JP2004251932A - トナー及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、
示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法に用いられるトナー及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて直接的あるいは間接的手段を用い、紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧、或いは溶剤蒸気により定着し、定着画像を得るものである。また、トナー画像を転写する工程を有する場合には、通常、感光体上の転写残余のトナーを除去するための工程が設けられ、上述の工程が繰り返される。
【0003】
ところで、近年、電子写真画像の更なる高画質化や高解像度化の要求に伴って、トナーの小粒径化や高機能化が求められる中、重合法によるトナーの製造方法が注目されている。重合法によるトナーの製造方法としては、結着樹脂の原材料である重合性単量体中に着色剤、更に必要に応じて、重合開始剤、分散剤、架橋剤、荷電制御剤、離型剤、極性樹脂、その他の添加剤を溶解もしくは分散せしめて重合性単量体組成物を調製し、得られた重合性単量体組成物を予め調製しておいた分散安定剤を含有する水系分散媒体に投入し、撹拌装置の使用により微粒子状の粒子を造粒し、その後、この造粒粒子中の重合性単量体を重合させて粒子を固化し、濾過、洗浄、乾燥を施して所望の粒径と組成を有するトナー粒子を得ている。
【0004】
上記の重合法を利用したトナーは、優れた画質の画像を得られる小粒径のトナーであり、且つ、粒度分布がシャープであるため、画像形成装置とのマッチングが優れたものになる。
【0005】
しかしながら、水系分散媒体中に形成した造粒粒子中の重合性単量体を重合させる懸濁重合法では、トナー中に存在するワックスの分散状態をコントロールすることが難しく、トナー表面などに多量に露出する場合には、トナーの帯電性に悪影響を与える。特にワックス成分が、重合性単量体に溶解しない場合にその傾向が顕著である。
【0006】
近年、上記の如き電子写真法を用いた画像形成装置の利用分野は、単にオリジナル原稿を複写するための複写機というだけでなく、コンピューターの出力としてのプリンター、或いは個人向けのパーソナルコピー、更には普通紙ファックス等へと急激に発展を遂げつつあり、多種多様な要求が高まっている。また、複写機についても、デジタル化による高機能化が進んでいる。特に、画像形成装置部分の小型化、高速化及びカラー化は著しく、更には高信頼性や高解像度に対しても強く要求されつつある。例えば、当初、200〜300dpi(dot per inch)であった解像度は400〜1200dpi、更には2400dpiとなりつつある。
【0007】
上記の如き要求に対し、画像形成装置は種々の点で機能性の高い部材を用いることで、より簡素な構成要素で設計されるようになってきている。その結果、トナーに要求される機能性もより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければ、より優れた画像形成装置が成り立たなくなってきているのが実状である。
【0008】
トナー画像を定着するための定着装置には、一般には回転加熱部材としての加熱ローラーと、回転加圧部材としての加圧ローラー(以下、両者を合わせて定着ローラーと称す)とを用いた熱ローラー方式の加熱定着手段が用いられているが、画像形成をより高速で行う場合には、高い加圧力を加えながら、瞬時に多くの熱エネルギーを必要とする。このため、定着装置の大型化や起動時の予熱時間が長く必要になるといった好ましくない事態を生じている。これらの観点より、上記の如き画像形成装置に用いられるトナーには、加熱時に高いシャープメルト性を呈することが好ましい。また、この様なトナーは低温定着性だけでなく、フルカラー画像形成時の混色性にも優れるため、得られる定着画像の色再現範囲を広げることも可能となっている。
【0009】
しかしながら、上記の如きトナーは、一般に定着ローラーとの親和性が高いため、定着時に定着ローラー表面に転移するオフセット現象を生じ易い傾向にある。
【0010】
このオフセット現象は定着温度が高すぎたり、低すぎる場合に発生しやすい。定着温度が高すぎると、トナー層の粘度が高くなりすぎ定着ローラー表面にトナー層が転移しやすく、定着温度が低すぎるとトナー層が溶融して転写材表面に溶け込めなかったり、トナー表面にワックス成分が染み出してこないため、ワックスの離型性としての効果が働かず、トナーが定着ローラー表面に転移しやすい。
【0011】
そのためトナーは一般に定着可能な温度範囲をもっている。実際の画像形成装置では使用時の環境温度や多数枚の連続プリントアウトによって、定着ローラー表面の温度は大きく変化する。従って、定着可能な温度範囲は広いほど好ましい。
【0012】
また、低温側で良好な定着をするトナーであっても、転写材上のトナー層が厚くなってくると低温側で定着画像表面に「画像剥れ」と称される直径2mm程度の定着不良が数箇所にわたって生じる。この現像は特に転写材上にイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーによる複数のトナー層が形成されるカラー画像形成時に顕著に発生する。
【0013】
これに対し、定着ローラー表面にトナーを付着させない目的で、例えば、定着ローラーの表面材質にシリコーンゴムやフッ素系樹脂の如きトナーに対して離型性の優れた材料を用いた上で、更にオフセット現象と定着ローラー表面の劣化を防止することを目的としてオフセット防止用液体の薄膜で定着ローラー表面を被覆することが行なわれている。
【0014】
しかしながら、上記の如き方法はオフセット現象を防止する点では極めて有効であるものの、(1)オフセット防止用液体を供給するための装置が必要なため、定着装置が複雑になり、小型で安価な画像形成装置を設計する上での阻害因子となっている;(2)塗布したオフセット防止用液体が加熱時に定着ローラー中に滲み込み、定着ローラーを構成している各層間の剥離を誘発し、結果的に定着ローラーの寿命を短かくしてしまう;(3)得られる定着画像にオフセット防止用液体が付着するため、ベタ付き感を生じたり、特にプレゼンテーション用としてオーバーヘッドプロジェクターに利用されるトランスペアレンシーフィルムを転写材とした場合には透明性が損なわれるため、所望の色再現性が得られない;(4)オフセット防止用液体が画像形成装置内を汚染する、等の弊害を生じてしまう。
【0015】
さらに転写されたトナーは一般に転写材上で帯電性を帯びており、定着工程に際し、加熱ローラー等との静電作用により定着される直前にトナーが飛び散る現象が見られる。これにより、現像工程で美しい画像を現像できたとしても、定着工程で画像の品質を損なう恐れがある。
【0016】
ところで、上記の如き画像形成装置に用いられる転写材も多様化している。例えば、転写材として用いられる紙の種類としては、その坪量の差のみならず、原材料や填料の材質や含有量が異なっているのが現状である。これらの転写材の中には、構成材料が脱離し易いものや定着装置の構成部材に付着し易いものが含まれていたりするなど、転写材の品質は様々である。これらの転写材から定着装置が受ける影響は大きく、定着装置の小型化や長寿命化を困難なものとしている。
【0017】
また、転写材由来の汚染物質とトナーとが塊状となって定着ローラー上に固着し、定着装置の性能低下を引き起こしたり、その固着物が剥がれることによって定着画像の品質を損なうといった問題が発生していた。
【0018】
具体的には、一度使用した紙を脱墨して得られる再生パルプを用いた再生紙が環境保護等の観点から広く使用されるようになってきている。しかし、再生紙には種々の夾雑物を含有することが多く、上記の如き画像形成装置での使用を可能とするためには再生紙中の夾雑物の含有量や構成を特定する必要がある(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照。)。
【0019】
現在、一般事務等で用いられる再生紙では、新聞古紙などの再生パルプの配合率が70%を超えており、今後益々その配合量は増えることが予想され、上記の如き問題の原因となることが懸念される。更に、加熱ローラーの表面に定着残余のトナー等を除去するためのクリーニング部材や、転写材の巻き付き防止用の分離部材が配設された場合には、特に新聞や雑誌の如き中質古紙を原料にした再生紙から脱離した紙粉中に含まれる中質系パルプ繊維によって定着ローラーの表面に傷や削れが発生したり、クリーニング部材や分離部材の機能が著しく低下することが確認されている。上記の如き現象は、定着ローラーへのオフセット防止用液体の塗布量が少ない定着装置、又はオフセット防止用液体の塗布がなされていない定着装置を用いた場合に重大な問題となる傾向にある。
【0020】
上記したように、定着装置の定着ローラーの表面にオフセット防止用液体を塗布することは非常に有用である反面、種々の問題点を有している。
【0021】
最近の小型化や軽量化といった画像形成装置に求められる要求や得られる定着画像の品質を考慮すると、オフセット防止用液体を塗布するための補助的装置すら除去することが好ましい。
【0022】
この様な状況下、トナーの加熱加圧定着に関する技術開発は必須となっており、これらに対していくつかの方策が提案されている。
【0023】
従来、オフセット防止用液体の供給装置を用いず、トナー中から加熱時にオフセット防止液体を供給しようという考えから、トナー中に低分子量のポリエチレンやポリプロピレンの如きワックス成分を添加する方法が多数提案されている。ところが、充分な効果を発現するためには上記の如きワックス成分をトナー中に多量に添加する必要があり、その場合、感光体へのフィルミングやキャリアやスリーブなどのトナー担持体の表面の汚染を生じ、画像劣化等の新たな問題を生じる。また、該ワックス成分の添加量を少量とした場合には、若干量のオフセット防止用液体を供給する装置、もしくは巻き取り式のクリーニングウェブやクリーニングパットの如き補助的なクリーニング部材を併設する必要を生じる。特にフルカラー画像形成時において、転写材としてトランスペアレンシーフィルムを用いた際にはワックス成分の高結晶化や結着樹脂との屈折率差の原因のため、定着画像の透明性やヘイズ(曇価)が悪化する問題は解消されないままとなっている。
【0024】
また、トナー中にワックス成分を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献6、7、8参照。)。しかし単にトナー中にワックス成分を含有せしめるだけでは、トナーに求められる諸特性を高度に向上することは困難であり、加熱加圧定着方法を用いた画像形成装置とのマッチングも十分なものとはならない。
【0025】
更に、2種類以上のワックスを添加することで定着性を改善しようとする試みをしている(例えば、特許文献9、10、11、12、13、14参照。)。確かにこれらの技術はある程度まで定着性を向上させることができるものの、ワックスの分散状態とトナーの帯電性には言及されておらず、また、画像剥れについても記載されていない。
【0026】
上記に挙げたように、加熱加圧定着方法を用いた画像形成装置のシステム設計について、現像方式までにも配慮した包括した統括的対応について未だ十分なものはない。
【0027】
【特許文献1】
特開平3−28789号公報
【特許文献2】
特開平4−65596号公報
【特許文献3】
特開平4−147152号公報
【特許文献4】
特開平5−100465号公報
【特許文献5】
特開平6−35221号公報
【特許文献6】
特開平1−109359号公報
【特許文献7】
特開平2−79860号公報
【特許文献8】
特開平3−50559号公報
【特許文献9】
特開平10−268559号公報
【特許文献10】
特開平10−20541号公報
【特許文献11】
特開平5−303232号公報
【特許文献12】
特開平10−268560号公報
【特許文献13】
特開平2000−3070号公報
【特許文献14】
特開平8−50367号公報
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、係る従来技術の問題点を解決したトナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0029】
即ち、本発明の目的は、画像剥れが発生しないトナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0030】
更に、本発明の目的は、定着温度において低温側から高温側にわたって定着性に優れ、定着温度のラチチュードが十分に広いトナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0031】
更に、本発明の目的は、定着時に発生する飛び散りの発生を抑制したトナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0032】
