JP2004242571A - 麺類の茹で液用pH調整剤水溶液およびそれを使用した麺類加工食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸、並びに有機酸塩を含有するpH調整剤水溶液である。これによれば、酸度が十分に高く、茹で液に対する使用量が少ないことから、茹で麺製品の風味を損なう心配がない。また、pH緩衝能にも優れるため茹で液のpHの上昇値が小さいために、製品の歩留まりもよく、作業効率にも優れている。さらに、低温下でも長期間結晶が析出しないため、安定性が極めて良い。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、麺類の茹で液のpH管理を容易にする目的で使用するpH調整剤水溶液およびこれを使用して茹でられる麺類加工食品に関する。より詳細には、乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸と、並びに有機酸塩とを含有するpH調整剤水溶液およびこれを使用して茹でられる麺類加工食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の加工技術、保存技術の進歩発展に伴い、麺類においても、多種類のレトルト食品、冷蔵食品、カップ麺、調理麺類等の加工食品、半加工食品が市場に流通している。これら麺類加工食品の加工において、生麺を茹でる茹で水としては、コストの面から主として水道水や井戸水などである。これらの水は常温ではpHが7〜8程度の中性域である。しかし精製水とは異なり、これらの水道水や井戸水にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属が、炭酸塩、あるいは重炭酸塩として含まれている。このため、茹で時に高温となると、次第に炭酸ガスを発生しpHが上昇してしまう。
【0003】
このような弱アルカリ性の水で生麺を茹でると、麺類からの澱粉溶出量が多くなってしまい、麺類表面の肌荒れによる品質の低下が起こり、また必然的に製品歩留まりも低下する。さらに、澱粉の溶出量が多くなってしまうと、茹で液のCOD値、BOD値が高くなるため、廃液処理時の負担が増えることとなる。
【0004】
よって、麺類を茹でる際には、茹で液のpHを管理することは重要であり、一般に茹で工程中において、茹で液のpHは4.5〜5.5の弱酸性域になるように管理されている。この目的に使用するため、pH緩衝作用を有する、酸および塩を含有するpH調整剤組成物が従来より提案されている。例えば、リンゴ酸ナトリウムとリンゴ酸とメタリン酸ナトリウムよりなる食品の品質調整剤およびこれを添加する品質調整法が開示されている(特許文献1および2参照)。また、アジピン酸および有機酸塩を溶解させた茹で液で麺類を茹でる茹で麺類の製造方法が開示されている(特許文献3および4参照)。さらに、常温で粉末状の有機酸(アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸およびコハク酸)と発泡剤とを含有する茹で麺類用pH調整剤組成物が開示されている(特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭54−41341号公報
【特許文献2】
特公昭55−23054号公報
【特許文献3】
特開昭61−216651号公報
【特許文献4】
特公平5−50259号公報
【特許文献5】
特開2000−125791号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の麺類茹で液用pH調整剤組成物には、以下のような種々の問題点がある。
【0007】
一般にpH調整剤組成物は、固体粉末状のものと液状のものに大別されるが、固体粉末状のものは吸湿しやすいため、保存時にすぐに固化してしまうという問題がある。また、茹で液の容量が大きくなると、組成物を茹で液全体に均一に溶解させるまでの時間が長くなるため、作業効率が極めて悪化してしまう。
【0008】
したがって、上記のような固体粉末状のものより、酸および塩を水に溶かした液状のpH調整剤組成物のほうが現場での作業効率に優れているため、一般に広く使用されている。しかし、従来の液状のpH調整剤組成物においては、例えば特開2000−125791号公報のように、酸としてアジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸等を配合したものは、保存時に結晶が析出してしまうという問題があり、再溶解も困難である。また、これら配合物の溶解度の点から、酸および塩類のいずれをも十分な量含有するpH調整剤の調製は困難である。
【0009】
