JP4264456B2 - ヒアルロニダーゼ活性阻害剤 - Google Patents
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Description
そこで、前述の不飽和脂肪酸の酸化及び過酸化を抑制し、製品の品質の劣化を防ぐために従来から種々の抗酸化剤が用いられている。抗酸化剤は、酸化の際に生ずるペルオキシドラジカルに作用し、酸化の連鎖反応を停止させるか、あるいはフリーラジカルに作用して酸化反応を停止させる。抗酸化剤としては、従来から、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)やブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の合成抗酸化剤が一般に用いられている。ところが、近年、合成抗酸化剤の使用が増えるにつれその安全性が問題にされ、消費者の拒否反応が強くなってきていると共にその使用量も減っている。また、これら合成抗酸化剤は、油溶性であるため水溶液への使用が困難である。
一方、安全性の高い天然物由来の抗酸化剤としては、例えば、天然ビタミンE(α-トコフェロール)、ビタミンC等が知られている。しかし、これら天然物由来の抗酸化剤は、極端な脂溶性又は水溶性という性質を有しているため、その利用には限度が生じる。また、その活性が長時間安定に持続しない等の欠点もある。
従って、抗酸化活性が強く、水への溶解性に富み、しかも抗酸化活性が長時間安定である天然物由来の抗酸化剤が強く求められている。
また、皮膚の水分保持、柔軟性、弾力性に作用する物質として、コラーゲンやヒアルロン酸などが知られている。コラーゲンは、皮膚では真皮の90%を占め、真皮全体に分布しており、皮膚に適度な弾性及び強度を保持させる。また、ヒアルロン酸は、皮膚、関節液、硝子体、靭帯など生体に広く分布しており、皮膚において、細胞の接着、細胞の保護、皮膚組織の形成、組織の水分保持、柔軟性の維持などを担っている。生体内でコラーゲンを分解する酵素としてコラゲナーゼ、ヒアルロン酸を分解する酵素としてヒアルロニダーゼが知られているが、これらによってコラーゲンやヒアルロン酸が分解されその量が減少すると、皮膚の潤い、ハリがなくなり、皮膚の老化現象であるシワやたるみが起こるといわれている。
そこで、皮膚外用剤や各種化粧料に、皮膚の老化防止やしわ防止作用等を期待してこれら酵素の活性を阻害する物質等を配合することが提案され、従来、様々なコラゲナーゼ活性阻害剤やヒアルロニダーゼ活性阻害剤が開発されている。
しかし、アセロラの果実において化粧品や食料品に利用されているのは、ビタミンCを多く含む果肉のみであり、その種子は、有効利用の途がほとんど見出されておらず、大部分が廃棄されているのが現状である。最近、アセロラ種子を含む植物の種子を水蒸気蒸留法により処理して得られる水蒸気蒸留水を、皮膚感触改善効果を期待して化粧料に配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照)が、更なる有効利用の途が望まれている。
また、このようなアセロラの種子は、その含有成分、及びその作用等についてもほとんど知られていない。
すなわち、本発明によれば、アセロラ種子に、水及び/又は親水性有機溶媒を加えて溶媒抽出した抽出物、その濃縮物又はこれらの乾固物を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤が提供される。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、アセロラ種子の溶媒抽出物を有効成分として含む。
アセロラ種子は、大西洋のカリブ海西インド諸島を原産とするアセロラ(Acerola、学名:Malpighia emarginata DC)の種子である。
アセロラの果肉はビタミンCが豊富であることが知られ、食料品、化粧品等に利用されているが、その種子は、その有効利用の途がほとんど見出されていない。
抽出操作も特に限定的ではなく、常法に従って行えばよい。抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、撹拌機等を備えた抽出機を用いても抽出することができる。例えば、アセロラ種子を抽出溶媒に浸漬するか、若しくは浸漬せずに、抽出溶媒と共に撹拌、振とうする抽出処理を行い、処理液を、濾過、遠心分離又はデカンテーション等によって抽出液と抽出残渣に分離することにより抽出処理を行うことができ、抽出残渣は更に同様な抽出処理に付しても良い。得られる抽出液はそのまま用いても良いが、必要により、更に濃縮処理及び/又は分画処理することもできる。
