JP2004277344A - 芳香族化合物、非線形光学材料、電気光学材料、及び光学要素 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオプトエレクトロニクス及びフォトニクス分野で用いられる非線形光学材料及び電気光学材料、或いは非線形光学材料及び電気光学材料として有用な新規芳香族化合物、並びに、位相差板及び電気光学素子等の非線形光学効果を利用する各種光学要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
非線形光学効果を示す材料(非線形光学材料)がオプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野において注目されている。非線形光学効果とは、物質に強電場(光電場)を加えたとき、生じた電気分極と加えた電場の間で非線形な応答を示す現象であり、非線形光学材料とは、このような非線形性を顕著に示す材料を指す。二次の非線形応答を利用した非線形光学材料として、第二高調波を発生する材料や電界の一次に比例して屈折率変化を引き起こすポッケルス効果を示す材料などが知られており、特に後者は電気光学(EO)光変調素子やフォトリフラクティブ素子への応用が検討されている。
【0003】
非線形光学材料は、従来は無機非線形光学材料を中心にして材料探索や素子製作が行われてきたが、近年は、1)大きな非線形を示す、2)応答速度の速さ、3)光損傷しきい値が高い、4)多種多様な分子設計が可能、5)製造適性に優れることなどから有機材料が注目を集めている。しかしながら、二次の非線形光学効果の発現には、電場によって誘起される分極が反転対称心を欠く必要がある。したがって、非線形光学効果を示す分子、あるいは非線形光学応答基を材料中で反転対称心を欠く構造に配置する必要がある。しかしながら、これらの材料は時間とともに熱的に配向緩和を起こす場合がある。このため、電気光学的特性が劣化していく安定性に欠けるものであり、実用化や広い範囲への応用が困難であり、その解決が望まれていた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
また、二次の有機非線形光学材料は、一般的にπ電子が容易に移動可能な芳香環や直鎖状の共役鎖等のπ電子ブリッジを、電子供与性のドナーと電子求引性のアクセプターとで挟み込んだ構造をしている。そのため、一般的な非線形光学化合物は棒状の中心骨格の両末端にドナーとアクセプターとを1個ずつ有する構造をしている場合が多い。従来技術としては、円盤状化合物を非線形光学材料として用いた例が既に知られている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、これらの円盤状化合物は電子求引性基と電子供与性基とが芳香環上に互いに対を成すように同数個導入されたような、完全に対称な構造を有しており、分子内での分極構造をとりにくい。従ってこの従来の完全対称型の円盤状化合物では非線形光学材料としての有用性が不十分であり、その改善が望まれていた。
【0005】
また、電子求引性基がシアノ基で電子供与性基がメトキシ基である非対称型の円盤状化合物が知られている(例えば、非特許文献3及び4参照。)。しかしながら、この従来技術では電子求引性基及び電子供与性基の能力が低いため、化合物レベルでの非線形光学特性が低いのが問題である。したがって、電子求引性基及び電子供与性基の能力をより高めた化合物の開発が望まれている。
さらに、上記化合物は重合性基を有しておらず、分子の配向を3次元架橋によって固定化することができない。そのため配向緩和による非線形光学特性の低下が問題となっていた。
【0006】
【非特許文献1】
Mol.Cryst.Liq.Cryst.誌、第189巻、3頁(1990年)
【非特許文献2】
Org. Lett.誌、第4巻、1703頁(2002年)
【非特許文献3】
J. Org. Chem.誌、第66巻、5664頁(2001年)
【非特許文献4】
Tetrahedorn Letters.誌、第40巻、8181頁(1999年)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、1)新規な形状を有し、配向緩和の無い有機材料から成り、且つ、非線形光学特性を向上させた非線形光学材料及び電気光学材料として有用な芳香族化合物、より詳細には、配向緩和の抑制及び第二高調波発生の経時による減衰の抑制効果を有する一般式(I)で示される芳香族化合物、並びに、従来の化合物に比して優れた非線形光学特性を有する一般式(II)で示される芳香族化合物、2)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた非線形光学材料及び電気光学材料、3)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた光学要素を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、下記の材料により本発明の目的が達成できることを見いだした。すなわち、
(1)下記一般式(I)で示されることを特徴とする芳香族化合物である。
【化3】
(一般式(1)中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。A1は電子求引性基を示し、D1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示し、P1は架橋可能な置換基を示す。L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0009】
(2)前記一般式(I)におけるA1は、下記一般式(a)で表される置換基を示す電子求引性基であることを特徴とする上記(1)の芳香族化合物である。
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0010】
(3)下記一般式(II)で示されることを特徴とする芳香族化合物である。
【化4】
(一般式(II)式中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。D2は電子供与基を示し、A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は下記一般式(a)で表される置換基を示す。)
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0011】
(4)前記一般式(a)におけるR4が下記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることを特徴とする上記(2)又は(3)の芳香族化合物である。
−L2−P2 …一般式(b)
(一般式(b)中、P2は架橋可能な置換基を示し、L2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0012】
(5)前記一般式(I)又は前記一般式(II)において、X1及びX2が共に−CH=CH−、又は−C≡C−であることを特徴とする上記(1)〜(4)の芳香族化合物である。
【0013】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0014】
(7)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0015】
(8)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする光学要素である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化合物についてより詳細に説明する。第1の本発明の化合物は下記一般式(1)で表される芳香族化合物であることを特徴とする。尚、以下に一般式(I)で示される芳香族化合物及び後述する一般式(II)で示される芳香族化合物とを総じて「本発明の化合物」と称する場合がある。また、本発明の化合物を本発明の円盤状化合物と称する場合もある。
【0017】
【化5】
(一般式(1)中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。A1は電子求引性基を示し、D1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示し、P1は架橋可能な置換基を示す。L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0018】
R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。R1,R2及びR3として好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。さらに、R1乃至R3は同一でも異なっていてもよいが、R1乃至R3の全てが同一の基であることが好ましい。
また、m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。
【0019】
X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。X1、X2は−CH=CH−又は−C≡C−が好ましく、X1、X2が−CH=CH−である場合、その立体はシス体、トランス体いずれでもよいが、トランス体である方が好ましい。
【0020】
前記一般式(I)中のAr1、Ar2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を表し、好ましい芳香環の例としては、1,4−フェニレン、チオフェン−2,5−ジイル、2,6−ナフタレン、チアゾール−2,5−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ベンゾフラン−2,5−ジイル、ベンゾフラン−2,6−ジイル、ベンゾチオフェン−2,5−ジイル、ベンゾチオフェン−2,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピラジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル等が挙げられ、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、チオフェン−2,5−ジイルが特に好ましい。また、この芳香環は任意の位置に1個以上の置換基を有していてもよい。この場合置換基の例として、炭素数1乃至8の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基、又はハロゲン原子が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子等が挙げられ、特に好ましくはメチル基である。
