JP2004253185A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池内の水収支を維持し、フラッティングとドライアウトを防止する。
【解決手段】膜・電極接合体21と、この膜・電極接合体を挟持するセパレータ23、24と、からなる単セルを積層して構成し、前記セパレータに反応ガスを流通させて発電する燃料電池において、前記セパレータ23、24は、水透過性の多孔質材で構成されるとともに、前記膜・電極接合体に面する面に反応ガスが流通する第1流路27と、前記前記膜・電極接合体に面する面の背面に反応ガスが流通する第2流路29と、前記第1流路と第2流路とを連通する連通手段28を備え、前記セパレータの前記第1または第2流路の一方に形成された反応ガスが流入する入口部と、他方の流路に形成された反応ガスが流出する出口部にセパレータ内の水の透過性を促進する処理を施した部位を形成した。
【選択図】 図1
【解決手段】膜・電極接合体21と、この膜・電極接合体を挟持するセパレータ23、24と、からなる単セルを積層して構成し、前記セパレータに反応ガスを流通させて発電する燃料電池において、前記セパレータ23、24は、水透過性の多孔質材で構成されるとともに、前記膜・電極接合体に面する面に反応ガスが流通する第1流路27と、前記前記膜・電極接合体に面する面の背面に反応ガスが流通する第2流路29と、前記第1流路と第2流路とを連通する連通手段28を備え、前記セパレータの前記第1または第2流路の一方に形成された反応ガスが流入する入口部と、他方の流路に形成された反応ガスが流出する出口部にセパレータ内の水の透過性を促進する処理を施した部位を形成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、特にセル内で水収支を成立させる燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムは、燃料が有する化学エネルギを直接電気エネルギに変換する装置であり、電解質膜を挟んで設けられた一対の電極のうち陰極に水素リッチのガスを供給するとともに、他方の陽極に酸素を含有する酸化剤ガスを供給し、これら一対の電極の電解質膜側の表面で生じる下記の電気化学反応を利用して電極から電気エネルギを取り出すものである。
【0003】
陰極反応:H2→2H++2e− (1)
陽極反応:2H++2e−+(1/2)O2→H2O (2)
陰極に水素リッチのガスを供給する方法は、水素貯蔵装置から直接供給する方法、水素を含有する燃料を改質して、いわゆる改質ガスを供給する方法が知られている。水素貯蔵装置としては、高圧ガスタンク、液化水素タンク、水素吸蔵合金タンク等がある。水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリン等が考えられる。陽極に供給する酸化剤ガスとしては、一般に空気が利用されている。
【0004】
燃料電池において電解質膜の性能を引き出し、発電効率を向上させるためには、電解質膜の水分状態を最適に保つ必要がある。
【0005】
しかし、ガス流路内で過剰に水が存在する領域がある場合には、液相の水が発生し、フラッディング(水づまり)が生じ、その結果、ガスの供給が妨げられ、セルの発電性能が低下する。そこで、燃料電池内の温度分布を制御し、フラッディングを防止する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。この従来技術では、ガスの流れとクーラントの流れをコフローとして、ガスの入口から出口に向かって、温度を上昇させて、発生した水を水蒸気としてガスに取り込んで、フラッディングを防止している。
【0006】
また、フラッディングを防止するためガス流路の入口と出口を隣接させて出口付近の過剰な水分を入口に移動させる技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
さらに他のフラッディング防止法として、サーペインタイン流路によって、流路内に折り返し部を設けて、ガス流路を隣接させる技術がある(例えば、特許文献3参照。)。この従来技術では、ガス流路を2回折り返して、出口付近の流路を隣合う流路に隣接させて、出口付近の過剰な水分を他の流路に流すことでフラッディングを防止する。
【0008】
【特許文献1】
特表平9−511356号公報
【特許文献2】
特開平10−32011号公報
【特許文献3】
特開2001−126746号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガスの温度が昇温されているため、燃料電池から排出されるガス温度が高温化し、このため、燃料電池から外部に排出される水量が増加し、燃料電池内の水収支が成立しない。従って、燃料電池下流の水回収装置が必要となり、システムが複雑化するという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の技術では、ガス流路の入口側と出口側との水の移動は、膜・電極接合体を介してのみ行なわれるため、入口側に十分な量の水が移動できないという問題があった。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術では、出口部と入口部を隣接されることができないため、余剰な水分を効率よく入口部に受け渡すことができず、セル内の水分状態を均一にできないという問題があった。
【0012】
以上の問題に鑑みて、本発明の目的は、セル内で水分量コントロールを行い水分量の不均一性を解消し、フラッディングの発生や電解質膜が乾燥するドライアウトの防止を図ると共に、燃料電池での水収支を成立させ、外部設置の水回収装置を不要としたシンプルな燃料電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料電池において、セパレータが、水透過性の多孔質材で構成されるとともに、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とを備え、前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部と前記ガス出口近傍の枝管下流部とに渡って、前記枝管下流部に凝縮した水の枝管上流部への移動を促進する処理を施した。
【0014】
また、燃料電池において、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、膜・電極接合体に開口するとともに前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とセパレータに設け、前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部とガス出口近傍のガス出口の枝管下流部を水透過性の材料で構成した。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、セパレータを水透過性の多孔質材で構成し、セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部と前記ガス出口近傍の枝管下流部とに渡って、前記枝管下流部に凝縮した水の枝管上流部への移動を促進する処理を施したので、フラッディングが生じやすい枝管下流部からドライアウトが生じやすい枝管上流部へ凝縮水の移動量を増加できる。したがって、セル内の水分分布を均一にすることができ、フラッディング及び電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0016】
また、セパレータを非水透過性材で構成した場合でも、枝管の上流部と下流部を水透過性材で構成することにより、フラッディングが生じやすい枝管の下流部からドライアウトが生じやすい枝管上流部へ凝縮水を移動できる。したがって、セル内の水分分布を均一にすることができ、フラッディング及び電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に示す本発明の燃料電池システムの概略図を用いて、以下、説明する。
【0018】
燃料電池1には、図示しない燃料供給手段と空気供給手段から燃料ガスと空気が供給される。燃料電池1に空気を供給する流路途中には、供給される空気の温度を検出するためのセンサ2と湿度を検出するための湿度センサ3が設置される。
【0019】
一方、燃料電池1を所定の温度範囲に制御するための冷却系が設けられる。この冷却系は冷媒としてのロングライフクーラント(以下、LLCという。)を貯留するタンク4と、LLCタンク4に貯留されるLLCを燃料電池1に循環させる循環流路5と、燃料電池の熱を奪い昇温したLLCと熱交換してLLCの熱を放出するためのラジエータ6とから構成される。燃料電池1から排出されたLLCの温度が低い場合には、ラジエータ6を通さずにLLCがLLCタンク4に戻るようにバイパス流路7が設置される。また、循環流路5とバイパス流路7との分岐点に三方切換弁8を設置することでLLCの供給先を制御する。なお、LLCとしては、例えば、エチレングライコールと水の混合液がある。
