JP2004250375A - 化合物、その製造方法及び用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然物由来の成分であり、強い抗酸化活性や安定な美白作用を有する新規な化合物、その製造方法、該化合物を用いた抗酸化剤、美白剤、皮膚外用剤、化粧料及び食料品を提供すること。
【解決手段】本発明の化合物は式(1)で示され、本発明の抗酸化剤、美白剤、皮膚外用剤、化粧料及び食料品は、該式(1)で示される化合物を含むことを特徴とする。
【化1】
Figure 2004250375

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗酸化作用、美白作用等を有し、化粧品及び飲食品として有用な、フトモモ科(Myrtaceae)ジャボチカバ属(Myrciaria)の果樹であるカムカム(CAMU CAMU、学名Myrciaria dubia)等から得られる新規化合物及びその製造方法、その用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、動物由来原料への不安や規制が強まり、化粧品業界においては植物由来原料への関心が一層高まりつつある。また、生体外から取り込まれたり、生体内で発生する活性酸素などの酸化反応の影響による老化促進や、紫外線による皮膚の着色や発ガン作用の問題が深刻になってきている。
近年は、化粧料、皮膚科用組成物及び食品用組成物の加工、製造及び貯蔵・保存中において、各種素材中に含まれる油脂類の酸素による酸化及び過酸化が問題となってきている。とりわけ、油脂中に含まれるリノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸は、空気中の酸素により容易に過酸化されて、過酸化脂質やフリーラジカルを生成し、更には発癌性物質をも生成することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。酸化及び過酸化が起こると、着色、変色、変性、異臭などの外的変化或いは栄養価や有効性の低下などの質的変化が起こる。更に変性が進むと、毒物の生成などが起こり、延いては製品そのものの品質の劣化を招くこととなる。
不飽和脂肪酸の酸化及び過酸化を抑制し、品質の劣化を防ぐ為には、従来から種々の抗酸化剤が用いられている。これらの抗酸化剤は、酸化の際に生ずるペルオキシドラジカルに作用し、酸化の連鎖反応を停止させるか、若しくはフリーラジカルに作用し、酸化反応を停止させる等の作用を有する。現在、抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)やブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの合成抗酸化剤が一般的に用いられている。ところが、こうした合成抗酸化剤の使用量が増えるにつれて、人体への影響及び安全性が問題にされ、消費者の拒否反応が強くなってきた。
【0003】
このような事から、天然物由来の抗酸化剤への期待が、非常に大きなものとなってきている。しかしながら、これまで知られている天然ビタミンE(α−トコフェロール)やビタミンCなどの天然物由来の抗酸化剤は、その活性が長時間安定的に持続しない等の欠点がある。このことから、抗酸化活性が強く、その活性が長時間安定な天然物由来の抗酸化剤が強く求められている。
また、従来より皮膚の美白効果は、化粧品業界において重要視されており、今までも様々な発明がなされてきた。皮膚の着色やシミなどの色素沈着は大別して、生体内における代謝障害などの内因的要素と、紫外線などによる外因的要素とに分けられる。一般に多くみられるのは、後者の外因的要素によるものであり、紫外線によりメラノサイトが刺激を受け、メラノサイトが活性化することにより、チロシナーゼ酵素が働き、皮膚への色素沈着がおこるものである。このメラノサイトの活性化を抑制し、チロシナーゼ酵素及びメラニン色素の生成を抑制することにより、皮膚の着色やシミなどの色素沈着を防ぎ、白い肌を保つことが出来る。近年、オゾン層の破壊などにより、紫外線の量が増加しつつある。これに伴い、消費者の紫外線対策に対する要求が更に高まり、安全で有効な美白剤が強く求められている。
【0004】
ところで、カムカムの実は、豊富なビタミンCを含有しており、現在ビタミンC含有量が最も高い植物として認識され、その果実は、南米において化粧品や食料品として市販されている。近年では日本でも食品用素材として輸入・販売されている。このようなカムカムの実に含まれる抗酸化作用や美白作用を有する成分としては、現在、ビタミンCが知られるのみである。
【0005】
【非特許文献1】
「食品の包装」(17巻、106頁(1986年))
