JP3790808B2 - 二次非線形光学材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な有機二次非線形光学材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これからの高度情報化社会においては、大容量かつ精密な情報を高速、高密度、高効率で伝達処理することが必要になってくる。そして、光は、並列進行性、空間処理性、多量操作性、高密度性などの特性を有することから電子技術と相補ってこの分野で重要な役割を果たすことが予測されており、この光を利用するために必要な材料の1つとして、最近有機非線形光学材料が注目されている。
【0003】
そして、これまで知られている無機材料による非線形効果は格子振動吸収により発現するものであるのに対し、有機材料による非線形効果は、非局在のπ電子系が置換基によって歪むために生じる双極子モーメントによるものであって、基本的に格子振動を伴わないため、より高速での応答が可能になる。
【0004】
ところで、二次非線形光学材料には、光学的透明性と大きな非線形光学特性とが求められている。このような二次非線形光学材料として、近年チェインドクロモフォア(Chained Chromophore)型有機非線形光学材料が注目されている。このチェインドクロモフォア型有機非線形光学材料とは、非線形活性ユニットを線形に結合させることで、二次非線形光学材料の性能指数の1つであるμβをユニット数の二乗に比例した形で増加させるという概念に基づく有機材料のことである。このようなチェインドクロモフォア型有機非線形光学材料の1つとして、芳香族エステルや芳香族エステルオリゴマーが知られている。しかしながら、従来知られている芳香族エステルや芳香族エステルオリゴマーは、透明性は良好であるものの、非線形光学特性については、必ずしも十分に満足できるものではなかった。
【0005】
二次非線形光学特性は、物質が中心対称心を欠いた場合にのみ発現する現象であって、高分子系材料の場合には、このような構造は電場印加により、非線形活性種を一軸配向させることによって得られ、この配向の度合いが優れているほど性能は大きくなる。そして、この配向度合いに大きく関係するのが分子のもつ双極子モーメントの大きさであるが、従来の芳香族エステルや芳香族エステルオリゴマーは、この双極子モーメントが一般的な非線形活性種に比べてそれほど大きくないため、良好な配向度が得られず、その結果、二次非線形光学特性が不十分になるのを免れない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、良好な光学的透明性を有するとともに、良好な二次非線形光学特性をもつ新規な二次非線形光学材料を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、優れた二次非線形光学特性をもつ芳香族エステル類を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、分子末端に電子供与基や電子吸引基から成る特定の置換基を導入することにより、良好な光学的透明性を維持したまま、双極子モーメントを増大させることができ、優れた二次非線形光学特性をもつ芳香族エステル類が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【化1】
(式中のR 1 は低級アルキル基、R 2 はペルフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、2,2‐ジシアノエテニル基又はメチルスルホニル基、nは1〜3の整数である)で表わされる芳香族エステル類から成る二次非線形光学材料を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる芳香族エステル類は、前記一般式(I)で表わされる構造を有するものである。
この一般式(I)において、R1で示される低級アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基などが挙げられるが、これらの中で、二次非線形光学特性の面から、特にメチル基が好ましい。一方、R2はペルフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、2,2‐ジシアノエテニル基又はメチルスルホニル基などの電子供与基又は電子吸引基であるが、そのうちのペルフルオロアルキル基としては、炭素数1〜4の低級ペルフルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基などが好ましく、これらの中で二次非線形光学特性が優れている点で、特にトリフルオロメチル基が好ましい。また、nは大きいほど二次非線形光学特性が向上するが、nが5以上のものは製造が非常に煩雑となり、実用的でない。
【0010】
この一般式(I)で表わされる芳香族エステル類としては、光学的透明性が良好で、かつ二次非線形光学特性に優れる点で、特に以下の化学構造をもつ4‐アニス酸4‐シアノフェニルエステル(E2−CNと略記)、4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐シアノフェニルエステル(E3−CNと略記)、4‐アニス酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル(E2−CF3と略記)、4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル(E3−CF3と略記)、4‐アニス酸4‐ニトロフェニルエステル(E2−NO2と略記)、4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐ニトロフェニルエステル(E3−NO2と略記)及び4‐アニス酸4‐(2,2‐ジシアノビニル)フェニルエステル(E2−DCVと略記)が好ましい。
【0011】
【化2】
【0012】
前記一般式(I)で表わされる本発明の芳香族エステル類は、例えば反応式
【化3】
(式中のXはハロゲン原子であり、R1、R2及びnは前記と同じ意味をもつ)に従い、一般式(II)
【化4】
(式中のR1、X及びnは前記と同じ意味をもつ)で表わされる芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、一般式(III)
【化5】
(式中のR2は前記と同じ意味をもつ)で表わされるp‐置換フェノールとを、あるいは反応式
【化6】
(式中のR1、R2、X及びnは前記と同じ意味をもつ)に従い、一般式(IV)
【化7】
(式中のR1及びXは前記と同じ意味をもつ)で表わされるp‐アルコキシ安息香酸ハロゲン化物と、一般式(V)
【化8】
(式中のR2及びnは前記と同じ意味をもつ)で表わされるp‐ヒドロキシ安息香酸誘導体とを、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0013】
この反応の原料化合物として用いられる一般式(II)又は(IV)で表わされる化合物中のXとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができる。また、この反応において用いられるハロゲン化水素捕捉剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第三アミンが好ましいが、その他の有機塩基、無機塩基を用いることもできる。これらの反応は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジエチルスルホキシド、シクロヘキサンなどの不活性溶媒中で行うのが有利である。
【0014】
これらの反応における原料化合物(II)と(III)又は(IV)と(V)とは、実質上化学量論的量で用いられるが、所望によっては一方の原料化合物を過剰に用いることもできる。また、これらの反応は、室温下、又は氷冷下で一方の原料化合物を含む溶媒中に他方の原料化合物を少しずつ添加し、かきまぜながら行われるが、所望ならば加温して反応を促進することもできる。反応時間としては、通常1〜30時間の範囲が選ばれる。このようにして得た反応混合物を常法に従って水洗し、有機層を分層し、これから溶媒を除去すれば、目的とする本発明化合物が白色ないし淡かっ色の結晶として得られる。
【0015】
なお、前記一般式(V)で表わされるp‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、例えば前記一般式(III)のp‐置換フェノールと一般式
【化9】
(式中のR3は低級アルキル基であり、Xは前記と同じ意味をもつが、n′は2〜3である)で表わされる酸無水物とをアセトンのような溶媒中、トリエチルアミンのようなハロゲン化水素捕捉剤の存在下で反応させて、一般式
【化10】
