JP2002091055A - トナー及び画像形成方法 - Google Patents

トナー及び画像形成方法

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JP2002091055A
JP2002091055A JP2000281121A JP2000281121A JP2002091055A JP 2002091055 A JP2002091055 A JP 2002091055A JP 2000281121 A JP2000281121 A JP 2000281121A JP 2000281121 A JP2000281121 A JP 2000281121A JP 2002091055 A JP2002091055 A JP 2002091055A
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heating
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JP2000281121A
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Tatsuya Nakamura
達哉 中村
Yuji Moriki
裕二 森木
Koji Inaba
功二 稲葉
Katsuyuki Nonaka
克之 野中
Tomohito Handa
智史 半田
Hiroaki Kawakami
宏明 川上
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 クイックスタート性及び省電力に優れ、十分
な着色性と優れた透過性、耐候性を併せもつカラートナ
ーを提供するものである。 【解決手段】 トナーは、フロー式粒子像測定装置で計
測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッ
タグラムにおいて、該トナーの円相当個数平均径D
1(μm)が2〜10μmであり、且つ、該トナーの平
均円形度が0.920〜0.995で、円形度標準偏差
が0.040未満であり、該トナーは、結着樹脂と着色
剤と低軟化点物質を少なくとも含有し、該低軟化点物質
は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線で昇温
時の最大吸熱ピーク温度Tpが50〜130℃であり、
該ピークの半値幅T50が15℃以下であり、かつ、酸価
と水酸基価の合計が0.5〜10mgKOH/gである
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法、静電
記録法、磁気記録法などを利用した記録方法に用いられ
るトナー、又はフルカラー画像形成方法に用いられるト
ナー、又はトナージェット方式の画像形成方法に用いら
れるトナー、及び画像形成方法に関するものである。さ
らに詳しくは、本発明は、予め静電潜像担持体上にトナ
ー像を形成後、転写材上に転写させて画像形成する、複
写機、プリンター、ファックス等の電子写真、静電記
録、静電印刷に用いられるトナー及び画像形成方法、又
はトナージェット方式により記録材に直接トナーを吐出
し画像を得るトナー及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真法としては米国特許第
2,297,691号明細書、特公昭42−23910
号公報及び特公昭43−24748号公報に記載されて
いる如く多数の方法で知られている。一般には光導電性
物質を利用し、種々の手段により像担持体(感光体)上
に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて
現像し、必要に応じて直接的あるいは間接的手段を用
い、紙の如き記録材にトナー画像を転写した後、加熱、
圧力、加熱加圧あるいは溶剤蒸気により定着し複写物を
得るものである。そして、記録材に転写せず感光体上に
残ったトナーは種々の方法でクリーニングされ、上述の
工程が繰り返される。
【0003】電気的潜像を可視化する方法としては、カ
スケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が
知られている。
【0004】この電子写真法によって単色印字をするの
が主流であったが、近年、イエロー、マゼンタ、シア
ン、ブラックによるフルカラーの電子写真が登場してき
ている。
【0005】ここで、一般的なフルカラー画像を形成す
る方法について説明する。感光体ドラムの感光体を一次
帯電器によって均一に帯電し、原稿のマゼンタ画像信号
にて変調されたレーザー光により画像露光を行ない、感
光ドラム上に静電潜像を形成し、マゼンタトナーを保有
するマゼンタ現像器により該静電潜像の現像を行ない、
マゼンタトナー画像を形成する。次に搬送されてきた転
写材に転写帯電器によって前記の感光ドラムに現像され
たマゼンタトナー画像を直接的あるいは間接的手段を用
い転写する。
【0006】一方、前記の静電潜像の現像を行なった後
の感光体ドラムは、除電用帯電器により除電し、クリー
ニング手段によってクリーニングを行なった後、再び一
次帯電器によって帯電し、同様にシアントナー画像の形
成及び前記マゼンタトナー画像を転写した転写材へのシ
アントナー画像の転写を行なう。さらにイエロートナー
画像及びブラックトナー画像と順次同様に行なって、4
色のトナー画像を転写材に転写する。この4色のトナー
画像を有する転写材を、定着ローラにより熱及び圧力の
作用で定着することによりフルカラー画像を形成する。
【0007】このようなフルカラー画像形成装置は、デ
ザインスタジオなどのプロフェッショナルユースや、一
部の事務処理用カラー複写機というだけでなく、コンピ
ュータの出力としてのプリンター、あるいは個人向けの
パーソナルプリンターという分野で使われ始めている。
特に近年では、ホストであるコンピュータ側のCPU性
能、記憶容量等の向上により、あるいは電子カメラなど
の電子画像端末の普及により、パーソナルユースですら
画像処理、カラーDTP(デスクトップパブリッシン
グ、即ち、いわゆる電子出版)を日常的に行なうように
なり、カラープリンターの需要が非常に高まってきてい
る。
【0008】このようなカラープリンターには、オリジ
ナルカラー画像を、より忠実に複写するため、更に一層
の高画質、高解像度化が望まれている。
【0009】また一方では、カラー画像の高画質化、高
解像度化もさることながら、トナー画像を被記録材に加
熱定着させる定着工程での定着性の向上、定着速度の改
善、定着エネルギー効率の改善が強く望まれている。
【0010】従来、転写材シート・エレクトロファック
スシート・静電記録紙・トランスペアレンシーシート
(OHPシート)・印刷用紙・フォーマット紙などの被
記録材上の未定着画像(トナー画像)を加熱定着させる
定着装置としては、熱ローラ方式の定着装置が広く用い
られてきている。
【0011】しかし、熱ローラ方式の定着装置は、定着
ローラの熱容量が大きいために、電源投入後に定着装置
が所定の定着可能温度に立ち上がるまで、かなりの待ち
時間(ウエイトタイム)を要し、クイックスタート性に
欠けるという欠点があった。
【0012】更に、熱ローラ方式の定着装置は、画像形
成装置のスタンバイ状態時(非画像出力時)において、
定着ローラを所定の温調状態に維持させる目的で、ハロ
ゲンランプに通電したまま保持している必要があり、画
像形成装置の内部昇温や電力消費増加という問題を派生
するといった欠点があった。
【0013】かかる問題を解決するために、例えば特開
昭63−313182号公報、特開平2−157878
号公報、特開平4−44075号公報、特開平4−20
4980号公報において、フィルム加熱方式の定着装置
が提案されている。
【0014】これらのフィルム加熱方式の定着装置は、
加熱体としてセラミックヒータと、加圧部材としての加
圧ローラとの間に耐熱性フィルム(定着フィルム)を挟
ませてニップ部を形成させ、該ニップ部のフィルムと加
圧ローラとの間に、画像定着すべき未定着トナー画像を
形成担持させた被記録材を導入してフィルムと一緒に挟
持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒー
タの熱をフィルムを介して被記録材に与え、またニップ
部の加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に熱圧定
着させるものである。このフィルム加熱方式の定着装置
の特徴としては、セラミックヒータ及びフィルムとして
低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構
成することができ、画像形成装置の画像形成実行時のみ
熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温
度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源
オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く
(クイックスタート性)、スタンバイ時の消費電力も大
幅に小さい(省電力)等の点があげられる。
【0015】しかし、大きな熱量が要求されるフルカラ
ー画像形成装置や高速機種用の定着装置としては、連続
定着に必要な迅速な熱量供給が不十分であり、定着不良
や定着画像の光沢ムラ(グロスムラ)やオフセット等の
問題が発生し、さらなる改善が必要である。
【0016】そこで、かかる問題点を解決するために、
実開昭51−109739号公報において、磁束により
定着ローラに電流を誘導させてジュール熱によって発熱
させる誘導加熱定着装置が開示されている。これは、誘
導電流の発生を利用することで直接定着ローラを発熱さ
せることができて、ハロゲンランプを熱源として用いた
熱ローラ方式の定着装置よりも熱効率が良好な定着プロ
セスを達成している。
【0017】しかしながら、この誘導加熱ローラ定着方
式は、従来のローラ定着同様に定着ローラの熱容量が大
きいために、画像形成装置の電源オンから画像形成実行
可能状態までの待ち時間を速くする、いわゆる「オンデ
マンド定着」を達成することは困難であった。
【0018】一方、フルカラー画像形成方法に使用され
るトナーとしては、熱を加えた際の溶融性及び混色性が
良いことが重要であり、軟化点が低く、且つ溶融粘度が
低く、高いシャープメルト性を有するトナーを使用する
ことが好ましい。しかしながらこのような高い「溶融性
及び混色性」を有するカラートナーは、一般に定着ロー
ラとの親和性が高く、定着時に定着ローラにオフセット
し易い傾向にある。
【0019】また、さらに定着オフセットによって付着
したオフセットトナーは、連続定着時の紙間隔、あるい
は待機時の空回転動作で加圧ローラ側に移行し、紙の裏
汚れや、定着紙のローラ巻き付きを発生しやすくなるた
め問題がある。
【0020】また、トナーに離型性を持たせるワックス
が、定着フィルムに付着することで、フィルムが劣化
し、安定した定着性が得られず、画像上に光沢ムラ等が
発生する。
【0021】更に上記のごとき問題は、特に連続でのフ
ルカラー印刷時に起こりやすい。これは、フルカラー画
像形成時には、転写材上にマゼンタトナー、シアントナ
ー、イエロートナー、ブラックトナーと複数層のトナー
層が形成され、単色で現像する場合に比べてトナー層厚
が増大するためである。
【0022】特開平9−265206号公報には、定着
性に優れ、かつ、フルカラーのトランスペアレンシーの
透過性に優れたトナーを用いた画像形成方法が提案され
ている。該公報には、トナーに使用されるワックスの物
性等、加熱定着装置として、導電層を有する耐熱性フィ
ルムまたは、ベルトのごとき耐熱性部材と導電層を有す
る加圧部材と、これらの導電層に磁場を入れることで渦
電流を発生させて発熱させるための交番磁場発生手段を
有し、前記耐熱性部材と加圧部材の圧接ニップ部に被加
熱材としての記録材を挟持搬送させることで定着を行う
手段が提案されている。
【0023】しかしながら、ワックスの物性として、示
差走査熱量計により測定されるDSC曲線で昇温時の最
大吸熱ピークの半値幅や、ピーク温度との関係、更に
は、酸価と水酸基価に関する記載はない。また、このよ
うな物性を有する低軟化点物質(ワックス)を使用した
トナーと、加熱加圧定着器の具体的な構成要件に関して
も記載されていない。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来技術の問題点を解決したトナー及び画像形成方法
を提供することにある。
【0025】すなわち、本発明の目的は、定着フィルム
の劣化を軽減し、良好な定着画像を安定して得られるト
ナー及び画像形成方法を提供するものである。
【0026】更に本発明の目的は、安定した定着グロス
を実現し、さらに定着装置とのマッチングに優れたトナ
ー及び画像形成方法を提供するものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者は鋭意検討を行った結果、本発明を開示す
るに至った。
【0028】すなわち、本発明は、磁界発生手段と、
電磁誘導により発熱する発熱層と離型層とを少なくと
も有する回転加熱部材と、該回転加熱部材とニップを
形成している回転加圧部材を少なくとも有する加熱加圧
手段を使用し、該回転加熱部材に記録材を介して該回転
加圧部材を押圧させながら、該記録材上のトナー画像を
加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する画像形成
方法に適用されるトナーであり、該トナーは、フロー式
粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当
径−円形度スキャッタグラムにおいて、該トナーの円相
当個数平均径D1(μm)が2〜10μmであり、且
つ、該トナーの平均円形度が0.920〜0.995
で、円形度標準偏差が0.040未満であり、該トナー
は、結着樹脂と着色剤と低軟化点物質を少なくとも含有
し、該低軟化点物質は、示差走査熱量計により測定され
るDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピーク温度Tpが50
〜130℃であり、該ピークの半値幅T50が15℃以下
であり、かつ、酸価と水酸基価の合計が0.5〜10m
gKOH/gであることを特徴とするトナーに関する。
【0029】また、本発明は、加熱加圧手段により記録
材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像
を形成する画像形成方法であって、該加熱加圧手段は、
磁界発生手段と、電磁誘導により発熱する発熱層と
離型層とを少なくとも有する回転加熱部材と、該回転
加熱部材とニップを形成している回転加圧部材を少なく
とも有する加熱加圧手段であり、該回転加熱部材に記録
材を介して該回転加圧部材を押圧させながら該記録材上
のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形
成する画像形成方法において、トナー画像を形成するた
めのトナーは、フロー式粒子像測定装置で計測されるト
ナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムに
おいて、該トナーの円相当個数平均径D1(μm)が2
〜10μmであり、且つ、該トナーの平均円形度が0.