【0020】
さらに燃料電池1の流入するLLCの温度を検出するための温度センサ9が循環流路5に設置されるとともに、燃料電池1へのLLCの流量を制御する制御弁10及びLLCを燃料電池1に供給するためのポンプ11が循環流路5に設置される。
【0021】
この燃料電池システムを統合制御するコントローラ12が設置され、このコントローラ12には燃料電池1の負荷信号、温度センサ2、湿度センサ3によって検出される空気の温度と湿度、温度センサ9によって検出される燃料電池に流入するLLCの温度および図示しないセンサによって検出される外気温度が入力される。
【0022】
図2に示すようにコントローラ12は、前述の入力値から燃料電池1に流入するLLCの目標温度を算出する目標LLC入口温度算出手段12aと、ガス流路の温度勾配を算出するガス流路温度勾配算出手段12bと、算出された目標LLC温度とガス流路の温度勾配に基づいて制御弁10を用いてLLCの流量を制御するLLC流量制御手段12cと、同じく算出された目標LLC温度とガス流路の温度勾配に基づいてラジエータ6によるLLCの放熱量を制御するラジエータ放熱量制御手段12dとから構成され、コントローラ12は、適正な運転状態となるように三方切換弁8、制御弁10、ポンプ11を制御する。
【0023】
次に図3に示す燃料電池1のセル構成について説明する。単セルは、高分子電解質膜と、この電解質膜を挟持する触媒電極層からなる、いわゆる膜・電極接合体(以下、MEAという。)21と、MEA21を挟持するガス拡散層22と、MEA21に燃料ガスを供給するためのガス流路をガス拡散層22に面して形成したアノードバイポーラプレート(以下、バイポーラプレートのことをBPPという。)23、アノードBPP23に対してMEA21を挟んで反対側に位置し、MEA21に空気等の酸化剤ガスを供給するカソードBPP24と、セルを冷却するLLCを流通させるための流路を備えたLLCプレート25とから構成される。このように構成される単セルを積層状に構成して燃料電池1が構成される。
【0024】
それぞれのプレートを構成する材質について説明すると、カソードBPP24は水透過性材料、例えば多孔質材料で構成され、アノードBPP23とLLCプレート25は非水透過性材料で構成される。なお、以下の実施形態においては、カソードBPP24を用いて説明するが、アノードBPP23のみを水透過性としてもよいし、アノードBPP23、カソード24双方を水透過性材料で構成してもよい。なお、水透過性を備えたBPPに隣接してLLCプレート25を設置することが後述する水収支の点から望ましい。
【0025】
図4から図6に、本発明の特徴であるカソードBPP24の詳細構成を示す。図4は、カソードBPP24のガス拡散層22に面する側の面(以下、反応面という。)24aの構成を示すもので、図5は、カソードBPP24の断面構成を、図6はカソードBPP24のLLCプレート25に面する側の面(以下、裏面という。)24bの構成を示す図である。
【0026】
図4に示すようにガス拡散層22に面する側の反応面24aには、ガス入口部26から供給されるガスが流通する第1ガス流路27を櫛状に形成し、反応面24aに形成されたガス入口部26から供給されたガスはまず、ガス入口マニフォールド27aに送られた後、各第1枝管27bに供給される。第1枝管27bの最下流部にはLLCプレート25に面する側の裏面24bに貫通する貫通孔28が形成され、ガスは貫通孔28を通じて裏面24b側に流出する。
【0027】
図6に示すように、LLCプレート24に面する側の裏面24bにも櫛状に第2ガス流路29が形成され、第2ガス流路29はガス出口マニフォールド29aと第2枝管29bとから構成される。したがって、貫通孔28から流入するガスは、第2枝管29bの最上流部から第2枝管29bに流入し、各第2枝管29bからガス出口マニフォールド29aに送られて、ガス出口部30から排出される。なお、ガス出口マニフォールド29aはガス入口マニフォールド27aに背反する位置に設けられる。
【0028】
ここで、カソードBPP24のガス入口マニフォールド27aと連通する第1枝管27bの上流部27cと第2枝管29bの下流部を結ぶ領域24cには親水処理が施されており、反応面24aと裏面24b間で水の移動が促進されるよう処理されている。なお、親水処理はカソードBPP24の全面に処理を施すことも可能であるが、費用対効果を考慮して親水処理を行う面積を決定すればよい。
【0029】
図7は、上述のように構成されたカソードBPP24内での水の移動を説明するための図である。カソードBPP24は水透過性材料で構成されるため、BPP24内を水が移動でき、またBPP24内に浸透した水は表面張力により、BPP24内に留まり、BPP24内に水が充填されている限り、ガスは第1ガス流路27と第2ガス流路29のみを通過して流通され、カソードBPP24内をガスが透過することはない。前述のように親水処理を施した領域24cは、特に水の浸透が促進されて、他の親水処理を施していない部分より水の移動が大量に行われる。
【0030】
LLCプレート25に面する側の裏面24bを流通するガスは、LLCとの熱交換によってその温度は低下し、ガス拡散層22に面する側の反応面24aを流通するガスの温度より低くなる。よって、LLCプレート25に面する側の裏面24bを流通するガス中の飽和水蒸気圧を超える分の水蒸気は液化し、第2枝管29bにフラッディングを生じる恐れがある。しかしながら、本発明ではこの液化した水はカソードBPP24内を浸透して裏面24bから反応面24aに移動するため、フラッディングを生じることがない。
【0031】
ガス入口部26に供給されるガス、例えば空気が乾燥している場合には、第1枝管27bの上流部27c周辺が乾燥し、電解質膜のドライアウトが生じやすい。これは乾燥したガスがカソードBPP24の第1ガス流路27に流入してきた時に、乾燥したガスを加湿するためカソードBPP24内の水分が消費され、カソードBPP24が乾燥し、電解質膜に水が供給されないためである。
【0032】
しかしながら本発明においては、LLCプレート25に面する裏面24bに凝縮された水が、ガス拡散層22に面する反応面24a側の水の不足した部分に移動し、カソードBPP24の水分の分布を均一に保つことができる。特に親水処理を施した領域24cでは、水が促進して第2枝管29bの下流部29cから第1枝管27bの上流部27c周辺に移動する。これによりガスの加湿のために水分が不足した第1枝管27bの上流部27c周辺に水を補給することができ、乾燥したガスが供給される状態においても第1枝管27bの上流部27c周辺でガスを十分に加湿できるとともに、電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0033】
本実施形態においては、カソードBPP24を水透過性材料で構成し、カソードBPP24のガス拡散層22に面する反応面24aと、LLCプレート25に面して前述の反応面24aより低温の裏面24bに、それぞれ第1ガス流路27と第2ガス流路29を形成する。さらに第1ガス流路27と第2ガス流路29を連通孔28を介して連通させ、カソードBPP24のガスが流入する第1枝管27bの上流部27cと第2ガス流路の下流部29cを結ぶ領域24cに親水処理を施した。
【0034】
これにより、裏面24bに凝縮した水が裏面24bから反応面24a側、特に親水処理を施した第1枝管27bの上流部27cの周辺に集中的に移動する。したがって、凝縮した水が、裏面24bから反応面24a側に自由に移動でき、乾燥した領域に水が移動するため、システムを複雑にすることなく、また燃料電池の発電効率を低下させることなく、セルの水分分布を均一に維持することができる。また、水分分布を均一にできるため、局部的な乾燥状態、特に第1枝管27bの上流部27cの周辺の乾燥を回避し、結果として電解質膜のドライアウトを防止する。さらにカソードBPP24を水透過性材料で形成したので、ガス流路に凝縮した水はカソードBPP24中に浸透し、ガスが流通する第2枝管29bに液相の水が詰まる、フラッディングを防止できる。
【0035】
また、ガス入口部26に供給されたガスが、まずガス拡散層22に面した反応面24a側の第1ガス流路27を流通した後、LLCプレート25に面した裏面24b側の第2ガス流路29を流通する。このため、電気化学反応に用いられた後の、水分が過剰なガスから水分を凝縮して、この凝縮した水を親水処理を施した領域24cを通じて第1枝管27bの上流部27cに移動させ、この移動した水を用いてカソードBPP24に流入してきたガスを効率よく加湿することができる。
【0036】