(式中のR4は低級アルキル基、R2及びnは前記と同じ意味をもつ)で表わされる化合物を製造し、次いでこれをアセトンのような溶媒中で塩基触媒の存在下、加水分解することによって製造することができる。
【0016】
このようにして得られる前記一般式(I)の本発明化合物は光学的透明性が良好であるとともに、優れた二次非線形光学特性を有する化合物である。
この芳香族エステル類を分散させた厚さ約5000Åのポリメチルメタクリレート薄膜(芳香族エステル類の含有量10重量%)の二次非線形光学特性は、最適ポーリング温度が60〜90℃の範囲に存在し、またその温度でポーリング処理した後の二次非線形光学係数d33値が2×10-9〜4×10-9esuである。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0018】
参考例1[4‐アニス酸4‐シアノフェニルエステル(E2−CN)の製造]
氷浴中で4‐シアノフェノール3.68g(30.9ミリモル)、トリエチルアミン4.3ml(31ミリモル)及びアセトン20mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド5.60g(32.8ミリモル)を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して白色固体を得た。さらに、この固体にメタノール/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、白色針状結晶7.17gを得た。このものは、融点が109.9〜110.3℃であり、1H−NMR測定による構造解析の結果、目的の化合物であることが確認された。収率91.6%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.91(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.00(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.36(d,J=9.2Hz,2H,aromatic protons)、7.74(d,J=8.4Hz,2H,aromatic protons)、8.14(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0019】
参考例2[4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐シアノフェニルエステル(E3−CN)の製造]
(1)4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐シアノフェニルエステルの製造氷浴中で4‐シアノフェノール2.20g(18.5ミリモル)、トリエチルアミン2.6ml(19ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸クロリド4.23g(18.5ミリモル)とアセトン15mlとの混合物を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加えて有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノールを加え再結晶を行い、精製することにより、薄茶色固体4.44gを得た。この固体について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率77.1%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.42(t,J=7.0Hz,3H,CH 3 CH2−OCOO−)、4.36(q,J=7.2Hz,2H,CH3 CH 2 −OCOO−)、7.37(m,4H,aromatic protons)、7.75(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.23(d,J=8.4Hz,2H,aromatic protons)
【0020】
(2)4‐ヒドロキシ安息香酸4‐シアノフェニルエステルの製造
上記(1)で得られた4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐シアノフェニルエステル3.00g(9.63ミリモル)、ピリジン17ml、アセトン35ml及び濃アンモニア水溶液2.0mlを混合して溶解させ、かきまぜながら一晩反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え有機層を1N−HCl水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄した。その後、溶媒を留去して固体を得たのち、これにメタノール/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、わずかに茶色の白色結晶0.92gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率39.9%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=5.43(s,br,1H,HO−Ph−)、6.94(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.35(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.74(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.11(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0021】
(3)4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐シアノフェニルエステル(E3−CN)の製造氷浴中で上記(2)で得られた4‐ヒドロキシ安息香酸4‐シアノフェニルエステル0.90g(3.8ミリモル)、トリエチルアミン0.6ml(4ミリモル)及びアセトン20mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド0.64g(3.8ミリモル)を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にアセトンを加えて再結晶を行い、精製することにより、白色結晶1.26gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率89.7%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.92(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、7.39(m,4H,aromatic protons)、7.76(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、8.17(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、8.27(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)
【0022】
参考例3[4‐アニス酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル(E2−CF3)の製造]
氷浴中で4‐トリフルオロメチルフェノール5.00g(30.9ミリモル)、トリエチルアミン4.3ml(31ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド5.27g(30.9ミリモル)とアセトン10mlとの混合物を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノール/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、白色結晶2.8gを得た。このものは、融点が101.3〜101.7℃であり、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率70.0%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.91(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.00(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.34(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.70(d,J=8.4Hz,2H,aromatic protons)、8.16(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0023】