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、天然物由来の成分であり、強い抗酸化活性や安定な美白作用を有する新規な化合物、その製造方法、該化合物を用いた抗酸化剤、美白剤、皮膚外用剤、化粧料及び食料品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、式(1)で示される化合物(以下、化合物CA1という)が提供される。
【化2】
Figure 2004250375
【0008】
また本発明によれば、カムカム果実の果汁、果皮、種子及びこれらの混合物からなる群より選択される1種又は2種以上から、水及び/又は有機溶媒を用いて抽出物を得、該抽出物を精製処理することを特徴とする前記化合物CA1の製造方法が提供される。
更に本発明によれば、前記化合物CA1を有効成分として含む抗酸化剤又は美白剤が提供される。
更にまた本発明によれば、前記抗酸化剤及び/又は前記美白剤を含むことを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料が提供される。
また本発明によれば、前記抗酸化剤を含むことを特徴とする食料品が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の化合物CA1は、前記式(1)で示され、後述するように抗酸化作用及び美白作用を有する。
該化合物CA1の理化学的性質は、マススペクトル:m/z 593[M+Na]、分子式:C273813、紫外吸収スペクトル:λmaxm(MeOH):217nm、248nm、H−NMRケミカルシフト:δppm(599.6MHz、溶媒CDOD);7.08(s,H−q)、6.61(s,H−p)、4.53(H−o,J=11.8)、4.49(s,H−n)、4.40(H−m,J=11.8)、4.28(d,H−l,J=7.8)、3.82(s,H−k)、3.52(H−j,J=6.4,2.0)、3.38(m,H−i)、3.37(m,H−h)、3.23(H−g,J=8.7)、2.10(s,H−f)、1.92(s,H−e)、1.13(s,H−d)、1.05(s,H−c)、0.97(s,H−b)、0.73(s,H−a)、13C−NMRケミカルシフト:δppm(150.8MHz、溶媒CDOD);203.5(C−Y)、168.4(C−X)、157.8(C−W)、146.5(C−V)、139.9(C−U)、122.6(C−T)、121.6(C−S)、110.4(C−R)、105.6(C−Q)、95.7(C−P)、90.1(C−O)、80.0(C−N)、78.3(C−M)、75.7(C−L)、75.4(C−K)、72.1(C−J)、65.0(C−I)、46.8(C−H)、42.2(C−G)、28.2(C−F)、26.9(C−E)、26.4(C−D)、21.5(C−C)、21.1(C−B)、20.2(C−A)である。
【0010】
本発明の化合物CA1は、フトモモ科(Myrtaceae)ジャボチカバ属(Myrciaria)の果樹であるカムカム(CAMU CAMU、学名Myrciaria dubia)の果汁、果皮、種子から、水及び/又は有機溶媒を用いて抽出物を得、該抽出物を精製処理する方法等により得ることができる。
例えば、カムカム種子から溶媒を用いて得た抽出液の濃縮物に、更に液液分配処理、クロマトグラフィー等による精製処理を行うことで純度95%以上の精製物が得られる。
【0011】
前記抽出に用いる溶媒としては、例えば、水及び/又は有機溶媒が挙げられ、該有機溶媒は、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒のいずれでもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール;アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられる。疎水性有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒は、使用に際しては1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
前記溶媒抽出の条件は特に限定されないが、例えば、温度は5〜95℃、好ましくは15〜85℃で、常温でも好適に抽出できる。抽出時間は、数時間〜数日間であり、また、抽出に使用する溶媒量は、原料に対して質量比で通常1〜50倍量、好ましくは5〜25倍量である。
