JP2004253147A - ハイブリッド材料の製造方法、燃料電池用電解質膜、電解質膜−電極接合体および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、多孔質膜の細孔に該モノマ−を充填した後、モノマ−を加熱により重合する工程を有するハイブリッド材料の製造方法、特にポリイミド多孔質膜の細孔にプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−を充填した後、モノマ−を加熱により重合する工程後に、再度モノマ−を充填し再び過熱により重合を行う工程を少なくとも1回以上繰り返すハイブリッド材料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法、燃料電池用電解質膜、電解質膜−電極接合体および燃料電池に関し、特に再現性よくかつむらが少なく機能性物質を均一に含有することが可能である多孔質膜を基材としたハイブリッド材料の製造方法、燃料電池用電解質膜、電解質膜−電極接合体および燃料電池に関する。
特に、本発明は電解質膜の製造方法に関し、詳細には固体高分子型燃料電池、更に詳細には直接型メタノ−ル燃料電池用電解質膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多孔質膜内細孔に異なる物質を充填保持することによって新たな機能を発現する試みがなされている。例えば、ベ−スとなる多孔質膜として、ポリマ−系多孔質膜を用いたものが知られている。
【0003】
これらの多孔質膜としては種々のものが知られており、それらの多くは耐熱性、化学的安定性、力学物性、寸法安定性のいずれかが劣り、材料設計の自由度が少ないことが知られている。
【0004】
一方、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池において、長期使用の際に問題となる耐クリ−プ性や電解質膜の水やメタノ−ル等のアルコ−ル類に対する膨潤は大きな課題であり、特に直接メタノ−ル型燃料電池の場合は、メタノ−ルの透過は起電カの低下をもたらし実用上大きな障害となっている。
【0005】
例えば、直接メタノ−ル型燃料電池として、電解質として固体高分子電解質であるデュポン社のナフィオン(登録商標)膜、ダウケミカル社のダウ膜などを用いた場合には、メタノ−ルが膜を透過してしまうことによる起電力の低下という問題が指摘されている。また、燃料電池運転時の雰囲気である湿潤状態で電解質が膨潤しクリ−プが大きくなり寸法安定性が損なわれるという問題も指摘されている。さらに、これらの電解質膜は非常に高価であるという経済上の問題も有している。
【0006】
このため、高分子多孔質膜として液晶ポリマ−または溶媒可溶性の熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマ−製の多孔質膜を使用し、多孔性基材にプロトン伝導性を有するポリマ−を充填して好ましくは熱プレスして製造した電解質膜が燃料電池用電解質膜として好適であることが提案された(特許文献1、特許文献2)。しかしながら前記電解質膜は、使用するポリマ−がメタノ−ルにより膨潤しやすく厚みおよび面積の変化率が大きくなる。また、電解質膜は、熱プレス法により製造するため平滑な平面が得られず、厚みむらが大きく厚み制御も不可能であり、均一で制御された厚みを有するものが求められる燃料電池用電解質膜としては好ましくない。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第6248469号明細書
【特許文献2】
特表2001−514431号公報(第1−3頁、21−24頁)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池用電解質膜などのハイブリッド材料を製造する場合、特に耐熱性高分子材料からなる多孔質膜を基材として用いたハイブリッド材料を再現性よくかつむらが少なく機能性物質を均一に含有することが可能である製造方法が求められている。
また、電解質、特に燃料電池用電解質、その中でも特に直接型メタノ−ル燃料電池用電解質膜に求められる特性を有する、優れた電解質膜のより簡便な製造方法および燃料電池用電解質膜が求められている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決することにある。
具体的には、本発明の目的は、機能性物質を均一に含有するハイブリッド材料の製造方法を提供することにある。即ち、例えば電解質膜などのハイブリッド材料間及び材料内でのむらが少なく且つ再現性よい製造方法および優れた燃料電池用電解質膜を提供することにある。
【0010】
より具体的には、本発明の目的は、上記目的に加えて、又は上記目的の他に、ポリイミド多孔質膜に、容易且つ均一に、高い充填率で、むらがないか又はむらが非常に抑えられた状態で、機能性物質を充填させるハイブリッド材料、例えば電解質膜、特に燃料電池用電解質膜の製造方法および優れた特性を有する燃料電池用電解質膜、電解質膜−電極接合体および燃料電池を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、上記目的に加えて、又は上記目的の他に、ポリイミド多孔質膜とさまざまな機能性物質とのハイブリッド化がもたらされるハイブリッド材料の製造方法を提供することにある。
特に燃料電池用電解質膜に関しては、本発明の目的は、寸法又は形状の安定化、向上したプロトン伝導性をもたらし、工業的に有益な燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、又は上記目的の他に、多孔質膜の細孔に簡便な操作で機能性物質であるプロトン伝導性物質を充填する電解質膜の製造方法、特に良好なプロトン伝導性を有し且つメタノ−ル透過(クロスオ−バ−)を抑制した直接型メタノ−ル燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、優れた特性を有する燃料電池用電解質膜を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、優れた特性を有する電解質膜−電極接合体および燃料電池を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、鋭意研究した結果、以下の発明を見出した。
<1> ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、多孔質膜の細孔に該モノマ−を充填した後、モノマ−を加熱により重合する工程を有するハイブリッド材料の製造方法。
【0014】
<2> ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、多孔質膜の細孔に該モノマ−を充填した後、モノマ−を加熱により重合する工程後に、再度モノマ−を充填し再び加熱により重合を行う工程を少なくとも1回以上繰り返すことにより、充填材料の充填率を制御することを特徴とするハイブリッド材料の製造方法。
【0015】
<3> ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、加熱により重合する工程と、以下の(X−1)工程〜(X−4)工程のうちのいずれか1工程、又は任意の2工程の組合せ、又は任意の3工程の組合せ、又はすべての工程とを組合せて、前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填するか、及び/又は前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填した後、以下の(Y−1)工程及び/又は(Y−2)工程を用いるハイブリッド材料の製造方法。
