JP2004242905A - 使い捨ての防じんマスクおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】使い捨て防じんマスク1が椀状のフィルター部材2と、接顔パッド部材4と、締めひも6と、ひも保持部材7とを有する。フィルター部材2の内面が網状の保形材14によって裏打ちされる。保形材14はフィルター部材2を形成する合成繊維の溶融温度と同じであるかその温度よりも低い溶融温度を有する合成樹脂によって形成され、フィルター部材2の周縁部13ではその保形材14が溶融固化して薄くなり、ひも保持部材7の貫通部位23を通り抜けてフィルター部材2と接顔パッド部材4とを接合する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、使い捨ての防じんマスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、使い捨ての防じんマスクは周知である。かかるマスクには、ほぼ椀状を呈するフィルター部材と、そのフィルター部材の周縁部内面に取り付けられて周縁部の内側で環状に延びる接顔パッド部材と、マスク着用者の耳や顔に掛け回す締めひもとを有するものがある。例えば、実公平7−36669号公報(特許文献1)には、平板状に形成された接顔パッド部材を有するこの種のマスクが開示されている。また、特開2000−202051号公報には、マスク着用者の顔面にフィットし易くなるように立体的に形成された接顔パッド部材を有するこの種のマスクが開示されている。これらのマスクでは、一般にフィルター部材が熱可塑性合成繊維からなる不織布によって形成され、接顔パッド部材が発泡ポリエチレンシート等のスポンジ状シートによって形成されている。
【0003】
【特許文献1】
実公平7−36669号公報
【特許文献2】
特開2000−202051号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記公知のマスクにおいて、接顔パッド部材は、フィルター部材の周縁部内面に対して溶着または接着によって接合され一体化している。その周縁部の周り方向における一部分では、フィルター部材と接顔パッド部材との間にひも保持部材が介在し、その保持部材にゴムひも等からなる締めひもが取り付けられる。ひも保持部材は、フィルター部材および接顔パッド部材とは別体に形成されて、これら両部材間に配置される。マスクを製造する段階では、フィルター部材と接顔パッド部材とを互いに周縁部どうしで重ね合わせて、例えば加熱加圧下で溶着してこれらを一体的に接合するのであるが、それら周縁部の一部分にひも保持部材が介在していると、その接合が必ずしも容易ではない。例えば、フィルター部材の周縁部と接顔パッド部材の周縁部とを重ね合わせたときに、ひも保持部材が介在している部位とそれが介在していない部位とでは厚さが異なるから、それら周縁部を周り方向において一様に加熱加圧することが困難になる。加えて、フィルター部材や接顔パッド部材に比べてひも保持部材が溶融しにくいものであると、フィルター部材と接顔パッド部材との間にひも保持部材が介在する部位をその他の部位と外観が同じになるように一体的に接合することも困難になる。したがってまた、そうした条件下で製造されるマスクには、ひも保持部材の取り付け強度がばらつき易いということや外観が一様になりにくいということがある。
【0005】
また、椀状のフィルター部材が不織布からなるものは、マスクの外側からそのフィルター部材に押圧力が作用すると、フィルター部材が潰れて元の椀状に戻り難いということがある。一度潰れたフィルター部材は、指先を使って椀状に戻すことはできる。しかし、マスク使用者がマスクをポケットに入れたり出したりするときに、着用のつど潰れているフィルター部材を元の形状に戻さなければならないということは煩わしい。
【0006】
この発明では、椀状を呈するフィルター部材の周縁部にひも保持部材が取り付けられている使い捨ての防じんマスクにおいて、その製造を容易にしてひも保持部材の取り付け強度を安定させること、および椀状のフィルター部材を潰れ難くすること等を課題にしている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためのこの発明は、使い捨ての防じんマスクに係る第1発明と、そのマスクの製造方法に係る第2発明とからなる。
【0008】