更に、本発明の目的は、多数枚のプリントアウト画像を出力しても画像濃度とカブリが良好なトナー、及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0033】
【発明が解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、
示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995であることを特徴とするトナーに関する。
【0034】
更に、本発明は、加熱加圧手段により転写材上のトナー画像を加熱加圧定着して転写材に定着画像を形成する画像形成方法であり、
前記加圧手段は、(i)少なくとも加熱体を有する回転加熱部材と、該回転加熱部材と相互圧接してニップ部を形成する回転加圧部材とを有し、(ii)転写材上のトナー画像との接触面に塗布されるオフセット防止用液体の消費量が0〜0.025mg/cm2(転写材の単位表面積基準)に設定されており、(iii)前記ニップ部で転写材上のトナー画像を加熱加圧するものであり、
該トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995であることを特徴とする画像形成方法に関する。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線に表れる吸熱ピークの特性及びトナー形状を特定することにより、極めて良好な定着特性を有し、画像形成装置とのマッチングに優れたトナーを発明するに至った。
【0036】
まず、トナーの構成上の特徴や素材について説明する。
【0037】
本発明のトナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995で構成されていることが必須である。
【0038】
上記条件を満足することによって、トナー中のワックスの分散性が向上し、良好な定着性を有すると共に画像濃度とカブリも良好なものとなる。通常のトナーはワックスの分散性を向上させると定着性は良好になるが、トナー表面のワックス存在量が増加するためワックスによるトナーの帯電性の悪化が起こる。しかし本発明のトナーは硫黄原子を有する重合体を添加することによって、トナー中のワックスの分散性は向上し、且つトナー表面のワックスの存在量が少なく、ワックスによるトナーの帯電性の悪化も防ぐことができる。そのため画像濃度とカブリも良好になる。つまり、本発明のトナーは定着性とトナーの帯電性を同時に満足することができるのである。
【0039】
本発明における吸熱ピークP1及びP2とは、昇温時のDSC曲線において温度55〜120℃の範囲に存在することが必須である。吸熱ピークP1は、エステルワックス由来のピークであり、低温側の定着性を良好なものとする。P1のピーク位置が55℃未満であったり、半値幅が10℃を超えると低温側での定着性が有効に働かなくなる。また、吸熱ピークP2は、炭化水素ワックス由来のピークであり、高温側の定着性を良好なものとする。P2のピーク位置が120℃を超えたり、半値幅が5〜25℃の範囲から外れると高温側の定着性が有効に働かなくなる。
【0040】
更に、P1とP2の吸熱ピークの強度比は0.1〜10の範囲でなければならない。吸熱ピークの強度比が0.1未満の場合、エステルワックスの効果が発揮できず低温側の定着性が劣る。また、吸熱ピークの強度比が10を超えると炭化水素ワックスの効果が発揮できず高温側の定着性が劣る。
【0041】
本発明におけるワックス又はトナーの示差走査熱量計によるDSC測定では、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7やTAインスツルメンツジャパン社製のDSC2920が利用できる。
【0042】
トナーやワックスの吸熱ピーク温度の測定は、「ASTM D 3418−8」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、1回180℃まで昇温させた後、温度0〜180℃の範囲で昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0043】
また、本発明における吸熱ピークの強度とは、上記DSCの測定方法を用いて、単位質量あたりのベースラインからピークトップまでの高さΔH(測定されたピークの高さを測定試料の質量で割った値mW/mg)を吸熱ピーク強度とする。
【0044】
本発明に好適に用いられるエステルワックスは、重量平均分子量(Mw)が350〜150のものである。Mwが350未満の場合、低温側での定着性が有効に働かず、1500を超える場合、バインダーへの分散性が劣り画像濃度やカブリが悪化する。
【0045】
エステルワックスを構成する好ましいエステル化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0046】
【化1】
〔式中a及びbは0〜4の整数であり、a+bは4であり、R1及びR2は炭素数が1〜40迄の整数を有する有機基であり、R1とR2との炭素数の差が3以上であり、m及びnは0〜25迄の整数であり、mとnが同時に0になることはない。〕
【0047】
【化2】
〔式中、aは0〜4の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは4であり、R1は炭素数が1〜40迄の整数を有する有機基であり、m及びnは0〜25迄の整数であり、mとnが同時に0になることはない。〕
【0048】
【化3】
〔式中、a及びbは0〜3の整数であり、a+bは1〜3であり、R1及びR2は炭素数が1〜40迄の整数を有する有機基であり、R1とR2との炭素数の差が3以上であり、R3は水素原子又は炭素数が1以上の有機基であり(但し、a+bが2のとき、R3のどちらか一方は、炭素数が1以上の有機基である)、kは1〜3の整数であり、m及びnは0〜25の整数であり、mとnが同時に0になることはない。〕
【0049】
具体的なエステル化合物を以下に例示する。
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
本発明に用いられるエステルワックスの製造方法としては、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付加反応に代表されるエステル基導入反応等が用いられる。本発明に用いられるエステルワックスの特に好ましい製造方法は、原料の多様性、反応の容易さから以下に示す。カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法又は酸ハロゲン化物とアルコール化合物からの反応が特に好ましい。
【0055】
【化8】
〔式中、R3及びR4は有機基を示す〕
【0056】
上記のエステル平衡反応を生成系に移行させるため、大過剰のアルコールを用いるか、水との共沸が可能な芳香族有機溶剤中にてDean−Stark水分離器を用いて反応を行うのが好ましい。酸ハロゲン化合物を用い芳香族有機溶剤中にて副生する酸の受容物として塩基を添加し、エステルを合成しても良い。
【0057】
本発明に好適に使用できる炭化水素ワックスは重量平均分子量(Mw)が300〜4000のものである。Mwが300未満の場合、高温側での定着性が有効に働かず、Mwが4000を超える場合、バインダーへの分散性が悪化し、画像濃度の低下やカブリが悪化する。
【0058】
また本発明に用いる炭化水素ワックスは、20℃のスチレンへの溶解性が5〜60質量%であることが好ましい。溶解度が5質量%未満の場合、バインダーへの分散性は悪化し、画像濃度やカブリが悪化する傾向がある。また、溶解度が60質量%を超えると炭化水素ワックスがバインダー中に溶解しすぎるため炭化水素ワックスとしての性能を十分に発揮することが出来ない。本発明における溶解度とは、25℃のスチレンへ大過剰の炭化水素ワックスを添加し、1時間激しく撹拌した後、溶解しなかった炭化水素ワックスをろ別し、質量を測定することで溶解度を算出する。
【0059】
本発明に使用できる炭化水素ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0060】
これらの中でも、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスを使用した場合に、現像性や転写性の改善効果が更に高くなる。なお、これらのワックス成分には、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。また、これらのワックス成分は、結着樹脂100質量部に対して0.5〜30質量部使用するのが好ましい。
【0061】
本発明のトナーには、硫黄原子を有する重合体を添加することが必須である。硫黄原子を有する重合体の中でも、特にスルホン酸基を有する重合体を用いることが好ましい。スルホン酸基を有する重合体をトナーに添加することで、バインダー中のワックスの分散状態が良好になり、低温側と高温側の定着性が飛躍的に向上すると共にワックスによる帯電性の悪化を防ぐことができる。更にはスルホン酸基の持つ極性により、トナーの帯電性も良好なものとなるため、定着時に発生する飛び散りが十分に抑制できる共に画像濃度やカブリも良好になる。
【0062】
本発明に用いられるスルホン酸基を有する重合体としては、側鎖にスルホン酸基を有する高分子型化合物等が挙げられ、特にスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有し、且つガラス転移温度(Tg)が40〜90℃のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる高分子型化合物を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい帯電特性を享受することができる。
【0063】
上記のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、下記一般式(1)で表せるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパン酸等が挙げられる。
【0064】
【化9】
[上記一般式(1)中、R1は水素原子、又はメチル基を示し、R1とR3は、それぞれ水素原子、C1〜C10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシ基を示し、nは1〜10の整数を示す。]
【0065】
本発明のトナーは、定着性やトナーの帯電性を良好にするうえで、良好な平均円形度を有することが必須である。
【0066】
本発明のトナーでは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、該トナーの平均円形度が0.960〜0.995となるようにトナーの粒子形状を精密に制御することにより、トナー中に存在状態するワックスの分散状態が一層良好なものとなる。この理由については必ずしも明確ではないが、本発明者等は、トナーの粒子形状が上記の如く制御されていることによってトナー表面形状もより均一な状態になる為、ワックスがトナー表面に適度に存在し、トナーの粉体特性を悪化させることなく、定着特性と帯電特性のバランスをとることができるが出来るのだと考えている。
【0067】
即ち、トナーの円形度頻度分布の平均円形度を0.960〜0.995とすることにより、従来では困難であった定着性と帯電性の両立を達成することができる。特に上記の如き傾向は、デジタル方式の微小スポット潜像を現像する場合や中間転写体を用い多数回の転写を行うフルカラーの画像形成の際に非常に有効で、画像形成装置とのマッチングも良好なものとなる。
【0068】
トナーを後述する重合法で製造する場合、トナーの平均円形度が0.960未満の場合、定着時の飛び散りが悪化し、0.995を超える状態ではトナー表面へのワックスの染み出しも少ないため、定着画像の画像剥れが悪化する。
【0069】
上記の如きトナー平均円形度についての制御は、重合法によるトナーの製造する場合、造粒工程から重合工程に至る重合反応時の水系分散媒体のpHによって可能である。
【0070】
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下式(a)により求める。更に下式(b)で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0071】
【数1】
【0072】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子影像投の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
【0073】
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満…0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。
