JP2004240194A - トナー、その製造方法、およびそのトナーを使用した画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のトナーは、トナー母粒子に少なくとも4色の着色剤がそれぞれ内添されると共に疎水性シリカ粒子、および金属石けん粒子がそれぞれ外添され、静電潜像が形成された潜像担持体の現像時に色重ねされるか、または現像後、転写材への転写時に色重ねされる複数色のトナーであって、前記複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)が0.02eV以上であると共に、色重ねに際しては仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものであり、また、トナー母粒子の仕事関数と金属石けん粒子の仕事関数の差(絶対値)を0.15eV以下とするものである。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法等に使用される少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤が内添されたトナー、その製造方法、およびそのトナーを用いたフルカラー画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フルカラー画像形成方法には、
(1) 潜像坦持体上に静電潜像を形成し、潜像担持体の周囲に配置された少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤が内添されたトナーからなる複数の現像器により、静電潜像の現像を行い、潜像担持体上において順次色重ねしてフルカラートナー像とした後、潜像担持体上に色重ねされたフルカラートナー像を直接転写材に一括転写し、転写材上のフルカラートナー像を熱圧により定着するか、または、潜像担持体上に色重ねされたフルカラートナー像を中間転写媒体上に一括転写した後、転写材に転写し、転写材上のフルカラートナー像を熱圧により定着する画像形成装置、また
(2) 潜像担持体上に静電潜像を形成し、その潜像担持体の周囲に配置された複数色のトナーからなる複数の現像器により、順次静電潜像の現像を行い、潜像担持体上における各色毎に得られるトナー像を中間転写媒体上に順次転写し、中間転写媒体上において色重ねによりフルカラートナー画像を形成した後、一括して転写材に転写し、転写材上のフルカラートナー像を熱圧により定着する画像形成装置、また、
(3) 潜像担持体上に静電潜像を形成してトナーからなる現像器を用いて現像を行うトナー像形成手段を、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤を含有したトナー毎に設け、各色毎に得られるそれぞれの潜像担持体上のトナー像を中間転写媒体上に順次転写し、中間転写媒体上での色重ねによりフルカラートナー画像を形成した後、一括して転写材に転写し、転写材上のフルカラートナー像を熱圧により定着する画像形成装置が知られている。
【0003】
(1)のカラー画像形成装置においては、複数色のトナー像が単一の感光体上で色重ねされるものであり、また、(2)のカラー画像形成装置においては、単一の感光体上に形成される各色トナー像が転写材や中間転写媒体上で色重ねされてフルカラートナー像とされ、また(3)においては、複数色のトナー像がそれぞれ別の感光体上においてそれぞれ形成された後、転写材や中間転写媒体上で色重ねされ、フルカラートナー像とされる。
【0004】
このような画像形成方法における色重ねに際しては、転写されるトナー像の転写効率が不充分となり、トナーの飛び散りが発生したり、色ムラの原因となり、所望の色相とは異なる色が形成される等の問題がある。
【0005】
また、形成されたトナー像を定電圧電源による転写電圧を印加して転写しようとすると、すべてのトナー画像が正確に転写されず、大きな転写電圧の印加を必要とするという問題がある。
【0006】
また、画像形成に有効に利用されないトナーが増加すると、トナーの消費量が増大するという問題があり、感光体上や中間転写媒体上に転写されないで残ったトナーをクリーニング装置によって廃トナーとして回収する場合には、転写されないで残るトナー量の増加は廃トナー量の増大を惹起し、クリーニング用部材の劣化を早める原因となる。
【0007】
また、大量の廃トナーを収納するために容積の大きな廃トナー容器を必要とし、画像形成装置の容積の増大につながり、画像形成装置の小型化の要請に応えられないという問題がある。
【0008】
また、転写されなかったトナーを現像装置に回収して再度現像に利用する場合、転写されないで回収されたトナー量が増加すると、トナーの帯電特性等が劣化したトナーの割合が増加することとなり、形成される画像特性にも悪影響を及ぼすという問題がある。
【0009】
また、形成されるカラー画像を高精細度化し、トナーの使用量を減少させるためには粒径の小さなトナーが用いられるが、トナーを小粒径化するとトナーの流動性が低下する。特に、非磁性一成分現像においては現像ローラ表面や規制ブレードとの摩擦帯電が困難になり、充分な電荷を付与できないという問題が生じる。そのため、トナーに帯電量分布が生じ、負帯電用トナーにおいて、正に帯電したトナーを含有することが避けきれず、潜像担持体上の非画像部にカブリを生じるという問題がある。カブリを抑えるために、非磁性一成分現像においては規制圧を高くすることが知られているが、トナーが過帯電になり、現像時のトナー濃度が低くなったり、転写効率が低くなる傾向が生じる。
【0010】
このような多くの問題の解決を目的として、従来、現像ローラ上の規制後の付着トナー量を適正な範囲とする(特許文献1)、また、小粒径トナーを用い、帯電性と画質の粒状性の向上のため、各色トナーの被記録材に対する最大付着量を所定の大きさとする(特許文献2)ことが知られている。また、フルカラー画像においてはイエロー、マゼンタ、シアンのカラートナー、及び黒トナーの転写順序を規定する(特許文献3〜7)ことが知られている。また、帯電量の小さいトナーから現像する(特許文献8)、また、転写効率を高めるために、トナーの色毎に転写電圧を高くする(特許文献9)、また、最下層のトナーの転写効率が大きくなるように転写電圧を設定する(特許文献10)ことがそれぞれ知られている。
【0011】
また、外添粒子に関する改良として、疎水化処理されたルチル/アナターゼ型酸化チタンを用い、摩擦により埋没することのない外添剤とできること(特許文献11)、また、ルチル/アナターゼ混晶型酸化チタンと疎水化処理されたシリカ粒子とがトナー母粒子に強く付着している割合を90〜98%とすることより、良好な摩擦帯電特性が得られ、トナー飛散による汚損やかぶりが無いカラー画像が得られること(特許文献12)、トナー母粒子に外添剤としてシリカ粒子や酸化チタン粒子を添加し、シリカの遊離率が0.5〜8%、酸化チタンの遊離率が0.5〜5%とすることで、ベタ画像の白抜けやカブリおよびフィルミングを抑えることができること(特許文献13)、また、円形度の高いトナーに同様にシリカ粒子と酸化チタン粒子を添加し、酸化チタンの個数遊離率を1.00〜50.00%、シリカの個数遊離率を0.01〜4.00%とし、かつ酸化チタンの個数遊離率をシリカの個数遊離率より大とすること(特許文献14)が知られている。
【0012】
また、外添剤として金属石けん(ステアリン酸亜鉛)を添加して、転写効率が良く、中抜け現象を引き起こさず、かぶりの少ない現像剤とできること(特許文献15、16)、また、トナーに金属石けん粒子を添加すると、感光体の長寿命化に有効であること(特許文献17)、また、金属石けんをトナーだけでなく、感光体表面上にも塗布し、地汚れを起こすトナーの付着を防止できること(特許文献18)、また、中間転写媒体上に塗布することでトナーに対する剥離特性を向上させ、転写効率を向上できること(特許文献19)、トナー母粒子に外添する金属石けんの粒子径を4μm以下とし、トナーのクリーニング特性を向上できること(特許文献20)、また、金属石けんの粒子径を5μm以下とし、酸化チタンやシリカ粒子と併用することで、スペントトナーやフィルミング及び感光体のキズの発生を防止すること(特許文献21)、さらに、重合法で得られるトナー母粒子に脂肪酸カルシウム塩を外添処理し、クリーニングブレードの磨耗を防止し、クリーニング時のトナーのすり抜けやトナー固着を防止すること(特許文献22)、また、フルカラートナーにおいて、各色トナーの仕事関数差を0.5eV以下とすることにより、色再現性に優れた画像が得られること(特許文献23)がそれぞれ知られている。
【0013】
しかしながら、いずれも、トナー母粒子を外添処理した現像剤において、トナーの転写効率を向上させるには限界があり、廃トナー量を極端に少なくできるものではなく、それ相当の大きさの廃トナー容器が必要である。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−194943号公報
【0015】
【特許文献2】
特開2002−131973号公報
【0016】
【特許文献3】
特開平8−248779号報
【0017】
【特許文献4】
特開2000−206755号公報
【0018】
【特許文献5】
特開2002−31933号公報
【0019】
【特許文献6】
特開2002−31933号
【0020】
【特許文献7】
特開平5−307310号公報
【0021】
【特許文献8】
特開平10−207164号
【0022】
【特許文献9】
特開平10−260563号
【0023】
【特許文献10】
特開平5−27548号公報
【0024】
【特許文献11】
特開2000−128534号公報
【0025】
【特許文献12】
特開2001−83732号公報
【0026】
【特許文献13】
特開2001−22118号公報
【0027】
【特許文献14】