【0021】
前記一般式(I)中、P1は架橋可能な置換基を示す。該架橋可能な置換基としては、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、グリシジル基、が挙げられ、その中でも、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。
【0022】
前記一般式(I)中のD1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示す。該二価の電子供与性基の例としては−NH−、−NZ1−(Z1は炭素数が1乃至8の置換基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。)、又は下記に示される基等が挙げられ、その中でも、酸素原子(−O−)、−NZ1−(特に下記に示される基)が好ましい。
【0023】
【化6】
【0024】
L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基を示す。L1としては、炭素数が2から14のアルキレン基が好ましく、炭素数が4から12のアルキレン基がさらに好ましい。該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の、−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)中のA1は電子求引性基を示す。該電子求引性基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、複数個の電子求引性基を有する置換基、下記一般式(a)で示される電子求引性基等が挙げられ、ニトロ基、下記一般式(a)で示される電子求引性基であることが好ましい。
【0026】
―A2−R4 ・・・一般式(a)
(式中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0027】
上記A2の好ましい例としては、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、スルホニル基(−SO2−)、スルホニルオキシ基(−SO3−)、あるいは下記に示される基等が挙げられる。
【0028】
【化7】
【0029】
一般式(a)中、−R4は炭素数が2から14がアルキル基であることが好ましく、炭素数が4から12がアルキル基であることがさらに好ましい。該アルキレキ基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられ、下記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることが好ましい形態である。
【0030】
−L2−P2 …一般式(b)
(一般式(b)中、P2は架橋可能な置換基を示し、L2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0031】
一般式(b)中、L2は炭素数が2から14であるアルキレン基が好ましく、炭素数が4から12のアルキレン基がさらに好ましい。該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられる。
【0032】
−R4が−L2−P2で示される場合、P1、P2の好ましい例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、グリシジル基があげられるが、その中でも、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。
【0033】
次に、第2の本発明の化合物である、下記一般式(II)で表される芳香族化合物についてより詳細に説明する。
【0034】
【化8】
(一般式(II)式中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。D2は電子供与基を示し、A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は下記一般式(a)で表される置換基を示す。)
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A4は連結可能な電子求引性基を示し、R2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0035】
一般式(II)におけるR1〜R3、m、n、X1、X2、Ar1、Ar2については、前記一般式(I)と同義である。
【0036】
一般式(II)中、D2は電子供与性の置換基を示し、炭素数1乃至12のアルコキシ基、炭素数1乃至12のジアルキルアミノ基、炭素数1乃至12のアルキルアミノ基が好ましい。これらのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、及びアルキルアミノ基はいずれも直鎖でも、分岐でもよく、置換基、環構造を有していてもよい。また、環構造を有している場合の好ましい例としては、下記に示される基が挙げられる。
【0037】
【化9】
【0038】
前記一般式(II)中、A3はニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は上記一般式(a)(−A2−R4:A2,R4は前記と同義である。)で表される置換基を示す。また、A3が複数個の電子求引性基を有する置換基を示す場合、電子求引性基が2個以上含まれていることが好ましく、3個以上含まれていることがさらに好ましい。ここで、電子求引性基の例としてはシアノ基、ニトロ基、エステル基が好ましい例として挙げられ、具体的には以下に示される置換基等が好ましい例として挙げられる。
【0039】
【化10】
【0040】
また、一般式(I)における一般式(a)と同様に、一般式(II)における一般式(a)においても、R4としては上記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることが好ましい。
【0041】
さらに、上記一般式(I)及び(II)におけるX1及びX2は、共に−CH=CH−、又は−C≡C−であることが好ましい。
【0042】
一般式(I)で表される芳香族化合物及び一般式(II)で表される芳香族化合物の好ましい態様について説明する。
【0043】
前記一般式(I)においては、下記の構成:
(1)R1乃至R3は、水素原子、メチル基、CF3、又はハロゲン原子(好ましくは水素原子、メチル基)、
(2)X1、X2は、−COO−、−CH=CH−、−C≡C−、
(3)A1は、電子求引性基、
(4)D1は、酸素原子(−O−)、二価の電子求引性基、
を同時に組み合わせた化合物がより好ましい。
【0044】
また、前記一般式(II)においては、下記の構成:
(1)R1乃至R3は、水素原子、メチル基、CF3、又はハロゲン原子(好ましくは水素原子、メチル基)、
(2)X1、X2は、−COO−、−CH=CH−、−C≡C−、
(3)A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、
(4)D2は、電子供与性基、
を同時に組み合わせた化合物が特に好ましい。
【0045】
一般式(I)又は(II)で示される芳香族化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化11】
【0047】
次に、本発明の化合物の合成について説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一般式(II)で表される化合物は例えば以下に示すスキーム1の方法によって合成することができる。(尚、下記式中Rは、R1乃至R3を示す。)
【0048】
−スキーム1−
【化12】
【0049】
第一工程においては、化合物AをP(OR’)3(R’はアルキル基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基である。)と共に有機溶媒中で撹拌することで化合物Bが得られる。P(OR’)3は当量比で化合物Aに対し1乃至6当量が好ましく、更に好ましくは1乃至3当量である。用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられ、これらの有機溶媒は他の工程でも同様に用いることができる。また、反応温度としては、20℃乃至100℃が好ましく、更に好ましくは20℃乃至60℃である。
【0050】
次いで、第二工程において、化合物Bを塩基I存在下で、A3−Ar2−CHOで表される化合物と共に撹拌することで化合物Cが得られる。A3−Ar2−CHOは当量比で化合物Bに対し、1乃至2当量が好ましく、更に好ましくは1乃至1.3当量である。塩基Iとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはtert−ブトキシカリウム、メトキシカリウム、tert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、等が挙げられ、更に好ましくはtert−ブトキシカリウム、メトキシカリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
【0051】
第三工程においては、化合物Cを塩基I存在下で、D2−Ar1−CHOで表される化合物と共に撹拌することで目的とする本発明の一般式(II)で表される化合物(m=2、n=1)が得られる。D2−Ar1−CHOは当量比で化合物Cに対し、2乃至5当量が好ましく、更に好ましくは2.2乃至3当量である。
【0052】