前記分画処理も特に限定されず、例えば、順相及び/又は逆相クロマトグラフィーによる処理等が挙げられる。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤において、有効成分であるアセロラ種子の溶媒抽出物の使用量は、使用形態等により適宜選択することができる。
皮膚外用剤及び化粧料において、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の配合割合は、その種類及び配合される他の成分の種類や量、形態等に応じて適宜選択できるが、通常、皮膚外用剤又は化粧料全量に対して、アセロラ種子抽出物の乾燥物換算で0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%である。
製造例1
洗浄したアセロラ種子を乾燥後、破砕して得られた粉砕物6140gに7倍質量のメタノールを加え、室温で一晩撹拌した。全量を遠心後、ろ過し、ろ液を濃縮乾固して抽出物(A)を225.89g得た。
この抽出物(A)に水2000mlを加え、更にヘキサン1200mlを加えて振とうした後、分液された水層を回収した。この水層に対し、ヘキサンを用いた同様の振とうを更に2回繰り返した。ヘキサン層を除いて得られた水層に、酢酸エチル1200 mlを加えて振とうすることを10回繰り返し、分液された酢酸エチル層を集めて濃縮乾固し、濃縮物(A)を11.48g得た。次に、濃縮物(A)を、シリカゲル(ワコーシルC-300:和光純薬社製)を充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。クロロホルム、クロロホルム:メタノール(97:3、9:1、8:2、6:4、4:6、2:8)、メタノールで順次溶出させた。クロロホルム溶出部を15の画分に分け(画分1〜15)、その後のクロロホルム:メタノール溶出部をそれぞれ、画分16(97:3)、17(9:1)、18(8:2)、19(6:4)、20(4:6)とした。
画分1〜20をシリカゲルプレートに塗付し、クロロホルム:メタノール=9:1の溶媒でプレート先端まで展開した後、DPPH溶液を噴霧した。結果を図1に示す。図1より、アセロラ種子抽出物には、抗酸化活性を有する多数の物質が含まれていることがわかる。
カラム:Hydrosphere C-18[20×250mm](YMC)、流速:5ml/分、温度:35℃
検出:UV at 254nm、Eluent:30%メタノール(0-2min)、30-100%メタノール(2-32min、linear)、100%メタノール(32-40min)、30%メタノール(40-50min)の条件で粗精製した後、アセトニトリル/水(30/70)で最終精製を行って、分画精製物72mgを得た。
得られた分画精製物に対し、各種スペクトル測定を行った。得られたデータを以下に示す。
マススペクトル:[M-H]- 447
紫外線吸収スペクトル:(EtOH) 256.5nm、352.00nm、H-NMRケミカルシフト:500MHz 溶媒CD3OD、0.94ppm(d:J=6.1Hz)、6.91ppm(d:J=8.2Hz)、7.31ppm(d, d:J=8.2,2.1Hz)、7.34 ppm(d:J=2.1Hz)、6.20ppm(d:J=2.1Hz)、6.37ppm(d:J=2.1 Hz)、3.33ppm(m:J= 9.5,9.3Hz)、3.41ppm(m:J= 9.5Hz)、3.74ppm(d,d:J=9.3,3.3 Hz)、4.21ppm(d,d:J= 3.3Hz)、5.35ppm(d:J=1.7Hz)、C-NMR ケミカルシフト:125.8MHz 溶媒CD3OD、17.7ppm、72.0ppm、72.1ppm、72.2ppm、73.3ppm、94.8ppm、99.9ppm、103.6ppm、106.0ppm、116.4ppm、117.0ppm、122.9ppm、123.1ppm、136.3ppm、146.5ppm、149.9ppm、158.6ppm、159.4ppm、163.3ppm、166.0ppm、179.7ppm。