特開2002−72544号公報
【0028】
【特許文献15】
特開平8−272132号公報
【0029】
【特許文献16】
特開平8−314280号公報
【0030】
【特許文献17】
特開2002−107998号公報
【0031】
【特許文献18】
特開平11−167224号公報
【0032】
【特許文献19】
特開平8−272228号公報
【0033】
【特許文献20】
特開平11−323396号公報
【0034】
【特許文献21】
特開2001−51443号公報
【0035】
【特許文献22】
特開2002−169330号公報
【0036】
【特許文献23】
特開平6−11898号公報
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、静電潜像が形成された潜像担持体の現像時に色重ねされるか、または現像後、転写材への転写時に色重ねされる複数色のトナー、また、そのトナーを使用した画像形成装置において、転写効率が高く、トナーの散り、色ズレやトナー飛散、また、転写像の像荒れ、白抜け、転写ムラを防止でき、色再現性に優れると共にクリーニングした廃トナー量を極端に少なくすることができ、画像装置自体の小型化を可能とし、また、潜像担持体やクリーニングブレードの長寿命化を可能として低ランニングコストを達成できるトナー、その製造方法およびそのトナーを使用した画像形成装置の提供を課題とする。
【0038】
【発明を解決するための手段】
本発明のトナーは、トナー母粒子に少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤がそれぞれ内添されると共に疎水性シリカ粒子、および金属石けん粒子がそれぞれ外添され、静電潜像が形成された潜像担持体の現像時に色重ねされるか、または現像後、転写材への転写時に色重ねされる複数色のトナーにおいて、前記複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)が0.02eV以上であると共に、色重ねに際しては仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものであり、かつ、トナー母粒子の仕事関数と金属石けん粒子の仕事関数の差(絶対値)を0.15eV以下とすることを特徴とする。
【0039】
トナーがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーであって、仕事関数の最も大きいトナーの仕事関数が5.8〜5.6eVであり、次いで5.7〜5.5eV、5.6〜5.4eV、5.5〜5.3eVの順に小さい仕事関数の範囲を有することを特徴とする。
【0040】
トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数の範囲が5.3〜5.8eVであることを特徴とする。
【0041】
疎水性シリカ粒子の仕事関数がトナー母粒子の仕事関数より小さいことを特徴とする。
【0042】
トナーが一成分非磁性トナーであることを特徴とする。
【0043】
トナーの個数基準の平均粒子径が4.5〜9μmであることを特徴とする。
【0044】
トナーが、該トナー粒子の投影像の測定によって求めたトナー粒子の投影像の周囲長(μm)L1 と、トナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)L0 との比、L0 /L1 で表される円形度が0.94〜0.98であることを特徴とする。
【0045】
上記のトナーの製造方法であって、トナー母粒子に疎水性シリカ粒子を外添処理した後、前記トナー母粒子との仕事関数の差(絶対値)が0.15eV以下の金属石けん粒子を外添処理することを特徴とする。
【0046】
本発明の画像形成装置は、静電潜像が形成された潜像担持体を、トナー母粒子に少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤をそれぞれ内添すると共に疎水性シリカ粒子、および金属石けん粒子をそれぞれ外添した複数色のトナーにより現像した後、該トナー像を転写材上に転写するに際して、前記複数色のトナーが潜像担持体上で色重ねされるか、または転写材への転写時に色重ねされる画像形成装置において、前記複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)が0.02eV以上であると共に、色重ねに際しては仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものであり、かつ、前記複数色のトナーにおいてトナー母粒子の仕事関数と金属石けん粒子の仕事関数の差(絶対値)を0.15eV以下とするものであり、また、潜像担持体の仕事関数が仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数より大きいことを特徴とする。
【0047】
潜像担持体の仕事関数と仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数との差(絶対値)が0.07eV以下であることを特徴とする。
【0048】
潜像担持体の仕事関数が5.35〜5.6eVであることを特徴とする。
【0049】
トナーが負帯電性トナーであり、また、潜像担持体が負帯電の有機感光体であり、反転現像されるものであることを特徴とする。
【0050】
トナーが一成分非磁性トナーであり、現像器におけるトナー搬送量が規制ブレードでの薄層規制により0.5mg/cm2 以下とされることを特徴とする。
【0051】
トナーが一成分非磁性トナーであり、潜像担持体上に現像されたトナー量が0.55mg/cm2 以下であることを特徴とする。
【0052】
転写材が紙、またはOHPであることを特徴とする。
【0053】
請求項1記載の発明においては、潜像担持体上の静電潜像をトナーにより現像するに際して、現像順として、先に現像された第1トナー上に第2トナー、次いで第3トナー、場合により更に第4トナーが順次色重ねされる場合、各トナーの仕事関数を現像順に小さくすることにより、第2トナーから第1トナー、第3トナーから第2トナー、第4トナーから第3トナーへのそれぞれのトナー間で移動する電子(電荷)を第1トナーに集中させることができる。これにより、潜像担持体と色重ねされたトナー層とが電気的(鏡像力と静電気力)に強固に接触し、色替え毎の現像時においてトナーの散り、色ズレおよび飛散が生じないものとできる。
【0054】
また、トナーの色重ね時に際して、仕事関数の大きいトナーより順に現像することにより、トナー同士が反撥することなく互いに引き合い、かつ、上に重なるトナーの電荷量を逐次小さくすることができるので、トナーの層厚が異なっても各色トナー層の転写効率の低下がなくなり、比較的小さい転写電圧で転写材への転写を良好に行うことができ、転写効率が向上するのみならず、像荒れや白抜け、転写ムラを防止し、色再現性も向上する。
【0055】
また、外添粒子として金属石けん粒子を疎水性シリカ粒子等と併用することにより、疎水性シリカ粒子等の外添粒子のトナー母粒子からの遊離が少なくなり、トナー粒子の帯電の安定化を図ることができるので、連続印字を行っても、カブリやトナー飛散をより減少させることができ、高画質を維持できると共に、クリーニング量の増大を抑制することができる。
【0056】
請求項8記載の発明においては、金属石けん粒子を疎水性シリカ粒子の外添後に添加することにより、無機外添粒子の作用効果である流動性付与、帯電性付与といった特性を阻害することがなく、トナー母粒子の流動性や帯電性の維持を可能とすると共に、外添粒子における電荷移動を阻害せず、また、外添粒子の個数遊離率を低下させることができ、カブリの発生をより防止できる。また、金属石けん粒子の仕事関数とトナー母粒子を仕事関数をほぼ同一とすることにより、金属石けん粒子がトナー粒子から容易に剥離して感光体に付着し、感光体の傷発生等を防止し、長寿命化を可能とする。
【0057】
請求項9記載の発明においては、感光体と仕事関数を仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数より大きいものとすることにより、トナー層の転写効率を高めることができるので、潜像担持体上の転写残りトナー量を激減させることができ、その結果、クリーニング負荷が軽減し、また、金属石けん粒子の作用により潜像担持体の磨耗減少とクリーニング量の減少を達成することができる。そして、クリーニングトナーを収容する容器の容量を従来より極端に小さくできるので、画像形成装置自体の小型化が可能となる。
【0058】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤がそれぞれ内添された複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)を0.02eV以上とし、また、潜像担持体上での色重ね、また、中間転写媒体や紙、OHP等の転写材上での色重ねによりフルカラー画像を形成するに際して、仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものである。
【0059】
物質の仕事関数(Φ)は、その物質から電子を取り出すために必要なエネルギーとして知られており、仕事関数が小さいほど電子を放出しやすく、大きい程電子を出しにくい。そのため、仕事関数の小さい物質と大きい物質を接触させると、仕事関数の小さい物質は正に、仕事関数の大きい物質は負に帯電する。仕事関数は、その物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化され、種々の物質からなる各色トナー間の接触による帯電性を評価しうる。
【0060】