さらに本実施形態においては、第1枝管27bの上流部27cと第2枝管29bの下流部29cとを隣接するように形成したので、裏面24b側で凝縮した水が反応面24a側に浸透するための移動距離を短くすることができ、カソードBPP24に流入してきたガスを効率よく加湿することができる。
【0037】
図8は、カソードBPP24の第2の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第1の実施形態において水の移動を促進するために施した親水処理に代えてカソードBPP24を構成する多孔質材の孔径を大きくして水の移動を促進する実施形態である。
【0038】
しかしながら、カソードBPP24を構成する多孔質材の孔径をすべて大型化すると、BPPの強度が低下するため好ましくない。そこで、本実施形態のように特に水の移動を促進したい領域、つまり前述の領域24cの多孔質材の孔径を大きくすることで、BPPの強度と水の移動の促進とを両立することができる。また、孔径を大きくすることで、単位面積当りの開口率が大きくなり、その結果単位時間当りの水の移動量が増加する。
【0039】
したがって、ガス入口部26に乾燥したガスが供給され、第1枝管27bの上流部27cが乾燥する状態においても、第1枝管27bの上流部27cに凝縮水を優先的に移動させ、第1枝管27bの上流部27cでガスを加湿するための水分を確保することができるとともに、カソードBPP24の水分分布を均一に維持することができる。これにより、ガス流路のフラッディングや電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0040】
図9から図13は、第3の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第1の実施形態において水の移動を促進するために施した親水処理をカソードBPP24全面に施すとともに、親水処理を第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性の度合が高くなるように親水処理する実施形態である。
【0041】
本実施例のように、各BPP面全面において親水処理を施し、特に第1枝管27bの上流部27cの周辺ほど水透過性が高くなるように構成することで、水はLLCプレートに面する裏面24bからガス拡散層に面する反応面24a側への移動が促進され、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高いため水の移動量が大きい。また第1枝管27bの上流部27c周辺では、水透過性が高いためガスの流れ方向に相反する方向への水の移動も行われ、さらに水の移動が促進される。
【0042】
したがって、本実施形態においては、カソードBPP24全面に親水処理を施し、第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高くなるようにしたため、乾燥したガスがカソードBPP24に供給される場合でも、乾燥したガスを加湿する水分量を確保することができ、電解質膜のドライアウトを防止することができる。また、裏面24b側から反応面24a側に水の移動が行なわれるため、裏面24bに設けられた第2ガス流路29のフラッディングを防止することができる。
【0043】
図14は、カソードBPP24の第4の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第3の実施形態で水の移動を促進するためにカソードBPP24全面に親水処理を施したのに対して、親水処理の代わりに多孔質材の孔径を場所に応じて変化させることで水の透過性の度合を変化させるようにした実施形態である。つまり、第3の実施形態と同様に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水が移動しやすいように多孔質材の孔径を大きく形成し、第1枝管27bの上流部27cから下流部に向けて孔径を小さく形成して水の移動のしやすさを制御するものである。
【0044】
本実施例のように、カソードBPP面24全面において多孔質材の孔径を変化させて水の透過性を制御し、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど孔径が大きくなるように構成したことで、裏面24bに凝縮した水は裏面24bから反応面24a側に移動し、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高いため水の移動量が大きい。また第1枝管27bの上流部27c周辺では、水透過性が高いためガスの流れ方向に相反する方向への水の移動も行われ、さらに水の移動が促進される。
【0045】
したがって、本実施形態においては、カソードBPP24全面に多孔質材の孔径を変化させる処理を施し、第1枝管27bの上流部27c周辺ほど孔径が大きくなるような水を透過させる処理を行うため、乾燥したガスがカソードBPP24に供給される場合でも、ガスを加湿する水分量を確保することができるとともに、電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0046】
図15には、第5の実施形態として、LLCプレート25に形成されるLLC流路31形状の一例を示しており、MEA21、ガス拡散層22、アノードBPP23、カソードBPP24の構成は第1の実施形態と同様とする。
【0047】
このLLC流路31の形状は、サーペンタイン式の流路構成となっており、LLC入口部32から流入するLLCは、LLC入口マニフォールド33から分岐し、並設された第1LLC流路34、第2LLC流路35に導入される。第1LLC流路34、第2LLC流路35は折り返された後、LLC出口マニフォールド36に連通し、LLCはLLC出口部37から排出される。
【0048】
ここで、LLC入口マニフォールド33近傍の第1LLC流路34、第2LLC流路35がカソードBPP24の第2枝管29bの下流部29c近傍に構成される。このような構成とすることで、最も低い温度のLLCが第2枝管29bの下流部29cを流通するガスと熱交換され、第2枝管29bの下流部29c周辺の親水処理を施した領域24cの温度を他の領域より低くできる。
【0049】
図16を用いてカソードBPP24の第1ガス流路27でのガスの温度、相対湿度および液相の水分量分布を説明する。カソードBPP24に流入するガスの温度は、第1枝管27bの上流部27cから貫通孔28に向けて電気化学反応の反応熱により温度が上昇し、この過程において生成水が発生しても相対湿度が100%になって飽和することはない。したがって、BPP24のガス拡散層22に面する反応面24aの第1ガス流路27中に液相の水が存在してフラッディングが生じることはない。
【0050】
一方、LLCプレート25に面する裏面24bでは、LLCとガスとの熱交換が生じて貫通孔28から第2枝管29bの下流部29cに向けてガスの温度が低下する。このため相対湿度が常に100%を越え、過飽和分の水は、裏面24bに形成された第2枝管29bで凝縮する。そして、この凝縮水は、水透過性のBPP24内を透過してガス拡散層22に面する側の反応面24a側に移動し、カソードBPP24に流入したガスの加湿に用いられる。
【0051】
図17は、第5の実施形態での水の移動を説明するための図である。前述のようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cでは、他の部分より低温となるため、流通するガス中の水が凝縮し易い。しかし、この領域24cでは親水処理を行っているため、水の透過性が大きく、反応面24a側への水の移動量を大きくできる。これにより裏面24bに凝縮した水は、反応面24a側に移動し、カソードBPP24に流入したガスの加湿に用いられ、この水によりガスを十分に加湿するとともに、フラッディングを防止できる。
【0052】
本実施形態では、LLC流路31に流入してきた直後の低温のLLCが親水処理を施した領域24c、つまり第2枝管29bの下流部29c周辺に供給されるようにLLC流路31を形成した。したがって、第2枝管29bの下流部29c周辺を他の領域より低温とし、ガス中の水分の凝縮を促進し、凝縮した水を第1枝管27bの上流部27c周辺に移動する。ガスが乾燥した状態で燃料電池1のカソードBPP24に供給されるような場合であっても、凝縮した水を用いてガスを十分に加湿し、また電解質膜21のドライアウトを防止できる。
【0053】
図18、図19には、第6の実施形態としてのMEA21の構成を説明するためのものである。この実施形態は、MEA21の構成を除き、第1の実施形態と同様の構成を有するものである。
【0054】
