JP2004250399A - チオフェン化合物、並びに非線形光学材料及び電気光学材料 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野で有用なチオフェン化合物の提供、並びに、それを用いた非線形光学材料、及び電気光学材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高度な情報化社会の進展に伴い、情報の伝送、処理、及び記録に対して光技術を用いる試みが多数なされている。そのような状況において、非線形光学効果を示す材料(非線形光学材料)が、オプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野において注目されている。非線形光学効果とは、物質に強電場(光電場)を加えたとき、生じた電気分極と加えた電場との間で非線形な関係を示す現象であり、非線形光学材料とは、このような非線形性を顕著に示す材料を指す。
二次の非線形応答を利用した非線形光学材料としては、第二高調波を発生する材料や電場の一次に比例して屈折率変化を引き起こすポッケルス効果(一次電気光学効果)を示す材料などが知られており、特に後者は電気光学(EO)光変調素子やフォトリフラクティブ素子への応用が検討されている。
【0003】
これらの非線形光学材料は、従来は無機非線形材料を中心に材料探索や素子作製が行われてきたが、近年は、1)大きな非線形性を示す、2)応答速度の速さ、3)光損傷しきい値が高い、4)多種多様な分子設計が可能、5)製造適性に優れることなどの点から有機材料が注目を集めている。これまで検討されてきた代表的な有機材料としては、4−N、N−ジメチルアミノ−4’−ニトロスチルベン(DANS)、4−N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノ−4’−ニトロアゾベンゼン(DR1)等が挙げられる。
【0004】
上記のような有機材料において、チオフェン誘導体もまた有用な材料として期待されており、例えばジシアノビニルチオフェン誘導体(例えば、非特許文献1及び2参照。)やトリシアノビニルチオフェン誘導体(例えば、特許文献1参照。)が知られている。さらに、電子供与性基としてジアルキルアミノ基、電子吸引性基としてジシアノビニル基を持つフェニルエチニルチオフェン誘導体(例えば、前記特許文献1参照。)や、電子供与性基としてジアルキルアミノ基を、電子吸引性基としてニトロ基、シアノ基、及びトリシアノビニル基を持つフェニルエチニルチエニルエチニルチオフェン誘導体(例えば、非特許文献3参照)が知られている。
【0005】
一般に有機結晶は無機結晶と比較して硬度が低く、素子等への加工に問題を有することから、非線形光学分子高分子マトリックス中に分散させること、あるいは非線形光学応答基を有する高分子材料を用いることが検討されている。そして、二次の非線形光学効果の発現には分極が反転対称心を欠く必要があり、非線形光学効果を示す分子あるいは非線形光学応答基を材料中で電場によって双極子を配向させ、反転対称心を欠く構造に配置することが広くなされている。ただし、これまでに開発されてきた有機非線形光学材料は光素子として応用するには実用上不十分なものであり、光素子化に適した材料の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
J.Chem.Soc.Chem.Commun.誌、90頁(1993年)
【非特許文献2】
J.Chem.Soc.Chem.Commun.誌、1689頁(1994年)
【非特許文献3】
Chemcal Research in Chinese Universities誌、第18巻、42頁(2002年)
【特許文献1】
米国特許第5,395,556号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するため、高い非線形光学効果を示すことが可能であり、非線形光学材料及び電気光学材料を作製するのに好適な新規なチオフェン化合物(ビニルチオフェン誘導体)、並びにこれを用いた非線形光学材料及び電気光学材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、本発明の目的が下記一般式(I)で表される化合物により達成されることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は下記に示す(1)〜(7)である。
【0009】
(1)下記、一般式(I)で表されることを特徴とするチオフェン化合物である。
【化3】
(式中、Dは酸素原子又は−NR2−を示す。R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又はR3−Ar−(R3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を示し、Arは炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数5〜10のヘテロアリール基を示す。)で表される基を示す。また、R1とR2とは互いに連結して環を形成してもよい。R1、R2がアルキル基、R3がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、若しくはジアルキルアミノ基を示す場合、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アルキルアミノ基、及び前記ジアルキルアミノ基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。E1は水素原子、又は電子求引性基を示す。E2は−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基をし、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基、又は下記式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す。)
【化4】
(式中、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を示し、E3は水素原子、又は電子求引性基を示す。E4、E5はそれぞれ独立して、電子求引性基、−COO−R4、又は−SO2−R4(R4は前記と同義である。)を示す。nは1又は2を示す。式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。)
【0010】
(2) 前記一般式(I)におけるE2が、−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基であることを特徴とする前記(1)に記載のチオフェン化合物である。
【0011】
(3) 前記一般式(I)におけるR1、R2及びR4の少なくとも一つが、架橋性基を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のチオフェン化合物である。
【0012】
(4) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0013】
(5) 前記(1)乃至(3)にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0014】
(6) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0015】
(7) 前記(1)乃至(3)にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0016】
【発明実施の形態】
本発明のチオフェン化合物は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0017】
【化5】
【0018】
一般式(I)について説明する。
一般式(I)において、Dは酸素原子又は−NR2−を示す。また、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、R3−Ar−(R3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、アミノ基、Arは炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数5〜10のヘテロアリール基を示す。)で表される基を示す。R1とR2とは互いに連結して環を形成してもよい。
【0019】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基が好ましい。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−へキトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基が好ましい。
【0020】
上記炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、炭素数1〜10のアルキルチオ基が好ましい。上記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等が挙げられ、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基が好ましい。
上記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基が好ましい。
上記ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基が好ましい。
【0021】
上記Arで示される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
また、上記Arで示される炭素数5〜10のヘテロアリール基としては、例えば、チオフェン環等が挙げられる。
【0022】
また、R1、R2がアルキル基、R3がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、若しくはジアルキルアミノ基を示す場合、該アルキル基、該アルコキシ基、該アルキルチオ基、該アルキルアミノ基、及び該ジアルキルアミノ基は、水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。
【0023】
一般式(I)において、E1は水素原子、又は電子求引性基を示す。E2は−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基、あるいは下記一般式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す。
