JP2004241234A - 光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池 - Google Patents
光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高い光電変換効率と低コスト製造の可能性を持つグレッツエル・セルではあるが、上記半導体層は結晶性酸化チタンゾルを導電性基板(導電性ガラス基板)上に塗布後450〜600℃程度に加熱して焼結することにより作製されており、この加熱工程を経ることにより透明電極層の電気抵抗が大きくなってしまうという問題点がある。
【解決手段】透明基板4に透明電極層5を担持させ、この透明電極層5の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層6を形成し、そこに色素9を吸着させてなる光電極2であって、透明電極層5の表面が正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多い光電極。
【選択図】 図1
【解決手段】透明基板4に透明電極層5を担持させ、この透明電極層5の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層6を形成し、そこに色素9を吸着させてなる光電極2であって、透明電極層5の表面が正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多い光電極。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素が吸着された半導体電極層を有する光電極を備えた色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境汚染のないクリーンなエネルギーの一つとして、太陽光のエネルギーを電気エネルギーとして取り出す太陽電池が開発されている。現在実用化されている太陽電池は、シリコン結晶系(単結晶系、多結晶系)、または非晶質系シリコン半導体を用いてガラス基板上にp型半導体とn型半導体を形成したpn接合型であり、変換効率は高い(11〜23%程度)が、製造コストが高いので、限られた用途にしか適用されていないのが実情である。また1991年に発表された色素増感型太陽電池(グレッツエル・セル)は、透明基板とそれに担持される透明電極層とからなる導電性基板(導電性ガラス基板)の表面(透明電極層上)に酸化チタンの微粒子からなる多孔質半導体層を形成しそこにルテニウム色素を吸着させた光電極と、透明導電膜の表面に白金をコーティングした対極とを酸化還元系を含む電解質溶液を介して向い合せて構成される。この色素増感型太陽電池は、化合物半導体を用いた湿式太陽電池と同じ動作原理を有するが、半導体層が多孔質化され、内部実表面積が広いため色素を多量に吸着できる。その結果、可視光線のほぼ全波長領域の光を電気に変換することができ、10%以上の光電変換効率が得られる。また、安価な酸化チタンを高純度に精製することなく使用できることや酸化チタンの焼結を大気中で行なうことができること等の理由から低コスト化が可能であるという利点があり、その実用化が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように高い光電変換効率と低コスト製造の可能性を持つグレッツエル・セルではあるが、上記半導体層は酸化チタンゾルを導電性基板(導電性ガラス基板)上に塗布後450〜600℃程度に加熱して焼結することにより作製されており、この加熱工程を経ることにより透明電極層の電気抵抗が大きくなってしまうという問題点がある。透明電極層は光を透過しかつ集電体として機能するために高い光透過性と低い表面抵抗を有することが求められる。
【0004】
従って本発明の目的は、導電性基板上に塗布した酸化チタンゾルを焼結するための加熱工程を経ても電気抵抗の増大を抑制できる光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は、透明電極層は同じ組成系の材料であってもその配向面の相違によって加熱工程を経た後の電気抵抗の変化量が異なることを見出し本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本願の第一の発明は、透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多いことを特徴とする光電極である。
【0007】