【0074】
この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いている。
【0075】
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0076】
本発明における粒度分布の分割点は、下表に示されるとおりである。
【0077】
【表1】
【0078】
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として直径5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。
【0079】
トナーの形状測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、トナーの円相当径や円形度頻度分布などを求める。
【0080】
本発明のトナーに用いられるトナーの結着樹脂としては、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分が1〜40質量%の場合、定着性に関してトナーに望ましい特性を付与することが出来る。
【0081】
すなわち、THFの不溶成分が1質量%未満の場合、トナーが柔らかくなりすぎて、後述する画像形成装置において定着時に加熱ローラーやエンドレスフィルムとのマッチングが悪化し、加熱ローラーやエンドレスフィルムの表面がトナーで汚染される恐れがある。また、THF不溶成分が40質量%を超える場合には、トナーは硬くなりすぎるため定着時にワックスが染み出しにくく画像剥れが悪化する。
【0082】
本発明において結着樹脂のTHF不溶分とは、トナー粒子中の樹脂組成物のTHF(テトラヒドロフラン)に対して不溶性となった樹脂成分の質量割合を示し、架橋成分を含む樹脂組成物の架橋の程度を示す目安となるが、THF不溶分が0質量%であっても必ずしも架橋していないという訳ではない。THF不溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
【0083】
即ち、本発明のトナーの場合には顔料の含有率を、予め公知の方法で測定しておく。次に、トナー0.5〜1.0gの一定量を秤量し(W1g)、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF100〜200mlを用いて20時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、50℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。そして、該トナー一定量中に含まれている顔料のうち、THFに可溶な成分の質量をW3g、THFに不溶な成分の質量をW4gとすると、以下の式に従って樹脂組成物中のTHF不溶分が算出される。
【0084】
【数2】
【0085】
本発明に用いられるトナーの結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂が好ましいが、以下に挙げる樹脂を用いたり、併用することもできる。例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ベヘニル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン,イソプレン,シクロヘキセン,(メタ)アクリロニトリル,アクリル酸アミドの如きエン系単量体が好ましく用いられる。
【0086】
これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−P139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーの定着点の上昇をもたらす。
【0087】
さらに、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めるために結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることが好ましい。
【0088】
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0089】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビズ(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0090】
これらの架橋剤は、前記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部用いることが良い。
【0091】
本発明のトナーにはオキシカルボン酸を添加することでワックスによる帯電性の悪化を防ぐことができ、定着時の飛び散りを抑制することができる。
【0092】
本発明に係るオキシカルボン酸としては、公知のものを用いることが可能であるが、帯電付与能力の観点から下記式(2)又は(3)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0093】
【化10】
〔上記式(2)中、(A)は下記の群より選ばれ、X1は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムを示す。〕
【0094】
【化11】
(R1は、水素原子、又は、C1〜C18のアルキル基又はアルケニル基、アラルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる1つ又は2つ以上の置換基を示す。)
【0095】
【化12】
(R2は、水素原子、又はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基から選ばれる1つ又は2つ以上の置換基を示す。)
【0096】
【化13】
(R3は、水素原子又はC1〜C22のアルキル基又は、C2〜C22のアルケニル基を示す。)
【0097】
【化14】
〔上記式(3)中、X2は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムを示し、R4は、C1〜C22のアルキル基、C2〜C22のアルケニル基又はアリール基を示し、R5は、水素原子、C1〜C22のアルキル基、C2〜C22のアルケニル基、アリール基又はアルコキシ基を示す。〕
【0098】
上記式(2)や式(3)で示されるオキシカルボン酸の中でも、本発明に好ましく用いられるものとしては、芳香族環を有するオキシカルボン酸である。5−tert−オクチルサリチル酸の如きモノアルキル芳香族オキシカルボン酸及びジ−tert−ブチルサリチル酸の如きジアルキル芳香族オキシカルボン酸が挙げられる。その他にも、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸、ベンジル酸が挙げられる。これらの化合物は、トナー表面への固定化が容易であるため、本発明に好ましく用いられる。
【0099】
以下に代表的な具体化合物を列挙する。
【0100】
【化15】
【0101】
【化16】
【0102】
【化17】
【0103】
【化18】
【0104】
本発明においては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の如き極性を有する樹脂(以下、「極性樹脂」と称す)を併用することができる。トナー中のワックスの分散状態を良好にすることが容易となる。例えば、後述する懸濁重合法により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に上記の如き極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように制御することができる。この時、ワックスはトナー表面に適度に存在するため、定着性と帯電性のバランスがとれる。特に酸価が1〜20mgKOH/gを呈する極性樹脂を用いるとワックスの分散状態を制御することが容易となる。
【0105】
上記極性樹脂の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜25質量部使用するのが好ましく、より好ましくは2〜15質量部である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一になったり、トナー表面に露出するワックスが多くなり、トナーの耐久性の低下や帯電特性においてワックスの悪影響を受ける。逆に25質量部を超えるとトナー粒子表面に形成される極性樹脂の薄層が厚くなるため、トナー内部にワックスが偏在しやすい。また、何れの場合もワックスの分散状態を抑制するのが困難になり、オキシカルボン酸の含有状態を制御するのが困難になり、その機能を十分に発現することができない。
【0106】
係る極性樹脂として用いられる代表的なポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
【0107】
ポリエステル樹脂のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(ア)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(イ)式で示されるジオール類が挙げられる。
【0108】
【化19】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
【0109】
【化20】
【0110】
また、極性樹脂として反応性ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂を用いた場合には、トナーの帯電特性が向上し、カブリや飛び散りが改善されると共に、ドット再現性に優れる高品位な画像を得ることができる。また、トナー粒子に適度な機械的強度を付与することが可能となり、画像形成装置から受けるトナー劣化の影響を最小限にとどめ、多数枚プリントアウトに対する耐久性も向上する。更には、前述の如きトナーの形状分布を達成するためのトナーの球形化処理や重合法によってトナーを直接製造する際の乾燥処理等のトナー製造工程から受ける影響を最小限とすることができる。また、極性樹脂は2種類以上を組み合わせて用いることも可能で、それ自身の有する帯電性を利用することもできる。
【0111】
本発明に係わる反応性ポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、チオジグリコール酸、ジグリコール酸、マロン酸、グルタン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸の如き多塩基酸と;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き多価アルコール類とを縮合重合したものであって、得られた縮合重合体の主鎖又は側鎖に反応性基を有するものである。反応性基としては、カルボン酸(又はその塩)、スルホン酸(又はその塩)、エチレンイミノ酸、エポキシ基、イソシアネート基、二重結合、酸無水物、ハロゲン原子が挙げられ、この反応性ポリエステル樹脂をお互いに反応させて、あるいは多官能性の架橋剤(例えば多価アルコール、多塩基酸など)と反応させて、さらに反応性ポリエステルとビニル系単量体を反応(例えばエステル化、共重合など)させてTHF不溶分を得ることができる。例えば重合法によりトナーを得る場合には、反応性ポリエステル樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用い、これとビニル系単量体(必要に応じてジビニルベンゼン等の架橋剤も含む)を共重合する。この場合には、極性を有する不飽和ポリエステル樹脂は、重合の進行と共にトナー表面付近に移行し、トナー粒子の表面に薄層を形成するため、耐ブロッキング性や耐オフセット性が特に優れたトナーを得ることが可能である。
【0112】
本発明で使用できる反応性ポリエステル樹脂は、前述の如き反応性基を含有していればどんなものでも使用可能であるが、あまり分子量が低すぎると架橋反応にあずからないポリエステル樹脂がトナー表面に存在してしまうことがあり、耐ブロッキング性が低下することがある。逆に、あまり高分子量であると、例えば重合法によりトナーを得る場合には、ビニル系単量体への該反応性ポリエステル樹脂の溶解が困難となるため、製造が困難となる。従って、反応性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、3,000〜100,000の範囲にあるものが特に性能の優れたトナーを得るのに好適である。
【0113】
一方、ポリカーボネート樹脂としては、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を分子構造中に有するポリカーボネート樹脂が好ましく用いられる。
【0114】
【化21】
〔式中、Rは有機基を示す。〕
