本発明は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子を有するトナーである。
前記結着樹脂には、トナーに使用される公知の結着樹脂を用いることができる。
前記結着樹脂としてビニル系重合体を用いる場合、この重合体を形成することが出来る重合性単量体としては、ビニル系重合性単量体が挙げられる。ビニル系重合性単量体としては、例えばスチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリ
レートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトンが挙げられる。
特に、前記ビニル系重合体の中でも、ガラス転移温度が40℃を超えて100℃未満の重合体が好ましい。前記ビニル系重合体のガラス転移温度が40℃以下になると、定着時に定着ローラの如き定着手段への付着力が高くなり、トナー像を担持している転写材が定着手段から剥離しにくくなり、定着ローラへの転写材の巻付きという問題が生じやすい。さらに、トナー粒子全体の強度が低下して多数耐久試験時に転写性や現像特性の低下を招きやすい。得られた定着画像を長時間重ね合わせて置くと、ガラス転移温度が低い為に画像同士が貼り付くという問題も生じる場合がある。一方、ガラス転移温度が100℃以上になると、定着不良という問題が生じ易くなる。
前記ビニル系重合体のガラス転移温度は、後述する示差走査熱量計(DSC)を用い、ビニル系重合体を測定試料として測定して得られるリバーシングヒートフロー曲線から求められる。前記ビニル系重合体のガラス転移温度は、この曲線における吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値(℃)である。
結着樹脂のガラス転移温度は、結着樹脂の種類、組成、及び組成比、使用する重合性単量体の種類等によって調整することが可能である。
トナーのTHF不溶分の含有量は、0.0〜5.0質量%、より好ましくは0〜3.0質量%、最も好ましくは0〜1.0質量%である。
トナーのTHF不溶分とは、THF溶媒に対して不溶性となった超高分子ポリマー成分(実質的に架橋ポリマー)の質量割合を示す。トナーのTHF不溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
トナー1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて20時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、40℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の顔料の如き樹脂成分以外の成分の重量を(W3g)とする。THF不溶分は、下記式から求められる。
[数1]
THF不溶分(質量%)=(W1−(W3+W2))/(W1−W3)×100
トナーのTHF不溶分は、結着樹脂の重合度、架橋度によって調整することが可能である。
本発明におけるトナーのテトラヒドロフラン(THF)の可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、1万乃至100万が好ましい。トナーの重量平均分子量がこのような範囲にあると、環境安定性と耐久安定性がより一層良好に発現される。
本発明で用いられる着色剤としては、公知のものを使用することが出来る。
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト
、マグネタイトが挙げられる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180等が好適に用いられる。
橙色顔料としては、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アンスラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アンスラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好ましい。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合して、更には固溶体の状態で用いることが出来る。
本発明で使用される着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー粒子中への分散性の点から選択される。前記着色剤の添加量は、結着樹脂や極性樹脂等の樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましい。黒色着色剤としては磁性体を用いた場合には、他の着色剤と異なり、前記磁性体の添加量は、前記樹脂成分100質量部に対し30〜150質量部であることが好ましい。
前記着色剤には、公知の染料を、必要に応じて適当な処理を施して用いることも可能である。染料を処理する好ましい方法としては、予めこれらの染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられる。得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの
表面官能基と反応する物質(例えば、オルガノシロキサン等)でカーボンブラックの表面を疎水化する処理を行ってもよい。
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合にはその中に磁性粉である磁性体を含有させてもよい。このような磁性体としては、磁場の中におかれて磁化される物質が用いられ、例えば、鉄、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属の粉末、若しくはマグネタイト、フェライトの如き磁性酸化鉄の粉末がある。このような磁性体は、画像形成方法における現像工程でのトナーの搬送等に利用される他、着色剤としても機能する。
重合法を用いて磁性トナー粒子を得る場合に、磁性体の持つ重合阻害性や分散媒体移行性等に注意を払う必要がある。必要により磁性体には表面改質(例えば、重合阻害のない物質による表面処理)を施すことが好ましい。
本発明のトナーは、極性樹脂をさらに含有することが好ましい。前記極性樹脂はポリエステルを含有することが好ましい。このポリエステルを構成する単量体は、アルコール成分と酸成分とを含む。前記アルコール成分は、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA及び/又は直鎖アルキルジオールが全アルコール成分100mol%中の50mol%未満含有することが好ましい。前記酸成分は、直鎖型アリールジカルボン酸及び/又は直鎖アルキルジカルボン酸を全酸成分100mol%中の50mol%以上含有することが好ましい。
アルコール成分としてエチレンオキサイド変性ビスフェノールA及び/又は直鎖アルキルジオールが全アルコール成分100mol%中の50mol%以上の時には、帯電性や耐久性が低下し、スジが発生することがある。また、酸成分として直鎖型アリールジカルボン酸及び/又は直鎖アルキルジカルボン酸を全酸成分100mol%中の50mol%未満の時には帯電性や耐久性が低下し、スジが発生する場合がある。アルコール成分として、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA及び/又は直鎖アルキルジオールが全アルコール成分100mol%中の50mol%未満、酸成分として、直鎖型アリールジカルボン酸及び/又は直鎖アルキルジカルボン酸を全酸成分100mol%中の50mol%以上含有する時には樹脂の相分離能が向上し、均一なトナー構造となり、カブリ性能が特に良化する。
極性樹脂として用いられる樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂がビニル系モノマーにより変性された、これらの樹脂におけるビニル変性樹脂は特に好ましい。
本発明において特に好適に用いられる極性樹脂としては、ポリエステル樹脂又はその誘導体が挙げられる。その代表的な組成は以下の通りである。
ポリエステル樹脂は、多価のアルコールと多価のカルボン酸成分とから公知の製法によって構成することができる。ポリエステル樹脂を構成する単量体のうち、多価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、水素化ビスフェノールA、又は下記一般式(I)で表されるビスフェノール誘導体、また、下記一般式(II)で示されるジオール類等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で使用してもよいし、混合状態で使用してもよい。但し、これらに制限されるものではなく、他の三価以上のアルコール成分を架橋成分として用いることができる。
一般式(I)中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2〜10である。
一般式(II)中、R’は、以下に示すいずれかの基を示す。R’は同一であっても異なっていても良い。
ポリエステル樹脂を構成する単量体のうち、多価のカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物;及びテレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸の低級アルキルエステル;等を挙げることができる。特に、その主成分は、テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸の低級アルキルエステル又はその誘導体が好適である。
ポリエステル樹脂は下記の三価以上の酸成分を用いることにより、架橋させてもよい。架橋成分としては、トリメリット酸、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−エチル、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−ブチル、1,2,4−トリカルボン酸トリ−n−ヘキシル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリイソブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ−n−オクチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ−2−エチルヘキシル及びトリカルボン酸の低級アルキルエステルが使用できる。但し、これらに制限されるものではなく、他の三価以上の酸成分あるいは三価以上のカルボン酸低級アルキルエステルを架橋成分として用いることができる。
前記極性樹脂は、極性樹脂を20質量%含有する極性樹脂のトルエン溶液における光路長1cmのときの波長800nmの光の透過率を測定したときの透過率が50%以上であることが、着色力や混色性の観点から好ましい。前記透過率が50%未満の場合では、着色力や混色性が悪くなることがある。
前記透過率は、攪拌を伴わない以外は、トルエン−ヘキサン溶解度指数と同様の機器で測定することができる。なお、極性樹脂の透過率を計る場合では、トルエンにおける波長800nmの光の透過率を100%とする。
前記極性樹脂のトルエン溶液の透過率は、極性樹脂の種類や組成や重合度、極性樹脂を形成するモノマーの種類や使用量、極性樹脂を形成する際の重合条件等によって調整することが可能である。
前記極性樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)が2,500乃至15,000であることは、トナーの低温定着性を向上させる観点からより一層効果的である。Mwが2,500未満であると、前記極性樹脂の分子鎖間の相互作用が弱くなり、ブロッキングを起こしやすくなる場合がある。また、Mwが2,500未満であるとトナー粒子の製造過程においてトナー粒子同士の凝集が起こりやすくなる場合がある。
一方、Mwが15,000を超えると、分子鎖間の相互作用が強くなりすぎて、定着フィルムによる加熱加圧定着時における低温定着性の効果が少なくなる場合がある。また、水系又は親水性媒体中でトナー粒子を形成することでトナー粒子の表層付近に極性樹脂が局在化するため、上記の作用が特に顕著になる。また、Mwが15,000を超えると、前記極性樹脂を溶解して用いる場合に前記溶液の粘度が上昇し、粒度分布の制御が困難になる場合がある。
前記極性樹脂は、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、Mwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が20.0未満であることが好ましく、より好ましくは10.0未満である。Mw/Mnが20.0を超える場合には極低分子量成分や極高分子量成分の含有量が増加する。
前記極性樹脂は、THF可溶分のGPCによる分子量分布において、分子量500以上2,000未満の成分の含有量が0.1乃至25質量%であることが好ましい。上記範囲では分子量が500以上2,000未満といった低分子量成分に起因するトナー同士の凝集や帯電性不良をより一層防ぐことができ、耐ブロッキング性と帯電安定性に優れたトナーを得ることができる。前記低分子量成分の含有量が25%を超える範囲であると、前記極性樹脂の分子鎖間の相互作用が弱くなり、ブロッキングや帯電不良を起こす場合がある。0.1質量%未満では、低温定着性が低下する場合がある。
本発明で規定する分子量及び分子量分布は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(HLC−8120GPC 東ソー(株)社製)を用いて、下記の測定条件で測定することができる。
<測定条件>
・カラム(昭和電工株式会社製):Shodex GPC KF−801、Shodex
GPC KF−802、Shodex GPC KF−803、Shodex GPC