920〜0.995で、円形度標準偏差が0.040未
満であり、該トナーは、結着樹脂と着色剤と低軟化点物
質を少なくとも含有し、該低軟化点物質は、示差走査熱
量計により測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピ
ーク温度Tpが50〜130℃であり、該ピークの半値
幅T50が15℃以下であり、かつ、酸価と水酸基価の合
計が0.5〜10mgKOH/gであることを特徴とす
る画像形成方法に関する。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】(1)トナー まず、本発明のトナーについて述べる。
【0032】本発明のトナーは、フロー式粒子像測定装
置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度ス
キャッタグラムにおいて、該トナーの円相当個数平均径
1(μm)が2〜10μmであり、且つ、該トナーの
平均円形度が0.920〜0.995で、円形度標準偏
差が0.040未満であり、かつ、少なくとも、結着樹
脂と着色剤と低軟化点物質を含有し、該低軟化点物質
は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線で昇温
時の最大吸熱ピーク温度Tpが50〜130℃であり、
かつ該ピークの半値幅T50が15℃以下であり、かつ、
酸価と水酸基価の合計が0.5〜10mgKOH/gで
あることを特徴とするトナーである。
【0033】本発明に好適なトナー形状としては、トナ
ーの個数基準の粒径頻度分布における円相当個数平均径
が2〜10μmであり、円形度頻度分布における平均円
形度が0.920〜0.995で、円形度標準偏差が
0.040未満であることが好ましい。
【0034】円相当個数平均径が2μm未満のトナー粒
子においては、感光体から中間転写体、中間転写体から
記録材、感光体から記録材等への、トナー粒子の転写効
率が低下する。また、10μmを超える場合には、文字
やライン画像の飛び散りが生じやすく、高画質化のため
の微小なドット再現が困難になるため好ましくない。
【0035】さらに、平均円形度が0.920に満たな
い場合は、トナー形状が不定形状に近づくため、転写性
が低下し、逆に0.995を超える場合は、真球状に近
づくため、トナー表面の外添剤が劣化しやすく現像性が
低下しやすい。また、トナーの円形度頻度分布の円形度
標準偏差を0.040未満とすることで、転写性が更に
良好なものとなる。すなわち、現像、転写が良好に行わ
れることで、記録材上にトナーが均一に転写され、その
結果として、各トナーに等しく熱、圧力が伝達され、安
定したグロスの定着画像が得られる。さらに、軽微なオ
フセットも防げ、定着フィルムの劣化も軽減される。
【0036】本発明におけるトナーの円相当径、円形度
及びそれらの頻度分布とは、トナー粒子の形状を定量的
に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明
ではフロー式粒子像測定装置FPIA−1000型(東
亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算
出した。
【0037】
【数1】
【0038】ここで、「粒子投影面積」とは二値化され
たトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」
とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線
の長さと定義する。
【0039】本発明における円形度はトナー粒子の凹凸
の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の
場合に1.00を示し、表面形状が複雑になる程、円形
度は小さな値となる。
【0040】本発明において、トナーの個数基準の粒径
頻度分布の平均値を意味する円相当個数平均粒子径D1
と粒径標準偏差SDdは、粒度分布の分割点iでの粒径
(中心値)をdi、頻度をfiとすると次式から算出さ
れる。
【0041】
【数2】
【0042】
【0043】
【数3】
【0044】具体的な測定方法としては、容器中に予め
不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意
し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアル
キルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を
0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段
としては、超音波分散機UH−50型(エスエムテー社
製)に振動子として5φのチタン合金チップを装着した
ものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液と
する。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない
様に適宜冷却する。
【0045】トナー粒子の形状測定には、前記フロー式
粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が30
00〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整
し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、こ
のデータを用いて、トナーの円相当径や円形度頻度分布
等を求める。
【0046】本発明に使用される低軟化点物質は、示差
走査熱量計により測定されるDSC曲線で昇温時の最大
吸熱ピーク温度Tpが50〜130℃であり、かつ該ピ
ークの半値幅T50が15℃以下であり、かつ、酸価と水
酸基価の合計が0.5〜10mgKOH/gであること
が好ましい。
【0047】最大吸熱ピーク温度Tpが50℃未満であ
ると、本発明の定着方法では十分な耐高温オフセット性
が得られないばかりか、トナーの耐ブロッキング性が損
なわれやすく現像スリーブや感光体への融着が発生しや
すくなる。逆に、130℃を超えてしまうと、十分な低
温定着性が得られない。
【0048】更に、該ピークの半値幅T50が15℃以下
であることが好ましい。15℃を超えてしまうと、本発
明の定着方法で得られた画像表面のグロス均一性が不十
分になってしまう。これは、定着時にトナー内部から低
軟化点物質(ワックス)が均一に出てこないためと推測
される。また、重合法トナーの場合、15℃を超えてし
まうと造粒性が低下し、先に述べた形状のものが得られ
にくくなる。
【0049】より好ましくは、DSC曲線で昇温時の最
大吸熱ピーク温度Tpと該ピークの半値幅T50が、5<
Tp/T50<50の関係を満足することが好ましい。
【0050】Tp/T50が5以下の場合、ピーク温度が
低く、かつピークがブロードになる傾向のため、十分な
耐高温オフセット性が得られないばかりか、トナーの耐
ブロッキング性が損なわれやすく現像スリーブや感光体
への融着が発生しやすくなる。逆に、Tp/T50が50
以上の場合、ピーク温度が高く、かつピークがシャープ
になる傾向のため、十分な低温定着性が得られない。
【0051】更により好ましくは、該ピークの半値幅T
50が10℃以下であることが好ましい。
【0052】本発明のDSC曲線の測定には、例えばパ
ーキンエルマー社製DSC−7を用いる。装置検出部の
温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正
についてはインジウムの融解熱を用いる。サンプルはア
ルミニウム製パンを用い対照用に空パンをセットし、昇
温速度10℃/min.で測定を行った。本発明に使用
されるワックスのDSC曲線の一例を図13に示す。
【0053】また、該低軟化点物質は、酸価と水酸基価
の合計が0.5〜10mgKOH/gであることが好ま
しい。酸価と水酸基価の合計が0.5mgKOH/gに
満たない場合、定着時に、トナー内部から、トナーと記
録材間に出てきた該低軟化点物質の影響で定着性が損な
われやすい。すなわち、低軟化点物質にある程度の極性
を持たせることで、記録材とトナーの親和性を高め、定
着画像から、トナーが剥離することが防止できるものと
考えられる。
【0054】逆に、10mgKOH/gを超えてしまう
と、定着フィルムとの十分な離型性が得られなくなるば
かりでなく、定着フィルムの耐久劣化を促進してしま
い、均一性のある定着画像が得られなくなってしまう。
また、重合法トナーの場合、10mgKOH/gを超え
てしまうと造粒性が低下し、先に述べた形状のものが得
られにくくなる。
【0055】本発明の低軟化点物質の酸価とは、試料1
g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和す
るのに要する水酸化カリウムのmg数であり、水酸基価
は、試料1gから得られるアセチル化物に結合している
酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であ
る。
【0056】本発明に使用される低軟化点物質として、
上記の物性を満足するものであれば、特に限定せずに使
用可能である。
【0057】例えばシリコーン樹脂、ポリエステル、ポ
リウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブ
チラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノ
ール樹脂、低分子量ポリエチレン又は低分子量ポリプロ
ピレンの如き脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系
石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなど
である。
【0058】これらの中から、種々の方法により精製、
分別したワックスが本発明に好ましく用いられる。ま
た、分別後に酸化やブロック共重合、グラフト変性を行
っても良い。
【0059】中でも好ましく用いられるワックスは、低
分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリ
エステルおよびエステル系ワックス、脂肪族の誘導体で
ある。また、これらのものを併用しても良い。
【0060】これら低軟化点物質は、トナー100質量
部中に1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部
が使用される。ワックス成分が1質量部未満の場合、ワ
ックスとしての離型効果がほとんど発揮できず、また、
ワックス成分が30質量部を超えると、例えば、現像性
悪化といった定着以外の弊害を生じやすくなるため好ま
しくない。さらに重合法トナーの場合、造粒性が低下
し、先に述べた形状のものが得られにくくなる。
【0061】更に高画質化を達成する目的で、より微小
な潜像ドットを忠実に現像する必要があるが、そのため
にはトナー粒子は重量平均径(D4)が4〜9μmであ
ることが好ましい。重量平均径(D4)が4μm未満の
トナー粒子においては、感光体から中間転写体、中間転
写体から記録材、感光体から記録材等への、トナー粒子
の転写効率が低下し、未転写の残トナー付着が画像欠陥
の原因となるため、本発明で使用するトナーには好まし
くない。また、トナー粒子の重量平均径(D4)が9μ
mを超える場合には、文字やライン画像の飛び散りが生
じやすく、高画質化のための微小なドット再現が困難に
なるため好ましくない。
【0062】ここでのトナーの質量基準の円相当重量平
均径D4(μm)は、コールターカウンターTA−II
型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社
製)等を用い、個数分布、体積分布を出力するインター
フェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコン
ピューター(NEC製)を接続し測定を行った。測定電
解溶液としては、たとえば、ISOTON R−II
(コールタサイエンティフィックジャパン社製)が使用
できる。
【0063】測定法としては、前記電解溶液100〜1
50ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアル
キルべンセンスルホン酸塩)を0.1〜5mlと測定試
料を2〜20mg加えた後、超音波分散器で約1〜3分
間分散処理を行ない前記コールターカウンターTA−I
I型により測定した。測定した2μm以上のトナーの体
積、個数から、体積分布と個数分布とを算出し、重量平
均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を求める。
【0064】本発明のトナーに使用可能な結着樹脂とし
ては、以下の重合性単量体の重合体、又は、重合性単量
体単独の重合体の混合物、あるいは、2種類以上の重合
性単量体の共重合生成物が挙げられる。更に具体的に
は、スチレン−アクリル酸共重合体あるいはスチレン−
メタクリル酸系共重合体が好ましい。
【0065】スチレン系重合性単量体としては、例えば
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、
p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェ
ニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロル
スチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチ
レン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチル
スチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチ
ルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシル
スチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及
びその誘導体が挙げられる。
【0066】アクリル酸エステル系重合性単量体として
は、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、
メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタ
クリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタ
クリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、
メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタ
クリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチル
アミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸
エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ア
クリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル
酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデ
シル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステ
アリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェ
ニルの如きアクリル酸エステル類、及びその誘導体が挙
げられる。
【0067】これら結着樹脂のガラス転移温度として
は、カラートナーの混色性及び定着性を保持するため
に、通常、40〜90℃であり、45〜80℃が好まし
く、50〜70℃がより好ましい。
【0068】結着樹脂のガラス転移温度が40℃未満で
は、微弱な力でカプセル構造が破断しやすく、保存中に
トナー粒子同士が合一してトナーの流動性が損なわれ
る、所謂、ブロッキング現象を発生しやすくなるため好
ましくない。また、結着樹脂のガラス転移温度が90℃
超では、一定のグロスを持った定着物を得るために定着