本願の第二の発明は、透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多い光電極と、電解質を介して前記半導体層に対向する対極とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる色素増感型太陽電池の断面図である。図1に示す色素増感型太陽電池1は、絶縁性を有する透明基板4の表面に透明な電極層5を有する導電性基板3と電極層5上に金属酸化物からなる半導体層6を有する半導体電極2と、透明基板11の表面に電極層12を有する対極10と、半導体層6と電極層12との間に封入され、両端部がシール材(不図示)で封止された電解質13とを含み、電極層5と電極層12は起電力を取り出し外部回路(不図示)に供給するために電気的に接続されている。半導体層6は、ペルオキソ基を有する金属酸化物をふくむ溶液から作製した下地層7と、増感色素9が吸着された金属酸化物粒子からなる多孔質金属酸化物層8を含む。この色素増感型太陽電池1によれば、透明基板4から太陽光を入射すると、半導体層6の表面に吸着された増感色素9が励起され、それにより発生した電子が電極層5を通って、外部回路(不図示)に送り出され、対極10の電極層12に移動する。電極層12に達した電子は、電解質13の酸化還元系を還元する。一方、半導体層6に電子を注入した増感色素9は、酸化された状態となるが、電解質13の酸化還元系により還元され、元の状態に戻る。このようにして、色素増感型太陽電池1内を電子が流れることにより、起電力が発生し、光電池として機能する。この色素増感型太陽電池1の各部は、例えば次のように構成される。
【0009】
導電性基板3は、絶縁性をもつ透明基板4とその表面に支持された透明な電極層5で形成され、光が入射する側の基板として機能するために、可視領域乃至近赤外領域に波長をもつ光の透過率が高い(約50%以上)ことが好ましい。透明基板4を形成する材料としては、価格及び強度の点から、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの透明なガラスや、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の透明なエンジニアリングプラスチックを使用できる。透明電極層5は光を透過しかつ集電体として機能するために高い光透過性と低い表面抵抗を有することが必要であり、具体的な表面抵抗としては、30Ω/□以下が好ましく10Ω/□以下がより好ましい。電極層5の厚さは、均一な厚さを保ちかつ光の透過率を低下させないために、0.1〜10μmの範囲が好ましい。電極層5を形成する材料としては、例えば酸化錫(TCO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)等を使用できる。これらの材料の正方晶粒子の(211)面は酸化や水分子の吸着を起こし難いために加熱による電気抵抗の増大を抑制できるものと考えられる。
【0010】
半導体層6は、電子キャリアの電子授受が可能な特性を具備し光電極として機能するために、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物で形成される。これらの内では、特に、半導体特性、耐食性、安定性の点で優れた酸化チタンが好適で、特にアナターゼ型結晶構造を有するものがよい。下地層7は、ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液を塗布焼成して得られる緻密層から形成される。ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液は、ペルオキソ基の持つ強力な酸化力で導電性基板3を酸化する。このため下地層7と導電性基板3との密着力が強くなる。一方、下地層7は焼成時に結晶化される。その際に界面近傍の金属酸化物層8の酸化チタンを伴って粒子成長が起こり、界面における密着力が強くなる。つまり、下地層7は電極層5と金属酸化物層8とを強固に結びつける接着層として有効に機能し、両者の密着性を高めることができる。下地層7を構成する金属酸化物粒子の粒径は1〜30nmの範囲が好ましい。下地層7の膜厚は、薄いと均一な皮膜を形成できず、厚いと変換効率が低下するため0.01〜1μmが好ましい。ただし、下地層7は任意の構成要件である。
【0011】
下地層7は、ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液から作製でき、酸化チタン粒子を使用した場合、例えば次の手順に従って形成することが好ましい。
(1)ペルオキソ基を有する酸化チタンを含む溶液、例えばペルオキソチタン酸を準備する。ペルオキソチタン酸(過酸化チタン)は、含水チタン酸ゲル(またはゾル)あるいはチタン化合物の水溶液に過酸化水素を添加して、含水チタン酸を溶解して調製される。チタン化合物としては、ハロゲン化チタン、硫酸チタン等のチタン塩、テトラアルコキシチタン等のチタンアルコキシド、水素化チタン等を使用できる。
(2)上記ゾル溶液を、50〜150℃に加熱した透明電極層の表面にスプレー法、スピンコート法、ドクターブレード法、ディップ法等の公知の手法により塗布する。
(3)蒸留水にジルコニアビーズ、ポリエチレングリコール(PEG)、硝酸、酸化チタン粒子とを加えて攪拌することによりスラリーを作製する。
(4)上記スラリーを(2)の基板の表面に所定の厚さに塗布後、室温〜100℃以下の温度で乾燥する。