(X−1)多孔質膜を親水化し、その後該多孔質膜をモノマ−又はその溶液に浸漬する工程;
(X−2)モノマ−又はその溶液に界面活性物質を添加し浸漬液を得、該浸漬液に多孔質膜を浸漬する工程;
(X−3)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で減圧操作を行う工程;及び
(X−4)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で超音波を照射する工程;並びに
(Y−1)多孔質膜の両表面に機能性物質を吸収する多孔質基材を接触させる工程;及び
(Y−2)多孔質膜の両表面に過剰に付着する機能性物質を平滑材料で除去する工程。
【0016】
<4> ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、該モノマ−又はその溶液に界面活性物質を添加して浸漬液を調製する工程;及び、モノマ−を加熱により重合する工程;を有するハイブリッド材料の製造方法。
【0017】
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、ポリイミド多孔質膜がメタノ−ル及び水に対して実質的に膨潤しない材料であるのがよい。
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、上記(X−2)の界面活性物質添加工程において、さらにラジカル重合開始剤を含有させるのがよい。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかにおいて、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−であり、加熱による重合工程により架橋構造を有するのがよい。
【0018】
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、細孔に充填された機能性物質がプロトン伝導性ポリマ−でり、該プロトン伝導性ポリマ−が多孔質膜の界面と化学的に結合しているのがよい。
<9> 上記<1>〜<8>のいずれかの方法により得られるハイブリッド材料は、その細孔にプロトン伝導性ポリマ−が充填された、電解質膜、特に固体高分子燃料電池用電解質膜、その中でも特に直接型メタノ−ル型燃料電池用電解質膜であるのがよい。
<10>上記<1>〜<9>のいずれかにおいて、ポリイミドが、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々含有するポリイミドであるのがよい。
<11>25℃で湿度100%の条件でプロトン伝導度が0.001S/cm以上10.0S/cm以下、好適には0.01S/cm以上10.0S/cm以下であり、25℃でのメタノ−ルの透過係数の逆数が0.01m2h/kgμm以上10.0m2h/kgμm以下、好適には0.01m2h/kgμm以上1.0m2h/kgμm以下であり、さらに25℃における乾燥状態と湿潤状態での面積変化率が1%以下、すなわち1〜0%であることを特徴とする燃料電池用電解質膜。
<12>上記<11>において、ポリイミドが、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々含有するポリイミド、特に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびオキシジアニリンを主成分として含有する、すなわち各々50モル%以上含有するポリイミドであるのがよい。
<13>上記<11>あるいは<12>に記載の燃料電池用電解質膜を用いた電解質膜−電極接合体。
<14>上記<13>に記載の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な態様を以下に示す。
1)加熱により重合する工程後に、再度モノマ−を充填し再び加熱により重合を行う工程を少なくとも1回以上繰り返す前記の方法。
2)加熱により重合する工程と、以下の(X−1)工程〜(X−4)工程のうちのいずれか1工程、又は任意の2工程の組合せ、又は任意の3工程の組合せ、又はすべての工程とを組合せて、前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填するか、及び/又は前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填した後、以下の(Y−1)工程及び/又は(Y−2)工程を用いる請求項1記載の方法:
(X−1)多孔質膜を親水化し、その後該多孔質膜をモノマ−又はその溶液に浸漬する工程;
(X−2)モノマ−又はその溶液に界面活性物質を添加し浸漬液を得、該浸漬液に多孔質膜を浸漬する工程;
(X−3)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で減圧操作を行う工程;及び
(X−4)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で超音波を照射する工程;並びに
(Y−1)多孔質膜の両表面に機能性物質を吸収する多孔質基材を接触させる工程;及び
(Y−2)多孔質膜の両表面に過剰に付着する機能性物質を平滑材料で除去する工程。
【0020】
前記の方法において、(X−1)〜(X−4)からなるX工程群、並びに(Y−1)及び(Y−2)からなるY工程群のうち、いずれか1つの工程を有する。また、本発明の方法は、任意の2以上の工程を有してもよい。
任意の2以上の工程は、X工程群のみから選択しても、Y工程群のみから選択しても、X工程群とY工程群とから選択してもよい。
【0021】
X工程群から2以上の工程を選択する場合、その工程順は、数の小さい方から行うのがよい。即ち、(X−1)と(X−2)工程を行う場合、まず(X−1)工程を行い、その後(X−2)工程を行うのがよい。なお、(X−3)工程と(X−4)工程は、同時に行うこともできる。
【0022】
(Y−1)及び(Y−2)の双方の工程を行う場合、その順序はいずれが先であってもよい。なお、(Y−1)の多孔質基材がY−2の平滑材料である場合、(Y−1)及び(Y−2)の双方の工程を同時に行うことができる。
【0023】
X工程群及びY工程群のうち、いずれか1つの工程を有する本発明の方法により、得られるハイブリッド材料が、機能性物質の充填率向上および/又は機能性向上、ハイブリッド材料の形状保持性向上(例えば、カ−ルの発生が少ない)という効果を奏することができる。
【0024】
本発明における細孔に充填する機能性物質がプロトン伝導性ポリマ−を構成するモノマ−は、該モノマ−を細孔内に充填した後に加熱重合する工程を有する。重合工程は、機能性物質であるモノマ−の充填後であり、上述のY工程群の前であっても後であってもよい。好ましくは重合工程は、Y工程群の前であるのがよい。また、重合の際に用いるため、ラジカル重合開始剤を、機能性物質であるモノマ−と共に、機能性物質として、又は機能性物質に加えて、該ラジカル重合開始剤を細孔内に充填する工程を有するのがよい。該ラジカル重合開始剤の充填工程は、機能性物質の充填工程と同時に行うのがよい。
【0025】
多孔質膜、例えば高分子多孔質膜を親水化させる工程(X−1)は、好適には高分子多孔質膜を酸素雰囲気下に真空プラズマ放電処理することによって達成される。プラズマ放電処理において、アルゴンガス雰囲気下にプラズマ放電処理しても高分子多孔質膜の細孔内に活性点を生成するが、短時間(数秒間)内に消失し親水化は達成されないが、前記の方法による親水化効果は長時間経過後(例えば1〜2週間後)でも効果は維持される。