抽出操作も特に限定的ではなく、常法に従って行えばよい。抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、攪拌機等を備えた抽出機を用いても抽出することができる。例えば、カムカム果実あるいは種子を抽出溶媒に浸漬するか、もしくは浸漬せずに、抽出溶媒と共に攪拌、振とうする抽出処理を行い、処理液を、ろ過、遠心分離又はデカンテーション等によって抽出液と抽出残渣とに分離することにより抽出処理を行うことができる。抽出残渣は、更に同様な抽出処理に付しても良い。得られる抽出液は、そのまま分離、精製の原料として用いても良いが、必要により更に濃縮処理を行って分離、精製処理することもできる。
【0013】
前記濃縮処理は特に限定されず、例えば、溶媒除去、水及び/又は有機溶媒に対する溶解性を利用した可溶分回収処理、水−疎水性有機溶媒での液液分配処理、再結晶処理、再沈澱処理、冷却により生じた析出物を回収する処理等、若しくはこれらから選択される2種以上の処理を組み合わせる方法等が挙げられる。
前記精製処理も特に限定されないが、例えば、順相及び/又は逆相クロマトグラフィーによる処理等により精製物を得ることができる。
【0014】
本発明の化合物CA1は、前述の抽出操作により得られる場合には、後述する各種用途に用いる場合、必ずしも純品である必要はなく、精製工程で得られる各種の粗精製物であっても良い。例えば、本発明の化合物CA1を90質量%以上、95質量%以上、更には98%以上、更にまた99%以上の粗精製物が挙げられる。
【0015】
本発明の抗酸化剤及び美白剤は、前記本発明の化合物CA1を有効成分として含む。
本発明の抗酸化剤及び美白剤において、有効成分である本発明の化合物CA1の使用量は、使用形態等によりその効果を発揮しうるように適宜選択することができる。
【0016】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料は、前記本発明の抗酸化剤及び/又は美白剤を含んでおれば良い。前記化粧料の種類は特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、パック、洗浄料等のスキンケア化粧料;口紅、ファンデーション等のメーキャップ化粧料;頭髪用化粧料等が挙げられ、その剤型は特に制限されず任意である。また皮膚外用剤としては、軟膏、各種皮膚用薬剤等が挙げられる。本発明の皮膚外用剤及び化粧料において、本発明の抗酸化剤及び/又は美白剤の配合割合は、その種類及び配合される他の成分の種類や量、形態に応じて適宜選択できるが、通常、皮膚外用剤又は化粧料全量に対して、本発明の前記化合物CA1量(純度95%以上のもの)として、通常、0.0001〜2質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。
【0017】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料原料として用いられる種々の他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、水、油剤、界面活性剤、潤滑油、アルコール類、水溶性高分子剤、ゲル化剤、保湿剤、緩衝剤、防腐剤、抗炎症剤、増粘剤、香料、ビタミン類、本発明の化合物CA1以外の抗酸化剤や美白剤等を挙げることができ、使用に際しては、皮膚外用剤、化粧料の種類や他の目的、更にはその形態等に応じて適宜選択して配合することができる。
【0018】
本発明の食料品は、前記本発明の抗酸化剤を含んでおれば良く、食料品の種類は特に限定されず、例えば、飴、飲料、ジャム、チューインガム等が挙げられる。また、その剤型は特に制限されず任意である。
本発明の食料品において、本発明の抗酸化剤の配合割合は、食料品の種類及び該食料品に配合される他の成分の種類や量に応じて適宜選択することができるが、通常、食料品全量に対して、本発明の前記化合物CA1量(純度95%以上のもの)として、通常、0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0019】
本発明の食料品には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、通常、食料品原料として用いられる種々の他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、水、アルコール類、甘味料、酸味料、着色料、保存料、香料、フケイ剤等が挙げられ、使用に際しては、食料品の種類や他の目的、更にはその形態等に応じて適宜選択して配合することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
実施例