マススペクトルにおいて、脱プロトン化分子と考えられるイオンがm/z447に観測され、分子量は448と考えられた。H-NMRでは、0.94ppmはCH3、6.91ppm、7.31ppm、7.34ppmは1,2,4-置換ベンゼン、6.20ppm、6.37ppmは1,2,3,5-置換ベンゼンの1Hに帰属された。3.33〜5.35ppmには5種類のピークが観測された。また、13C-NMRスペクトルでは21本のピークが観測され、70-74ppmの4本のピークは>CH-O-と考えられ、179.7ppmには共役カルボニルに帰属できるピークが観測された。これらデータよりケルセチン配糖体の可能性が示唆されたため、更に高分解能マススペクトルの測定及び、ケルセチン配糖体で分子量448であるクェルシトリン標品のNMRスペクトルとの比較を行った。高分解能マススペクトル測定を行った結果、精密質量447.0917が得られ、C、H、Oを元素種として組成計算を行った。その結果、13C-NMRスペクトルで観測された炭素数21を満足する組成式C21H19O11が算出され、分子式はC21H19O11と決定された。更にNMRスペクトルを、クェルシトリン(ケルセチン-3-ラムノシド)標品のスペクトルと比較した結果、一致したため、アセロラ種子の抽出物より分離精製された物質はクェルシトリンであると同定した。
洗浄したアセロラ種子100gを破砕し、3倍体積の水を加え、室温で一晩振とうした。全量をガラスフィルター、0.65μmフィルター及び0.22μmフィルターでろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物1gを得た。
次に、リノール酸を用いた抗酸化活性測定(ロダン鉄法)により得られた抽出物の抗酸化活性を測定した。
即ち、2.5%(w/v)リノール酸(99.5%エタノール溶液)2ml及び0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)4mlの反応液に、アセロラ種子の抽出物0.4mg、99.5%エタノール2ml及び蒸留水2mlからなる混液を混合し、褐色ネジ口瓶に入れ10mlの試験液を調製した。また、アセロラ種子抽出物の代わりにα-トコフェロール又はBHAを用い、反応液中にアセロラ種子の抽出物と同量含まれるように同様の操作を行い、各々試験液を調製し、これらを正の対照とした。コントロールにはアセロラ種子抽出物を添加せず、99.5%エタノール2ml及び蒸留水2mlのみを反応液に添加した試験液を用いた。得られた各試験液を暗所にて40℃で保存したものを本検、4℃で保存したものを盲検として、経時的に被検物を取り出し以下の方法により測定を行った。試験は14日間行った。
酸化率(%)=([試料のΔ吸光度]/[コントロールのΔ吸光度])×100
吸光度の経時的変化の結果を図2に、試験開始後14日目の各試料溶液の酸化率を図3に示す。
洗浄したアセロラ種子100gを破砕し、3倍体積の、エタノール含量が25体積%の含水エタノール水溶液を加え、室温で一晩振とうした。全量を製造例2と同様なフィルターでろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物を1.69g得た。
得られた抽出物を用いて製造例2と同様に抗酸化活性を測定した。吸光度の経時的変化の結果を図2に、試験開始後14日目の各試料溶液の酸化率を図3に示す。
洗浄したアセロラ種子100gを破砕し、3倍体積の、エタノール含量が50体積%の含水エタノール水溶液を加え、室温で一晩振とうした。全量を製造例2と同様なフィルターでろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物2.27gを得た。
得られた抽出物を用いて製造例2と同様に抗酸化活性を測定した。吸光度の経時的変化の結果を図2に、試験開始後14日目の各試料溶液の酸化率を図3に示す。
洗浄したアセロラ種子100gを破砕し、3倍体積の、エタノール含量が75体積%の含水エタノール水溶液を加え、室温で一晩振とうした。全量を製造例2と同様なフィルターでろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物2.50gを得た。
得られた抽出物を用いて製造例2と同様に抗酸化活性を測定した。吸光度の経時的変化の結果を図2に、試験開始後14日目の各試料溶液の酸化率を図3に示す。