KF−804、Shodex GPC KF−805、Shodex GPC KF−806、Shodex GPC KF−807(8.0mmφ×30cm)の7連
・温度:40℃
・流速:0.6ml/min
・検出器:RI
・サンプル濃度:0.1%の試料を10μl
サンプル調製は、測定対象の試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、6時間放置した後、充分に振とうし(試料の合一体がなくなるまで)、更に1日以上静置して行う
。そして、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)を通過させたものをGPC測定用試料とする。検量線は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。
前記極性樹脂の分子量及び分子量分布は、極性樹脂の生成条件や生成に用いるモノマーの種類、極性樹脂の熱的又は機械的処理、特定の分子量ごとに予め分けられた極性樹脂の混合等によって調整することが可能である。
前記極性樹脂は、酸価が1.0mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が1.0mgKOH/g以上の場合には、定着特性と帯電特性のバランスがさらに良好になる。酸価が1.0mgKOH/g未満であると、帯電性に寄与する極性基が少ないため、帯電安定性が低下する場合がある。
また水系又は親水性媒体のような極性溶媒中で生成されるトナー粒子の場合、酸価が1.0mgKOH/g以上の場合には、酸成分がトナー粒子の表面近傍に集まるため、表層を形成することが可能である。
前記極性樹脂は、水酸基価が50mgKOH/g未満であることが好ましく、0乃至40mgKOH/g未満であることがより好ましい。水酸基価が50mgKOH/g以上の場合には、高温多湿下での帯電性が低くなる場合がある。さらにより好ましくは0乃至30mgKOH/gである。
前記極性樹脂の酸価は以下のように求められる。
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50ml加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定されたN/10カセイカリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量からつぎの計算で酸価を求める。
[数2]
酸価(mgKOH/g)=KOH(ml数)×N×56.1/試料質量(g)
(ただしNはN/10KOHのファクターであり、KOH(ml数)はアルコールカリ液の消費量を示す。)
また、前記極性樹脂の水酸基価は以下のように求められる。
200ml三角フラスコに試料6gを1mg単位で精秤し、無水酢酸/ピリジン=1/4の混合溶液を5mlホールピッペットで加え、更にピリジン25mlをメスシリンダで加える。三角フラスコに冷却器を取り付け、100℃のオイルバス中で90分反応させる。蒸留水3mlを冷却部上部から加えてよく振とうし10分間放置する。冷却器をつけたまま三角フラスコをオイルバスから引き上げて放冷し、約30℃になれば冷却器上部口から少量のアセトン(10ml程度)で冷却器及びフラスコ口を洗浄する。THF50mlをメスシリンダで加えフェノールフタレインのアルコール溶液を指示薬としてN/2KOH−THF溶液で50ml(目量0.1ml)のビュレットを用いて中和滴定する。中和終点直前に中性アルコール25ml(メタノール/アセトン=1/1容量比)を加え溶液が微紅色を呈するまで滴定を行う。同時に空試験も行う。
次いで下式に従って、水酸基価を求める。
上記式中、Aは本試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数であり、Bは空試験に要したN/2KOH−THF溶液のml数であり、fはN/2KOH−THF溶液の力価であり、Sは試料採取量(g)であり、Cは酸価(mgKOH/g)である。水酸基価には、二つの測定値の平均値を採用する。
前記極性樹脂の酸価は、(極性樹脂を形成するモノマー酸成分の種類や使用量、極性樹脂を形成する際の重合条件や酸性基を含有する重合性単量体モノマー)によって調整することが可能である。前記極性樹脂の水酸基価は、(極性樹脂を形成するモノマーアルコール成分の種類や使用量、極性樹脂を形成する際の重合条件や塩基性基を含有する重合性単量体モノマーに)よって調整することが可能である。
酸価が1.0mgKOH/g未満のポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸エステルから生成されたポリエステル樹脂が挙げられる。前記ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、好ましくは、前記一般式(I)で示されるビスフェノール誘導体であり、酸成分としては、テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
また、本発明に用いることのできるポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に、一価のカルボン酸成分、一価のアルコール成分を用いても良い。例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、等のモノカルボン酸;また、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の一種類以上の一官能性モノマー等を添加することができる。
本発明に用いることのできるポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分をエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、低沸点の多価アルコール成分を減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得る。エステル化又はエステル交換反応の時には必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等の通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒例えば、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等を公知のものを使用することができる。
また、重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
上記のポリエステルがビニル系モノマーにより変性されたビニル変性ポリエステルは特に好ましい。
ビニル変性ポリエステルはポリエステルとビニル系重合体が結合した構造を有し、内部保護性能はポリエステル骨格により与えられ、さらにビニル系重合体ユニットにより帯電安定性を向上させることができる。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂の主成分は通常はビニル系重合体であり、ビニル変性ポリエステル樹脂は、芳香族ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを付加重合したビニル系重合体とポリエステルとが化学的に結合したものであることが好ましい。
また、ビニル変性ポリエステル樹脂は、ポリエステルに含有される水酸基とビニル系重合体に含有される(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応、ポリエステルに含有される水酸基とビニル系重合体に含有されるカルボキシ基とのエステル反応により生成することができる。上記ビニル変性ポリエステル樹脂は、前記樹脂を構成するモノマー成分としてビニル系モノマーを1乃至60質量%含有していることが好ましく、より好ましくは10乃至50質量%であり、更には15乃至40質量%含有していることが好ましい。上記値が1質量%未満では帯電性能が劣る場合があり、また60質量%を超える場合には定着性能が劣る場合がある。
特に好ましいポリエステル又はビニル変性ポリエステル樹脂としては、前記樹脂を構成するアルコール成分としてビスフェノールA及び/又は直鎖アルキルジオールを全アルコール成分100mol%に対し50mol%未満含有し、酸成分として直鎖型アリールジカルボン酸及び/又は直鎖アルキルジカルボン酸を全酸成分100mol%中の50mol%以上することが好ましい。より好ましい酸成分としては、テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
また、本発明に用いることのできるポリエステル又はビニル変性ポリエステル樹脂は 特性を損なわない程度に、前述した一価のカルボン酸成分、一価のアルコール成分を用いても良い。
本発明のビニル変性ポリエステル樹脂を生成するために使用することが出来るビニル系単量体としては、スチレンと共重合可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。このようなビニル系重合性単量体としては、前述したビニル系重合性単量体が挙げられる。
本発明では、ビニル変性ポリエステル樹脂を生成する場合に、ビニル系共重合体とポリエステルと結合させる反応性基をポリエステル樹脂、ビニル系共重合体、ポリエステルを構成する単量体、及びビニル系重合性単量体の少なくともいずれかに含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
本発明のビニル変性ポリエステル樹脂の製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(4)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体を形成した後、これの存在下にポリエステルを重合しつつビニル変性ポリエステルを形成するする方法である。適宜、有機溶剤を使用することができる。
(2)ポリエステルを形成した後に、これの存在下にビニル系モノマーを重合しつつビニル変性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
(3)ビニル系重合体及びポリエステルを形成した後に、これらの重合体存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を添加することによりビニル変性ポリエステル樹脂を製造する方法である。この場合も適宜、有機溶剤
を使用することができる。
(4)ビニル系重合体及びポリエステルをそれぞれ形成した後エステル結合、アミド結合等により両者を結合させてビニル変性ポリエステル樹脂を製造する方法である。また、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)乃至(4)の製造方法において、低軟化点化合物の存在下に反応を行っても良い。
上記の(1)〜(4)の製造方法の中でも、特に(2)の製造方法が、ビニル系重合体ユニットの分子量制御が容易であり好ましい。
さらに上記(2)の製造方法でポリエステルユニットの末端のみにビニル基を導入し、ビニル系モノマーを重合することにより、ポリエステル末端をビニル系重合体が結合したブロック型を有するビニル変性ポリエステルは、低温定着性と帯電安定性との点から特に好ましい。
本発明で用いることのできる極性樹脂は再沈殿操作や洗浄によって精製したものでも良い。
前記極性樹脂は、樹脂中に分子鎖極性構造を有することが好ましい。分子鎖極性構造とは分子内の原子にδ+又はδ−の電子密度状態を多数有している分子構造のことである。
樹脂の分子は、複数の種類の原子から構成されており、その構成原子は固有の電気陰性度を有しており、原子によってその値は大きく異なっている。この電気陰性度の差により分子内では電子が局在化する。このときの局在化は、構成される原子の種類、数、結合様式によって状態が変化し、分子鎖の極性が変化する。
前記極性樹脂の好ましい分子鎖極性構造とは、例えば縮重合や付加重合により形成された結合構造が好ましい。例えばエステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)、アミド結合(−CONH−)、イミン結合(−NH−)、ウレタン結合(−NHCOO−)、ウレア結合(−NHCONH−)が挙げられる。
例えば、エーテル鎖(−CH2−O−CH2−)等では炭素原子上の電子が少し欠乏(δ+)していて、酸素原子上の電子は少し過剰(δ−)であり、さらに酸素原子を頂点とした結合角が生じている状態にある。このように分極した分子鎖が多数あれば、分子すなわち樹脂の極性が大きくなり、少なければ小さくなる。また、一般的に炭化水素からなる分子は極性が低い。
前記極性樹脂に分子鎖極性構造を有することは、トナーの帯電安定性をより一層向上させる。また水系又は親水性媒体のような極性溶媒中で生成されるトナー粒子の場合、分子鎖極性構造を有する極性樹脂が、トナー粒子の表面近傍により均一に存在することができ、トナーの高温高湿下、低温低湿下での帯電安定性や高速プリント時の耐久性がより一層向上する。
本発明のトナーは、前記極性樹脂をトナーに対して3乃至50質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは15乃至40質量%である。前記極性樹脂の含有量が3質量%未満の場合には、極性樹脂の低温定着性の効果が十分に発現されないことがある。また、水系媒体中または親水性媒体中で生成する場合には、トナー粒子において形成する表層の効果が十分に発現されないことがある。前記極性樹脂の含有量が50質量%を超える場合には高温側の定着領域が小さくなることがある。
本発明では、トナーの材料として、前述した結着樹脂、着色剤、及び極性樹脂以外の他の材料を用いることができる。以下に他の材料について説明する。
本発明に係わるトナーに使用可能な低軟化点化合物としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体等で、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂等も使用できる。