(5)乾燥後は、加熱炉に装入して、450〜600℃の温度で10分〜1時間焼成する。
【0012】
金属酸化物層8は、下地層7と同様に、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物で形成される。これらの内では、特に、半導体特性、耐食性、安定性の点で優れた酸化チタンが好適で、特にアナターゼ型結晶構造を有するものがよい。この金属酸化物粒子の粒径は10〜100nmの範囲が好ましい。多孔質金属酸化物層8の膜厚は、1〜50μmの範囲がよい。
【0013】
金属酸化物層8に吸着される増感色素9としては、可視光領域及び/又は近赤外光領域に吸収をもち、半導体を増感させる機能を有する色素、例えば金属錯体あるいは有機色素が使用できる。金属錯体としては、ルテニウム、オスミニウム、鉄、亜鉛などの金属錯体や銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル誘導体、ヘミンが例示される。これらのうちでは、ルテニウム錯体が、増感効果、耐久性の点で優れている。特に800nmまでの光を吸収するルテニウムビピリジン錯体(N719色素)と900nmまでの光を吸収するルテニウムターピリジン錯体(ブラック・ダイ色素)が好ましい。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、クマリン系色素が有効で、特に分子中にカルボキシル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基等の官能基を有するものが、吸着性の点で好ましい。
【0014】
増感色素9の吸着量は、金属酸化物層8の単位面積(1×10−4m2)当たり10−7mol以上が好ましい。金属酸化物層8への増感色素9の吸着量が少ないと十分な増感効果が得られないためである。金属酸化物層8への増感色素9の吸着は、増感色素9を溶媒(水、アルコール、トルエン等)に溶かした溶液に金属酸化物層8を含む電極2を浸漬させることによって行えばよく、特に浸漬中に加熱還流をすることにより、効率よく吸着することができる。
【0015】
電解質13は、増感色素の酸化体に電子を補充する機能を担うもので、通常は、酸化還元系のイオンが溶解した溶液、例えば電気化学的に活性な塩と酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキノン、ヨウ素、ヨウ化カリウム、臭素、臭化カリウム等が挙げられる。これらの電解質は、必要に応じ溶媒を用いて電解質溶液とすることができる。溶媒としては、増感色素が金属酸化物層から脱着して溶解しないものが望ましく、水、アルコール類、オリゴエーテル類、カーボネート類、リン酸エステル類、アセトニトリル等を用い得る。この他、低分子または高分子のゲル化剤やP型半導体(CuI)を添加して固体化した電解質を使用してもよく、固体電解質は、電解質溶液よりも光電変換効率はやや低下するが、封止を容易に行えるという利点を有する。
【0016】
対極10は、透明基板4と同様の材料で形成される透明基板11の上に良好な反射性と良好な耐食性を有する電極層12を形成することにより作製される。太陽電池の使用条件(対極側から光が入射しない場合)によっては、透明基板11の代わりにセラミックなどの不透明な基板を使用することができる。電極層12は、集電体として機能するために低い表面抵抗を有することが必要であり、具体的な表面抵抗としては、30Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。電極層12の厚さは、均一な厚さを保ちかつ低い表面抵抗を保つために、1nm〜1μmの範囲が好ましい。電極層12は、例えば白金、金、銀、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、タンタル、タングステン及びこれらの合金(パラジウム−白金、白金−金−パラジウム等)を使用して形成することができる。これらの内では、白金及びその合金は、電解質の酸化体に電子を与える触媒作用をもち、太陽電池の正極として効率よく作用するので好適である。特に、電極層12は、ガラス基板上にスパッタリングにて白金を担持して作製することが望ましい。
【0017】
上記の構造を有する色素増感型太陽電池1は、例えば次の手順で作製することができる。所定温度に加熱した透明導電性基板3の表面に、ペルオキソチタン酸を含む溶液を塗布、乾燥することにより、緻密な接着層7を形成する。その表面に上記スラリーを塗布後450〜600℃程度に加熱して焼成して多孔質金属酸化物層8を形成し、ついで増感色素9を吸着させることにより、半導体電極2(光電極)を作製する。半導体電極2と対極10との間に電解質13を封入することにより、色素増感型太陽電池1が作製される。
【0018】
【実施例】
透明基板上に透明電極層としてFTO膜を形成して次の3種類の導電性基板を準備した。
〔導電性基板1〕
主な配向面:(200)