器の温度を非常に高く設定する必要が生じるため、消費
エネルギーが甚大になり、また、じっくりと定着熱エネ
ルギーをトナーに与える必要から、高速での定着が困難
になるという問題が生じるため好ましくない。
【0069】本発明において、樹脂のガラス転移温度の
測定としては、先の低軟化点物質のDSC測定と同様に
行われる。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7
が利用できる。ガラス転移点は、サンプルを1回昇温−
降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで
昇温させた時に測定されるDSC曲線の変極点から、定
法によって求められる。
【0070】本発明のトナーには、極性樹脂が含有され
ることが好ましい。
【0071】特に水などの極性溶媒中で製造される重合
法トナーの場合、極性樹脂は、トナー粒子界面に局在化
しやすく、含有するワックスをトナー内部に封じ込める
作用をし、いわゆる、コア/シェル構造がとりやすくな
る。
【0072】具体的な極性樹脂としては、スチレンと
(メタ)アクリル酸の共重合体,マレイン酸共重合体,
ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂が好ましく用いられ
る。
【0073】また、以下の重合性単量体の重合体、又
は、2種類以上の重合性単量体の共重合生成物、あるい
は、ポリカーボネート、オキサイド樹脂など主鎖に酸素
を含有する樹脂、酸化ポリエチレンのごとき変性ポリア
ルキレン系樹脂などの極性樹脂も好適に使用することが
できる。
【0074】極性樹脂として使用されるポリエステル樹
脂は、通常、以下に示すような2価以上のアルコール単
量体および2価以上のカルボン酸単量体を組み合わせて
縮重合反応によって得られるものが好ましく用いられ
る。
【0075】具体的に2価アルコール成分としては、例
えばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロ
ピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポ
リオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキ
レンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレン
グリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−
ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−
ヘキサンジオール、ビスフェノールAのプロピレン付加
物等が挙げられる。
【0076】3価以上のアルコール成分としては、例え
ばソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリ
トール、ジペンタエリスリトール、グリセロール、トリ
メチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げら
れる。
【0077】また、酸成分としては、2価のカルボン酸
として、例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン
酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル
酸、テレフタル酸、コハク酸、n−オクチルコハク酸、
イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もし
くは低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0078】3価以上のカルボン酸としては、例えば
1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカル
ボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパ
ン、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリッ
ト酸及びこれらの酸無水物、低級のアルキルエステル等
が挙げられる。これらの酸成分として、3価のカルボン
酸誘導体が好ましく用いられる。
【0079】本発明におけるポリエステルの製造方法
は、重縮合反応をする方法であれば特に限定されること
なく、上記の単量体を用いてエステル化、エステル交換
反応により製造することができる。
【0080】該極性樹脂のガラス転移温度は、該結着樹
脂のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。これに
より、トナーの定着性及び保存性の相反する特性を両立
することが可能となる。通常、5乃至80℃高いもので
あり、10乃至50℃高いものが好ましく、10乃至3
5℃高いものがより好ましい。
【0081】また本発明のトナーに使用しうる着色剤と
しては、従来より知られている無機、有機の染料・顔料
が使用可能である。具体的には次の様なものが挙げられ
る。
【0082】イエロー用着色顔料の具体例としては、縮
合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノ
ン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド
化合物に代表される化合物が用いられる。さらに具体的
には、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,
5,6,7,10,11,12,13,14,15,1
6,17,23,65,73,83,93,94,9
5,97,109,110,111,120,127,
128,129,147,168,174,176,1
80,181,191、C.I.バットイエロー1,
3,20等が挙げられる。また、黄鉛、カドミウムイエ
ロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、
ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネン
トイエローNCG、タートラジンレーキなども使用する
ことができる。
【0083】マゼンタ用着色顔料の具体例としては、
C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,
7,8,9,10,11,12,13,14,15,1
6,17,18,19,21,22,23,30,3
1,32,37,38,39,40,41,48,4
9,50,51,52,53,54,55,57,5
8,60,63,64,68,81,83,87,8
8,89,90,112,114,122,123,1
63,202,206,207,209、C.I.ピグ
メントバイオレット19、C.I.バットレッド1,
2,10,13,15,23,29,35等が挙げられ
る。
【0084】さらに染料としては、C.I.ソルベント
レッド1,3,8,23,24,25,27,30,4
9,81,82,83,84,100,109,12
1、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ディスパ
ースバイオレット1等の油溶染料;C.I.べーシック
レッド1,2,9,12,13,14,15,17,1
8,22,23,24,27,29,32,34,3
5,36,37,38,39,40等の塩基性染料;
C.I.アシッドレッド1、C.I.ダイレクトレッド
1,4、C.I.モーダントレッド30等が挙げられ
る。
【0085】シアン用着色顔料の具体例としては、C.
I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.
I.べーシックブルー3,5、C.I.バットブルー
6、C.I.ダイレクトブルー1,2、C.I.アシッ
ドブルー9,15,45、C.I.モーダントブルー
7、又は銅フタロシアニン顔料等がある。
【0086】黒用着色顔料の具体例としては、カーボン
ブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、オ
イルブラック等がある。また、色用の着色剤を混合し、
黒色着色剤として使用することも可能である。
【0087】また、上記着色剤の他に、チタンホワイ
ト、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.べーシッ
クグリーン4,6、ピグメントグリーンB、マラカイト
グリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、クロ
ムグリーン、モリブデンオレンジ、パーマネントオレン
ジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジ
G、C.I.べーシックバイオレット1,3,7,1
0,14,15,21,25,26,27,28、C.
I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,2
7、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイ
オレットレーキ等を使用して、上記色以外の色トナー用
着色剤として使用することも可能である。
【0088】これらは、単独、あるいは組み合わせて使
用することができ、通常、電子写真特性的観点及び透過
性の観点から、結着樹脂100質量部に対して0.1〜
60質量部、好ましくは0.5〜20質量部使用され
る。
【0089】本発明のトナー中の架橋成分に関してなん
ら限定するものではないが、トナー特性向上のために、
以下に例示する架橋性重合性単量体を含有することが好
ましい。
【0090】架橋性重合性単量体としては主として2個
以上の重合可能な二重結合を有する重合性単量体が用い
られる。
【0091】具体例としては、2官能の架橋剤、例えば
ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ビス(4−ア
クリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレン
グリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコー
ルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレ
ート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,
6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグ
リコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアク
リレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テ
トラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレン
グリコール#200、#400、#600の各ジアクリ
レート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリ
プロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型
ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び以上のア
クリレートをメタクリレートにかえたものが挙げられ
る。
【0092】多官能の架橋剤としてペンタエリスリトー
ルトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリ
レート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テ
トラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエス
テルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビ
ス(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロ
パン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、
トリアリルアソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレ
ート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレン
デート等が挙げられる。
【0093】これらの架橋性重合単量体のうち好適に用
いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビ
ニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で
結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0094】トナー特性向上のために、これら架橋剤は
他の重合単量体成分100質量部に対して、0.01〜
5質量部程度、更には0.03〜3質量部用いることが
好ましい。
【0095】本発明に用いられる結着樹脂を得るため
に、以下に例示するような重合開始剤を用いることが好
ましい。
【0096】具体的には、過酸化物系開始剤の例とし
て、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエー
ト、クミンパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウ
レート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオ
キサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチ
ルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−ト
リメチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t
−ブチルパーオキシ)バリレート、ジクミルパーオキサ
イド、及びこれらの誘導体、過硫酸カリウム、過硫酸ア
ンモニウムなどの過硫酸塩が挙げられる。
【0097】また、アゾ系及びジアゾ系開始剤の例とし
て、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’
−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジ
メチルバレロニトリル)など及びこれらの誘導体が挙げ
られる。
【0098】これら重合開始剤は、単独で使用してもよ
く、また複数併用して使用しても良い。その使用量は重
合性単量体100質量部に対し、0.05〜15質量
部、より好ましくは0.5〜10質量部の濃度で用いら
れる。
【0099】また、本発明のトナーは、分子量に関して
なんら限定するものではないが、テトラヒドロフラン溶
媒に可溶な成分のGPCにより測定される分子量分布に
おいて、数平均分子量(Mn)が8000乃至3000
0であることがトナーの保存性及び定着性の点で好まし
く、さらに、数平均分子量(Mn)が8000乃至30
000で且つ重量平均分子量(Mw)が50,000乃
至500,000であることが更に好ましい。
【0100】また、本発明では分子量をコントロールす
る目的で、公知の連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移
動剤の具体例としては、四塩化炭素、四臭化炭素、二臭
化酢酸エチル、三臭化酢酸エチル、二臭化エチルベンゼ
ン、二臭化エタン、二塩化エタンの如きハロゲン化炭化
水素化合物;ジアゾチオエーテル、ベンゼン、エチルベ
ンゼン、イソプロピルベンゼンの如き炭化水素類化合
物;ターシャリードデシルメルカプタン、n−ドデシル
メルカプタンの如きメルカプタン化合物;ジイソプロピ
ルザントゲンジスルフィドの如きジスルフィド化合物;
α−メチルスチレンダイマーのごときオリゴマー等が挙
げられる。
【0101】これらの連鎖移動剤の添加量は、分子量を
コントロールする目的を達成する量として一般的に0.