前記第1発明が対象とするのは、マスク着用者の顔面と向かい合う内面とその反対側の外面とを有する合成繊維で形成されてほぼ椀状を呈する可撓性のフィルター部材と、合成樹脂の発泡体からなり外周縁部と内周縁部とを有し前記外周縁部が前記フィルター部材の周縁部内面に取り付けられて前記周縁部の内側で環状に延びる柔軟にして弾性を有する接顔パッド部材と、前記周縁部の周り方向における少なくとも一部分において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に介在し前記フィルター部材および前記接顔パッド部材よりも高剛性であるひも保持部材と、前記ひも保持部材に取り付けられた可撓性の締めひもとを有する使い捨ての防じんマスクである。
【0009】
かかる防じんマスクにおいて前記第1発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記ひも保持部材は前記周縁部に沿って延びる弧状部分を有し、前記弧状部分には該弧状部分をその厚さ方向である前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とに向かう方向へ貫通する部位が形成されている。前記フィルター部材は、前記内面が椀状を呈する通気性の網状部材によって裏打ちされていて前記網状部材が前記周縁部にまで広がっている。前記網状部材は、該部材の目を形成する糸状部分が前記フィルター部材を形成する合成繊維の溶融温度と同じであるかその温度よりも低い溶融温度を有する合成樹脂によって形成されてていて前記内面を裏打ちする部位において前記網状部材の厚さ方向に0.5〜2mmの寸法を有する。前記糸状部分はさらに、前記周縁部において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に位置する部位がこれら両部材を一体的に接合するように溶融固化して薄くなっており、前記フィルター部材と前記ひも保持部材との間に位置する部位が前記ひも保持部材の前記貫通する部位を通り抜けて前記ひも保持部材を介して前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とを一体的に接合するように溶融固化して薄くなっている。
【0010】
前記第1発明には、次のような実施態様がある。
(1)前記ひも保持部材が前記網状部材の合成樹脂よりも熱溶融温度の高い合成樹脂で形成されている。
(2)前記接顔パッドがポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルいずれかの発泡体を含む。
(3)前記防じんマスクは、前記フィルター部材の椀状のふくらみを押し潰すような変形および前記フィルター部材の内側に向かって幅方向へ二つに折り重ねるような変形に対して弾性的に元の形状に戻ることが可能に形成されている。
【0011】
前記第2発明が対象とするのは、マスク着用者の顔面と向かい合う内面とその反対側の外面とを有する合成繊維で形成されてほぼ椀状を呈する可撓性のフィルター部材と、合成樹脂の発泡体からなり外周縁部と内周縁部とを有し前記外周縁部が前記フィルター部材の周縁部内面に取り付けられて前記周縁部の内側で環状に延びる柔軟にして弾性を有する接顔パッド部材と、前記周縁部の周り方向における少なくとも一部分において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に介在し前記フィルター部材および前記接顔パッド部材よりも高剛性であるひも保持部材と、前記ひも保持部材に取り付けられた可撓性の締めひもとを有する使い捨ての防じんマスクの製造方法である。
【0012】
かかる製造方法において、前記第2発明が特徴とするところは次のとおりである。前記ひも保持部材は、前記周縁部に沿って延びる弧状部分が設けられて、前記弧状部分には該弧状部分をその厚さ方向である前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とに向かう方向へ貫通する部位が形成されている。前記フィルター部材は、前記周縁部の内面に前記フィルター部材を形成する合成繊維の溶融温度と同じであるかその温度よりも低い溶融温度を有する厚さ0.5〜2mmの寸法を有する合成樹脂材料を重ねられる。さらに前記合成樹脂材料の下方には、前記ひも保持部材の弧状部分と前記接顔パッド部材とが順に重ねられる。しかる後にこれら周縁部と合成樹脂材料とひも保持部材と接顔パッド部材とが前記合成樹脂材料が薄くなるように加熱下に加圧されて、前記合成樹脂材料が前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に位置する部位で溶融固化することによりこれら両部材を一体的に接合し、前記フィルター部材と前記ひも保持部材との間に位置する部位では前記ひも保持部材における前記貫通する部位を通り抜けて前記ひも保持部材に達するように溶融固化することにより前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とを前記ひも保持部材を介して一体的に接合する。