本発明で用いられる好ましい低軟化点化合物は、好ましくは、下記一般式(I)から(V)に属するエステルワックスである。
式中、a及びbは0〜4の整数であり、a+bは4である。R1及びR2は独立して炭素数が1〜40の有機基を示す。m及びnは0〜40の整数であり、mとnは同時に0になることはない。
式中、a及びbは0〜3の整数であり、a+bは1〜3である。R1及びR2は独立して炭素数が1〜40の有機基を示す。R3は水素原子又は炭素数が1以上の有機基である。kは1〜3の整数であり、a+b+k=4である。m及びnは0〜40の整数であり、mとnが同時に0になることはない。
式中、R1及びR3は炭素数1〜40の有機基であり、R1とR3は同じものであっても異なっていても良い。R2は炭素数1〜40の有機基を示す。
式中、R1及びR3は炭素数1〜40の有機基であり、R1とR3は同じものであってもなくてもよい。R2は炭素数1〜40の有機基を示す。
式中、aは0〜4の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは4である。R1は独立して炭素数1〜40の有機基を示す。m及びnは0〜40の整数であり、mとnが同時に0になることはない。
さらに低軟化点化合物の好ましい例としては、下記の化合物が挙げられる。
(1)CH3(CH2)20COO(CH2)21CH3
(2)CH3(CH2)17COO(CH2)9OOC(CH2)17CH3
(3)CH3(CH2)17OOC(CH2)18COO(CH2)17CH3
低軟化点化合物の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が300〜1,500のものが好ましい。低軟化点化合物の重量平均分子量が300未満になると低軟化点化合物のトナー粒子表面への露出が生じ易く、低軟化点化合物の重量平均分子量が1,500を超えると低温定着性が低下することがある。特に低軟化点化合物の重量平均分子量が400〜1,250の範囲のものが好ましい。更に、低軟化点化合物の重量平均分子量/数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5以下になると、低軟化点化合物のDSC吸熱曲線の極大ピークがよりシャープになり、室温時のトナー粒子の機械的強度が向上し、定着時にはシャープな溶融特性を示す特に優れたトナーの特性が得られる。
低軟化点化合物の分子量は、低軟化点化合物の種類や低軟化点化合物の熱的又は機械的処理等によって調整することが可能である。
前記低軟化点化合物は、測定されたDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値が、50〜100℃であることがより好ましくは、55〜90℃の値を示す化合物が好ましく、特に、DSC曲線の接線離脱温度が40℃以上の低軟化点化合物が一層好ましい。吸熱メインピークが、50℃未満であると、低軟化点化合物の自己凝集力が弱い為に、トナー粒子の内部又は中心部を構成しづらく、トナー粒子の製造時にトナー粒子の表面に低軟化点化合物が析出し、現像特性に悪影響を与えやすい。更に接線離脱温度が40℃未満になると、トナー粒子の強度が低下し、耐久試験時の現像特性の低下を招き易い。得られる定着画像も、低軟化点化合物の融点が低いことに起因して、べた付いた感じの画像になりやすい。
一方、吸熱メインピークが100℃を超えると、定着時に低軟化点化合物が浸み出しにくく、低温定着性が低下する。更に、直接重合方法によりトナー粒子を生成する場合には、重合性単量体組成物中への溶解性が低下し、水系媒体中での重合性単量体組成物のトナー粒子径サイズへの液滴の造粒中に低軟化点化合物が析出して造粒が困難となり好ましく
ない。低軟化点化合物の吸熱メインピークは、低軟化点化合物の種類によって調整することが可能である。
さらに両面画像を形成せしめる際においては、最初に表面に形成された転写材上のトナー像が、次に裏面に画像を形成する時にも定着器の加熱部を再度通過する可能性があり、その際のトナーの定着画像の耐高温オフセット性を十分に考慮する必要がある。具体的には、低軟化点化合物をトナー粒子中に2〜30質量%添加することが好ましい。低軟化点化合物の添加量が2質量%未満の添加では耐高温オフセット性が低下し、更に両面画像の定着時において裏面の画像がオフセット現象を示す場合がある。低軟化点化合物の添加量が30質量%より多い場合は、重合法による製造において造粒時にトナー粒子の合一が起き易く、粒度分布の広いものが生成し易い。
本発明においては、トナーの帯電性を制御する目的で、トナー粒子中に荷電制御剤を添加しておくことが好ましい。
これらの荷電制御剤としては、公知のもののうち、重合阻害性、水相移行性の殆どないものが好ましい。例えば、正荷電制御剤としてトリフェニルメタン系染料、四級アンモニウム塩、グアニジン誘導体、イミダゾール誘導体、アミン系化合物、ニグロシン系染料等が挙げられる。負荷電制御剤としては、含金属サリチル酸共重合体、含金属モノアゾ系染料化合物、尿素誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体が挙げられる。
これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合体単量体の0.1〜10質量%が好ましい。
前記トナー粒子は、結着樹脂を材料として用いる場合は、少なくとも結着樹脂及び極性樹脂を溶解する溶剤に結着樹脂及び極性樹脂を溶解させて水系媒体又は親水性媒体中で攪拌する工程を含む方法によって、水系媒体中又は親水性媒体中で生成することができる。また、トナー粒子は、結着樹脂を形成する重合性単量体を材料として用いる場合は、極性樹脂を重合性単量体に溶解させて水系媒体又は親水性媒体中で攪拌し、その状態で重合性単量体を重合させる工程を含む方法によって水系媒体中又は親水性媒体中で生成することができる。
極性樹脂と結着樹脂を可溶な溶媒に溶解した極性樹脂組成物を水系又は親水性溶媒中で粒子を形成した場合、このとき粒子内で極性樹脂と結着樹脂と溶媒は分子レベルで混じりあっている親和性の高い状態にある。この状態から親和性の低くなるような状態、例えば溶媒を留去し両者の溶解性が小さくなるような状態にすることによって、極性樹脂は適度に析出する。溶媒留去直後から徐々に極性樹脂の析出分離が始まり、より均一な表層を形成することが可能となる。
さらに前記溶媒が重合性単量体である場合は、初めは極性樹脂と結着樹脂と重合性単量体は分子レベルで混じりあっている親和性の高い状態にある。この状態から重合性単量体をラジカル開始剤等で重合を行うと、極性樹脂と結着樹脂を溶解していた重合性単量体が徐々に減少し重合性単量体からなる樹脂が生成する。このとき極性樹脂と結着樹脂と重合性単量体からなる樹脂の間で親和性が低くなる状態へと徐々に変化するため、極性樹脂は析出しやすいため、重合開始直後から均一に分離が始まり、より均一な表層を形成することが可能となる。
さらに水系又は親水性溶媒中で粒子を形成した場合、極性樹脂の分子鎖に親水性基を有することによってより表層に局在化することができる。
前記水系媒体には、水そのものや有機溶剤や塩の水溶液等の水を主成分とする液状の媒体を用いることができる。前記親水性溶媒には、低級アルコールやアセトン、酢酸エチル等の水溶性の有機溶剤を主成分とする液状の媒体を用いることができる。前記溶媒には、結着樹脂及び極性樹脂、トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である樹脂等の、トナー粒子に含有されるその他の材料を保持するための樹脂成分を溶解させることができる公知の各種有機溶剤を用いることができる。
なお、トナー粒子の生成方法は、トナー粒子の断面を観察し、トナー粒子の材料の存在の偏りや、層の形成の有無等によって確認することができる。
本発明においては、乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合、塩析を用いる重合法等によって、媒体中で直接トナー粒子を製造する方法(重合法)が好ましい。すなわち、前記トナー粒子は、重合性単量体と前記着色剤とを有する単量体組成物を水系媒体中で造粒させ、前記単量体組成物を重合させて製造された粒子であることが好ましく、重合性単量体と前記着色剤と前記極性樹脂とを有する単量体組成物を水系媒体中で造粒させ、前記単量体組成物を重合させて製造された粒子であることがより好ましい。
この重合法においては、重合性単量体及び着色剤及びポリエステル樹脂(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、極性樹脂、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。この重合法で得られるトナー粒子は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っていて帯電量の分布も比較的均一となるため高い転写性を有している。
トナー粒子を重合法で製造する際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパー
オキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート等の如きアゾ系、又はジアゾ系又は過酸化物系重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、重合性単量体の0.5〜20質量%の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
前記重合法では、トナー粒子の結着樹脂の分子量をコントロールする為に、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001〜15質量%である。
また前記重合法では、トナー粒子の結着樹脂の分子量をコントロールする為に、架橋剤を添加してもよい。例えば、架橋性モノマーとしては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたものが挙げられる。
多官能の架橋性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。架橋性モノマーの好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001〜15質量%である。
本発明において、乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合、塩析を用いる重合法等によって、重合法トナーを製造する際に用いられる分散媒には、いずれか適当な安定剤を使用する。
例えば、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸過マグネシウム、水酸過アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
有機化合物として、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロールのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプンポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−eu−メタクリル酸)共重合体やノニオン系或いはイオン系界面活性剤等が使用される。
また、乳化重合法を用いる場合には、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が使用される。これらの安定剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2〜30質量部を使用することが好ましい。
これら安定化剤の中で、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい粒子を得るために、分散媒中にて前記無機化合物を生成させても良い。
また、これら安定化剤の微細な分散の為に、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を使用しても良い。これは上記分散安定化剤の所期の作用を促進する為のものであり、その具体例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
トナー粒子の製造工程中、重合反応後半に昇温してもよく、未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、反応後半又は重合反応終了後に一部分散媒体を反応系から留去してもよい。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥する。
懸濁重合法においては、重合性単量体組成物100質量部に対して水300〜3,000質量部を分散媒体として使用するのが好ましい。
懸濁溶解法においては、樹脂100重量部に対して有機溶媒30乃至300重量部を溶解媒体として使用するのが好ましい。
懸濁溶解法においては、少なくとも結着樹脂や極性樹脂等の樹脂と着色剤と有機溶媒を含む溶解組成物100質量部に対して水300〜3,000質量部を分散媒体として使用するのが好ましい。
また、本発明では、トナー粒子は、前述した重合法以外の他の方法によって製造することもできる。すなわち、前記トナー粒子は、前記極性樹脂と前記着色剤とトルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である樹脂と有機溶媒とを有する組成物を水系媒体中で造粒させ、前記有機溶媒を除去して製造された粒子であることが好ましい。
本発明では、トナー粒子に公知の外添剤を外添してトナーとすることができる。前記外添剤として用いることのできる、各種特性付与を目的とした添加剤は、トナーに添加した時の耐久性から、トナー粒子の体積平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。これらの特性付与を目的とした添加剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