すなわち、酸濃度を高くすると塩類の濃度を低くせざるを得ず、十分なpH緩衝能を得ることができない。一般に茹で工程中においては、麺がpH調整剤組成物を吸収することにより、また差し水により、pH調整剤組成物の濃度は次第に低下していく。ここで、茹で工程当初の酸度が高くても、pH緩衝能が低いと、茹で工程の進行に伴う茹で液のpH上昇を効率よく抑制できない。また一般に、食品製造の分野においては、pH計の破損による製品への悪影響を回避するため、pH計は用いず、専ら作業員によるサンプリングにより茹で液pHをモニターしている。このためpH緩衝能の低いpH調整剤組成物を用いた場合には、高温の茹で液に新たなpH調整剤組成物を頻繁に注ぎ足さなければならず、極めて作業効率が低下するとともに作業員の安全性にも問題が生じる。
【0010】
逆に、塩類の濃度を高くすると酸濃度を低くせざるを得ないため、酸度が低いものになってしまうので、茹で液のpH値を至適値まで下げるためには大量の組成物が必要となり、これまた作業効率を低下させ、経済的でなく、さらに麺類の味に影響が出る。
【0011】
以上のように、麺類の茹で液用のpH調整剤組成物としては、酸度が十分に高く、かつpH緩衝能も十分に高いものが要求されるところ、従来は溶解度の点から、これら2つの要求をバランスよく同時に満たし、かつ結晶の析出する心配のないものは開発されていないのが現状である。
【0012】
このため、十分な酸度及びpH緩衝能をバランスよく有し、結晶の析出の心配のない、麺類の茹で液用pH調整剤組成物の開発が切に望まれている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸と、並びに有機酸塩とを含有するpH調整剤水溶液により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明によれば、これらの酸の優れた酸性および溶解性のバランスにより、酸度および麺類茹で時のpH緩衝能に優れ、また、結晶析出の心配のないpH調整剤水溶液を提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸と、並びに有機酸塩とを含有するpH調整剤水溶液である。
【0015】
従来、麺類の茹で液用pH調整剤組成物に用いられてきた酸、例えば、アジピン酸では、その溶解度が1.5g/水100g(15℃)と低いため、十分な量をpH調整剤組成物中に溶解させることが困難であり、また保存中に結晶が析出してしまう等の問題があった。
【0016】
これに対し、乳酸は常温で液体であるため水に対して極めて溶解性に優れ、結晶化もしにくい。また、乳酸は無味無臭であり食品の味覚を損ないにくく、安全で安定性に優れた製剤を提供することができる。したがって本発明においては、乳酸を酸成分として用いることで上記のような問題を解決することを可能とする。酢酸の添加によっても同様の効果を得ることは可能と考えられるが、酢酸の場合はその酸臭および酸味等の点から、茹で麺類製品の風味に影響を与える場合があり好ましくない。
【0017】
本発明において用いる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸もしくはDL−乳酸またはこれらの混合物のいずれであってもよい。また、混合物の場合にもその混合比は特に限定されない。さらに、前記乳酸は合成品、発酵品のいずれであってもよい。
【0018】
また、本発明のpH調整剤水溶液において、その酸度は好ましくは150〜170g/kg以上であり、より好ましくは155〜165g/kgである。酸度が低すぎると、麺類の茹で液のpHを至適値まで低下させるのに必要な水溶液の量が多くなってしまう。一方、酸度が高すぎると、溶解度の点で、緩衝能に寄与する塩の濃度を上げられなくなってしまう。なお、ここで「酸度」とは、本発明のpH調整剤水溶液1kgを中和するのに要する水酸化ナトリウムのグラム数をいう。
【0019】
ここで、酸成分として乳酸のみを用いた場合でも、酸度150g/kg以上の水溶液を得ることは可能である。すなわち、乳酸の含有量を34質量%以上にすれば酸度は150g/kg以上になる。しかし、乳酸の含有量が多くなる程、有機酸塩の含有量を上げられなくなってしまう。したがって、乳酸の含有量を抑え、乳酸よりも強い酸をさらに添加することにより、不足する酸度を補うことができる。
【0020】
上記の目的のため、本発明においては、乳酸に加えて、酸成分としてリン酸および/またはフィチン酸をさらに添加する。これらの酸は、いずれも常温で液体であり、水に対する溶解性に極めて優れ、かつ乳酸よりも少ない量で酸度を上げることができる。
【0021】
以上のように、本発明の水溶液中の酸成分はいずれも常温で液体であるため結晶化しにくい。したがって、pH緩衝能を高くするための塩成分である有機酸塩の含有量を従来よりも増加させることが可能となる。その結果、酸度が十分に高く、pH緩衝能も優れるpH調整剤水溶液を得ることが可能となる。
【0022】