図2及び3より、アセロラ種子の抽出物には明らかにリノール酸の酸化抑制効果があり、またその強さは代表的抗酸化剤であるα-トコフェロール、BHAと比較して、同等又は同等以上であることが判った。更に、製造例2〜5の結果より、抽出溶媒として用いる含水エタノール中のエタノールの割合を変化させることで、抗酸化活性の強さをコントロールできることが判る。
洗浄したアセロラ種子760gを破砕し、5倍質量のメタノールを加え、室温で一晩撹拌した。全量を遠心後、ろ過し、ろ液を濃縮乾固して抽出物12.36g得た。この抽出物に水300mlを加え、更にヘキサン100mlを加えて振とうした後、分液された水層を回収した。この水層に対し、ヘキサンを用いた同様の振とうを更に3回繰り返した。ヘキサン層を除いて得られた水層に、酢酸エチル100mlを加えて振とうすることを6回繰り返し、分液された酢酸エチル層を集めて濃縮乾固し、固形分0.41gを得た。
得られたアセロラ種子の抽出物の抗酸化活性を製造例2と同様にロダン鉄法により測定した。この際、試験期間は20日間とした。試験開始後20日目の各試料溶液の酸化率を図4に示す。
図4より、アセロラ種子の抽出物の酢酸エチル画分には、抽出物そのものと同様に明らかにリノール酸の酸化抑制効果があり、またその強さは、α-トコフェロールよりも強いことが判った。
洗浄したアセロラ種子70gを破砕し、4倍質量の、1,3-ブチレングリコール含量が30質量%の1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、室温で一晩撹拌した。全量を遠心後、上清を0.22μmフィルターでろ過し、アセロラ種子の抽出物を溶液として124.12g得た。
得られたアセロラ種子の抽出物の抗酸化活性を以下のDPPHラジカル消去による方法により測定した。結果を表1に示す。
250mM酢酸緩衝液(pH=5.5)1600μlにエタノール1200μl、検体400μl(任意の濃度に調製)を混合し、30℃、5分間プレインキュベートした。この液に500μM DPPH/エタノール溶液を800μl添加混合し、30℃、30分間放置後、517nmの吸光度を測定した。α-トコフェロールについても同様の操作を行い、これを正の対照とした。コントロールには、試料溶液の代わりにその溶媒を用いて同様の操作を行ったものを用いた。測定された吸光度から、次式によりラジカル消去率を算出した。
消去率(%)=(1−[試料の吸光度]/[コントロールの吸光度])×100
試料溶液の試料濃度を段階的に変更して上記消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料溶液の濃度を求め、DPPHラジカル50%消去濃度とした。よって、この数値が低いほどラジカル消去能が高いことを意味する。
洗浄したアセロラ種子1500gを破砕し、2倍質量の、1,3-ブチレングリコール含量が30質量%の1,3-ブチレングリコール水溶液を加え、室温で一晩撹拌した。全量を遠心後、上清を0.22μmフィルターでろ過し、アセロラ種子抽出物を溶液として2327g得た。
得られたアセロラ種子抽出物の抗酸化活性を、製造例2と同様にロダン鉄法により測定した。但し、アセロラ種子抽出物は溶液であることから、水とエタノールを用いて必要濃度に希釈して添加し、アセロラ種子抽出液のコントロールには、添加したアセロラ種子抽出液と同様の溶媒組成でアセロラ種子抽出物を含まないものを用いた。また、試験期間は7日とした。
吸光度の経時的変化の結果を図5に、試験開始後7日目の各試料溶液の酸化率を図6に示す。
図5及び6より、アセロラ種子抽出物には明らかにリノール酸の酸化抑制効果があり、またその強さは、α-トコフェロール、BHAと比較して、同等又は同等以上であることが判った。
まず、上記で調製したアセロラ種子抽出液100g中に含有されるビタミンC量を測定したところ、57mg/100g(酸化型ビタミンC:56mg/100g+還元型ビタミンC:1mg/100g)であった。そこで、上記で調製したアセロラ種子抽出液100gを蒸発乾固したところ、固形分975mgが得られた。次いで、製造例2と同様にロダン鉄法により抗酸化活性を測定した。この際、本実施例のアセロラ種子抽出物は溶液であることから、上記と同様、反応液中に固形分として0.4mg含まれるように希釈して添加した。またコントロールにも上記と同様、添加したアセロラ種子抽出液と同様の溶媒組成でアセロラ種子抽出物を含まないものを用いた。なお、測定は7日間で行った。対照として、該固形分0.4mg中に含まれるビタミンC 0.023mg (0.4mg×(57mg/975mg))を用いて同様に抗酸化活性を測定した。