1)流動性付与剤:金属酸化物(例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン)、カーボンブラック及びフッ化カーボン。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム)、カーボンブラック。
これら添加剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.1〜10重量部が用いられ、好ましくは0.1〜5重量部が用いられる。これら添加剤は、単独で用いても、又、複数併用しても良い。
本発明のトナーは、トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である。前記トナーのトルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70の場合には、トルエンへの溶解性が適度な成
分、例えば架橋樹脂、極性樹脂等を含有し、適度にトルエンまたは結着樹脂との親和性を有することを示している。
本発明のトナーは結着樹脂とトルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分との間に親和性と非親和性とが適度に存在する。結着樹脂と前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分との間に親和性があることにより結着樹脂と前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分との接着力が強固になり、さらに非親和性があることにより均一な相分離が起こりやすくなり、より均一な表層構造を形成することが可能になる。
トナーのトルエン−ヘキサン溶解度指数が70を超える場合には、結着樹脂と前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分との親和性が高くなりすぎ、相分離が均一にならないため、着色力や耐久性、帯電性が低下することがある。一方、前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30未満であると、結着樹脂と前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分との親和性が低すぎて、トナー粒子間の着色剤やトルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70である成分の含有量にバラツキが生じて耐久性や帯電性や着色力が低下することがある。
本発明で規定するトルエン−ヘキサン溶解度指数とは、トナーのトルエン可溶分にヘキサンを添加していったとき成分が析出し始めるヘキサンの添加量で規定されるものである。前記トルエン−ヘキサン溶解度指数は、前記トナーのトルエン可溶分における析出成分が結着樹脂と非極性化合物のどちらに親和しやすいのかを相対的に示す指標となる。トルエン−ヘキサン溶解度指数が大きい値であるほど、前記トナーのトルエン可溶分における析出成分と非極性化合物との親和性が大きいことを示し、小さい値であるほど前記トナーのトルエン可溶分における析出成分と非極性化合物との親和性が小さいことを示す。具体的には、例えば島津自記分光光度計、UV−3300(島津社製)を用い、石英セル内を撹拌できるようにした装置で下記の測定条件で測定することができる。
<測定条件>
−樹脂の場合−(25℃の条件下でサンプル調製及び測定を行う。)
樹脂100.0質量部をトルエン 500.0質量部に溶解させたトルエン溶液(液温25℃)を調製する。樹脂を溶解して12時間以上24時間未満放置したものをサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過してトルエン不溶分を濾別し、濾液を
測定用試料とする。こうして得られた測定用試料を、光路長1cmの石英セルに入れて、透過光スペクトルを測定し、前記測定用試料における波長800nmの光の透過率を100%とする。
測定用試料120.0質量部を精秤し、n−ヘキサンを徐々に加えたとき、波長800nmの光の透過率が50%となったときのヘキサン添加量(質量部)の値を樹脂のトルエン−ヘキサン溶解度指数とする。その代表的な一例の透過率曲線模式図を図1に示す。
前記トルエンーヘキサン溶解度指数は、極性樹脂の種類や組成や重合度、極性樹脂を形成するモノマーの種類や使用量、極性樹脂を形成する際の重合条件等によって調整することが可能である。
<測定条件>
−トナーの場合−(25℃の条件下でサンプル調製及び測定を行う。)
トナー100.0質量部をトルエン 500.0質量部に溶解させたトルエン溶液を調製する。トナーを溶解して12時間以上24時間未満放置したものをサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過してトルエン不溶分を濾別し、濾液を測定用試料
とする。こうして得られた測定用試料を、光路長1cmの石英セルに入れて、透過光スペクトルを測定し、前記測定用試料における波長800nmの光の透過率を100%とする。
測定用試料120.0質量部を精秤し、n−ヘキサンを徐々に加えたとき、波長800nmの光の透過率が50%となったときのヘキサン添加量(質量部)の値をトナーのトルエン−ヘキサン溶解度指数とする。
前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が30〜70の成分は極性樹脂が好ましい。樹脂中の極性を変えて、適度に親和性を変えることができるからである。
本発明のトナーは、50乃至100℃に融点を有することが好ましい。トナーの融点は、より好ましくは50〜90℃であり、最も好ましくは52〜85℃である。トナーの融点は示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。トナーの融点は、例えば比較的低い温度で軟化する前述した低軟化点化合物をトナー粒子の材料として用いることによって調整することが可能である。
前記トナー粒子は、コア粒子と、このコア粒子を覆う表層とを有するコア・シェル構造を有することが好ましい。コア・シェル構造は、前述した水系媒体又は親水性媒体を用いてトナー粒子を生成するにあたり、前記極性樹脂に対して前記トルエン−ヘキサン溶解度指数が異なる樹脂を、結着樹脂又は結着樹脂及び極性樹脂以外の他の樹脂をトナー粒子の材料に用いることによって形成することができる。
前記コア・シェル構造のトナー粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたトナー粒子の断面の像から求められるトナー粒子の短軸直径と個数平均表層厚みの標準偏差とから求められる表層厚みの変動係数Kが10以下であることが好ましい。表層厚みの変動係数Kが10より大きい場合には、前記表層が均一でなく、トナー粒子中での極性樹脂の厚みに差が生じやすく、ブロッキング性の低下や環境安定性の低下、高速プリント時における耐久性の低下が発生する場合がある。
前記トナー粒子の個数平均表層厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたトナー粒子の断面の像から求められる平均短軸直径rtem.av.に対して1.0〜50%であることが好ましい。個数平均表層厚みが平均短軸直径に対して1.0%未満では、着色剤や低軟化点化合物を十分に覆うことが出来ず、帯電性や耐久安定性が低下する場合がある。また、個数平均表層厚みが平均短軸直径に対して50%を超えると、定着時の低軟化点化合物の浸みだしを阻害し、離型性が低下する場合がある。より好ましい前記個数平均表層厚みは1.5〜10%である。
前記表層厚みの変動係数、短軸直径、長軸直径及び前記個数平均表層厚みは、トナー粒子の断面の形態を測定することによって求めることができる。トナー粒子の断面の形態を測定する具体的方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、温度40℃で2日間放置して硬化させ、得られた硬化物を、ダイアモンド歯を備えたミクロトームを用いて薄片状のサンプルを切り出し、四三酸化ルテニウムと四三酸化オスニウムを併用し、若干の結晶化度の違いに起因する染色を施し、さらに電子線をあてることにより、電子密度によるコントラストの違いを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影し、その写真を撮る。その代表的な一例の模式図を図2に示す。
得られたTEM写真をもとに、トナー粒子の断面においてトナー粒子の表面同士を直線で結んだときに最も長い直線をトナー粒子の長軸とし、その長さを長軸直径Rtem(μm)とする。また、長軸の中心を通り長軸に垂直な方向の直線がトナー粒子(表層)の表
面と交わる二点の間の距離を短軸直径rtem(μm)とする。トナーの重量平均粒径D4(μm)の±20%となる断面写真におけるコア粒子の短軸直径rk(μm)としたとき、下記式(1)で表される表層厚みVを累積100個以上になるように測定する。その平均をもって、個数平均表層厚みVav(μm)としその標準偏差をS.D.avとする。
[数4]
V(μm)=(rtem−rk)/2 (1)
表層厚みの変動係数K(%)は、平均表層厚みVavの標準偏差をS.D.avとしたとき、下記式(2)により求められる
[数5]
K=S.D.av/Vav×100 (2)
前記短軸直径及び長軸直径は、前記表層の厚さによって調整することが可能である。前記表層の厚さは、前記極性樹脂と前記結着樹脂等のトナー粒子の材料となる他の樹脂との配合比によって調整することが可能である。また前記表層厚みの変動係数及び前記個数平均表層厚みは、トナー粒子の材料として用いられるそれぞれの樹脂の前記トルエン−ヘキサン溶解度指数によって調整することが可能である。
本発明のトナーは、流出開始温度(℃)Tfbが60℃乃至95℃であることが好ましい。トナーの流出開始温度Tfbが60℃未満では、低温側オフセット終了温度が低くなるが耐ブロッキング性に劣ることがある。一方95℃よりも高いときは耐高温オフセット性に優れるが、低温定着性が悪くなることがある。
本発明のトナーはフローテスターカーブより求められる最終流出温度(℃)TendがTh+10≦Tend≦Th+50であることが好ましい。トナーの最終流出温度TendがTh+10℃より低い時は、確かに定着画像表面の平滑性は高く、見た感じの鮮やかさはあるものの、耐久においてオフセットが発生しやすくなる。さらに耐保存安定性が乏しく、現像器内でのトナー融着といった新たな問題も懸念される。一方、トナーの最終流出温度TendがTh+50℃より高い場合には、画像部での表面平滑性が大幅に低下し、低温定着性が悪くなることがある。よってトナーの最終流出温度TendはTh+10乃至Th+50℃であることがより好ましく、Th+10℃乃至Th+35℃であることがより一層好ましい。
本発明において、トナーの溶融挙動は、所定の圧力で崩れないように所定の圧力以上の圧力で加圧成形されたトナーの成形品を一定の速度で昇温する環境下で、前記成形品に比べて十分に小さい内径の細管に向けてプランジャーによって所定の圧力で押圧したときの温度とプランジャーの移動距離とを示すフローテスターカーブから求めることができる。
より具体的には、トナーの溶融挙動の測定は、図3に示す高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−500形)を用いて測定することができる。先ず加圧成形器を用いて10MPaの圧力で1分間成形した重量1.0gの試料F3を昇温速度5.0℃/minでプランジャーF1により10kgf(98N)の荷重をかけ直径1.0mm、長さ1.0mmのノズルF4より押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量を測定する。
この時、フローテスターのプランジャー降下量−温度曲線(図4に示すフローテスター流出曲線参照)を描き、流出開始接線離脱温度(前記曲線が横ばいから上方へ曲がり始め
たときの温度)を流出開始温度Tfb(℃)とし、試料の95%以上が流出しかつプランジャー降下率が0になる温度(最大降下量で温度曲線に平行に直線を引きフローテスター流出曲線がこの直線から離脱する温度)を最終流出温度Tendとする。
前記流出開始温度Tfb及び最終流出温度Tendは、(結着樹脂の組成、重合度、架橋度)によって調整することが可能である。
トナーのトナートルエン可溶分溶液のトルエン−ヘキサン溶解度指数が得られる、波長800nmの光の透過率が50%となるトルエン−ヘキサン混合溶媒における析出物のTHF可溶分の重量平均分子量(TH−Mw)が2,500乃至18,000であることが好ましい。TH−Mwが2,500未満だと、ブロッキング性や帯電性が悪くなる。TH−Mwが18,000以上だと、低温定着性や低軟化点化合物の浸みだしを阻害するため耐オフセット性が悪くなる。
<析出物の分離方法>
(25℃の条件下でサンプル調製及び測定を行う。)
トナー100.0質量部をトルエン500.0質量部に溶解させたトルエン溶液を調製する。トナーを溶解して12時間以上24時間未満放置したものをサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)で濾過してトルエン不溶分を濾別し、濾液を析出物用試料とする。こうして得られた析出物用試料120.0質量部にトナーのトルエン−ヘキサン溶解度指数のn−ヘキサン(質量部)を加え(例えばトナーのトルエン−ヘキサン溶解度指数が35の場合、上記析出物用試料120.0質量部にn−ヘキサンを35質量部加える)、その後2時間放置する。それから遠心分離(500rpm/20min)により析出物を沈降させた後、析出物を濾別またはデカンテーションにて分離し、乾燥して析出物を得る。