仕事関数(Φ)は表面分析装置(理研計器製 AC−2、低エネルギー電子計数方式)を使用して測定される。本発明にあっては、該装置において、重水素ランプを使用し、照射光量500nWに設定し、分光器により単色光を選択し、照射面積を4mm角とし、エネルギー走査範囲3.4〜6.2eV、測定時間10sec/1個所で試料に照射する。そして、試料表面から放出される光電子を検出して求めるものであり、仕事関数に関しては、繰り返し精度(標準偏差)0.02eVで測定されるものである。なお、データ再現性を確保するための測定環境としては、使用温湿度25℃、55%RHの条件下で、24時間放置品を測定試料とする。
【0061】
トナー母粒子や外添粒子、金属石けん粒子、トナー粒子等の測定用試料については、トナー専用測定セルを用いて測定する。図1に、仕事関数測定用の試料測定セルを説明する図を示す。図1(A)に平面図を示し、図2(B)に側面図を示すように、試料測定セルC1は、直径13mm、高さ5mmのステンレス製円盤の中央に直径10mmで深さ1mmの試料収容用凹部C2を有する形状を有する。セルの凹部内に試料を秤量スプーンを使用して突き固めないで入れた後、ナイフエッジを使用して表面を平らにした状態で測定に供する。試料を充填した測定セルを試料台の規定位置上に固定した後に、照射光量500nWに設定し、照射面積4mm角とし、エネルギー走査範囲4.2〜6.2eVの条件で測定される。
【0062】
また、潜像担持体のように、円筒形状の部材を試料とする場合には、図2に示すように、円筒形状の部材を1〜1.5cmの幅で切断し、ついで稜線に沿って横方向に切断して図2(A)に形状を示す測定用試料片C3を得た後、図2(B)に示すように、試料台C4の規定位置上に、測定光C5が照射される方向に対して照射面が平行になるように固定する。これにより、放出される光電子C6が検知器C7、すなわち光電子倍像管により効率よく検知される。この表面分析においては、単色光の励起エネルギーを低い方から高い方にスキャンすると或るエネルギー値(eV)から光電子放出が始まり、このエネルギー値を仕事関数(eV)という。また、仕事関数測定時に仕事関数と共に測定される規格化電子収率は、単位光量子当たりの光電子収率を0.5乗したときの一定の傾きを示すものであり、光電子の放出のしやすさの目安となるものである。
【0063】
本発明のトナーは、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤が内添されたトナー母粒子に、少なくとも疎水性シリカ粒子および金属石けん粒子が外添されたものであるが、下記のそれぞれの項において記載するように、着色剤や外添粒子における仕事関数は、色相や種類が同じでも種々の仕事関数の値を示すものであり、トナー母粒子、トナー粒子を所定の仕事関数値とするにあたりその使用を選択するとよい。
【0064】
トナーにおけるトナー母粒子としては、粉砕法および重合法により得られるトナー母粒子のいずれでもよい。粉砕法トナーとしては、バインダー樹脂に少なくとも顔料を含有し、離型剤、荷電制御剤等を添加し、ヘンシェルミキサー等で均一混合した後、2軸押し出し機で溶融混練され、冷却後、粗粉砕−微粉砕工程を経て、分級処理され、さらに、外添粒子が付着されてトナー粒子とされる。
【0065】
バインダー樹脂としてはトナー用樹脂として使用されている合成樹脂が使用可能であり、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が単独又は複合して使用できる。本発明においては、特に、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。バインダー樹脂としてはガラス転移温度が50〜75℃、フロー軟化温度が100〜150℃の範囲が好ましい。
【0066】
着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の染料および顔料を単独あるいは複合したトナー用着色剤が使用可能であり、少なくとも4色のトナーとされる。
【0067】
例えばブラック(K)用着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、マグネタイト、チタンブラック等が例示される。
【0068】
イエロー(Y)用着色剤としては、クロムイエロー、ハンザイエローG、キノリンイエロー、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ソルベント・イエロー162、ベンジジンイエロー等が例示される。
【0069】
また、マゼンタ(M)用着色剤としては、キナクリドン、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド184、ローダミン6G等が例示される。
【0070】
また、シアン(C)用着色剤としては、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルコオイルブルー、ローズベンガル、マラカイトグリーンレーキ、C.I.ピグメント・ブルー5:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が例示される。
【0071】
離型剤としては、トナー用離型剤が使用可能である。例えばパラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でもポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、エステルワックス等を使用することが好ましい。
【0072】
荷電調整剤としては、トナー用荷電調整剤が使用可能である。例えば、オイルブラック、オイルブラックBY、ボントロンS−22およびS−34(オリエント化学工業製)、サリチル酸金属錯体E−81、E−84(オリエント化学工業製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学工業製)、カリックスアレン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物、モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシルカルボン酸系金属錯体、芳香族ジカルボン酸系金属錯体、多糖類等が挙げられる。なかでもカラートナー用には無色ないしは白色のものが好ましい。
【0073】
粉砕法トナーにおける成分比としては、バインダー樹脂100重量部に対して、着色剤は0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であり、また、離型剤は1〜10重量部、好ましくは2.5〜8重量部であり、また、荷電制御剤は0.1〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0074】
粉砕法トナーにあっては、転写効率の向上のために球形化処理されるとよく、粉砕工程で、比較的丸い球状で粉砕可能な装置、例えば機械式粉砕機として知られるターボミル(川崎重工業製)を使用すれば円形度は0.93まで高めることができる。または、粉砕したトナーを熱風球形化装置(日本ニューマチック工業製)を使用することによって円形度を1.00まで高めることができる。本発明においては、円形度は0.94〜0.98に調節される。円形度が0.94より小さいと所望の転写効率は得られず、また、0.98より大きいとクリーニング性に問題が生じる。
【0075】
次に、重合法トナーは、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等により得られる。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色顔料、離型剤とを必要により更に、染料、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した複合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤(水溶性高分子、難水溶性無機物質)を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズを有する着色重合トナー粒子を形成することができる。重合法トナー作製に用いられる材料において、着色剤、離型剤、荷電制御剤、に関しては、上述した粉砕トナーと同様の材料が使用できる。
【0076】
乳化重合法においては、単量体と離型剤、必要により更に重合開始剤、乳化剤(界面活性剤)などを水中に分散させて重合を行い、次いで凝集過程で着色剤、荷電制御剤と凝集剤(電解質)等を添加することによって所望の粒子サイズを有する着色トナー粒子を形成することができる。
【0077】
重合性単量体成分としては、公知のビニル系モノマーが使用可能であり、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、無水マレイン酸、無水フタル酸、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルナフタレン等が挙げられる。なお、フッ素含有モノマーとしては例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロピレンなどはフッ素原子が負荷電制御に有効であるので使用が可能である。
【0078】
乳化剤(界面活性剤)としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル等がある。
【0079】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等がある。
【0080】
凝集剤(電解質)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄等が挙げられる。
【0081】
