JP2004251962A - 染料系偏光フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】染料系偏光フィルムを用いる液晶表示装置の色再現性を向上させる。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向されてなる偏光フィルムであって、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲にあり、かつ、彩度C が7以下である偏光フィルムが提供される。この偏光フィルムは、直交色相を(a,b)の色度座標上で表したときの彩度C が3以下であることが好ましい。このように、平行色相の色相角度Hと彩度C を特定範囲とし、また好ましくはさらに直交色相の彩度C を特定範囲とすることで、その偏光フィルムを液晶表示装置、特に透過型薄膜トランジスタ液晶表示装置に適用した場合に、画像が黄色っぽくなるのを抑えることができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向された、いわゆる染料系偏光フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
偏光フィルムは通常、その片面又は両面に保護フィルムが貼合された状態の偏光板として、液晶表示装置(LCD)に広く用いられている。そして近年、液晶表示装置は、ノート型パーソナルコンピューターや、液晶モニター、液晶テレビのほか、カーナビゲーションシステムや自動車の運転席から視認する計器類、携帯電話、携帯情報端末、アミューズメント機器、文房具など、多方面で利用されている。これに伴い、偏光板の光学特性に対する要求も多種多様化している。
【0003】
偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させたヨウ素系偏光フィルムと、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料を吸着配向させた染料系偏光フィルムがある。ヨウ素系偏光フィルムは、偏光性能は高いものの、耐久性が低いのに対し、染料系偏光フィルムは、耐久性が非常に高いことから、特に使用時の強い光に曝されて高温になる液晶プロジェクター、また、環境温度変化が激しく、耐久性能が要求される車載用途、例えば、カーナビゲーションシステムや自動車の計器類に多用されている。
【0004】
かかる染料系偏光フィルムについては、これまでにも数多くの提案がなされている。例えば、特開平 6−337312 号公報(特許文献1)には、特定の含金属ジスアゾ染料を少なくとも1種と、別の含金属ジスアゾ染料、特定のトリスアゾ染料及びカラーインデックスに記載される特定の直接染料から選ばれる少なくとも2種の染料とを組み合わせて、ポリビニルアルコール系樹脂などの偏光フィルム基材に適用することが記載され、特開平 7−159615 号公報(特許文献2)には、特定のトリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ染料や、特定の含金属トリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ染料を、偏光フィルム基材に適用すること、さらにはこれらの染料に、他の染料を少なくとも2種類組み合わせて用いることも記載されている。
【0005】
特開平 8−240715 号公報(特許文献3)には、重合度の高いポリビニルアルコールフィルムを用い、これを乾式で一軸延伸し、次に染料を吸着配向させ、その後70〜85℃という高温のホウ酸水溶液で処理することにより、透過率及び偏光度の高い偏光フィルムが製造できる旨記載されており、この際に使用する染料として、各種のものが挙げられている。
【0006】
また、特開 2000−329936号公報(特許文献4)と特開 2000−329941号公報(特許文献5)には、吸収軸方向に対して平行な振動面を有する直線偏光を照射したときの波長400〜500nmの範囲における透過率が 0.3%以下であり、吸収軸方向に対して直交する振動面を有する直線偏光を照射したときの波長430〜500nmの範囲における透過率が77%以上である偏光フィルムが、液晶プロジェクターを自然なカラー表示とするのに有効である旨記載されており、これらの公報にも、使用しうる染料として各種のものが挙げられている。そしてこれらの公報では、好適な染料の例として、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39とシー・アイ・ダイレクト・レッド81の組合せが記載されている。
【0007】
さらに、特開 2002−82222 号公報(特許文献6)には、染料系偏光フィルムにおける二色性染料の吸着厚みを4μm 以上とすることで、特に液晶プロジェクターのように光源からの強い光があたる場合でも劣化を少なくできることが記載され、また特開 2002−90528 号公報(特許文献7)には、同じく染料系偏光フィルムについて、波長440nmにおける吸光度を 3.0以上とすることで、やはり光源からの強い光があたる場合でも劣化を少なくできることが記載されている。これらの公報にも、使用しうる染料として各種のものが挙げられている。
【0008】