【0115】
上記一般式(I)は様々な構造のものがあるが、例えば2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法で反応せしめて製造されるあらゆる公知のポリカーボネートを使用することができる。一例を挙げれば下記一般式(II)
【0116】
【化22】
〔式中、R2は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基であり、このR2が複数の場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよく、mは0〜4であり、Zは単結合、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、−S−、−SO−、SO2−、−O−、−CO−結合で表わされる結合を示す。〕
で表わされる構造の繰返し単位を有する重合体などが挙げられる。
【0117】
本発明において用いられるポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限されないが、GPCにおいて測定したピーク分子量が1000〜500000の範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは2000〜100000である。ピーク分子量が1000よりも低いと帯電特性に悪影響がでる場合があり、500000よりも高いと溶融粘度が高くなりすぎ、定着性に問題を生じる場合がある。また、本発明において使用されるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、適当な分子量調節剤、粘弾性改善のための分岐剤、反応を促進するための触媒等必要に応じて使用することができる。
【0118】
また、上記の如き極性樹脂はそれぞれ一種類の重合体に限定されるわけではなく、例えば反応性ポリエステル樹脂を同時に二種類以上用いることや、ビニル系重合体を二種類以上用いることが可能であり、さらに全く種類の異なる重合体、例えば反応性の無いポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキルビニルケトン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリルエステル、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタンの如き重合体を必要に応じてバインダー樹脂に添加することができる。
【0119】
本発明には、公知の荷電制御剤を添加することで帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持することが可能である。トナー粒子を直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が無く水系分散媒体への可溶化物の無い荷電制御剤が好ましい。具体的化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物;スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリークスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩;該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物が挙げられる。
【0120】
しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではない。例えば二成分現像方法を用いた場合においては、キャリアとの摩擦帯電を利用し、また、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法を用いた場合においては、ブレード部材やスリーブ部材との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー粒子中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0121】
本発明に用いられる黒色着色剤としてはカーボンブラックや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0122】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。
【0123】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アンスラキノン,キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、31、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、269が特に好ましい。
【0124】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アンスラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0125】
これらの着色剤は、単独または混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHPフィルム上の透明性,トナー粒子中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部当り10〜20質量部で一般に用いられる。
【0126】
本発明のトナーを懸濁重合法で製造する場合、水系分散媒体を調製する場合に使用する分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。具体的には、無機系の分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンを用いることができる。
【0127】
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムを用いることができる。
【0128】
本発明のトナーの製造においては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いるとよい。また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤が重合性ビニル系単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部となるような割合で使用することが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して100〜3,000質量部の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
【0129】
本発明において、上記したような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水等の液媒体中で、高速撹拌下、上記したような難水溶性無機分散剤を生成させて調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散剤を得ることができる。
【0130】
上記したようなトナーの製造方法によれば、従来、荷電制御剤が含有されたトナーにみられていた高湿下での摩擦帯電量の低下、及び低湿下での摩擦帯電速度の低下が抑制され、しかもトナー担持体等に対する汚染性が抑制されたトナーが容易に得られる。
【0131】
また、本発明のトナーの製造に用いる重合開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤が用いられる。これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して5〜20質量部用いられる。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0132】
重合性単量体組成物中には、重合度を制御するため、公知の架橋剤、連鎖移動剤及び重合禁止剤等を更に添加し用いてもよい。これらの添加剤は、前記重合性単量体組成物中に予め添加しておくこともできるし、また、必要に応じて、重合反応の途中で適宜に添加することもできる。
【0133】
本発明のトナーに無機微粉体を添加することは、現像性、転写性、帯電安定性、流動性及び耐久性向上のために好ましい実施形態である。該無機微粉体としては公知のものが使用可能であるが、シリカ、アルミナ、チタニアあるいはその複酸化物の中から選ばれることが好ましい。中でも、シリカであることがより好ましい。シリカは硅素ハロゲン化物やアルコキシドの蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及びアルコキシド、水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO3 2−等の製造残渣の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物を硅素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0134】
本発明に用いられる無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好な結果を与え、トナー100質量部に対して0.3〜8質量部使用され、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0135】
上記の如きBET比表面積が制御された無機微粉末を、添加することでトナー表面に露出したワックス成分を適度に被覆し、帯電特性におけるワックス成分による悪影響を抑制することが可能となる。
【0136】
更に、トナーに適度な流動性が付与されるので、トナーの均一帯電性が相乗的に良化し、連続で多数枚プリントアウトを繰り返しても優れた効果が維持される。
【0137】
BET比表面積が30m2/g未満の場合には、トナーに適度な流動性を付与することが困難である。BET比表面積が400m2/gを超える場合には、連続プリントアウト時に該無機微粉末がトナー粒子表面に埋め込まれるために、トナーの流動性が低下する場合がある。
【0138】
比表面積の測定は、比表面積測定装置「オートソーブ1」(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法により比表面積を算出した。
【0139】
また、無機微粉末の添加量がトナー粒子100質量部に対して、0.3質量部未満の場合には、添加効果が発現されず、また、8質量部を超えると、トナーの帯電性や定着性に問題を生じるだけでなく、遊離した無機微粉体により画像形成装置とのマッチングが著しく悪化する。
【0140】
また、本発明に用いられる無機微粉体は、必要に応じ、疎水化、帯電性制御等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤で、あるいは、種々の処理剤を併用して処理されていることも可能であり好ましい。
【0141】
更に、高い帯電量を維持し、低消費量及び高転写率を達成するためには、無機微粉体は少なくともシリコーンオイルで処理されることが好ましい。
【0142】
本発明のトナーにおいては、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤;ケーキング防止剤、あるいは例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤、また、逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0143】
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として或いは、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【0144】
二成分系現像剤として用いる場合、例えば、トナーと混合させる磁性キャリアとしては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムより選ばれる元素を単独で、又は複数含有するフェライト状態で構成される。磁性キャリアの形状は、球状、扁平、不定形のいずれも用いることができ、更に、表面状態の微細構造(例えば、表面凹凸性)を適宜に制御したものを用いることもできる。また、表面を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアや磁性粉分散型樹脂キャリアも好適に用いることができる。使用するキャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、これらのキャリアとトナーを混合して二成分系現像剤を調製する場合の現像剤中のトナー濃度は、好ましくは2〜15質量%程度である。