リン酸およびフィチン酸は1種類のみ使用することも、また両方とも使用することもできる。ここで、フィチン酸を含有する場合には以下のような効果も現れる。すなわち、フィチン酸はイノシトールの6つの水酸基がリン酸でエステル結合された構造によりキレート作用を有するため、茹で液中に存在する有害な金属イオンを捕捉する効果も併せ持つ。例えば、茹で液中に鉄イオンが存在すると、麺からの澱粉の茹で液への溶出を促進するだけでなく、鉄イオンが澱粉と結合し酸化すると茹で麺が変色してしまうため好ましくない。ここでフィチン酸を含有する本発明のpH調整剤水溶液を使用することにより、この有害な鉄イオンを捕捉することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明においては、優れたpH緩衝能を得るため、有機酸塩を含有する。有機酸塩の種類としては特に限定されるものではなく、種々の塩が適宜用いられうる。好ましくは、クエン酸塩、乳酸塩またはリン酸塩(ピロリン酸塩およびメタリン酸塩も含む)が、より好ましくは、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素二カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、乳酸ナトリウムまたは乳酸カリウムが、特に好ましくは、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムが単独または併用して用いられうる。塩成分としてこれらの塩を用いると緩衝能に優れるためである。
【0024】
ここで、本発明のpH調整剤水溶液は乳酸を含有するものであるが、pH調整剤水溶液中、その含有量は好ましくは5〜30質量%、より好ましくは8〜27質量%、特に好ましくは10〜25質量%である。乳酸の含有量が少なすぎると、強酸であるリン酸またはフィチン酸の量が増加するため、水溶液のpHが極端に低下し、取扱いが危険になる。一方、乳酸の含有量が多すぎると、塩成分である有機酸塩の含有量を多くすることができない。
【0025】
また、本発明において、リン酸またはフィチン酸のpH調整剤水溶液中の含有量は、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、特に好ましくは4〜12質量%である。リン酸またはフィチン酸の含有量が少なすぎると、酸度を十分に高くすることができない。一方、リン酸またはフィチン酸の含有量が多すぎると、pH調整剤水溶液の原液のpHが極端に低下し、取扱いが危険になる場合もある。
【0026】
また、本発明において、有機酸塩のpH調整剤水溶液中の含有量は、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。有機酸塩の含有量が少なすぎると、緩衝能を十分に高くすることができない。一方、有機酸塩の含有量が多すぎると、溶解させることが困難であり、溶解させた場合にも、保存時には結晶が析出するおそれがある。
【0027】
以上のように本発明においては、酸成分として、乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸を含有することにより、また、塩成分として有機酸塩を含有することにより、酸度およびpH緩衝能のバランスに優れ、保存時の結晶析出の心配のないpH調整剤水溶液を得ることができる。しかし、これらの特性を損なわない限りにおいては、これら以外の酸成分および塩成分を含有することを妨げるものではない。
【0028】
さらに、本発明のpH調整剤水溶液において、水の含有量は40〜60質量%であることが好ましく、45〜55質量%であることがより好ましい。水の含有量が40質量%未満では保存時に結晶が析出しやすくなり、60質量%超では有効成分濃度(酸濃度および塩濃度)が低くなり、茹で液に対する使用量が多くなる結果、茹で麺製品の風味に悪影響を及ぼすおそれがあるためである。
【0029】
本発明のpH調整剤水溶液は、上記の成分に加え、さらに種々の添加剤、例えば強化剤(乳酸鉄、乳酸カルシウム等)、調味料(アラニン、グリシン等)等を含有していてもよい。
【0030】
本発明の第二は、上記のpH調整剤水溶液を0.02〜0.2質量%含有する茹で液を用いて茹でられたことを特徴とする麺類加工食品である。
【0031】
本発明において、「麺類加工食品」とは、穀類食品(そば、米、小麦、大麦、稗、粟等)を1次加工またはさらに2次加工した食品をいう。1次加工食品としては、特に限定するものではないが、小麦粉、そば粉等の穀粉に、他の原料、例えば食塩、加工澱粉等を混合して製麺した麺を指し、例えば、生うどん、生そば、中華麺、パスタ、乾麺、インスタントラーメン等がある。2次加工食品としては、1次加工食品を調味するか否かにかかわらず、再調理した食品、例えば、茹で麺、蒸し麺、焼そば、うどん、そば、スパゲティー、インスタントラーメン、麺類加工食品に具材等を配した形でコンビニエンスストア等で販売される小分けそば、小分けうどん、カップうどん、鍋焼きうどん等の弁当類がある。その他麺類加工食品であれば、家庭で調理されるものを始め、その場で食べることを目的とする最終商品や、食べる際に調理の必要な半製品等、常温、冷蔵、冷凍、氷温等の方法で市場に流通している各種の商品を含むものとする。