重合法トナーの円形度の調節法としては、乳化重合法は2次粒子の凝集過程で温度と時間を制御することで、円形度を自由に変えることができ、その範囲は0.94〜1.00である。また、懸濁重合法では、真球のトナーが可能であるため、円形度は0.98〜1.00の範囲となるが、トナーのTg温度以上で加熱変形させることで、円形度を0.94〜0.98まで自由に調節することができる。
【0082】
また、トナーの個数平均粒径は、粉砕法トナー、重合法トナー共に9μm以下であることが好ましく、8μm〜4.5μmであることがより好ましい。9μmよりも大きなトナー粒子では、1200dpi以上の高解像度で潜像を形成しても、その解像度の再現性が小粒子径のトナーに比べて低下し、また4.5μm以下になると、トナーによる隠蔽性が低下するとともに、流動性を高めるために外添剤の使用量が増大し、その結果、定着性能が低下する傾向があるので好ましくない。本発明における上述したトナー母粒子やトナー粒子の平均粒径は、粒子像分析装置(シスメックス製 FPIA2100)で測定した値であり、個数平均粒径を意味する。
【0083】
このようにして得られるトナー母粒子の仕事関数は、5.3〜5.8eVの範囲である。
【0084】
次に、外添剤について説明する。トナー母粒子には、外添剤として、少なくとも疎水性シリカ粒子および金属石けん粒子が添加され、トナー(トナー粒子)とされる。
【0085】
疎水性シリカ粒子としては、負帯電性、流動性付与を目的として添加されるもので、ケイ素のハロゲン化物等から乾式で作製した粒子、およびケイ素化合物から液中で析出した湿式法によるもののいずれをも用いることができる。シリカ粒子の一次粒子の平均粒子径は、5nm〜50nmとすることが好ましく、10nm〜40nmとすることがより好ましい。また、シリカ粒子の一次粒子の平均粒子径が5nmより小さいと、トナーの母粒子に埋没しやすくなり、また、負に帯電しやすくなる。また、50nmを超えるとトナー母粒子の流動性付与効果が悪化し、トナーを均一に負に帯電させることが困難になる結果、逆帯電である正に帯電したトナー量が増加する傾向となる。なお、本発明における外添剤の粒径は、電子顕微鏡像によって観察して測定したもので、個数平均粒子径である。
【0086】
疎水性シリカ粒子は平均粒径分布が異なるシリカ粒子を混合して用いることが好ましく、平均一次粒子径が5nm〜20nm、好ましくは7〜16nmの小粒径のシリカ粒子と平均一次粒子径が30nm〜50nm、好ましく30〜40nmの大粒径とシリカ粒子を併用することが好ましい。粒径が小さいシリカ粒子により、好ましい流動性、負帯電性を得ることができ、粒径が大きなシリカ粒子によりトナー母粒子中に外添剤粒子の埋め込みを防止できる。
【0087】
疎水性シリカ粒子の添加量としては、トナー母粒子100重量部に対して0.05〜2重量部である。0.05重量部よりも少ない場合には流動性の付与に効果がなく、逆に2重量部を超えると定着性の悪化をもたらすので好ましくない。また、小粒径粒子と大粒径粒子との割合(重量比)は5:1〜1:5である。小粒径粒子が多過ぎると定着性の悪化をもたらし、少な過ぎると流動性の低下につながる。
【0088】
疎水性シリカ粒子の仕事関数としては、5.18〜5.24の範囲であるが、トナー母粒子より、少なくとも0.05ev以上小さいものとするとよい。これにより、仕事関数差による電荷移動により疎水性シリカ粒子をトナー母粒子に固着させることができる。
【0089】
また、外添粒子として、高流動性、帯電安定性を目的として疎水性酸化チタン粒子が添加される。疎水性酸化チタン粒子の結晶形態としてはルチル型、アナターゼ型、ルチル/アナターゼ混晶型のいずれの酸化チタン粒子でもよい。好ましくは、ルチル/アナターゼ混晶型酸化チタン粒子であり、例えば特開2000−128534号公報に記載される含水酸化チタン及び/又はアナターゼ型酸化チタンを含有するルチル型酸化チタン粒子てあり、粒子の長軸径が0.02〜0.10μmであり、軸比(長軸径/短軸径)が2〜8の紡錘状乃至板状の粒子形状を有し、トナー母粒子に外添されると、その形状によりトナー母粒子内に埋没し難いものとできる。
【0090】
疎水性酸化チタン粒子の添加量としては、トナー母粒子100重量部に対して0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部とするとよく、0.05重量部よりも少ない場合には帯電安定性の付与に効果がなく、逆に2重量部を超えるとトナーの負帯電量が小さくなりすぎるので好ましくない。また、疎水性酸化チタン粒子の添加量は、疎水性シリカ粒子100重量部に対して10〜150重量部の添加割合とするとよい。10重量部よりも少ない場合には過帯電防止に効果がなく、逆に150重量部を超えるとトナーの負帯電量が小さくなりすぎ、好ましくない。
【0091】
疎水性酸化チタン粒子の仕事関数としては5.5〜 5.7eVの範囲であり、疎水性シリカ粒子と共にトナー母粒子に外添処理されてもよいが、トナー母粒子の仕事関数と酸化チタン粒子の仕事関数とが略同一(絶対値差が0.1eV以内)の仕事関数のものであれば、トナー母粒子にまず疎水性シリカ粒子を外添処理した後、後述する金属石けん粒子と共に外添処理されるとよい。
【0092】
仕事関数がトナー母粒子と略同一であるとトナー母粒子へ直接付着しにくくなる反面、仕事関数の小さい疎水性シリカ粒子表面を介してトナー母粒子へ接触電位差により付着させることができるので、過帯電した疎水性シリカ粒子からの電荷移動を容易とでき、疎水性シリカ粒子における過帯電性をより効果的に防止でき、疎水性酸化チタン粒子の添加目的である電荷調整機能をより発揮させることができる。
【0093】
その他に各種の無機および有機のトナー用外添剤が併用可能である。例えば、シリカの表面をチタン、スズ、ジルコニウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、水酸化物によって修飾した表面修飾シリカ粒子を含み、シリカ粒子に対して表面修飾シリカ粒子が重量比で1.5倍以下の比で含有されたもの、正帯電性シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、マグネタイト、二硫化モリブデン、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸金属塩、ケイ素金属塩、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子が例示される。これらの外添粒子にしても、添加目的と共にトナー母粒子への付着性を考慮し適宜の仕事関数のものとするとよい。
【0094】
これらの外添粒子の全体としての添加量は、トナー母粒子100重量部に対して0.1ないし5重量部、より好ましくは0.5ないし4.0重量部である。0.1部より少ないと流動性付与や電荷調整が不十分となり、また、5重量部より多いと定着性の悪化だけでなく、帯電のバランスがくずれてしまう。
【0095】
次に、外添粒子として添加される金属石けん粒子は、トナー粒子とした際の外添粒子の個数遊離率を低下させ、カブリの発生を防止すると共に感光体表面の傷発生防止や転写効率の向上等を目的として添加される。
【0096】
金属石けん粒子としては、高級脂肪酸の亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミウムから選ばれる金属塩であり、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸モノアルミニウム、ステアリン酸トリアルミニウム等が例示される。金属石けん粒子の平均粒子径は0.5〜20μm、好ましくは0.8〜10μmとするとよい。
【0097】
金属石けん粒子の添加量は、トナー母粒子100重量部に対して0.05〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部である。0.05重量部より少ないと滑剤としての機能およびバインダーとしての機能が不十分であり、また、0.5重量部より多いと逆にカブリが増大する傾向にある。また、金属石けん粒子の添加量は、上述した疎水性シリカ粒子や疎水性酸化チタン粒子等の外添粒子100重量部に対して2〜10重量部の添加割合とするとよい。2重量部よりも少ない場合には滑剤やバインダーとしての効果がなく、逆に10重量部を超えると流動性の低下やカブリの増大につながるので好ましくない。
【0098】
また、金属石けん粒子の仕事関数としては、5.3〜5.8の範囲であるが、トナー母粒子の仕事関数と略同一(絶対値差が0.15eV以内、好ましくは0.1eV以内)の仕事関数のものとするとよく、外添方法としては、トナー母粒子にまず疎水性シリカ粒子を外添処理した後、金属石けん粒子が外添処理されるとよい。疎水性シリカ粒子の仕事関数は5.0〜5.3eVであり、また、トナー母粒子の仕事関数は5.3〜5.8eVであり、仕事関数の小さい外添粒子はトナー母粒子表面に仕事関数差による電荷移動により固着する。そして、後工程で添加される金属石けん粒子は、トナー母粒子表面の外添剤近傍あるいはトナー母粒子表面に直接付着するが、トナー母粒子と金属石けん粒子との仕事関数を略同一とすることにより、無機外添粒子の作用効果である流動性付与、帯電性付与といった特性を阻害することがなく、トナー母粒子の流動性や帯電性の維持を可能とする。
【0099】
また、金属石けん粒子としてトナー母粒子とほぼ同一(絶対値差が0.15eV以内)の仕事関数の金属石けん粒子を添加することにより、後述する実施例で記載するように、外添粒子の個数遊離率をより低下させることができ、カブリの発生をより防止できる。このことは外添粒子における電荷移動を阻害しないためと考えられる。
【0100】