前記の酸素雰囲気下における真空プラズマ放電処理は、対象となる多孔質膜の厚み、化学構造、多孔質構造によって最適条件を選択することができる、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とオキシジアニリン(ODA)の反応から合成される厚みが30μmのポリイミドの多孔質膜の場含には、好適には空気存在下、0.01〜0.5Pa、0.05〜10W/cm2で60〜6000秒間の条件で行うことが好ましい。
なお、親水化工程(X−1)を他のX工程群と組み合わせて行う場合、親水化工程(X−1)を先に行うのが好ましい。
【0026】
本発明に用いるポリイミド多孔質膜は、ポリイミド製多孔質膜を挙げることができるが、ガラス、アルミナ又はシリカなどの無機材料や他の有機材料との複合材料として用いてもよい。複合材料として用いる場合、その形態は2層以上が積層してなるものであってもよい。
本発明に用いる多孔質膜は、溶媒不溶性、柔軟性及び/又は可撓性、並びに薄膜化の容易性などにおいて、ポリイミド多孔質膜であるのが適当である。特に、ポリイミドが、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々含有するポリイミドであること、その中で特にテトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々主成分とするポリイミドであることが、多孔質膜、得られるハイブリッド材料および電解質膜用の寸法安定性、剛性、靭性、化学的安定性の観点から、好ましい。
また、本発明によって得られる電解質膜が直接型メタノ−ル燃料電池用電解質膜に用いる意図においては、多孔質膜は、メタノ−ル及び水に対して実質的に膨潤しない材料であるのがよい。
【0027】
ポリイミド製多孔質膜は、テトラカルボン酸成分、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分、例えばオキシジアニリン、ジアミノジフエニルメタン、パラフエニレンジアミンなどの芳香族ジアミンとをN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で重合して得られたポリアミック酸溶液から、多孔質化法、例えばポリアミック酸溶液を平坦な基板上に流延して多孔質ポリオレフィン製の溶媒置換速度調整材と接触させた後に水などの凝固液中に浸漬する方法によって、ポリイミド前駆体多孔質フィルムとした後、ポリイミド前駆体多孔質フィルムの両端を固定して大気中で280〜500℃で5〜60分間加熱することによって得ることができる。
【0028】
多孔質膜としては、膜(フィルム)の両面間でガスおよび液体(例えばアルコ−ルなど)が透過できる通路を有するもので、空孔率が好適には5〜95%、好ましくは10〜90%、より好ましくは10%〜80%、最も好ましくは20〜80%であるのがよい。
また、平均細孔径が0.001〜100μm、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.01μm〜1μm、特に0.05〜1μmの範囲内にあるのがよい。
さらに、膜の厚さが1〜300μm(例えば5〜300μm)、特に1〜100μm(例えば5〜100μm)、さらに5〜50μmであるのがよい。多孔膜の空孔率、平均細孔径、及び膜厚は、得られる膜の強度、応用する際の特性、例えば電解質膜として用いる際の特性などの点から、設計するのがよい。
【0029】
本発明において機能性物質としては、プロトン伝導性を有する高分子物質を与えるモノマ−であるのが好ましい。
これらの例として、
(1)p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドのスルホン酸又はホスホン酸誘導体、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)−アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルホスホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のアニオン性不飽和モノマ−やその塩、など、構造中にビニル基;スルホン酸及びホスホン酸などの強酸基;カルボキシル基などの弱酸基;を有するモノマ−及びそのエステルなどの誘導体並びにそれらのモノマ−;
(2)アリルアミン、エチレンイミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基含有不飽和モノマ−及びそれらの4級化物;など、構造中にビニル基;アミンのような強塩基;又は弱塩基;を有するモノマ−及びそのエステルなどの誘導体並びにそれらのポリマ−;
(3)(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、メトキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トなどのノニオン性不飽和モノマ−及びその誘導体並びにそれらのポリマ−;
を挙げることができる。
このうち(1)はプロトン伝導性を有するものである。(2)及び(3)は、(1)の補助材料として用いるか、ポリマ−化した後に強酸をド−プすることでプロトン伝導性を付与することができる。
【0030】
これらのモノマ−をl種のみ用いてホモポリマ−を形成してもよく、2種以上用いてコポリマ−を形成してもよい。機能性物質としてナトリウム塩などの塩のタイプを用いた場合、ポリマ−とした後に、それらの塩をプロトン型などにするのがよい。
また、コポリマ−の場合、前述のポリマ−又はモノマ−と他種のモノマ−とを共重合してもよい。共重合する他種モノマ−として、メチル(メタ)アクリレ−ト、メチレン−ビスアクリルアミドなどを挙げることができる。
なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」を、「(メタ)アリル」は「アリル及び/又はメタリル」を、「(メタ)アクリレ−ト」は「アクリレ−ト及び/又はメタクリレ−ト」を示す。
【0031】
これらの不飽和モノマ−は、1種又は2種以上を選択して用いることできるが、重合後のポリマ−のプロトン伝導性を考えると、スルホン酸基を含有する不飽和モノマ−を必須成分とすることが好ましい。スルホン酸基を含有する不飽和モノマ−の中でも、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を用いると重合性が高く、他のモノマ−を使用した場合に比べて高い酸価で残存モノマ−の少ないポリマ−を得ることができ、得られる膜がプロトン伝導性の優れたものとなるため特に好ましい。
【0032】
また、本発明において上記プロトン伝導性ポリマ−は、架橋構造を有してメタノ−ルおよび水に対して実質的に溶解しないポリマ−であることが望ましい。ポリマ−に架橋構造を導入する方法としては、加熱により重合する方法を用いることが適当である。具体的には、40〜240℃で0.1〜30時間程度加熱して重合反応を行なう方法が挙げられる。重合に際して、ポリマ−中の官能基と反応する基を分子内に2個以上有する架橋剤(反応開始剤)を用いてもよい。
【0033】
該架橋剤としては、例えばN,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンジアリルエ−テル、ペンタエリスリト−ルトリアリルエ−テル、ジビニルベンゼン、ビスフェノ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレ−ト、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸塩等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で使用することも、必要に応じて2種類以上を併用することも可能である。