参考例4[4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル(E3−CF3)の製造]
(1)4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステルの製造
氷浴中で4‐トリフルオロメチルフェノール3.00g(18.5ミリモル)、トリエチルアミン2.6ml(19ミリモル)及びアセトン20mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸クロリド4.23g(18.5ミリモル)とアセトン20mlとの混合物を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加えて有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノール/水混合溶媒を加え再結晶を行い、精製することにより、薄茶色固体5.78gを得た。この固体について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率88.3%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.42(t,J=7.0Hz,3H,CH 3 CH2−OCOO−)、4.36(q,J=7.2Hz,2H,CH3 CH 2 −OCOO−)、7.37(m,4H,aromatic protons)、7.71(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.25(d,J=8.4Hz,2H,aromatic protons)
【0024】
(2)4‐ヒドロキシ安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステルの製造
上記(1)で得られた4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル5.00g(14.1ミリモル)、ピリジン25ml、アセトン50ml及び濃アンモニア水溶液2.8mlを混合して溶解させ、かきまぜながら一晩反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え有機層を1N−HCl水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄した。その後、溶媒を留去して固体を得たのち、これにメタノール/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、わずかに茶色の白色結晶2.95gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率74.1%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=6.91(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.33(d,J=8.4Hz,2H,aromatic protons)、7.69(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.11(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0025】
(3)4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステルの製造
氷浴中で、上記(2)で得られた4‐ヒドロキシ安息香酸4‐トリフルオロメチルフェニルエステル1.00g(3.54ミリモル)、トリエチルアミン0.5ml(4ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド0.60g(3.5ミリモル)を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にアセトン/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、白色結晶1.29gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率87.5%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.92(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、7.38(m,4H,aromatic protons)、7.72(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、8.18(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)、8.29(d,J=8.0Hz,2H,aromatic protons)
【0026】
参考例5[4‐アニス酸4‐ニトロフェニルエステル(E2−NO2)の製造]
氷浴中で4‐ニトロフェノール4.30g(30.9ミリモル)、トリエチルアミン4.3ml(31ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド5.27g(30.9ミリモル)とアセトン10mlとの混合物を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノール/アセトン混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、淡黄色結晶7.67gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率90.9%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.91(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.41(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.15(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.32(d,J=9.2Hz,2H,aromatic protons)
【0027】
参考例6[4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐ニトロフェニルエステル(E3−NO2)の製造]
(1)4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐ニトロフェニルエステルの製造
氷浴中で4‐ニトロフェノール2.57g(18.5ミリモル)、トリエチルアミン2.6ml(19ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸クロリド4.23g(18.5ミリモル)とアセトン15mlとの混合物を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノールを加えて再結晶を行い、精製することにより、薄黄色固体5.02gを得た。この固体について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率82.0%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.42(t,J=7.2Hz,3H,CH 3 CH2−OCOO−)、4.37(q,J=7.2Hz,2H,CH3 CH 2 −OCOO−)、7.38(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.42(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.24(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.33(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0028】
(2)4‐ヒドロキシ安息香酸4‐ニトロフェニルエステルの製造