また、トナー母粒子の仕事関数とほぼ同一の金属石けん粒子を外添することにより、金属石けん粒子のトナー母粒子に対する付着性を弱くすることができるので、トナー粒子から潜像担持体表面に金属石けんを移行させやすくすることができ、クリーニング時における潜像担持体表面の傷発生をより防止すると共に、転写効率の向上により寄与させることができる。金属石けん粒子の仕事関数がトナー母粒子より小さいと、トナー母粒子に金属石けん粒子が強く付着し、潜像担持体表面への移行性が低下したり、また、外添粒子による帯電性を阻害するので好ましくない。また、金属石けん粒子の仕事関数がトナー母粒子より大きいと、トナー母粒子から金属石けん粒子が移行しやすくなるが、外添粒子による帯電性を阻害したり、また、後述するように、潜像担持体表面の仕事関数をより大きく必要があり、有機感光体における感光層の設計の自由度がなくなる。
【0101】
また、金属石けんがトナー母粒子と外添剤との接着剤的な作用を有するので、外添剤のトナー母粒子からの遊離を防止できる。
【0102】
本発明における外添粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して使用することが好ましい。疎水化率としては40%以上、好ましくは50%以上である。疎水化剤としては、例えばジメチルジクロルシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル、オクチル−トリクロルシラン、デシル−トリクロルシラン、ノニル−トリクロルシラン、(4−iso −プロピルフェニル)−トリクロルシラン、(4−t −ブチルフェニル)−トリクロルシラン、ジペンチル−ジクロルシラン、ジヘキシル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジノニル−ジクロルシラン、ジデシル−ジクロルシラン、ジドデシル−ジクロルシラン、(4−t −ブチルフェニル)−オクチル−ジクロルシラン、ジデセニル−ジクロルシラン、ジノネニル−ジクロルシラン、ジ−2−エチルヘキシル−ジクロルシラン、ジ−3,3−ジメチルペンチル−ジクロルシラン、トリヘキシル−クロルシラン、トリオクチル−クロルシラン、トリデシル−クロルシラン、ジオクチル−メチル−クロルシラン、オクチル−ジメチル−クロルシラン、(4−iso −プロピルフェニル)−ジエチル−クロルシラン等が例示される。
【0103】
疎水性シリカ粒子等の外添粒子の仕事関数値の測定例を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
1) :平均粒径は、短軸径20nm、長軸径50〜60nm
市販の金属石けん粒子の仕事関数値の測定例を示す。
【0106】
【表2】
【0107】
本発明のトナーの製造方法は、トナー母粒子にまず疎水性シリカ粒子を外添処理した後、金属石けん粒子が外添処理されるとよい。疎水性シリカ粒子の仕事関数は5.0〜5.3eVであり、また、トナー母粒子の仕事関数は5.3〜5.8eVであり、仕事関数の小さい外添粒子はトナー母粒子表面に仕事関数差による電荷移動により固着する。また、金属石けん粒子は後工程で添加されるとよい。金属石けん粒子を後工程で添加することにより、疎水性シリカ粒子の遊離を防止でき、上記した金属石けん粒子添加による作用を発揮させることができる。
【0108】
また、外添粒子として他の外添粒子を併用する場合には、例えば疎水性ルチル/アナターゼ型酸化チタンの仕事関数は5.64であり、金属石けん粒子と共に外添処理されるとよい。仕事関数がトナー母粒子と略同一であるとトナー母粒子へ直接付着しにくくなる反面、仕事関数の小さい疎水性シリカ粒子表面を介してトナー母粒子へ接触電位差により付着させることができる。
【0109】
トナー母粒子への外添剤の添加方法としては、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)、メカノフュージョンシステム(細川ミクロン社製)、メカノミル(岡田精工社製)等より行うとよいが、ヘンシェルミキサーを使用する場合、第1段階の疎水性シリカ粒子の添加に際しては5,000rpm〜7,000rpmで、1分〜3分とするとよく、また、第2段階の金属石けん粒子の添加に際しては5,000rpm〜7,000rpmで1分〜3分とするとよい。
【0110】
トナーの仕事関数として5.3〜5.85eV、好ましくは5.35〜5.8eVとするとよい。トナーの仕事関数が5.3eV未満であると、使用できる潜像担持体や中間転写媒体の使用範囲が狭まるという問題があり、また、5.85eVを超えるとトナー中の着色剤の含有量が低下することを意味し、着色性が低下するという問題がある。また、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー間にあっては、上記したトナーの仕事関数の範囲内で、トナー粒子を構成するバインダー、着色剤、外添剤等の種類をその仕事関数に応じて適宜選択して、得られるトナー粒子の仕事関数を調整し、仕事関数がそれぞれ相違するものとし、少なくとも0.02eV相違させるとよい。
【0111】
そして、4色のトナーの色重ねに際して、最初に現像、または転写されるトナーとしては、仕事関数が5.8〜5.6eVと最も大きい仕事関数のものとするとよく、その第1色上に色重ねされる第2色目のトナーとしては5.7〜5.5eV、更に第2色上に色重ねされる第3色目のトナーとしては5.6〜5.4eV、最後に第3色上に色重ねされる第4色目のトナーとしては5.5〜5.3eVの順に小さい仕事関数の範囲を有するものとするとよい。
【0112】
特に、第1色目においては、少なくとも5.6eVの仕事関数を有するトナーとするとよく、また、仕事関数を測定する際に同時に測定される規格化電子収率としては、測定光量500nWで6以上、好ましくは8以上のものとするとよく、摩擦帯電に優れるトナーとして有用となる。
【0113】
以下、本発明の第1〜第4の画像形成装置について、図3〜図6により、負帯電性トナーを使用した一成分現像方式の場合を中心に説明するが、二成分現像方式としても適用可能である。
【0114】
第1の画像形成装置は、潜像坦持体上に静電潜像を形成し、複数色のトナーからなる複数の現像器を用いて現像を行い、潜像担持体上に順次色重ねしてフルカラートナー像とした後、そのフルカラートナー像を直接紙、OPC等の転写材に一括転写し、定着するものであり、図3はその要部を示し、図4は全体図を示す。
【0115】
図3中、1は潜像担持体、2は帯電器、3は露光ユニット、L1は露光ユニット3によって所望の画像情報に応じた選択的な露光、4は紙、OPC等の転写材、5はクリーニングブレード、6は転写ローラ、7はトナー供給ローラ、8は規制ブレード、9は現像ローラ、10−1〜10−4は、それぞれ仕事関数が相違するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーをそれぞれ内蔵した現像器であり、20は除電光、dはギャップを示す。
【0116】
まず、潜像担持体(有機感光体)と現像装置について説明するが、他の画像形成装置においても同様である。
【0117】
有機感光体1としては、有機単層型でも有機積層型でもよく、有機積層型感光体としては、導電性支持体上に、下引き層を介して電荷発生層、電荷輸送層を順次積層したものである。
【0118】
導電性支持体としては、公知の導電性支持体が使用可能であり、例えば体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム合金に切削等の加工を施した20mm〜90mmφの管状支持体、また、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムを蒸着あるいは導電性塗料により導電性を付与したものや導電性ポリイミド樹脂を成形してなる20mm〜90mmφの管状、ベルト状、板状、シート状支持体等が例示される。他の例としてはニッケル電鋳管やステンレス管などをシームレスにした金属ベルトも好適に使用することができる。
【0119】
導電性支持体上に設けられる下引き層としては、公知の下引き層が使用可能である。例えば、下引き層は接着性を向上させ、モワレを防止し、上層の電荷発生層の塗工性を改良、露光時の残留電位を低減させるなどの目的で設けられる。下引き層に使用する樹脂はその上に感光層を塗工する関係上、感光層に使用する溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。使用可溶な樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、酢酸ビニル、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等であり、単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。また、これらの樹脂に二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物を含有させてもよい。
【0120】
電荷発生層における電荷発生顔料としては、公知の材料が使用可能である。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタンおよびトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノンおよびナフトキノン系顔料、シアニンおよびアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生顔料は、単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0121】
電荷発生層におけるバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。バインダー樹脂と前記電荷発生物質の構成比は、重量比でバインダー樹脂100部に対して、10〜1000部の範囲で用いられる。
【0122】