本実施形態のMEA21は、カソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する触媒電極層の一部を触媒担持しない未反応部21dとしたものである。図19を用いて説明すると、固体高分子電解質膜21aを挟持する触媒電極層21b、21cは、通常、カーボンのサブストレートにPt(白金)系の触媒を担持して構成される。本実施形態の触媒電極層21b、21cでは、その一部に触媒を担持しない未反応部21dを形成する。この未反応部21dは、前述のようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する部分に形成される。
【0055】
このようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する触媒電極層の一部を触媒を担持しない未反応部21dとすることにより、第一枝管27bの上流部27cにおいて、MEA21における化学反応を抑制してガス入口マニフォールド27aから流入したガス中の水分の持ち出しを制限し、一方、第二枝管29bの下流部29cから水移動が促進される領域24cを移動してきた水によりガス入口マニフォールド27aからの流入ガスが十分に加湿され、電解質膜21aのドライアウトを防止することができる。
【0056】
図20から図23に示す第7の実施形態は、これまでカソードBPP24は水透過性の多孔質のBPPから構成されるとして説明してきたが、本実施形態のカソードBPP31は、非水透過性の材料で構成されたものを前提としている。このBPPの構成を除き、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態のBPPを図20と図21を用いて説明すると、カソードBPP31のガス拡散層22に面する側の反応面31aにガスが流通する第1ガス流路32が形成される。第1ガス流路32はガス入口部33とガス入口マニフォールド34aと第1枝管34bとから構成される。
【0058】
第1枝管34bは、反応面31a上にU字状に形成され、ガス入口マニフォールド34aから第1枝管34bの上流部34cに流入したガスは、第1枝管34b内を流通し、第1枝管34bの上流部34cに隣接した下流部34eから貫通孔35を通じて裏面31b側に流出する。貫通孔35から裏面31bに流出したガスは、裏面31bに形成されたガス出口マニフォールド36aに流入し、ガス出口部37から排出される。
【0059】
ここで、カソードBPP31は、第1枝管34bの上流部34cの周辺の領域34dのみ水透過性の多孔質材で形成される。したがって、裏面31bに凝縮した水が反応面31a側に移動し、ガスを加湿するために用いることができる。
【0060】
図22は、本実施形態における水の移動を説明するための図21のB−Bでの断面図である。前述のように本実施形態では、LLCプレート25に面する裏面31b側から凝縮水が多孔質材を通じてガス拡散層22に面する反応面31a側に移動するが、加えて、第1ガス流路32の第1枝管34bがU字状に形成され、ここで、ガス入口マニフォールド34aからガスが離れる側の流路を往路34xとして、ガスがガス入口マニフォールド側に戻る側の流路を復路34yとすると、復路34yで生成された液相の水が第一枝管34bの下流部34e、多孔質材、上流部34cを通じて隣接する往路34xに移動し、ガスを加湿する。また生成された水は、ガス拡散層22を通じても移動し、水を加湿する。
【0061】
したがって、本実施形態では、カソードBPP31を非水透過性材料で構成した場合でも、第1枝管34bの上流部34cの周辺のみを水透過性の多孔質材で形成することにより、ガスを第1枝管34bの上流部34cで加湿することができ、乾燥したガスがカソードBPP31に供給される状態においても十分にガスを加湿し、電解質膜のドライアウトを防止できる。また、多孔質材を用いることで、ガスが流通する流路中に凝縮した液相の水を多孔質材中に浸透させ、ガス流路に液相の水が存在することを抑制し、フラッディングを防止できる。
【0062】
なお、本実施形態に第5の実施形態で説明したLLCを用いた温度制御を組み合わせて多孔質材を用いた領域を他の領域より低温として水の移動を促進させてもよい。
【0063】
さらには図23に示すように、本実施形態に第6の実施形態で説明した触媒電極層の一部を未反応部とした構成を組み合わせることも可能であり(第8の実施形態)、この構成により、ガス入口部におけるガスの加湿量がより増加し、電解質膜のドライアウトをより確実に防止できる。
【0064】
なお、請求項の構成と実施形態の構成の対応は以下である。請求項のガス入口は、請求項中のガス入口部26とガス入口マニフォールド27aに相当し、ガス出口はガス出口部30とガス出口マニフォールド29aに相当する。請求項の冷却部材はLLCプレート25である。
【0065】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムの構成図である。
【図2】コントローラの構成を説明する図である。
【図3】セルの構成を説明する図である。
【図4】カソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図5】カソードBPPのガス流路を説明する断面図である。
【図6】カソードBPPのガス流路を説明する図である(LLCプレートに面する側)。
【図7】カソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図8】第2の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図9】第3の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図10】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図11】同じくカソードBPPのガス流路を説明する断面図である。
【図12】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(LLCプレートに面する側)。
【図13】同じくカソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図14】第4の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図15】第5の実施形態のLLCプレートのLLC流路構成を説明する図である。
【図16】同じくガス流路中の位置に対する温度、相対湿度、水分量の関係を説明する図である。
【図17】同じくカソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図18】第6の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図19】同じくMEAの構成を説明する図である。
【図20】第7の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図21】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図22】同じくカソードBPPのガス流路を説明する断面図である(図21の断面B−B)。
【図23】第8の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 温度センサ
3 湿度センサ
4 LLCタンク
5 循環流路
6 ラジエータ
7 バイパス流路
8 三方切換弁
9 温度センサ
10 制御弁
11 ポンプ
12 コントローラ
21 MEA
22 ガス拡散層
23 アノードBPP(セパレータ)
24 カソードBPP(セパレータ)
24a 表面
24b 裏面
24c 親水処理を施した領域
25 LLCプレート
26 ガス入口部
27 第1ガス流路
27a ガス入口マニフォ−ルド
27b 第1枝管
27c 第1枝管の上流部
28 貫通孔(連通部)
29 第2ガス流路
29a ガス出口マニフォールド
29b 第2枝管
29c 第2枝管の下流部
30 ガス出口部
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、特にセル内で水収支を成立させる燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムは、燃料が有する化学エネルギを直接電気エネルギに変換する装置であり、電解質膜を挟んで設けられた一対の電極のうち陰極に水素リッチのガスを供給するとともに、他方の陽極に酸素を含有する酸化剤ガスを供給し、これら一対の電極の電解質膜側の表面で生じる下記の電気化学反応を利用して電極から電気エネルギを取り出すものである。
【0003】
陰極反応:H2→2H++2e− (1)
陽極反応:2H++2e−+(1/2)O2→H2O (2)
陰極に水素リッチのガスを供給する方法は、水素貯蔵装置から直接供給する方法、水素を含有する燃料を改質して、いわゆる改質ガスを供給する方法が知られている。水素貯蔵装置としては、高圧ガスタンク、液化水素タンク、水素吸蔵合金タンク等がある。水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリン等が考えられる。陽極に供給する酸化剤ガスとしては、一般に空気が利用されている。