上述の合成方法において「−X2−Ar2−A3」と「−X1−Ar1−D2」との導入比を逆にする場合は、第二工程においてA3−Ar2−CHOの代わりにD2−Ar1−CHOを用い、且つ第三工程においてD2−Ar1−CHOの代わりに3−Ar2−CHOを用いればよい。
【0053】
次に、一般式(I)で示される芳香族化合物の合成方法について説明する。一般式(I)で示される芳香族化合物は例えば以下に示すスキーム2の方法によって製造することができる。
【0054】
−スキーム2−
(尚、下記式中、Gは保護基、Kは脱離基を示す。)
【化13】
【0055】
第一工程においては、上述のスキーム1の方法と同様の手順で化合物Bを合成することができる。また、第二工程においては、この化合物Bを塩基I存在下で、A1−Ar2−CHOで表される化合物と反応させることで化合物Dが得ることができる。この際、A1−Ar2−CHOでは当量比で化合物Bに対し1乃至2当量が好ましく、更に好ましくは1乃至1.3当量である。
【0056】
次に、第三工程においては、化合物Dを塩基I存在下で、G−L1−D1−Ar1−CHOで表される化合物と反応させることで化合物Eを得ることができる。G−L1−D1−Ar1−CHOは当量比で化合物Eに対し2乃至5当量が好ましく、更に好ましくは2.2乃至3当量である。
【0057】
次に、第四工程において、Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press(London and New York,1973);Green,T.W.,Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley New York,1981;及びPeptides,Vol.I,Schrooder and Lubke,Academic Press(London and New York,1965)に記載されている方法に従って化合物Eを脱保護し、化合物Fを得ることができる。
【0058】
最後に第五工程において、化合物Fに対し塩基II存在下、P1−Kを反応させることで目的とする一般式(I)で示される芳香族化合物を得ることができる。P1−Kは化合物Gに対し3乃至9当量が好ましく、更に好ましくは3.6乃至6当量である。また、塩基IIとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
上述の合成方法において、「−X2−Ar2−A2」と「−X1−Ar1−D1−L1−P1」との導入比を逆にする場合は、第二工程においてA1−Ar2−CHOの代わりにG−L1−D1−Ar1−CHOを用い、且つ第三工程においてG−L1−D1−Ar1−CHOの代わりにA1−Ar2−CHOを用いればよい。また、塩基I、及びIIはスキーム1の説明と同様である。他の化合物についても本合成法に準じて公知の方法を組み合わせることにより合成できる。
【0060】
(光学要素)
本発明の光学要素は、本発明の化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明の化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明における光学要素とは、光学分野、エレクトロニクス分野で利用される機能性フィルム(例えば、光学フィルム、強誘電性フィルム、反強誘電性フィルム、圧電フィルム)や、機能性素子(例えば、非線形光学素子、電気光学素子、昇電素子、圧電素子、光変調素子)などを包含する。具体的には、非線形光学素子及び電気光学素子の用途としては、たとえば、「光波光学」コロナ社(1998年)、200頁に記載されている。
【0061】
(非線形光学材料及び電気光学材料)
本発明の非線形光学材料、及び電気光学材料は、本発明の化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明の化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明の化合物が架橋性基を有する場合、本発明の化合物を重合した重合体を非線形光学材料及び電気光学材料として用いる。本発明の非線形光学材料及び電気光学材料は、本発明の化合物単独からなる態様と、本発明の化合物と媒体とからなる態様の両方を含む。以下に示す製造方法を示す。
【0062】
(化合物単独の場合)
本発明の化合物が架橋性基を有する場合、本発明の光学要素である非線形光学材料、及び電気光学材料は、例えば、1)支持体等に本発明の円盤状化合物を含むモノマー組成物を塗布し、2)配向させ、3)配向下において架橋することによって製造することもできる。
【0063】
(本発明の化合物と媒体とからなる場合)
例えば、1)本発明の化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明の化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解し、2)支持体等に塗布して乾燥させ、3)配向処理を施すことにより製造できる。
【0064】
本発明の円盤状化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明の円盤状化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解する工程において、用いる高分子媒体は特に限定されないが、例えば、PMMA等のアクリル系高分子、フッ素化ポリイミドなどのイミド系高分子、ポリカーボネート等を例としてあげることができる。また、用いる溶剤としては特に限定されないが、例えば酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0065】
塗布工程における支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フィルム、反射板などが例として挙げられる。塗布方法としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用される。
【0066】
また、配向処理においてコロナポーリング、及びコンタクトポーリング法を採用する事ができる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されない。
【0068】
[実施例1]
−化合物1の合成−
まず、1,3,5−Tris−bromomethyl−benzene(25g、70mmol)をDMF100中に溶解させ、室温にてTriethylphosphite(41.5g、250mmol)を滴下した。その後反応液を60℃まで加熱し、24時間撹拌した後、水300mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=5/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、[3,5−Bis−(diethoxy−phosphorylmethyl)−benzyl]−phosphonic acid diethylester(収量30g、収率81%)を得た。
【0069】
次に、[3,5−Bis−(diethoxy−phosphorylmethyl)−benzyl]−phosphonic acid diethylester(10g、18.9mmol)をDMF30mlに溶解させ、この混合液に4−Nitro−benzaldehyde(4.23g、28mmol)及びtert−ブトキシカリウム(3.14g、28mmol)を加え、80℃にて20時間撹拌した。その後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。ヘキサン/酢酸エチル=2/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、{3−(Diethoxy−phosphorylmethyl)−5−[2−(4−nitro−phenyl)−vinyl]−benzyl}−phosphonic acid diethyl ester(収量4.16g、収率42%)を得た。
【0070】
最後に、{3−(Diethoxy−phosphorylmethyl)−5−[2−(4−nitro−phenyl)−vinyl]−benzyl}−phosphonic acid diethyl ester(4.0g、7.6mmol)をDMF50mlに溶解させ、この混合液に4−Dimethylamino−benzaldehyde(4.86g、32.6mmol)を加え、100℃にて48時間撹拌した。その後、水80mlを加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物1(収量1.4g、収率36%)を得た。
FAB−MS(M+H)+=516
【0071】
[実施例2]
−化合物2の合成−
実施例1において、「4−Nitro−benzaldehyde」を「4−Formyl−benzoic acid methyl ester」に変え、「4−Dimethylamino−benzaldehyde」を「4−(Decyl−methyl−amino)−benzaldehyde」に変えた以外は実施例1の方法に従ってまず、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid methyl esterを合成した。
【0072】
次いで、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid methyl ester(5.0g、6.1mmol)にTHF/H2O(3/1)80ml及び水酸化ナトリウム1gを加え、60℃において10時間加熱して撹拌した。その後、水80mlを加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acidを得た。
【0073】
次に、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid、Methanesulfonic acid decyl ester及び炭酸カリウムを加え、DMF中にて100℃に加熱して48時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル=1/3混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物2を得た。