【0013】
前記第2発明には、次のような実施態様がある。
(1)前記合成樹脂材料は、前記フィルター部材の内面を裏打ちする通気性の網状部材が前記周縁部にまで広がっている部位であって、前記網状部材において網の目を形成している糸状部分が前記網状部材の厚さ方向の径が0.5〜2mmの寸法を有し、前記網の目の開口面積が1〜25mm2の範囲にある。
(2)前記フィルター部材は、不織布を複数枚重ね合わせることにより形成されており、前記不織布のうちで前記フィルター部材の内面を形成している合成繊維が前記合成樹脂材料の溶融温度と同じであるかその温度よりも高い溶融温度の合成樹脂を含んでいる。
(3)前記ひも保持部材が前記網状部材の合成樹脂よりも熱溶融温度の高い合成樹脂で形成されている。
【0014】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨ての防じんマスクとその製造方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0015】
図1,2は、使い捨て防じんマスク1を外面側から見たときの斜視図と内面側から見たときの斜視図である。マスク1は、着用者の顔面と向かい合う内面とその反対側の外面とを有してほぼ椀状を呈するフィルター部材2と、フィルター部材2の周縁部3における内面に取り付けられて周縁部3の内側で環状に延びる接顔パッド部材4と、マスク1の着用者頭部または耳部に掛け回すことが可能な締めひも6と、締めひも6を長さ調節可能にフィルター部材2に取り付けることが可能なひも保持部材7とを有する。かかるマスク1は、締めひも6を使用してパッド部材4を着用者の顔面にフィットさせ、フィルター部材2で着用者の口許と鼻孔とを覆うようにして着用する。パッド部材4は、鼻の周囲にフィットし易いように、図2において幅方向を2等分する中心線C上における上部8が逆V字形に切り欠かれるとともに、フィルター部材2の内面側から外面側に向かってややへこんでいる。パッド部材4の下部9と両側部11とは、口許や頬にフィットし易いようにやはりフィルター部材2の外面側に向かってへこんでいる。
【0016】
図3は、マスク1を部分的に破断して示す図1と同様な図である。フィルター部材2は、外部フィルター12と、内部フィルター13と、保形材14とを有し、これらが互いに積層されて椀状を呈している。外部フィルター12は、内部フィルター13が外物に接触して損傷することがないように内部フィルター13を保護すると同時に比較的大きな粉じんを捕集することができるもので、好ましくは高強度で比較的高い溶融温度を有するポリエステル繊維等の合成繊維を使用した目の粗い不織布で形成される。かかる外部フィルター12は、内部フィルター13の通気度と同程度であるか、それよりも高い通気度を有する。内部フィルター13は、比較的小さな粉じんを捕集するためのものであって、例えばポリプロピレンのメルトブローン繊維からなる通気性で目の細かい不織布で形成される。ただし、内部フィルター13は、マスク1が目的とする防じん性能に対応するように、合成繊維の種類や繊度、不織布の種類、不織布としての坪量や密度が選択される。保形材14は、椀状を呈して内部フィルター13を裏打ちしている網状構造を有するもので、フィルター部材2の周縁部3にまで広がっている。その網状構造は、多数の網の目16とそれを形成する糸状部17とを有し、糸状部17が図示例では図の縦方向と横方向とに延びている(図2を併せて参照)。網の目16は、外部フィルター12と内部フィルター13の通気性を低下させることがないように大きく作られており、好ましい網の目16の開口面積は1〜25mm2の範囲にある。糸状部17では、保形材14の厚さ方向における寸法が0.5〜2mmの範囲にあり、その寸法に直交する幅方向の寸法もまた0.5〜2mmの範囲にある。ただし、これら両寸法は互いに異なる値をとることができる。かような保形材14は、内部フィルター13を形成している合成繊維の溶融温度と同じであるか、その温度よりも低い溶融温度を有する合成樹脂によって形成される。好ましい合成樹脂の一例には、ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体との混合物がある。