001〜15質量部が使用される。
【0102】本発明のトナーには、公知の荷電制御剤が
使用できる。荷電制御剤にはトナーを負帯電性に制御す
るものと、トナーを正帯電性に制御するものがある。
【0103】トナーを負荷電性に制御するものの例とし
て下記物質がある。具体的には、有機金属化合物、キレ
ート化合物が有効であり、具体的には、モノアゾ金属化
合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキ
シカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物が
ある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族
モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エス
テル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などが
ある。また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、
含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモ
ニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレ
ン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重
合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノン
メタルカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0104】トナーを正荷電性に制御するものの具体例
として下記物質がある。具体的には、ニグロシン及び脂
肪酸金属塩等による変性物、グアニジン化合物、イミダ
ゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−
ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルア
ンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニ
ウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等の
オニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタ
ン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、
りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングス
テンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子
酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級
脂肪酸の金属塩:ジブチルスズオキサイド、ジオクチル
スズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなど
のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、
ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレー
トなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独で或
は2種類以上組合せて用いることができる。これらの中
でも、ニグロシン系、4級アンモニウム塩の如き荷電制
御剤が特に好ましく用いられる。
【0105】さらに、重合法トナーの場合は、重合阻害
性の少ないもの、水溶性の低いものが好ましく使用され
る。また、カラートナーの場合は、無色に近いものが好
ましい。
【0106】本発明のトナーの製造方法は、一般的なi
n−Situ重合法、二段重合法、多段重合法等の公知
の重合法によるトナー製造方法、トナー粒子径より小さ
い重合樹脂粒子を形成した後、相互凝集してトナー粒径
にする重合凝集トナー製造法、粉砕法によりコア粒子を
形成し、機械的表面処理によってトナー粒子表面にシェ
ル層を形成する乾式機械処理によるトナーの製造方法な
ど、公知の方法が使用できる。
【0107】本発明のトナー製造方法として懸濁重合を
利用する場合には、用いる分散剤として例えば無機系酸
化物として、リン酸三カルシウム,リン酸マグネシウ
ム,リン酸アルミニウム,リン酸亜鉛,炭酸カルシウ
ム,炭酸マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化マグ
ネシウム,水酸化アルミニウム,メタケイ酸カルシウ
ム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,ベントナイト,シ
リカ,アルミナ,磁性体,フェライト等が挙げられる。
有機系化合物としては、例えばポリビニルアルコール,
ゼラチン,メチルセルロース,メチルヒドロキシプロピ
ルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセ
ルロースのナトリウム塩,デンプン等が水相に分散させ
て使用される。これら分散剤は、重合性単量体100質
量部に対して0.2〜10.0質量部を使用することが
好ましい。
【0108】これら分散剤は、市販のものをそのまま用
いても良いが、細かい均一な粒度を有する分散粒子を得
るために、分散媒中にて高速撹拌下にて該無機化合物を
生成させることもできる。例えば、リン酸三カルシウム
の場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液
と塩化カルシウム水溶液を混合することで懸濁重合方法
に好ましい分散剤を得ることができる。また、これら分
散剤の微細化のため0.001〜0.1質量部の界面活
性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン,ア
ニオン,カチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばド
デシル硫酸ナトリウム,テトラデシル硫酸ナトリウム、
ペンタデシル硫酸ナトリウム,オクチル硫酸ナトリウ
ム,オレイン酸ナトリウム,ラウリル酸ナトリウム,ス
テアリン酸カリウム,オレイン酸カルシウム等が好まし
く用いられる。
【0109】本発明のトナー製造方法は、具体的には以
下のように行われる。
【0110】単量体中に低軟化物質からなる離型剤,着
色剤,荷電制御剤,重合開始剤その他の添加剤を加え、
ホモジナイザー・超音波分散機等によって均一に溶解又
は分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する
水相中に通常の撹拌機またはホモミキサー,ホモジナイ
ザー等により分散せしめる。懸濁重合法においては、通
常単量体系100質量部に対して水300〜3000質
量部を分散媒として使用するのが好ましい。
【0111】好ましくは単量体組成物からなる液滴が所
望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間
を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用によ
り、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される
程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般
的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。ま
た、重合反応後半に昇温しても良く、更に、未反応の重
合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又
は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。
【0112】反応終了後、pH調整をし、分散安定剤を
溶解せしめ、生成したトナー粒子を洗浄、ろ過により回
収し、乾燥する。
【0113】本発明のトナーにおいては、帯電安定性、
現像性、流動性、耐久性向上の目的で、外添剤をトナー
粒子に外添することが好ましい。外添剤の具体的な例と
しては、シリカ微粉末、アルミナ微粉末、酸化チタン微
粉末、又はそれらの疎水化処理粉末、各種樹脂粒子、脂
肪酸金属塩等が挙げられ、これら単独あるいは複数併用
して用いられることが好ましい。
【0114】本発明に好適に用いられる外添剤は、BE
T法で測定した窒素吸着による比表面積が20m2/g
以上(特に30〜400m2/g)の範囲内のものであ
る。使用量としては、トナー粒子100質量部に対して
外添剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量
部使用するのが良い。該外添剤は、必要に応じ、疎水化
及び帯電性コントロールの目的で、表面処理剤で処理す
ることが好ましい。表面処理剤の具体例としては、シリ
コーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーン
オイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリン
グ剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の
有機ケイ素化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独
でもあるいは混合して使用しても良い。
【0115】更に公知の滑剤粉末をトナーに添加しても
良い。滑剤粉末としては例えばテフロン(登録商標)、
ポリフッ化ビニリデンの如きフッ素樹脂;フッ化カーボ
ンの如きフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛の如き脂肪酸
金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステルの如き脂肪酸誘導体;
硫化モリブデンが挙げられる。
【0116】更に次に示す公知の無機粉体を添加するこ
とも好ましい。マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セ
リウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガ
ン、ストロンチウム、錫、アンチモンの如き金属の酸化
物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタ
ン酸ストロンチウムの如き複合金属酸化物;炭酸カルシ
ウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウムの如き金属
塩;カオリンの如き粘土鉱物;アパタイトの如きリン酸
化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素の如きケイ素化合物,
カーボンブラックやグラファイトの如き炭素粉末が挙げ
られる。
【0117】これらのうち、酸化亜鉛、酸化アルミニウ
ム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロン
チウム、チタン酸マグネシウムの微粉体が好ましい。
【0118】(2)画像形成方法 次に、本発明の画像形成方法について述べる。
【0119】本発明の特徴の一つは記録材に定着画像を
形成する画像形成方法にある。
【0120】図1を参照しながら本発明の画像形成方法
の一例をより具体的に説明する。
【0121】図1は画像形成装置の一例の概略構成図で
ある。本例の画像形成装置は電子写真カラープリンタで
ある。
【0122】101は有機感光体やアモルファスシリコ
ン感光体でできた感光体ドラム(像担持体)であり、矢
示の方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆
動される。
【0123】感光体ドラム101は、その回転過程で帯
電ローラ等の帯電装置102で所定の極性・電位の一様
な帯電処理を受ける。
【0124】次いでその帯電処理面にレーザ光学箱(レ
ーザスキャナー)110から出力されるレーザ光103
による、目的の画像情報の走査露光処理を受ける。レー
ザ光学箱110は、不図示の画像読み取り装置等の画像
信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル
画素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光1
03を出力して、回転感光体ドラム101面に走査露光
した目的画像情報に対応した静電潜像が形成される。1
09は、レーザ光学箱110からの出力レーザ光を感光
体ドラム101の露光位置に偏向させるミラーである。
【0125】フルカラー画像形成の場合は、目的のフル
カラー画像の第1の色分解成分画像、例えばイエロー成
分画像についての走査露光・潜像形成がなされ、その潜
像が4色カラー現像装置104のうちのイエロー現像器
104Yの作動でトナー画像として現像される。そのト
ナー画像は、感光体ドラム101と中間転写体ドラム1
05との接触部(或いは近接部)である一次転写部T1
において中間転写体ドラム105の面に転写される。中
間転写体ドラム105面に対するトナー画像転写後の回
転感光体ドラム101面は、クリーナ107により転写
残りトナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
【0126】上記のような帯電・走査露光・現像・一次
転写・清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画
像の第2の色分解成分画像(例えばマゼンタ成分画像、
マゼンタ現像器104Mが作動)、第3の色分解成分画
像(例えばシアン成分画像、シアン現像器104Cが作
動)、第4の色分解成分画像(例えば黒成分画像、黒現
像器104BKが作動)の各色分解成分画像について順
次実行され、中間転写体ドラム105面にイエロートナ
ー画像・マゼンタトナー画像・シアントナー画像・黒ト
ナー画像の都合4色のトナー画像が順次重ねて転写され
て、目的のフルカラー画像に対応したカラートナー画像
が合成・形成される。
【0127】中間転写体ドラム105は、金属ドラム上
に中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を有するもので、感光
体ドラム101に接触して或いは近接して感光体ドラム
101と同じ周速度で矢示の方向に回転駆動され、中間
転写体ドラム105の金属ドラムにバイアス電位を与え
て感光体ドラム101との電位差で、感光体ドラム10
1側のトナー画像を前記中間転写体ドラム105面側に
転写させる。
【0128】上記の回転中間転写体ドラム105面に合
成・形成されたカラートナー画像は、前記回転中間転写
体ドラム105と転写ローラ106との接触ニップ部で
ある二次転写部T2において、前記二次転写部T2に不
図示の給紙部から所定のタイミングで送り込まれた記録
材Pの面に転写されていく。転写ローラ106は、記録
材Pの背面からトナーと逆極性の電荷を供給すること
で、中間転写体ドラム105面側から記録材P側へ合成
カラートナー画像を順次に一括転写する。
【0129】二次転写部T2を通過した記録材Pは、中
間転写体ドラム105の面から分離されて像加熱装置
(定着装置)100へ導入され、未定着トナー画像の加
熱定着処理を受けてカラー画像形成物として機外の不図
示の排紙トレーに排出される。定着装置100について
は次の『(3)定着装置(加熱手段)』で詳述する。
【0130】記録材Pに対するカラートナー画像転写後
の回転中間転写体ドラム105は、クリーナ108によ
り転写残りトナー・紙粉等の付着残留物の除去を受けて
清掃される。このクリーナ108は、常時は中間転写体
ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転写
体ドラム105から記録材Pに対するカラートナー画像
の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105に
接触状態に保持される。
【0131】また転写ローラ106も、常時は中間転写
体ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転
写体ドラム105から記録材Pに対するカラートナー画
像の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105
に記録材Pを介して接触状態に保持される。
【0132】本例装置は、白黒画像などモノカラー画像
のプリントモードも実行できる。また両面画像プリント
モード、或いは多重画像プリントモードも実行できる。
両面画像プリントモードの場合は、定着装置100を出
た1面目画像プリント済みの記録材Pは、不図示の再循
環搬送機構を介して表裏反転されて再び二次転写部T2
へ送り込まれて2面に対するトナー画像転写を受け、再
度、定着装置100に導入されて2面に対するトナー画
像の定着処理を受けることで両面画像プリントが出力さ
れる。
【0133】多重画像プリントモードの場合は、定着装
置100を出た1回目画像プリント済みの記録材Pは、
不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されずに再び
二次転写部T2へ送り込まれて1回目画像プリント済み
の面に2回目のトナー画像転写を受け、再度、定着装置
100に導入されて2回目のトナー画像の定着処理を受
けることで多重画像プリントが出力される。
【0134】次に、本発明の定着装置の例について説明
する。
【0135】本例では、発熱層と離型層に加えて弾性層