FAB−MS(M+H)+=950
【0074】
[実施例3]
−化合物3の合成−
Methyl−phenyl−amine(13.0g、121mmol)、2−(8−Bromo−octyloxy)−tetrahydro−pyran(39g、133mmol)及び炭酸カリウム(28g、200mmol)をDMF300mlに加え、660℃にて12時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出し、この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、Methyl−phenyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amineを得た(収量22.4g、収率58%)
【0075】
オキシ塩化リン(10g、65mmol)をDMF50mlに滴下して30分間撹拌した。次に、この反応液に、Methyl−phenyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amine(20g、62mmol)を添加して50℃にて10時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出し、この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、4−{Methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−benzaldehydeを得た(収量13.7g、収率64%)。
【0076】
実施例2における「4−(Decyl−methyl−amino)−benzaldehyde」を上記で合成した「4−{Methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−benzaldehyde」に変え、「4−Formyl−benzoic acid methyl ester」を「4−Formyl−benzoicacid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl ester」に変えた以外は実施例2の方法に従って、4−(2−{2,4,6−Trimethyl−3,5−bis−[2−(4−{methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−phenyl)−vinyl]−phenyl}−vinyl)−benzoic acid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl esterを合成した。
【0077】
次にこの、4−(2−{2,4,6−Trimethyl−3,5−bis−[2−(4−{methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−phenyl)−vinyl]−phenyl}−vinyl)−benzoic acid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl ester(1.1g、0.94mmol)にTHF/H20(3/1)20ml及び濃硫酸1mlを加え60℃にて11時間撹拌し、4−{2−[3,5−Bis−(2−{4−[(8−hydroxy−octyl)−methyl−amino]−phenyl}−vinyl)−2,4,6−trimethyl−phenyl]−vinyl}−benzoic acid 8−hydroxy−octylesterを得た(収量386mg、収率45%)。
【0078】
次いで、4−{2−[3,5−Bis−(2−{4−[(8−hydroxy−octyl)−methyl−amino]−phenyl}−vinyl)−2,4,6−trimethyl−phenyl]−vinyl}−benzoic acid 8−hydroxy−octyl ester(300mg、0.33mmol)にTHF5mlを加え、この混合液にAcryloyl chloride(268mg、2.97mmol)を滴下し、60℃にて13時間撹拌した。その後、水10を加え酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、酢酸エチルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物3を得た(収量205mg、収率58%)。
FAB−MS (M+H)+=1076
【0079】
[実施例4]
−化合物4の合成−
実施例1における「4−Nitro−benzaldehyde」を「5−Formyl−thiophene−2−carboxylic acid methyl ester」に変え、「4−Dimethylamino−benzaldehyde」を「5−Dimethylamino−thiophene−2−carbaldehyde」に変えた以外は実施例1の方法に従って、化合物4を合成した。
FAB−MS(M+H)+=589
【0080】
[実施例5]
−化合物5の合成−
Benzene−1,3,5−tricarboxylic acid(10g、47.6mmol)、4−Nitro−phenol(9.9g、71.4mmol)及び濃硫酸5mlをDMF100mlに加え、100℃にて24時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、沈殿した結晶を濾過分取した。得られた結晶を、酢酸エチルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離しBenzene−1,3,5−tricarboxylic acid−1−(4−nitro−phenyl)ester(収量7.4g、収率47%)を得た。
【0081】
次に、Benzene−1,3,5−tricarboxylic acid−1−(4−nitro−phenyl) ester(7.4g、22.3mmol)、4−Dimethylamino−phenol(12.2g、89mmol)及び濃硫酸3mlをDMF100mlに加え、100℃にて36時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて、乾燥させた。最後に、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物5を得た(収量4.4g、収率35%)。
FAB−MS(M+H)+=570
【0082】
[実施例6]
絶縁膜としてポリイミド薄膜を塗布したITO透明電極部を有するガラス基板からなる5μmの空隙を有する水平配向セル(イー.エッチ.アイ製)に化合物3(92.7質量部)、フェノチアジン(1.3質量部)、重合開始剤(イルガキュア651(商品名)、チバガイギー社製)(4質量部)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル(2質量部)からなる構成材料を狭持した。次に、透明電極間に200Vの直流電圧を印加しながら得られた試料を160℃に保ち、UV照射(254nm,10W/cm,3min)を行った。
【0083】
上記で得られた試料に対し、YAGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射し、第二高調波の発生を確認した。得られた試料の第二高調波の強度は3ヶ月後も保持された。
以上の実施例からも明らかなように、本発明により、新規な形状を有する円盤状非線形光学化合物を提供することができた。更に、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた有機非線形光学材料が得られた。
また、上記特性から電気光学素子への応用に用いることができる電気光学材料としても有用なこと、及び光学素子としても有用であることは明らかである。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、1)新規な形状を有し、配向緩和の無い有機材料から成り、且つ、非線形光学特性を向上させた非線形光学材料及び電気光学材料として有用な芳香族化合物、より詳細には、配向緩和の抑制及び第二高調波発生の経時による減衰の抑制効果を有する一般式(I)で示される芳香族化合物、並びに、従来の化合物に比して優れた非線形光学特性を有する一般式(II)で示される芳香族化合物、2)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた非線形光学材料及び電気光学材料、3)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた光学要素を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はオプトエレクトロニクス及びフォトニクス分野で用いられる非線形光学材料及び電気光学材料、或いは非線形光学材料及び電気光学材料として有用な新規芳香族化合物、並びに、位相差板及び電気光学素子等の非線形光学効果を利用する各種光学要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
非線形光学効果を示す材料(非線形光学材料)がオプトエレクトロニクス、及びフォトニクス分野において注目されている。非線形光学効果とは、物質に強電場(光電場)を加えたとき、生じた電気分極と加えた電場の間で非線形な応答を示す現象であり、非線形光学材料とは、このような非線形性を顕著に示す材料を指す。二次の非線形応答を利用した非線形光学材料として、第二高調波を発生する材料や電界の一次に比例して屈折率変化を引き起こすポッケルス効果を示す材料などが知られており、特に後者は電気光学(EO)光変調素子やフォトリフラクティブ素子への応用が検討されている。
【0003】