前記析出物のTHF可溶分の重量平均分子量(TH−Mw)は、トナー粒子に配合される樹脂の重合平均分子量、結着樹脂の架橋度等によって調整することが可能である。
前記析出物のトナー中の含有率は、トナー中に0.5〜50質量%含まれることが好ましい。前記析出物のトナー中の含有量が0.5質量%未満の場合には耐ブロッキング性と帯電性が低下する場合がある。また前記析出物のトナー中の含有量が50質量%よりも多いと環境安定性が低下する場合がある。
前記析出物の酸価は、1.0〜20.0mgKOH/gであることが好ましい。前記酸価が1.0mgKOH/g以上の場合には帯電性が低下する場合がある。また20.0mgKOH/g未満の場合には環境安定性が低下する場合がある。析出物の酸価は、トナーから必要量の析出物を取り出し、極性樹脂と同様に測定することによって求められる。また、析出物の酸価は、結着樹脂の種類、配合量、重合度、架橋度によって調整することが可能である。
本発明のトナーは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるリバーシングヒートフロー曲線において、吸熱メインピークが40〜130℃の範囲にあり、該リバーシングヒートフロー曲線の35〜135℃までの熱量積分値Qがトナー1g当たり10〜35Jになるようにトナーを構成し、上記したように20質量倍の前記トナーをトルエンに溶解した所定の質量部のトナートルエン溶液にヘキサンを添加したときに、前記トナートルエン溶液における波長800nmの光の透過率が50%になったときのヘキサンの添加質量部で表されるトルエン−ヘキサン溶解度指数が所定の範囲になるようにトナーを構成することにより、所望の高性能なトナーを得ることができる。
本発明で規定する構成のうち、示差走査熱量分析(DSC)によって測定されるリバーシングヒートフロー曲線において、吸熱メインピークが40〜130℃の範囲にあり、35〜135℃までのピーク面積で表される熱量積分値Qがトナー1g当たり10〜35Jの範囲にあるとすることにより、低温定着時においても良好な離型性を示すことができる。
更に低軟化点化合物が、結着樹脂のポリマー鎖間の分子間力を適度に緩和し、定着時の吸熱によるトナーの軟化とトナーの放熱による樹脂の硬化が適当な状態を形成することができる。該リバーシングヒートフロー曲線のピーク面積で表される熱量積分値Qは、低軟化点化合物の種類やその含有量等を適宜選択することにより、調整することができる。
なお、該リバーシングヒートフロー曲線の吸熱メインピークは、50〜110℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは60〜90℃である。また、35℃と135℃での測定点を結ぶ直線とリバーシングヒートフロー曲線とで囲まれた領域で表される熱量積分値Q(J/g)は、トナー1g当たり10〜35Jであることがより好ましい。
尚、35℃と135℃での測定点を結ぶ直線とリバーシングヒートフロー曲線とで囲まれた領域で表される熱量積分値Q(J/g)がトナー1g当たり10J未満であると、定着性が悪化し、定着画像のグロスは低くなり、また、定着部材等の削れや傷に対する抑制が見込めないことがある。一方、該吸熱メインピークの熱量積分値Qがトナー1g当たり35Jを越えると、低軟化点化合物の可塑効果が大きくなりすぎ、耐オフセット性が悪化することがある。
<DSC測定>
本発明において、示差走査熱量計(DSC)としてM−DSC(TA−インストルメンツ社製)を用いる。測定する試料は6mgに精秤されたトナーである。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲20℃〜200℃の間で、昇温速度1℃/分で常温常湿下で測定を行う。このときのモジュレーション振幅±0.5℃、周波数1/minで測定する。得られるリバーシングヒートフロー曲線から最大ガラス転移点Tg(℃)を計算する。Tgは、吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値(℃)である。DSCによって測定される昇温時の吸熱チャートにおいて、吸熱メインピークのピーク面積で表されるトナー1g当たりの熱量積分値(J/g)を測定する。熱量積分値(J/g)は、上記の測定から得られたリバーシングヒートフロー曲線を用いて求める。計算には解析ソフトユニバーサルアナリシス Ver.2.5H (TAインスツルメンツ社製)を用い、IntegralPeakLinearの機能を用いる。35℃と135℃での測定点を結ぶ直線とリバーシングヒートフロー曲線とで囲まれた領域から熱量積分値(J/g)を求める。
本発明におけるトナーのテトラヒドロフラン(THF)の可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mnは、5乃至100が好ましい。
トナーの前記分子量は、前記極性樹脂の分子量と同様に測定することができる。また、トナーの前記分子量は、トナー粒子の材料の種類やその重合度によって調整することが可能である。
本発明のトナーは、好ましくは2〜12μmの重量平均粒径を有し、より好ましくは4〜9μmの重量平均粒径を有し、さらに好ましくは5〜8μmの重量平均粒径を有することが良い。
トナーの重量平均粒径は、電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加し、試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより、100μmのアパーチャーを用いて、体積を基準として2〜40μmの粒度分布等を測定し、個数平均粒径、重量平均粒径を算出することによって求めることができる。またトナーの重量平均粒径は、分級や分級品の混合等によって調整することが可能である。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は35乃至90℃、好ましくは40乃至80℃が良い。より好ましくは45乃至70℃が良い。ガラス転移温度が40℃未満の場合には、トナーの耐ブロッキング性が低下することがある。ガラス転移温度が90℃を超える場合には、トナーの耐低温オフセット性、オーバーヘッドプロジェクター用フィルムの透過画像の透明性が低下することがある。トナーのガラス転移温度は、ビニル系重合体と同様に測定することができる。また、トナーのガラス転移温度は、用いるトナー材料の種類やその配合量によって調整することが可能である。
本発明のトナーは、そのまま一成分現像剤とすることもできるし、さらにキャリア粒子と混合して二成分現像剤とすることもできる。前記キャリアには、磁性体の粒子そのもの、磁性体の粒子を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリア、樹脂中に磁性体の粒子を分散した磁性体分散型樹脂キャリア等の公知のキャリアを用いることができる。
次に、本発明のトナーを用いる画像形成方法に用いられる装置ユニットに関して、図面を用いて説明する。前記装置ユニットには、トナー担持体と静電潜像担持体である感光体表面とが接触している公知の画像形成装置を用いることができる。
トナー担持体としては弾性ローラを用い、弾性ローラの表面等にトナーをコーティングし、これを感光体表面と接触させる方法を用いることができる。この場合、トナーを介して感光体と感光体表面に対向する弾性ローラとの間に働く電界によって現像が行われる。従って、弾性ローラの表面あるいは表面近傍が電位をもち、感光体の表面とトナー担持体の表面との狭い間隙で電界を有する必要性がある。
このため、弾性ローラの弾性ゴムが中抵抗領域に抵抗制御されて感光体の表面との導通を防ぎつつ電界を保つか、又は導電性ローラの表面層に薄層の絶縁層を設ける方法も利用できる。さらには、導電性ローラ上に感光体の表面に対向する側を絶縁性物質により被覆した導電性樹脂スリーブ、あるいは、絶縁性スリーブで感光体に対向しない側に導電層を設けた構成も可能である。
また、トナー担持体として剛体ローラを用い、感光体をベルトのごときフレキシブルな物とした構成も可能である。
前述した必要性を満たす観点から、トナー担持体としての現像ローラの抵抗としては102〜109Ωcmの範囲が好ましい。このような現像ローラは、弾性体中へ導電性の粒子を分散させる等の公知の方法によって得ることができる。また、現像ローラの抵抗は、ローラの導電性や前記絶縁層の厚さ等によって調整することが可能である。また現像ローラの抵抗は、図14に示すように、外部定着空回転ユニットにて現像ローラ1Rをアルミニウムローラ5Rに当接させ、現像ローラ1Rの芯金1aRとアルミニウムローラ5R間の抵抗を抵抗測定器6R(例えばHP社製4329A高抵抗計)を用いて測定することによって測定することができる。
トナー担持体の表面形状としては、その表面粗度Ra(μm)を0.2〜3.0となる
ように設定すると、高画質及び高耐久性を両立する観点から好ましい。前記表面粗度Raは、トナー搬送能力及びトナー帯電能力と相関する。前記トナー担持体の表面粗度Raが3.0を超えると、前記トナー担持体上のトナー層の薄層化が困難となるばかりか、トナーの帯電性が改善されず画質の向上が望めないことがある。表面粗度Raを3.0以下にすることで、トナー担持体の表面のトナーの搬送能力を抑制し、前記トナー担持体上のトナー層を薄層化すると共に、前記トナー担持体とトナーの接触回数が多くなるため、前記トナーの帯電性も改善されるので相乗的に画質が向上する。一方、表面粗度Raが0.2よりも小さくなると、トナーコート量の制御が難しくなる。
本発明において、トナー担持体の表面粗度Raは、JIS表面粗さ「JIS B0601」に基づき、表面粗さ測定器(サーフコーダSE−30H、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定される中心線平均粗さに相当する。具体的には、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さaとして2.5mmの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものを言う。なお、中心線は上記規格における平均値である。
前記画像形成方法においては、トナー担持体は感光体の回転と同じ方向に回転していてもよいし、逆方向に回転していてもよい。その回転が同方向である場合、トナー担持体の周速を感光体の周速に対し1.05〜3.0倍となるように設定することが好ましい。
トナー担持体の回転方向と感光体の回転方向とが同じ方向である場合にトナー担持体の周速が感光体の周速に対し1.05倍未満であると、感光体上のトナーの受ける撹拌効果が不十分となり、良好な画像品質が望めないことがある。また、周速比が3.0を超える場合には、機械的ストレスによるトナーの劣化やトナー担持体へのトナー固着が発生、促進され、好ましくない。
感光体としては、a−Se、Cds、ZnO2、OPC、a−Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光ドラムもしくは感光ベルトが好適に使用される。OPC感光体における有機系感光層の感光体用結着樹脂は、特に限定するものではない。中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が特に、転写性に優れ、感光体へのトナーの融着、外添剤のフィルミングが起こりにくいため好ましい。
次に前記画像形成方法を、添付図面を参照しながら以下に説明する。
図5には、前記画像形成方法に用いられる画像形成装置が示されている。前記画像形成装置は、感光体109と、感光体109に接触して直接帯電を行う一次帯電部材110と、帯電した感光体109に形成すべき画像に応じた露光123を照射する露光装置と、静電潜像が形成された感光体109にトナーを供給して前記静電潜像を現像する現像装置100と、感光体109に形成されたトナー像を紙等の被転写体105に転写させる転写部材106と、被転写体105に転写されたトナー像を被転写体105に定着させる定着装置と、転写後の感光体109に残留するトナーを感光体109から除去するクリーナ138とを有する。
一次帯電部材110には、感光体109表面を一様に帯電するようにバイアス電源11
5が接続されている。
現像装置100は、トナーを収容するトナー容器104と、トナー容器104の開口部に回転自在に設けられているトナー担持体102と、トナー担持体102に端縁周辺が当接している現像ブレード101と、トナー容器104中のトナーをトナー担持体102に付着させかつトナー担持体102との摩擦でトナーへの帯電付与を行うため矢印方向に回転する塗布ローラ103とを有する。
現像装置100は、トナー担持体102が感光体109と接触する位置に設けられている。トナー担持体102は、矢印方向に回転するように設けられている。現像ブレード101は、トナー担持体102に担持されたトナーの量の規制及び帯電付与を行うように設けられている。トナー担持体102には現像バイアス電源117が接続されている。塗布ローラ103にも図示しないバイアス電源が接続されている。塗布ローラ103に供給される電圧は、負帯電性トナーを使用する場合は現像バイアスよりも負側に、正帯電性トナーを使用する場合は現像バイアスよりも正側に設定される。
転写部材106には感光体109と反対極性の転写バイアス電源116が接続されている。
前記定着装置は、被転写体105のトナー像を担持する面を加熱する定着用加熱ローラ108と、被転写体105を定着用加熱ローラ108に向けて押圧する定着用加圧ローラ107とを有する。
クリーナ138は、感光体109の付着物を感光体109から除去するクリーニング部材と、クリーニング部材によって除去された前記付着物を収容する容器とを有する。クリーニング部材には、感光体の表面から付着物を除去するための公知の部材が用いられる。
ここで、感光体109とトナー担持体102の接触部分における回転方向の長さ、いわゆる現像ニップ幅は0.2mm以上8.0mm以下が好ましい。0.2mm未満では現像量が不足して満足な画像濃度が得られず、転写残トナーの回収も不十分となることがある。8.0mmを超えてしまうと、トナーの供給量が過剰となり、カブリ抑制が悪化しやすく、また、感光体109の摩耗にも悪影響を及ぼすことがある。