【0145】
次に本発明に好適に用いられる画像形成方法について説明する。
【0146】
本発明の画像形成方法において「加熱加圧手段」とは、転写材上のトナー画像を加熱加圧定着して定着画像を形成するものであり、前記加熱加圧手段は、(i)少なくとも加熱体を有する回転加熱部材と、該回転加熱部材と相互圧接してニップ部を形成する回転加圧部材とを有し、(ii)転写材上のトナー画像との接触面に塗布されるオフセット防止用液体の消費量が0〜0.025mg/cm2(転写材の単位面積基準)に設定されており、(iii)前記ニップ部で転写材を挟持搬送しながら、前記回転加熱部材と回転加圧部材によって転写材上のトナー画像を加熱加圧するものである。
【0147】
上記加熱加圧手段の一部を構成する「回転加熱部材」とは、転写材上のトナー画像を定着するための熱を付与するためのものであって、後述する▲1▼熱ローラー方式の加熱加圧手段に用いられ、トナー画像に熱を付与するための加熱体を内部に有する円筒状部材;▲2▼フィルム方式の加熱加圧手段に用いられ、トナー画像に熱を付与するための支持体に固定支持させた加熱体を内部に有し、該加熱体に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム状部材;▲3▼電磁誘導方式の加熱加圧手段に用いられ、内部に磁界発生手段を有し、該磁界発生手段の作用で電磁誘導発熱することによってトナー画像に熱を付与するための発熱層を有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム状部材、等である。
【0148】
また、「回転加圧部材」とは、前記回転加熱部材と相互圧接してニップ部を形成し、該ニップ部で転写材を挟持搬送しながら転写材上のトナー画像を加熱加圧するものである。
【0149】
本発明の画像形成方法において、転写材上のトナー画像との接触面に塗布されるオフセット防止用液体の消費量は0〜0.025mg/cm2(転写材の単位面積基準)で、より好ましくは、オフセット防止用液体が全く塗布されない状態に設定される。これによって上記の如きオフセット防止用液体に起因する問題点を未然に解決することができると共に、本発明のトナーを用いることで上記の如き加熱加圧手段の性能を長期にわたって維持し、優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0150】
オフセット防止用液体の消費量の測定には、対象となる加熱加圧手段の最大通紙域に対応した一般事務用再生紙(再生パルプの配合率≧70%)を用い、該再生紙を100枚分通紙した際に消費されるオフセット防止用液体の質量(mg)を、用いた再生紙の総面積(cm2)で除した値(mg/cm2)をもって定義される。
【0151】
本発明に係るオフセット防止用液体としては、−15℃から300℃近くまで液状を保ち、離型性に優れるものが用いられる。具体的には、ジメチルシリコーンオイルやメチル基の一部分を他の置換基に置き換えた変性シリコーン、及びこれらを混合したものや界面活性剤を少量添加したもの等が挙げられ、粘度が1×10−4〜1×10−6m2/sのものが好ましく用いられる。
【0152】
上記の如きオフセット防止用液体の定着ローラーへの塗布方法としては、従来公知の方法が用いられ、塗布フェルト、フェルトパット、フェルトローラー、ウェブ、ポアフロンロッド等に染み込ませて塗布する方法やオイルパン、汲み上げローラー等により直接塗布する方法が挙げられる。
【0153】
本発明の画像形成方法に用いられる好適な加熱加圧手段を添付図面を参照しながら説明する。
【0154】
図2は、加熱体を内部に有する円筒状の加熱ローラーを回転加熱部材とし、該加熱ローラーの表面に、定着残余のトナーを除去するためのクリーニング部材と転写材の巻き付き防止用の分離部材が配設されていない、熱ローラー方式の加熱加圧手段の一例の概略図である。
【0155】
ヒーター11aの如き加熱体を内部に有する円筒状の加熱ローラー11からなる回転加熱部材と、回転加圧部材としての円筒状の加圧ローラー12とは、相互圧接してニップ部を形成し、作動時には各々は矢印の方向に回転する。
【0156】
未定着トナーTをトナー画像として担持した被加熱材としての転写材Pは、搬送ベルト13によって図面右方(上流側)より搬送され、加熱ローラー11と加圧ローラー12とのニップ部で転写材Pを挟持搬送しながら加熱加圧することによって、転写材P上に定着画像を形成し、図面左方(下流側)に排出される。
【0157】
また、本発明に係る加熱加圧手段では、図3(a)や(b)に示したような、転写材Pを加熱ローラー11や加圧ローラー12から分離するための分離爪14aや14bを有さない。
【0158】
さらに、図3(a)に図示したような、加熱ローラー11の表面の定着残余のトナーを除去しながらオフセット防止用液体の塗布を行うことを目的としたブラシ状繊維を円筒状に植設したクリーニングローラー15や、オフセット防止用液体を含浸させたフェルト状オイルパッド16、さらには、図3(b)に図示したような、オフセット防止用液体を含浸させたクリーニングローラー17を配設した場合には、転写材に対するオフセット防止用液体の消費量が0〜0.025mg/cm2の範囲となるように設定される。
【0159】
従来、オフセット防止用液体は加熱ローラーや加圧ローラーの表面保護の役割も兼ねていたため、オフセット防止用液体の消費量を上記の如き範囲に設定した場合には、その役割が十分なものとならず、長期使用によって加熱ローラー11や加圧ローラー12の表面に生じる傷や削れ、さらにはそれらに起因する離型性の低下等を生じ易い。このような状態の加熱加圧手段では、加熱ローラーや加圧ローラーへの転写材の巻き付き現象が発生し易く、上記の如き分離爪を排除した場合には重大な問題を生じるが、本発明のトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷が軽減され、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0160】
本発明に係る加熱加圧手段に用いられる加熱ローラー11には、例えば、厚み2〜5mm程度のアルミニウムのパイプを芯金とし、この外周面に厚み200〜500μmのシリコーンゴム、或はフッ素系樹脂をコーティングしたもの等が用いられる。
【0161】
また、加圧ローラー12としては、例えば、直径10mmのSUSのパイプを芯金とし、その外周面にシリコーンゴムを厚み3mm程度で被覆したものが用いられる。
【0162】
加熱ローラー11の内部に設けられたヒーター11aには、ハロゲンランプなどの管状発熱ヒーターが用いられ、所定の電圧が印加されることによって発熱し、その輻射熱によって加熱ローラー11が加熱される。この際、加熱ローラー11やそれに圧接する加圧ローラー12は比較的緩やかに加熱されていくものの、一般にそれらの熱容量は大きいため、長時間にわたって加熱される場合が多く、加熱ローラー11や加圧ローラー12は熱劣化を受け易い。特に、再生紙を使用したり、オフセット防止用液体の塗布量が少ない場合には、加熱ローラー11や加圧ローラー12に傷や削れが発生し易いので、熱劣化が促進され、ローラー表面の離型性の低下に起因する問題を生じる。しかし、本発明のトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷が軽減され、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0163】
図4(a)は、支持体に固定支持させた加熱体を内部に有し、該加熱体に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムを回転加熱部材とし、該エンドレスフィルムを介してトナー画像を加熱加圧するフィルム方式の加熱加圧手段の一例の分解斜視図であり、図4(b)は、上記加熱加圧手段の要部の拡大横断面図である。
【0164】
支持体に固定支持させた加熱体31を内部に有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32からなる回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルム32を介して回転加圧部材としての円筒状の加圧ローラー33とは、相互圧接してニップ部を形成すると共に、作動時には矢印の方向に回転し、トナー画像を担持した被加熱体としての転写材を耐熱性エンドレスフィルム32に密着させて加熱体31に圧接し、耐熱性エンドレスフィルム32と共に移動駆動させる。
【0165】
固定支持された低熱容量線状加熱体31は、ヒータ基板31a、通電発熱抵抗体(発熱体)31b、表面保護層31c及び検温素子31d等よりなる。
【0166】
ヒータ基板31aには、耐熱性、絶縁性、低熱容量及び高熱伝導性を呈する部材が好ましく、例えば、厚み1mm、巾10mmで、長さ240mmのアルミナ基板である。
【0167】
発熱体31bは、ヒータ基板31aの下面(フィルム32との対面側)の略中央部に長手に沿って、例えば、Ag−Pd(銀パラジウム)、Ta2N,RuO2等の電気抵抗材料を厚み約10μm、巾1〜3mmの線状または細帯状にスクリーン印刷等により塗工し、その上に表面保護層31cとして耐熱ガラスを約10μmコートしたものである。
【0168】
検温素子31dは、例えば、ヒータ基板31aの上面(発熱体31bを設けた面とは反対側面)の略中央部にスクリーン印刷等により塗工して具備させたPt膜等の低熱容量の測温抵抗体である。尚、低熱容量のサーミスタ等による代用も可能である。
【0169】
加熱体31は、発熱体31bに対して画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電することで発熱体31bを略全長にわたって発熱させる。
【0170】
通電はAC100Vであり、検温素子31cの検知温度に応じてトライアックを含む通電制御回路(不図示)により通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
【0171】
加熱体31は、ヒータ基板31a、発熱体31b及び表面保護層31cの熱容量が小さいので、発熱体31bへの通電によって加熱体31の表面が所望の定着温度まで急速に温度上昇したり、未使用時には室温付近まで急冷するため、耐熱性エンドレスフィルム32や回転加圧部材としての加圧ローラー33に与える熱衝撃は大きく、離型性のものとなっているが、本発明のトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0172】
回転加熱部材と回転加圧部材との間に位置する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32には、耐熱性、強度確保、耐久性及び低熱容量の観点から、厚さ20〜100μmの単層、或いは複合層からなる耐熱性シートであることが好ましく、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルホン(PES)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリパラバン酸(PPA)、或いは複合層フィルム、例えば、厚さ20μmのポリイミドフィルムの少なくともトナー画像当接面側に4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、PAF、FEP等のフッ素樹脂やシリコーン樹脂等、さらにはそれにカーボンブラック、グラファイト、導電性ウイスカ等の導電材を添加した離型性コート層を厚み10μmに施したもの等が好ましい。
【0173】
また、回転加圧部材である加圧ローラー33は、上記の如き耐熱性エンドレスフィルム32を移動駆動させるための駆動ローラーを兼ねているので、トナー等に対する離型性に優れるだけでなく、耐熱性エンドレスフィルム32との密着性を有することが好ましく、例えば、シリコーンゴム等のゴム弾性体が用いられる。上述したように加圧ローラー33に加わる熱衝撃は大きく、長期使用による加圧ローラー33の表面劣化は上記の如き加熱加圧手段の駆動機能そのものにも影響を及ぼすが、本発明のトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0174】
図5は、内部に磁界発生手段を有し、該磁界発生手段の作用で電磁誘導発熱する発熱層を有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムからなる回転加熱部材を有する電磁誘導方式の加熱加圧手段の一例の模式図である。
【0175】