FTO膜:厚さ0.88μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
〔導電性基板2〕
主な配向面:(211)
FTO膜:厚さ0.58μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
〔導電性基板3〕
主な配向面:(200)
FTO膜:厚さ0.44μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
【0019】
上記の導電性基板についてX線回折装置(リガク製RINT2500)による構造解析をおこなった。そのXRDパターンを図2に示す。図2より導電性基板2のみが(211)面の配向が強いことが分かる。導電性基板1と導電性基板3は(200)面の配向が強い。
【0020】
次に導電性基板を大気中で室温から15℃/minで昇温して550℃で30分間保持し2℃/minで放熱した。その前後でX線回折を測定し強度を比較した。その結果を表2に示す。PDFカード値は粉末で配向性が無いときの基準値である。表1に示すとおり(110)面は表面におけるスズ原子の割合が多く、逆に(211)面は少ない。抵抗の上昇は表面酸化によるものが大きいため、表面スズ原子の少ない(211)配向の割合の多い導電性基板が耐熱性に優れているものと考えられる。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
なお、いずれの導電性基板においても加熱によるXRDパターンの変化はほとんど見られず、加熱によって配向面に変化がないことが分かる。
【0024】
次に加熱温度とシート抵抗の関係を測定した結果を図3に示す。測定は4端子法によりJIS K−6911に定められる方法に従った。導電性基板2のシート抵抗は全く上昇が認められない。導電性基板3は加熱によるシート抵抗の上昇が大きく600℃では272Ω/□まで上昇した。導電性基板1については若干の上昇が認められる。
【0025】
次に加熱温度と光透過率の関係を測定した結果を図4に示す。測定には分光光度計(日本分光製V−570)を使用した。いずれの導電性基板においても加熱による透過率の変化はほとんど見られなかった。加熱による構造的(XRD)光学的(透過率)変化がないため、抵抗の上昇はこれらの変化ではなく、表面酸化等が原因であると考えられる。
【0026】
各導電性基板の性能は次のように色素増感型太陽電池を作製して変換効率を測定することにより行った。チタンアルコキシド(チタニウムテトライソプロポキシド)のイソプロピルアルコール溶液を加水分解し、非晶質酸化チタンゲルを沈殿させた。沈殿物を濾別し、乾燥後、過酸化水素水を加えて攪拌することによりペルオキソチタン酸溶液を作製した。蒸留水8mlにジルコニアビーズ30×10−3kg、結晶性酸化チタン(P25:日本アエロジル社製)6g、分子量2万のポリエチレングリコール2×10−3kg、硝酸0.6mlを加えてハイブリッドミキサー(キーエンス社製HM−500)にて攪拌することによりスラリーを作製した。次に、各導電性基板を100℃に加熱した後FTO膜の表面に上記ペルオキソチタン酸溶液をスプレーにより塗布し、乾燥させることにより、厚さ0.2μm程度の接着層を形成した。その表面に上記スラリーを均一に塗布後乾燥し、450又は550℃の温度で30分間焼成して厚さ20μm程度の多孔質金属酸化物層を形成した。次いでこの基板を、増感色素{N719[Ru(4,4−ジカルボキシ−2,2−ビピリジン(TBA))2(NCS)2]}を分散させたエタノール溶液中に浸漬し、80℃の温度で加熱還流することにより、金属酸化物層に増感色素を吸着させて、半導体電極を作製した。透明基板(5Ω/□、セントラル硝子社製)上に白金を厚さ60nmまでスパッタリングし、対極を作製した。半導体電極と対極との間に電解質(ヨウ素、ヨウ化リチウム、イミダゾリウム塩、t−ブチルピリジンをメトキシアセトニトリルに溶解)を封入することにより色素増感型太陽電池を作製した。
【0027】
この半導体電極の断面の透過型電子顕微鏡像から接着層は粒径が10nm程の結晶性酸化チタンの緻密層であり、多孔質金属酸化物層は粒径が30nm程のP25の酸化チタン多孔質層であることが確認された。また、X線回折にて分析したところ緻密層はアナターゼ型でありP25は2割程度ルチル型を含むことが確認された。
【0028】
ソーラーシミュレーターにより擬似太陽光(AM1.5、1kW/m2)を照射して光電変換効率を測定した。変換効率の測定結果を表3に示す。透過率が高く、加熱による抵抗の上昇のない導電性基板2が最も変換効率が高くなった。
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】
以上に記述の如く、本発明によれば、導電性基板上に塗布した酸化チタンゾルを焼結するための加熱工程を経ても電気抵抗の増大を抑制できる光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係わる色素増感型太陽電池の断面図である。