上記共重合性架橋剤の使用量は、不飽和モノマ−の総質量に対して0.01〜40質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。架橋剤量は少なすぎると未架橋のポリマ−が溶出し易く、多すぎると架橋剤成分が相溶し難いため何れも好ましくない。
【0034】
本発明において機能性物質を充填する方法として、例えば上述のモノマ−又はその溶液、好適にはモノマ−水溶液中に多孔質膜を浸漬する。なお、水溶液は親水性有機溶媒を含んでもよい。
この状態でモノマ−水溶液に界面活性物質を添加するのが好ましい。界面活性物質を併用することで、通常、濡れ性の悪さのためモノマ−水溶液が細孔内部に内部に入り込まないケ−スであっても、細孔内部にまでモノマ−の水溶液が充填され、該モノマ−を重合することで所望のハイブリッド材料、例えば電解質膜を得ることができる。このような界面活性剤として、例えば次のようなものがある。
【0035】
アニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石けん、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石けん、ステアリン酸ナトリウム石けん、オレイン酸カリウム石けん、ヒマシ油カリウム石けんなどの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコ−ル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノ−ルアミンなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエ−テルジスルホン酸ナトリムなどのアルキルジフェニルエ−テルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウムなどのアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエ−テル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル硫酸トリエタノ−ルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(又はアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレンセチルエ−テル、ポリオキシエチレンステアリルエ−テル、ポリオキシエチレンオレイルエ−テル、ポリオキシエチレン高級アルコ−ルエ−テルなどのポリオキシエチレンアルキルエ−テル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テルなどのポリオキシエチレンアルキルアリ−ルエ−テル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタントリステアレ−ト、ソルビタンモノオレエ−ト、ソルビタントリオレエ−ト、ソルビタンセスキオレエ−ト、ソルビタンジステアレ−トなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレ−ト、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエ−ト、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエ−トなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビト−ル脂肪酸エステル;グリセロ−ルモノステアレ−ト、グリセロ−ルモノオレエ−ト、自己乳化型グリセロ−ルモノステアレ−トなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコ−ルモノラウレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノステアレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジステアレ−ト、ポリエチレングリコ−ルモノオレエ−トなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノ−ルアミドなどが挙げられる。
【0037】
カチオン性界面活性剤および両面界面活性剤としては、ココナットアミンアセテ−ト、ステアリルアミンアセテ−ト等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアミンオキサイドが挙げられる。
【0038】
さらに、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤がある。フッ素系界面活性剤を用いることにより少量でモノマ−水溶液の濡れ性を改良することができるため不純物としての影響が少なく好ましい。本発明において使用されるフッ素系界面活性剤としては、種々のものがあるが、例えば一般の界面活性剤における疎水性基の水素をフッ素に置換えてパ−フルオロアルキル基またはパ−フルオロアルケニル基などのフルオロカ−ボン骨格としたものであり、界面活性が格段に強くなっているものである。フッ素系界面活性剤の親水基を変えると、アニオン型、ノニオン型、カチオン型および両性型の4種類が得られる。代表的なフッ素系界面活性剤としては、次のものがある。
【0039】
フルオロアルキル(C2 〜C10)カルボン酸、N−パ−フルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[フルオロアルキル(C6 〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3 〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6 〜C8 )−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パ−フルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸、パ−フルオロアルキルカルボン酸(C7 〜C13)、パ−フルオロオクタンスルホン酸ジエタノ−ルアミド、パ−フルオロアルキル(C4 〜C12)スルホン酸塩(Li、K、Na)、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パ−フルオロオクタンスルホンアミド、パ−フルオロアルキル(C6 〜C10)アルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パ−フルオロアルキル(C6 〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩(K)、リン酸ビス(N−パ−フルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパ−フルオロアルキル(C6 〜C16)エチルリン酸エステル、パ−フルオロアルケニル第四級アンモニウム塩、パ−フルオロアルケニルポリオキシエチレンエ−テル、パ−フルオロアルケニルスルホン酸ナトリウム塩。
【0040】
また、界面活性剤として、シリコ−ン系界面活性剤がある。シリコ−ン系界面活性剤を用いることにより少量でモノマ−水溶液の濡れ性を改良することができる。本発明において使用されるシリコ−ン系界面活性剤としては、種々のものがあるが、シリコ−ンをポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等で親水変成したもの等が挙げられる。