内部に、励磁コイル40、励磁コイル40が巻き付けられるコイル芯材(磁性体)42、及び励磁コイル40を支持しながら耐熱性エンドレスフィルム47の走行をガイドする滑板43からなる磁界発生手段を有し、該磁界発生手段に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム47からなる回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルム47を介して回転加圧部材としての円筒状の加圧ローラー48とは相互圧接してニップ部Nを形成すると共に、作動時には矢印の方向に回転し、トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pを耐熱性エンドレスフィルム47に密着させて磁界発生手段に圧接し、耐熱性エンドレスフィルム47と共に移動駆動させる。
【0176】
この時、上記磁界発生手段によって発生する磁界は、励磁回路(不図示)から10〜500kHzの周波数の交番電流が印加されることによって励磁コイル40の周囲に矢印で示した磁束Hが生成・消滅を繰り返す。この変動する磁界中を移動する耐熱性エンドレスフィルム47中の導電層(誘導磁性材)47bには、電磁誘導によってその磁界の変化を少なくするように矢印で示したような渦電流Aが発生する。この渦電流は導電層の表皮抵抗によってジュール熱に変換され、結果的に耐熱性エンドレスフィルム47中の導電層が発熱層となる。このように耐熱性エンドレスフィルム47の表層近くが直接発熱するので、フィルム基層の熱伝導率、熱容量、及び耐熱性エンドレスフィルムの厚さにも依存しない急速加熱が実現できる。
【0177】
トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pは、耐熱性エンドレスフィルム47に密着してニップ部Nを通過することによって、転写材P上に定着画像を得ることができる。
【0178】
本発明に係る加熱加圧手段に用いられる円筒状の耐熱性エンドレスフィルム47は、少なくともフィルム基層47a、導電層47b、及び表面層47cの3層からなるものが好ましく用いられ、例えば、厚み10〜100μmのポリイミド等の耐熱性樹脂をフィルム基層47aとし、その基層47aの外周面上(被加熱体圧接面側)に導電層47bを、例えばNi,Cu,Cr等の金属を厚み1〜100μmでメッキ等の処理によって形成している。さらにその導電層47bの自由面に、例えば、PFAやPTFE等のトナー離型の良好な耐熱性樹脂を混合、または単独で被覆して表面層47cを形成したものである。また、フィルム基層47aに導電層の役割を持たせ2層構成としてもよい。
【0179】
コイル芯材42は、例えば、フェライトパーマロイ等の高透磁率で残留磁束密度の低いもので形成されている。残留磁束密度の低い材質をコイル芯材42に用いることで、芯材自身に発生する過電流を抑制することができるので、コイル芯材42からの発熱がなくなり効率が上がる。また、高透磁率の材質を用いることによって、コイル芯材42が磁束Hの通り道になり、外部への磁束漏れを可能な限り抑えることができる。
【0180】
励磁コイル40は、導線(電線)として一本ずつが各々絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いたもので構成される。また、励磁コイルパターンをガラス入りエポキシ樹脂(汎用電気基板)やセラミック等の非磁性体の基板平面上に多層印刷したシートコイル基板を用いてもよい。
【0181】
滑板43は、液晶ポリマーやフェノール等の耐熱樹脂で構成され、耐熱性エンドレスフィルム47との対向面には耐熱性エンドレスフィルム47との摩擦抵抗を減少させるために、例えば、PFAやPTFE等の樹脂コート、もしくは滑り性に富むガラスコートが施されている。
【0182】
加圧ローラー48は、芯金の周囲にシリコーンゴムやフッ素ゴム等を巻いて構成される。この加圧ローラー48は、軸受手段と付勢手段(いずれも不図示)により所定の押圧力Fをもって耐熱性エンドレスフィルム47を介して滑板43の下面に圧接させて配設してあり、滑板43との間に耐熱性エンドレスフィルム47を挟持しながらニップ部Nを形成する。
【0183】
ニップ部Nでは、磁界発生手段によって発生する磁界が集中しているため、電磁誘導発熱によって耐熱性エンドレスフィルム47の表層付近が急速に直接発熱する。この結果、耐熱性エンドレスフィルム47の表面や加圧ローラー48には大きな熱衝撃が与えられ、トナー等に対する離型性や耐熱性エンドレスフィルム47との密着性が低下することになるが、後述するトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0184】
【実施例】
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0185】
実施例及び比較例で用いたワックスの内容を表2と表3に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
【表3】
【0188】
〔トナーの製造例1〕
四つ口容器中にイオン交換水360質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液430質量部を添加し、高速撹拌装置ホモミキサーを用いて15,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液34質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
【0189】
一方、分散質として、
スチレンモノマー 83質量部
n−ブチルアクリレート 17質量部
硫黄原子を有する重合体 0.5質量部
(アクリベースFCA−1001−NS:藤倉化成製)
銅フタロシアニン顔料 5質量部
オキシカルボン酸(2−A) 0.03質量部
ジビニルベンゼン 0.05質量部
エステルワックス(1) 5質量部
炭化水素ワックス(1) 2質量部
ポリエステル樹脂(Mw=25,000、酸価15mgKOH/g)5質量部
からなる混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し、重合性単量体組成物を調製した。
【0190】
次に、前記水系分散媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、内温60℃のN2雰囲気下で、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに維持しつつ、4分間撹拌し、該重合性単量体組成物を造粒した。その後、撹拌装置をパドル撹拌羽を具備したものに換え、200rpmで撹拌しながら同温度に保持し、5時間重合を行った。
【0191】
重合終了後、内温を80℃に昇温し、更に重合を行なった。次いで、冷却後に希塩酸を添加して水系分散媒体のpHを1.2にして難水溶性分散剤を溶解せしめた。更に加圧濾過による固液分離の後、18000質量部の水で洗浄を行った。その後、真空乾燥装置を用いて充分に乾燥させ、重量平均径が7.1μmのシアン色のトナー粒子を得た。
【0192】
次に上記重合体粒子100質量部と、疎水化処理をした平均長径30nmの酸化チタン及び疎水化処理をしたシリカ微粒子(比表面積120m2/g)をそれぞれ1.0質量部づつ乾式で添加し、トナー粒子に流動性を与えた。得られたトナーをトナー(A)とする。
【0193】
〔トナーの製造例2〕
トナーの製造例1において、オキシカルボン酸(2−A)の代わりにオキシカルボン酸(3−A)を0.03質量部添加することを除いて、トナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(B)とする。
【0194】
〔トナーの製造例3〕
トナーの製造例1において、オキシカルボン酸を添加しないことを除いて、トナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(C)とする。
【0195】
〔トナーの製造例4〕
トナーの製造例3において、ジビニルベンゼンの添加量を5質量部に変更することを除いて、トナーの製造例3と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(D)とする。
【0196】
〔トナーの製造例5〕
トナーの製造例3において、開始剤の添加量を10質量部に変更し、ジビニルベンゼンの添加量を添加せず、開始剤の添加量を10質量部に変更することを除いて、トナーの製造例3と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(E)とする。
【0197】
〔トナーの製造例6〕
ポリエステル樹脂 100質量部
(ポリオキシプロピレン(2、2)−2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
プロパンとフマル酸の縮重合体、Tg=60℃)
硫黄原子を有する重合体 0.5質量部
(アクリベースFCA−1001−NS:藤倉化成製)
銅フタロシアニン顔料 5質量部
エステルワックス(1) 5質量部
炭化水素ワックス(1) 2質量部
からなる混合物を熱混練し、冷却後粉砕し、球形化処理を行ない、分級して7.0μmのシアン色のトナー粒子をえた。
【0198】
次に上記重合体粒子100質量部と、疎水化処理をした平均長径30nmの酸化チタン及び疎水化処理をしたシリカ微粒子(比表面積120m2/g)をそれぞれ1.0質量部づつ乾式で添加し、トナー粒子に流動性を与えた。得られたトナーをトナー(F)とする。
【0199】
〔トナーの製造例7〕
トナーの製造例4において、炭化水素ワックス(1)の代わりに炭化水素ワックス(2)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例4と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(G)とする。
【0200】
〔トナーの製造例8〕
トナーの製造例4において、炭化水素ワックス(1)の代わりに炭化水素ワックス(3)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例4と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(H)とする。
【0201】
〔トナーの製造例9〕
トナーの製造例4において、炭化水素ワックス(1)の代わりに炭化水素ワックス(4)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例4と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(I)とする。
【0202】
〔トナーの製造例10〕
トナーの製造例9において、エステルワックス(1)の代わりエステルワックス(2)を5質量部添加することを除いてトナーの製造例9と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(J)とする。
【0203】
〔トナーの製造例11〕
トナーの製造例9において、エステルワックス(1)の代わりにエステルワックス(3)を5質量部添加することを除いてトナーの製造例9と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(K)とする。
【0204】
〔トナーの製造例12〕
トナーの製造例11において、炭化水素ワックス(4)の代わりに炭化水素ワックス(5)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例11と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(L)とする。
【0205】
〔トナーの製造例13〕
トナーの製造例11において、炭化水素ワックス(4)の代わりに炭化水素ワックス(6)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例11と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(M)とする。
【0206】
〔トナーの製造例14〕
トナーの製造例12において、エステルワックス(3)の代わりにエステルワックス(4)を5質量部添加することを除いてトナーの製造例12と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(N)とする。
【0207】
〔比較用トナーの製造例1〕
トナーの製造例1において、硫黄原子を有する重合体を添加しないことを除いて、トナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(a)とする。
【0208】
〔比較用トナーの製造例2〕
トナーの製造例1において、炭化水素ワックス(1)の添加量を0.2質量部に変更することを除いて、トナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(b)とする。
【0209】
〔比較用トナーの製造例3〕
トナーの製造例1において、エステルワックス(1)の添加量を0.25質量部に変更することを除いて、トナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(c)とする。