【0017】
図3において、保形材14の後方には接顔パッド部材4が位置している。ただし、マスク1の両側部では、保形材14とパッド部材4との間にひも保持部材7が介在している。保持部材7は、マスク1の周縁部3に沿って延びる弧状部分21と、その弧状部分21からマスク1の外方へ向かう突出部分22とを有する。弧状部分21には内部フィルター13とパッド部材4とに向かって弧状部分21の厚さ方向ヘ延びる貫通部位、例えば図示例のような径が0.5〜2mm程度の貫通孔23が形成され、突出部分22は締めひも6を長さ調節可能に掛け回すことができるように形成されている。保持部材7は、締めひも6に張力が作用してもマスク1が大きくゆがむことがないように、フィルター部材2やパッド部材4よりも高い剛性を有するように形状や材料が選択される。好ましい保持部材7はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート等の合成樹脂によって形成され、弧状部分21が0.3〜2mmの厚さを有する。パッド部材4は、弾性変形しながら顔に密着できるように、柔軟にして弾性を有する材料によって形成される。好ましいパッド部材4は、発泡ポリエチレンや発泡ポリウレタン等からなる厚さ0.5〜2mmの合成樹脂発泡シートまたはそのシートを立体的な形状に成形したものによって形成される。パッド部材4が顔面に当接する面4a(図2参照)には、柔軟な紙や不織布を貼って肌触りをよくすることができる。
【0018】
マスク1では、フィルター部材2の周縁部3においてこれら外部フィルター12、内部フィルター13、保形材14、ひも保持部材7およびパッド部材4がマスク1の厚さ方向から加熱加圧されることにより一体的に接合している。その接合に際して、パッド部材4の面4aはそれに加圧痕が残るとマスク1を着用したときの肌触りが悪くなるので、周縁部3に対する加熱はマスク1の外面側、すなわち外部フィルター12の側のみから行うことが好ましい。また、その外部フィルター12は、シートとしての形態を加熱加圧によって失うことがないように、軟化温度または溶融温度がなるべく高い、例えばポリエステル繊維のような合成繊維からなる不織布によって形成する。内部フィルター13は、好ましくは加熱加圧によって溶融して外部フィルター12やパッド部材4、保持部材7、保形材14等と接合し得るような合成樹脂、例えばポリプロピレンのメルトブローン繊維によって形成する。保形材14は、加熱加圧によって容易に溶融し、流動する合成樹脂、例えばポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体との混合物によって形成する。保持部材7は、加熱加圧によって著しく変形することがないように比較的溶融温度の高い樹脂、例えばナイロンやポリエステルによって形成する。保持部材7はまた、ポリエチレンのような溶融温度の低い合成樹脂によるものである場合には、例えば厚さが1〜2mm程度の比較的厚い成形品として用意することが好ましい。パッド部材4は、加圧痕が生じ難いように、好ましくは保形材14の溶融温度と同じ程度であるかそれよりも高い溶融温度を有する合成樹脂の発泡シート、例えば発泡ポリエチレンシートによって形成したり、非溶融性の合成樹脂からなる発泡シートによって形成する。これら諸材料からなるマスク1を得るには、まず外部フィルター12と内部フィルター13と保形材14とになるべきシート状材料を積層したのちに加熱下に加圧して椀状に成形し、続いて所要の周縁形状となるようにトリミングして椀状の成形品M(図4参照)とする。この成形品Mの周縁部に保持部材7とパッド部材4とを重ねてその周縁部を外部シート12の側から加熱しながら加圧する。
【0019】