【図2】透明基板上の透明電極層のX線回折装置によるXRDパターンである。
【図3】透明電極層の加熱温度とシート抵抗の関係を示す図である。
【図4】透明電極層の加熱温度と光透過率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1:色素増感型太陽電池
2:半導体電極
3:導電性基板
4:透明基板
5:電極層
6:半導体層
7:接着層
8:金属酸化物層
9:増感色素
10:対極
11:透明基板
12:電極層
13:電解質
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素が吸着された半導体電極層を有する光電極を備えた色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境汚染のないクリーンなエネルギーの一つとして、太陽光のエネルギーを電気エネルギーとして取り出す太陽電池が開発されている。現在実用化されている太陽電池は、シリコン結晶系(単結晶系、多結晶系)、または非晶質系シリコン半導体を用いてガラス基板上にp型半導体とn型半導体を形成したpn接合型であり、変換効率は高い(11〜23%程度)が、製造コストが高いので、限られた用途にしか適用されていないのが実情である。また1991年に発表された色素増感型太陽電池(グレッツエル・セル)は、透明基板とそれに担持される透明電極層とからなる導電性基板(導電性ガラス基板)の表面(透明電極層上)に酸化チタンの微粒子からなる多孔質半導体層を形成しそこにルテニウム色素を吸着させた光電極と、透明導電膜の表面に白金をコーティングした対極とを酸化還元系を含む電解質溶液を介して向い合せて構成される。この色素増感型太陽電池は、化合物半導体を用いた湿式太陽電池と同じ動作原理を有するが、半導体層が多孔質化され、内部実表面積が広いため色素を多量に吸着できる。その結果、可視光線のほぼ全波長領域の光を電気に変換することができ、10%以上の光電変換効率が得られる。また、安価な酸化チタンを高純度に精製することなく使用できることや酸化チタンの焼結を大気中で行なうことができること等の理由から低コスト化が可能であるという利点があり、その実用化が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように高い光電変換効率と低コスト製造の可能性を持つグレッツエル・セルではあるが、上記半導体層は酸化チタンゾルを導電性基板(導電性ガラス基板)上に塗布後450〜600℃程度に加熱して焼結することにより作製されており、この加熱工程を経ることにより透明電極層の電気抵抗が大きくなってしまうという問題点がある。透明電極層は光を透過しかつ集電体として機能するために高い光透過性と低い表面抵抗を有することが求められる。
【0004】
従って本発明の目的は、導電性基板上に塗布した酸化チタンゾルを焼結するための加熱工程を経ても電気抵抗の増大を抑制できる光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は、透明電極層は同じ組成系の材料であってもその配向面の相違によって加熱工程を経た後の電気抵抗の変化量が異なることを見出し本発明に想到した。
【0006】
すなわち、本願の第一の発明は、透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多いことを特徴とする光電極である。
【0007】
本願の第二の発明は、透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多い光電極と、電解質を介して前記半導体層に対向する対極とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる色素増感型太陽電池の断面図である。図1に示す色素増感型太陽電池1は、絶縁性を有する透明基板4の表面に透明な電極層5を有する導電性基板3と電極層5上に金属酸化物からなる半導体層6を有する半導体電極2と、透明基板11の表面に電極層12を有する対極10と、半導体層6と電極層12との間に封入され、両端部がシール材(不図示)で封止された電解質13とを含み、電極層5と電極層12は起電力を取り出し外部回路(不図示)に供給するために電気的に接続されている。半導体層6は、ペルオキソ基を有する金属酸化物をふくむ溶液から作製した下地層7と、増感色素9が吸着された金属酸化物粒子からなる多孔質金属酸化物層8を含む。この色素増感型太陽電池1によれば、透明基板4から太陽光を入射すると、半導体層6の表面に吸着された増感色素9が励起され、それにより発生した電子が電極層5を通って、外部回路(不図示)に送り出され、対極10の電極層12に移動する。電極層12に達した電子は、電解質13の酸化還元系を還元する。一方、半導体層6に電子を注入した増感色素9は、酸化された状態となるが、電解質13の酸化還元系により還元され、元の状態に戻る。このようにして、色素増感型太陽電池1内を電子が流れることにより、起電力が発生し、光電池として機能する。この色素増感型太陽電池1の各部は、例えば次のように構成される。