非線形光学材料は、従来は無機非線形光学材料を中心にして材料探索や素子製作が行われてきたが、近年は、1)大きな非線形を示す、2)応答速度の速さ、3)光損傷しきい値が高い、4)多種多様な分子設計が可能、5)製造適性に優れることなどから有機材料が注目を集めている。しかしながら、二次の非線形光学効果の発現には、電場によって誘起される分極が反転対称心を欠く必要がある。したがって、非線形光学効果を示す分子、あるいは非線形光学応答基を材料中で反転対称心を欠く構造に配置する必要がある。しかしながら、これらの材料は時間とともに熱的に配向緩和を起こす場合がある。このため、電気光学的特性が劣化していく安定性に欠けるものであり、実用化や広い範囲への応用が困難であり、その解決が望まれていた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
また、二次の有機非線形光学材料は、一般的にπ電子が容易に移動可能な芳香環や直鎖状の共役鎖等のπ電子ブリッジを、電子供与性のドナーと電子求引性のアクセプターとで挟み込んだ構造をしている。そのため、一般的な非線形光学化合物は棒状の中心骨格の両末端にドナーとアクセプターとを1個ずつ有する構造をしている場合が多い。従来技術としては、円盤状化合物を非線形光学材料として用いた例が既に知られている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、これらの円盤状化合物は電子求引性基と電子供与性基とが芳香環上に互いに対を成すように同数個導入されたような、完全に対称な構造を有しており、分子内での分極構造をとりにくい。従ってこの従来の完全対称型の円盤状化合物では非線形光学材料としての有用性が不十分であり、その改善が望まれていた。
【0005】
また、電子求引性基がシアノ基で電子供与性基がメトキシ基である非対称型の円盤状化合物が知られている(例えば、非特許文献3及び4参照。)。しかしながら、この従来技術では電子求引性基及び電子供与性基の能力が低いため、化合物レベルでの非線形光学特性が低いのが問題である。したがって、電子求引性基及び電子供与性基の能力をより高めた化合物の開発が望まれている。
さらに、上記化合物は重合性基を有しておらず、分子の配向を3次元架橋によって固定化することができない。そのため配向緩和による非線形光学特性の低下が問題となっていた。
【0006】
【非特許文献1】
Mol.Cryst.Liq.Cryst.誌、第189巻、3頁(1990年)
【非特許文献2】
Org. Lett.誌、第4巻、1703頁(2002年)
【非特許文献3】
J. Org. Chem.誌、第66巻、5664頁(2001年)
【非特許文献4】
Tetrahedorn Letters.誌、第40巻、8181頁(1999年)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、1)新規な形状を有し、配向緩和の無い有機材料から成り、且つ、非線形光学特性を向上させた非線形光学材料及び電気光学材料として有用な芳香族化合物、より詳細には、配向緩和の抑制及び第二高調波発生の経時による減衰の抑制効果を有する一般式(I)で示される芳香族化合物、並びに、従来の化合物に比して優れた非線形光学特性を有する一般式(II)で示される芳香族化合物、2)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた非線形光学材料及び電気光学材料、3)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた光学要素を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、下記の材料により本発明の目的が達成できることを見いだした。すなわち、
(1)下記一般式(I)で示されることを特徴とする芳香族化合物である。
【化3】
(一般式(1)中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。A1は電子求引性基を示し、D1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示し、P1は架橋可能な置換基を示す。L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0009】
(2)前記一般式(I)におけるA1は、下記一般式(a)で表される置換基を示す電子求引性基であることを特徴とする上記(1)の芳香族化合物である。
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0010】
(3)下記一般式(II)で示されることを特徴とする芳香族化合物である。
【化4】
(一般式(II)式中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。D2は電子供与基を示し、A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は下記一般式(a)で表される置換基を示す。)
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0011】
(4)前記一般式(a)におけるR4が下記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることを特徴とする上記(2)又は(3)の芳香族化合物である。
−L2−P2 …一般式(b)
(一般式(b)中、P2は架橋可能な置換基を示し、L2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0012】
(5)前記一般式(I)又は前記一般式(II)において、X1及びX2が共に−CH=CH−、又は−C≡C−であることを特徴とする上記(1)〜(4)の芳香族化合物である。
【0013】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料である。
【0014】
(7)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料である。
【0015】
(8)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする光学要素である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化合物についてより詳細に説明する。第1の本発明の化合物は下記一般式(1)で表される芳香族化合物であることを特徴とする。尚、以下に一般式(I)で示される芳香族化合物及び後述する一般式(II)で示される芳香族化合物とを総じて「本発明の化合物」と称する場合がある。また、本発明の化合物を本発明の円盤状化合物と称する場合もある。
【0017】
【化5】
(一般式(1)中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。A1は電子求引性基を示し、D1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示し、P1は架橋可能な置換基を示す。L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0018】
R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。R1,R2及びR3として好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。さらに、R1乃至R3は同一でも異なっていてもよいが、R1乃至R3の全てが同一の基であることが好ましい。
また、m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。
【0019】
X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。X1、X2は−CH=CH−又は−C≡C−が好ましく、X1、X2が−CH=CH−である場合、その立体はシス体、トランス体いずれでもよいが、トランス体である方が好ましい。
【0020】
前記一般式(I)中のAr1、Ar2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を表し、好ましい芳香環の例としては、1,4−フェニレン、チオフェン−2,5−ジイル、2,6−ナフタレン、チアゾール−2,5−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ベンゾフラン−2,5−ジイル、ベンゾフラン−2,6−ジイル、ベンゾチオフェン−2,5−ジイル、ベンゾチオフェン−2,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピラジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル等が挙げられ、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、チオフェン−2,5−ジイルが特に好ましい。また、この芳香環は任意の位置に1個以上の置換基を有していてもよい。この場合置換基の例として、炭素数1乃至8の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基、又はハロゲン原子が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子等が挙げられ、特に好ましくはメチル基である。
【0021】
前記一般式(I)中、P1は架橋可能な置換基を示す。該架橋可能な置換基としては、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、グリシジル基、が挙げられ、その中でも、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。
【0022】
前記一般式(I)中のD1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は二価の電子供与性基を示す。該二価の電子供与性基の例としては−NH−、−NZ1−(Z1は炭素数が1乃至8の置換基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。)、又は下記に示される基等が挙げられ、その中でも、酸素原子(−O−)、−NZ1−(特に下記に示される基)が好ましい。
【0023】
【化6】
【0024】