を有する加熱回転部材を有する定着装置を例示したが、
例えば、モノトーンの画像形成装置から出力される画像
を定着する際には、画像の品質などを損なわない限りに
おいて、弾性層を有しない構成も可能である。
【0136】その際には、後述の定着ベルトの構成にお
ける発熱層と離型層とを直接接触させれば良く、各層の
接着性を向上させるためにプライマー層を設けても良
い。
【0137】(3)定着装置(加熱手段)100 本発明の特徴の一つである定着装置について具体的に説
明するが、本発明の加熱定着装置は例示したものに限定
するものではなく、例えば励磁コイル部分をベルトの外
部に設置した構成の加熱定着装置であっても良い。
【0138】図2は、本発明における電磁誘導加熱方式
の定着装置100の要部の横断側面模式図、図3は要部
の正面模式図、図4は要部の縦断正面模式図を具体的に
示したものである。
【0139】本例装置100は図9の定着器と同様に、
円筒状の電磁誘導発熱性ベルトを用いた、加圧ローラ駆
動方式、電磁誘導加熱方式の装置である。図9の装置と
共通の構成部材・部分には同一の符号を付して再度の説
明を省略する。
【0140】磁場発生手段は、磁性コア17a・17b
・17c及び励磁コイル18からなる。
【0141】磁性コア17a・17b・17cは高透磁
率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったト
ランスのコアに用いられる材料がよく、より好ましくは
100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いる
のがよい。
【0142】励磁コイル18には、図5に示すように給
電部18a・18bに励磁回路27を接続してある。こ
の励磁回路27は、20kHzから500kHzの高周
波をスイッチング電源で発生できるようになっている。
【0143】励磁コイル18は、励磁回路27から供給
される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生
する。
【0144】16a・16bは横断面略半円弧状樋型の
ベルトガイド部材であり、開口側を互いに向かい合わせ
て略円柱体を構成し、外側に円筒状の電磁誘導性発熱ベ
ルトである定着ベルト10をルーズに外嵌させてある。
【0145】前記ベルトガイド部材16aは、磁場発生
手段としての磁性コア17a・17b・17cと励磁コ
イル18を内側に保持している。
【0146】また、ベルトガイド部材16aには、図4
に示すように紙面垂直方向長手の良熱伝導部材40がニ
ップ部Nの加圧ローラ30との対向面側で、定着ベルト
10の内側に配設してある。
【0147】本例においては、良熱伝導性部材40にア
ルミニウムを用いている。前記良熱伝導部材40は熱伝
導率λが6.0×10-3[J/cm・sec・deg]
であり、厚さ1[mm]である。
【0148】また、良熱伝導部材40は、磁場発生手段
である励磁コイル18と磁性コア17a・17b・17
cから発生する磁場の影響を受けないように、この磁場
の外に配設してある。
【0149】具体的には、良熱伝導部材40を励磁コイ
ル18に対して磁性コア17cを隔てた位置に配設し、
励磁コイル18による磁路の外側に位置させて良熱伝導
体40に影響を与えないようにしている。
【0150】22は、ベルトガイド部材16bの内面平
面部に当接させて配設した横長の加圧用剛性ステイであ
る。
【0151】19は、磁性コア17a・17b・17c
及び励磁コイル18と加圧用剛性ステイ22の間を絶縁
するための絶縁部材である。
【0152】フランジ部材23a・23bは、ベルトガ
イド部材16a・16bのアセンブリの左右両端部に外
嵌し、前記左右位置を固定しつつ回転自在に取り付け、
定着ベルト10の回転時に前記定着ベルト10の端部を
受けて定着ベルトのベルトガイド部材長手に沿う寄り移
動を規制する役目をする。
【0153】加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金
30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被
覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂な
どの耐熱性・弾性材層30bとで構成されており、芯金
30aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板金間に回
転自由に軸受け保持させて配設してある。
【0154】加圧用剛性ステイ22の両端部と装置シャ
ーシ側のバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ
加圧バネ25a・25bを縮設することで、加圧用構成
ステイ22に押し下げ力を作用させている。これによ
り、ベルトガイド部材16aの下面と加圧ローラ30の
上面とが定着ベルト10を挟んで圧接して所定幅の定着
ニップ部Nが形成される。
【0155】加圧ローラ30は駆動手段Mにより矢示の
方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回転駆動
による前記加圧ローラ30と定着ベルト10の外面との
摩擦力で定着ベルト10に回転力が作用し、前記定着ベ
ルト10が、その内面が定着ニップNにおいて良熱伝導
部材40の下面に密着して摺動しながら、矢示の方向に
加圧ローラ30の回転周速度にほぼ対応した周速度をも
ってベルトガイド部材16a・16bの外回りを回転状
態になる。
【0156】この場合、定着ニップ部Nにおける良熱伝
導部材40の下面と定着ベルト10の内面との相互摺動
摩擦力を低減化させるために、定着ニップ部Nの良熱伝
導部材40の下面と定着ベルト10の内面との間に耐熱
性グリスなどの潤滑剤を介在させる、あるいは良熱伝導
性部材40の下面を潤滑部材で被覆することもできる。
これは、良熱伝導部材40としてアルミニウムを用いた
場合のように表面滑り性が材質的によくない或いは仕上
げ加工を簡素化した場合に、摺動する定着ベルト10に
傷をつけて定着ベルト10の耐久性が悪化してしまうこ
とを防ぐものである。
【0157】良熱伝導部材40は長手方向の温度分布を
均一にする効果があり、例えば、小サイズ紙を通紙した
場合、定着ベルト10での非通紙部の熱量が、良熱伝導
部材40へ伝熱し、良熱伝導部材40における長手方向
の熱伝導により、非通紙部の熱量が小サイズ紙通紙部へ
伝熱される。これにより、小サイズ紙通紙時の消費電力
を低減させる効果も得られる。
【0158】また、図5に示すように、ベルトガイド部
材16aの曲面に、その長手に沿い所定の間隔を置いて
凸リブ部16eを形成具備させ、ベルトガイド部材16
aの曲面と定着ベルト10の内面との接触摺動抵抗を低
減させて定着ベルト10の回転負荷を少なくしている。
このような凸リブ部はベルトガイド部材16bにも同様
に形成具備することができる。
【0159】図6は交番磁束の発生の様子を模式的に表
したものである。磁束Cは発生した交番磁束の一部を表
す。磁性コア17a・17b・17cに導かれた交番磁
束Cは、磁性コア17aと磁性コア17bとの間、そし
て磁性コア17aと磁性コア17cとの間において定着
ベルト10の電磁誘導発熱層1に渦電流を発生させる。
この渦電流は電磁誘導発熱層1の固有抵抗によって電磁
誘導発熱層1にジュール熱(渦電流損)を発生させる。
ここでの発熱量Qは電磁誘導発熱層1を通る磁束の密度
によって決まり、図6のグラフような分布を示す。図6
のグラフは、縦軸が磁性コア17aの中心を0とした角
度θで表した定着ベルト10における円周方向の位置を
示し、横軸が定着ベルト10の電磁誘導発熱層1での発
熱量Qを示す。ここで、発熱域Hは最大発熱量をQとし
た場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義する。これ
は、定着に必要な発熱量が得られる領域である。
【0160】この定着ニップ部Nの温度は、不図示の温
度検知手段を含む温調系により励磁コイル18に対する
電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるよ
うに温調される。26は定着ベルト10の温度を検知す
るサーミスタなどの温度センサであり、本例においては
温度センサ26で測定した定着ベルト10の温度情報を
もとに定着ニップ部Nの温度を制御するようにしてい
る。
【0161】而して、定着ベルト10が回転し、励磁回
路27から励磁コイル18への給電により上記のように
定着ベルト10の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部
Nが所定の温度に立ち上がって温調された状態におい
て、画像形成手段部から搬送された未定着トナー画像t
が形成された記録材Pが定着ニップ部Nの定着ベルト1
0と加圧ローラ30との間に画像面が上向き、即ち定着
ベルト面に対向して導入され、定着ニップ部Nにおいて
画像面が定着ベルト10の外面に密着して定着ベルト1
0と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この
定着ニップ部Nを定着ベルト10と一緒に記録材Pが挟
持搬送されていく過程において定着ベルト10の電磁誘
導発熱で加熱されて、記録材P上の未定着トナー画像t
1が加熱定着される。記録材Pは定着ニップ部Nを通過
すると回転定着ベルト10の外面から分離して排出搬送
されていく。記録材上の加熱定着トナー画像t2は定着
ニップ部通過後、冷却して永久固着像となる。
【0162】本例においては、図2に示すように、定着
フィルム10のこの発熱域H(図6)の対向位置に暴走
時の励磁コイル18への給電を遮断するため、温度検知
素子であるサーモスイッチ50を配設している。
【0163】図7は本例で使用した安全回路の回路図で
ある。温度検知素子であるサーモスイッチ50は、+2
4V DC電源とリレースイッチ51と直列に接続され
ており、サーモスイッチ50が切れると、リレースイッ
チ51への給電が遮断され、リレースイッチ51が動作
し、励磁回路27への給電が遮断されることにより励磁
コイル18への給電を遮断する構成をとっている。サー
モスイッチ50はOFF動作温度を220℃に設定し
た。
【0164】また、サーモスイッチ50は定着フィルム
10の発熱域Hに対向して定着フィルム10の外面に非
接触に配設した。サーモスイッチ50と定着フィルム1
0との間の距離は約2mmとした。これにより、定着フ
ィルム10にサーモスイッチ50の接触による傷が付く
ことがなく、耐久による定着画像の劣化を防止すること
ができる。
【0165】本例によれば、装置故障による定着装置暴
走時、図10のような定着ニップNで発熱する構成とは
違い、定着ニップNに紙が挟まった状態で定着器が停止
し、励磁コイル18に給電が続けられ定着フィルム10
が発熱し続けた場合でも、紙が挟まっている定着ニップ
部Nでは発熱していないために紙が直接加熱されること
がない。また、発熱量が多い発熱域Hには、サーモスイ
ッチ50が配設してあるため、サーモスイッチ50が2
20℃を感知して、サーモスイッチが切れた時点で、リ
レースイッチ51により励磁コイル18への給電が遮断
される。
【0166】本例によれば、紙の発火温度は約400℃
近辺であるため紙が発火することはなく、定着フィルム
の発熱を停止することができる。
【0167】温度検知素子としてサーモスイッチのほか
に温度ヒューズを用いることもできる。
【0168】本例では低軟化物質を含有させたトナーを
使用したため、定着装置にオフセット防止のためのオイ
ル塗布機構を設けていないが、低軟化物質を含有させて
いないトナーを使用した場合にはオイル塗布機構を設け
てもよい。また、低軟化物質を含有させたトナーを使用
した場合にもオイル塗布や冷却分離を行ってもよい。
【0169】本発明の特徴の一つである定着装置の構成
について更に具体的に説明する。
【0170】A)励磁コイル18 励磁コイル18はコイル(線輪)を構成させる導線(電
線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の
細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回
巻いて励磁コイルを形成している。本例では10ターン
巻いて励磁コイル18を形成している。
【0171】絶縁被覆は、定着ベルト10の発熱による
熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いるのがよ
い。たとえば、アミドイミドやポリイミドなどの被覆を
用いるとよい。
【0172】励磁コイル18は外部から圧力を加えて密
集度を向上させてもよい。
【0173】励磁コイル18の形状は、図2のように発
熱層の曲面に沿うようにしている。本例では定着ベルト
の発熱層と励磁コイル18との間の距離は約2mmにな
るように設定した。
【0174】励磁コイル保持部材19の材質としては絶
縁性に優れ、耐熱性がよいものがよい。例えば、フェノ
ール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹
脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹
脂、LCP樹脂などを選択するとよい。
【0175】磁性コア17a・17b・17c及び励磁
コイル18と、定着ベルトの発熱層の間の距離はできる
限り近づけた方が磁束の吸収効率が高く、この距離が5
mmを超えるとこの効率が著しく低下するため5mm以
内にするのがよい。また、5mm以内であれば定着ベル
ト10の発熱層と励磁コイル18の距離が一定である必
要はない。
【0176】励磁コイル18の励磁コイル保持部材19
からの引出線すなわち18a・18b(図5)について
は、励磁コイル保持部材19から外の部分について束線
の外側に絶縁被覆を施している。
【0177】B)定着ベルト10 図8は本例における定着ベルト10の層構成模式図であ
る。本例の定着ベルト10は、電磁誘導発熱性の定着ベ
ルト10の基層となる金属ベルト等でできた発熱層1
と、その外面に積層した弾性層2と、その外面に積層し
た離型層3の複合構造のものである。発熱層1と弾性層
2との間の接着、弾性層2と離型層3との間の接着のた
め、各層間にプライマー層(不図示)を設けてもよい。
略円筒形状である定着ベルト10において発熱層1が内
面側であり、離型層3が外面側である。前述したよう
に、発熱層1に交番磁束が作用することで前記発熱層1
に渦電流が発生して前記発熱層1が発熱する。その熱が
弾性層2・離型層3を介して定着ベルト10を加熱し、
前記定着ニップNに通紙される被加熱材としての記録材
Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
【0178】a.発熱層1 発熱層1は、非磁性の金属でも良いが、より好ましくは
磁束の吸収の良いニッケル、鉄、磁性ステンレス、コバ
ルト−ニッケル合金等の強磁性体の金属が良い。
【0179】その厚みは次の式で表される表皮深さより
厚くかつ200μm以下にすることが好ましい。表皮深
さσ[m]は、励磁回路の周波数f[Hz]と透磁率μ
と固有抵抗ρ[Ωm]で σ=503×(ρ/fμ)1/2 と表される。
【0180】これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の
深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強
度は1/e以下になっており、逆にいうと殆どのエネル
ギーはこの深さまでで吸収されている。
【0181】発熱層1の厚さは好ましくは1〜200μ
mがよい。発熱層1の厚みが1μmよりも小さいとほと
んどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪く
なる。また、発熱層が200μmを超えると剛性が高く
なりすぎ、また屈曲性が悪くなり回転体として使用する
には現実的ではない。
【0182】b.弾性層2 弾性層2は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシ
リコーンゴム等で耐熱性がよく、熱伝導率がよい材質で
ある。
【0183】弾性層2の厚さは、画像を印刷する場合に
記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(離型層
3)が追従できないとによる光沢ムラを予防するため
に、10〜500μmが好ましい。
【0184】弾性層2の厚さが10μm未満では、弾性
部材としての機能が発揮されず、定着時の圧力分布が不
均一となることによって、特にフルカラー画像定着時に
二次色の未定着トナーを十分に加熱定着することができ
ずに定着画像のグロスにおいてムラを生じるだけでな
く、溶融不十分なことによってトナーの混色性が悪化
し、高精細なフルカラー画像が得られず好ましくない。
また、弾性層2の厚さが500μmを超えると、定着時
の熱伝導性が阻害され、定着面での熱追従性が悪化する
ことにより、クイックスタート性が犠牲になるだけでな
く、定着ムラを生じやすくなるため好ましくない。
【0185】弾性層2の硬度は、硬度が高すぎると記録
材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず、画像光沢ム
ラが発生してしまう。そこで、弾性層2の硬度として
は、60°(J1S−A)以下、より好ましくは45°
(JlS−A)以下がよい。
【0186】弾性層2の熱伝導率λに関しては、 2.5×10-3〜8.2×10-3[J/cm・sec・
deg.] がよい。
【0187】熱伝導率λが2.5×10-3[J/cm・
sec・deg.]よりも小さい場合には、熱抵抗が大
きく、定着ベルトの表層(離型層3)における温度上昇
が遅くなる。熱伝導率λが8.2×10-3[J/cm・
sec・deg.]よりも大きい場合には、硬度が高く
なりすぎたり、圧縮永久歪みが悪化する。
【0188】よって熱伝導率λは2.5×10-3〜8.