【0009】
導電性基板3は、絶縁性をもつ透明基板4とその表面に支持された透明な電極層5で形成され、光が入射する側の基板として機能するために、可視領域乃至近赤外領域に波長をもつ光の透過率が高い(約50%以上)ことが好ましい。透明基板4を形成する材料としては、価格及び強度の点から、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの透明なガラスや、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の透明なエンジニアリングプラスチックを使用できる。透明電極層5は光を透過しかつ集電体として機能するために高い光透過性と低い表面抵抗を有することが必要であり、具体的な表面抵抗としては、30Ω/□以下が好ましく10Ω/□以下がより好ましい。電極層5の厚さは、均一な厚さを保ちかつ光の透過率を低下させないために、0.1〜10μmの範囲が好ましい。電極層5を形成する材料としては、例えば酸化錫(TCO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)等を使用できる。これらの材料の正方晶粒子の(211)面は酸化や水分子の吸着を起こし難いために加熱による電気抵抗の増大を抑制できるものと考えられる。
【0010】
半導体層6は、電子キャリアの電子授受が可能な特性を具備し光電極として機能するために、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物で形成される。これらの内では、特に、半導体特性、耐食性、安定性の点で優れた酸化チタンが好適で、特にアナターゼ型結晶構造を有するものがよい。下地層7は、ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液を塗布焼成して得られる緻密層から形成される。ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液は、ペルオキソ基の持つ強力な酸化力で導電性基板3を酸化する。このため下地層7と導電性基板3との密着力が強くなる。一方、下地層7は焼成時に結晶化される。その際に界面近傍の金属酸化物層8の酸化チタンを伴って粒子成長が起こり、界面における密着力が強くなる。つまり、下地層7は電極層5と金属酸化物層8とを強固に結びつける接着層として有効に機能し、両者の密着性を高めることができる。下地層7を構成する金属酸化物粒子の粒径は1〜30nmの範囲が好ましい。下地層7の膜厚は、薄いと均一な皮膜を形成できず、厚いと変換効率が低下するため0.01〜1μmが好ましい。ただし、下地層7は任意の構成要件である。
【0011】
下地層7は、ペルオキソ基を有する金属酸化物を含む溶液から作製でき、酸化チタン粒子を使用した場合、例えば次の手順に従って形成することが好ましい。
(1)ペルオキソ基を有する酸化チタンを含む溶液、例えばペルオキソチタン酸を準備する。ペルオキソチタン酸(過酸化チタン)は、含水チタン酸ゲル(またはゾル)あるいはチタン化合物の水溶液に過酸化水素を添加して、含水チタン酸を溶解して調製される。チタン化合物としては、ハロゲン化チタン、硫酸チタン等のチタン塩、テトラアルコキシチタン等のチタンアルコキシド、水素化チタン等を使用できる。
(2)上記ゾル溶液を、50〜150℃に加熱した透明電極層の表面にスプレー法、スピンコート法、ドクターブレード法、ディップ法等の公知の手法により塗布する。
(3)蒸留水にジルコニアビーズ、ポリエチレングリコール(PEG)、硝酸、酸化チタン粒子とを加えて攪拌することによりスラリーを作製する。
(4)上記スラリーを(2)の基板の表面に所定の厚さに塗布後、室温〜100℃以下の温度で乾燥する。
(5)乾燥後は、加熱炉に装入して、450〜600℃の温度で10分〜1時間焼成する。
【0012】
金属酸化物層8は、下地層7と同様に、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物で形成される。これらの内では、特に、半導体特性、耐食性、安定性の点で優れた酸化チタンが好適で、特にアナターゼ型結晶構造を有するものがよい。この金属酸化物粒子の粒径は10〜100nmの範囲が好ましい。多孔質金属酸化物層8の膜厚は、1〜50μmの範囲がよい。
【0013】
金属酸化物層8に吸着される増感色素9としては、可視光領域及び/又は近赤外光領域に吸収をもち、半導体を増感させる機能を有する色素、例えば金属錯体あるいは有機色素が使用できる。金属錯体としては、ルテニウム、オスミニウム、鉄、亜鉛などの金属錯体や銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル誘導体、ヘミンが例示される。これらのうちでは、ルテニウム錯体が、増感効果、耐久性の点で優れている。特に800nmまでの光を吸収するルテニウムビピリジン錯体(N719色素)と900nmまでの光を吸収するルテニウムターピリジン錯体(ブラック・ダイ色素)が好ましい。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、クマリン系色素が有効で、特に分子中にカルボキシル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基等の官能基を有するものが、吸着性の点で好ましい。