【0041】
これらの界面活性剤の使用量は、共に存在する機能性物質、用いる多孔性膜、所望のハイブリッド材料の特性に依存する。例えば、用いる機能性物質が不飽和モノマ−である場合、不飽和モノマ−の総重量に対して0.001〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%である。少なすぎると多孔性基材へのモノマ−の充填ができず、多すぎても効果は変わらず無駄であるばかりか種類によってはイオン性不純物となって膜中に残存するため、得られるハイブリッド材料、例えば燃料電池用電解質などの性能を低下させるため何れも好ましくない。
【0042】
本発明におけるモノマ−水溶液の濃度は、モノマ−および界面活性剤、所望により添加される重合開始剤、その他添加剤等が溶解していればよく特に制限はないが、重合反応進行の観点から5質量%以上が好ましく、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。
【0043】
本発明の方法において、多孔質膜を機能性物質又はその溶液に浸漬した状態で、減圧操作、好適には104〜10−5Paの減圧状態を10〜300000秒間保持する減圧操作を行い、多孔質膜の細孔内に機能性物質、例えば上述のモノマ−を充填させるのがよい。さらに、必要であれば反応開始剤の存在下に紫外線照射及び/又は加熱してモノマ−を高分子量化した後真空乾燥する工程(必要であればいずれかの工程を繰り返す)によって、ハイブリッド材料を得るのがよい。
【0044】
本発明の方法において、多孔質膜を機能性物質又はその溶液に浸漬した状態で、超音波を照射するのが好ましい。超音波を照射することで、より短時間で細孔内部に機能性物質の溶液、例えばモノマ−水溶液を充填させることができる。また、超音波照射により機能性物質の溶液、例えばモノマ−水溶液が脱気され、水溶液中の溶存酸素による重合阻害が低減される。また、重合時の気泡発生やモノマ−充填が不十分なときに膜内に発生するピンホ−ルを防止することによって得られるハイブリッド材料、例えば電解質膜の性能低下を抑えることができる。
【0045】
本発明において機能性物質を多孔質膜の細孔内に充填する方法として、例えば機能性物質として上述のモノマ−又はその溶液、好適にはモノマ−水溶液を用い、該溶液中に多孔質膜を浸漬するのがよい。
モノマ−の溶液は、モノマ−;ラジカル反応開始剤;エタノ−ル、メタノ−ル、イソプロパノ−ル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒、特に親水性有機溶媒;及び水を含み、好適にはモノマ−濃度が1〜75重量%、水の割合が99〜25重量%の混合液が挙げられる。
多孔質膜の細孔内に充填されたモノマ−を、その後、加熱重合して細孔内に所望のポリマ−、例えばプロトン伝導性のポリマ−を生成するのがよい。
【0046】
本発明において、細孔内部にてモノマ−を加熱重合させる方法として、公知の水溶液ラジカル重合法の技術を使用することができる。具体例として、熱開始重合が挙げられる。
熱開始重合のラジカル重合開始剤として、次のようなものが挙げられる。2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド等の過酸化物。または、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(V−50)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系ラジカル重合開始剤がある。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0047】
なお、上述したように、本発明のある面において、多孔質膜に充填した機能性物質であるモノマ−から生成したプロトン伝導性ポリマ−は、多孔質膜の界面と化学的結合を有していることが好ましい。化学的結合を形成するための手段として、上述したように、モノマ−充填工程の前に多孔質膜に電子線、紫外線、プラズマなどを照射して多孔質膜表面にラジカルを発生させる方法、後述の水素引き抜き型のラジカル重合開始剤を用いる方法などがある。工程が簡便である点から水素引き抜き型のラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0048】
本発明の方法において、多孔質膜の細孔に機能性物質を充填した後に、多孔質膜の両表面に機能性物質を吸収する多孔質基材を接触させる工程Y−1を有するのがよい。この多孔質基材として、薬包紙、不織布、濾紙、和紙などが挙げられる。
【0049】
本発明において、多孔質膜、例えば高分子多孔質膜の細孔内に機能性物質を充填した後に、平滑な材料、例えばガラス、非腐蝕性金属(例えばステンレス金属)、プラスチック製板、ヘらで高分子多孔質膜の両表面に過剰に付着する機能性物質を除去する工程Y−2を有するのがよい。
該Y−2工程は、上記Y−1工程の代りに、又はY−1工程と共にY−1工程の前後に行うのがよい。
【0050】
本発明のハイブリッド材料の製造方法によって、例えばポリイミド多孔質フィルムを基材として用い且つ該基材がプロトン伝導性機能を有する物質を保持し、再現性よくかつ均質で平面性の良好な機能性材料が得ることができる。
【0051】
本発明の製造方法によって得られるハイブリッド材料は、上記の性能を有するので、電解質膜又は燃料電池として好適である。特に電解質膜は、燃料電池、特に直接メタノ−ル型固体高分子燃料電池に用いるのが特に好ましい。なお、直接メタノ−ル型燃料電池は、カソ−ド極、アノ−ド極、及び該両極に挟まれた電解質から構成され、該電解質として本発明のハイブリッド材料を用いることができる。
【0052】
本発明の製造方法によって得られるハイブリッド材料は、燃料電池用電解質膜に好適に適用できる。
本発明の燃料電池用電解質膜は、25℃で湿度100%の条件でプロトン伝導度が0.001S/cm以上10.0S/cm以下であり、25℃でのメタノ−ルの透過係数の逆数が0.01m2h/kgμm以上10.0m2h/kgμm以下であり、さらに25℃における乾燥状態と湿潤状態での面積変化率が1%以下である。
前記のプロトン伝導度、メタノ−ルの透過係数の逆数および乾燥状態と湿潤状態での面積変化率が前記範囲外であると、燃料電池用電解質膜として好ましくなく、また前記の製造方法によって製造することが困難である。
【0053】
特に、燃料電池の電解質膜の面積変化率は、その値が大きいと膜と電極との界面に損傷を及ぼす要因であるため、電池のオン−オフによる性能安定性、耐久性などの面で電池性能を大きく左右するもので、前記の範囲内であることが好ましい。
【0054】
この発明の電解質膜は、上記の性能を有するので、燃料電池用として好適である。特に電解質膜は、燃料電池、特に直接メタノ−ル型固体高分子燃料電池に用いるのが特に好ましい。なお、燃料電池は、触媒層からなるカソ−ド極およびアノ−ド極、及び該両極に挟まれた電解質膜を構成要素とする。電解質膜−電極接合体は、前記の固体高分子電解質膜が含水してプロトン導電体となる。
【0055】
この発明の電解質膜を構成要素とする電解質膜−電極接合体は、前記の電解質膜の両面に貴金属を含む触媒層を形成して得られる。
前記の貴金属としては、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムよりなる群から選ばれる1種、及びこれらの物質の合金、各々の組合せ又は他の遷移金属との組合せのいずれかが挙げられる。
【0056】
前記貴金属粒子がカ−ボンブラック等の炭素微粒子に担持されたものが触媒として使用される。
前記の貴金属微粒子が担持され炭素微粒子は、貴金属を10質量%〜60質量%を含むものが好適である。