【0024】
【化6】
(式中、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を示し、E3は水素原子、又は電子求引性基を示す。E4、E5はそれぞれ独立して、電子求引性基、−COO−R4、又は−SO2−R4(R4は前記と同義である。)を示す。nは1又は2を示す。式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。)
【0025】
一般式(IIa−1)〜(IIa−2)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
また、R5、R6における、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0026】
さらに、E3、E4、E5における、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基が好ましい例として挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)においてDは、酸素原子又は−NR2−で表される基を示すことが好ましい。
また、上記一般式(I)においてR1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、又はR3−Ar−で表される基を示すことが好ましい。さらに、R1、R2が置換基を有する場合、その置換基としてはヒドロキシ基、エステル基、又は架橋可能な置換基であることが好ましい。ここで、架橋反応可能な置換基とは、架橋反応が可能な基であれば特に限定されないが、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましい例として挙げられ、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基が特に好ましい例として挙げられる。
【0028】
R1、R2が置換基を有していてもよいアルキル基を示す場合、その炭素数は1乃至10であることが特に好ましい。また、R1とR2とが互いに連結して環を形成することも好ましい例であり、このような環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペリジン環等を形成することが特に好ましい。
【0029】
R1、R2がR3−Ar−を示す場合、R3は炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基が好ましく、Arはフェニル基が好ましい。R3が置換基を有する場合、その置換基はヒドロキシ基、エステル基、あるいは架橋可能な置換基であることが好ましい。ここで架橋反応可能な置換基は、架橋反応が可能な基であれば特に限定されないが、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましい例として挙げられ、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基が特に好ましい例として挙げられる。
【0030】
一般式(I)においてE1は水素原子又は電子吸引性基を表すが、E2が−COO−R4、又は−SO2−R4で示される基を表す場合には電子吸引性基(ハメット則のσp値が正の値を有する置換基)であることが好ましく、E2が上記一般式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す場合には、水素原子であることが好ましい。また、E2としては、E2が−COO−R4、又は−SO2−R4で示される基であることが好ましい。
尚、本発明において、電子吸引性の尺度としては、ハメット則のσp値が正の値を有することを適用する。ハメット則のσp値に関しては「Chem.Rev.誌、第91巻、165−195頁(1991年)」の記載を適用でき、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0031】
式(IIa−1)〜(IIa−2)において、R5、R6は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基、及びエチル基が特に好ましい。また、R5とR6とは互いに連結して環を形成してもよい。さらに、E3、E4、及びE5は電子吸引性基であることが好ましく、シアノ基であることが特に好ましい。
【0032】
式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。該ベンゼン環、チオフェン環の有する置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられ、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0033】
本発明のチオフェン化合物において、一般式(I)における具体的な置換基の組合せてとしては、
(1)D:酸素原子、−NR2−;n=1;E1:電子吸引性基(ハメット則のσp値が正の値を有する置換基)が好ましく、
(2)D:酸素原子、−NR2−;n=1;E1:シアノ基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、
(3)D:−NR2−;n=1;E1:シアノ基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
尚、上記組合わせにおいて記載されていない置換基(R1,R2,E2等)は、一般式(I)の定義及びその好ましい範囲を組合わせ適用することができる。
【0034】
以下に本発明のチオフェン化合物の具体例(化合物1〜14)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
以下に本発明のチオフェン化合物の製造方法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。一般式(I)においてn=1である本発明のチオフェン化合物は、例えば、一般式(III)で示される化合物を出発物質として反応スキーム1の方法に従って合成することができる。なお本発明のチオフェン化合物の製造方法において用いられる試薬は市販されているものを適宜選定して利用することができる。
【0040】
【化11】
(式中、R1、D、E1、E2は前述のものと同義である。Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
【0041】
上記反応スキーム1において、まず第1工程では、一般式(III)で示される化合物を溶媒に溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、トリメチルシリルアセチレンと反応させることで、一般式(IV)で示される化合物に変換することができる。第1工程で用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。また、上記トリメチルシリルアセチレンの使用量は一般式(III)で示される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(III)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0042】
次に、上記反応スキーム1における第2工程では、一般式(IV)で示される化合物をテトラn−ブチルアンモニウム フルオライド(Bu4NF)のTHF溶液(1M)で処理することにより、一般式(IV)で示される化合物を一般式(V)で示される化合物に変換できる。Bu4NFは、反応において0.5〜5当量で用いることが好ましく、0.8〜2当量が更に好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは−10℃〜40℃である。
【0043】
上記反応スキーム1における第3工程では、上記で得られた一般式(V)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドと反応させることにより、一般式(VI)で示される化合物に変換できる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドの使用量は一般式(V)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(V)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0044】
上記反応スキーム1における第4工程では、上記で得られた一般式(VI)で示される化合物と一般式(VII)で示される化合物とを塩基存在下において反応させることにより、目的物である一般式(I)で示される化合物に変換することができる。一般式(VII)は、一般式(VI)に対して0.5〜8当量が好ましく、0.8〜2当量がさらに好ましい。用いる塩基の量は、通常、触媒量程度でよい。ここで用いる有機溶剤は特に限定されないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶剤を好ましい例として挙げることができる。ここで用いることのできる塩基としては、アミン類が好ましい例として挙げられ、ピペリジンが特に好ましい。但し、上記塩基は添加してもしなくともよい。
【0045】
次に、一般式(I)においてn=2である本発明のチオフェン化合物は、例えば、上記一般式(V)で示される化合物を出発物質として反応スキーム2の方法に従って合成することができる。
【0046】
【化12】
(式中、R1、D、E1、E2は上述のものと同義である。Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
【0047】
上記反応スキーム2におけおる第1工程では、まず、上記から得られた一般式(V)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、2,5−ジハロゲノチオフェンと反応させることにより、一般式(VIII)で示される化合物に変換できる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記2,5−ジハロゲノチオフェンの使用量は一般式(V)で表される化合物に対して1.5〜10当量の範囲で用いることが好ましく、2〜5当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(V)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0048】