試験開始後7日目の酸化率は、アセロラ種子抽出物が1.9%であったのに対して、ビタミンC単独のものは115.8%であった。
以上の結果より、アセロラ種子抽出物中に含まれるビタミンCは、該抽出物の抗酸化作用にはほとんど寄与していないことが判った。
ところで、従来、例えば、特開平7-300581号公報において、クェルシトリンが抗酸化作用を有することが提案されている。そこで、上記アセロラ種子抽出液における抗酸化作用が含有されるクェルシトリンのみによるものか否かを以下の方法で検討した。
まず、クェルシトリンはポリフェノールの1種であるので、上記で調製したアセロラ種子抽出液中のポリフェノール量をFolin-Denis法により測定したところ、抽出液100g中の固形分975mgに占めるポリフェノールの割合は25%であった。従って、上記で調製したアセロラ種子抽出液の固形分中に含まれるクェルシトリン量は、最大でも25%である。この結果に基づいて、上記ビタミンCとの比較試験と同様に、実施例2と同様にロダン鉄法により抗酸化活性を測定した。この際、測定は7日間で行った。対照として、該固形分0.4mg中にクェルシトリンが32%(最大量でも25%であるので、それ以上の量)含まれると仮定した場合のクェルシトリン0.128mgを用いて同様に抗酸化活性を測定した。
その結果、試験開始後7日目の酸化率は、アセロラ種子抽出物が1.9%であったのに対して、クェルシトリン単独のものは6.9%であった。
以上の結果より、アセロラ種子抽出物中に含まれるクェルシトリンは、該抽出物の抗酸化作用の有効成分の1つではあるが、該抽出物の抗酸化作用はクェルシトリンのみの作用ではなく、しかも、アセロラ種子抽出物は、クェルシトリン単独による抗酸化作用よりも優れていることが判った。
製造例2〜5で調製した各アセロラ種子抽出物について、以下の方法によりコラゲナーゼ活性阻害作用を測定した。
測定方法
〔試薬の調製〕
基質溶液:Pz-ペプチド(BACHEM社製)0.39mgを、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.1、含20mM塩化カルシウム)1mlに溶解して使用した(0.5mMに相当)。
酵素溶液:コラゲナーゼ(TYPE IV、シグマ社製)5mgを蒸留水1mlに溶解させ100μlずつ分注し、−20℃で保管する。使用時に蒸留水で50倍に希釈して反応に用いた。
製造例2の抽出物は15mg/ml、製造例3、4、5の抽出物は0.5mg/mlの濃度となるように、それぞれの抽出溶媒で溶解して調製を行い、これらを試料溶液とした。これらの試料溶液50μl、コラゲナーゼ溶液50μl及び基質溶液400μlを混合し、37℃で30分間インキュベーションした。次いで、25mMクエン酸溶液1mlで反応を停止し、酢酸エチル5mlで抽出した。遠心分離(3000rpm、10分間)後、酢酸エチルを対照として、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。対照には、試料溶液の代わりに各抽出溶媒を用い、また、それぞれのブランクとして、酵素溶液の代わりに蒸留水を加えて同様の操作を行った。
これらの値からコラゲナーゼ活性阻害率を次式により算出した。
阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液の320nmにおける吸光度、B:試料溶液ブランクの320nmにおける吸光度、C:対照溶液の320nmにおける吸光度、D:対照溶液ブランクの320nmにおける吸光度である。
上記方法で製造例2〜5の抽出物のコラゲナーゼ活性阻害率を求めた。結果を表2に示す。
製造例8で調製したアセロラ種子抽出物について、試験例1と同様の方法によりコラゲナーゼ活性阻害作用を測定した。但し、製造例8の抽出物は溶液であることから、アセロラ種子抽出物が固形物として0.5mg/mlの濃度となるように抽出溶媒である30質量%1,3-ブチレングリコール水溶液で希釈したものを試料溶液とした。このようにして製造例8の抽出物のコラゲナーゼ活性阻害率を求めた結果、71.5%であった。
製造例8で調製した抽出物のヒアルロニダーゼ活性阻害作用を測定した。ヒアルロニダーゼ活性阻害測定は、Morgan-Elson法を応用した前田有美恵らの方法(食衛誌、31巻、233-237、1990年)にて行った。
測定方法
〔試薬の調製〕