2×10-3[J/cm・sec・deg.]がよい。よ
り好ましくは3.3×10-3〜6.3×10-3[J/c
m・sec・deg.]がよい。
【0189】c.離型層3 離型層3はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリ
コーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、P
TFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択
することができる。
【0190】離型層3の厚さは1〜100μmが好まし
い。離型層3の厚さが1μmよりも小さいと塗膜の塗ム
ラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足すると
いった問題が発生する。また、離型層が100μmを超
えると熱伝導が悪化するという問題が発生し、特に樹脂
系の離型層の場合は硬度が高くなりすぎ、弾性層2の効
果がなくなってしまう。
【0191】本発明では、先述の低軟化点物質を含有し
たトナーの適用によって、トナー自身にも離型性があ
り、耐久性が向上する。
【0192】d.断熱層 また、定着ベルト10構成において、発熱層1のベルト
ガイド面側(発熱層1の弾性層2とは反対面側)に断熱
層(不図示)を設けてもよい。
【0193】断熱層としては、フッ素樹脂、ポリイミド
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEE
K樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTF
E樹脂、FEP樹脂などの耐熱樹脂がよい。
【0194】また、断熱層の厚さとしては10〜100
0μmが好ましい。断熱層の厚さが10μmよりも小さ
い場合には断熱効果が得られず、また、耐久性も不足す
る。一方、1000μmを超えると磁性コア17a・1
7b・17c及び励磁コイル18から発熱層1までの距
離が大きくなり、磁束が十分に発熱層1に吸収されなく
なる。
【0195】断熱層は、発熱層1に発生した熱が定着ベ
ルトの内側に向かわないように断熱できるので、断熱層
がない場合と比較して記録材P側への熱供給効率が良く
なる。よって、消費電力を抑えることができる。
【0196】C)ニップ 本発明の加熱定着装置における回転加熱部材と加圧部材
からなる定着ニップ部Nは、良好な定着性を確保するた
めに、幅5.0〜15.0mmのニップを形成している
とが好ましい。定着ニップN部の幅が5.0mm未満で
は、フルカラー画像形成時、トナーを定着するための熱
量を十分に未定着トナーに与えることができなくなり、
トナーを溶融混色できず、不自然なカラー画像となるた
め好ましくない。
【0197】また、定着ニップN部の幅が15.0mm
を超えると、トナーを定着するための熱量は十分に与え
ることができるものの、定着時のホットオフセットが発
生し易くなり、また、定着ニップ部Nの両端部(定着フ
ィルム10の上流側端部及び下流側端部)において曲率
変化が大きくなりすぎ、定着フィルム10の耐久性が著
しく悪化するため好ましくない。
【0198】D)面圧 本発明の加熱定着装置におけるニップ部の圧力(面圧)
は、記録材を介した状態で、面圧9〜500kN/m2
の範囲が好ましく、面圧30〜350kN/m2の範囲
がより好ましい。面圧が9kN/m2未満であると、記
録材の搬送ブレを発生しやすく、さらに定着圧力不足に
よる定着不良が起こるので好ましくない。また、面圧が
500kN/m2を超える場合、定着フィルム10の耐
久劣化が著しく悪化するため好ましくない。
【0199】ここでの面圧は、転写材に加えられる圧力
と、当接されている長さLRから、次式で算定する。
【0200】
【数4】
【0201】転写材に加えられる圧力の調節は、図3に
おけるバネ25a・25bのバネ圧により行うことがで
きる。すなわち、25a・25bに使用するバネのバネ
定数を任意に変更することによって、面圧を制御する。
また、バネ止め位置29a・29bと加圧ローラ30の
距離を制御することによって、面圧を制御することも可
能である。
【0202】E)定着フィルム10の周長、及び、定着
スピード 本例においては、電磁誘導により発熱する定着フィルム
10の周長及び定着フィルム10が一回転するのに要す
る時間を以下のように設定することによって、安定した
定着性を確保したまま、クイックスタートを実現し、か
つ消費電力を小さくしている。
【0203】定着フィルム10の発熱層1は薄いために
熱容量が小さく、また、金属のために熱伝導率が良いた
め放熱性がよい。そのため、定着フィルム10の周長L
が200mmを超える場合、定着フィルム10が一回転
する間の温度低下が大きすぎて、クイックスタートがで
きなくなる。また、周長の増加に伴う加熱面積の増加に
より、消費電力が大きくなってしまう。このため、定着
フィルム10の周長Lは200mm以下が望ましい。
【0204】一方、定着フィルム10の周長Lが70m
m未満の場合、定着ニップ部Nの両端部(定着フィルム
10の上流側端部及び下流側端部)において曲率変化が
大きくなりすぎ、定着フィルム10の耐久性が著しく悪
化する。このため、定着フィルム10の周長Lは70m
m以上が望ましい。
【0205】また、定着フィルム10の回転移動速度
(定着速度)は、5乃至300mm/secが実用性と
定着性を両立して確保する上で好ましく、50乃至28
0mm/secがより好ましい。
【0206】定着フィルム10の回転移動速度(定着速
度)が5mm/sec未満では、たとえオンデマンド定
着を実現しても出力の時間がかかり実用的でない。更
に、オフセットが発生しやすくなる。また、300mm
/secを超えると、定着フィルム10を安定して回転
させることができず、定着フィルム10を破損してしま
う。更に、低温定着性を損なうことにもなる。このた
め、定着フィルム10の回転移動速度Vとしてのプロセ
ススピードは300mm/sec以下が望ましい。
【0207】また、図12は、励磁コイルの交番磁束分
布を定着ニップに集中させて効率を向上させた電磁誘導
加熱方式の定着装置の一例の概略構成である。
【0208】10は電磁誘導発熱層(導電体層、磁性体
層、抵抗体層)を有する、電磁誘導発熱性の回転体とし
ての円筒状の定着フィルムである。
【0209】16は横断面略半円弧状樋型のフィルムガ
イド部材であり、円筒状定着フィルム10はこのフィル
ムガイド部材16の外側にルーズに外嵌させてある。
【0210】15はフィルムガイド部材16の内側に配
設した磁場発生手段であり、励磁コイル18とE型の磁
性コア(芯材)17とからなる。30は弾性加圧ローラ
であり、定着フィルム10を挟ませてフィルムガイド部
材16の下面と所定の圧接力をもって所定幅の定着ニッ
プ部Nを形成させて相互圧接させてある。上記磁場発生
手段15の磁性コア17は定着ニップ部Nに対応位置さ
せて配設してある。
【0211】加圧ローラ30は駆動手段Mにより矢示の
方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回転駆動
による該加圧ローラ30と定着フィルム10の外面との
摩擦力で定着フィルム10に回転力が作用して、該定着
フィルム10が、その内面が定着ニップ部Nにおいてフ
ィルムガイド部材16の下面に密着して摺動しながら、
矢示の方向に加圧ローラ30の回転周速度にほぼ対応し
た周速度をもってフィルムガイド部材16の外回りを回
転状態になる(加圧ローラ駆動方式)。
【0212】フィルムガイド部材16は、定着ニップ部
への加圧・磁場発生手段15としての励磁コイル18と
磁性コア17の支持、定着フィルム10の支持、該フィ
ルム10の回転時の搬送安定性を図る役目をする。この
フィルムガイド部材16は磁束の通過を妨げない絶縁性
の部材であり、高い荷重に耐えられる材料が用いられ
る。
【0213】励磁コイル18は、不図示の励磁回路から
供給される交番電流によって交番磁束を発生する。交番
磁束は、定着ニップ部Nの位置に対応しているE型の磁
性コア17により定着ニップ部Nに集中的に分布し、そ
の交番磁束は定着ニップ部Nにおいて定着フィルム10
の電磁誘導発熱層に渦電流を発生させる。この渦電流
は、電磁誘導発熱層の固有抵抗によって電磁誘導発熱層
にジュール熱を発生させる。
【0214】この定着フィルム10の電磁誘導発熱は、
交番磁束を集中的に分布させた定着ニップ部Nにおいて
集中的に生じて定着ニップ部Nが高効率に加熱される。
【0215】定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検
知手段を含む温調系により励磁コイル18に対する電流
供給が制御されることで、所定の温度が維持されるよう
に温調される。
【0216】而して、加圧ローラ30が回転駆動され、
それに伴って円筒状の定着フィルム10がフィルムガイ
ド部材16の外回りを回転し、励磁回路から励磁コイル
18への給電により上記のように定着フィルム10の電
磁誘導発熱がなされて定着ニップ部Nが所定の温度に立
ち上がって温調された状態において、不図示の画像形成
手段部から搬送された未定着トナー画像t1が形成され
た記録材Pが定着ニップ部Nの定着フィルム10と加圧
ローラ30との間に画像面が上向き、即ち定着フィルム
面に対向して導入され、定着ニップ部Nにおいて画像面
が定着フィルム10の外面に密着して定着フィルム10
と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されていく。この定
着ニップ部Nを定着フィルム10と一緒に記録材Pが挟
持搬送されていく過程において定着フィルム10の電磁
誘導発熱で加熱されて記録材P上の未定着トナー画像t
1が加熱定着される。記録材Pは、定着ニップ部Nを通
過すると回転定着フィルム10の外面から分離して排出
搬送されていく。
【0217】上述したように、本発明のトナーと、電磁
誘導加熱方式の定着装置を組み合わせることによって、
電磁誘導加熱方式の定着装置の利点であるクイックスタ
ート性及び省電力に優れた点を生かしつつ、優れた均一
性のある定着画像が安定して得られるようになる。
【0218】すなわち、トナーの定着フィルムへの融着
軽減のみならず、ワックスの酸価と水酸基価を制御する
ことでワックスによるフィルム劣化を抑制し、均一性の
ある定着画像が安定して得られる。
【0219】また、トナーが有する離型作用効果によっ
て、従来のローラ定着で使用していた定着時のシリコー
ンオイル等の離型性が全く不要なフルカラー画像形成が
可能になる。
【0220】かくして、本発明のトナーは、これらの性
能を高次元でバランスのとれた、まさに電子写真用の材
料として格好のトナーである。
【0221】
【実施例】以下、本発明をトナー製造例及び実施例によ
り具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定する
ものではない。尚、以下の配合における部数は全て質量
部である。
【0222】天然ワックス、及び種々の方法により合成
されたワックスの精製・ブレンドを行い、ワックスA〜
Eを得た。各ワックスの物性を表1にまとめる。
【0223】
【表1】
【0224】(トナー製造例1)高速撹拌装置TK−ホ
モミキサーを具備した2リットル用四つ口フラスコ中
に、イオン交換水710部と0.1mol/L−Na3
PO4水溶液450部を添加し、回転数を120S
-1(7000rpm)に調整し、60℃に加温せしめ
た。ここに、1.0mol/L−CaCl2水溶液68
部を徐々に添加し、微小な燐酸カルシウム塩を含む水系
分散媒体を調製した。
【0225】一方、 ・スチレン単量体/ブチルアクリレート単量体混合物 100部 (樹脂の設定Tg=57℃) ・ジビニルベンゼン 0.1部 ・C.I.ピグメントブルー15 5部 ・ワックスA 10部 ・ポリエステル樹脂 10部 ・ホウ素化合物 1部 上記材料をボールミルを用い3時間分散させた後、ボー
ルミルより内容物を単離した。この内容物に対して、重
合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル
バレロニトリル)4部を添加した後、該重合性単量体組
成物を、前記水系分散媒体中に投入し回転数120S-1
を維持しつつ造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌し
つつ65℃で重合を行った。
【0226】重合開始後5時間経過した後、90℃に昇