上記反応スキーム2における第2工程では、一般式(VIII)で示される化合物を溶媒に溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅を存在下において、トリメチルシリルアセチレンと反応させることにより一般式(IX)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記トリメチルシリルアセチレンの使用量は一般式(VIII)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(VIII)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0049】
上記反応スキーム2における第3工程では、テトラn−ブチルアンモニウム フルオライドのTHF溶液(1M)で一般式(IX)で示される化合物を処理することによって、一般式(IX)で示される化合物を一般式(X)で示される化合物に変換することができる。尚、Bu4NFの使用量及び反応温度等の条件は反応スキーム1の第2工程と同様である。
【0050】
次いで、上記反応スキーム2における第4工程では、上記から得られた一般式(X)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドと反応させることにより、一般式(XI)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドの使用量は一般式(X)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(X)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0051】
上記反応スキームにおける第5工程では、上記から得られた一般式(XI)で示される化合物と一般式(VII)で示される化合物とを塩基存在下において反応させることにより、一般式(I)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる有機溶剤は特に限定されないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶剤を好ましい例として挙げることができる。ここで用いることのできる塩基としては、アミン類が好ましい例として挙げられ、ピペリジンが特に好ましい。但し、上記塩基は添加してもしなくともよい。上記塩基の使用量は、0.5〜5当量が好ましく、0.8〜2当量が更に好ましい。
【0052】
上記反応スキーム1及び2において、一般式(I)で示される化合物が種々の置換基を有する場合、上記の製造方法において、あらかじめ導入すべき置換基の前駆体となる基を導入し、適切な工程で目的とする置換基に変換してもよい。また、必要に応じて保護基、及び脱保護の工程を採用し、導入すべき置換基を導入してもよい。
【0053】
以下に本発明のチオフェン化合物が架橋可能な置換基を有する場合における、該化合物をその構成成分の一つとする重合体の製造方法を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。上記重合体の形成には、導入した架橋可能な置換基に適した公知の種々の架橋法が採用できる。例えば、架橋反応可能か置換基がアクリロイルオキシ基やメタアクリロイルオキシ基の場合、有機溶媒中においてAIBNなどの重合開始剤を用いるラジカル重合が特に好ましい。
【0054】
本発明のチオフェン化合物は、光学分野、エレクトロニクス分野で利用される機能性フィルム(例えば、光学フィルム、強誘電性フィルム、反強誘電性フィルム、圧電フィルム)や、機能性素子(例えば、非線形光学素子、電気光学素子、焦電素子、圧電素子、光変調素子)などを包含する光学要素に好適に用いることができる。
【0055】
(非線形光学材料及び電気光学材料)
本発明の非線形光学材料、及び電気光学材料は、本発明のチオフェン化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明のチオフェン化合物が架橋性基を有する場合、本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を非線形光学材料及び電気光学材料として用いる。本発明の非線形光学材料及び電気光学材料は、本発明のチオフェン化合物単独からなる態様と、本発明のチオフェン化合物と媒体とからなる態様の両方を含む。以下に示す製造方法を示す。
【0056】
(化合物単独の場合)
1)支持体等に本発明のチオフェン化合物を含むモノマー組成物を塗布し、2)配向させ、3)配向下において架橋することにより本発明の非線形光学材料、又は電気光学材料を製造することができる。このとき、本発明のビニルチオフェン化合物は架橋性の置換基を有していることが好ましい。
【0057】
(化合物と媒体を含む場合)
1)本発明のビニルチオフェン化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明のビニルチオフェン化合物の重合体とを含む組成物を溶媒に溶解し、2)支持体等に塗布して乾燥させ、3)配向処理を施すことにより本発明の非線形光学材料、又は電気光学材料を製造できる。
【0058】
本発明のビニルチオフェン化合物とそれを保持する高分子媒体とを含む組成物、あるいは本発明のビニルチオフェン化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解する工程において、用いる高分子媒体は特に限定されないが、例えば、PMMA等のアクリル系高分子、フッ素化ポリイミドなどのイミド系高分子、ポリカーボネート等を例として挙げることができる。また、用いる溶剤としては特に限定されないが、例えば酢酸エチル等のエステル類系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0059】
前記製造方法における塗布工程において、支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フイルム、反射板などが例として挙げることができる。塗布方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用できる。
【0060】
前記製造方法における配向処理においては、コロナポーリング、及びコンタクトポーリング法などを好適に採用できる。
【0061】
本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有する非線形光学材料及び電気光学材料の場合、重合体の形態は特に限定されないが、特に一般式(I)におけるR1、R2、あるいはR4が架橋性基を有することが好ましく、これらにより三次元的に架橋されることがさらに好ましく、この観点から架橋性基は一分子に複数あるのが特に好ましい。
【0062】
本発明の一般式(I)で示される化合物の用途として、具体的には、非線形光学素子(電気光学素子)が挙げられ、例えば、「光波光学」コロナ社(1998年)、200頁に記載されているように導波路型素子を作製して、光波の位相や強度を変調する光変調器、あるいは光スイッチとして利用される。また、特開平9−22035号公報には光信号発生装置に用いた例が開示されており、特開2001−264715号公報には電波−光信号変換装置を作製した例が開示されている。
【0063】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(化合物1の製造)
−第1工程−
ピペリジン80mLに4−ジメチルアミノブロモベンゼン(3.87g)、トリメチルシリルアセチレン(3.98g)、ヨウ化銅(41mg)、トリフェニルホスフェン(102mg)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(40mg)を加え、90℃に加温し攪拌した。4時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮し、水を加えた後にヘキサンで抽出した。得られた抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下において濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶出液:ヘキサン:酢酸エチル=95:5)し、2.7gの4−ジメチルアミノフェニル トリメチルシリルアセチレンを得た。
【0065】
−第2工程−
得られた4−ジメチルアミノフェニル トリメチルシリルアセチレンをテトラn−ブチルアンモニウム フルオライドのTHF溶液(1M)で処理し、1.45gの4−ジメチルアミノフェニルアセチレンを得た。
【0066】
−第3工程−
得られた4−ジメチルアミノフェニルアセチレン(1.45g)を40mLのトリエチルアミンに溶解し、5−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(1.91g)、ヨウ化銅(28mg)、トリフェニルホスフェン(12mg)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(8mg)を加え、90℃に加温した。8時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮し、水を加えた後に酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下において濃縮した。残留物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、1.6gの5−[4−(ジメチルアミノフェニル)エチニル]チオフェン−2−カルボキシアルデヒドを得た。
【0067】
−第4工程−
得られた5−[4−(ジメチルアミノフェニル)エチニル]チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(255mg)を10mLのエタノールに溶解し、シアノ酢酸エチル(120mg)、ピペリジン(3滴)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液をろ過し、得られたろ物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、43mgの上記化合物1を得た。
1H−NMR(δ、CDCl3)1.38(3H,t),3.02(6H,s),4.36(2H,q),6.62(2H,d),7.22(1H,d),7.40(2H,d),7.65(1H,d),8.24(1H,s)
FAB−MASS(M+H)+=351
【0068】
[実施例2]
(化合物2の製造)
