正極容器3と軸方向端部で接続した集電体15が設けられて、集電体15と固体電解質1の胴部との間に多孔質導電材12と多孔質材13が設置されている。また、この構造においては、多孔質導電材12は有底袋管状の固体電解質1の軸方向に積層して設置され、多孔質導電材12同士の間にも多孔質材13′を設けて、正極室5内に充填された硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質14の移動による電池反応を促進している。さらに、正極活物質14の体積を多孔質導電材12や多孔質材13,13′の空隙体積よりも大きくして、多孔質導電材12や多孔質材13,13′に含浸される以外に、正極室5内の集電体15の外側に正極活物質14の液相を形成し、集電体15に貫通部16を設けて、集電体15の内外に正極活物質14を移動させることにより、固体電解質1の寸法を増加することなく、電池容量の拡大を可能としている。
【0029】
ここで、有底袋管状の固体電解質1を斜めに設置することも可能であるが、この場合には固体電解質1の軸方向と水平方向との角度を±45°以下にして、電池の鉛直方向の高さを低減することが望ましい。勿論、電池特性向上の目的で電池の鉛直方向の高さを小さくするためには、固体電解質1を水平設置することが特に望ましい。さらに、固体電解質1を横置きした電池を断熱容器内に設置してモジュールとして使用する場合、図4の構造では、電池の鉛直方向の高さが小さいためにモジュールの高さも小さくできて、店舗内,小型ビル内,一般家庭内や自動車内のように設置場所の高さに制限がある場合にも、モジュールの設置が可能となって、ナトリウム硫黄電池の利用範囲が拡大されるという利点がある。また、ナトリウム硫黄電池のモジュールをビル内に設置する場合、電池の上下方向の積層数を減らすことにより、単位面積当たりのモジュールの重量が減少できて、ビルなどの屋内設置や屋上設置が容易に行えるという利点もある。一方、電池の上下方向の積層数を増せば、その分モジュールの設置面積が低減でき、狭い面積の場所にもモジュールが設置できるという利点がある。
【0030】
なお、集電体15としては厚さ0.3〜5mm程度のAl,Al合金やこれらとSUS等とのクラッド材を用い、多孔質導電材12との接触面にCo基合金,Cr/Fe合金,Al/Si合金,SUS,Cr,C,MoやCr,Moの炭化物や窒化物などの耐食性導電層を溶射やメッキなどの方法で設けたり、これらの耐食性粒子や繊維をAlやAl合金の表面へ接合又は埋め込んだものが用いられる。さらに、貫通部16としては直径や幅、長さが1〜10mm程度の円形や直方体の孔、又は、これらの間に幅1〜10mmのスリットを設けたものを用い、面積割合としては集電体15の面積の5〜50%程度が望ましい。
【0031】
ここで、正極室5内の固体電解質1に沿って設けた集電体15を用いて集電することにより、固体電解質1の側部と集電体15との間隙に存在する多孔質導電材12の厚さを1〜10mm程度と比較的小さくして、その抵抗低減により電池効率を特に向上することができる。さらに、地震や運搬時の振動、あるいは運搬時の衝突事故などによって電池に大きな加速度が加わった場合にも、多孔質導電材12や多孔質材13がクッションの役目をするために、固体電解質1が故障することは無く、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性を特に高めることができる。
【0032】
なお、同様な機械的信頼性の効果は集電体15を設けずに、図1のように、固体電解質1と正極容器3との間に多孔質導電材12や多孔質材13を充填した際にもある程度実現できる。しかしながら、図4においては集電体15が設けられているために、同じ電池容量であっても、固体電解質1に近接した多孔質導電材12や多孔質材13の厚さが比較的薄くでき、固体電解質1を支持し易くなる。また、逆に多孔質導電材12や多孔質材13の厚さが同じ場合には電池容量が大きくできて、これらの結果として、ナトリウム硫黄電池の機械的信頼性向上と電池容量向上との両立による低コスト化が可能になるという利点が得られる。
【0033】
また、ナトリウム硫黄電池の充電時には、正極活物質14である多硫化ナトリウム、特に五硫化ナトリウムが多孔質材13や13′の表面張力によって集電体15の外側の正極活物質14の液相から吸い上げられ、多孔質導電材12の内部などで電気分解されて、生成したナトリウムイオンが固体電解質1を通って負極室4内へ移動する必要がある。また、充電が進むにつれて正極室5内の正極活物質14を構成する五硫化ナトリウムの液面が低下して、多孔質材13や13′への浸透が低下すると、電池抵抗が増加するという問題がある。この問題に対して、図4の構造では、固体電解質1を横置きしているために多孔質材13の鉛直方向の長さが小さくなり、多孔質材13内への五硫化ナトリウムの浸透が容易に行われて、電池抵抗の増加が防止できる。また、多孔質材13や13′として、二酸化珪素の重量%が80%又は90%以上のガラス繊維やガラス粒子を用いることにより、固体電解質1に対する電流密度が0.4A/cm2又は0.5A/cm2でも電池容量の低下防止や電池特性の劣化低減が可能となり、電池容量の大きいナトリウム硫黄電池の有効利用が可能で、ナトリウム硫黄電池の利用範囲の拡大や低コスト化が可能になるという利点が得られる。
【0034】