トナー担持体102としては、表面に弾性層を有する、いわゆる弾性ローラが好ましく用いられる。使用される弾性層の材料の硬度としては、30〜60度(asker−C/荷重1kg)のものが好適に使用される。前記弾性層の材料の硬度は、ゴム材硬度の測定法に従い、具体的には、基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101に従って別途作製した試験片を用いて、アスカーゴム硬度計(高分子計器(株)製)により測定される硬度により定義される。また、その圧縮永久歪みは、同じく、別途作製した試験片を用いて、JIS K−6400圧縮残留ひずみ試験法に準じて測定した値により定義される。また前記弾性層の材料の硬度は、弾性層を構成する材料の種類や弾性層の厚さ等によって調整することが可能である。
また、トナー担持体102の抵抗としては、体積抵抗値で102〜109Ωcm程度の範囲が好ましい。102Ωcmよりも低い場合、例えば感光体109の表面にピンホール等がある場合、過電流が流れる恐れがある。反対に109Ωcmよりも高い場合は、摩擦帯電によるトナーのチャージアップが起こりやすく、画像濃度の低下を招きやすい。
トナー担持体上のトナーコート量は、0.1〜1.5mg/cm2が好ましい。0.1mg/cm2よりも少ないと十分な画像濃度が得にくく、1.5mg/cm2よりも多く
なると個々のトナー粒子全てを均一に摩擦帯電することが難しくなり、カブリ抑制の悪化の要因となることがある。さらに、0.2〜0.9mg/cm2がより好ましい。
トナーコート量は現像ブレード101により制御されるが、この現像ブレード101はトナー層を介してトナー担持体102に接触している。この時の接触圧は、4.9〜49N/m(5〜50gf/cm)が好ましい範囲である。4.9N/mよりも小さいとトナーコート量の制御に加え均一な摩擦帯電も難しくなり、カブリ抑制の悪化等の原因となることがある。一方、49N/mよりも大きくなるとトナー粒子が過剰な負荷を受けるため、粒子の変形や現像ブレードあるいはトナー担持体102へのトナーの融着等が発生しやすくなり、好ましくない。
規制部材(現像ブレード101)の自由端部は、好ましいNE長を与える範囲であればどのような形状でもよく、例えば断面形状が直線状のもの以外にも、先端近傍で屈曲したL字形状のものや、先端近傍が球状に膨らんだ形状のもの等が好適に用いられる。トナーコート量の規制部材としては、トナーを圧接塗布するための弾性ブレード以外にも、剛性のある金属ブレード等を用いても良い。
弾性の規制部材には、所望の極性にトナーを帯電させるのに適した摩擦帯電系列の材質を選択することが好ましく、シリコーンゴム、ウレタンゴム、NBRの如きゴム弾性体、ポリエチレンテレフタレートの如き合成樹脂弾性体、ステンレス、鋼、リン青銅の如き金属弾性体が使用できる。また、それらの複合体であっても良い。また、弾性の規制部材とトナー担持体102とに耐久性が要求される場合には、金属弾性体に樹脂やゴムを、現像ブレード101がトナー担持体102との当接部に当たるように貼り合わせたり、コーティング塗布したものが好ましい。
更に、弾性の規制部材中に有機物や無機物を添加してもよく、溶融混合させても良いし、分散させても良い。例えば、金属酸化物、金属粉、セラミックス、炭素同素体、ウィスカー、無機繊維、染料、顔料、界面活性剤等を添加することにより、トナーの帯電性をコントロールできる。特に、弾性体がゴムや樹脂等の成型体の場合には、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化亜鉛等の金属酸化物微粉末、カーボンブラック、一般にトナーに用いられる荷電制御剤等を含有させることも好ましい。
またさらに、規制部材に直流電場及び/又は交流電場を印加することによっても、トナーへのほぐし作用のため、均一薄層塗布性、均一帯電性がより向上し、充分な画像濃度の達成及び良質の画像を得ることができる。
図5において、一次帯電部材110は、矢印方向に回転する感光体109を一様に帯電する。
ここで用いている一次帯電部材110は、中心の芯金110bとその外周を形成した導電性弾性層110aとを基本構成とする帯電ローラである。一次帯電部材110は、感光体109の一面に押圧力を持って当接され、感光体109の回転に伴い従動回転する。
帯電ローラを用いたときの好ましいプロセス条件としては、ローラの当接圧が4.9〜490N/m(5〜500gf/cm)である。また、印加電圧としては直流電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したもの等が用いられ、特に限定されないが、本発明においては直流電圧のみの印加電圧が好適に用いられる。この場合の電圧値としては±0.2〜±5kVの範囲で使用される。
この他の帯電手段としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法
がある。これらの接触帯電手段は、非接触のコロナ帯電に比べて、高電圧が不必要になったり、オゾンの発生が低減するといった効果がある。接触帯電手段としての帯電ローラ及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けても良い。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)等が適用可能である。
一次帯電工程に次いで、発光素子からの露光123によって感光体109上に情報信号に応じた静電潜像が感光体109に形成される。感光体109に形成された静電潜像は、トナー担持体102と感光体109とが当接する位置においてトナーにより現像され、可視像化する。
さらに、前記画像形成方法において、特に感光体上にデジタル潜像を形成した現像システムと組み合わせることで、潜像を乱さないためのドット潜像に対して忠実に現像することが可能となる。
前記可視像は転写部材106により被転写体105に転写され、定着用加熱ローラ108と定着用加圧ローラ107との間を通過して定着され、永久画像を得る。
なお、加熱加圧定着手段としては、ここに示したハロゲンヒーター等の発熱体を内蔵した加熱ローラとこれと押圧力をもって圧接された弾性体の加圧ローラを基本構成とする熱ローラ方式を用いることができるが、これ以外に、フィルムを介してヒーターにより加熱定着する方式も用いられる。
一方、転写されずに感光体109上に残った転写残トナーは、感光体109の表面に当接されるクリーニングブレードを有するクリーナ138で回収され、感光体109はクリーニングされる。
次に、本発明のトナーを用いた画像形成方法及び他の装置ユニットに関して図面を用いて説明する。
図6及び図7には、前記画像形成方法を中間転写体を用いて多重トナー像を転写材に一括転写する画像形成装置の概略図を示す。
図6に示す画像形成装置は、潜像担持体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1に接触して配置され感光体ドラム1を帯電させる帯電ローラ2と、帯電した感光体ドラム1に静電潜像を形成する露光手段としての光源装置Lと、感光体ドラム1に形成された静電潜像に所定のトナーを所定の現像器によって現像する現像装置4と、感光体ドラム1に形成されたトナー像が転写される中間転写ドラム5と、転写後の感光体ドラム1の付着物を感光体ドラムから除去するクリーナ6と、転写材Pを収容するトレイ7と、中間転写ドラム5に転写されたトナー像を転写材Pにさらに転写する第二の転写装置8と、転写材Pに転写されたトナー像を転写材Pに定着させる定着装置9とを有する。
現像装置4は、四つの現像器(Bk、Y、M、C)と、これらの現像器を有するとともに回動してそれぞれの現像器を感光体ドラム1の静電潜像の現像位置に指示するロータリーユニット24とを有する。定着装置9は、定着ローラ9aと加圧ローラ9bとを有する。
感光体ドラム1の表面に、帯電部材としての帯電バイアス電圧が印加された回転可能な帯電ローラ2を回転させながら接触させて、感光体ドラム1の表面を均一に一次帯電させる。感光体ドラム1の表面が帯電したら、露光手段としての光源装置Lより発せられたレ
ーザー光Eにより、感光体ドラム1上に第一の静電潜像を形成する。
形成された第一の静電潜像は、回転可能なロータリーユニット24に設けられている第一の現像器としてブラック現像器4Bk中のブラックトナーにより現像され、ブラックトナー像が形成される。感光体ドラム1上に形成されたブラックトナー像は、中間転写ドラム5の導電性支持体に印加される転写バイアス電圧の作用により、中間転写ドラム5上に静電的に一次転写される。
次に、上記と同様にして感光体ドラム1の表面に第二の静電潜像を形成する。第二の静電潜像は、ロータリーユニット24を回転して、第二の現像器としてのイエロー現像器4Y中のイエロートナーにより現像されてイエロートナー像が形成される。ブラックトナー像が一次転写されている中間転写ドラム5上に、イエロートナー像は静電的に一次転写される。
同様にして、第三の静電潜像及び第四の静電潜像を形成し、ロータリーユニット24を回転して、第三の現像器としてのマゼンタ現像器4M中のマゼンタトナー及び第四の現像器としてシアン現像器4C中のシアントナーにより、順次現像を行い、中間転写ドラム5上に各色のトナー像をそれぞれ一次転写する。
中間転写ドラム5上に各トナー像が重なった状態で一次転写されてなる多重トナー像は、転写材Pを介して反対側に位置する第二の転写装置8からの転写バイアス電圧の作用により、転写材Pの上に静電的に一括に二次転写される。
転写材P上に二次転写された多重トナー像は加熱ローラ及び加圧ローラを有する定着装置9により転写材Pに加熱定着される。転写後に感光体ドラム1の表面上に残存する転写残トナーは、感光体ドラム1の表面に当接するクリーニングブレードを有するクリーナ6で回収され、感光体ドラム1はクリーニングされる。
感光体ドラム1から中間転写ドラム5への一次転写は、第一の転写装置としての中間転写ドラム5の導電性支持体に、図示しない電源よりバイアスを付与することで転写電圧が得られて行われる。
中間転写ドラム5は、剛体である導電性支持体5aと、導電性支持体5aの表面を覆う弾性層5bとよりなる。
導電性支持体5aとしては、アルミニウム、鉄、銅及びステンレス等の金属や合金、及びカーボンや金属粒子等を分散した導電性樹脂等を用いることができ、その形状としては円筒状や、円筒の中心に軸を貫通したもの、円筒の内部に補強を施したもの等が挙げられる。
弾性層5bとしては、特に制約されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム及びノルボルネンゴム等のエラストマーゴムが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート等の樹脂及びこれらの共重合体や混合物を用いても良い。
また、弾性層のさらに表面に、潤滑性、はっ水性の高い滑剤粉体を任意のバインダー中に分散した表面層を設けても良い。
滑剤は特に制限はないが、各種フッ素ゴム、フッ素エラストマー、黒鉛やグラファイトにフッ素を結合したフッ化炭素及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素化合物、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等のシリコーン系化合物、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
また、表面層のバインダー中に、抵抗を制御するために導電剤を適時添加しても良い。導電剤としては、各種の導電性無機粒子及びカーボンブラック、イオン系導電剤、導電性樹脂及び導電性粒子分散樹脂等が挙げられる。
中間転写ドラム5上の多重トナー像は、第二の転写装置8により転写材P上に一括に二次転写されるが、転写手段8としてはコロナ帯電器による非接触静電転写手段或いは転写ローラ及び転写ベルトを用いた接触静電転写手段が使用可能である。
定着装置9としては、定着ローラ9aと加圧ローラ9bを有する熱ローラ定着装置に替えて、転写材P上のトナー像に接するフィルムを加熱することにより、転写材P上のトナー像を加熱し、転写材Pに多重トナー像を加熱定着するフィルム加熱定着装置を用いることもできる。
図6に示した画像形成装置が用いている中間転写体としての中間転写ドラムに代えて、中間転写ベルトを用いて多重トナー像を転写材に一括転写することも可能である。中間転写ベルトの構成について、図7に示す。
この中間転写体は、二つのローラ11及び二次転写対向ローラ13aと、これらのローラによって感光体ドラム1に対抗する位置に張設されている中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10を介して感光体ドラム1と対向する位置に設けられている一次転写ローラ12と、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13aと対向する位置に設けられている二次転写ローラ13bと、中間転写ベルト10のトナー像を担持する面に接触するように設けられ、中間転写ベルト10の表面の付着物を除去するためのクリーニング用帯電部材69とを有する。
一次転写ローラ12には、バイアス電源14が接続されている。二次転写ローラ13bには、バイアス電源16が接続されている。クリーニング用帯電部材69には、バイアス電源15が接続されており、またクリーニング時にはクリーニング用帯電部材69とともに中間転写ベルト10を挟むローラが設けられている。
感光体ドラム1上に形成担持されたトナー像は、感光体ドラム1と中間転写ベルト10とのニップ部を通過する過程で、一次転写ローラ12から中間転写ベルト10に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ベルト10の外周面に順次一次転写される。
感光体ドラム1から中間転写ベルト10への第一〜第四色のトナー像の順次重畳転写のための一次転写バイアスは、トナーとは逆極性であり、バイアス電源14から印加される。
感光体ドラム1から中間転写ベルト10への第一〜第三色のトナー像の一次転写工程に