【0004】
燃料電池において電解質膜の性能を引き出し、発電効率を向上させるためには、電解質膜の水分状態を最適に保つ必要がある。
【0005】
しかし、ガス流路内で過剰に水が存在する領域がある場合には、液相の水が発生し、フラッディング(水づまり)が生じ、その結果、ガスの供給が妨げられ、セルの発電性能が低下する。そこで、燃料電池内の温度分布を制御し、フラッディングを防止する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。この従来技術では、ガスの流れとクーラントの流れをコフローとして、ガスの入口から出口に向かって、温度を上昇させて、発生した水を水蒸気としてガスに取り込んで、フラッディングを防止している。
【0006】
また、フラッディングを防止するためガス流路の入口と出口を隣接させて出口付近の過剰な水分を入口に移動させる技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
さらに他のフラッディング防止法として、サーペインタイン流路によって、流路内に折り返し部を設けて、ガス流路を隣接させる技術がある(例えば、特許文献3参照。)。この従来技術では、ガス流路を2回折り返して、出口付近の流路を隣合う流路に隣接させて、出口付近の過剰な水分を他の流路に流すことでフラッディングを防止する。
【0008】
【特許文献1】
特表平9−511356号公報
【特許文献2】
特開平10−32011号公報
【特許文献3】
特開2001−126746号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガスの温度が昇温されているため、燃料電池から排出されるガス温度が高温化し、このため、燃料電池から外部に排出される水量が増加し、燃料電池内の水収支が成立しない。従って、燃料電池下流の水回収装置が必要となり、システムが複雑化するという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の技術では、ガス流路の入口側と出口側との水の移動は、膜・電極接合体を介してのみ行なわれるため、入口側に十分な量の水が移動できないという問題があった。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術では、出口部と入口部を隣接されることができないため、余剰な水分を効率よく入口部に受け渡すことができず、セル内の水分状態を均一にできないという問題があった。
【0012】
以上の問題に鑑みて、本発明の目的は、セル内で水分量コントロールを行い水分量の不均一性を解消し、フラッディングの発生や電解質膜が乾燥するドライアウトの防止を図ると共に、燃料電池での水収支を成立させ、外部設置の水回収装置を不要としたシンプルな燃料電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料電池において、セパレータが、水透過性の多孔質材で構成されるとともに、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とを備え、前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部と前記ガス出口近傍の枝管下流部とに渡って、前記枝管下流部に凝縮した水の枝管上流部への移動を促進する処理を施した。
【0014】
また、燃料電池において、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、膜・電極接合体に開口するとともに前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とセパレータに設け、前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部とガス出口近傍のガス出口の枝管下流部を水透過性の材料で構成した。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、セパレータを水透過性の多孔質材で構成し、セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部と前記ガス出口近傍の枝管下流部とに渡って、前記枝管下流部に凝縮した水の枝管上流部への移動を促進する処理を施したので、フラッディングが生じやすい枝管下流部からドライアウトが生じやすい枝管上流部へ凝縮水の移動量を増加できる。したがって、セル内の水分分布を均一にすることができ、フラッディング及び電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0016】
また、セパレータを非水透過性材で構成した場合でも、枝管の上流部と下流部を水透過性材で構成することにより、フラッディングが生じやすい枝管の下流部からドライアウトが生じやすい枝管上流部へ凝縮水を移動できる。したがって、セル内の水分分布を均一にすることができ、フラッディング及び電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に示す本発明の燃料電池システムの概略図を用いて、以下、説明する。
【0018】
燃料電池1には、図示しない燃料供給手段と空気供給手段から燃料ガスと空気が供給される。燃料電池1に空気を供給する流路途中には、供給される空気の温度を検出するためのセンサ2と湿度を検出するための湿度センサ3が設置される。
【0019】
一方、燃料電池1を所定の温度範囲に制御するための冷却系が設けられる。この冷却系は冷媒としてのロングライフクーラント(以下、LLCという。)を貯留するタンク4と、LLCタンク4に貯留されるLLCを燃料電池1に循環させる循環流路5と、燃料電池の熱を奪い昇温したLLCと熱交換してLLCの熱を放出するためのラジエータ6とから構成される。燃料電池1から排出されたLLCの温度が低い場合には、ラジエータ6を通さずにLLCがLLCタンク4に戻るようにバイパス流路7が設置される。また、循環流路5とバイパス流路7との分岐点に三方切換弁8を設置することでLLCの供給先を制御する。なお、LLCとしては、例えば、エチレングライコールと水の混合液がある。
【0020】
さらに燃料電池1の流入するLLCの温度を検出するための温度センサ9が循環流路5に設置されるとともに、燃料電池1へのLLCの流量を制御する制御弁10及びLLCを燃料電池1に供給するためのポンプ11が循環流路5に設置される。
【0021】
この燃料電池システムを統合制御するコントローラ12が設置され、このコントローラ12には燃料電池1の負荷信号、温度センサ2、湿度センサ3によって検出される空気の温度と湿度、温度センサ9によって検出される燃料電池に流入するLLCの温度および図示しないセンサによって検出される外気温度が入力される。
【0022】
図2に示すようにコントローラ12は、前述の入力値から燃料電池1に流入するLLCの目標温度を算出する目標LLC入口温度算出手段12aと、ガス流路の温度勾配を算出するガス流路温度勾配算出手段12bと、算出された目標LLC温度とガス流路の温度勾配に基づいて制御弁10を用いてLLCの流量を制御するLLC流量制御手段12cと、同じく算出された目標LLC温度とガス流路の温度勾配に基づいてラジエータ6によるLLCの放熱量を制御するラジエータ放熱量制御手段12dとから構成され、コントローラ12は、適正な運転状態となるように三方切換弁8、制御弁10、ポンプ11を制御する。
【0023】
次に図3に示す燃料電池1のセル構成について説明する。単セルは、高分子電解質膜と、この電解質膜を挟持する触媒電極層からなる、いわゆる膜・電極接合体(以下、MEAという。)21と、MEA21を挟持するガス拡散層22と、MEA21に燃料ガスを供給するためのガス流路をガス拡散層22に面して形成したアノードバイポーラプレート(以下、バイポーラプレートのことをBPPという。)23、アノードBPP23に対してMEA21を挟んで反対側に位置し、MEA21に空気等の酸化剤ガスを供給するカソードBPP24と、セルを冷却するLLCを流通させるための流路を備えたLLCプレート25とから構成される。このように構成される単セルを積層状に構成して燃料電池1が構成される。
【0024】
それぞれのプレートを構成する材質について説明すると、カソードBPP24は水透過性材料、例えば多孔質材料で構成され、アノードBPP23とLLCプレート25は非水透過性材料で構成される。なお、以下の実施形態においては、カソードBPP24を用いて説明するが、アノードBPP23のみを水透過性としてもよいし、アノードBPP23、カソード24双方を水透過性材料で構成してもよい。なお、水透過性を備えたBPPに隣接してLLCプレート25を設置することが後述する水収支の点から望ましい。