電極触媒を導電性材料に担持する方法として、電極触媒成分の金属の酸化物、複合酸化物などのコロイド粒子を含む水溶液や、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の塩を含む水溶液に導電性材料を浸漬して、これらの金属成分を導電性材料に担持させる方法が挙げられる。担持後は、必要に応じて、水素、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、ギ酸塩、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いて還元処理を行ってもよい。また、導電性材料の親水性官能基がスルホン酸基などの酸性基である場合には、上記の金属塩の水溶液に導電性材料を浸漬して、イオン交換により導電性材料に金属成分を取り込んだ後、上記の還元剤を用いて還元処理を行ってもよい。
また、貴金属微粒子が担持された炭素微粒子とともに高分子電解質および/またはオリゴマ−電解質(イオノマ−)を併用することが好ましい。
【0057】
また、電解質膜−電極接合体は、前記の貴金属微粒子が担持され炭素微粒子および場合により高分子電解質あるいはオリゴマ−電解質(イオノマ−)を溶媒に均一分散させた触媒層形成用ペ−ストを使用して、電解質膜の両面全面あるいは所定形状に触媒層を形成する方法によって得られる。
前記の高分子電解質あるいはオリゴマ−電解質としては、イオン伝導度をもつ任意のポリマ−又はオリゴマ−、又は酸又は塩基と反応してイオン伝導度をもつポリマ−又はオリゴマ−を生ずる任意のポリマ−又はオリゴマ−を挙げることができる。
【0058】
適当な高分子電解質あるいはオリゴマ−電解質としては、プロトン又は塩の形態でスルホン酸基等のペンダントイオン交換基を持つフルオロポリマ−、例えばスルホン酸フルオロポリマ−例えばナフィオン(デュポン社登録商標)、スルホン酸フルオロオリゴマ−やスルホン化ポリイミド、スルホン化オリゴマ−等が挙げられる。
前記の高分子電解質あるいはオリゴマ−電解質は100℃以下の温度で実質的に水に不溶性であることが必要である。
前記の触媒層形成用ペ−ストとしては前記の触媒粒子と液状高分子電解質とを混合して触媒粒子表面を高分子電解質で被覆し、さらにフッ素樹脂を混合したものが好適である。
【0059】
前記の触媒組成物インクの製造に使用される適当な溶媒としては、炭素数1−6のアルコ−ル、グリセリン、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、ブチルカ−ボネ−ト、エチレンカルバメ−ト、プロピレンカルバメ−ト、ブチレンカルバメ−ト、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン及びスルホラン等の極性溶媒が挙げられる。有機溶媒は単独で使用してもよくまた水との混合液として使用してもよい。
【0060】
前記のようにして得られる触媒層形成用ペ−ストを高分子電解質膜の片面側に、好適にはスクリ−ン印刷、ロ−ルコ−タ−、コンマコ−タ−などを用いて1回以上、好適には1〜5回程度塗布し、次いで他面側に、同様にして塗布し、乾燥することによって、あるいは前記触媒層形成用ペ−ストから形成される触媒シ−ト(フィルム)を加熱圧着して、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成することによって電解質膜−電極接合体を得ることができる。
【0061】
この発明の燃料電池用電解質膜は、簡単な操作で多孔質膜の細孔内に電解質が充填され寸法精度が高く水やメタノ−ルによって実質的に膨潤せず、高性能燃料電池の構造体として好適なものである。
電解質膜−電極接合体は、寸法精度が高く水やメタノ−ルによって実質的に膨潤せず、高性能燃料電池の構造体として好適なものである。
燃料電池は、前記の電解質膜−電極接合体を構成要素することによって得られる。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらの例により限定されるものではない。また、実施例および比較例中の%は特に断りの無い限り質量%を、また部は質量部を意味するものとする。
得られた電解質膜のメタノ−ル透過性、プロトン伝導性および面積変化率は以下のように評価した。
【0063】
<メタノ−ル透過性>
拡散セルにより透過試験(液/液系)を行い、メタノ−ルの透過性を評価した。まず、イオン交換水中に測定する膜を浸漬し膨潤させた後にセルをセットする。MeOH透過側と供給側にそれぞれイオン交換水を入れ、1時間ほど恒温槽中で安定させる。次に、供給側にメタノ−ルを加え10重量%のメタノ−ル水溶液とすることで試験を開始する。所定時間ごとに透過側の溶液をサンプリングしガスクロマトグラフ分析によりメタノ−ルの濃度を求めることで濃度変化を追跡し、メタノ−ルの透過流速、透過係数、拡散係数を算出した。測定は25℃で行って、メタノ−ル透過性を評価した。
【0064】
<プロトン伝導性>
室温(25℃)、100%湿潤状態の充填膜(フィリング膜)の表裏に電極を接触させ、耐熱性樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)板により挟み会わせることにより膜を固定しプロトン伝導度を測定した。
測定に供する膜を1規定の塩酸水溶液中で5分間超音波洗浄し、次にイオン交換水中で3回、各々5分間超音波洗浄を行い、その後イオン交換水中で静置した。水中で膨潤させた膜を耐熱性樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)板上に取り出し、白金板電極を膜の表と裏に接触させ、その外側から耐熱性樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)板で挟み4本のネジで固定した。インピ−ダンスアナライザ(ヒュ−レットパッカ−ド社製、インピ−ダンスアナライザ−HP4194A)により交流インピ−ダンスを測定し、コ−ルコ−ルプロットから抵抗値を読み取り、プロトン伝導率を算出した。
【0065】
<面積変化率>
作成した電解質膜については、以下によって面積変化率を測定した。
電解質ポリマ−充填の前後、及びポリマ−の膨潤・収縮に伴うフィリング膜の膜面積変化率を測定するために、先ず乾燥したポリイミド多孔質膜のx方向、y方向の長さを定規により測定した(条件1)。次に、測定後の膜を用い電解質を充填、重合を行い、膜の洗浄・イオン交換処理を行った上で完全膨潤状態での電解質膜のx・y方向の長さを測定した(条件2)。その後、50℃の乾燥機中で十分乾燥を行った後、同様に長さを測定した(条件3)。
以上の測定結果を用いて面積をx×yで求め、以下により面積の変化率を算出した。
電解質膜充填前後の面積変化率:A(%)
A=[面積(条件1)−面積(条件3)]×100/面積(条件1)
電解質膜の乾燥時と湿潤時の面積変化率:B(%)
B=[面積(条件2)−面積(条件3)]×100/面積(条件3)
【0066】
参考例1
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とオキシジアニリンとをモル比が0.998でかつ該モノマ−成分の合計重量が9.0重量%となるポリイミド前駆体NMP溶液を、鏡面研磨したSUS板上に流延し、溶媒置換速度調整材としてポリオレフィン製微多孔膜(宇部興産社製:UP−3025)で表面を覆い、該積層物をメタノ−ル中に、続けて水中に浸漬した後、大気中にて320℃で熱処理を行い、次の特性を持つポリイミド多孔質フィルムを得た。膜厚:15μm、空孔率:33%、平均細孔径:0.15μm、透気度:130秒/100ml。
【0067】
比較例1