粉砕したカムカム種子6000gに14倍質量のメタノールを加え、25℃、1晩攪拌抽出を行った。全量を5℃で、4000rpm、45分間遠心分離を行い、粗ろ過後、0.22μmフィルターろ過し、ろ液を濃縮乾固して抽出物387.63g得た。この抽出物を3600mlの精製水に溶解し、続いてn−ヘキサンで3回、酢酸エチルで7回、順次液液分配を行った。得られた酢酸エチル画分を減圧濃縮して濃縮物12.89gを得た。次に、この濃縮物を酢酸エチルに再溶解してシリカゲル(ワコーシルC−300:和光純薬製)を充填したカラムに付し、クロロホルムに対するメタノール含量を、クロロホルム:メタノール=10:0、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、2:8と順次増やして溶出した。このうち、クロロホルム:メタノール=8:2〜7:3の混合溶媒で溶出された画分を集めて減圧濃縮し、濃縮物を精製水で溶解した。これをさらにC18カラムに付し、メタノールで溶出された部分を集めて減圧濃縮し、5mlのメタノールに溶かした。
【0021】
次にこれを、分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりさらに精製した。まず下記溶出条件(1)で粗精製し、さらに(2)、(3)の条件で溶出することで、純度95%以上の精製品を得た。HPLC条件を以下に示す。得られた精製物について、マススペクトル、紫外吸収スペクトル、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを測定した結果、上述の理化学的性質と同一の結果が得られ、得られた化合物が式(1)で示される化合物CA1であることを確認した。
カラム:Inertsil ODS−3[20×250mm](GL−Sciences Inc.)、流速:8ml/分、温度:40℃、検出:UV at 257nm、溶離剤:A)水、B)アセトニトリル
(1)15%B(0−10分)、15−30%B(10−110分、linear)、30−100%B(110−120分、linear)、(2)20%B(0−20分)、20−30%B(20−70分、linear)、(3)30%B(0−35分)
【0022】
実施例
実施例1で得られた純度95%以上の本発明の化合物CA1を用い、以下に示すリノール酸自動酸化抑制能測定試験を行った。
<リノール酸自動酸化抑制能測定試験>
2.5%(w/v)リノール酸2mlと0.05Mりん酸緩衝液(pH7.0)4mlとを混合し、反応液を調製した。次に、本発明の化合物が0.01%(w/v)濃度となるように99.5%エタノールに溶かした溶液2ml、さらに蒸留水2mlを前記反応液に添加して計10mlとし、混和後褐色ネジ口瓶に入れてサンプルとした。
また陰性コントロールとしては、何も添加せず、99.5%エタノール2ml及び蒸留水2mlのみを反応液に添加したものを用いた。陽性コントロールとしては、α−トコフェロール及びBHAを本発明の化合物と同様の操作方法で同濃度に調整したサンプルを用いた。
各サンプルを40℃、暗所で保存したものを本検、4℃、暗所で保存したものを盲検として、経時的に4週間測定した。
測定方法としては、サンプル0.1ml、75%エタノール9.7ml、30%ロダンアンモニウム溶液0.1mlをまず混合し、そこに2×10−2M塩化第一鉄(3.5%塩酸溶液)0.1mlを加えてから正確に3分後に500nmで吸光度を測定した。測定値から吸光度差及び2週間目の自動酸化率を求めた。盲検についても同様に測定し、Δ吸光度=[本検の吸光度]−[盲検の吸光度]とした。結果を図1に示す。
【0023】
サンプルの酸化が始まると吸光度は上昇し、最高点に達した後、酸化されるべきサンプルが少なくなるにつれて吸光度は減少する。従って、吸光度のピークが早くできはじめるほど抗酸化活性は弱いと判断できる。
また、酸化率を用いて各サンプルの抗酸化活性を比較した。酸化率は、試験開始から2週間経過した時のコントロールの酸化(吸光度)を100%として以下の式で算出した。結果を図2に示す。
リノール酸自動酸化率(%)=([サンプルのΔ吸光度]/[コントロールのΔ吸光度])×100
酸化率は、数値が高いほど抗酸化活性が低いと判断できる。この実験の結果から、本発明の化合物の抗酸化力は、既知の天然抗酸化物質であるα−トコフェロールより強く、さらに、合成抗酸化物質であるBHAに匹敵するものであることがわかる。また、その分子構造内には没食子酸構造部分を有するが、上記比較結果により、没食子酸そのものやその塩ではリノール酸への酸化抑制能は低く、リノール酸に対する抗酸化力は本発明の化合物特有のものであることがわかる。これは、本発明の化合物の極性が没食子酸より低いためであると推測される。従って、化粧品、皮膚外用剤及び食品に使用される成分の中では、特に油脂類への抗酸化物質として有用である。
【0024】