【0025】
図4から図6に、本発明の特徴であるカソードBPP24の詳細構成を示す。図4は、カソードBPP24のガス拡散層22に面する側の面(以下、反応面という。)24aの構成を示すもので、図5は、カソードBPP24の断面構成を、図6はカソードBPP24のLLCプレート25に面する側の面(以下、裏面という。)24bの構成を示す図である。
【0026】
図4に示すようにガス拡散層22に面する側の反応面24aには、ガス入口部26から供給されるガスが流通する第1ガス流路27を櫛状に形成し、反応面24aに形成されたガス入口部26から供給されたガスはまず、ガス入口マニフォールド27aに送られた後、各第1枝管27bに供給される。第1枝管27bの最下流部にはLLCプレート25に面する側の裏面24bに貫通する貫通孔28が形成され、ガスは貫通孔28を通じて裏面24b側に流出する。
【0027】
図6に示すように、LLCプレート24に面する側の裏面24bにも櫛状に第2ガス流路29が形成され、第2ガス流路29はガス出口マニフォールド29aと第2枝管29bとから構成される。したがって、貫通孔28から流入するガスは、第2枝管29bの最上流部から第2枝管29bに流入し、各第2枝管29bからガス出口マニフォールド29aに送られて、ガス出口部30から排出される。なお、ガス出口マニフォールド29aはガス入口マニフォールド27aに背反する位置に設けられる。
【0028】
ここで、カソードBPP24のガス入口マニフォールド27aと連通する第1枝管27bの上流部27cと第2枝管29bの下流部を結ぶ領域24cには親水処理が施されており、反応面24aと裏面24b間で水の移動が促進されるよう処理されている。なお、親水処理はカソードBPP24の全面に処理を施すことも可能であるが、費用対効果を考慮して親水処理を行う面積を決定すればよい。
【0029】
図7は、上述のように構成されたカソードBPP24内での水の移動を説明するための図である。カソードBPP24は水透過性材料で構成されるため、BPP24内を水が移動でき、またBPP24内に浸透した水は表面張力により、BPP24内に留まり、BPP24内に水が充填されている限り、ガスは第1ガス流路27と第2ガス流路29のみを通過して流通され、カソードBPP24内をガスが透過することはない。前述のように親水処理を施した領域24cは、特に水の浸透が促進されて、他の親水処理を施していない部分より水の移動が大量に行われる。
【0030】
LLCプレート25に面する側の裏面24bを流通するガスは、LLCとの熱交換によってその温度は低下し、ガス拡散層22に面する側の反応面24aを流通するガスの温度より低くなる。よって、LLCプレート25に面する側の裏面24bを流通するガス中の飽和水蒸気圧を超える分の水蒸気は液化し、第2枝管29bにフラッディングを生じる恐れがある。しかしながら、本発明ではこの液化した水はカソードBPP24内を浸透して裏面24bから反応面24aに移動するため、フラッディングを生じることがない。
【0031】
ガス入口部26に供給されるガス、例えば空気が乾燥している場合には、第1枝管27bの上流部27c周辺が乾燥し、電解質膜のドライアウトが生じやすい。これは乾燥したガスがカソードBPP24の第1ガス流路27に流入してきた時に、乾燥したガスを加湿するためカソードBPP24内の水分が消費され、カソードBPP24が乾燥し、電解質膜に水が供給されないためである。
【0032】
しかしながら本発明においては、LLCプレート25に面する裏面24bに凝縮された水が、ガス拡散層22に面する反応面24a側の水の不足した部分に移動し、カソードBPP24の水分の分布を均一に保つことができる。特に親水処理を施した領域24cでは、水が促進して第2枝管29bの下流部29cから第1枝管27bの上流部27c周辺に移動する。これによりガスの加湿のために水分が不足した第1枝管27bの上流部27c周辺に水を補給することができ、乾燥したガスが供給される状態においても第1枝管27bの上流部27c周辺でガスを十分に加湿できるとともに、電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0033】
本実施形態においては、カソードBPP24を水透過性材料で構成し、カソードBPP24のガス拡散層22に面する反応面24aと、LLCプレート25に面して前述の反応面24aより低温の裏面24bに、それぞれ第1ガス流路27と第2ガス流路29を形成する。さらに第1ガス流路27と第2ガス流路29を連通孔28を介して連通させ、カソードBPP24のガスが流入する第1枝管27bの上流部27cと第2ガス流路の下流部29cを結ぶ領域24cに親水処理を施した。
【0034】
これにより、裏面24bに凝縮した水が裏面24bから反応面24a側、特に親水処理を施した第1枝管27bの上流部27cの周辺に集中的に移動する。したがって、凝縮した水が、裏面24bから反応面24a側に自由に移動でき、乾燥した領域に水が移動するため、システムを複雑にすることなく、また燃料電池の発電効率を低下させることなく、セルの水分分布を均一に維持することができる。また、水分分布を均一にできるため、局部的な乾燥状態、特に第1枝管27bの上流部27cの周辺の乾燥を回避し、結果として電解質膜のドライアウトを防止する。さらにカソードBPP24を水透過性材料で形成したので、ガス流路に凝縮した水はカソードBPP24中に浸透し、ガスが流通する第2枝管29bに液相の水が詰まる、フラッディングを防止できる。
【0035】
また、ガス入口部26に供給されたガスが、まずガス拡散層22に面した反応面24a側の第1ガス流路27を流通した後、LLCプレート25に面した裏面24b側の第2ガス流路29を流通する。このため、電気化学反応に用いられた後の、水分が過剰なガスから水分を凝縮して、この凝縮した水を親水処理を施した領域24cを通じて第1枝管27bの上流部27cに移動させ、この移動した水を用いてカソードBPP24に流入してきたガスを効率よく加湿することができる。
【0036】
さらに本実施形態においては、第1枝管27bの上流部27cと第2枝管29bの下流部29cとを隣接するように形成したので、裏面24b側で凝縮した水が反応面24a側に浸透するための移動距離を短くすることができ、カソードBPP24に流入してきたガスを効率よく加湿することができる。
【0037】
図8は、カソードBPP24の第2の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第1の実施形態において水の移動を促進するために施した親水処理に代えてカソードBPP24を構成する多孔質材の孔径を大きくして水の移動を促進する実施形態である。
【0038】
しかしながら、カソードBPP24を構成する多孔質材の孔径をすべて大型化すると、BPPの強度が低下するため好ましくない。そこで、本実施形態のように特に水の移動を促進したい領域、つまり前述の領域24cの多孔質材の孔径を大きくすることで、BPPの強度と水の移動の促進とを両立することができる。また、孔径を大きくすることで、単位面積当りの開口率が大きくなり、その結果単位時間当りの水の移動量が増加する。
【0039】
したがって、ガス入口部26に乾燥したガスが供給され、第1枝管27bの上流部27cが乾燥する状態においても、第1枝管27bの上流部27cに凝縮水を優先的に移動させ、第1枝管27bの上流部27cでガスを加湿するための水分を確保することができるとともに、カソードBPP24の水分分布を均一に維持することができる。これにより、ガス流路のフラッディングや電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0040】
図9から図13は、第3の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第1の実施形態において水の移動を促進するために施した親水処理をカソードBPP24全面に施すとともに、親水処理を第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性の度合が高くなるように親水処理する実施形態である。
【0041】
本実施例のように、各BPP面全面において親水処理を施し、特に第1枝管27bの上流部27cの周辺ほど水透過性が高くなるように構成することで、水はLLCプレートに面する裏面24bからガス拡散層に面する反応面24a側への移動が促進され、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高いため水の移動量が大きい。また第1枝管27bの上流部27c周辺では、水透過性が高いためガスの流れ方向に相反する方向への水の移動も行われ、さらに水の移動が促進される。
【0042】