4−ヒドロキシピペリジン(15.1g)、4−フルオロヨードベンゼン(22.2g)をジメチルスルホキシド(100mL)に溶解し、炭酸カリウム(15.6g)を加えて、150℃で5時間攪拌した後、水を加えた。反応液をろ過し、得られたろ物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、20.3gの4−(4−ヒドロキシピペリジノ)ヨードベンゼンを得た。
【0069】
次に、実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを上記で得られた4−(4−ヒドロキシピペリジノ)ヨードベンゼンに変えた以外は実施例1と同様にして上記化合物2を合成した。
1H−NMR(δ、CDCl3)1.38(3H,t),1.48(1H,d),1.6−1.7(2H,m),1.9−2.1(2H,m),3.0−3.1(2H,m),3.6−3.8(2H,m),3.92(1H,quint.),4.36(2H,q),6.88(2H,d),7.23(1H,d),7.41(2H,d),7.65(1H,d),8.23(1H,s)
FAB−MASS(M+H)+=407
【0070】
[実施例3]
(化合物3の製造)
アクリル酸4−ヒドロキシブチル(14.4g)、シアノ酢酸(10.2g)をトルエン(100mL)に溶解し、p−トルエンスルホン酸(1.9g)を加え、トルエン共沸下において水を除去しながら3時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて濃縮してシアノ酢酸4−アクリロイルオキシブチルを合成した。
【0071】
次に、実施例1の第4工程において、シアノ酢酸メチルを上記で得られたシアノ酢酸4−アクリロイルオキシブチルに変えた以外は実施例1と同様にして上記化合物3を合成した。
FAB−MASS(M+H)+=449
【0072】
尚、上記化合物4及び5も実施例3記載の方法に準じて合成することができる。
【0073】
[実施例4]
(化合物6の製造)
4−ブロモアニリン(17.2g)、6−ブロモヘキサ−1−オール(9.5g)をジメチルスルホキシド(2mL)に溶解し、炭酸カリウム(15.6g)を加え、100℃において6時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をジメチルアセトアミド(100mL)に溶解し、ヨウ化メチル(14.2g)と炭酸カリウム(15.6g)とを加え、100℃において6時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマト(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=8/2)にて精製し、19.8gの4−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノ)ブロモベンゼンを得た。
【0074】
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを上記の方法により得られた4−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノ)ブロモベンゼンに変えた以外は実施例1と同様にして、5−[4−[N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノフェニル]エチニル]−2−(2−シアノ−2−エトキシカルボニルビニル)チオフェンを得た。
【0075】
上記で得られた5−[4−[N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノフェニル]エチニル]−2−(2−シアノ−2−エトキシカルボニルビニル)チオフェン(436mg)をTHF(10mL)に溶解し、N,N−ジメチルアニリン(121mg)、アクリロイルクロリド(135mg)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1)にて精製し、さらにアセトニトリルで再結晶することにより230mgの上記化合物6を得た。
FAB−MASS(M+H)+=491
【0076】
尚、上記化合物7〜9の化合物も実施例1乃至4記載の方法に準じて合成することができる。
【0077】
[実施例5]
(化合物10の製造)
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノフェニルアセチレンを、L. Christophらの方法に従って合成することができる4−[ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニルアセチレン(Chem.Eyrop.J.誌、第4巻、2129−2135頁(1998年)参照)に変更した以外は実施例1と同様にして上記化合物10を合成した。
FAB−MASS(M+H)+=535
【0078】
尚、上記化合物11〜13の化合物も実施例1乃至5記載の方法に準じて合成することができる。
【0079】
[実施例6]
(化合物17の製造)
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを、4−ブロモアニソールに変えた以外は実施例1と同様にして合成し、上記化合物17が得られた。
【0080】
[実施例7]
(化合物18の製造)
実施例1の第4工程において、シアノ酢酸エチルを(メチルスルホニル)アセトニトリルに変えた以外は実施例1と同様にして合成し、上記化合物18が得られた。
【0081】
[実施例8]
(化合物3とメタアクリル酸メチルとの共重合体の製造)
上記化合物3(100mg)、メタアクリル酸メチル(100mg)をジメチルアミド(1mL)に溶解し、AIBN(2mg)を加え、100℃において4時間攪拌した。次に再びAIBN(2mg)を加え、100℃において4時間攪拌した。アセトンに反応液を注ぎ、得られた重合体をろ別し、化合物3とメタアクリル酸メチルとの共重合体を120mg得た。得られた共重合体のガラス転移温度は110℃であった。
【0082】
[実施例9]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(1))
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料(電気光学材料)を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して非線形光学定数を算出した。
【0083】
〔塗布液組成〕
・上記化合物1 20mg
・PMMA 80mg
・シクロヘキサノン 500mL
【0084】
[実施例10]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(2))
実施例2で得られた化合物2を用いて実施例9と同様の方法に従って非線形光学材料(電気光学材料)を作製した。
【0085】
[実施例11]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(3))
実施例5で得られた化合物10を用いて実施例9と同様の方法に従って非線形光学材料(電気光学材料)を作製した。
【0086】
[実施例12]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(4))
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料(電気光学材料)を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して非線形光学定数を算出した。
【0087】
〔塗布液組成〕
・実施例8で得られた化合物3とメタアクリル酸メチルの共重合体 20mg
・クロロホルム 100mL
【0088】
[比較例1]
(DR1色素による非線形光学材料の製造)
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した(DR1色素:Direct Red 1)。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して、非線形光学定数を算出した。
【0089】
〔塗布液組成〕
・DR1色素 20mg
・PMMA 80mg
・シクロヘキサノン 500mL
【0090】
図1に実施例9〜12で得られた非線形光学材料と比較例1で得られた非線形光学材料との配向度に対する非線形光学定数の値を示す。一般に非線形光学定数は、低濃度領域において配向度が増加するとともに線形的に上昇する。その結果より、実施例で得られた非線形光学材料の方が同じ配向度では高い非線形光学定数を示すことが予測される。
また電気光学効果の大きさは非線形光学効果の大きさと相関関係があることが知られており、一般には電気光学材料の探索に非線形光学定数が指標として用いられている。したがって、本発明のチオフェン化合物が電気光学素子への応用に用いることのできる電気光学材料としても有用なことが明らかとなった。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、高い非線形光学効果を示すことが可能な新規なチオフェン化合物、並びに、これを用いた非線形光学材料及び電気光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例9〜12で得られた非線形光学材料と本発明の比較例1で得られた非線形光学材料との配向度に対する非線形光学定数のプロットである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、オプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野で有用なチオフェン化合物の提供、並びに、それを用いた非線形光学材料、及び電気光学材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高度な情報化社会の進展に伴い、情報の伝送、処理、及び記録に対して光技術を用いる試みが多数なされている。そのような状況において、非線形光学効果を示す材料(非線形光学材料)が、オプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野において注目されている。非線形光学効果とは、物質に強電場(光電場)を加えたとき、生じた電気分極と加えた電場との間で非線形な関係を示す現象であり、非線形光学材料とは、このような非線形性を顕著に示す材料を指す。
二次の非線形応答を利用した非線形光学材料としては、第二高調波を発生する材料や電場の一次に比例して屈折率変化を引き起こすポッケルス効果(一次電気光学効果)を示す材料などが知られており、特に後者は電気光学(EO)光変調素子やフォトリフラクティブ素子への応用が検討されている。