L1は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基を示す。L1としては、炭素数が2から14のアルキレン基が好ましく、炭素数が4から12のアルキレン基がさらに好ましい。該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の、−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)中のA1は電子求引性基を示す。該電子求引性基としては、例えば、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、複数個の電子求引性基を有する置換基、下記一般式(a)で示される電子求引性基等が挙げられ、ニトロ基、下記一般式(a)で示される電子求引性基であることが好ましい。
【0026】
―A2−R4 ・・・一般式(a)
(式中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0027】
上記A2の好ましい例としては、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、スルホニル基(−SO2−)、スルホニルオキシ基(−SO3−)、あるいは下記に示される基等が挙げられる。
【0028】
【化7】
【0029】
一般式(a)中、−R4は炭素数が2から14がアルキル基であることが好ましく、炭素数が4から12がアルキル基であることがさらに好ましい。該アルキレキ基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられ、下記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることが好ましい形態である。
【0030】
−L2−P2 …一般式(b)
(一般式(b)中、P2は架橋可能な置換基を示し、L2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0031】
一般式(b)中、L2は炭素数が2から14であるアルキレン基が好ましく、炭素数が4から12のアルキレン基がさらに好ましい。該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよく、具体的にはエステル基、シンナモイル基、アミド基などが好ましい例として挙げられる。
【0032】
−R4が−L2−P2で示される場合、P1、P2の好ましい例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、グリシジル基があげられるが、その中でも、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。
【0033】
次に、第2の本発明の化合物である、下記一般式(II)で表される芳香族化合物についてより詳細に説明する。
【0034】
【化8】
(一般式(II)式中、R1,R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1乃至10である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はアルコキシ基、CF3、或いはハロゲン原子を示す。m,nは1又は2を示す。ただし、m+n=3である。X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Ar1及びAr2はそれぞれ独立して、無置換若しくは1個以上の置換基を有する炭素数5乃至10の芳香環を示す。D2は電子供与基を示し、A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は下記一般式(a)で表される置換基を示す。)
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A4は連結可能な電子求引性基を示し、R2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。)
【0035】
一般式(II)におけるR1〜R3、m、n、X1、X2、Ar1、Ar2については、前記一般式(I)と同義である。
【0036】
一般式(II)中、D2は電子供与性の置換基を示し、炭素数1乃至12のアルコキシ基、炭素数1乃至12のジアルキルアミノ基、炭素数1乃至12のアルキルアミノ基が好ましい。これらのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、及びアルキルアミノ基はいずれも直鎖でも、分岐でもよく、置換基、環構造を有していてもよい。また、環構造を有している場合の好ましい例としては、下記に示される基が挙げられる。
【0037】
【化9】
【0038】
前記一般式(II)中、A3はニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、又は上記一般式(a)(−A2−R4:A2,R4は前記と同義である。)で表される置換基を示す。また、A3が複数個の電子求引性基を有する置換基を示す場合、電子求引性基が2個以上含まれていることが好ましく、3個以上含まれていることがさらに好ましい。ここで、電子求引性基の例としてはシアノ基、ニトロ基、エステル基が好ましい例として挙げられ、具体的には以下に示される置換基等が好ましい例として挙げられる。
【0039】
【化10】
【0040】
また、一般式(I)における一般式(a)と同様に、一般式(II)における一般式(a)においても、R4としては上記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることが好ましい。
【0041】
さらに、上記一般式(I)及び(II)におけるX1及びX2は、共に−CH=CH−、又は−C≡C−であることが好ましい。
【0042】
一般式(I)で表される芳香族化合物及び一般式(II)で表される芳香族化合物の好ましい態様について説明する。
【0043】
前記一般式(I)においては、下記の構成:
(1)R1乃至R3は、水素原子、メチル基、CF3、又はハロゲン原子(好ましくは水素原子、メチル基)、
(2)X1、X2は、−COO−、−CH=CH−、−C≡C−、
(3)A1は、電子求引性基、
(4)D1は、酸素原子(−O−)、二価の電子求引性基、
を同時に組み合わせた化合物がより好ましい。
【0044】
また、前記一般式(II)においては、下記の構成:
(1)R1乃至R3は、水素原子、メチル基、CF3、又はハロゲン原子(好ましくは水素原子、メチル基)、
(2)X1、X2は、−COO−、−CH=CH−、−C≡C−、
(3)A3は、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、複数個の電子求引性基を有する置換基、
(4)D2は、電子供与性基、
を同時に組み合わせた化合物が特に好ましい。
【0045】
一般式(I)又は(II)で示される芳香族化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化11】
【0047】
次に、本発明の化合物の合成について説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一般式(II)で表される化合物は例えば以下に示すスキーム1の方法によって合成することができる。(尚、下記式中Rは、R1乃至R3を示す。)
【0048】
−スキーム1−
【化12】
【0049】
第一工程においては、化合物AをP(OR’)3(R’はアルキル基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基である。)と共に有機溶媒中で撹拌することで化合物Bが得られる。P(OR’)3は当量比で化合物Aに対し1乃至6当量が好ましく、更に好ましくは1乃至3当量である。用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられ、これらの有機溶媒は他の工程でも同様に用いることができる。また、反応温度としては、20℃乃至100℃が好ましく、更に好ましくは20℃乃至60℃である。
【0050】
次いで、第二工程において、化合物Bを塩基I存在下で、A3−Ar2−CHOで表される化合物と共に撹拌することで化合物Cが得られる。A3−Ar2−CHOは当量比で化合物Bに対し、1乃至2当量が好ましく、更に好ましくは1乃至1.3当量である。塩基Iとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはtert−ブトキシカリウム、メトキシカリウム、tert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、等が挙げられ、更に好ましくはtert−ブトキシカリウム、メトキシカリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
【0051】
第三工程においては、化合物Cを塩基I存在下で、D2−Ar1−CHOで表される化合物と共に撹拌することで目的とする本発明の一般式(II)で表される化合物(m=2、n=1)が得られる。D2−Ar1−CHOは当量比で化合物Cに対し、2乃至5当量が好ましく、更に好ましくは2.2乃至3当量である。
【0052】
上述の合成方法において「−X2−Ar2−A3」と「−X1−Ar1−D2」との導入比を逆にする場合は、第二工程においてA3−Ar2−CHOの代わりにD2−Ar1−CHOを用い、且つ第三工程においてD2−Ar1−CHOの代わりに3−Ar2−CHOを用いればよい。
【0053】
次に、一般式(I)で示される芳香族化合物の合成方法について説明する。一般式(I)で示される芳香族化合物は例えば以下に示すスキーム2の方法によって製造することができる。
【0054】
−スキーム2−
(尚、下記式中、Gは保護基、Kは脱離基を示す。)
【化13】
【0055】
第一工程においては、上述のスキーム1の方法と同様の手順で化合物Bを合成することができる。また、第二工程においては、この化合物Bを塩基I存在下で、A1−Ar2−CHOで表される化合物と反応させることで化合物Dが得ることができる。この際、A1−Ar2−CHOでは当量比で化合物Bに対し1乃至2当量が好ましく、更に好ましくは1乃至1.3当量である。