酵素溶液:牛精巣ヒアルロニダーゼ(和光純薬工業(株)製)を0.1M酢酸緩衝液(pH=4.0)に溶解し最終酵素活性を400ユニット/mlに調整した。
酵素活性化溶液:compound 48/80(シグマ社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH=4.0)に溶解し最終濃度を0.1mg/mlに調整した。
基質溶液:ヒアルロン酸カリウム(和光純薬工業(株)製)を0.1M酢酸緩衝液(pH=4.0)に溶解し最終濃度を0.4mg/mlに調整した。
ホウ酸溶液:ホウ酸4.95gに水50mlを加え、1N水酸化ナトリウム溶液でpH=9.1にし、水を加えて100mlに調整した。
p-ジメチルアミノベンズアルデヒド(p-DAB)試薬:10N塩酸12.5mlと酢酸87.5mlの混液にp-DAB(和光純薬工業(株)製)を10g溶解し冷蔵保存する。使用直前に酢酸で10倍希釈して用いた。
製造例8の抽出物は溶液であることから、アセロラ種子抽出物が固形物として1mg/mlの濃度となるように抽出溶媒である30質量%1,3-ブチレングリコール水溶液で希釈したものを試料溶液とした。この試料溶液0.2mlに酵素溶液0.1mlを加えて、37℃で20分間放置した。次に、酵素活性化溶液0.2mlを加えて37℃で20分間加温し、さらに基質溶液0.5mlを加えて37℃で40分間反応させた後、0.4Nの水酸化ナトリウム水溶液を0.2ml加えるとともに氷冷して反応を停止させた。ホウ酸溶液0.2mlを加えてホットブロックバス(TOYO SEISAKUSHO、MODEL TPB-32)により100〜120℃で5分間加熱後氷冷し、p-DAB試薬6mlを加えて37℃で20分間加温して発色させ、585nmにおける吸光度を蒸留水を対照として測定した。対照には、試料溶液の代わりに抽出溶媒を用い、またそれぞれのブランクとして、酵素溶液の代わりに0.1M酢酸緩衝液(pH=4.0)を加えて同様の操作を行った。
これらの値からヒアルロニダーゼ活性阻害率を次式により算出した。
阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液の585nmにおける吸光度、B:試料溶液ブランクの585nmにおける吸光度、C:対照溶液の585nmにおける吸光度、D:対照溶液ブランクの585nmにおける吸光度である。
上記方法で製造例8の抽出物のヒアルロニダーゼ活性阻害率を求めた結果、94.5%であった。
平成9年3月26日付厚生省令第21号「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」に従ってアセロラ種子抽出物の安全性試験を行なった。アセロラ種子抽出物としては、製造例8で調製したアセロラ種子抽出物を用いた。結果を表3に示す。
ラットを用いる単回経口投与毒性試験
ラット2群(対照群、投与群)に対して、雌雄各5匹/群にて試験を行い、投与群には体重あたり2g/kg投与した。
モルモットを用いる皮膚一次刺激性試験
モルモット3匹の健常皮膚に24時間閉塞貼付を行い、投与後24時間、48時間及び72時間に、それぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
モルモットを用いる14日間皮膚累積刺激性試験
モルモット3匹の健常皮膚に、14日間連続の開放系で1日1回塗布を行い、試験期間中の毎日、塗布前及び塗布後24時間に、それぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
モルモットを用いる皮膚感作性試験
モルモット3群(対照群、塗布群、DNCB群)に対して、5匹/群にてAdjuvant and Patch Test法に準じて試験を行い、塗布後24時間及び48時間に、それぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
モルモットを用いる皮膚光毒性試験
モルモット10匹の背部皮膚に森川藤凰らの方法に準じて試験を行い、紫外線照射後24時間、48時間及び72時間にそれぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
モルモット3群(対照群、投与群、TCSA群)に対して、5匹/群にてAjuvant and Strip法に準じて試験を行い、紫外線照射後24時間及び48時間に、それぞれ皮膚の状態を観察して判定を行った。
ウサギを用いる眼粘膜刺激性試験