さらに、図4に示したナトリウム硫黄電池の構造においては、正極の抵抗は主に集電体15と多孔質導電材12及び多孔質材13や13′で決まり、正極容器3の容積は電池抵抗にあまり関係しないため、固体電解質1と集電体15との間隙を小さくすることによって、多孔質導電材12の抵抗が小さくできて電池効率が向上すると共に、正極容器3や負極容器2を軸方向に広げたり、軸方向に垂直な方向に広げたりして正極室や負極室内の容積を大きくすることにより、電池の大容量化が達成される。すなわち、これらの結果、電池抵抗を低減して電池効率が向上すると共に、構成部品をあまり増やすこと無く電池の大容量化が可能で、低コスト化が容易に実現できる実用性の高い高効率大容量電池が得られる。
【0035】
具体例として、図4に示すように、固体電解質1としてリチウムドープ又はマグネシウムドープのβ″アルミナ焼結体からなる外径約50mm,長さ約540mm,肉厚約1.5mm の円筒状の有底袋管を用いて、固体電解質1とαアルミナから成る絶縁リング6とをガラス半田で接合した。また、負極容器2,正極容器3の材料にはAl合金,ナトリウム容器7の材料にはSUS,集電体15にはAl合金AA3003を用い、集電体の表面にクロムをメッキ、又は鉄/クロム合金、ステライトー6やCo−Cr−Al−Y系合金であるコクラリーを溶射したものを用いた。
【0036】
次に、絶縁リング6の表面に負極容器2,正極容器3の端部を配置し、Al系の合金箔から成る接合剤を用いて、負極容器2,正極容器3の端部と絶縁リング6とを熱圧接した。また、貫通孔10をハンダで封止した状態で、ナトリウム収納部11よりナトリウム容器7内にナトリウム8と約0.02MPa のArから成る不活性ガス9を充填して、ナトリウム収納部11を封止した。そして、このナトリウム容器7を負極室4内に収納し、負極容器2を真空封止した後に温度を上昇することにより、ハンダが融けて、不活性ガス9の圧力によってナトリウム8がナトリウム容器7の胴部下側に設けた貫通孔10を通り、固体電解質1の内表面を覆うようにした。
【0037】
最後に、有底袋管状の固体電解質1の胴部と集電体15の胴部との間に、平均繊維径が約6μmのガラス繊維集合体から成る厚さ約0.3mm の多孔質材13,13′と共に、径方向の厚さが約9mmのリング状のPAN系炭素繊維マットから成る多孔質導電材12を積層して充填し、正極室5内に正極活物質14として硫黄を含浸した後に、正極容器3を封止してナトリウム硫黄電池を作製した。また、多孔質材の重量%としては、SiO2 が95.3%、Al2O3が4.0%、Na2Oが0.2%、Fe2O3が0.2%、CaOが0.1%、K2Oが0.1%、TiO2が0.1%のものを用いた。
【0038】
得られたナトリウム硫黄電池を水平に寝かせて330℃で充放電運転した結果、電池容量は約1400Ahと大きく、且つ、内部抵抗は約1mΩと小さくでき、電池の大容量化と高効率化の両立が可能であった。また、電流密度を約0.5A/cm2(電池電流は約420A)で運転しても、正極活物質である五硫化ナトリウムの浸透速度が大きいために電池容量の低下は起こらず、電池の有効利用に適した低コストナトリウム硫黄電池の実現が可能となった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、電池容量が向上すると共に、電流密度を高めても電池特性の劣化低減や電池容量の低下防止が可能となり、有効利用が可能なナトリウム硫黄電池が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のナトリウム硫黄電池の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に採用される多孔質材の組成と五硫化ナトリウムの浸透高さとの関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施例に採用される多孔質材の組成と五硫化ナトリウムの浸透速度との関係を示す特性図である。
【図4】本発明のナトリウム硫黄電池の他の実施例を示す特性図である。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…負極容器、3…正極容器、4…負極室、5…正極室、6…絶縁リング、7…ナトリウム容器、8…ナトリウム、9…不活性ガス、10…貫通孔、11…ナトリウム収納部、12…多孔質導電材、13,13′…多孔質材、14…正極活物質、15…集電体、16…貫通部。
Claims (4)
- ナトリウムを収納した負極容器と、硫黄又は/及び多硫化ナトリウムから成る正極活物質を収納した正極容器と、前記負極容器と正極容器間を分離した固体電解質とを含むナトリウム硫黄電池であって、前記正極容器内に設けられた多孔質導電材と前記固体電解質との間にガラス繊維又はガラス粒子から成る多孔質材が設置され、前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が80重量%以上であることを特徴とするナトリウム硫黄電池。
- 前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる二酸化珪素が90重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のナトリウム硫黄電池。
- 前記ガラス繊維又はガラス粒子に含まれる酸化カルシウム又は/及び酸化カリウムが0.2重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のナトリウム硫黄電池。
- 前記固体電解質として有底袋管状の固体電解質が用いられ、前記有底袋管状の固体電解質の軸方向が水平又は斜めに設置されていることを特徴とする請求項1記載のナトリウム硫黄電池。
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