おいて、二次転写ローラ13b及びクリーニング用帯電部材69は中間転写ベルト10から離間することも可能である。
二次転写ローラ13bは、二次転写対向ローラ13aに対応して平行に軸受けさせて、中間転写ベルト10の下面部に離間可能な状態に配設してある。
中間転写ベルト10上に転写された合成カラートナー像の転写材Pへの転写は、二次転写ローラ13bが中間転写ベルト10に当接されると共に、中間転写ベルト10と二次転写ローラ13bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送され、二次転写バイアスがバイアス電源16から二次転写ローラ13bに印加される。この二次転写バイアスにより中間転写ベルト10から転写材Pへ合成カラートナー像が二次転写される。
転写材Pへの画像転写終了後、中間転写ベルト10にはクリーニング用帯電部材69が当接され、感光体ドラム1とは逆極性のバイアスをバイアス電源15から印加することにより、転写材Pに転写されずに中間転写ベルト10上に残留しているトナー(転写残トナー)に感光体ドラム1と逆極性の電荷が付与される。
前記転写残トナーは、感光体ドラム1とのニップ部及びその近傍において感光体ドラム1に静電的に転写される。これにより、中間転写体がクリーニングされる。
中間転写ベルトは、ベルト形状の基層と基層の上に設けられる表面処理層とよりなる。なお、表面処理層は複数の層により構成されていても良い。
基層及び表面処理層には、ゴム、エラストマー、樹脂を使用することができる。例えばゴム、エラストマーとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多流化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム及び熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系及びフッ素樹脂系等)等からなる群より選ばれる一種類あるいは二種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
また、樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート等の樹脂を使用することができる。これら樹脂の共重合体や混合物を用いても良い。
基層としては上述のゴム、エラストマー、樹脂をフィルム状にして使用することができる。また、これらの物質を、織布形状、不織布形状、糸状、フィルム形状をした芯体層の片面あるいは両面に上述のゴム、エラストマー、樹脂を被覆、浸漬、噴霧したものを前記基層として使用しても良い。
芯体層を構成する材料は、例えば綿、絹、麻及び羊毛等の天然繊維;キチン繊維、アルギン酸繊維及び再生セルロース繊維等の再生繊維;アセテート繊維等の半合成繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアルキルパラオキシベンゾエート繊維、ポリアセタール繊維、アラミド繊維、ポリフロロエチレン繊維及びフェノール繊維等の合成繊維;炭素繊維、硝子繊維及びボロン繊維等の無機繊維;鉄繊維及び銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる一種あるいは二種以上を用い
ることができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。
さらに、中間転写体の抵抗値を調節するために基層及び表面処理層中に導電剤を添加しても良い。導電剤としては特に限定されるものではないが、例えば、カーボン、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化チタン等の金属酸化物、及び四級アンモニウム塩含有ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレン、ポリエチレンイミン、含硼素高分子化合物及びポリピロール等の導電性高分子化合物等からなる群より選ばれる一種あるいは二種以上を用いることができる。ただし、上記導電剤に限定されるものではない。
また、中間転写体表面の滑り性を上げ、転写性を向上するために必要に応じて滑剤を添加しても良い。滑剤は特に制限はないが、各種フッ素ゴム、フッ素エラストマー、黒鉛やグラファイトにフッ素を結合したフッ化炭素及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素化合物、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等のシリコーン系化合物、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
次に、複数の画像形成部にて各色のトナー像をそれぞれ形成し、これを同一転写材に順次重ねて転写する画像形成方法に用いられる画像形成装置を、図8をもとに説明する。
この画像形成装置は、第一から第四の画像形成部29a〜29dと、各画像形成部における転写位置に一枚の転写材Sを順に搬送する搬送ベルト25と、搬送ベルト25に供給された転写材Sを搬送ベルト25に電気的に吸着するように帯電させる帯電器27と、搬送ベルト25によって各画像形成部に順次搬送された転写材Sを搬送ベルト25から分離させるための除電器20と、搬送ベルト25から分離した転写材Sに転写されているトナー像を転写材Sに定着させる定着器22と、定着器22でトナー像が定着された転写材Sを機外に排出する排出口26とを有する。
ここでは、第一、第二、第三及び第四の画像形成部29a、29b、29c、29dが並設されている。各画像形成部には、それぞれ専用の静電潜像保持体、いわゆる感光体ドラム19a、19b、19c及び19dと、感光体ドラム19a〜19dを帯電させる帯電器16a〜16dと、帯電した感光体ドラム19a〜19dに静電潜像を形成する潜像形成装置23a〜23dと、感光体ドラム19a〜19dに形成された静電潜像をトナーで現像する現像部17a〜17dと、感光体ドラム19a〜19dに形成されたトナー像を搬送ベルト25によって搬送されてきた転写材Sに転写するための転写用放電部24a〜24dと、トナー像が転写された転写材Sに電圧を印加して転写材Sを除電するための帯電器28a〜28dと、転写後の感光体ドラム19a〜19dに残留するトナーを感光体ドラム19a〜19dから除去するためのクリーニング部18a〜18dとが配置されている。
このような構成にて、先ず、第一画像形成部29aの感光体ドラム19a上に、潜像形成装置23aによって、原稿画像における一色成分の画像、例えばイエロー成分色の潜像が形成される。前記潜像は現像部17aのイエロートナーを有する現像剤で可視画像とされ、転写用放電部24aにて、転写材としての転写材Sに転写される。
上記のようにイエロー画像が転写材Sに転写されている間に、第二画像形成部29bでは、他の一色成分の画像、例えばマゼンタ成分色の潜像が感光体ドラム19b上に形成さ
れ、続いて現像部17bのマゼンタトナーを有する現像剤で可視画像とされる。この可視画像(マゼンタトナー像)は、上記の第一画像形成部29aでの転写が終了した転写材Sが転写用放電部24bに搬入されたときに、前記転写材Sの所定位置に重ねて転写される。
以下、上記と同様な方法により第三、第四の画像形成部29c、29dによってシアン色、ブラック色の画像形成が行われ、上記同一の転写材Sに、シアン色、ブラック色を重ねて転写するのである。
このような画像形成プロセスが終了したならば、転写材Sは定着部22に搬送され、転写材S上の画像を定着する。これによって転写材S上には多色画像が得られるのである。転写が終了した各感光体ドラム19a、19b、19c及び19dは、クリーニング部18a、18b、18c及び18dにより残留トナーが除去され、引き続き行われる次の潜像形成のために供せられる。
なお、上記画像形成装置では、転写材としての転写材Sの搬送のために、搬送ベルト25が用いられており、図8において、転写材Sは紙面に対して右側から左側へ搬送され、その搬送過程で、各画像形成部29a、29b、29c及び29dにおける各転写用放電部24a、24b、24c及び24dを通過し、転写をうける。
この画像形成方法において、転写材を搬送する搬送手段として、加工の容易性及び耐久性の観点から、テトロン(登録商標)繊維のメッシュを用いた搬送ベルト及びポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂の如き薄い誘電体シートを用いた搬送ベルトが利用される。
転写材Sが第四の画像形成部29dを通過すると、AC電圧が除電器20に加えられ、転写材Sは除電され、搬送ベルト25から分離され、その後、定着器22に入り、画像が転写材Sに定着され、画像が定着された転写材Sが排出口26から排出される。
なお、この画像形成方法では、その画像形成部にそれぞれ独立した静電潜像保持体を具備しており、転写材はベルト式の搬送手段で、順次、各静電潜像保持体の転写部へ送られるように構成してもよい。
また、この画像形成方法では、その画像形成部に共通する静電潜像保持体を具備してなり、転写材は、ドラム式の搬送手段で、静電潜像保持体の転写部へ繰り返し送られて、各色の転写をうけるように構成してもよい。
前記画像形成方法では、搬送ベルト25の体積抵抗が高いため、カラー画像形成装置におけるように、数回の転写を繰り返す過程で、搬送ベルト25の帯電量を増加することがある。このため、各転写の都度、転写電流を順次増加させないと、均一な転写を維持できないことがある。本発明のトナーは、転写性が優れているので、転写を繰り返す毎に搬送ベルト25の帯電が増しても、同じ転写電流で各転写におけるトナーの転写性を均一化でき、良質な高品位画像が得られることになる。
図9は、中間転写ドラムを用い中間転写ドラム上に一次転写された4色のカラートナー像を転写材に一括して二次転写する際の二次転写手段として、転写ベルトを用いた画像形成装置の説明図である。この画像形成装置は、第二の転写装置8を転写ベルトとする以外は、図6に示す画像形成装置と実質的に同一である。
図9に示す装置システムにおいて、現像装置244は現像器244−1、244−2、
244−3、244−4を有する。現像器244−1、244−2、244−3、244−4には、それぞれシアントナーを有する現像剤、マゼンタトナーを有する現像剤、イエロートナーを有する現像剤及びブラックトナーを有する現像剤が導入されている。
感光体241は、帯電ローラ242によって帯電される。帯電した感光体241には、露光243によって一色成分の画像が形成される。感光体241に形成された静電潜像は、前記色成分に対応する色のトナーを有する現像器によって現像され、感光体241にはその色のトナー像が形成される。
感光体241は、筒状の導電性支持体241aと、導電性支持体241aの周面を覆う感光層241bとを有する。a−Se、Cds、ZnO2、OPC、a−Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光ドラムもしくは感光ベルトである。感光体241は図示しない駆動装置によって矢印方向に回転される。感光体241としては、アモルファスシリコン感光層、又は有機系感光層を有する感光体が好ましく用いられる。
有機感光層としては、感光層が電荷発生物質及び電荷輸送性能を有する物質を同一層に含有する、単一層型でもよく、又は、電荷輸送層を電荷発生層を成分とする機能分離型感光層であっても良い。導電性基体上に電荷発生層、次いで電荷輸送層の順で積層されている構造の積層型感光層は好ましい例の一つである。
有機感光層における感光体用結着樹脂はポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が、特に、転写性、クリーニング性が良く、クリーニング不良、感光体へのトナーの融着、外添剤のフィルミングが起こりにくい観点から好ましい。
帯電工程では、コロナ帯電器を用いる感光体241とは非接触である方式と、ローラ等を用いる接触型の方式がありいずれのものも用いられる。効率的な均一帯電、シンプル化、低オゾン発生化のために、図9に示す如く接触方式のものが好ましく用いられる。
帯電ローラ242は、中心の芯金242bとその外周を形成した導電性弾性層242aとを基本構成とするものである。帯電ローラ242は、感光体241面に押圧力をもって圧接され、感光体241の回転に伴い従動回転する。
帯電ローラを用いた時の好ましいプロセス条件としては、ローラの当接圧が4.9〜490N/m(5〜500gf/cm)であり、直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いた時には、交流電圧=0.5〜5kVpp、交流周波数=50Hz〜5kHz、直流電圧=±0.2〜±1.5kVであり、直流電圧を用いた時には、直流電圧=±0.2〜±5kVである。
この他の帯電手段としては、帯電ブレードを用いる方法や、導電性ブラシを用いる方法がある。これらの接触帯電手段は、高電圧が不必要になったり、オゾンの発生が低減するといった効果がある。
接触帯電手段としての帯電ローラ及び帯電ブレードの材質としては、導電性ゴムが好ましく、その表面に離型性被膜を設けても良い。離型性被膜としては、ナイロン系樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)等が適用可能である。
感光体241上のトナー像は、電圧(例えば、±0.1〜±5kV)が印加されている中間転写ドラム245に転写される。転写後の感光体241の表面は、クリーニングブレード248を有するクリーニング装置249でクリーニングされる。
中間転写ドラム245は、パイプ状の導電性芯金245bと、その外周面に形成した中抵抗の弾性体層245aからなる。導電性芯金245bは、プラスチックのパイプに導電性メッキをほどこしたものでも良い。