【0056】
次に、第三工程においては、化合物Dを塩基I存在下で、G−L1−D1−Ar1−CHOで表される化合物と反応させることで化合物Eを得ることができる。G−L1−D1−Ar1−CHOは当量比で化合物Eに対し2乃至5当量が好ましく、更に好ましくは2.2乃至3当量である。
【0057】
次に、第四工程において、Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press(London and New York,1973);Green,T.W.,Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley New York,1981;及びPeptides,Vol.I,Schrooder and Lubke,Academic Press(London and New York,1965)に記載されている方法に従って化合物Eを脱保護し、化合物Fを得ることができる。
【0058】
最後に第五工程において、化合物Fに対し塩基II存在下、P1−Kを反応させることで目的とする一般式(I)で示される芳香族化合物を得ることができる。P1−Kは化合物Gに対し3乃至9当量が好ましく、更に好ましくは3.6乃至6当量である。また、塩基IIとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
上述の合成方法において、「−X2−Ar2−A2」と「−X1−Ar1−D1−L1−P1」との導入比を逆にする場合は、第二工程においてA1−Ar2−CHOの代わりにG−L1−D1−Ar1−CHOを用い、且つ第三工程においてG−L1−D1−Ar1−CHOの代わりにA1−Ar2−CHOを用いればよい。また、塩基I、及びIIはスキーム1の説明と同様である。他の化合物についても本合成法に準じて公知の方法を組み合わせることにより合成できる。
【0060】
(光学要素)
本発明の光学要素は、本発明の化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明の化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明における光学要素とは、光学分野、エレクトロニクス分野で利用される機能性フィルム(例えば、光学フィルム、強誘電性フィルム、反強誘電性フィルム、圧電フィルム)や、機能性素子(例えば、非線形光学素子、電気光学素子、昇電素子、圧電素子、光変調素子)などを包含する。具体的には、非線形光学素子及び電気光学素子の用途としては、たとえば、「光波光学」コロナ社(1998年)、200頁に記載されている。
【0061】
(非線形光学材料及び電気光学材料)
本発明の非線形光学材料、及び電気光学材料は、本発明の化合物を少なくとも一つの構成成分として含有すること、又は本発明の化合物を重合した重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする。本発明の化合物が架橋性基を有する場合、本発明の化合物を重合した重合体を非線形光学材料及び電気光学材料として用いる。本発明の非線形光学材料及び電気光学材料は、本発明の化合物単独からなる態様と、本発明の化合物と媒体とからなる態様の両方を含む。以下に示す製造方法を示す。
【0062】
(化合物単独の場合)
本発明の化合物が架橋性基を有する場合、本発明の光学要素である非線形光学材料、及び電気光学材料は、例えば、1)支持体等に本発明の円盤状化合物を含むモノマー組成物を塗布し、2)配向させ、3)配向下において架橋することによって製造することもできる。
【0063】
(本発明の化合物と媒体とからなる場合)
例えば、1)本発明の化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明の化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解し、2)支持体等に塗布して乾燥させ、3)配向処理を施すことにより製造できる。
【0064】
本発明の円盤状化合物とそれを保持する高分子媒体を含む組成物、あるいは本発明の円盤状化合物の重合体を含む組成物を溶媒に溶解する工程において、用いる高分子媒体は特に限定されないが、例えば、PMMA等のアクリル系高分子、フッ素化ポリイミドなどのイミド系高分子、ポリカーボネート等を例としてあげることができる。また、用いる溶剤としては特に限定されないが、例えば酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤、及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0065】
塗布工程における支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フィルム、反射板などが例として挙げられる。塗布方法としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用される。
【0066】
また、配向処理においてコロナポーリング、及びコンタクトポーリング法を採用する事ができる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されない。
【0068】
[実施例1]
−化合物1の合成−
まず、1,3,5−Tris−bromomethyl−benzene(25g、70mmol)をDMF100中に溶解させ、室温にてTriethylphosphite(41.5g、250mmol)を滴下した。その後反応液を60℃まで加熱し、24時間撹拌した後、水300mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=5/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、[3,5−Bis−(diethoxy−phosphorylmethyl)−benzyl]−phosphonic acid diethylester(収量30g、収率81%)を得た。
【0069】
次に、[3,5−Bis−(diethoxy−phosphorylmethyl)−benzyl]−phosphonic acid diethylester(10g、18.9mmol)をDMF30mlに溶解させ、この混合液に4−Nitro−benzaldehyde(4.23g、28mmol)及びtert−ブトキシカリウム(3.14g、28mmol)を加え、80℃にて20時間撹拌した。その後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。ヘキサン/酢酸エチル=2/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、{3−(Diethoxy−phosphorylmethyl)−5−[2−(4−nitro−phenyl)−vinyl]−benzyl}−phosphonic acid diethyl ester(収量4.16g、収率42%)を得た。
【0070】
最後に、{3−(Diethoxy−phosphorylmethyl)−5−[2−(4−nitro−phenyl)−vinyl]−benzyl}−phosphonic acid diethyl ester(4.0g、7.6mmol)をDMF50mlに溶解させ、この混合液に4−Dimethylamino−benzaldehyde(4.86g、32.6mmol)を加え、100℃にて48時間撹拌した。その後、水80mlを加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物1(収量1.4g、収率36%)を得た。
FAB−MS(M+H)+=516
【0071】
[実施例2]
−化合物2の合成−
実施例1において、「4−Nitro−benzaldehyde」を「4−Formyl−benzoic acid methyl ester」に変え、「4−Dimethylamino−benzaldehyde」を「4−(Decyl−methyl−amino)−benzaldehyde」に変えた以外は実施例1の方法に従ってまず、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid methyl esterを合成した。
【0072】
次いで、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid methyl ester(5.0g、6.1mmol)にTHF/H2O(3/1)80ml及び水酸化ナトリウム1gを加え、60℃において10時間加熱して撹拌した。その後、水80mlを加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acidを得た。
【0073】
次に、4−[2−(3,5−Bis−{2−[4−(decyl−methyl−amino)−phenyl]−vinyl}−2,4,6−trimethyl−phenyl)−vinyl]−benzoic acid、Methanesulfonic acid decyl ester及び炭酸カリウムを加え、DMF中にて100℃に加熱して48時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル=1/3混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物2を得た。
FAB−MS(M+H)+=950
【0074】
[実施例3]
−化合物3の合成−
Methyl−phenyl−amine(13.0g、121mmol)、2−(8−Bromo−octyloxy)−tetrahydro−pyran(39g、133mmol)及び炭酸カリウム(28g、200mmol)をDMF300mlに加え、660℃にて12時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出し、この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、Methyl−phenyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amineを得た(収量22.4g、収率58%)