温し、3時間反応を継続した。その後、減圧蒸留するこ
とでトナー中の残存モノマー量を低減した。
【0227】反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加え
て難水溶性分散剤Ca3(PO42を溶解し、濾過、水
洗、乾燥し、重量平均径(D4)7.5μmの着色粒子
を得た。
【0228】上記着色粒子100部に対して、流動性向
上剤として疎水性シリカ微粉体(BET:200m2
g)1.5部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本
発明のトナー1とした。
【0229】このトナー1は、断面観察により、コア・
シェル構造が確認された。
【0230】更に、得られたトナーの円相当個数平均径
1(μm)、平均円形度、円形度標準偏差の測定を行
った。結果を表2にまとめた。
【0231】(トナー製造例2〜4)トナー製造例1で
用いた着色剤をC.I.ピグメントブルー15に変えて
C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメント
イエロー180、カーボンブラック(一次粒子径40n
m)をそれぞれ使用する以外は、トナー製造例1と同様
にして、トナー2〜4を調製した。
【0232】これらのトナーは、断面観察により、コア
・シェル構造が確認された。
【0233】更に、得られたトナーの円相当個数平均径
1(μm)、平均円形度、円形度標準偏差の測定を行
った。結果を表2にまとめた。
【0234】(トナー製造例5〜8)トナー製造例1で
用いたワックスAを、ワックスB〜Eにそれぞれ変更す
る以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー5〜8
を調製した。
【0235】これらのトナーは、断面観察により、コア
・シェル構造が確認された。
【0236】更に、得られたトナーの円相当個数平均径
1(μm)、平均円形度、円形度標準偏差の測定を行
った。結果を表2にまとめた。
【0237】
【表2】
【0238】実施例1〜5 本実施例に用いた画像形成装置について具体的に説明す
る。図1は、既に画像形成装置の一例として説明した
が、ここでは本実施例に用いた二成分現像方式の電子写
真プロセスを利用した市販のフルカラー複写機CLC−
800(キヤノン製)の定着装置を電磁誘導定着装置に
改造を施したものの概略図として示す。
【0239】感光体ドラム101は、基材上に有機光半
導体を有する感光層を有し、矢印方向に回転し、対抗し
接触回転する帯電ローラ102(導電性弾性層・芯金)
により感光体ドラム101上に約−600Vの表面電位
に帯電させる。露光103は、ポリゴンミラー109に
より感光体上にデジタル画像情報に応じてオン−オフさ
せることで露光部電位が−100V、暗部電位が−60
0Vの正電荷像が形成される。複数の現像器104Y、
104M、104C.I.04BKを用いイエロートナ
ー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを
感光体ドラム101上に反転現像方法を用いトナー像を
得た。該トナー像は、中間転写体105(弾性層、支持
体としての芯金)上に転写され中間転写体105上に四
色の色重ね顕色像が形成される。感光体101上の転写
残トナーはクリーナ107により回収される。
【0240】中間転写体105は、パイプ状の芯金にカ
ーボンブラックの導電付与部材をニトリル−ブタジエン
ラバー(NBR)中に十分分散させた弾性層をコーティ
ングした。該コート層の硬度は「JIS K−630
1」に準拠し30度で、且つ体積抵抗値は109Ω・c
mであった。感光体101から中間転写105への転写
に必要な転写電流は約5μAであり、これは電源より+
500Vを芯金上に付与することで得られた。
【0241】転写ローラ106として、直径10mmの
芯金上に、カーボンの導電性付与材をエチレン−プロピ
レン−ジエン系三次元共重合体(EPDM)の発泡体中
に十分分散させたものをコーティングすることにより生
成した弾性層の体積固有抵抗値が106Ω・cmで、
「JIS K−6301」に準拠した硬度が35度の値
を示すものを用いた。転写ローラには電圧を印可して1
5μAの転写電流を流した。
【0242】加熱定着装置(加熱手段)100には、電
磁誘導加熱方式の装置を用いた。
【0243】図2は本例の定着装置100の要部の横断
側面模式図、図3は要部の正面模式図、図4は要部の縦
断正面模式図である。本例の加熱定着装置100におい
ては、従来のオイル塗布機構を省略したものを用いた。
【0244】磁場発生手段は磁性コア17a・17b・
17c及び励磁コイル18からなる。
【0245】磁性コア17a・17b・17cはフェラ
イトである。また、励磁コイル18はコイル(線輪)を
構成させる導線(電線)として、一本ずつがそれぞれ絶
縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を
用い、これを複数回巻いて励磁コイルを形成している。
本例では10ターン巻いて励磁コイル18を形成してい
る。本例では、励磁コイルにおける励磁周波数の交番電
流を制御することで定着器ニップ部の温度を制御した。
【0246】図8は本例における定着ベルト10の層構
成模式図である。本例の定着ベルト10は、電磁誘導発
熱性の定着ベルト10の基層となる金属ベルト等ででき
た発熱層1と、その外面に積層した弾性層2と、その外
面に積層した離型層3の複合構造のものである。略円筒
形状である定着ベルト10において発熱層1が内面側で
あり、離型層3が外面側である。
【0247】定着ベルト10の発熱層1には、厚み8μ
mのニッケル層を用いた。
【0248】また、弾性層2は、厚さ120μmシリコ
ーンゴムで、「JIS K−6301」に準拠した硬度
が35度の値を示すものを用いた。
【0249】また、離型層3は厚さ30μmのフッ素樹
脂を有するものを用いた。
【0250】加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金
30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被
覆させた、耐熱性弾性フッ素ゴム30bとで構成されて
おり、加圧用剛性ステイ22の両端部と装置シャーシ側
のバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ加圧バ
ネ25a・25bを縮設することで加圧用構成ステイ2
2に押し下げ力を作用させている。これにより、ベルト
ガイド部材16aの下面と加圧ローラ30の上面とが定
着ベルト10を挟んで、80g/m2の紙を介した状態
において面圧125kN/m2で圧接して定着ニップ部
Nを8.5mm形成しているものである。
【0251】また、用いる現像剤は、アクリルコートフ
ェライトキャリア92質量部に対し、各トナー8質量部
を混合したものを現像剤とした。
【0252】以上の条件で、常温常湿(25℃,50%
RH)環境下、トナー1〜5を各々現像器104Y、1
04M、104C、104BKに充填し、画像出力を行
った。これらについて定着速度94mm/secの速度
で、定着温度を160,170,180,190℃とな
るよう定着装置を調整し、トナーを定着した。得られた
定着画像に対して、定着こすり試験を行い、定着性につ
いて評価した。
【0253】更に、これらトナー1〜5を用いて、フル
カラーの画像を形成したところ、トナー1〜4は、フル
カラーの画像形成において、二次色でトナー濃度の高い
ベタ部においても、定着光沢ムラが無く、定着性になん
ら問題のない定着画像が得られたが、トナー5は、低温
定着性がやや劣っていた。
【0254】結果を表3にまとめた。
【0255】比較例1〜3 実施例1〜5と同様にして、トナー6〜8を用いて画像
出力し、定着性について評価した。トナー6は、耐高温
オフセット性が劣り、トナー7は、低温定着性が劣り、
なおかつ、二次色でトナー濃度の高いベタ部において
も、定着光沢ムラが発生した。トナー8は、耐高温オフ
セット性が劣り、なおかつ、多数枚の連続定着テストに
おいて、定着フィルム劣化による、定着光沢ムラが発生
した。
【0256】結果を表3にまとめた。
【0257】実施例6 実施例1において用いた定着装置を、電磁誘導発熱性の
定着ベルト10の弾性層2の厚みを9μmにした定着装
置に変えた他は実施例1〜4で使用したトナーを用いて
フルカラー画像出力を行った。その画像を評価したとこ
ろ、定着自体には問題がないものの、二次色の高濃度部
分において、定着画像の光沢ムラが生じていることがわ
かった。さらに、この定着画像の光沢ムラが生じている
部分を、反射形の光学顕微鏡で約300倍に拡大して観
察した結果、トナー粒子が一部溶融せずに残留している
のが観察された。このことより、この定着画像の光沢ム
ラが生じたのは、電磁誘導発熱性の定着ベルト10の弾
性層2の厚みが不足し、記録材の凹凸あるいはトナー層
の凹凸に加熱面が追従できないことにより、トナーの部
分的な溶融不良を招いたのが原因と考えられる。
【0258】実施例7 実施例1において用いた定着装置を、電磁誘導発熱性の
定着ベルト10の弾性層2の厚みを510μmにした定
着装置に変えた他は実施例1〜4で使用したトナーを用
いてフルカラー画像出力を行った。その画像を評価した
ところ、定着自体には問題がないものの、二次色の高濃
度部分において、定着画像の先端部と後端部で若干の光
沢差が生じた。これは、弾性層が厚すぎるために熱追従
性が低下したためと考えられる。
【0259】比較例4 実施例1〜4において用いた定着装置を、図9に示した
サーフ定着装置(フィルム加熱方式におけるトナー画像
面と接し、且つフィルム状部材のトナー画像と接する面
と反対の面に設けられた加熱手段の熱をトナー画像に付
与する定着装置、;面圧120kN/m2;定着速度1
10mm/sec、定着ニップ近傍温度が180℃、ウ
ォームアップ20秒)に変えた他は同様の方法によっ
て、トナー1〜4を用いてフルカラー画像出力試験を行
った。その画像を評価したところ、定着画像内に光沢差
が縞模様として発生した。この光沢(グロス)が不安定
になったのは、電磁誘導加熱方式に比べて、サーフ定着
装置の加熱手段の熱追従性が悪いためと考えられる。従
って、かかるフルカラー画像定着装置としては、熱応答
性に劣るサーフ定着装置は適さないことがわかった。
【0260】
【表3】
【0261】本発明の実施例、並びに、比較例中に記載
の評価項目の説明とその評価基準について述べる。
【0262】[プリントアウト画像評価] ・定着性 A4のCLC−SK紙(キヤノン製;105g/m2
に単位面積あたりのトナー質量を0.6mg/cm2
なるように調整し、濃度測定用の10mm×10mmベ
タ画像を多数有する未定着画像を出力する。定着装置の
温度を任意の温度に安定させた後、この未定着画像を定
着した。このときの得られた定着画像の画像濃度を求
め、摺擦前の画像濃度とした。
【0263】さらに、得られた定着画像を50g/cm
2の加重をかけたシルボン紙で2回摺擦し、摺擦後の画
像濃度を測定し、その画像濃度低下率から以下に基づい
て評価した。 A:0.02未満 B:0.02以上、0.07未満 C:0.07以上、0.2未満 D:0.2以上
【0264】実施例8 本実施例では、画像形成装置をフルカラー画像形成装置
であるキヤノン製クリエイティブプロセッサ660を改
造して実施した。
【0265】クリエイティブプロセッサ660の具体的
な変更点を示す。 a.加熱定着装置(加熱手段)100に、電磁誘導加熱
方式の装置を用いた。加熱定着装置の詳細は以下に示す
部分を除いては、実施例1と同様の構成を用いた。 b.励磁コイルにおける励磁周波数の交番電流を調整
し、定着器ニップ部近傍の温度が180℃になるよう設
定した。 c.定着ベルト10において、発熱層1は、ニッケルを
主とする厚み15μmの層を用いた。弾性層2は、シリ
コーンゴムで、「JIS K−6301」に準拠した硬
度は35度の値を示すものを用い、厚さ80μmのもの
を用いた。離型層3はフッ素樹脂を有し、厚さ20μm
のものを用いた。 d.バネ25a、25bを調節し、80g/cm2の紙
を介した状態において面圧85kN/m2になるように
した。 e.定着速度をプロセス速度に一致させた。
【0266】上記クリエイティブプロセッサ660改造
機を用い、一成分のトナー(1)〜(4)を充填したカ
ートリッジに変更して、温度23℃/湿度65%RHの
環境下で連続して1000枚の画像出力を行った。得ら
れた画像を評価したところ、フルカラーの画像形成にお