上記(1)で得られた4‐エトキシカルボニルオキシ安息香酸4‐ニトロフェニルエステル3.19g(9.63ミリモル)、ピリジン17ml、アセトン35ml及び濃アンモニア水溶液2.0mlを混合して溶解させ、かきまぜながら一晩反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え有機層を1N−HCl水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄した。その後、溶媒を留去して固体を得たのち、これにメタノール/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、薄茶色の結晶0.57gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率23.0%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=6.94(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.51(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.24(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.33(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0029】
(3)4‐(4′‐メトキシフェニルカルボニルオキシ)安息香酸4‐ニトロフェニルエステル(E3−NO2)の製造
氷浴中で、上記(2)で得られた4‐ヒドロキシ安息香酸4‐ニトロフェニルエステル0.98g(3.8ミリモル)、トリエチルアミン0.6ml(4ミリモル)及びアセトン20mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド0.64g(3.8ミリモル)を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にアセトンを加えて再結晶を行い、精製することにより、白色結晶1.10gを得た。この固体について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率74.0%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.92(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.41(m,4H,aromatic protons)、8.17(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.28(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.34(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0030】
参考例7[4‐アニス酸4‐(2,2‐ジシアノビニル)フェニルエステル(E2−DCV)の製造]
(1)4‐アニス酸4‐ホルミルフェニルエステルの製造
氷浴中で4‐ヒドロキシベンズアルデヒド2.26g(18.5ミリモル)、トリエチルアミン2.6ml(19ミリモル)及びアセトン15mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、p‐アニソイルクロリド3.15g(18.5ミリモル)を15分間要して滴下した。滴下終了後、氷浴をそのまま放置して、一晩かきまぜて反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を水で洗浄したのち、溶媒を留去して固体を得た。さらに、この固体にメタノールを加えて再結晶を行い、精製することにより、白色固体4.10gを得た。この固体について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率86.6%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.91(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.41(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.97(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.16(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、10.03(s,1H,−CHO)
【0031】
(2)4‐アニス酸4‐(2,2‐ジシアノビニル)フェニルエステル(E2−DCV)の製造
上記(1)で得られた4‐アニス酸4‐ホルミルフェニルエステル2.00g(7.80ミリモル)、マロノニトリル0.52g(7.80ミリモル)及びピリジン10mlの混合物をかきまぜながら溶解させた。次いで、ピペリジン0.1mlを加えて還流温度まで加熱して5時間反応させた。反応終了後、反応混合物にメチレンクロリドを加え、有機層を1N−HCl水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄した。その後、溶媒を留去して固体を得たのち、これにアセトン/水混合溶媒を加えて再結晶を行い、精製することにより、黄色結晶0.74gを得た。この結晶について、1H−NMR測定による構造解析を行った結果、目的の化合物であることが確認された。収率31.2%。構造解析の結果を以下に記す。
1H−NMR(CDCl3):δ=3.91(s,3H,CH 3 −O−Ph−)、7.01(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.42(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、7.78(s,1H,−CH=C(CN)2)、8.01(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)、8.15(d,J=8.8Hz,2H,aromatic protons)
【0032】
実施例1
参考例1〜5で得られた化合物について、それぞれアセトニトリル溶液を調製し、その紫外吸収スペクトルの測定を行い、吸収極大波長[λmax]及びカットオフ波長[λCO]を求めた。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2
参考例1〜5で得られた各化合物0.02g及びポリメチルメタクリレート0.18gをクロロホルム5mlに溶解して高分子溶液を調製したのち、この溶液を用い、厚さ1.0mmのガラス基板上に、スピンコート法(500rpm、30秒間)により、厚さ約5000Åの薄膜をそれぞれ作製した。この薄膜の紫外吸収スペクトルを測定し、実施例1の溶液の紫外吸収スペクトルと比較したところ、各化合物について良好な一致が認められた。これより、各化合物は薄膜中で、ほぼ分子状に分散していることが確認された。
図1に、参考例1で得られた化合物E2−CNの溶液(破線)及び薄膜(実線)の紫外吸収スペクトル図を示す。次に、上記薄膜に、種々のポーリング温度でコロナポーリング(5kV/cm)処理を施し、ポーリングの最適温度を求めた。その結果を表2に示す。この最適温度でポーリング処理を施したのち、メーカフリンジ法によりSHGを測定し、常法に従って二次非線形光学係数d33値を算出した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例3
参考例6及び7で得られた各化合物について、それぞれアセトニトリル溶液を調製し、その紫外吸収スペクトルの測定を行い、吸収極大波長[λmax]及びカットオフ波長[λCO]を求めた。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例4
参考例6及び7で得られた各化合物0.02g及びポリメチルメタクリレート0.18gをクロロホルム5mlに溶解して高分子溶液を調製したのち、この溶液を用い、厚さ1.0mmのガラス基板上に、スピンコート法(500rpm、30秒間)により、厚さ約5000Åの薄膜をそれぞれ作製した。この薄膜の紫外吸収スペクトルを測定し、実施例3の溶液の紫外吸収スペクトルと比較したところ、各化合物について良好な一致が認められた。これより、各化合物は薄膜中で、ほぼ分子状に分散していることが確認された。次に、上記薄膜に、種々のポーリング温度でコロナポーリング(5kV/cm)処理を施し、ポーリングの最適温度を求めた。その結果を表4に示す。この最適温度でポーリング処理を施したのち、メーカフリンジ法によりSHGを測定し、常法に従って二次非線形光学係数d33値を算出した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
本発明の有機二次非線形光学材料は、良好な光学的透明性を有するとともに、二次非線形光学特性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた芳香族エステルの溶液及び薄膜の紫外吸収スペクトル図。
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