【0003】
これらの非線形光学材料は、従来は無機非線形材料を中心に材料探索や素子作製が行われてきたが、近年は、1)大きな非線形性を示す、2)応答速度の速さ、3)光損傷しきい値が高い、4)多種多様な分子設計が可能、5)製造適性に優れることなどの点から有機材料が注目を集めている。これまで検討されてきた代表的な有機材料としては、4−N、N−ジメチルアミノ−4’−ニトロスチルベン(DANS)、4−N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノ−4’−ニトロアゾベンゼン(DR1)等が挙げられる。
【0004】
上記のような有機材料において、チオフェン誘導体もまた有用な材料として期待されており、例えばジシアノビニルチオフェン誘導体(例えば、非特許文献1及び2参照。)やトリシアノビニルチオフェン誘導体(例えば、特許文献1参照。)が知られている。さらに、電子供与性基としてジアルキルアミノ基、電子吸引性基としてジシアノビニル基を持つフェニルエチニルチオフェン誘導体(例えば、前記特許文献1参照。)や、電子供与性基としてジアルキルアミノ基を、電子吸引性基としてニトロ基、シアノ基、及びトリシアノビニル基を持つフェニルエチニルチエニルエチニルチオフェン誘導体(例えば、非特許文献3参照)が知られている。
【0005】
一般に有機結晶は無機結晶と比較して硬度が低く、素子等への加工に問題を有することから、非線形光学分子高分子マトリックス中に分散させること、あるいは非線形光学応答基を有する高分子材料を用いることが検討されている。そして、二次の非線形光学効果の発現には分極が反転対称心を欠く必要があり、非線形光学効果を示す分子あるいは非線形光学応答基を材料中で電場によって双極子を配向させ、反転対称心を欠く構造に配置することが広くなされている。ただし、これまでに開発されてきた有機非線形光学材料は光素子として応用するには実用上不十分なものであり、光素子化に適した材料の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
J.Chem.Soc.Chem.Commun.誌、90頁(1993年)
【非特許文献2】
J.Chem.Soc.Chem.Commun.誌、1689頁(1994年)
【非特許文献3】
Chemcal Research in Chinese Universities誌、第18巻、42頁(2002年)
【特許文献1】
米国特許第5,395,556号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するため、高い非線形光学効果を示すことが可能であり、非線形光学材料及び電気光学材料を作製するのに好適な新規なチオフェン化合物(ビニルチオフェン誘導体)、並びにこれを用いた非線形光学材料及び電気光学材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、本発明の目的が下記一般式(I)で表される化合物により達成されることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は下記に示す(1)〜(7)である。
【0009】
(1)下記、一般式(I)で表されることを特徴とするチオフェン化合物である。
【化3】
(式中、Dは酸素原子又は−NR2−を示す。R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又はR3−Ar−(R3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基を示し、Arは炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数5〜10のヘテロアリール基を示す。)で表される基を示す。また、R1とR2とは互いに連結して環を形成してもよい。R1、R2がアルキル基、R3がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、若しくはジアルキルアミノ基を示す場合、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アルキルアミノ基、及び前記ジアルキルアミノ基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。E1は水素原子、又は電子求引性基を示す。E2は−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基をし、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基、又は下記式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す。)
【化4】
(式中、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を示し、E3は水素原子、又は電子求引性基を示す。E4、E5はそれぞれ独立して、電子求引性基、−COO−R4、又は−SO2−R4(R4は前記と同義である。)を示す。nは1又は2を示す。式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。)
【0010】
(2) 前記一般式(I)におけるE2が、−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基であることを特徴とする前記(1)に記載のチオフェン化合物である。
【0011】
(3) 前記一般式(I)におけるR1、R2及びR4の少なくとも一つが、架橋性基を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のチオフェン化合物である。
【0012】
(4) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0013】
(5) 前記(1)乃至(3)にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0014】
(6) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0015】
(7) 前記(1)乃至(3)にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0016】
【発明実施の形態】
本発明のチオフェン化合物は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0017】
【化5】
【0018】
一般式(I)について説明する。
一般式(I)において、Dは酸素原子又は−NR2−を示す。また、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、R3−Ar−(R3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、アミノ基、Arは炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数5〜10のヘテロアリール基を示す。)で表される基を示す。R1とR2とは互いに連結して環を形成してもよい。
【0019】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基が好ましい。
上記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−へキトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基が好ましい。
【0020】
上記炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、炭素数1〜10のアルキルチオ基が好ましい。上記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等が挙げられ、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基が好ましい。
上記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基が好ましい。
上記ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基が好ましい。
【0021】
上記Arで示される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
また、上記Arで示される炭素数5〜10のヘテロアリール基としては、例えば、チオフェン環等が挙げられる。
【0022】
また、R1、R2がアルキル基、R3がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、若しくはジアルキルアミノ基を示す場合、該アルキル基、該アルコキシ基、該アルキルチオ基、該アルキルアミノ基、及び該ジアルキルアミノ基は、水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は架橋反応可能な置換基を有していてもよい。
【0023】
一般式(I)において、E1は水素原子、又は電子求引性基を示す。E2は−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基、あるいは下記一般式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す。
【0024】
【化6】
(式中、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を示し、E3は水素原子、又は電子求引性基を示す。E4、E5はそれぞれ独立して、電子求引性基、−COO−R4、又は−SO2−R4(R4は前記と同義である。)を示す。nは1又は2を示す。式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。)
【0025】
一般式(IIa−1)〜(IIa−2)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
また、R5、R6における、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0026】
さらに、E3、E4、E5における、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基が好ましい例として挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)においてDは、酸素原子又は−NR2−で表される基を示すことが好ましい。