【0032】
本発明のpH調整剤水溶液を使用した茹で液を用いることにより、茹でられた麺類加工食品に現れる効果としては、次のようなものが考えられる。
【0033】
まず、本発明のpH調整剤水溶液によれば、その本来の目的であるpH調整作用、すなわち、麺類を茹でる際の炭酸ガスの発生による茹で液のpH上昇を抑制する作用に優れるため、麺類からの澱粉の溶出が防止できる。したがって、麺類表面の肌荒れによる品質の低下が防止でき、茹で麺の製品歩留まりも当然に向上する。さらには、茹で液のCOD値、BOD値の上昇も防止できるため、廃液処理時の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0034】
また、本発明のpH調整剤水溶液は、酢酸のような酸味・酸臭の強い酸を使用しておらず、また、少量の使用でも優れたpH調整作用を発揮できることから大量に使用する必要がないため、茹で麺製品の風味を損なう心配がない。
【0035】
さらには、本発明のpH調整剤水溶液において、酸成分としてフィチン酸を用いる場合には、フィチン酸の有するリン酸エステルに由来するキレート作用により、茹で液中に存在する鉄イオン等の有害な金属イオンを捕捉することが可能となるため、これら金属イオンによる澱粉の茹で液への溶出を効果的に防止できることに加え、金属イオンが澱粉と結合し酸化することで生じる茹で麺の変色も併せて防止することができる。
【0036】
本発明のpH調整剤水溶液は、使用の際には、所期の目的に鑑み、所望の濃度が得られるように適宜茹で液に添加されうる。麺類を茹でる際には、茹で液のpHは好ましくは4.5〜5.5である。pHがこの範囲外では、澱粉の溶出を効果的に防止することができない。したがって、pHをこの範囲に調整するために、本発明のpH調整剤水溶液を好ましくは0.02〜0.2質量%、より好ましくは0.05〜0.1質量%含有するように茹で液に添加すればよい。
【0037】
本発明のpH調整剤水溶液を使用して麺類を茹でる際には、その他の条件、例えば、茹で条件(茹で液の量、茹で時間等)、使用する茹で釜等は、本発明の趣旨を損なわない範囲で従来公知のものから適宜選択して用いられうる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
(1)pH調整剤水溶液の調製
実施例1〜10
乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)、リン酸(和光純薬工業株式会社製)、フィチン酸(築野食品工業株式会社製)、クエン酸三ナトリウム(昭和化工株式会社製)および乳酸ナトリウム(株式会社武蔵野化学研究所製)を使用して、表1に示す配合比になるように水に溶解し、実施例1〜10のpH調整剤水溶液を調製した。溶解の際には、まず水に乳酸を添加し、次いでリン酸またはフィチン酸を添加し、最後にクエン酸三ナトリウムを添加した。
【0040】
次いで、各pH調整剤水溶液のナトリウム濃度を計算により算出した。
【0041】
さらに、各製剤2gをビーカーに取り、精製水100gを加え、10分間煮沸した。これにフェノールフタレイン指示薬を数滴添加し、1mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定し、酸度を測定した。
【0042】
ここで「酸度」とは、前述したように、本発明のpH調整剤水溶液1kgを中和するのに要する水酸化ナトリウムのグラム数をいう。
【0043】
【表1】
【0044】
比較例1〜9
酸成分としてリン酸およびフィチン酸を使用せず、クエン酸(昭和化工株式会社製)および/またはリンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)を使用し、また、ナトリウム塩としてクエン酸三ナトリウムおよび乳酸ナトリウムの他にメタリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用して、表2に示す配合比になるように水に溶解し、比較例1〜9のpH調整剤水溶液を調製した。
【0045】
【表2】
【0046】
(2)生麺(生うどん)の作製
中力粉(日清製粉株式会社製)20kg、食塩(塩事業センター製)640gおよび水7kgを混合し、混合機を用いて10分間練合して麺生地を作製した。
この麺生地を圧延機により圧延して麺帯を作製し、切刃10番にて麺線を切り出した。
【0047】
(3)pH調整剤水溶液のpH調整特性
初期pHが4.5になるように、水10Lに対して、(1)で調製した各pH調整剤水溶液を投入した。この時に要したpH調整剤水溶液の投入量を表3に示す。
【0048】
次いで、初期pHが4.5である水10Lに対して、(2)で作製した生麺を1kg投入し、沸騰した状態で10分間茹でた。茹で麺と茹で液とを分離した直後に茹で液に水を添加して容量を10Lに合わせ、攪拌後、pHを測定した。測定したpH値を表3に示す。
【0049】
(4)各pH調整剤水溶液の安定性