プロトン伝導性高分子のモノマ−であるアクリルアミドメチルプロピルスルホン酸(ATBS)とメチレン−bis−アクリルアミド及び反応開始剤であるV−50(商品名:東亜合成社製)を好適に水中に溶解して作製したモノマ−水溶液に、アセトンに一度浸漬しその後一次水に浸すことで水との親水性を一次的に高めた参考例1で得たポイミド多孔質膜を浸漬した。十分時間を置いた後に多孔質膜を取り出しガラス板ではさみ、紫外線を照射することで膜内に充填したモノマ−を重合し電解質膜を得た。作成した電解質膜を流水で約3分間洗浄し、膜の両表面に付着する過剰なポリマ−を取り除き膜を平滑化した。さらに、一次水中で超音波洗浄を施した。
同じ操作を5回繰り返して、評価した。その平均値を以下に示す。
メタノ−ル透過係数の逆数:0.03m2h/kgμm
プロトン伝導性:1.4×10−2S/cm
面積変化率A:0%
面積変化率B:0%
膜厚み:15μm(乾燥時)、16μm(膨潤時)
ただし、上記の工程により電解質膜を作成したが、目視で容易に確認できる電解質膜の充填斑が生じていた。充填された電解質の量は重量比で14〜31%とばらつきがあった。
【0068】
実施例1
紫外線を照射する代わりに、50℃の乾燥機内に12時間静置すして加熱重合した他は比較例1と同様に実施して、ハイブリッド電解質膜を得た。
同じ操作を3回繰り返して、評価した。その平均値を以下に示す。
メタノ−ル透過係数の逆数:0.44m2h/kgμm
プロトン伝導性:2.0×10−2S/cm
面積変化率A:0%
面積変化率B:0%
膜厚み:15μm(乾燥時)、16μm(膨潤時)
目視で明らかに充填材料の充填斑が改善されていた。充填された電解質の量も10回同様の操作を行ったが、20〜25%とばらつきが非常に少なくなった。
【0069】
実施例2
実施例1と同様の操作を行った後に、以下に示すように更に濃度が30〜50重量%のモノマ−溶液に浸漬し熱重合を行う操作を繰り返し行って、ハイブリッド電解質膜を得た。その結果、充填材料の充填斑を生じることなく、電解質の充填率を制御することができた。
1回目:モノマ−濃度50重量%、電解質充填率:25.5重量%
2回目:モノマ−濃度50重量%、電解質充填率:41.5重量%
3回目:モノマ−濃度30重量%、電解質充填率:43.1重量%
4回目:モノマ−濃度40重量%、電解質充填率:47.0重量%
5回目:モノマ−濃度40重量%、電解質充填率:47.4重量%
1回目の終了後、メタノ−ル透過性およびプロトン伝導性を評価したところ、実施例1と同等であった。
また、面積変化率Aおよび面積変化率Bはいずれも0%、膜厚みは15μm(乾燥時)、16μm(膨潤時)であった。
【0070】
実施例3
実施例1と同様の操作を行った後に、以下に示すように更に濃度が30〜50重量%のモノマ−溶液に浸漬し熱重合を行う操作を繰り返し行って、ハイブリッド電解質膜を得た。その結果、充填材料の充填斑を生じることなく、電解質の充填率を制御することができた。
1回目:モノマ−濃度50重量%、電解質充填率:25.9重量%
2回目:モノマ−濃度50重量%、電解質充填率:46.2重量%
3回目:モノマ−濃度30重量%、電解質充填率:45.8重量%
1回目の終了後、メタノ−ル透過性およびプロトン伝導性を評価したところ、実施例1と同等であった。
また、面積変化率Aおよび面積変化率Bは、3回目終了時においていずれも0%、膜厚みは15μm(乾燥時)、16μm(膨潤時)であった。
【0071】
実施例4
実施例1と同様の操作を行った後に、以下に示すように更に濃度が30〜50重量%のモノマ−溶液に浸漬し熱重合を行う操作を繰り返し行って、ハイブリッド電解質膜を得た。その結果、充填材料の充填斑を生じることなく、電解質の充填率を制御することができた。
1回目:モノマ−濃度50重量%、電解質充填率:26.0重量%
2回目:モノマ−濃度30重量%、電解質充填率:30.4重量%
3回目:モノマ−濃度40重量%、電解質充填率:34.3重量%
1回目の終了後、メタノ−ル透過性およびプロトン伝導性を評価したところ、実施例1と同等であった。
また、面積変化率Aおよび面積変化率Bは、3回目終了時においていずれも0%、膜厚みは15μm(乾燥時)、16μm(膨潤時)であった。
【0072】
実施例5
実施例1で得られたハイブリッド電解質膜を用いて燃料電池を作製し、燃料電池として発電を行った。
1)電解質膜−電極接合体(MEA)の作製
メノウ乳鉢ですりつぶしたカ−ボンブラック(XC−72)0.37gにイソプロパノ−ル4.0gを加え、攪拌と超音波により十分分散させた。その後、市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を0.14g加え、約1分間の攪拌を行い拡散層用のペ−ストを得た。
この拡散層用のペ−ストをスクリ−ン印刷法により、カ−ボンペ−パ−(東レ社製)上に3回にわけて塗布し、自然乾燥させた後、350℃で2時間焼成して拡散層付きカ−ボンペ−パ−を得た。
46.1質量%の白金が担持されたカ−ボンブラック(田中貴金属社製、TEC10E50E)と同量のイオン交換水を混合し、その後市販の5%ナフィオン溶液を加え、攪拌・超音波を10分間繰り返した。その後、適量のPTFE分散液を加え攪拌して触媒層形成用のペ−ストを得た。スクリ−ン印刷法により、前記の拡散層付きカ−ボンペ−パ−上にペ−ストを3回にわけて塗布し、自然乾燥することにより、ガス拡散電極を得た。
上記の拡散電極と実施例1で得られた電解質膜とをホットプレスを用いて130℃、2MPa、1分間接合してMEAを得た。電極に担持したPt量は、アノ−ドで0.22mgPt/cm2、カソ−ドで0.23mgPt/cm2であった。
【0073】
2)燃料電池発電
作製したMEAをエレクトロケム社(米国)製の電極面積5cm2の燃料電池に組み込んだ。
次いで、発電条件として、セル温度60℃、アノ−ド温度58℃、カソ−ド温度40℃とし、燃料ガスには水素および酸素を用いて発電した。
その結果、電流密度−セル電圧の関係(I−V曲線)を示す図1から明らかなように、2.0A/cm2以上の電流密度が得られることが分かった。
【0074】
実施例6
実施例1で得られたハイブリッド電解質膜を用いて直接型メタノ−ル燃料電池を作製し、燃料電池として発電を行った。
1)電解質膜−電極接合体(MEA)の作製
メノウ乳鉢ですりつぶしたカ−ボンブラック(XC−72)0.37gにイソプロパノ−ル4.0gを加え、攪拌と超音波により十分分散させた。その後、市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を0.14g加え、約1分間の攪拌を行い拡散層用のペ−ストを得た。
この拡散層用のペ−ストをスクリ−ン印刷法により、カ−ボンペ−パ−(東レ社製)上に3回にわけて塗布し、自然乾燥させた後、350℃で2時間焼成して拡散層付きカ−ボンペ−パ−を得た。
46.1質量%の白金が担持されたカ−ボンブラック(田中貴金属社製、TEC10E50E)と同量のイオン交換水を混合し、その後市販の5%ナフィオン溶液を加え、攪拌・超音波を10分間繰り返した。その後、適量のPTFE分散液を加え攪拌して触媒層形成用のペ−ストを得た。スクリ−ン印刷法により、前記の拡散層付きカ−ボンペ−パ−上にペ−ストを3回にわけて塗布し自然乾燥する操作を3回繰り返すことにより、酸素極に用いるガス拡散電極を得た。
【0075】
32.7質量%の白金および16.9質量%のルテニウムが担持されたカ−ボンブラック(田中貴金属社製、TEC66E50)と同量のイオン交換水を混合し、その後市販の5%ナフィオン溶液を加え、攪拌・超音波を10分間繰り返した。その後、適量のPTFE分散液を加え攪拌して触媒層形成用のペ−ストを得た。スクリ−ン印刷法により、前記の拡散層付きカ−ボンペ−パ−上にペ−ストを3回にわけて塗布し自然乾燥する操作を4回繰り返すことにより、メタノ−ル極に用いるガス拡散電極を得た。