図4の(a),(b)は、フィルター部材2の周縁部3を加熱加圧する前後の状態を図1のIV−IV線に沿う切断面で示すもので、(a)は加圧前の状態を示し、(b)は加圧後の状態を示している。図の(a)では、外部フィルター12と内部フィルター13と保形材14とが積層状態にあって椀状を呈する成形品Mとして用意されている。成形品Mとパッド部材4とは、周縁部どうしが保持部材7の弧状部分21を挟むようにして重ね合わせられ、上型P1と下型P2とによって矢印A1とA2で示される方向から加圧される。上型P1は、外部フィルター12の溶融温度以下であって保形材14の溶融温度以上の温度、より好ましくは保形材14を溶融させかつ内部フィルター13を軟化または溶融させることができる温度に加熱される。下型P2は、パッド部材4を軟化または溶融させることがない温度に維持される。重なり合う成形品Mと保持部材7とパッド部材4とは、上型P1と下型P2とによって適宜の時間、適宜の圧力で加圧されると、その加圧されている部分において保形材14が溶融して流動し、透孔23を通り抜けてパッド部材4に接触する。保形材14はまた、内部フィルター13に浸透し、好ましい場合には外部フィルター12に達する。その後に上型P1と下型P2とを図の(a)の状態に復帰させ、溶融または軟化した保形材14や内部フィルター13が常温に戻ると、(b)の切断面を有するマスク1となる。図4(b)のマスク1では、保形材14を形成していた合成樹脂が溶融し流動することによって、成形品Mとパッド部材4とが保持部材7を挟んだ状態で一体的に接合する。また、成形品Mにおいては、外部フィルター12と内部フィルター13と保形材14とが一体となる。図示してはいないが、成形品Mとパッド部材4とが保持部材7を介在させることなく直接的に接触する部位においても、溶融し流動する保形材14を介して成形品Mとパッド部材4とが一体的に接合する。
【0020】
保形材14は、このように流動し得るものであるから、上型P1と下型P2とでフィルター部材2の周縁部3の全周をほぼ一様に加圧すると、保持部材7が介在する部位では特に薄くなるように流動する一方、保持部材7が介在していない部位ではそれほどには流動することがなく、接合後の周縁部3をほぼ一様な厚さを有する外観のよい状態に仕上げることが可能になる。なお、外部フィルター12と内部フィルター13とは、内部フィルター13が軟化している状態で強く加圧されると、両フィルター12,13の繊維どうしが機械的に強く絡み合い、互いに一体的に接合した状態になることが可能である。したがって、内部フィルター13は、成形品Mに対する加熱加圧によって必ず溶融しなければならないというものではない。
【0021】
このように成形品Mとパッド部材4とを加熱加圧してマスク1を得る方法では、内部フィルター13として、ポリプロピレンのメルトブローン繊維からなる不織布に代えて、またはその不織布の内面に重ねて、ポリプロピレンの芯とポリエチレンの鞘とを有する複合繊維からなる不織布を使用すると、加熱加圧時における内部フィルター13の強度を芯となるポリプロピレンによって維持しつつ、鞘となるポリエチレンのみを溶融させて内部フィルター13と外部フィルター12との一体化、および内部フィルター13と保形材14との一体化を図ることができる。また、保形材14をポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体との混合物で成形しておけば、保形材14をこの共重合体が溶融する温度からポリエチレンが溶融する温度までの幅広い温度範囲において溶融状態に維持することが可能になり、マスク1を製造するときの加熱加圧条件の選択の幅が広くなる。
【0022】
保形材14として、厚さ方向における糸状部17の寸法が0.5〜2mmの範囲にある図示例のごとき網状のものを使用すると、既述の利点以外にも種々の利点が得られる。その一つは、ひも保持部材7の弧状部分21の厚さが、内部フィルター13や外部フィルター12の厚さに比べてはるかに厚い場合でも、その保持部材7をフィルター部材2の周縁部3に対して一体化し易いことである。保形材14を使用しない場合には、重なり合った内部フィルター13と保持部材7の弧状部分21とパッド部材4との一体化では、例えば内部フィルター13の不織布を溶融して弧状部分21の透孔23ヘ進入させ、パッド部材4に到達させなければならないが、内部フィルター13として使用する不織布の実際の体積は、透孔23の近傍において透孔23に流入してパッド部材4と一体化し得るほどには大きくないのが普通である。その接合を容易にするような坪量の大きい不織布を使用することは、内部フィルター13に一般的に求められる性能から考えて不必要であるばかりでなく、マスク1のコストから考えても好ましくない。しかし、内部フィルター13とは別体で適度な体積を有する網状の保形材14を使用し、このものを溶融して透孔23へ流入させるようにすれば、外部フィルター12と保持部材7と内部フィルター13との接合が容易になる。また、保形材14が内部フィルター13の内面全体を覆うような裏打ち用材料として使用されると、マスク1は押し潰され難いものになる。