したがって、本実施形態においては、カソードBPP24全面に親水処理を施し、第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高くなるようにしたため、乾燥したガスがカソードBPP24に供給される場合でも、乾燥したガスを加湿する水分量を確保することができ、電解質膜のドライアウトを防止することができる。また、裏面24b側から反応面24a側に水の移動が行なわれるため、裏面24bに設けられた第2ガス流路29のフラッディングを防止することができる。
【0043】
図14は、カソードBPP24の第4の実施形態の構成を説明する図である。この実施形態は、第3の実施形態で水の移動を促進するためにカソードBPP24全面に親水処理を施したのに対して、親水処理の代わりに多孔質材の孔径を場所に応じて変化させることで水の透過性の度合を変化させるようにした実施形態である。つまり、第3の実施形態と同様に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水が移動しやすいように多孔質材の孔径を大きく形成し、第1枝管27bの上流部27cから下流部に向けて孔径を小さく形成して水の移動のしやすさを制御するものである。
【0044】
本実施例のように、カソードBPP面24全面において多孔質材の孔径を変化させて水の透過性を制御し、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど孔径が大きくなるように構成したことで、裏面24bに凝縮した水は裏面24bから反応面24a側に移動し、特に第1枝管27bの上流部27c周辺ほど水透過性が高いため水の移動量が大きい。また第1枝管27bの上流部27c周辺では、水透過性が高いためガスの流れ方向に相反する方向への水の移動も行われ、さらに水の移動が促進される。
【0045】
したがって、本実施形態においては、カソードBPP24全面に多孔質材の孔径を変化させる処理を施し、第1枝管27bの上流部27c周辺ほど孔径が大きくなるような水を透過させる処理を行うため、乾燥したガスがカソードBPP24に供給される場合でも、ガスを加湿する水分量を確保することができるとともに、電解質膜のドライアウトを防止することができる。
【0046】
図15には、第5の実施形態として、LLCプレート25に形成されるLLC流路31形状の一例を示しており、MEA21、ガス拡散層22、アノードBPP23、カソードBPP24の構成は第1の実施形態と同様とする。
【0047】
このLLC流路31の形状は、サーペンタイン式の流路構成となっており、LLC入口部32から流入するLLCは、LLC入口マニフォールド33から分岐し、並設された第1LLC流路34、第2LLC流路35に導入される。第1LLC流路34、第2LLC流路35は折り返された後、LLC出口マニフォールド36に連通し、LLCはLLC出口部37から排出される。
【0048】
ここで、LLC入口マニフォールド33近傍の第1LLC流路34、第2LLC流路35がカソードBPP24の第2枝管29bの下流部29c近傍に構成される。このような構成とすることで、最も低い温度のLLCが第2枝管29bの下流部29cを流通するガスと熱交換され、第2枝管29bの下流部29c周辺の親水処理を施した領域24cの温度を他の領域より低くできる。
【0049】
図16を用いてカソードBPP24の第1ガス流路27でのガスの温度、相対湿度および液相の水分量分布を説明する。カソードBPP24に流入するガスの温度は、第1枝管27bの上流部27cから貫通孔28に向けて電気化学反応の反応熱により温度が上昇し、この過程において生成水が発生しても相対湿度が100%になって飽和することはない。したがって、BPP24のガス拡散層22に面する反応面24aの第1ガス流路27中に液相の水が存在してフラッディングが生じることはない。
【0050】
一方、LLCプレート25に面する裏面24bでは、LLCとガスとの熱交換が生じて貫通孔28から第2枝管29bの下流部29cに向けてガスの温度が低下する。このため相対湿度が常に100%を越え、過飽和分の水は、裏面24bに形成された第2枝管29bで凝縮する。そして、この凝縮水は、水透過性のBPP24内を透過してガス拡散層22に面する側の反応面24a側に移動し、カソードBPP24に流入したガスの加湿に用いられる。
【0051】
図17は、第5の実施形態での水の移動を説明するための図である。前述のようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cでは、他の部分より低温となるため、流通するガス中の水が凝縮し易い。しかし、この領域24cでは親水処理を行っているため、水の透過性が大きく、反応面24a側への水の移動量を大きくできる。これにより裏面24bに凝縮した水は、反応面24a側に移動し、カソードBPP24に流入したガスの加湿に用いられ、この水によりガスを十分に加湿するとともに、フラッディングを防止できる。
【0052】
本実施形態では、LLC流路31に流入してきた直後の低温のLLCが親水処理を施した領域24c、つまり第2枝管29bの下流部29c周辺に供給されるようにLLC流路31を形成した。したがって、第2枝管29bの下流部29c周辺を他の領域より低温とし、ガス中の水分の凝縮を促進し、凝縮した水を第1枝管27bの上流部27c周辺に移動する。ガスが乾燥した状態で燃料電池1のカソードBPP24に供給されるような場合であっても、凝縮した水を用いてガスを十分に加湿し、また電解質膜21のドライアウトを防止できる。
【0053】
図18、図19には、第6の実施形態としてのMEA21の構成を説明するためのものである。この実施形態は、MEA21の構成を除き、第1の実施形態と同様の構成を有するものである。
【0054】
本実施形態のMEA21は、カソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する触媒電極層の一部を触媒担持しない未反応部21dとしたものである。図19を用いて説明すると、固体高分子電解質膜21aを挟持する触媒電極層21b、21cは、通常、カーボンのサブストレートにPt(白金)系の触媒を担持して構成される。本実施形態の触媒電極層21b、21cでは、その一部に触媒を担持しない未反応部21dを形成する。この未反応部21dは、前述のようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する部分に形成される。
【0055】
このようにカソードBPP24の親水処理を施した領域24cに対面する触媒電極層の一部を触媒を担持しない未反応部21dとすることにより、第一枝管27bの上流部27cにおいて、MEA21における化学反応を抑制してガス入口マニフォールド27aから流入したガス中の水分の持ち出しを制限し、一方、第二枝管29bの下流部29cから水移動が促進される領域24cを移動してきた水によりガス入口マニフォールド27aからの流入ガスが十分に加湿され、電解質膜21aのドライアウトを防止することができる。
【0056】
図20から図23に示す第7の実施形態は、これまでカソードBPP24は水透過性の多孔質のBPPから構成されるとして説明してきたが、本実施形態のカソードBPP31は、非水透過性の材料で構成されたものを前提としている。このBPPの構成を除き、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態のBPPを図20と図21を用いて説明すると、カソードBPP31のガス拡散層22に面する側の反応面31aにガスが流通する第1ガス流路32が形成される。第1ガス流路32はガス入口部33とガス入口マニフォールド34aと第1枝管34bとから構成される。
【0058】
第1枝管34bは、反応面31a上にU字状に形成され、ガス入口マニフォールド34aから第1枝管34bの上流部34cに流入したガスは、第1枝管34b内を流通し、第1枝管34bの上流部34cに隣接した下流部34eから貫通孔35を通じて裏面31b側に流出する。貫通孔35から裏面31bに流出したガスは、裏面31bに形成されたガス出口マニフォールド36aに流入し、ガス出口部37から排出される。
【0059】
ここで、カソードBPP31は、第1枝管34bの上流部34cの周辺の領域34dのみ水透過性の多孔質材で形成される。したがって、裏面31bに凝縮した水が反応面31a側に移動し、ガスを加湿するために用いることができる。
【0060】
図22は、本実施形態における水の移動を説明するための図21のB−Bでの断面図である。前述のように本実施形態では、LLCプレート25に面する裏面31b側から凝縮水が多孔質材を通じてガス拡散層22に面する反応面31a側に移動するが、加えて、第1ガス流路32の第1枝管34bがU字状に形成され、ここで、ガス入口マニフォールド34aからガスが離れる側の流路を往路34xとして、ガスがガス入口マニフォールド側に戻る側の流路を復路34yとすると、復路34yで生成された液相の水が第一枝管34bの下流部34e、多孔質材、上流部34cを通じて隣接する往路34xに移動し、ガスを加湿する。また生成された水は、ガス拡散層22を通じても移動し、水を加湿する。