さらにまた、偏光板の平行色相及び/又は直交色相を特定することで、表示をニュートラルグレーに近づける試みもなされている。例えば、特開平 11−281817号公報(特許文献8)には、平行色相のaとb、又はaとbの関係を特定することで、色相の偏りを抑えることが提案されている。また、特開 2001−311827号公報(特許文献9)には、偏光板を構成するいずれかの層に着色剤を含有させることで、直交色相のaとb及び平行色相のaとbが特定の関係を満たすようにし、ニュートラルグレーの表示ができるようにする提案がなされている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−337312号公報
【特許文献2】特開平7−159615号公報
【特許文献3】特開平8−240715号公報
【特許文献4】特開2000−329936号公報
【特許文献5】特開2000−329941号公報
【特許文献6】特開2002−82222号公報
【特許文献7】特開2002−90528号公報
【特許文献8】特開平11−281817号公報
【特許文献9】特開2001−311827号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年の車載用途、特にカーナビゲーションシステムに多く用いられている透過型の薄膜トランジスタ(TFT)タイプ液晶表示パネルに、通常の染料系偏光フィルムないしはそれに保護フィルムが貼合された染料系偏光板を配置すると、液晶セルとのマッチングが悪く、色再現性に乏しくなる場合があった。ここでいう色再現性とは、原画像に忠実な色で表示できることをいい、従来の染料系偏光フィルムでは、表示が黄色っぽくなることがあった。
【0011】
本発明者は、染料系偏光フィルムを用いる液晶表示装置の色再現性を向上させるべく、染料系偏光フィルムの研究を行ってきた。その結果、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向してなる染料系偏光フィルムについて、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときの色相角度Hが特定範囲にあり、かつ、そのときの彩度C が特定値を示すようにすることで、透過型のTFT液晶表示装置の色再現性が向上することを見出し、本発明に至った。
【0012】
したがって本発明の目的は、染料系偏光フィルムを用いる液晶表示装置の色再現性を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向されてなる偏光フィルムであって、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲にあり、かつ、彩度C が7以下である偏光フィルムが提供される。この偏光フィルムは、直交色相を(a,b)の色度座標上で表したときの彩度C が3以下であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向されてなり、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲にあり、かつ、彩度C が7以下のものである。また、直交色相を(a,b)の色度座標上で表したときの彩度C は3以下であるのが好ましい。色相(a,b)の色度座標とは、 JIS Z 8729 に基づいて測定され、計算されたa 及びb からなる直交座標系のことである。平行色相とは、2枚の偏光板又は偏光フィルムをそれぞれの吸収軸が平行になるように重ね合わせたときの色相を意味し、直交色相とは、2枚の偏光板又は偏光フィルムをそれぞれの吸収軸が直交するように重ね合わせたときの色相を意味する。
【0015】
本発明では、偏光フィルムの平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度から150度の範囲にあり、かつ彩度C が7以下となるようにする。このときの色相角度Hは、好ましくは110度以上であり、また好ましくは140度以下である。一方、このときの彩度C は、好ましくは6以下である。色相角度Hが105度より小さかったり150度より大きかったりすると、液晶セルとのマッチングが悪くなり、色再現性が低下する。また、彩度C が7より大きいと、やはり液晶セルとのマッチングが悪くなり、色再現性が低下する。なお、色相角度H及び彩度C は、それぞれ次式(1)及び(2)で定義される値である。
【0016】
色相角度H=tan−1(b/a) (1)
彩度C=[(a+(b1/2 (2)
【0017】
この色相角度Hは、 JIS Z 8729 で「ab色相角hab」と表現されているものと同じであり、彩度C は、同じく JIS Z 8729 で「abクロマC ab 」と表現されているものと同じである。
【0018】