例えば図1において、フィルター部材2が外部フィルター12と内部フィルター13との不織布のみからなる場合であると、マスク1は矢印R方向から力が加えられたときに潰れ易く、またその力が取り除かれても潰れたままであって容易には元の形状に戻らないことが多い。しかし、内部フィルター13が保形材14で裏打ちされていると、マスク1は潰れ難く、潰れても弾性的に元の形状に戻り易いものになる。保形材14として網状のものを使用して、糸状部17について断面積を一定に保ちながら厚さ方向の寸法をできるだけ大きくすると、保形材14を形成する合成樹脂の量を増やさなくても保形材14を高剛性のものにしてフィルター部材2を潰れ難いものにすることができる。ただし、マスク1において保形材14によるフィルター部材2の裏打ちを必要としない場合には、図示例の網状の保形材14に代えて、それを形成していた合成樹脂材料でフィルター部材2の周縁部3全体に延在する帯状のものを作り、そのものを溶融させてフィルター部材2と保持部材7とパッド部材4とを接合してマスク1を製造することも可能である。
【0023】
内部フィルター13を保形材14で裏打ちしたフィルター部材2を合成樹脂の発泡シートからなる弾性的なパッド部材4と組み合せたマスク1は、保形材14がもたらす剛性と、接顔パッド4がもたらす弾性とによって、図1において矢印R方向からフィルター部材2のふくらみを潰すように押圧された場合や図2において中心線Cを中心に内部フィルター13の内側に向かって矢印P,Q方向、すなわち幅方向ヘ二つに折り重ねられた場合でも、弾性的に短時間で図2の状態ヘ戻ることが可能である。この発明において、保持部材7の弧状部分21は、フィルター部材2の周縁部3を一周する環状のものに代えることも可能である。
【0024】
【発明の効果】
この発明に係る使い捨ての防じんマスクは、フィルター部材の周縁部において、フィルター部材とひも保持部材と接顔パッド部材とを溶融温度が比較的低い合成樹脂材料を溶融させて接合するから、ひも保持部材の厚さが厚い場合でも、その接合のための操作が容易で、しかもその接合によって得られたマスクは、ひも保持部材の取り付け状態が安定するとともにマスク周縁部の外観がよいものになる。また、この発明において、前記合成樹脂材料がフィルター部材を裏打ちする網状の保形材を形成している場合には、その保形材とパッド部材との協働作用によって、潰れ難く、また潰れた場合でも元の形に戻り易いマスクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】使い捨て防じんマスクの外面側斜視図。
【図2】図1のマスクの内面側斜視図。
【図3】マスクを部分的に破断した図1と同様な図面。
【図4】図1のIV−IV線切断面によってマスクの周縁部を接合する工程を示す図。(a)は接合前の状態を示し、(b)は接合後の状態を示す。
【符号の説明】
1 使い捨て防じんマスク
2 フィルター部材
3 周縁部
4 接顔パッド部材
6 締めひも
7 ひも保持部材
14 網状部材(保形材)
16 目
17 糸状部分
21 弧状部分
23 貫通する部位
Claims (8)
- マスク着用者の顔面と向かい合う内面とその反対側の外面とを有する合成繊維で形成されてほぼ椀状を呈する可撓性のフィルター部材と、合成樹脂の発泡体からなり外周縁部と内周縁部とを有し前記外周縁部が前記フィルター部材の周縁部内面に取り付けられて前記周縁部の内側で環状に延びる柔軟にして弾性を有する接顔パッド部材と、前記周縁部の周り方向における少なくとも一部分において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に介在し前記フィルター部材および前記接顔パッド部材よりも高剛性であるひも保持部材と、前記ひも保持部材に取り付けられた可撓性の締めひもとを有する使い捨ての防じんマスクにおいて、
前記ひも保持部材は前記周縁部に沿って延びる弧状部分を有し、前記弧状部分には該弧状部分をその厚さ方向である前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とに向かう方向へ貫通する部位が形成されており、