実施例
実施例1で得られた純度95%以上の本発明の化合物に対して、安定なラジカルである1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)を用いた抗酸化活性評価を行った。
250mM酢酸緩衝液(pH=5.5)1600μlにエタノール1200μl、検体400μl(エタノールに溶解して任意の濃度に調整)を混合し、30℃、5分間プレインキュベートした。この液に500μMのDPPH/エタノール溶液を800μl添加混合し30℃、30分間放置後、517nmの吸光度を測定した。
陰性コントロールとしては、何も添加しないエタノールを試料溶液の代わりに反応液に添加したものを用いた。また陽性コントロールとしては、α−トコフェロールを本発明の化合物と同濃度になるようにエタノール溶解し、同様の操作を行ったものを用いた。測定された吸光度から、次式によりラジカル消去率を算出した。結果を表1に示す。
消去率(%)=(1−[試料の吸光度]/[コントロールの吸光度])×100
試料溶液の試料濃度を段階的に変更して上記消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料溶液の濃度を求め、DPPHラジカル50%消去濃度とした。よって、この数値が低いほど、ラジカル消去能が高いといえる。
【0025】
【表1】
Figure 2004250375
表1より、本発明の化合物はα−トコフェロールと同等以上のラジカル消去能を有することが明らかとなった。
【0026】
実施例
実施例1で調製した本発明の化合物CA1を用いて、マウス由来B16メラノーマ細胞を使用し、細胞レベルでの美白効果の確認試験を行った。この試験法は、動物細胞を使用することにより、生体内により近い環境下でメラニン色素の生成抑制作用及び細胞増殖に与える影響を確認することができる。
シャーレにマウス由来B16メラノーマ細胞を1×10cells/ml播き込み、37℃、5%CO条件下で2日間培養した。培養液を除去後、本発明の化合物CA1を添加した各試験培地、ブランクとして10%FBS/DME培地、比較対照としてカムカム種子の単離成分の1つである没食子酸添加培地を各々10ml/dishずつ加え、更に37℃、5%CO条件下で3日間培養した。培養液を除去後、トリプシン溶液で細胞を剥がして遠心分離を行い、PBSに懸濁後、再度遠心分離を行った。上清を除いた細胞ペレットに水酸化ナトリウム溶液を加え、加熱処理を行い、メラニン色素を溶解し、更に細胞由来の線維状物質をフィルター除去した。吸光度計にて溶解したメラニン色素の測定とBIO−RAD社DC−Protein Assay KITを用いた蛋白量の測定を行った。
【0027】
ブランク培地をコントロールとして用い、そのメラニン生成抑制率を0%とした時の、各サンプルのメラニン色素生成抑制率を以下の式で算出した。結果を図3に示す。
メラニン色素生成抑制率(%)=100−([サンプル:総蛋白1mg当たりのメラニン量の平均値]/[コントロール:総蛋白1mg当たりのメラニン量の平均値])×100
図3より、本発明の化合物CA1は、没食子酸と同様なメラニン色素生成抑制作用を有することが確認された。本実験結果では、メラニン色素生成抑制率は、没食子酸よりもやや低い値となっているが、化粧品及び皮膚外用剤として用いる場合は、乳液やクリーム状の剤型が多く、そのため剤型での混合や安定性は、没食子酸より極性が低い本発明の化合物の方が有用であると考えられる。
また、総蛋白量は細胞数と比例する為、各試験培地の総蛋白質量を測定し、細胞増殖に与える影響についての確認を行った。その結果、サンプル間における総蛋白質量に大きな差は認められなかった。更に、顕微鏡観察下においても問題は認められなかった。
【0028】
処方例
グリチルリチン酸ジカリウム0.20質量部、クエン酸0.10質量部、クエン酸ナトリウム0.30質量部、実施例1で精製した化合物0.01質量部及び1.3−ブチレングリコール5.00質量部を混合して、精製水を加えて全体量を80質量部にして50℃で攪拌しながら溶解して本発明の化合物含有水溶液を調製した。
次いで、テトラオレイン酸POE(60)ソルビトール0.90質量部、モノオレイン酸ソルビタン0.10質量部、適量の防腐剤及びエタノール10.00質量部を混合して、50℃で攪拌しながら溶解した。続いて、得られた溶液を、最初に調製した水溶液に少量ずつ加えて50℃で混和攪拌した。均一に混和したら、更に攪拌しながら50℃から30℃に液温を下げ、30℃になったところで攪拌を止め、適量の香料及び精製水を加えて全体量を100質量部にした。再度、混和攪拌し、均一に混和させて化粧水を調製した。
【0029】
処方例