本発明の偏光フィルムは一方で、直交色相を(a,b)の色度座標上で表したときの彩度C が3以下であることが好ましい。この直交色相の彩度C は、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下である。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ビニルアルコール単位又はその変性体を主体とする重合体のフィルムであって、具体的には、酢酸ビニルの重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られる重合体のフィルム、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、不飽和アミン類、アクリルアミド、アクリル酸誘導体などとの共重合体をケン化処理して得られる重合体のフィルム、さらには、これらの重合体の変性物であるポリビニルホルマールやポリビニルアセタールのフィルムなどを挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのケン化度は、通常80〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重合度は、通常 1,000程度以上であり、好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上である。またこの重合度は、通常10,000程度以下、好ましくは5,000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、例えば、10〜150μm 程度である。
【0020】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させる二色性染料としては、例えば、以下のA〜Eに分類されるそれぞれの化合物などが挙げられる。
【0021】
A.遊離酸の形で表したときに下式(I)
【0022】
Figure 2004251962
【0023】
(式中、Mは銅、ニッケル、亜鉛及び鉄から選ばれる遷移金属を表し;
は置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいナフチルを表し;
は置換されていてもよい1−又は2−ナフトール残基を表し、そのナフトールの水酸基はアゾ基の隣接位にあって、Mで表される遷移金属と錯結合しており;
及びR はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシル、スルホ、スルファモイル、N−アルキルスルファモイル、アミノ、アシルアミノ、ニトロ又はハロゲンを表す)
で示される含金属ジスアゾ化合物。
【0024】
B.遊離酸の形で表したときに下式(II)
【0025】
Figure 2004251962
【0026】
(式中、A 及びB はそれぞれ独立に、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいナフチルを表し;
及びR はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシル、スルホ、スルファモイル、N−アルキルスルファモイル、アミノ、アシルアミノ、ニトロ又はハロゲンを表し;
mは0又は1を表す)
で示されるトリスアゾ化合物又はその遷移金属錯体。
【0027】
C.遊離酸の形で表したときに下式 (III)
【0028】
−N=N−Q−X−Q−N=N−B (III)
【0029】
(式中、A 及びB はそれぞれ独立に、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいナフチルを表し;
及びQ はそれぞれ独立に、置換されていてもよいフェニレンを表し;
Xは直接結合、アゾ又はアゾキシを表す)
で示されるビフェニルジスアゾ、トリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ化合物。
【0030】
D.遊離酸の形で表したときに下式(IV)
【0031】
Figure 2004251962
【0032】
(式中、Mは銅、ニッケル、亜鉛及び鉄から選ばれる遷移金属を表し;
及びB はそれぞれ独立に、置換されていてもよい1−又は2−ナフトール残基を表し、そのナフトールの水酸基はアゾ基の隣接位にあって、Mで表される遷移金属と錯結合しており;
Yは直接結合、アゾ又はアゾキシを表し;
及びR はそれぞれ独立に、水素、低級アルキル、低級アルコキシ又はスルホを表す)
で示される含金属ビフェニルジスアゾ、トリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ化合物。
【0033】
E.カラー・インデックス(C.I.)に記載される以下のような二色性染料。
C.I.ダイレクト・イエロー12、
C.I.ダイレクト・イエロー28、
C.I.ダイレクト・イエロー44、
C.I.ダイレクト・イエロー142、
C.I.ダイレクト・ブルー1、
C.I.ダイレクト・ブルー71、
C.I.ダイレクト・ブルー78、
C.I.ダイレクト・ブルー168、
C.I.ダイレクト・ブルー202、
C.I.ダイレクト・レッド2、
C.I.ダイレクト・レッド31、
C.I.ダイレクト・レッド79、
C.I.ダイレクト・レッド81、
C.I.ダイレクト・レッド117、
C.I.ダイレクト・レッド247、
C.I.ダイレクト・バイオレット9、
C.I.ダイレクト・バイオレット51、
C.I.ダイレクト・オレンジ26、
C.I.ダイレクト・オレンジ39、
C.I.ダイレクト・オレンジ107、
C.I.ダイレクト・ブラウン106、
C.I.ダイレクト・ブラウン223など。
【0034】
式(I)及び式(IV)において、Mで表される遷移金属は、特に銅であるのが好ましい。また、上の各式で定義される低級アルキル及び低級アルコキシ、並びにN−アルキルスルファモイルにおけるアルキルは、それぞれ炭素数1〜4程度であればよく、以下に現れる低級アルキル及び低級アルコキシも同様である。さらに、アシルアミノにおけるアシルは、アセチル、プロピオニルなど、全炭素数2〜4程度であればよく、ハロゲンとして具体的には、フッ素、塩素、臭素などを挙げることができる。