【0014】
増感色素9の吸着量は、金属酸化物層8の単位面積(1×10−4m2)当たり10−7mol以上が好ましい。金属酸化物層8への増感色素9の吸着量が少ないと十分な増感効果が得られないためである。金属酸化物層8への増感色素9の吸着は、増感色素9を溶媒(水、アルコール、トルエン等)に溶かした溶液に金属酸化物層8を含む電極2を浸漬させることによって行えばよく、特に浸漬中に加熱還流をすることにより、効率よく吸着することができる。
【0015】
電解質13は、増感色素の酸化体に電子を補充する機能を担うもので、通常は、酸化還元系のイオンが溶解した溶液、例えば電気化学的に活性な塩と酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキノン、ヨウ素、ヨウ化カリウム、臭素、臭化カリウム等が挙げられる。これらの電解質は、必要に応じ溶媒を用いて電解質溶液とすることができる。溶媒としては、増感色素が金属酸化物層から脱着して溶解しないものが望ましく、水、アルコール類、オリゴエーテル類、カーボネート類、リン酸エステル類、アセトニトリル等を用い得る。この他、低分子または高分子のゲル化剤やP型半導体(CuI)を添加して固体化した電解質を使用してもよく、固体電解質は、電解質溶液よりも光電変換効率はやや低下するが、封止を容易に行えるという利点を有する。
【0016】
対極10は、透明基板4と同様の材料で形成される透明基板11の上に良好な反射性と良好な耐食性を有する電極層12を形成することにより作製される。太陽電池の使用条件(対極側から光が入射しない場合)によっては、透明基板11の代わりにセラミックなどの不透明な基板を使用することができる。電極層12は、集電体として機能するために低い表面抵抗を有することが必要であり、具体的な表面抵抗としては、30Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。電極層12の厚さは、均一な厚さを保ちかつ低い表面抵抗を保つために、1nm〜1μmの範囲が好ましい。電極層12は、例えば白金、金、銀、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、タンタル、タングステン及びこれらの合金(パラジウム−白金、白金−金−パラジウム等)を使用して形成することができる。これらの内では、白金及びその合金は、電解質の酸化体に電子を与える触媒作用をもち、太陽電池の正極として効率よく作用するので好適である。特に、電極層12は、ガラス基板上にスパッタリングにて白金を担持して作製することが望ましい。
【0017】
上記の構造を有する色素増感型太陽電池1は、例えば次の手順で作製することができる。所定温度に加熱した透明導電性基板3の表面に、ペルオキソチタン酸を含む溶液を塗布、乾燥することにより、緻密な接着層7を形成する。その表面に上記スラリーを塗布後450〜600℃程度に加熱して焼成して多孔質金属酸化物層8を形成し、ついで増感色素9を吸着させることにより、半導体電極2(光電極)を作製する。半導体電極2と対極10との間に電解質13を封入することにより、色素増感型太陽電池1が作製される。
【0018】
【実施例】
透明基板上に透明電極層としてFTO膜を形成して次の3種類の導電性基板を準備した。
〔導電性基板1〕
主な配向面:(200)
FTO膜:厚さ0.88μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
〔導電性基板2〕
主な配向面:(211)
FTO膜:厚さ0.58μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
〔導電性基板3〕
主な配向面:(200)
FTO膜:厚さ0.44μm
透明基板:ソーダライムガラス製,厚さ1mm
【0019】
上記の導電性基板についてX線回折装置(リガク製RINT2500)による構造解析をおこなった。そのXRDパターンを図2に示す。図2より導電性基板2のみが(211)面の配向が強いことが分かる。導電性基板1と導電性基板3は(200)面の配向が強い。
【0020】
次に導電性基板を大気中で室温から15℃/minで昇温して550℃で30分間保持し2℃/minで放熱した。その前後でX線回折を測定し強度を比較した。その結果を表2に示す。PDFカード値は粉末で配向性が無いときの基準値である。表1に示すとおり(110)面は表面におけるスズ原子の割合が多く、逆に(211)面は少ない。抵抗の上昇は表面酸化によるものが大きいため、表面スズ原子の少ない(211)配向の割合の多い導電性基板が耐熱性に優れているものと考えられる。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