また、上記一般式(I)においてR1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、又はR3−Ar−で表される基を示すことが好ましい。さらに、R1、R2が置換基を有する場合、その置換基としてはヒドロキシ基、エステル基、又は架橋可能な置換基であることが好ましい。ここで、架橋反応可能な置換基とは、架橋反応が可能な基であれば特に限定されないが、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましい例として挙げられ、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基が特に好ましい例として挙げられる。
【0028】
R1、R2が置換基を有していてもよいアルキル基を示す場合、その炭素数は1乃至10であることが特に好ましい。また、R1とR2とが互いに連結して環を形成することも好ましい例であり、このような環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペリジン環等を形成することが特に好ましい。
【0029】
R1、R2がR3−Ar−を示す場合、R3は炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基が好ましく、Arはフェニル基が好ましい。R3が置換基を有する場合、その置換基はヒドロキシ基、エステル基、あるいは架橋可能な置換基であることが好ましい。ここで架橋反応可能な置換基は、架橋反応が可能な基であれば特に限定されないが、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましい例として挙げられ、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基が特に好ましい例として挙げられる。
【0030】
一般式(I)においてE1は水素原子又は電子吸引性基を表すが、E2が−COO−R4、又は−SO2−R4で示される基を表す場合には電子吸引性基(ハメット則のσp値が正の値を有する置換基)であることが好ましく、E2が上記一般式(IIa−1)〜(IIa−2)から選択されるいずれかの環状基を示す場合には、水素原子であることが好ましい。また、E2としては、E2が−COO−R4、又は−SO2−R4で示される基であることが好ましい。
尚、本発明において、電子吸引性の尺度としては、ハメット則のσp値が正の値を有することを適用する。ハメット則のσp値に関しては「Chem.Rev.誌、第91巻、165−195頁(1991年)」の記載を適用でき、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0031】
式(IIa−1)〜(IIa−2)において、R5、R6は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基、及びエチル基が特に好ましい。また、R5とR6とは互いに連結して環を形成してもよい。さらに、E3、E4、及びE5は電子吸引性基であることが好ましく、シアノ基であることが特に好ましい。
【0032】
式中のベンゼン環,チオフェン環は置換基を有していてもよい。該ベンゼン環、チオフェン環の有する置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられ、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0033】
本発明のチオフェン化合物において、一般式(I)における具体的な置換基の組合せてとしては、
(1)D:酸素原子、−NR2−;n=1;E1:電子吸引性基(ハメット則のσp値が正の値を有する置換基)が好ましく、
(2)D:酸素原子、−NR2−;n=1;E1:シアノ基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、
(3)D:−NR2−;n=1;E1:シアノ基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
尚、上記組合わせにおいて記載されていない置換基(R1,R2,E2等)は、一般式(I)の定義及びその好ましい範囲を組合わせ適用することができる。
【0034】
以下に本発明のチオフェン化合物の具体例(化合物1〜14)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
以下に本発明のチオフェン化合物の製造方法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。一般式(I)においてn=1である本発明のチオフェン化合物は、例えば、一般式(III)で示される化合物を出発物質として反応スキーム1の方法に従って合成することができる。なお本発明のチオフェン化合物の製造方法において用いられる試薬は市販されているものを適宜選定して利用することができる。
【0040】
【化11】
(式中、R1、D、E1、E2は前述のものと同義である。Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
【0041】
上記反応スキーム1において、まず第1工程では、一般式(III)で示される化合物を溶媒に溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、トリメチルシリルアセチレンと反応させることで、一般式(IV)で示される化合物に変換することができる。第1工程で用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。また、上記トリメチルシリルアセチレンの使用量は一般式(III)で示される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(III)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0042】
次に、上記反応スキーム1における第2工程では、一般式(IV)で示される化合物をテトラn−ブチルアンモニウム フルオライド(Bu4NF)のTHF溶液(1M)で処理することにより、一般式(IV)で示される化合物を一般式(V)で示される化合物に変換できる。Bu4NFは、反応において0.5〜5当量で用いることが好ましく、0.8〜2当量が更に好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは−10℃〜40℃である。
【0043】
上記反応スキーム1における第3工程では、上記で得られた一般式(V)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドと反応させることにより、一般式(VI)で示される化合物に変換できる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドの使用量は一般式(V)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(V)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0044】
上記反応スキーム1における第4工程では、上記で得られた一般式(VI)で示される化合物と一般式(VII)で示される化合物とを塩基存在下において反応させることにより、目的物である一般式(I)で示される化合物に変換することができる。一般式(VII)は、一般式(VI)に対して0.5〜8当量が好ましく、0.8〜2当量がさらに好ましい。用いる塩基の量は、通常、触媒量程度でよい。ここで用いる有機溶剤は特に限定されないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶剤を好ましい例として挙げることができる。ここで用いることのできる塩基としては、アミン類が好ましい例として挙げられ、ピペリジンが特に好ましい。但し、上記塩基は添加してもしなくともよい。
【0045】
次に、一般式(I)においてn=2である本発明のチオフェン化合物は、例えば、上記一般式(V)で示される化合物を出発物質として反応スキーム2の方法に従って合成することができる。
【0046】
【化12】
(式中、R1、D、E1、E2は上述のものと同義である。Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
【0047】
上記反応スキーム2におけおる第1工程では、まず、上記から得られた一般式(V)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、2,5−ジハロゲノチオフェンと反応させることにより、一般式(VIII)で示される化合物に変換できる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記2,5−ジハロゲノチオフェンの使用量は一般式(V)で表される化合物に対して1.5〜10当量の範囲で用いることが好ましく、2〜5当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(V)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0048】
上記反応スキーム2における第2工程では、一般式(VIII)で示される化合物を溶媒に溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅を存在下において、トリメチルシリルアセチレンと反応させることにより一般式(IX)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記トリメチルシリルアセチレンの使用量は一般式(VIII)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(VIII)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0049】
上記反応スキーム2における第3工程では、テトラn−ブチルアンモニウム フルオライドのTHF溶液(1M)で一般式(IX)で示される化合物を処理することによって、一般式(IX)で示される化合物を一般式(X)で示される化合物に変換することができる。尚、Bu4NFの使用量及び反応温度等の条件は反応スキーム1の第2工程と同様である。
【0050】