【0035】
式(I)中のA 、式(II)中のA 及びB 、並びに式(III) 中のA 及びB は、それぞれフェニル又はナフチルであり、これらのフェニル及びナフチルは、それぞれ無置換でも置換されていてもよい。このフェニルに置換しうる基としては、例えば、スルホ、スルファモイル、低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、水酸基、カルボキシル、無置換の又はモノ−若しくはジ−置換されたアミノ、ハロゲンなどが挙げられ、このアミノに置換しうる基は、例えば、低級アルキル、水酸基やシアノなどで置換された低級アルキル、全炭素数2〜4のアシルなどである。またナフチルに置換しうる基としては、例えば、スルホ、水酸基、アミノなどが挙げられる。
【0036】
式(I)中のB 並びに式(IV)中のA 及びB はそれぞれ、水酸基がアゾ基の隣接位にあって、Mで表される遷移金属と錯結合する1−又は2−ナフトールの残基であり、このナフトール残基は、無置換でも置換されていてもよい。このナフトール残基に置換しうる基としては、例えば、スルホ、水酸基、カルボキシル、無置換の又はモノ−若しくはジ−置換されたアミノなどが挙げられ、このアミノに置換しうる基は、例えば、低級アルキル、水酸基やシアノなどで置換された低級アルキル、全炭素数2〜4のアシル、カルバモイル、スルファモイル、無置換の又は置換されたフェニル、無置換の又は置換されたベンゾイルなどである。ここでいうフェニル及びベンゾイルに置換しうる基は、例えば、スルホ、低級アルキル、低級アルコキシなどである。
【0037】
式(III) 中のQ 及びQ は、それぞれフェニレンであり、無置換でも置換されていてもよく、またQ とQ は同じでも異なっていてもよい。このフェニレンに置換しうる基としては、例えば、水酸基、低級アルキル、低級アルコキシ、スルホなどが挙げられる。Q 及びQ はそれぞれ、無置換の又は置換基を1又は2個有するフェニレン、それもp−フェニレンであるのが有利である。また、式(III) 中のX及び式(IV)中のYは、それぞれ直接結合、アゾ(−N=N−)又はアゾキシ(−N(→O)=N−)である。
【0038】
式(I)中のR 及びR 、並びに式(II)中のR 及びR はそれぞれ、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシル、スルホ、スルファモイル、N−アルキルスルファモイル、アミノ、アシルアミノ、ニトロ又はハロゲンである。また、式(IV)中のR 及びR は、それぞれ、水素、低級アルキル、低級アルコキシ又はスルホである。
【0039】
式(I)、式(III) 及び式(IV)で示される化合物は、通常、それぞれ水溶性基としてスルホ又はカルボキシルを分子内に少なくとも1個有する。水溶性基としては特にスルホが好ましく、とりわけスルホを分子内に2個以上有するのが一層好ましい。また、式(II)で示される化合物も同様に、スルホを分子内に2個以上有するのが好ましい。
【0040】
式(II)で示されるトリスアゾ化合物の遷移金属錯体とは、式(II)におけるR とナフタレン環に結合する水酸基(OH)が一緒になって、−O−M−O−(ここに、Mは銅、ニッケル、亜鉛及び鉄から選ばれる遷移金属を表す)の結合を形成した化合物をいう。この場合も、Mは銅であるのが好ましい。
【0041】
以上のような二色性染料のうち、遊離酸の形で表したときにスルホ又はカルボキシルを有する化合物は、いずれも通常はアルカリ金属塩、中でもナトリウム塩の形で用いられるが、その他、リチウム塩やカリウム塩など他のアルカリ金属塩の形で用いることも、また遊離酸の形で用いることもできる。さらには、アンモニウム塩、またエタノールアミン塩やアルキルアミン塩のようなアミン塩の形で用いることもできる。
【0042】
これらの二色性染料は、いずれも公知の方法に準じて製造することができる。すなわち、式(I)で示される含金属ジスアゾ化合物は、例えば、西ドイツ公開特許第 32 36 238号や特公昭 64−5623号公報などに記載される公知の方法に準じて製造することができ、式(II)で示されるトリスアゾ化合物は、例えば、特開平 2−75672号公報などに記載される公知の方法に準じて製造することができ、式(III) で示される化合物のうちのトリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ化合物及び、式(IV)で示される化合物のうちの含金属トリスアゾ又はジスアゾモノアゾキシ化合物は、例えば、 Ind. Eng. Chem., 27, 1045 (1935) や J. Am. Chem. Soc., 73, 1323 (1951) などに記載されるグルコース還元を応用して製造することができる。
【0043】
上記したA群を構成する式(I)の染料、B群を構成する式(II)の染料及びその銅錯塩染料、並びにC群を構成する式(III) の染料の具体例として、それぞれ遊離酸の形で表したときに、以下の式(I−1)〜(I−24)、(II−1)〜(II−11)、及び(III−1)〜(III−22)で示されるものを挙げることができる。なお、以下の式(III−1)〜(III−22)において、下式
【0044】
Figure 2004251962
【0045】
の基は、アゾ(−N=N−)、アゾキシ(−N(→O)=N−)、又は両者の混合物でありうることを意味する。