【0210】
〔比較用トナーの製造例4〕
トナーの製造例1において、エステルワックス(1)の代わりにエステルワックス(5)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(d)とする。
【0211】
〔比較用トナーの製造例5〕
トナーの製造例1において、炭化水素ワックス(1)の代わりに炭化水素ワックス(7)を2質量部添加することを除いてトナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーをトナー(e)とする。
【0212】
〔比較用トナーの製造例6〕
トナーの製造例1において、重合時にトルエンを30質量部添加し、重合終了後、乾燥工程でトルエンを除去することを除いてトナーの製造例1と同様にして製造した。得られたトナーは乾燥工程でトルエンを除去することにより、従来の懸濁重合法によって得られる球状粒子とは異なり、歪な形状であり、トナーの平均円形度も低い値となった。得られたトナーをトナー(f)とする。
【0213】
上記トナー(A)〜(N)及び(a)〜(f)について、DCSの測定を行い、P1とP2の吸熱ピーク特性、P1とP2の吸熱ピーク強度比を求めた。更に平均円形度及びTHF不溶分を表4に示す。なお、DSCの測定条件は前述した方法で行った。
【0214】
【表4】
【0215】
図1に示すような画像形成装置を用い、定着評価及び画像評価を行った。画像形成装置について、以下に説明する。
【0216】
図1は、非磁性一成分接触現像方式の電子写真プロセスを利用した、1200dpiレーザービームプリンタ(キヤノン製:LBP−840)改造機の概略図である。本実施例では以下の(a)〜(h)の部分を改造した装置を使用した。
(a)プロセススピードを200mm/sに変更。
(b)装置の帯電方式をゴムローラーを当接して行う直接帯電とし、印加電圧を直流成分(−1200V)とした。
(c)トナー担持体をカーボンブラックを分散したシリコーンゴムからなる中抵抗ゴムローラー(直径16mm、硬度ASKER−C45度、抵抗105Ω・cm)に変更し、感光体に当接した。
(d)該トナー担持体の回転周速は、感光体との接触部分において同方向であり、該感光体回転周速に対し140%となるように駆動した。
(e)感光体を以下のものに変更した。
【0217】
ここで用いる感光体としてはAlシリンダーを基体としたもので、これに以下に示すような構成の層を順次浸漬塗布により積層して、感光体を作製した。
・導電性被覆層:酸化錫及び酸化チタンの粉末をフェノール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚15μm。
・下引き層:変性ナイロン及び共重合ナイロンを主体とする。膜厚0.6μm。
・電荷発生層:長波長域に吸収を持つチタニルフタロシアニン顔料をブチラール樹脂に分散したものを主体とする。膜厚0.6μm。
・電荷輸送層:ホール搬送性トリフェニルアミン化合物をポリカーボネート樹脂(オストワルド粘度法による分子量2万)に8:10の質量比で溶解したものを主体とする。膜厚20μm。
(f)トナー担持体にトナーを塗布する手段として、現像器内に発泡ウレタンゴムからなる塗布ローラーを設け、該トナー担持体に当接させた。塗布ローラーには、約−550Vの電圧を印加する。
(g)該トナー担持体上トナーのコート層制御のために、樹脂をコートしたステンレス製ブレードを用いた。
(h)現像時の印加電圧をDC成分(−450V)のみとした。
【0218】
改造された装置はローラー帯電器(直流のみを印加)を用い像担持体を一様に帯電する。帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成し、トナーにより可視画像とした後に、電圧を+700V印加したローラーによりトナー像を転写材に転写するプロセスを持つ。
【0219】
感光体帯電電位は、暗部電位を−580Vとし、明部電位を−150Vとした。
【0220】
定着装置には、分離爪やオフセット防止用液体の塗布機構が配設されていない、図2に示した熱ローラー方式の加熱加圧手段を用いた。
【0221】
定着装置には、分離爪やオフセット防止用液体の塗布機構が配設されていない、図2に示した熱ローラー方式の加熱加圧手段を用いた。
【0222】
加熱ローラーには、アルミニウム製の円筒状の芯金をプライマー処理した後、ジメチルシリコーンゴムの弾性層、さらにプライマー層を介して厚さ50μmのPFA製チューブによる表面層を設けたものを用い、一方、加圧ローラーには、SUS製の芯金をプライマー処理した後、ジメチルシリコーンゴムの弾性層を設け、さらにプライマー層を介して厚さ50μmのPFAチューブにより表面層を設けたものを用いた。
【0223】
また、加圧ローラーの円筒状の芯金の内部には加圧体としてハロゲンヒーターを配設し、加熱ローラーと加圧ローラーには245N(25kgf)の当接圧を加え、幅5mmのニップ部が形成されるように設定した。なお、低温側と高温側の定着性評価以外は、定着ローラーの表面温度を170℃で固定して行った。
【0224】
以上の設定条件で、まず画像剥れ、低温側と高温側の定着性、定着時の飛び散り、及び加熱ローラーとのマッチングに関する評価を実施した。
【0225】
〔画像剥れ〕
やや厚めの転写紙(105g/m2、A4サイズ紙)にベタ画像(サイズ:2cm×5cm、トナーの載り量:0.8mg/cm2)をプリントアウトした際に画像上に発生した画像剥れの個数により評価した。
A:未発生
B:1箇所以上、5箇所以下
C:6箇所以上、10箇所以下
D:11箇所以上(或いは、直径2mm以上の画像剥れが発生)
【0226】
〔低温側での定着性〕
転写紙(75g/m2、A4サイズ紙)にベタ画像(トナーの載り量:0.6mg/cm2)の画像を定着温度を変えて(130〜175℃)で評価した。なお、定着温度は定着ローラー表面を非接触の温度計を用いて測定した値である。
A:130℃以上でオフセットせず
B:150℃以上でオフセットせず、150℃未満ではオフセット発生
C:170℃以上でオフセットせず、170℃未満ではオフセット発生
D:170℃以上でもオフセット発生
【0227】
〔高温側での定着性〕
転写紙(75g/m2、A4サイズ紙)にベタ画像(トナーの載り量:0.6mg/cm2)の画像を定着温度を変えて(175〜220℃)で評価した。なお、定着温度は定着ローラー表面を非接触の温度計を用いて測定した値である。
A:220℃以下でオフセットせず
B:200℃以下でオフセットせず、200℃を超えるとオフセット発生
C:180℃以下でオフセットせず、180℃を超えるとオフセット発生
D:180℃以下でもオフセット発生
【0228】
〔定着時の飛び散りの評価〕
定着時の飛び散りの評価は、図6に示すような縞状の潜像画像を形成し、定着後の画像について評価を行った。図6は、解像度600dpiにおける潜像部幅が4ドット(170μm)であり、非潜像部幅が10ドット(420μm)の潜像画像である。
A:良好な細線の定着状態を示す。
B:軽微な飛び散りが見られる。
C:細線の周囲に飛び散りが目立つ。
D:著しい飛び散りで細線が確認できず。
【0229】
〔加熱ローラーとのマッチング〕
画像印字率30%のベタ画像(トナーの載り量は0.6mg/cm2)の画像チャートを50枚連続でプリントアウトした後、加熱ローラー表面へのトナーの付着状態を目視にて評価した。
A:未発生。
B:わずかに固着が見られる。
C:固着や傷がある。
D:固着が多い。
【0230】
次に、定着評価において、全ての項目でC以上のレベルであったものについて、更に1万枚のプリントアウト画像評価を行い、初期、5千枚、1万枚の画像濃度及びカブリの評価を行った。
【0231】
〔画像濃度〕
初期、5千枚及び1万枚のプリントアウト試験終了後、ベタ部分の画像濃度により評価した。尚、画像濃度の測定は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
A:1.40以上
B:1.35以上、1.40未満
C:1.00以上、1.35未満
D:1.00未満
【0232】
〔カブリ〕
「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)にgreenフィルターをセットし、プリントアウト画像の非画像部の反射率(%)を測定する。得られた反射率を、同様にして測定した未使用のプリントアウト用紙(標準紙)の反射率(%)から差し引いた数値(%)を用いて評価した。数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。
A:0.5未満
B:0.5以上、1.0未満
C:1.0以上、5.0未満
D:5.0以上
【0233】
<実施例1>
上記評価方法によりトナー(A)について定着評価を行った。その結果、各項目において良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0234】
<実施例2>
実施例1と同様にしてトナー(B)について定着評価を行った。その結果、各項目において良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0235】
<実施例3>
実施例1と同様にしてトナー(C)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0236】
<実施例4>
実施例1と同様にしてトナー(D)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0237】
<実施例5>
実施例1と同様にしてトナー(E)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0238】
<実施例6>
実施例1と同様にしてトナー(F)について定着評価を行った結果、加熱ローラーとのマッチングが悪化したが問題ないレベルであった。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。
【0239】
<実施例7>
実施例1と同様にしてトナー(G)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、カブリが悪化したが問題のないレベルであった。
【0240】
<実施例8>
実施例1と同様にしてトナー(H)について定着評価を行った結果、高温側の定着性が悪化したが問題ないレベルであった。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、各項目において良好な結果が得られた。
【0241】
<実施例9>
実施例1と同様にしてトナー(I)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、カブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0242】
<実施例10>
実施例1と同様にしてトナー(J)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、画像濃度とカブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0243】
<実施例11>
実施例1と同様にしてトナー(K)について定着評価を行った結果、概ね良好な結果が得られた。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、画像濃度とカブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0244】
<実施例12>
実施例1と同様にしてトナー(L)について定着評価を行った結果、高温側での定着性が悪化したが問題ないレベルであった。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、画像濃度とカブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0245】
<実施例13>
実施例1と同様にしてトナー(M)について定着評価を行った結果、高温側での定着性が悪化したが問題ないレベルであった。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、画像濃度とカブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0246】
<実施例14>
実施例1と同様にしてトナー(N)について定着評価を行った結果、低温側及び高温側での定着性が悪化したが問題ないレベルであった。次に1万枚のプリントアウト画像評価を行った結果、画像濃度とカブリが悪化したが問題ないレベルであった。
【0247】
<比較例1>
実施例1と同様にしてトナー(a)について定着評価を行った結果、低温側と高温側の定着性、及び定着時の飛び散りが著しく悪化した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0248】