【0061】
したがって、本実施形態では、カソードBPP31を非水透過性材料で構成した場合でも、第1枝管34bの上流部34cの周辺のみを水透過性の多孔質材で形成することにより、ガスを第1枝管34bの上流部34cで加湿することができ、乾燥したガスがカソードBPP31に供給される状態においても十分にガスを加湿し、電解質膜のドライアウトを防止できる。また、多孔質材を用いることで、ガスが流通する流路中に凝縮した液相の水を多孔質材中に浸透させ、ガス流路に液相の水が存在することを抑制し、フラッディングを防止できる。
【0062】
なお、本実施形態に第5の実施形態で説明したLLCを用いた温度制御を組み合わせて多孔質材を用いた領域を他の領域より低温として水の移動を促進させてもよい。
【0063】
さらには図23に示すように、本実施形態に第6の実施形態で説明した触媒電極層の一部を未反応部とした構成を組み合わせることも可能であり(第8の実施形態)、この構成により、ガス入口部におけるガスの加湿量がより増加し、電解質膜のドライアウトをより確実に防止できる。
【0064】
なお、請求項の構成と実施形態の構成の対応は以下である。請求項のガス入口は、請求項中のガス入口部26とガス入口マニフォールド27aに相当し、ガス出口はガス出口部30とガス出口マニフォールド29aに相当する。請求項の冷却部材はLLCプレート25である。
【0065】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムの構成図である。
【図2】コントローラの構成を説明する図である。
【図3】セルの構成を説明する図である。
【図4】カソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図5】カソードBPPのガス流路を説明する断面図である。
【図6】カソードBPPのガス流路を説明する図である(LLCプレートに面する側)。
【図7】カソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図8】第2の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図9】第3の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図10】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図11】同じくカソードBPPのガス流路を説明する断面図である。
【図12】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(LLCプレートに面する側)。
【図13】同じくカソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図14】第4の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図15】第5の実施形態のLLCプレートのLLC流路構成を説明する図である。
【図16】同じくガス流路中の位置に対する温度、相対湿度、水分量の関係を説明する図である。
【図17】同じくカソードBPP内の水の移動を説明する図である。
【図18】第6の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図19】同じくMEAの構成を説明する図である。
【図20】第7の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【図21】同じくカソードBPPのガス流路を説明する図である(ガス拡散層に面する側)。
【図22】同じくカソードBPPのガス流路を説明する断面図である(図21の断面B−B)。
【図23】第8の実施形態のセルの構成を説明する図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 温度センサ
3 湿度センサ
4 LLCタンク
5 循環流路
6 ラジエータ
7 バイパス流路
8 三方切換弁
9 温度センサ
10 制御弁
11 ポンプ
12 コントローラ
21 MEA
22 ガス拡散層
23 アノードBPP(セパレータ)
24 カソードBPP(セパレータ)
24a 表面
24b 裏面
24c 親水処理を施した領域
25 LLCプレート
26 ガス入口部
27 第1ガス流路
27a ガス入口マニフォ−ルド
27b 第1枝管
27c 第1枝管の上流部
28 貫通孔(連通部)
29 第2ガス流路
29a ガス出口マニフォールド
29b 第2枝管
29c 第2枝管の下流部
30 ガス出口部
Claims (12)
- 固体高分子型電解質膜と、この電解質膜を挟持する触媒電極層とからなる膜・電極接合体と、
この膜・電極接合体を挟持するセパレータと、
前記セパレータの少なくとも一方に接して設けられ、冷媒を流通させる冷却部材と、
からなる単セルを積層して構成し、前記セパレータに反応ガスを流通させて発電する燃料電池において、
前記冷却部材に接するセパレータは、水透過性の多孔質材で構成されるとともに、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とを設け、
前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部と前記ガス出口近傍の枝管下流部とに渡って、前記枝管下流部に凝縮した水の枝管上流部への移動を促進する処理を施したことを特徴とする燃料電池。 - 前記枝管は、前記膜・電極接合体に開口する第1枝管と、前記冷却部材に開口して第1枝管からの反応ガスが流通する第2枝管とからなり、
前記セパレータに、前記第1枝管の上流部と第2枝管の下流部とを隣接して設け、前記第1枝管上流部と前記第2枝管下流部とに渡って、前記第2枝管下流部に凝縮した水の第1枝管上流部への移動を促進する処理を施したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。 - 前記水の移動を促進する処理は、親水性処理であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 前記水の移動を促進する処理は、前記セパレータを形成する多項質材の孔径を大きくする処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 前記水の移動を促進する処理を施す部位は、セパレータの他の部位より温度が低いことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 前記水の移動を促進する処理は、前記ガス入口に近いほど水の移動がし易いように処理を施すことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 前記水の移動を促進する処理は、前記ガス入口に近いほど親水性を強めるよう処理を施すことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
- 前記水の移動を促進する処理は、前記ガス入口に近いほど多孔質体の孔径を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
- 前記膜・電極接合体の触媒電極層は、前記セパレータの水の移動を促進する処理を施す部位に面する部位に触媒を担持しないことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の燃料電池。
- 固体高分子型電解質膜と、この電解質膜を挟持する触媒電極層とからなる膜・電極接合体と、
この膜・電極接合体を挟持するセパレータと、
前記セパレータの少なくとも一方に接して設けられ、冷媒を流通させる冷却部材と、
からなる単セルを積層して構成し、前記セパレータに反応ガスを流通させて発電する燃料電池において、
前記冷却部材に接するセパレータは、膜・電極接合体に開口するガス入口と、前記冷却部材に開口するガス出口と、膜・電極接合体に開口するとともに前記ガス入口とガス出口とを連通し、反応ガスが流通する枝管とを設け、
前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部とガス出口近傍のガス出口の枝管下流部を水透過性の材料で構成したことを特徴とする燃料電池。 - 前記セパレータの前記ガス入口近傍の枝管上流部とガス出口近傍のガス出口の枝管下流部は、セパレータの他の部位より温度が低いことを特徴とする請求項10に記載の燃料電池。
- 前記膜・電極接合体の触媒電極層は、前記水透過性材料に面する部位に触媒を担持しないことを特徴とする請求項10または11に記載の燃料電池。
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