【0046】
Figure 2004251962
【0047】
Figure 2004251962
【0048】
Figure 2004251962
【0049】
Figure 2004251962
【0050】
Figure 2004251962
【0051】
Figure 2004251962
【0052】
Figure 2004251962
【0053】
本発明においては、上記のような二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させて、得られる偏光フィルムの平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲となり、かつ彩度C が7以下となるようにするのであるが、染色の際、これらの要件を満たすように、二色性染料を2種類以上組み合わせて用いることが肝要である。
【0054】
本発明者が、現在市場で販売されている偏光板のいくつかを調査したところ、上記の色相角度Hが105度〜150度で、かつ彩度C が7以下となるものはなかった。また、先に述べた特許文献1〜9には、いくつかの二色性染料を組み合わせて用いた例も示されているが、これらの特許文献に具体的に開示されている二色性染料の組合せを用いても、やはり上記の色相角度Hが105度〜150度で、かつ彩度C が7以下となることはなかった。
【0055】
本発明で規定するところの、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲にあり、かつ彩度C が7以下である偏光フィルムとするためには、特に、波長600nm以上に極大吸収波長を有する二色性染料を少なくとも1種用い、それに、波長500〜600nmの範囲に極大吸収波長を有する二色性染料を少なくとも1種組み合わせて用いるのが好ましい。とりわけ、前記A群を構成する式(I)の二色性染料の中から波長600nm以上に極大吸収波長を有するものを選択し、これを、前記B〜E群に属する二色性染料のうち、波長500〜600nmの範囲に極大吸収波長を有する1又は複数の染料と組み合わせて用いるのが好ましい。また場合によっては、波長500nm以下に極大吸収波長を有する染料を、調色のためにさらに組み合わせるのも有効である。
【0056】
式(I)で示される二色性染料の中でも特に、下式(Ia)
【0057】
Figure 2004251962
【0058】
(式中、A 及びB は式(I)と同様の意味を表し;
は水素、低級アルキル又はアシルアミノを表す)
で示される化合物が好ましい。この式(Ia)は、前記式(I)において、R が水素であり、R が−O−M−基に対してp−位にあって、水素、低級アルキル又はアシルアミノである化合物に相当する。その具体例は、前記式(I−16)〜(I−24)に示すようなものである。とりわけ、R がメチルである化合物は有効である。
【0059】
本発明で規定する平行色相の色相角度H及び彩度C を満たす偏光フィルムを得るのに好適な染料の組合せの例として、前記式(I−16)に相当する染料、前記式(II−5)に相当する染料及びC.I.ダイレクト・オレンジ39の組合せを挙げることができる。
【0060】
以上のような二色性染料をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに吸着配向させるには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、延伸と、二色性染料の水溶液への浸漬による染色とを施す方法が採用できる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、染色の前に、温水への浸漬処理を施しておくのが好ましい。染色に使用する水溶液は通常、水100重量部に対して、二色性染料を 0.0001〜1重量部程度の割合で溶解したものである。複数の染料を組み合わせて用いる場合には、この染料濃度は用いる複数の染料の合計濃度である。この水溶液には、染色助剤が添加されていてもよく、例えば、染色助剤として芒硝を用いる場合、その使用量は、水100重量部に対して 0.1〜10重量部程度である。この水溶液の温度は高いほど好ましく、例えば、68〜80℃程度、さらには70〜80℃程度が好ましい。染色温度が高すぎるとフィルムが溶解するため、連続処理可能な上限温度が存在する。
【0061】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸は、二色性染料の水溶液への浸漬処理の前に行ってもよいし、浸漬処理しながら行ってもよく、また浸漬処理後に行ってもよい。延伸は通常、一軸延伸によって行われる。一軸延伸する方法は特に限定されず、湿式延伸、乾式延伸のいずれでもよい。延伸倍率は、通常4倍以上、好ましくは8倍以下である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾式で一軸延伸するには、通常と同様に、例えば、フィルムに後方張力を付与しつつ、駆動する加熱ロールに接触させて縦一軸に配向させる方法、一対の加熱ロール間を通過させて圧縮延伸する方法などが用いられる。加熱ロールの温度は、ポリビニルアルコール系樹脂のガラス転移温度以上であって、通常は160℃以下、好ましくは80〜130℃程度である。
【0062】