中抵抗の弾性体層245aは、シリコーンゴム、テフロン(登録商標)ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンの三元共重合体)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ、炭化ケイ素の如き導電性付与材を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を105〜1011Ωcmの中抵抗に調整した、ソリッドあるいは発泡肉質の層である。
中間転写ドラム245は、感光体241に対して並行に軸受けさせて感光体241の下面部に接触させて配設してあり、感光体241と同じ周速度で矢印の反時計方向に回転する。
感光体241の面に形成担持された第一色のトナー像は、感光体241と中間転写ドラム245とが接する転写ニップ部を通過する過程で、中間転写ドラム245に対する印加転写バイアスで転写ニップ域に形成された電界によって、中間転写ドラム245の外面に順次に中間転写されていく。
必要により、着脱自在な中間転写ドラム用クリーニング装置280により、転写材へのトナー像の転写後に、中間転写ドラム245の表面がクリーニングされる。中間転写ドラム245上にトナー像がある場合、トナー像を乱さないように中間転写ドラム用クリーニング装置280は、中間転写ドラム245の表面から離される。
中間転写ドラム245に対して並行に軸受けさせて中間転写ドラム245の下面部に接触させて転写手段が配設されている。転写ベルト247は、例えば転写ローラ又は転写ベルトであり、中間転写ドラムと同じ周速度で矢印の時計方向に回転する。転写手段は直接中間転写ドラムと接触するように配設されていても良く、またベルト等が中間転写ドラムと転写手段との間に接触するように配置されても良い。
転写ローラの場合、中心の芯金とその外周を形成した導電性弾性層とを基本構成とするものである。
中間転写ドラム及び転写ローラとしては、一般的な材料を用いることが可能である。中間転写ドラムの弾性層の体積固有抵抗値よりも転写ローラの弾性層の体積固有抵抗値をより小さく設定することで転写ローラへの印加電圧が軽減でき、転写材上に良好なトナー像を形成できると共に転写材の中間転写体への巻付きを防止することができる。特に中間転写体の弾性層の体積固有抵抗値が転写ローラの弾性層の体積固有抵抗値より10倍以上であることが特に好ましい。
中間転写ドラム及び転写ローラの硬度は、ゴム材硬度の測定法に従い、具体的には、基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101に従って別途作製した試験片を用いて、アスカーゴム硬度計(高分子計器(株)製)により測定される硬度により定義される。また、その圧縮永久歪みは、同じく、別途作製した試験片を用いて、JIS K−6400圧縮残留ひずみ試験法に準じて測定した値により定義される。本発明に用いられる中間転写ドラムは、10〜40度の範囲に属する弾性層から構成されることが好ましく、一方、転写ローラの弾性層の硬度は、中間転写ドラムの弾性層の硬度より硬く41〜80度の値を有するものが、中間転写ドラムへの転写材の巻付きを防止する上で好ましい。中間転写ドラムと転写ローラの硬度が逆になると、転写ローラ側に凹部が形成され、中
間転写ドラムへの転写材の巻付きが発生しやすい。
図9では中間転写ドラム245の下方には、転写ベルト247が配置されている。転写ベルト247は、中間転写ドラム245の軸に対して並行に配置された2本のローラ、すなわちバイアスローラ247aとテンションローラ247cとに掛け渡されており、駆動手段(不図示)によって駆動される。
転写ベルト247は、テンションローラ247c側を中心にしてバイアスローラ247a側が矢印方向に移動可能に構成されていることにより、中間転写ドラム245に対して下方から矢印方向に接離することができる。バイアスローラ247aには、二次転写バイアス源247dによって所望の二次転写バイアスが印加されており、一方、テンションローラ247cは接地されている。
次に、転写ベルト247であるが、本実施の形態では、熱硬化性ウレタンエラストマーにカーボンを分散させ厚さ約300μm、体積抵抗率108〜1012Ωcm(1kV印加時)に制御した上に、フッ素ゴム20μm、体積抵抗率1015Ωcm(1kV印加時)に制御したゴムベルトを用いることができる。その外径寸法は周長80×幅300mmのチューブ形状である。
上述の転写ベルト247は、前述のバイアスローラ247aとテンションローラ247cによって、約5%延ばす張力が印加されている。
転写ベルト247は中間転写ドラム245に対して等速度或いは周速度に差をつけて回転させる。転写材246は中間転写ドラム245と転写ベルト247との間に搬送されると同時に、転写ベルト247にトナーが有する摩擦電荷と逆極性のバイアスを二次転写バイアス源247dから印加することによって、中間転写ドラム245上のトナー像が転写材246の表面側に転写される。
転写用回転体の材質としては、帯電ローラと同様のものも用いることができ、好ましい転写のプロセス条件としては、ローラの当接圧が4.9〜490N/m(5〜500gf/cm)で、直流電圧が±0.2〜±10kVである。
例えば、バイアスローラ247aの導電性弾性層247a1はカーボン等の導電材を分散させたポリウレタン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体(EPDM)等の体積抵抗106〜1010Ωcm程度の弾性体でつくられている。芯金247a2には、定電圧電源によりバイアスが印加されている。バイアス条件としては、±0.2〜±10kVが好ましい。
次いで転写材246は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵させた加熱ローラとこれと押圧力をもって圧接された弾性体の加圧ローラとを基本構成とする定着器281へ搬送され、加熱ローラと加圧ローラ間を通過することによって、トナー像が転写材に加熱加圧定着される。フィルムを介してヒータにより定着する方法を用いても良い。
<フィルム式加熱定着装置>
前記画像形成方法は、定着フィルムを用いて熱エネルギーを与えることによりトナーを転写材に定着する画像形成方法において、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記トナー粒子は水系又は親水性媒体中で生成されたものであり、前記トナー粒子は極性樹脂を含有し、前記極性樹脂はトルエン−ヘキサン溶解度指数が25〜50であることを特徴とするトナーを用いることを特徴とする。これにより、フィルム定着方式を用いる画像形成方法において、定着可能温度域が拡大し、連続印字
時においてもより一層の安定した画像を得ることが可能となる。
前記画像形成方法で用いるフィルム式加熱定着装置においては、未定着のトナー像を担持する転写材を加熱する加熱部材と、加熱部材に向けて転写材を押圧する加圧部材とを有し、前記加熱部材は、加熱源と、加熱源によって発熱するフィルムとを有する。前記フィルムは、少なくとも発熱層と離型層とを有すれば良く、トナー層厚が厚い、例えばカラー画像等の定着装置としては混色性を高める等の目的で、発熱層と離型層の間に弾性層を設けることも可能である。
ここでは、発熱層と離型層に加えて弾性層を有する回転加熱部材を有する定着装置の例について説明する。
前記画像形成方法に用いるフィルム式加熱定着装置について具体的に説明するが、前記加熱定着装置は例示したものに限定するものではなく、例えば励磁コイル部分を無端形状のベルトの外周側に設置した構成の加熱定着装置であっても良い。
図10は、前記フィルム式加熱定着装置としての電磁誘導加熱方式のフィルム式加熱定着装置の要部の横断側面模式図を具体的に示したものである。
本例のフィルム式加熱定着装置は、図11の定着器と同様に、円筒状の電磁誘導発熱性ベルトを用いた、加圧ローラ駆動方式、電磁誘導加熱方式の装置である。
図10に示すフィルム式加熱定着装置は、加熱部材と加圧部材としての加圧ローラ30とを有する。
前記加熱部材は、円筒状のガイド部材と、ガイド部材の内部をガイド部材の断面形状において二分割する絶縁部材19と、分割されたガイド部材の内部の一方におけるガイド部材の内周面に、ガイド部材の軸方向に沿って設けられる良熱伝導部材40と、良熱伝導部材40をガイド部材の周方向に向けて支持する加圧用剛性ステイ42と、分割されたガイド部材の内部の他方に、ガイド部材の軸方向に沿って設けられる磁性コア及び励磁コイル18と、ガイド部材の外周を移動自在に覆う、断面形状が無端形状の定着フィルム41とを有する。
前記ガイド部材は、略半円筒状のベルトガイド部材56a及び56bによって形成されている。加圧用剛性ステイ42は絶縁部材19に隣接する位置に設けられている。前記磁性コアは、磁性コア57a、57b、及び57cによって断面形状がT字型の部材として形成されており、T字型の頂辺が絶縁部材19に沿うように配置され、前記ガイド部材の内部の他方をさらに二分割している。励磁コイル18は、磁性コアによって分割されたガイド部材の内部の空間のそれぞれに設けられている。
加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性、弾性材層30bとで構成されており、芯金30aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板金間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。
加圧ローラ30は、良熱伝導部材40に向けて前記加熱部材に接触しており、その接触部分が定着ニップ部Nとされている。芯金30aはモータMに接続されており、加圧ローラ30はモータMによって回転駆動し、加圧ローラ30の回転によって定着フィルム41がガイド部材上を回転駆動するように構成されている。
なお、前記加熱部材には、定着フィルム41の移動方向における定着ニップ部Nの後方に温度センサ46が設けられている。また、定着ニップ部Nから最も離れた励磁コイル18に対向しかつ定着フィルム41の外周側には、サーモスイッチ50が、定着フィルム41から離間して設けられている。
加圧ローラ30は矢示の方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回転駆動による前記加圧ローラ30と定着フィルム41の外面との摩擦力で定着フィルム41に回転力が作用し、前記定着フィルム41が、その内面が定着ニップNにおいて良熱伝導部材40の下面に密着して摺動しながら、矢示の方向に加圧ローラ30の回転周速度にほぼ対応した周速度をもってベルトガイド部材56a、56bの外回りを回転状態になる。
定着ニップ部Nの温度は、温度センサ46によって検出された温度に基づき、検出された温度が所定の温度よりも高いときにサーモスイッチ50励磁コイル18に対する電流供給を制御することにより所定の温度が維持されるように調整される。本例においては温度センサ46で測定した定着フィルム41の温度情報をもとに定着ニップ部Nの温度を制御するようにしている。
本例では、低軟化点化合物を含有させたトナーを使用する場合には、定着装置にオフセット防止のためのオイル塗布機構を省略することができる。低軟化点化合物を含有させていないトナーを使用する場合には、オイル塗布機構を設けてもよい。また、低軟化点化合物を含有させたトナーを使用する場合にもオイル塗布や冷却分離を行ってもよい。
図13は本例における定着フィルム41の層構成模式図である。本例の定着フィルム41は、電磁誘導発熱性の定着フィルム41の基層となる金属ベルト等でできた発熱層71と、その外面に積層した弾性層72と、その外面に積層した離型層73との複合構造のものである。
発熱層71は、非磁性の金属でも良いが、より好ましくは磁束の吸収の良いニッケル、鉄、磁性ステンレス、コバルト−ニッケル合金等の強磁性体の金属が良い。
その厚みは次の式で表される表皮深さより厚くかつ200μm以下にすることが好ましい。
弾性層72は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等の、耐熱性がよく、熱伝導率がよい材質である。
弾性層72の厚さは、画像を印刷する場合に転写材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(離型層73)が追従できないことによる光沢ムラを予防するために、10〜500μmが好ましい。
離型層73はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択することができる。
本例のフィルム式加熱定着装置は、通常の片面のプリントモードの他に両面画像プリントモードも実行できる。両面画像プリントモードの場合は、フィルム式加熱定着装置を出た一面目画像プリント済みの転写材Pは、不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されて再び転写部へ送り込まれて二面に対するトナー像転写を受け、再度、フィルム式加熱定着装置に導入されて二面に対するトナー像の定着処理を受けることで両面画像プリントが出力される。
また、図11に示すフィルム式加熱定着装置は、図10に示すフィルム式加熱定着装置と同様に、加熱部材と加圧部材としての加圧ローラ30とを有する。
前記加熱部材は、略半円筒状のフィルムガイド66と、フィルムガイド66の内側にフィルムガイド66の軸方向に沿って設けられている磁場発生手段55と、フィルムガイド66の外側を移動自在な、断面形状が無端形状の定着フィルム41とを有する。磁場発生手段55は、フィルムガイド66に向けて開かれている断面E字型に配置されている磁性コア17と、磁性コア17及びフィルムガイド66の内周面とによって囲まれる二つの空間のそれぞれに配置される励磁コイル18とによって構成されている。
また、加圧ローラ30は、温度センサ46がさらに設けられている以外は、前述した加圧ローラ30と同様に構成されている。温度センサ46は、加圧ローラ30の表面であって定着ニップ部Nから最も離れた部分の温度を検出するように設けられている。温度センサ46の検出温度に応じて励磁コイル18への通電が行われ、また遮断される。また、定着フィルム41も、前述したフィルムが用いられる。
本例のフィルム式加熱定着装置も、図10に示すフィルム式加熱定着装置と同様の効果を奏する。