ウサギ2群(非洗眼群、洗眼群)に対して、3匹/群にて試験を行った。点眼後、非洗眼群はそのままにし、洗眼群は微温の生理食塩水で約1分間洗浄し、その後1時間、24時間、48時間及び72時間後に、角膜、虹彩及び結膜の状態について観察し、AFNORの区分から判定を行った。
細菌を用いる復帰突然変異試験
プレインキュベーション法により、S9mix無添加とS9mix添加の場合について測定を行った。
・使用菌株:Salmonella typhimurium TA100、TA98、TA1535、TA1537
・使用菌株:Escherichia coli WP2uvrA
哺乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験
哺乳類の培養細胞(CHL/IU細胞)を用いて3群(陰性対照群、被検物質群、陽性対照群)に対して、短時間処理法(6時間処理:S9mix無添加及びS9mix添加)及び連続処理法(24時間及び48時間処理)で検討を行った。
グリチルリチン酸ジカリウム0.20質量部、クエン酸0.10質量部、クエン酸ナトリウム0.30質量部、製造例7で調製したアセロラ種子の抽出物5.00質量部及び1,3-ブチレングリコール5.00質量部を混合して、精製水を加えて全体量を80.0質量部にして50℃で撹拌しながら溶解して抽出物含有水溶液を調製した。
次いで、テトラオレイン酸POE(60)ソルビトール0.90質量部、モノオレイン酸ソルビタン0.10質量部、適量の防腐剤及びエタノール10.00質量部を混合して、50℃で撹拌しながら溶解した。続いて、得られた溶液を、最初に調製した抽出物含有水溶液に少量ずつ加えて、50℃で混和撹拌した。均一に混和したら、更に撹拌しながら50℃から30℃に液温を下げ、30℃になったらところで撹拌を止め、適量の香料及び精製水を加えて全体量を100.00質量部にした。再度、混和撹拌し、均一に混和させて化粧水を調製した。
スクワレン10.00質量部及び適量の防腐剤を混合し、精製水を加えて全体量を70.00質量部に調整し、80℃に加温して溶液(1)を調製した。また、カルボキシビニルポリマー0.10質量部及びキサンタンガム0.20質量部を適量の精製水に常温で撹拌溶解し溶液(2)を調製した。更に、トリエタノールアミン0.10質量部及び1,3-ブチレングリコール5.00質量部を適量の精製水に常温で撹拌溶解し溶液(3)を調製した。更にまた、ヒアルロン酸ナトリウム2.00質量部及び製造例8で調製したアセロラ種子の抽出物5.00質量部を適量の精製水に常温で撹拌溶解し溶液(4)を調製した。
次いで、適量の精製水に溶液(1)を少量ずつ加え、80℃で混和撹拌し、更に撹拌しながら、溶液(2)を加え、続いて溶液(3)を加えた。均一に混和したら、撹拌しながら溶液を50℃に下げて、50℃になったところで、溶液(4)を加え、更に精製水を加えて全体量を100質量部に調整した。溶液が30℃になるまで再度撹拌し、30℃になったところで撹拌を止め、均一に混和された乳液を調製した。
POE(20)ソルビタンモノステアレート2.00質量部、POEソルビタンテトラオレエート0.50質量部、モノステアリン酸グリセリル0.50質量部、ステアリン酸7.00質量部、セチルアルコール3.00質量部、パルミチン酸セチル3.00質量部、ホホバ油7.00質量部、パラフィン3.00質量部及び適量の防腐剤を混合して、80℃で撹拌しながら溶解し溶液(1)を調製した。一方、製造例8で調製したアセロラ種子の抽出物5.00質量部、1,3-ブチレングリコール7.00質量部及び精製水62質量部を混合して、80℃で撹拌しながら溶解し溶液(2)を調製した。
次いで、溶液(2)に溶液(1)を少量ずつ加え、乳化し、撹拌しながら冷却して40℃に降温したところで撹拌を止め、均一に混和されたクリームを調製した。
Claims (2)
- アセロラ種子に、水及び/又は親水性有機溶媒を加えて溶媒抽出した抽出物、その濃縮物又はこれらの乾固物を有効成分として含むヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
- 親水性有機溶媒が、メタノール、エタノール又は1,3−ブチレングリコールであることを特徴とする請求項1記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
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