電荷輸送層を構成する電荷輸送物質としては公知の材料が使用可能であり、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、パラジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0123】
正孔輸送物質としては、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、フェナジン化合物、ベンゾフラン化合物、ブタジエン化合物、ベンジジン化合物およびこれらの化合物の誘導体が挙げられる。これらの電子供与性物質は単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。電荷輸送層中には、これらの物質の劣化防止のために酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などを含有することもできる。
【0124】
電荷輸送層におけるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂などを用いることができるが、電荷輸送物質との相溶性、膜強度、溶解性、塗料としての安定性の点でポリカーボネートが好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質の構成比は、重量比でバインダー樹脂100部に対して25〜300部の範囲で用いられる。
【0125】
電荷発生層、電荷輸送層を形成するためには、塗布液を使用するとよく、溶剤はバインダー樹脂の種類によって異なるが、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル類等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエチレン、四塩化炭素、トリクロルエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン等の芳香族類等を用いることができる。
【0126】
また、電荷発生顔料の分散には、サンドミル、ボールミル、アトライター、遊星式ミル等の機械式の方法を用いて分散と混合を行うとよい。
【0127】
下引き層、電荷発生層および電荷輸送層の塗工法としては、浸漬コーティング法、リングコーティング法、スプレーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スピンコーティング、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアナイフコーティング法等の方法を用いる。また、塗工後の乾燥は常温乾燥後、30〜200℃の温度で30から120分間加熱乾燥することが好ましい。これらの乾燥後の膜厚は電荷発生層では、0.05〜10μmの範囲、好ましくは0.1〜3μmである。また、電荷輸送層では5〜50μmの範囲、好ましくは10〜40μmである。
【0128】
また、単層有機感光体層は、上述した有機積層型感光体において説明した導電性支持体上に、同様の下引き層を介して、電荷発生剤、電荷輸送剤、増感剤等とバインダー、溶媒等からなる単層有機感光層を塗布形成することにより作製される。有機負帯電単層型感光体については、例えば特開2000−19746号公報に準じて作製するとよい。
【0129】
単層有機感光層における電荷発生剤としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、キノシアトン系顔料、インジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、キナクリドン系顔料が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料である。電荷輸送剤としてはヒドラゾン系、スチルベン系、フェニルアミン系、アリールアミン系、ジフェニルブタジエン系、オキサゾール系等の有機正孔輸送化合物が例示され、また、増感剤としては各種の電子吸引性有機化合物であって電子輸送剤としても知られているパラジフェノキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、クロラニル等が例示される。バインダーとしてはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。
【0130】
各成分の組成比は、バインダー40〜75重量%、電荷発生剤0.5〜20重量%、電荷輸送剤10〜50重量%、増感剤0.5〜30重量%であり、好ましくはバインダー45〜65重量%、電荷発生剤1〜20重量%、電荷輸送剤20〜40重量%、増感剤2〜25重量%である。溶剤としては、下引き層に対して、溶解性を有しない溶媒が好ましく、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が例示される。
【0131】
各成分は、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナー等の攪拌装置で粉砕・分散混合され、塗布液とされる。塗布液は、下引き層上にディップコート、リングコート、スプレーコート等により乾燥後の膜厚15〜40μm、好ましくは20〜35μmで塗布され、単層有機感光体層とされる。
【0132】
本発明の画像形成装置においては、感光体表面の仕事関数(Φopc )は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックからなるトナーの示す仕事関数の内、最小の仕事関数(Φt )より大とするものであり、このましくはΦopc −Φt <0.07eVとするとよい。上述したように、トナーの仕事関数としては5.3〜5.85eV、好ましくは5.35〜5.8eVのものとされるが、感光体の仕事関数(Φopc )が最小の仕事関数を示すトナーの仕事関数(Φt )より小さいと、仕事関数の大きい順に感光体上で色重ねされた第1層のトナーと感光体との間では感光体側からの電荷注入が生じるので、転写時において、転写材背面に正の転写電圧を印加しても、鏡像力が強くなりすぎる結果、転写電界が弱まり、転写効率が低下するので好ましくない。
【0133】
また、感光体の仕事関数としては最大の仕事関数を示すトナーの仕事関数より大きくてもよいが、感光層の材料選択の自由度がなく、感光体の仕事関数としては、5.2〜5.65eV、好ましくは5.35〜5.6eVのものとなるように設計するとよい。
【0134】
有機感光体1の周りにはその回転方向に沿って、現像器10−1〜10−4がそれぞれ揺動可能に構成され、選択的に一つの現像器の現像ローラ9のみが感光体1に所定の間隔を保持して近接するように配置される。現像器10には一成分非磁性トナーTが収納されており、図示のごとく反時計方向で回転するトナー供給ローラ7によりトナーを現像ローラ9に供給する。現像ローラ9は反時計方向に回転し、トナー供給ローラ7により搬送されたトナーTをその表面に保持し、感光体との間隔dを保持した非接触状態で感光体1上の静電潜像を順次可視像化する。
【0135】
現像ローラ9は、例えば直径16〜24mmの金属製のパイプの表面をメッキやブラスト処理したローラ、あるいは中心軸周面にNBR、SBR、EPDM、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる体積抵抗値104 〜108 Ω・cm、硬度が40〜70°(アスカーA硬度)の導電性弾性体層が形成されたものが使用できる。現像ローラのパイプのシャフトや中心軸を介して現像バイアス電圧が印加される。
【0136】
現像ギャップdとしては100〜350μmとするとよく、また、図示しないが直流電圧の現像バイアスとしては−200〜−500Vであり、これに重畳する交流電圧としては1.5〜3.5kHz、P−P電圧1000〜1800Vの条件とすると良い。また、反時計方向に回転する現像ローラの周速としては、時計方向に回転する有機感光体に対して1.0〜2.5、好ましくは1.2〜2.2の周速比とするとよい。
【0137】
また、図示しないが、現像時に、感光体1と現像ローラ9とを圧接させる接触現像方式としてもよい。その場合には弾性のある現像ローラ9が用いられ、例えば直径16〜24mmで、金属製管にめっきやブラスト処理したローラ、あるいは中心軸周面にブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等からなる体積抵抗値104〜108Ω・cm、硬度が40〜70°(アスカーA硬度)の導電性弾性体層が形成されたものである。管軸等を介して図示しない電源より現像バイアス電圧が印加される。また、圧接に際しては、図示しないばね等の付勢手段により有機感光体に19.6〜98.1N/m、好ましくは24.5〜68.6N/mで、ニップが幅1〜3mmとなるような押圧荷重で圧接されるとよい。なお、押圧荷重は、現像ローラを有機感光体に圧接した状態で、ニップ幅に直交する方向での圧接幅単位長当りの押圧荷重である。
【0138】
規制ブレード8としては、非接触現像の場合には、ステンレス、リン青銅、ゴム板、金属薄板にゴムチップの貼り合わせたもの等が使用されるが、接触現像の場合には金属薄板をそのまま使用することができる。規制ブレード8は現像ローラに対して図示しないばね等の付勢手段により、あるいは弾性体としての反発力を利用して線圧245〜490mN/cmで押圧され、現像ローラ上のトナー層厚を薄層として規制するとよい。
【0139】
現像器におけるトナー搬送量は規制ブレードでの薄層規制により0.5mg/cm2 以下、好ましくは0.3〜0.48mg/cm2 、トナー層が0.8層〜1.2層とされるとよい。トナー搬送量を薄層とするとトナー表面を均一に負に帯電することができると共に、仕事関数の大きいトナーより順に色重ねすることにより、電子(電荷)の安定した授受が生じ、より均一に色重ねを行うことができる。