なお、いずれの導電性基板においても加熱によるXRDパターンの変化はほとんど見られず、加熱によって配向面に変化がないことが分かる。
【0024】
次に加熱温度とシート抵抗の関係を測定した結果を図3に示す。測定は4端子法によりJIS K−6911に定められる方法に従った。導電性基板2のシート抵抗は全く上昇が認められない。導電性基板3は加熱によるシート抵抗の上昇が大きく600℃では272Ω/□まで上昇した。導電性基板1については若干の上昇が認められる。
【0025】
次に加熱温度と光透過率の関係を測定した結果を図4に示す。測定には分光光度計(日本分光製V−570)を使用した。いずれの導電性基板においても加熱による透過率の変化はほとんど見られなかった。加熱による構造的(XRD)光学的(透過率)変化がないため、抵抗の上昇はこれらの変化ではなく、表面酸化等が原因であると考えられる。
【0026】
各導電性基板の性能は次のように色素増感型太陽電池を作製して変換効率を測定することにより行った。チタンアルコキシド(チタニウムテトライソプロポキシド)のイソプロピルアルコール溶液を加水分解し、非晶質酸化チタンゲルを沈殿させた。沈殿物を濾別し、乾燥後、過酸化水素水を加えて攪拌することによりペルオキソチタン酸溶液を作製した。蒸留水8mlにジルコニアビーズ30×10−3kg、結晶性酸化チタン(P25:日本アエロジル社製)6g、分子量2万のポリエチレングリコール2×10−3kg、硝酸0.6mlを加えてハイブリッドミキサー(キーエンス社製HM−500)にて攪拌することによりスラリーを作製した。次に、各導電性基板を100℃に加熱した後FTO膜の表面に上記ペルオキソチタン酸溶液をスプレーにより塗布し、乾燥させることにより、厚さ0.2μm程度の接着層を形成した。その表面に上記スラリーを均一に塗布後乾燥し、450又は550℃の温度で30分間焼成して厚さ20μm程度の多孔質金属酸化物層を形成した。次いでこの基板を、増感色素{N719[Ru(4,4−ジカルボキシ−2,2−ビピリジン(TBA))2(NCS)2]}を分散させたエタノール溶液中に浸漬し、80℃の温度で加熱還流することにより、金属酸化物層に増感色素を吸着させて、半導体電極を作製した。透明基板(5Ω/□、セントラル硝子社製)上に白金を厚さ60nmまでスパッタリングし、対極を作製した。半導体電極と対極との間に電解質(ヨウ素、ヨウ化リチウム、イミダゾリウム塩、t−ブチルピリジンをメトキシアセトニトリルに溶解)を封入することにより色素増感型太陽電池を作製した。
【0027】
この半導体電極の断面の透過型電子顕微鏡像から接着層は粒径が10nm程の結晶性酸化チタンの緻密層であり、多孔質金属酸化物層は粒径が30nm程のP25の酸化チタン多孔質層であることが確認された。また、X線回折にて分析したところ緻密層はアナターゼ型でありP25は2割程度ルチル型を含むことが確認された。
【0028】
ソーラーシミュレーターにより擬似太陽光(AM1.5、1kW/m2)を照射して光電変換効率を測定した。変換効率の測定結果を表3に示す。透過率が高く、加熱による抵抗の上昇のない導電性基板2が最も変換効率が高くなった。
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】
以上に記述の如く、本発明によれば、導電性基板上に塗布した酸化チタンゾルを焼結するための加熱工程を経ても電気抵抗の増大を抑制できる光電極およびそれを使用した色素増感型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係わる色素増感型太陽電池の断面図である。
【図2】透明基板上の透明電極層のX線回折装置によるXRDパターンである。
【図3】透明電極層の加熱温度とシート抵抗の関係を示す図である。
【図4】透明電極層の加熱温度と光透過率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1:色素増感型太陽電池
2:半導体電極
3:導電性基板
4:透明基板
5:電極層
6:半導体層
7:接着層
8:金属酸化物層
9:増感色素
10:対極
11:透明基板
12:電極層
13:電解質
Claims (2)
- 透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多いことを特徴とする光電極。
- 透明基板に透明電極層を担持させ、この透明電極層の表面に金属酸化物の微粒子からなる半導体層を形成し、そこに色素を吸着させてなる光電極であって、透明電極層の表面が主に正方晶酸化スズで形成され配向面のうち(211)面の割合が最も多い光電極と、電解質を介して前記半導体層に対向する対極とを有することを特徴とする色素増感型太陽電池。
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