次いで、上記反応スキーム2における第4工程では、上記から得られた一般式(X)で示される化合物を、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリフェニルホスフェン、ヨウ化銅の存在下において、5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドと反応させることにより、一般式(XI)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる溶剤としては、ピペリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの2級、若しくは3級のアミン系溶剤が好適である。上記5−ハロゲノ−2−チオフェンカルボキシアルデヒドの使用量は一般式(X)で表される化合物に対して0.5〜4当量の範囲で用いることが好ましく、0.8〜2当量の範囲で用いることが特に好ましい。上記ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの使用量は一般式(X)で示される化合物に対し、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がさらに好ましい。反応温度は、通常−20℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は通常10分〜1日間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
【0051】
上記反応スキームにおける第5工程では、上記から得られた一般式(XI)で示される化合物と一般式(VII)で示される化合物とを塩基存在下において反応させることにより、一般式(I)で示される化合物に変換することができる。ここで用いる有機溶剤は特に限定されないが、エタノール、メタノール等のアルコール系溶剤を好ましい例として挙げることができる。ここで用いることのできる塩基としては、アミン類が好ましい例として挙げられ、ピペリジンが特に好ましい。但し、上記塩基は添加してもしなくともよい。上記塩基の使用量は、0.5〜5当量が好ましく、0.8〜2当量が更に好ましい。
【0052】
上記反応スキーム1及び2において、一般式(I)で示される化合物が種々の置換基を有する場合、上記の製造方法において、あらかじめ導入すべき置換基の前駆体となる基を導入し、適切な工程で目的とする置換基に変換してもよい。また、必要に応じて保護基、及び脱保護の工程を採用し、導入すべき置換基を導入してもよい。
【0053】
以下に本発明のチオフェン化合物が架橋可能な置換基を有する場合における、該化合物をその構成成分の一つとする重合体の製造方法を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。上記重合体の形成には、導入した架橋可能な置換基に適した公知の種々の架橋法が採用できる。例えば、架橋反応可能か置換基がアクリロイルオキシ基やメタアクリロイルオキシ基の場合、有機溶媒中においてAIBNなどの重合開始剤を用いるラジカル重合が特に好ましい。
【0054】
本発明のチオフェン化合物は、光学分野、エレクトロニクス分野で利用される機能性フィルム(例えば、光学フィルム、強誘電性フィルム、反強誘電性フィルム、圧電フィルム)や、機能性素子(例えば、非線形光学素子、電気光学素子、焦電素子、圧電素子、光変調素子)などを包含する光学要素に好適に用いることができる。
【0055】
(非線形光学材料及び電気光学材料)
本発明の非線形光学材料、及び電気光学材料は、本発明のチオフェン化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明のチオフェン化合物が架橋性基を有する場合、本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を非線形光学材料及び電気光学材料として用いる。本発明の非線形光学材料及び電気光学材料は、本発明のチオフェン化合物単独からなる態様と、本発明のチオフェン化合物と媒体とからなる態様の両方を含む。以下に示す製造方法を示す。
【0056】
(化合物単独の場合)
1)支持体等に本発明のチオフェン化合物を含むモノマー組成物を塗布し、2)配向させ、3)配向下において架橋することにより本発明の非線形光学材料、又は電気光学材料を製造することができる。このとき、本発明のビニルチオフェン化合物は架橋性の置換基を有していることが好ましい。
【0057】
(化合物と媒体を含む場合)
1)本発明のビニルチオフェン化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明のビニルチオフェン化合物の重合体とを含む組成物を溶媒に溶解し、2)支持体等に塗布して乾燥させ、3)配向処理を施すことにより本発明の非線形光学材料、又は電気光学材料を製造できる。
【0058】
本発明のビニルチオフェン化合物とそれを保持する高分子媒体とを含む組成物、あるいは本発明のビニルチオフェン化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解する工程において、用いる高分子媒体は特に限定されないが、例えば、PMMA等のアクリル系高分子、フッ素化ポリイミドなどのイミド系高分子、ポリカーボネート等を例として挙げることができる。また、用いる溶剤としては特に限定されないが、例えば酢酸エチル等のエステル類系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0059】
前記製造方法における塗布工程において、支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フイルム、反射板などが例として挙げることができる。塗布方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用できる。
【0060】
前記製造方法における配向処理においては、コロナポーリング、及びコンタクトポーリング法などを好適に採用できる。
【0061】
本発明のチオフェン化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有する非線形光学材料及び電気光学材料の場合、重合体の形態は特に限定されないが、特に一般式(I)におけるR1、R2、あるいはR4が架橋性基を有することが好ましく、これらにより三次元的に架橋されることがさらに好ましく、この観点から架橋性基は一分子に複数あるのが特に好ましい。
【0062】
本発明の一般式(I)で示される化合物の用途として、具体的には、非線形光学素子(電気光学素子)が挙げられ、例えば、「光波光学」コロナ社(1998年)、200頁に記載されているように導波路型素子を作製して、光波の位相や強度を変調する光変調器、あるいは光スイッチとして利用される。また、特開平9−22035号公報には光信号発生装置に用いた例が開示されており、特開2001−264715号公報には電波−光信号変換装置を作製した例が開示されている。
【0063】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(化合物1の製造)
−第1工程−
ピペリジン80mLに4−ジメチルアミノブロモベンゼン(3.87g)、トリメチルシリルアセチレン(3.98g)、ヨウ化銅(41mg)、トリフェニルホスフェン(102mg)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(40mg)を加え、90℃に加温し攪拌した。4時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮し、水を加えた後にヘキサンで抽出した。得られた抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下において濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製(溶出液:ヘキサン:酢酸エチル=95:5)し、2.7gの4−ジメチルアミノフェニル トリメチルシリルアセチレンを得た。
【0065】
−第2工程−
得られた4−ジメチルアミノフェニル トリメチルシリルアセチレンをテトラn−ブチルアンモニウム フルオライドのTHF溶液(1M)で処理し、1.45gの4−ジメチルアミノフェニルアセチレンを得た。
【0066】
−第3工程−
得られた4−ジメチルアミノフェニルアセチレン(1.45g)を40mLのトリエチルアミンに溶解し、5−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(1.91g)、ヨウ化銅(28mg)、トリフェニルホスフェン(12mg)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(8mg)を加え、90℃に加温した。8時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮し、水を加えた後に酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下において濃縮した。残留物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、1.6gの5−[4−(ジメチルアミノフェニル)エチニル]チオフェン−2−カルボキシアルデヒドを得た。
【0067】
−第4工程−
得られた5−[4−(ジメチルアミノフェニル)エチニル]チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(255mg)を10mLのエタノールに溶解し、シアノ酢酸エチル(120mg)、ピペリジン(3滴)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液をろ過し、得られたろ物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、43mgの上記化合物1を得た。
1H−NMR(δ、CDCl3)1.38(3H,t),3.02(6H,s),4.36(2H,q),6.62(2H,d),7.22(1H,d),7.40(2H,d),7.65(1H,d),8.24(1H,s)
FAB−MASS(M+H)+=351
【0068】
[実施例2]
(化合物2の製造)
4−ヒドロキシピペリジン(15.1g)、4−フルオロヨードベンゼン(22.2g)をジメチルスルホキシド(100mL)に溶解し、炭酸カリウム(15.6g)を加えて、150℃で5時間攪拌した後、水を加えた。反応液をろ過し、得られたろ物をアセトニトリルを用いて再結晶を行い、20.3gの4−(4−ヒドロキシピペリジノ)ヨードベンゼンを得た。
【0069】