【0140】
また、潜像担持体上に現像されたトナー量は、0.55mg/cm2 以下、好ましくは0.4〜0.53mg/cm2 とされるとよい。潜像担持体上に現像されたトナー量を薄層とすると転写材への一次転写電圧を低く抑えることができ、転写時において、非画像部における転写材と潜像担持体間の放電が抑制され、転写トナー画像の飛び散りや飛散の防止が可能とすると共に、仕事関数の大きいトナーより順に転写することにより、転写電圧をより低くでき、高品質のカラートナー像を得ることができる。
【0141】
また、規制ブレード、現像ローラにおけるそれぞれの仕事関数と、トナーの仕事関数との関係については、好ましくは規制ブレードや現像ローラにおけるそれぞれの仕事関数をトナーの仕事関数より小さいものとすることにより、規制ブレード現像ローラと接触するトナーを負に接触帯電させることができ、より均一な負帯電トナーとできる。また、規制ブレード8に電圧を印加してブレードに接触するトナーへ電荷注入してトナー帯電量を制御してもよい。
【0142】
第1の画像形成装置における色重ね工程としては、回転ドラム形状の感光体1表面を帯電器2により均一に負帯電した後、記録情報に応じた露光3により静電潜像が形成され、仕事関数が最大のトナーを内蔵した現像器10により反転現像され、第1色目が可視像化され、除電光20が照射されることにより第1色目の現像工程が終了する。なお、クリーニングブレード5、転写ローラ6は離間させておく。ついで、再度の帯電2−露光3工程を経て、可視像化された第1色上に仕事関数の二番目に大きいトナーを内蔵した現像器10により第2色が色重ねされ、除電光20が照射されることにより第2色目の現像工程が終了する。この工程を繰り返すことにより、最終的に色重ねされた第1色、第2色、第3色上に、仕事関数の一番小さいトナーを内蔵した現像器10により第4色が色重ねされ、感光体側から第1色、第2色、第3色、第4色が順次色重ねされたフルカラー像が形成される。形成されたフルカラー像は、転写ローラ6により感光体から転写材4上に一括転写されるが、転写後の感光体1はクリーニングブレード5により残トナーがクリーニングされ、色重ね工程を終了する。
【0143】
感光体上でイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーが順次色重ねされるに際して、各トナーの仕事関数を現像順に小さくすることにより、第2トナーから第1トナー、第3トナーから第2トナー、第4トナーから第3トナーへのそれぞれのトナー間で電子を移動させることができ第1トナーに電子を集中させることができるので、潜像担持体と色重ねされたトナー層とが電気的(鏡像力と静電気力)に強固に接触し、色替え毎の現像時におけるトナーの散りや色ズレおよび飛散が生じないものとできる。
【0144】
また、トナーの色重ね時に際して、仕事関数の大きいトナーより順に現像することにより、トナー同士が反撥することなく互いに引き合い、かつ、上に重なるトナーの電荷量を逐次小さくすることができるので、トナーの層厚が異なっても各色トナー層の転写効率の低下が減少し、比較的小さい転写電圧で転写材への転写を良好に行うことを可能とする。また、転写効率が向上するのみならず、像荒れや白抜け、転写ムラを防止し、色再現性も向上する。
【0145】
図3の画像形成装置において、紙、OHPシート等の転写材4は、有機感光体1とバックアップローラ(転写ローラ)6との間に送られる。転写ローラは、転写材を感光体に圧接させるものである。
【0146】
転写ローラ6は、直径10〜20mmの金属シャフトの周表面に弾性層、導電層、抵抗性表面層の順で積層した構造を有する。抵抗性表面層はフッ素樹脂、ポリビニルブチラール等の樹脂、ポリウレタン等のゴムに導電性カーボン等の導電性微粒子を分散させた可撓性に優れた抵抗性シートを使用することができ、表面が平滑であることが好ましく、体積抵抗値107 〜1011Ω・cm、好ましくは108 〜1010Ω・cmのものであり、膜厚は0.02〜2mmである。
【0147】
導電層としては、ポリエステル樹脂等に導電性カーボン等の導電性微粒子を分散させた導電性樹脂、金属シート、また、導電性接着剤から選ばれるとよく、体積抵抗値が105 Ω・cm以下のものである。弾性層は、転写ローラが有機感光体に圧接して用いられる際にその圧接時に柔軟に変形し、圧接開放時にはすみやかに原形に復帰することが必要であり、発泡ゴムスポンジ等の弾性体を用いて形成される。発泡構造としては、連続発泡(通泡)構造、独立気泡構造のいずれてもよく、ゴム硬度(アスカーC硬度)30〜80のものとするとよく、膜厚は1〜5mmである。転写ローラの弾性変形により、有機感光体と転写材は幅広いニップ幅で密着させることができる。
【0148】
また、転写ローラには、トナーの帯電電圧とは逆極性の+200〜+600Vの転写電圧が印加されるとよい。転写ローラによる転写材の有機感光体への押圧荷重は、18〜45N/m、好ましくは26〜38N/mとするとよい。これにより、トナー粒子と有機感光体との接触を確実なものとでき、トナー粒子をより負帯電化して転写効率を向上できるものと考えられる。
【0149】
感光体から転写材へトナーが転写された後、感光体上の静電荷は消去ランプ20により消去され、感光体上に残留するトナーは、クリーニングブレード5によりクリーニングされる。
【0150】
図4は、第1の画像形成装置の全体図であり、用紙11は、給紙装置12の給紙カセット13からピックアップローラ14によって給送され、所定のタイミングで供給される。そして、感光体1に対向配置された当離接する転写ローラ15によって印加される転写電圧によって感光体上に形成された色重ね画像が用紙11に一括して転写される。
【0151】
転写画像は、定着装置16によってトナーは加熱されて軟化し用紙上に定着されて画像が形成されて、排出部17へと排出される。なお、この画像形成装置においては、この排紙経路には、スイッチバック経路18をも有しており、シートの両側に画像を形成する場合には排紙経路に進入した紙が、返送ローラ19を通って再び転写ローラ15へと給紙されて反対面に対して画像が形成される。
【0152】
次に、図5は、本発明の第2の画像形成装置(4サイクルカラープリンター)を説明するための図であり、潜像坦持体上に静電潜像を形成し、複数色のトナーからなる複数の現像器を用いて現像を行い、潜像担持体上に順次色重ねしてフルカラートナー像とした後、フルカラートナー像を中間転写媒体を介して転写材に転写し、定着するものである。
【0153】
第2の画像形成装置においては、潜像担持体上に順次色重ねしてフルカラートナー像を形成するまでは第1の画像形成装置と同じであり、フルカラートナー像を中間転写媒体を介して転写材に転写し、定着する点で相違する。
【0154】
中間転写媒体としては転写ドラムや転写ベルトが例示される。まず、転写ベルト方式の転写媒体は2種類の基体を用いるタイプに分けることができる。1つは樹脂からなるフィルムやシームレスベルト上に表層である転写層を設けるものであり、他方は弾性体の基層上に表層である転写層を設けるものである。
【0155】
また、ドラム方式の転写媒体も2種類の基体を用いるタイプに分けることができる。1つは感光体が剛性のあるドラム、例えばアルミ製のドラム上に有機感光層を設けた場合には、転写媒体としてはアルミ等の剛性のあるドラム基体上に弾性の表層である転写層を設けるものである。また、感光体の支持体がベルト状、あるいはゴム等の弾性支持体上に感光層を設けた所謂「弾性感光体」である場合には、転写媒体としてはアルミ等の剛性のあるドラム基体上に直接あるいは導電性中間層を介して表層である転写層を設けるとよい。
【0156】
基体としては、公知の導電性あるいは絶縁性基体が使用可能である。転写ベルトの場合には、体積抵抗104 〜1012Ω・cm、好ましくは106 〜1011Ω・cmの範囲が好ましい。使用する基体により次の2種類に分けることができる。
【0157】
フィルムおよびシームレスに適する材質と作製方法としては、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、ポリカーボネート、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、導電性シリカ等の導電材料を分散した厚さ50〜500μmの半導電性フィルム基体を押し出し、成形でシームレス基体とする。そして、その外側にさらに表面エネルギーを下げ、トナーのフィルミングを防止する表面保護層として厚さ5〜50μmのフッ素コーティングを行ったシームレスベルトが挙げられる。塗工方法としては、浸漬コーティング法、リングコーティング法、スプレーコーティング法その他の方法を用いることができる。なお、転写ベルトの両端部には転写ベルトの端部で亀裂や伸びおよび蛇行防止のために、膜厚80μmのPETフイルム等のテープやウレタンゴム等のリブを貼り付けて使用する。
【0158】
フィルムシートで基体を作製する場合には、ベルト状とするために端面を超音波溶着を行うことで、ベルトを作製することがてきる。具体的にはシートフィルム上に導電性層並びに表面層を設けてから、超音波溶着を行うことにより所望の物性を有する転写ベルトを作製することができる。より、具体的には、基体として厚さ60〜150μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを絶縁性基体として用いた場合には、その表面にアルミ等を蒸着し、必要によりさらにカーボンブラック等の導電材料と樹脂からなる中間導電性層を塗工し、その上にそれより高い表面抵抗を有するウレタン樹脂、フッ素樹脂、導電材料、フッ素系微粒子からなる半導電性表面層を設けて転写ベルトとすることができる。塗工後の乾燥時に熱をさほど必要としない抵抗層を設けることができる場合には、先にアルミ蒸着フィルムを超音波溶着させてから上記の抵抗層を設け、転写ベルトとすることも可能である。