このようにして、二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常その後、ホウ酸処理が施される。ホウ酸処理は、ホウ酸含有水溶液にこのフィルムを浸漬することにより行われ、この水溶液中のホウ酸濃度は特に限定されないが、通常は、水100重量部に対して、ホウ酸を2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度の割合で溶解させた水溶液が用いられる。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常60〜85℃程度、好ましくは65〜75℃程度である。処理時間は特に限定されないが、通常は 100〜1,200秒、好ましくは150〜600秒程度である。ホウ酸処理後、通常と同様に水洗、乾燥することにより、二色性染料が吸着配向された偏光フィルムが得られる。
【0063】
以上のようにして製造され、二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、その少なくとも片面に保護フィルムを貼合して偏光板とすることができる。保護フィルムとしては、通常の偏光板に用いられるのと同様のもの、例えば、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィンのフィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリエーテルサルフォン系フィルムなどを用いることができる。セルロースアセテート系フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルムなどが挙げられる。保護フィルムの厚みは特に限定されるものでないが、通常は40〜200μm 程度である。
【0064】
これらの保護フィルムは、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。保護フィルムとして、市販品を用いることもできる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、例えば、 “コニカ KC80UVSF”や“コニカ KC80UVN”〔いずれもコニカ(株)製〕などが挙げられる。
【0065】
偏光板ないしそれを構成する偏光フィルムの単体透過率と偏光度は、それぞれ高いほど好ましい。そこで、単体透過率は、37%以上、さらには38%以上であるのが好ましく、また偏光度は、99.3%以上、さらには99.8%以上であるのが好ましい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。なお、任意波長λにおける透過率T(λ)は、分光光度計〔 (株)島津製作所製の“UV−2200”〕を用いて測定した。また、例中にある部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0067】
実施例1
水100部あたり、C.I.ダイレクト・オレンジ39を0.020部 、前記式(I−16)に相当する染料のナトリウム塩を0.028部 、前記式(II−5)に相当する染料のナトリウム塩を0.013部、及び芒硝を2.0部溶かして、染色浴を調製した。ここで用いた染料の極大吸収波長(λmax :水中)は、それぞれ次のとおりである。
【0068】
C.I.ダイレクト・オレンジ39:約440nm、
式(I−16)の染料:約610nm、
式(II−5)の染料:約550nm。
【0069】
重合度2,400のポリビニルアルコールからなる厚み75μmのフィルムを、そのフィルムに後方張力を付与しつつ、駆動する加熱ロールに約120℃で接触させて縦一軸に配向させる方法で、約5倍に一軸延伸した。延伸後のフィルムを60℃の温水に60秒間浸漬した後、上で調製した染色浴に72℃で105秒間浸漬して染色した。次いで染色後のフィルムを、水100部及びホウ酸 7.5部からなる72℃の水溶液に5分間浸漬した。さらに水洗及び乾燥を施して、偏光フィルムを得た。
【0070】
得られた偏光フィルムの単体透過率は38.9%、偏光度は99.9%であり、平行色相の色相角度Hは132度、平行色相の彩度Cは4.8であり、また、直交色相の彩度Cは0.4であった。この偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロースフィルムを貼合して、偏光板とした。この偏光板を透過型TFT液晶表示装置の上下面にセットしたところ、画面の色再現性は良好であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明により、平行色相の色相角度と彩度を特定範囲とした偏光フィルムは、特に透過型TFT液晶表示装置に用いた場合に、色再現性を改良することができる。この偏光フィルムは、特にカーナビゲーションシステムなどの車戴用途に好適に用いられる。

Claims (2)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性染料が吸着配向されてなる偏光フィルムであって、平行色相を(a,b)の色度座標上で表したときに、色相角度Hが105度〜150度の範囲にあり、かつ、彩度C が7以下であることを特徴とする偏光フィルム。
  2. 直交色相を(a,b)の色度座標上で表したときの彩度C が3以下である請求項1記載の偏光フィルム。
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