次に、実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを上記で得られた4−(4−ヒドロキシピペリジノ)ヨードベンゼンに変えた以外は実施例1と同様にして上記化合物2を合成した。
1H−NMR(δ、CDCl3)1.38(3H,t),1.48(1H,d),1.6−1.7(2H,m),1.9−2.1(2H,m),3.0−3.1(2H,m),3.6−3.8(2H,m),3.92(1H,quint.),4.36(2H,q),6.88(2H,d),7.23(1H,d),7.41(2H,d),7.65(1H,d),8.23(1H,s)
FAB−MASS(M+H)+=407
【0070】
[実施例3]
(化合物3の製造)
アクリル酸4−ヒドロキシブチル(14.4g)、シアノ酢酸(10.2g)をトルエン(100mL)に溶解し、p−トルエンスルホン酸(1.9g)を加え、トルエン共沸下において水を除去しながら3時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水溶液で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下にて濃縮してシアノ酢酸4−アクリロイルオキシブチルを合成した。
【0071】
次に、実施例1の第4工程において、シアノ酢酸メチルを上記で得られたシアノ酢酸4−アクリロイルオキシブチルに変えた以外は実施例1と同様にして上記化合物3を合成した。
FAB−MASS(M+H)+=449
【0072】
尚、上記化合物4及び5も実施例3記載の方法に準じて合成することができる。
【0073】
[実施例4]
(化合物6の製造)
4−ブロモアニリン(17.2g)、6−ブロモヘキサ−1−オール(9.5g)をジメチルスルホキシド(2mL)に溶解し、炭酸カリウム(15.6g)を加え、100℃において6時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をジメチルアセトアミド(100mL)に溶解し、ヨウ化メチル(14.2g)と炭酸カリウム(15.6g)とを加え、100℃において6時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマト(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=8/2)にて精製し、19.8gの4−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノ)ブロモベンゼンを得た。
【0074】
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを上記の方法により得られた4−(N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノ)ブロモベンゼンに変えた以外は実施例1と同様にして、5−[4−[N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノフェニル]エチニル]−2−(2−シアノ−2−エトキシカルボニルビニル)チオフェンを得た。
【0075】
上記で得られた5−[4−[N−(6−ヒドロキシヘキシル)−N−メチルアミノフェニル]エチニル]−2−(2−シアノ−2−エトキシカルボニルビニル)チオフェン(436mg)をTHF(10mL)に溶解し、N,N−ジメチルアニリン(121mg)、アクリロイルクロリド(135mg)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1)にて精製し、さらにアセトニトリルで再結晶することにより230mgの上記化合物6を得た。
FAB−MASS(M+H)+=491
【0076】
尚、上記化合物7〜9の化合物も実施例1乃至4記載の方法に準じて合成することができる。
【0077】
[実施例5]
(化合物10の製造)
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノフェニルアセチレンを、L. Christophらの方法に従って合成することができる4−[ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニルアセチレン(Chem.Eyrop.J.誌、第4巻、2129−2135頁(1998年)参照)に変更した以外は実施例1と同様にして上記化合物10を合成した。
FAB−MASS(M+H)+=535
【0078】
尚、上記化合物11〜13の化合物も実施例1乃至5記載の方法に準じて合成することができる。
【0079】
[実施例6]
(化合物17の製造)
実施例1の第1工程において、4−ジメチルアミノブロモベンゼンを、4−ブロモアニソールに変えた以外は実施例1と同様にして合成し、上記化合物17が得られた。
【0080】
[実施例7]
(化合物18の製造)
実施例1の第4工程において、シアノ酢酸エチルを(メチルスルホニル)アセトニトリルに変えた以外は実施例1と同様にして合成し、上記化合物18が得られた。
【0081】
[実施例8]
(化合物3とメタアクリル酸メチルとの共重合体の製造)
上記化合物3(100mg)、メタアクリル酸メチル(100mg)をジメチルアミド(1mL)に溶解し、AIBN(2mg)を加え、100℃において4時間攪拌した。次に再びAIBN(2mg)を加え、100℃において4時間攪拌した。アセトンに反応液を注ぎ、得られた重合体をろ別し、化合物3とメタアクリル酸メチルとの共重合体を120mg得た。得られた共重合体のガラス転移温度は110℃であった。
【0082】
[実施例9]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(1))
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料(電気光学材料)を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して非線形光学定数を算出した。
【0083】
〔塗布液組成〕
・上記化合物1 20mg
・PMMA 80mg
・シクロヘキサノン 500mL
【0084】
[実施例10]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(2))
実施例2で得られた化合物2を用いて実施例9と同様の方法に従って非線形光学材料(電気光学材料)を作製した。
【0085】
[実施例11]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(3))
実施例5で得られた化合物10を用いて実施例9と同様の方法に従って非線形光学材料(電気光学材料)を作製した。
【0086】
[実施例12]
(非線形光学材料、電気光学材料の製造(4))
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料(電気光学材料)を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して非線形光学定数を算出した。
【0087】
〔塗布液組成〕
・実施例8で得られた化合物3とメタアクリル酸メチルの共重合体 20mg
・クロロホルム 100mL
【0088】
[比較例1]
(DR1色素による非線形光学材料の製造)
ガラス基盤上に下記の組成の塗布液をスピンコート(750rpm、20s)により塗布した(DR1色素:Direct Red 1)。次いで、減圧、50℃において乾燥した後、110℃まで加熱した。その後、コロナポーリング法を用いて電圧印加(タングステン針、5kV,1.5cm)を5分間行い、電圧を印加しながら60℃まで冷却して非線形光学材料を製造した。上記で得られた試料に対し、YHGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射して第二高調波の発生を確認し、その強度をメーカフリンジ法により測定して、非線形光学定数を算出した。
【0089】
〔塗布液組成〕
・DR1色素 20mg
・PMMA 80mg
・シクロヘキサノン 500mL
【0090】
図1に実施例9〜12で得られた非線形光学材料と比較例1で得られた非線形光学材料との配向度に対する非線形光学定数の値を示す。一般に非線形光学定数は、低濃度領域において配向度が増加するとともに線形的に上昇する。その結果より、実施例で得られた非線形光学材料の方が同じ配向度では高い非線形光学定数を示すことが予測される。
また電気光学効果の大きさは非線形光学効果の大きさと相関関係があることが知られており、一般には電気光学材料の探索に非線形光学定数が指標として用いられている。したがって、本発明のチオフェン化合物が電気光学素子への応用に用いることのできる電気光学材料としても有用なことが明らかとなった。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、高い非線形光学効果を示すことが可能な新規なチオフェン化合物、並びに、これを用いた非線形光学材料及び電気光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例9〜12で得られた非線形光学材料と本発明の比較例1で得られた非線形光学材料との配向度に対する非線形光学定数のプロットである。
Claims (7)
- 下記一般式(I)で表されることを特徴とするチオフェン化合物。
- 前記一般式(I)におけるE2が、−COO−R4、−SO2−R4(R4は炭素数1〜20のアルキル基を示し、該アルキル基は水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、あるいは架橋反応可能な置換基を有していてもよい。)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載のチオフェン化合物。
- 前記一般式(I)におけるR1、R2及びR4の少なくとも一つが、架橋性基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のチオフェン化合物。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料。
- 請求項1乃至3にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のチオフェン化合物を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料。
- 請求項1乃至3にいずれかに記載のチオフェン化合物を重合した重合体を、少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料。
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