いて、二次色でトナー濃度の高いベタ部においても、定
着光沢ムラが無く、定着性に何ら問題のない高精細なフ
ルカラー画像が得られた。
【0267】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
上記構成のトナーを、電磁誘導による加熱加圧定着装置
を用い記録材に定着画像を形成する画像形成方法に通用
することによって、クイックスタート性及び省電力に優
れた定着装置の利点を損なうことなく、広い非オフセッ
ト領域が得られ、混色性に優れ、更に定着光沢ムラの少
ない画像が安定して得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるフルカラーの画像形成装置の概
略図である。
【図2】本発明の加熱装置(定着装置)の概略横断側面
模式図である。
【図3】本発明の加熱装置要部の正面模式図である。
【図4】本発明の加熱装置要部の縦断正面模式図であ
る。
【図5】本発明の加熱装置にかかる磁場発生手段の模式
図である。
【図6】交番磁束の発生の様子を模式的に表したもので
ある。
【図7】本発明の加熱装置にかかる安全回路の回路図で
ある。
【図8】本発明の加熱装置にかかる定着ベルト(定着フ
ィルム)の層構成模式図である。
【図9】比較例に使用されるサーフ定着装置の概略構成
である。
【図10】電磁誘導加熱方式の定着装置の一例の概略構
成である。
【図11】本発明に使用されるワックスのDSC曲線の
一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 発熱層 2 弾性層 3 離型層 4 断熱層 10 定着ベルト 15 磁場発生手段 16,16a,16b フィルム(ベルト)ガイド部材 16e 凸リブ部 17,17a,17b,17c 磁性コア 18 励磁コイル 18a,18b 給電部 19 絶縁部材(励磁コイル保持部材) 22 加圧用剛性ステイ 23a,23b フランジ部材 25a,25b 加圧バネ 26 温度センサ 27 励磁回路 29a,29b バネ受け部材 30 加圧ローラ(弾性) 30a 芯金 30b 弾性材層 40 良熱伝導部材 50 サーモスイッチ 51 リレースイッチ 100 像加熱装置(定着装置) N 定着ニップ N1 一次転写ニップ N2 二次転写ニップ P 転写材(記録材) 101 感光体ドラム 102 帯電装置(帯電ローラ) 103 レーザー光 104 現像器 104Y イエロー現像器 104M マゼンタ現像器 104C シアン現像器 104BK 黒現像器 105 中間転写体ドラム 106 転写ローラ 107 クリーナ(感光体ドラム用クリーナ) 108 クリーナ(中間転写体ドラム用クリーナ) 109 ミラー 110 レーザー光学箱 T1 一次転写部 T2 二次転写部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲葉 功二 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 野中 克之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 半田 智史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 川上 宏明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H005 AA01 AA06 AA08 AA15 AA21 AB06 CA08 CA14 CA21 EA03 EA05 EA07 EA10 FB01 2H033 AA01 AA30 AA49 BA58 BB04 BB18 BE06 CA36

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁界発生手段と、電磁誘導により発
    熱する発熱層と離型層とを少なくとも有する回転加熱部
    材と、該回転加熱部材とニップを形成している回転加
    圧部材を少なくとも有する加熱加圧手段を使用し、該回
    転加熱部材に記録材を介して該回転加圧部材を押圧させ
    ながら、該記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記
    録材に定着画像を形成する画像形成方法に適用されるト
    ナーであり、 該トナーは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナ
    ーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにお
    いて、該トナーの円相当個数平均径D1(μm)が2〜
    10μmであり、且つ、該トナーの平均円形度が0.9
    20〜0.995で、円形度標準偏差が0.040未満
    であり、 該トナーは、結着樹脂と着色剤と低軟化点物質を少なく
    とも含有し、該低軟化点物質は、示差走査熱量計により
    測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピーク温度T
    pが50〜130℃であり、該ピークの半値幅T50が1
    5℃以下であり、かつ、酸価と水酸基価の合計が0.5
    〜10mgKOH/gであることを特徴とするトナー。
  2. 【請求項2】 該回転加熱部材の発熱層の厚さが1〜2
    00μm、離型層の厚さが1〜100μmであり、該回
    転加熱部材と回転加圧部材により形成されるニップ幅が
    5〜15mmであり、且つ、該回転加熱部材を記録を介
    して面圧9〜500kN/m2で該回転加圧部材を押圧
    しながら定着スピード5〜300mm/秒の条件でトナ
    ー画像を加熱加圧定着する画像形成方法に適用されるこ
    とを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 【請求項3】 該回転加熱部材に厚さ10〜500μm
    の弾性層を有することを特徴とする請求項1又は2に記
    載のトナー。
  4. 【請求項4】 該低軟化点物質は、示差走査熱量計によ
    り測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピーク温度
    Tpと該ピークの半値幅T50が、 5<Tp/T50<50 の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至3のい
    ずれかに記載のトナー。
  5. 【請求項5】 該低軟化点物質は、示差走査熱量計によ
    り測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピークの半
    値幅T50が10℃以下であることを特徴とする請求項1
    乃至4のいずれかに記載のトナー。
  6. 【請求項6】 該低軟化点物質の含有量が、トナー10
    0質量部当り1〜30質量部であることを特徴とする請
    求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
  7. 【請求項7】 該トナーは、重合性モノマー、該着色
    剤、該低軟化点物質を少なくとも含むモノマー組成物を
    直接重合して得られることを特徴とする請求項1乃至6
    のいずれかに記載のトナー。
  8. 【請求項8】 該トナーは、該モノマー組成物を水系媒
    体中で直接重合して得られることを特徴とする請求項7
    に記載のトナー。
  9. 【請求項9】 該トナーは、極性樹脂を含有しているこ
    とを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のトナ
    ー。
  10. 【請求項10】 該極性樹脂のガラス転移点(Tg)
    は、該結着樹脂のTgよりも高いことを特徴とする請求
    項9に記載のトナー。
  11. 【請求項11】 該極性樹脂がポリエステル樹脂である
    ことを特徴とする請求項9又は10のいずれかに記載の
    トナー。
  12. 【請求項12】 加熱加圧手段により記録材上のトナー
    画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する画
    像形成方法であって、 該加熱加圧手段は、磁界発生手段と、電磁誘導によ
    り発熱する発熱層と離型層とを少なくとも有する回転加
    熱部材と、該回転加熱部材とニップを形成している回
    転加圧部材を少なくとも有する加熱加圧手段であり、 該回転加熱部材に記録材を介して該回転加圧部材を押圧
    させながら該記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して
    記録材に定着画像を形成する画像形成方法において、 トナー画像を形成するためのトナーは、フロー式粒子像
    測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円
    形度スキャッタグラムにおいて、該トナーの円相当個数
    平均径D1(μm)が2〜10μmであり、且つ、該ト
    ナーの平均円形度が0.920〜0.995で、円形度
    標準偏差が0.040未満であり、 該トナーは、結着樹脂と着色剤と低軟化点物質を少なく
    とも含有し、該低軟化点物質は、示差走査熱量計により
    測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピーク温度T
    pが50〜130℃であり、該ピークの半値幅T50が1
    5℃以下であり、かつ、酸価と水酸基価の合計が0.5
    〜10mgKOH/gであることを特徴とする画像形成
    方法。
  13. 【請求項13】 該回転加熱部材の発熱層の厚さが1〜
    200μm、離型層の厚さが1〜100μmであり、該
    回転加熱部材と回転加圧部材により形成されるニップ幅
    が5〜15mmであり、且つ、該回転加熱部材を記録を
    介して面圧9〜500kN/m2で該回転加圧部材を押
    圧しながら定着スピード5〜300mm/秒の条件でト
    ナー画像を加熱加圧定着することを特徴とする請求項1
    2に記載の画像形成方法。
  14. 【請求項14】 該回転加熱部材に厚さ10〜500μ
    mの弾性層を有することを特徴とする請求項12又は1
    3に記載の画像形成方法。
  15. 【請求項15】 該低軟化点物質は、示差走査熱量計に
    より測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピーク温
    度Tpと該ピークの半値幅T50が、 5<Tp/T50<50 の関係を満足することを特徴とする請求項12乃至14
    のいずれかに記載の画像形成方法。
  16. 【請求項16】 該低軟化点物質は、示差走査熱量計に
    より測定されるDSC曲線で昇温時の最大吸熱ピークの
    半値幅T50が10℃以下であることを特徴とする請求項
    12乃至15のいずれかに記載の画像形成方法。
  17. 【請求項17】 該低軟化点物質の含有量が、トナー1
    00質量部当り1〜30質量部であることを特徴とする
    請求項12乃至16のいずれかに記載の画像形成方法。
  18. 【請求項18】 該トナーは、重合性モノマー、該着色
    剤、該低軟化点物質を少なくとも含むモノマー組成物を
    直接重合して得られることを特徴とする請求項12乃至
    17のいずれかに記載の画像形成方法。
  19. 【請求項19】 該トナーは、該モノマー組成物を水系
    媒体中で直接重合して得られることを特徴とする請求項
    18に記載の画像形成方法。
  20. 【請求項20】 該トナーは、極性樹脂を含有している
    ことを特徴とする請求項12乃至19のいずれかに記載
    の画像形成方法。
  21. 【請求項21】 該極性樹脂のガラス転移点(Tg)
    は、該結着樹脂のTgよりも高いことを特徴とする請求
    項20に記載の画像形成方法。
  22. 【請求項22】 該極性樹脂がポリエステル樹脂である
    ことを特徴とする請求項20又は21のいずれかに記載
    の画像形成方法。
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