前記フィルター部材は前記内面が椀状を呈する通気性の網状部材によって裏打ちされていて前記網状部材が前記周縁部にまで広がっており、前記網状部材は該部材の目を形成する糸状部分が前記フィルター部材を形成する合成繊維の溶融温度と同じであるかその温度よりも低い溶融温度を有する合成樹脂によって形成されていて前記内面を裏打ちする部位において前記網状部材の厚さ方向に0.5〜2mmの寸法を有し、前記糸状部分はさらに前記周縁部において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に位置する部位がこれら両部材を一体的に接合するように溶融固化して薄くなっており、前記フィルター部材と前記ひも保持部材との間に位置する部位が前記ひも保持部材の前記貫通する部位を通り抜けて前記ひも保持部材を介して前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とを一体的に接合するように溶融固化して薄くなっていることを特徴とする前記防じんマスク。 - 前記ひも保持部材が前記網状部材の合成樹脂よりも溶融温度の高い合成樹脂で形成されている請求項1記載の防じんマスク。
- 前記接顔パッドが低密度ポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルいずれかの合成樹脂の発泡体を含む請求項1または2記載の防じんマスク。
- 前記フィルター部材の椀状のふくらみを押し潰すような変形および前記フィルター部材の内側に向かって幅方向へ二つに折り重ねるような変形に対して弾性的に元の形状に戻ることが可能に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の防じんマスク。
- マスク着用者の顔面と向かい合う内面とその反対側の外面とを有する合成繊維で形成されてほぼ椀状を呈する可撓性のフィルター部材と、合成樹脂の発泡体からなり外周縁部と内周縁部とを有し前記外周縁部が前記フィルター部材の周縁部内面に取り付けられて前記周縁部の内側で環状に延びる柔軟にして弾性を有する接顔パッド部材と、前記周縁部の周り方向における少なくとも一部分において前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に介在し前記フィルター部材および前記接顔パッド部材よりも高剛性であるひも保持部材と、前記ひも保持部材に取り付けられた可撓性の締めひもとを有する使い捨ての防じんマスクの製造方法において、
前記ひも保持部材は、前記周縁部に沿って延びる弧状部分が設けられて、前記弧状部分には該弧状部分をその厚さ方向である前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とに向かう方向へ貫通する部位が形成されており、
前記フィルター部材は、前記周縁部の内面に前記フィルター部材を形成する合成繊維の溶融温度と同じであるかその温度よりも低い溶融温度を有する厚さ0.5〜2mmの寸法を有する合成樹脂材料を重ねられ、さらに前記合成樹脂材料の下方に前記ひも保持部材の弧状部分と前記接顔パッド部材とを順に重ねられ、しかる後にこれら周縁部と合成樹脂材料とひも保持部材と接顔パッド部材とが前記合成樹脂材料が薄くなるように加熱下に加圧されて、前記合成樹脂材料をして前記フィルター部材と前記接顔パッド部材との間に位置する部位で溶融固化することによりこれら両部材を一体的に接合し、前記フィルター部材と前記ひも保持部材との間に位置する部位では前記ひも保持部材における前記貫通する部位を通り抜けて前記ひも保持部材に達するように溶融固化することにより前記フィルター部材と前記接顔パッド部材とを前記ひも保持部材を介して一体的に接合することを特徴とする前記防じんマスクの製造方法。 - 前記合成樹脂材料は、前記フィルター部材の内面を裏打ちする通気性の網状部材が前記周縁部にまで広がっている部分であって、前記網状部材において網の目を形成している糸状部分が前記網状部材の厚さ方向に0.5〜2mmの寸法を有し、前記網の目の開口面積が1〜25mm2の範囲にある請求項5記載の製造方法。
- 前記フィルター部材は、不織布を複数枚重ね合わせることにより形成されており、前記不織布のうちで前記フィルター部材の内面を形成しているものの合成繊維が前記合成樹脂材料の溶融温度と同じであるかその温度よりも高い溶融温度の合成樹脂を含んでいる請求項5または6記載の製造方法。
- 前記ひも保持部材が前記網状部材の合成樹脂よりも溶融温度の高い合成樹脂で形成されている請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
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