スクワレン10.00質量部及び適量の防腐剤を混合し、精製水を加えて全体量を70.00質量部に調整し、80℃に加温して溶液(1)を調製した。また、カルボキシビニルポリマー0.10質量部及びキサンタンガム0.20質量部を適量の精製水に常温で攪拌溶解し溶液(2)を調製した。さらにトリエタノールアミン0.10質量部、1,3−ブチレングリコール5.00質量部及び実施例1で精製した化合物0.01質量部を適量の精製水に常温で攪拌溶解し溶液(3)を調製した。さらにまた、ヒアルロン酸ナトリウム2.00質量部を適量の精製水に常温で攪拌溶解し溶液(4)を調製した。
次いで、適量の精製水に溶液(1)を少量ずつ加え、80℃で混和攪拌し、更に攪拌しながら溶液(2)を加え、続いて溶液(3)を加えた。均一に混和したら、攪拌しながら溶液を50℃に下げて、50℃になったところで溶液(4)を加え、さらに精製水を加えて全体量を100質量部に調整した。溶液を再度攪拌し、30℃になったところで攪拌を止め、均一に混和された乳液を調製した。
【0030】
処方例
POE(20)ソルビタンモノステアレート2.00質量部、POEソルビタンテトラオレエート0.50質量部、モノステアリン酸グリセリル0.50質量部、ステアリン酸7.00質量部、セチルアルコール3.00質量部、パルミチン酸セチル3.00質量部、ホホバ油7.00質量部、パラフィン3.00質量部、実施例1で精製した化合物0.01質量部及び適量の防腐剤を混合して、80℃で攪拌しながら溶解し溶液(1)を調製した。一方、1,3−ブチレングリコール7.00質量部及び精製水62質量部を混合して、80℃で攪拌しながら溶解し溶液(2)を調製した。
次いで、溶液(2)に溶液(1)を少量ずつ加え、乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却して攪拌を止め、均一に混和されたクリームを調製した。
【0031】
処方例
グラニュー糖54.00質量部を適量の精製水に溶解し、続いて、該溶解物を水飴41.70質量部と混合し煮詰めた。次いで、均一に混合攪拌しながら、クエン酸1.00質量部及び香料0.30質量部を少しずつ加え、攪拌しながら90℃まで冷却後、実施例1で精製した化合物0.01質量部を加えて攪拌した。得られた均一な混和物を常法により成型し、キャンディーを調製した。
【0032】
処方例
イチゴ果実65.00質量部に砂糖32.00質量部を少しずつ加え、攪拌しながら煮詰めた。糖濃度が65%以上になったところで加熱を止め、実施例1で調製した化合物0.02質量部、クエン酸0.15質量部及び適量の香料を加えて、均一になるまで混和した。得られた濃縮液が熱いうちに瓶に詰め殺菌し、急速冷却することによってジャムを調製した。
【0033】
【発明の効果】
本発明の化合物は、カムカム果実由来の天然物から抽出精製できるので、安全性に優れ、且つ優れた抗酸化作用及び美白作用を有するので抗酸化剤及び美白剤として有用である。また、本発明の抗酸化剤及び美白剤は、強力な抗酸化活性及びメラニン生成抑制作用を示すと共に没食子酸より油溶性成分に対する抗酸化活性が優れている。従って、美白効果や抗酸化活性を期待して皮膚外用剤や化粧品に、また食料品の品質保持や酸化防止作用を期待して食料品への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で行ったリノール酸自動酸化抑制能測定試験の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2で行ったリノール酸自動酸化抑制能測定試験における各サンプルの2週間後の酸化率を示すグラフである。
【図3】実施例4で行ったメラニン色素生成抑制試験の結果を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 式(1)で示される化合物。
    Figure 2004250375
  2. カムカム果実の果汁、果皮、種子及びこれらの混合物からなる群より選択される1種又は2種以上から、水及び/又は有機溶媒を用いて抽出物を得、該抽出物を精製処理することを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
  3. 請求項1記載の化合物を有効成分として含む抗酸化剤。
  4. 請求項1記載の化合物を有効成分として含む美白剤。
  5. 請求項3記載の抗酸化剤及び/又は請求項4記載の美白剤を含むことを特徴とする皮膚外用剤。
  6. 請求項3記載の抗酸化剤及び/又は請求項4記載の美白剤を含むことを特徴とする化粧料。
  7. 請求項3記載の抗酸化剤を含むことを特徴とする食料品。
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