上記のガス拡散電極と実施例1で得られた電解質膜とをホットプレスを用いて130℃、2MPa、1分間接合してMEAを得た。電極に担持した触媒量は、アノ−ドで1.6mg/cm2、カソ−ドで1.03mg/cm2であった。
【0076】
2)燃料電池発電
作製したMEAをエレクトロケム社(米国)製の電極面積5cm2の燃料電池に組み込んだ。
次いで、発電条件として、セル温度50℃で、アノ−ドには3モル/Lメタノ−ル水溶液を10mL/分の流速で、カソ−ドには乾燥酸素を1L/分の流速で流して発電した。
その結果、電流密度−セル電圧の関係(I−V曲線)を示す図2、および電流密度−出力密度の関係(I−W曲線)を示す図3から明らかなように、90mW/cm2以上の出力密度が得られることが分かった。
【0077】
【発明の効果】
本発明により、機能性物質が均一に含有する、例えば電解質膜などのハイブリッド材料を提供することができる。即ち、該材料間及び材料内でのむらが少なく且つ再現性よい、電解質膜などのハイブリッド材料の製造方法を提供することができる。また、所望の充填率で機能性物質、特に電解質を充填することができるために、例えば直接メタノ−ル型燃料電池用電解質膜を作製する場合には、メタノ−ル透過性とプロトン伝導性を用途に合わせてバランスさせた電解質膜を容易に作製することができるので、工業的に非常に有益である。
また、本発明により、上記効果に加えて、又は上記効果の他に、ポリイミド多孔質膜に、容易且つ均一に、高い充填率で、厚みむらがないか又は厚みむらが非常に抑えられた状態で、機能性物質を充填させるハイブリッド材料、例えば電解質膜、特に燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することができる。
【0078】
本発明により、上記効果に加えて、又は上記効果の他に、ポリイミド多孔質膜とさまざまな機能性物質とのハイブリッド化がもたらされるハイブリッド材料、例えば電解質膜などの製造方法を提供することができる。
特に燃料電池用電解質膜に関して、本発明により、寸法又は形状の安定化、向上したプロトン伝導性をもたらし、工業的に有益な燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することができる。
【0079】
さらに、本発明により、上記効果に加えて、又は上記効果の他に、多孔質膜の細孔に簡便な操作で機能性物質、例えばプロトン伝導性物質を充填する電解質膜の製造方法、特に良好なプロトン伝導性を有し且つ寸法および形状の安定化した直接型メタノ−ル燃料電池用電解質膜の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、燃料電池用電解質膜が良好なプロトン伝導性を有し且つ寸法および形状が安定化した電解質膜−電極接合体および燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例5における固体高分子型燃料電池の電流密度−セル電圧の関係(I−V曲線)を示す。
【図2】図2は、実施例6における直接メタノ−ル型燃料電池の電流密度−セル電圧の関係(I−V曲線)を示す。
【図3】図3は、実施例6における直接メタノ−ル型燃料電池の電流密度−出力密度の関係(I−W曲線)を示す。
Claims (14)
- ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、多孔質膜の細孔に該モノマ−を充填した後、モノマ−を加熱により重合する工程を有する方法。
- 加熱により重合する工程後に、再度モノマ−を充填し再び加熱により重合を行う工程を少なくとも1回以上繰り返すことにより、充填材料の充填率を制御することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 加熱により重合する工程と、以下の(X−1)工程〜(X−4)工程のうちのいずれか1工程、又は任意の2工程の組合せ、又は任意の3工程の組合せ、又はすべての工程とを組合せて、前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填するか、及び/又は前記多孔質膜の細孔に機能性物質を充填した後、以下の(Y−1)工程及び/又は(Y−2)工程を用いる請求項1記載の方法:
(X−1)多孔質膜を親水化し、その後該多孔質膜をモノマ−又はその溶液に浸漬する工程;
(X−2)モノマ−又はその溶液に界面活性物質を添加し浸漬液を得、該浸漬液に多孔質膜を浸漬する工程;
(X−3)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で減圧操作を行う工程;及び
(X−4)多孔質膜をモノマ−又はその溶液中に浸漬した状態で超音波を照射する工程;並びに
(Y−1)多孔質膜の両表面に機能性物質を吸収する多孔質基材を接触させる工程;及び
(Y−2)多孔質膜の両表面に過剰に付着する機能性物質を平滑材料で除去する工程。 - ポリイミド多孔質膜に機能性物質を充填したハイブリッド材料の製造方法であって、機能性物質がプロトン伝導性を有するポリマ−を構成するモノマ−であり、該モノマ−又はその溶液に界面活性物質を添加して浸漬液を調製する工程;及び、モノマ−を加熱により重合する工程;を有するハイブリッド材料の製造方法。
- 前記多孔質膜が、メタノ−ル及び水に対して実質的に膨潤しない材料である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 前記界面活性物質添加工程において、さらにラジカル重合開始剤を含有させる請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 細孔に充填した機能性物質が、プロトン伝導性を有するものであり、加熱による重合工程により架橋構造を有する請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 細孔に充填した機能性物質が、プロトン伝導性を有するものであり、加熱による重合工程によりポリイミド多孔質膜の界面と化学的に結合している請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
- 前記ハイブリッド材料が、その細孔にプロトン伝導性ポリマ−が充填された電解質膜である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- ポリイミドが、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々含有するポリイミドである請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
- 25℃で湿度100%の条件でプロトン伝導度が0.001S/cm以上10.0S/cm以下であり、25℃でのメタノ−ルの透過係数の逆数が0.01m2h/kgμm以上10.0m2h/kgμm以下であり、さらに25℃における乾燥状態と湿潤状態での面積変化率が1%以下であることを特徴とする燃料電池用電解質膜。
- ポリイミドが、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミン成分としてオキシジアニリンを各々含有するポリイミドである請求項11に記載の燃料電池用電解質膜。
- 請求項11あるいは12に記載の燃料電池用電解質膜を用いた電解質膜−電極接合体。
- 請求項13に記載の用電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
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