各pH調整剤水溶液を、結晶が完全に溶解した状態で、100gずつ密封したガラス容器(150mL)に入れ、6ヶ月間、実験室において室温(25℃)保存、および冷蔵庫において冷蔵(5℃)保存し、結晶の析出を確認した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
(5)結果
表3の実施例1〜10に示すように、本発明のpH調整剤水溶液の場合、茹で液の初期pHを4.5にするのに必要な投入量は、水10Lに対して約8g、すなわち0.08%程度であり、少量でpHを低下させることができる。また、本実施例において、生麺を茹でた後の茹で液のpHは、いずれも4.8以下になっており、pH緩衝能にも優れることがわかる。一般に、pHの上昇値と茹で時間(茹で回数)は比例するため、本発明によればpH調整剤水溶液を再度注ぎ足すことなく、新しい生麺を繰り返し茹でることが可能となる。さらに、本発明のpH調整剤水溶液はいずれも、5℃という低温下での6ヶ月間の保存後においても、全く結晶が析出することが無く、極めて安定性に優れる。
【0052】
一方、比較例1〜5においては水含有量は60%以上と比較的高いにもかかわらず、非結晶性のリン酸やフィチン酸の替わりに結晶性のクエン酸を乳酸と併用しているため、溶解していた結晶が保存中に析出してしまう。また、溶解度の問題から結晶(クエン酸とクエン酸三ナトリウム)の含有量に上限が存在するため、十分な酸度が得られないことにより初期投入量が増加してしまう。また、pH緩衝能も低いため、麺を茹でた後の茹で液のpHの上昇を防止することができない。
【0053】
比較例6〜8は、固体の酸および塩の含有量がそれほど多くないため結晶の析出については問題ないが、使用する酸および塩の含有量のバランスが悪いために、十分な酸度およびpH緩衝能を同時には達成できていない。
【0054】
すなわち、比較例6および7においては、酸成分の含有量が多いために高い酸度が得られており、初期の投入量は少なくて済む。これに対し、塩の含有量が少ないために十分なナトリウム濃度が得られず、pH緩衝能が悪いことから、麺茹で後の茹で液のpHは5.80および5.85と大幅に上昇している。その結果、上昇したpHを下げるために水溶液を頻繁に投入しなければならなくなり、合計の使用量は多くなってしまうと考えられる。
【0055】
また、比較例8では、塩の含有量が多いため十分高いナトリウム濃度が得られることから、麺茹で後の茹で液のpHは4.9とpH緩衝能は比較的高い。しかし逆に、酸の含有量が少なく酸度は低いため、初期投入量はかなり多くなってしまう。
【0056】
比較例9は、Na濃度が5質量%以上でありpH緩衝能は比較的優れている。しかし、酸成分として固体のクエン酸やリンゴ酸を用いているため、溶解度の点からこれらの含有量を多くできず、酸度は十分に高いとは言えないため、初期投入量が本実施例の水溶液に比べて多い。また、酸成分のみでなく、塩成分である乳酸ナトリウムも常温で固体であり、結晶の総量が多いため、保存時に結晶が析出し安定性に欠ける。
【0057】
【発明の効果】
本発明の麺類の茹で液用pH調整剤水溶液は乳酸に加え、これよりも強酸であるリン酸および/またはフィチン酸を用い、塩成分として有機酸塩を用いることにより、十分な酸度を得ることができるため、従来のものに比べて、茹で液に対する使用量が少量で済むことから、茹で麺製品の風味を損なう心配がない。また、本発明のpH調整剤水溶液によれば、優れたpH緩衝能を達成できる。よって、茹で液のpH上昇を効率よく抑制できるために、従来と比較して製品の歩留まりもよく、投入回数も少なくて済むことから作業効率にも優れている。さらには、本発明のpH調整剤水溶液は結晶の含有量が少ないため、低温下でも長期間にわたって結晶が析出せず、保存時の安定性が極めて良い。
Claims (5)
- 乳酸と、リン酸および/またはフィチン酸と、並びに有機酸塩とを含有するpH調整剤水溶液。
- 前記有機酸塩は、クエン酸塩、乳酸塩またはリン酸塩である、請求項1に記載のpH調整剤水溶液。
- 前記有機酸塩は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素二カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、乳酸ナトリウムおよび乳酸カリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のpH調整剤水溶液。
- 前記乳酸の含有量が5〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のpH調整剤水溶液。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のpH調整剤水溶液を0.02〜0.2質量%含有する茹で液を用いて茹でられたことを特徴とする麺類加工食品。
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