【0075】
オキシ塩化リン(10g、65mmol)をDMF50mlに滴下して30分間撹拌した。次に、この反応液に、Methyl−phenyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amine(20g、62mmol)を添加して50℃にて10時間撹拌した。その後、水を加え酢酸エチルにて抽出し、この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、4−{Methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−benzaldehydeを得た(収量13.7g、収率64%)。
【0076】
実施例2における「4−(Decyl−methyl−amino)−benzaldehyde」を上記で合成した「4−{Methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−benzaldehyde」に変え、「4−Formyl−benzoic acid methyl ester」を「4−Formyl−benzoicacid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl ester」に変えた以外は実施例2の方法に従って、4−(2−{2,4,6−Trimethyl−3,5−bis−[2−(4−{methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−phenyl)−vinyl]−phenyl}−vinyl)−benzoic acid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl esterを合成した。
【0077】
次にこの、4−(2−{2,4,6−Trimethyl−3,5−bis−[2−(4−{methyl−[8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl]−amino}−phenyl)−vinyl]−phenyl}−vinyl)−benzoic acid 8−(tetrahydro−pyran−2−yloxy)−octyl ester(1.1g、0.94mmol)にTHF/H20(3/1)20ml及び濃硫酸1mlを加え60℃にて11時間撹拌し、4−{2−[3,5−Bis−(2−{4−[(8−hydroxy−octyl)−methyl−amino]−phenyl}−vinyl)−2,4,6−trimethyl−phenyl]−vinyl}−benzoic acid 8−hydroxy−octylesterを得た(収量386mg、収率45%)。
【0078】
次いで、4−{2−[3,5−Bis−(2−{4−[(8−hydroxy−octyl)−methyl−amino]−phenyl}−vinyl)−2,4,6−trimethyl−phenyl]−vinyl}−benzoic acid 8−hydroxy−octyl ester(300mg、0.33mmol)にTHF5mlを加え、この混合液にAcryloyl chloride(268mg、2.97mmol)を滴下し、60℃にて13時間撹拌した。その後、水10を加え酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。最後に、酢酸エチルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物3を得た(収量205mg、収率58%)。
FAB−MS (M+H)+=1076
【0079】
[実施例4]
−化合物4の合成−
実施例1における「4−Nitro−benzaldehyde」を「5−Formyl−thiophene−2−carboxylic acid methyl ester」に変え、「4−Dimethylamino−benzaldehyde」を「5−Dimethylamino−thiophene−2−carbaldehyde」に変えた以外は実施例1の方法に従って、化合物4を合成した。
FAB−MS(M+H)+=589
【0080】
[実施例5]
−化合物5の合成−
Benzene−1,3,5−tricarboxylic acid(10g、47.6mmol)、4−Nitro−phenol(9.9g、71.4mmol)及び濃硫酸5mlをDMF100mlに加え、100℃にて24時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、沈殿した結晶を濾過分取した。得られた結晶を、酢酸エチルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離しBenzene−1,3,5−tricarboxylic acid−1−(4−nitro−phenyl)ester(収量7.4g、収率47%)を得た。
【0081】
次に、Benzene−1,3,5−tricarboxylic acid−1−(4−nitro−phenyl) ester(7.4g、22.3mmol)、4−Dimethylamino−phenol(12.2g、89mmol)及び濃硫酸3mlをDMF100mlに加え、100℃にて36時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて、乾燥させた。最後に、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、化合物5を得た(収量4.4g、収率35%)。
FAB−MS(M+H)+=570
【0082】
[実施例6]
絶縁膜としてポリイミド薄膜を塗布したITO透明電極部を有するガラス基板からなる5μmの空隙を有する水平配向セル(イー.エッチ.アイ製)に化合物3(92.7質量部)、フェノチアジン(1.3質量部)、重合開始剤(イルガキュア651(商品名)、チバガイギー社製)(4質量部)、及びハイドロキノンモノメチルエーテル(2質量部)からなる構成材料を狭持した。次に、透明電極間に200Vの直流電圧を印加しながら得られた試料を160℃に保ち、UV照射(254nm,10W/cm,3min)を行った。
【0083】
上記で得られた試料に対し、YAGレーザーの赤外光(1.06μm)を照射し、第二高調波の発生を確認した。得られた試料の第二高調波の強度は3ヶ月後も保持された。
以上の実施例からも明らかなように、本発明により、新規な形状を有する円盤状非線形光学化合物を提供することができた。更に、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた有機非線形光学材料が得られた。
また、上記特性から電気光学素子への応用に用いることができる電気光学材料としても有用なこと、及び光学素子としても有用であることは明らかである。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、1)新規な形状を有し、配向緩和の無い有機材料から成り、且つ、非線形光学特性を向上させた非線形光学材料及び電気光学材料として有用な芳香族化合物、より詳細には、配向緩和の抑制及び第二高調波発生の経時による減衰の抑制効果を有する一般式(I)で示される芳香族化合物、並びに、従来の化合物に比して優れた非線形光学特性を有する一般式(II)で示される芳香族化合物、2)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた非線形光学材料及び電気光学材料、3)上記芳香族化合物の架橋体又は非架橋体を用い、第二高調波発生の経時による減衰が著しく抑えられた光学要素を提供することができる。
Claims (8)
- 下記一般式(I)で示されることを特徴とする芳香族化合物。
- 前記一般式(I)におけるA1は、下記一般式(a)で表される置換基を示す電子求引性基であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族化合物。
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A2は連結可能な電子求引性基を示し、R4は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。) - 下記一般式(II)で示されることを特徴とする芳香族化合物。
−A2−R4 …一般式(a)
(一般式(a)中、A4は連結可能な電子求引性基を示し、R2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(該アルキル基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。) - 前記一般式(a)におけるR4が下記一般式(b)で表される架橋可能な置換基であることを特徴とする請求項2又は3に記載の芳香族化合物。
−L2−P2 …一般式(b)
(一般式(b)中、P2は架橋可能な置換基を示し、L2は炭素数が1乃至16である直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ若しくは2つ以上の−CH2−は、ヘテロ原子が隣接しない条件で、−O−、−CO−、−CH=CH−、−C≡C−、又は−NH−に置き換えられていてもよい。)を示す。) - 前記一般式(I)又は前記一般式(II)において、X1及びX2が共に−CH=CH−、又は−C≡C−であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族化合物。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする非線形光学材料。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする電気光学材料。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香族化合物、或いは、前記芳香族化合物の重合体を少なくとも一つの構成成分として含有することを特徴とする光学要素。
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