<比較例2>
実施例1と同様にしてトナー(b)について定着評価を行った結果、高温側での定着性が著しく悪化した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0249】
<比較例3>
実施例1と同様にしてトナー(c)について定着評価を行った結果、低温側での定着性が著しく悪化した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0250】
<比較例4>
実施例1と同様にしてトナー(d)について定着評価を行った結果、低温側の定着性の著しい悪化等が発生した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0251】
<比較例5>
実施例1と同様にしてトナー(e)について定着評価を行った結果、高温側の定着性の著しい悪化等が発生した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0252】
<比較例6>
実施例1と同様にしてトナー(f)について定着評価を行った結果、定着時の飛び散りが著しく悪化等が発生した。そのためプリントアウト画像の評価は実施しなかった。
【0253】
<実施例15>
実施例13で用いた加熱加圧手段の過熱ローラーに、オフセット防止用液体の塗布機能としてジメチルシリコーンオイルを含浸させたローラーを当接させ、転写材上のトナー画像との接触面に塗布されるオフセット防止用液体の消費量が0.015〜0.020mg/cm2となるように設定することを除いては、実施例13と同様にして評価を実施した。その結果、画像に若干の光沢が見られるものの、高温側での定着性に改善が見られた。
【0254】
<実施例16>
実施例15においてトナー(M)をトナー(N)に変更することを除いて、実施例15と同様にして評価を実施した。その結果、画像に若干の光沢が見られるものの、低温側及び高温側での定着性に改善が見られた。
【0255】
実施例1〜16及び比較例1〜6についての評価結果を表5に示す。
【0256】
【表5】
【0257】
<実施例17>
実施例1の評価用画像形成装置において、定着装置として分離爪やオフセット防止用液体の塗布機構が配設されていない図4に示したフィルム方式の加圧加熱手段を用いた。
【0258】
耐熱性エンドレスフィルムには、転写材との接触面にPTFEに導電性物質を分散させた低抵抗の離型層を有する厚さ60μmのポリイミドフィルムを用い、加圧ローラーにはSUS製の芯金をプライマー処理した後、ジメチルシリコーンゴムの発泡体の弾性層、更にプライマー層を介しながらジメチルシリコーンゴムの弾性層と厚さ20μmのPTFEの表面層を設けたものを用いた。
【0259】
また、耐熱性エンドレスフィルムの内部には、加熱体としてヒータ基板に発熱抵抗体をスクリーン印刷し、耐熱性の表面保護層を設けた低熱容量線状加熱体を配設し、耐熱性エンドレスフィルムを介して上記加熱体と加圧ローラーには96N(10kgf)の当接圧を加え、幅5mmのニップ部が形成されるように設定した。なお、低温側と高温側の定着性評価以外は、エンドレスフィルムの表面温度を170℃で固定して行った。
【0260】
この加熱加圧手段を用いてトナー(A)について、画像剥れ、低温側と高温側での定着性、定着飛び散り、及び耐熱性エンドレスフィルムとのマッチングの評価を行った。その結果概ね良好な結果となった。評価結果を表6に示す。
【0261】
画像剥れ、低温側と高温側での定着性、定着時の飛び散りについての評価方法は実施例1と同様にして行った。また、耐熱性エンドレスフィルムとのマッチングは以下の評価方法で実施された。実施例18と19、及び比較例7と8についても同様に行った。
【0262】
〔耐熱性エンドレスフィルムとのマッチング〕
画像印字率30%のベタ画像(トナーの載り量は0.6mg/cm2)の画像チャートを50枚連続でプリントアウトした後、エンドレスフィルム表面へのトナーの付着状態を目視にて評価した。
A:未発生
B:わずかに固着が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
【0263】
<実施例18>
実施例17と同様にしてトナー(D)について定着評価を行った。その結果、各項目において概ね良好な結果が得られた。
【0264】
<実施例19>
実施例17と同様にしてトナー(M)について定着評価を行った。その結果、定着性は悪化しているが問題ないレベルであった。
【0265】
<比較例7>
実施例17と同様にしてトナー(a)について定着評価を行った。その結果、低温側と高温側の定着性、及び定着時の飛び散りが著しく悪化した。
【0266】
<比較例8>
実施例17と同様にしてトナー(c)について定着評価を行った。その結果、低温側の定着性が著しく悪化した。
【0267】
実施例17〜19及び比較例7と8についての評価結果を表6に示す。
【0268】
【表6】
【0269】
<実施例20>
実施例1の評価用画像形成装置において、分離爪やオフセット防止用液体の塗布機構が配設されていない図5に示した電磁誘導方式の加熱加圧手段を用いた。
【0270】
耐熱性エンドレスフィルムには、厚み50μmの円筒状のニッケルフィルム材を電磁誘導発熱する抵抗層とし、その外周面をジメチルシリコーンゴムからなる弾性層とPFAからなる離型層で被覆した3層構造のものを用い、一方、加圧ローラーにはSUS製の芯金をプライマー処理した後、ジメチルシリコーンゴムの発泡体の弾性層、更にプライマー層を介しながらジメチルシリコーンゴムの弾性層と厚さ50μmのPFAチューブによる表面層を設けたものを用いた。
【0271】
また、円筒状の耐熱性エンドレスフィルムの内部には磁界発生手段を配設し、耐熱性エンドレスフィルムを介して上記磁界発生手段と加圧ローラーには245N(25kgf)の当接圧を加え、幅6mmのニップ部が形成されるように設定した。なお、低温側と高温側の定着性評価以外は、エンドレスフィルムの表面温度を170℃で固定して行った。
【0272】
この加熱加圧手段を用いてトナー(A)について、画像剥れ、低温側と高温側での定着性、定着飛び散り、及び耐熱性エンドレスフィルムとのマッチングの評価を行った。その結果概ね良好な結果となった。評価結果を表7に示す。
【0273】
画像剥れ、低温側と高温側での定着性、定着時の飛び散りについての評価方法は実施例1と同様にして行った。また、耐熱性エンドレスフィルムとのマッチングは以下の評価方法で実施された。
【0274】
〔耐熱性エンドレスフィルムとのマッチング〕
画像印字率30%のベタ画像(トナーの載り量は0.6mg/cm2)の画像チャートを50枚連続でプリントアウトした後、エンドレスフィルム表面へのトナーの付着状態を目視にて評価した。
A:未発生
B:わずかに固着が見られる
C:固着や傷がある
D:固着が多い
【0275】
実施例21と22、及び比較例9と10についても同様に行った。
【0276】
<実施例21>
実施例20と同様にしてトナー(D)について定着評価を行った。その結果、各項目において概ね良好な結果が得られた。
【0277】
<実施例22>
実施例20と同様にしてトナー(M)について定着評価を行った。その結果、定着性は悪化しているが問題ないレベルであった。
【0278】
<比較例9>
実施例20と同様にしてトナー(a)について定着評価を行った。その結果、低温側と高温側の定着性、及び定着時の飛び散りが著しく悪化した。
【0279】
<比較例10>
実施例20と同様にしてトナー(c)について定着評価を行った。その結果、低温側の定着性が著しく悪化した。
【0280】
実施例20〜22及び比較例9と10についての評価結果を表7に示す。
【0281】
【表7】
【0282】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、特定の吸熱ピークをもち、且つ、特定の平均円形度であるトナーを用いることにより、定着に関して向上させることができると共に画像濃度とカブリも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた画像形成装置の概略図である。
【図2】熱ローラー方式の加熱加圧手段の一例の概略図である。
【図3】熱ローラー方式の加熱加圧手段の他の例の概略図である。
【図4】フィルム方式の加熱加圧手段の一例の概略図である。
【図5】電磁誘導方式の加熱加圧手段の一例の概略図である。
【図6】定着時の飛び散り評価のために形成された潜像画像の説明図である。
【符号の説明】
11 加熱ローラー
12 加圧ローラー
31 加熱体
32 エンドレスフィルム
33 加圧ローラー
40 励磁コイル
47 エンドレスフィルム
48 加圧ローラー
T トナー
P 転写材
Claims (12)
- 少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、
示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995であることを特徴とするトナー。 - P1の半値幅が10℃以内であり、P2の半値幅が5〜25℃であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- エステルワックスの重量平均分子量(Mw)が350〜1500であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
- 炭化水素ワックスの重量平均分子量(Mw)が300〜4000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
- 炭化水素ワックスの25℃でのスチレンへの溶解度が、5〜60質量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
- 結着樹脂がスチレン−アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
- テトラヒドロフラン(THF)の不溶分が1〜40質量%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
- トナーが少なくともオキシカルボン酸を含有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
- 加熱加圧手段により転写材上のトナー画像を加熱加圧定着して転写材に定着画像を形成する画像形成方法であり、
前記加圧手段は、(i)少なくとも加熱体を有する回転加熱部材と、該回転加熱部材と相互厚接してニップ部を形成する回転加圧部材とを有し、(ii)転写材上のトナー画像との接触面に塗布されるオフセット防止用液体の消費量が0〜0.025mg/cm2(転写材の単位表面積基準)に設定されており、(iii)前記ニップ部で転写材上のトナー画像を加熱加圧するものであり、
該トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、硫黄原子を有する重合体及びワックス成分含有の非磁性トナーであって、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、温度55〜120℃の範囲にワックス成分由来の2つの異なる吸熱ピークP1及びP2(P1がP2よりも低温側)を持ち、P1がエステルワックス由来のピークであり、P2が炭化水素ワックス由来のピークであり、P1とP2の吸熱ピークの強度比が0.1〜10であり、平均円形度が0.960〜0.995であることを特徴とする画像形成方法。 - 加熱体を内部に有する円筒状の加熱ローラーを回転加熱部材とし、該加熱ローラーの表面に定着残余のトナーを除去するためのクリーニング部材と転写材の巻き付き防止用分離部材が配設されていない、熱ローラー方式の加熱加圧手段を用いることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
- 支持体に固定支持させた加熱体を内部に有し、該加熱体に圧設されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムを回転部材とし、該エンドレスフィルムを介してトナー画像を加熱加圧する、フィルム方式の加圧加熱手段を用いることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
- 磁界発生手段を内部に有し、該磁界発生手段の作用で電磁誘導発熱する発熱層を有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムからなる加熱体を回転加熱部材とする、電磁誘導方式の加熱加圧手段を用いることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
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