【0159】
ゴム等の弾性基体に適する材質と作製方法としては、シリコンゴム、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等に上記の導電材料を分散した厚さ0.8〜2.0mmの半導電性ゴムベルトを押し出し成形で作製後、表面をサンドペーパーやポリシャー等の研磨材により所望の表面粗さに制御する。このときの弾性層をこのままで使用してもよいが、さらに上記と同じようにして表面保護層を設けることができる。
【0160】
転写ドラムの場合には、体積抵抗104 〜1012Ω・cm、好ましくは107 〜1011Ω・cmの範囲が好ましい。転写ドラムはアルミ等の金属円筒上に必要により弾性体の導電性中間層を設けて導電性弾性基体とし、さらにその上に表面エネルギーを下げ、トナーのフィルミングを防止する表面保護層として半導電性の厚さ5〜50μmの、例えばフッ素コーティングを行い作製することができる。
【0161】
導電性弾性基体としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料に、カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、導電性シリカ等の導電材料を配合、混練、分散した導電性ゴム素材を、直径が90〜180mmのアルミ円筒に密着成形して、研磨後の厚さが0.8〜6mmで、体積抵抗が104 〜1010Ω・cmとするとよい。
【0162】
次いでウレタン樹脂、フッ素樹脂、導電材料、フッ素系微粒子からなる半導電性の表面層を膜厚約15〜40μm設けて、所望の体積抵抗107 〜1011Ω・cmを有する転写ドラムとすることができる。このときの表面粗さは1μmRa以下が好ましい。また、別の例としては上記のように作製した導電性弾性基体の上にフッ素樹脂等の半導電性のチューブを被せて、加熱により収縮させて所望の表面層と電気抵抗を有する転写ドラムを作製することも可能である。
【0163】
中間転写媒体を転写ドラムや転写ベルトとする場合には、その導電性層に一次転写電圧として+250〜+600Vの電圧が印加され、また、紙等の転写材への二次転写に際しては、二次転写電圧として+400〜+2800Vの電圧が印加されるとよい。
【0164】
第2の画像形成装置においても、第1の画像形成装置と同様に、感光体上でイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーが順次色重ねされるに際して、各トナーの仕事関数を現像順に小さくすることにより、第2トナーから第1トナー、第3トナーから第2トナー、第4トナーから第3トナーへのそれぞれのトナー間で電子を移動させることができ第1トナーに電子を集中させることができるので、潜像担持体と色重ねされたトナー層とが電気的(鏡像力と静電気力)に強固に接触し、色替え毎の現像時におけるトナーの散りや色ズレおよび飛散が生じないものとできる。
【0165】
また、トナーの色重ね時に際して、仕事関数の大きいトナーより順に現像することにより、トナー同士が反撥することなく互いに引き合い、かつ、上に重なるトナーの電荷量を逐次小さくすることができるので、トナーの層厚が異なっても各色トナー層の転写効率の低下が減少し、比較的小さい転写電圧で転写材への転写を良好に行うことを可能とする。また、転写効率が向上するのみならず、像荒れや白抜け、転写ムラを防止し、色再現性も向上する。
【0166】
図5に示す画像形成装置について説明する。この画像形成装置では、圧接現像方式について記載するが、非接触現像方式としてもよい。図中、100は像担持体ユニットが組み込まれた像担持体カートリッジである。この例では、感光体カートリッジとして構成されていて、感光体と現像部ユニットが個別に装着できるようになっており、感光体(潜像担持体)140が図示しない適宜の駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。感光体140の周りにはその回転方向に沿って、帯電手段として帯電ローラ160、現像器10(M,Y,C,K)、中間転写装置30、およびクリーニング手段170が配置される。現像器は、仕事関数が大きなトナーから現像が行われるように配置される。
【0167】
帯電ローラ160は、感光体140の外周面に当接してその外周面を一様に帯電させる。一様に帯電した感光体140の外周面には露光ユニット40によって所望の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、この露光L1によって感光体140上に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像器10によって現像剤が付与されて現像される。
【0168】
現像器としてマゼンタ用の現像器10M、イエロー用の現像器10Y、シアン用の現像器10C、およびブラック用の現像器10Kが、トナーの仕事関数の大きな順に重ねて画像形成が形成されるように設けられている。
【0169】
これら現像器10M、10Y、10C、10Kはそれぞれ揺動可能に構成されており、選択的に一つの現像器の現像ローラ9のみが感光体140に圧接されるように構成されている。これらの現像器10は、負帯電トナーを現像ローラ上に保持しているものであり、これらの現像器10はマゼンタM、イエローY、シアンC、ブラックKのうちのいずれかのトナーを感光体140の表面に付与して感光体140上の静電潜像を現像する。
【0170】
現像ローラ9は硬質のローラ、例えば表面を粗面化した金属ローラで構成されている。現像されたトナー像は、中間転写装置30の中間転写ベルト36上に転写される。クリーニング手段170は、上記転写後に感光体140の外周面に付着しているトナーTを掻き落とすクリーナブレードと、このクリーナブレードによって掻き落とされたトナーを受けるクリーニングトナー回収部とを備えている。
【0171】
中間転写装置30は、駆動ローラ31と、4本の従動ローラ32、33、34、35と、これら各ローラの周りに張架された無端状の中間転写ベルト36とを有している。駆動ローラ31は、その端部に固定された図示しない歯車が感光体140の駆動用歯車とかみ合っていることによって感光体140とほぼ同一の周速で回転駆動され、したがって中間転写ベルト36が感光体140とほぼ同一の周速で図示矢印方向に循環駆動されるようになっている。
【0172】
当離接する従動ローラ35は駆動ローラ31との間で中間転写ベルト36がそれ自身の張力によって感光体140に圧接される位置に配置されており、感光体140と中間転写ベルト36との圧接部において、一次転写部T1が形成されている。従動ローラ35は、中間転写ベルトの循環方向上流側において一次転写部T1の近くに配置されている。
【0173】
駆動ローラ31には中間転写ベルト36を介して図示しない電極ローラが配置されており、この電極ローラを介して中間転写ベルト36の導電性層に一次転写電圧が印加される。従動ローラ32は、テンションローラであり、図示しない付勢手段によって中間転写ベルト36をその張り方向に付勢している。従動ローラ33は二次転写部T2を形成するバックアップローラである。このバックアップローラ33には中間転写ベルト36を介して二次転写ローラ38が対向配置されている。二次転写ローラには二次転写電圧が印加され、図示しない間隔調整機構により中間転写ベルト36に対して間隔が調整可能に構成されている。従動ローラ34はベルトクリーナ39のためのバックアップローラである。ベルトクリーナ39は図示しない間隔調整機構により中間転写ベルト36に対して間隔調整可能に構成されている。
【0174】
中間転写ベルト36は、導電層とこの導電層上に形成され、感光体140に圧接される抵抗層とを有する複層ベルトで構成されている。導電層は合成樹脂からなる絶縁性基体の上に形成されており、この導電層に前述した電極ローラを介して一次転写電圧が印加される。なお、ベルト側縁部において、抵抗層が帯状に除去されることによって導電層が帯状に露出し、この露出部に電極ローラが接触するようになっている。
【0175】
中間転写ベルト36が循環駆動される過程で、一次転写部T1において、感光体体140上に複数色のトナーを重ねて形成したトナー像が中間転写ベルト36上に一括して転写され、中間転写ベルト36上に転写されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ38との間に供給される用紙等の記録媒体Sに転写される。シートSは、給紙装置50から給送され、ゲートローラ対Gによって所定のタイミングで二次転写部T2に供給される。51は給紙カセット、52はピックアップローラである。
【0176】
定着装置60でトナー像が定着され、排紙経路70を通って装置本体の筐体80上に形成されたシート受け部81上に排出される。なお、この画像形成装置は、排紙経路70として互いに独立した2つの排紙経路71、72を有しており、定着装置60を通ったシートはいずれかの排紙経路71又は72を通って排出される。また、この排紙経路71、72はスイッチバック経路をも構成しており、シートの両側に画像を形成する場合には排紙経路71又は72に一旦進入したシートが、返送ローラ73を通って再び二次転写部T2に向けて給紙されるようになっている。
【0177】
第2の画像形成装置全体の作動の概要は次の通りである。
(1) 図示しないパーソナルコンピュータ等から画像情報が画像形成装置の制御部90に送信されると、感光体140、現像器10の各ローラ9、および中間転写ベルト36が回転駆動される。
(2) 感光体140の外周面が帯電ローラ160によって一様に帯電される。
(3) 一様に帯電した感光体140の外周面に、露光ユニット40によって、仕事関数が最も大きな第1色目のトナー(例えばマゼンタ)の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、マゼンタ用の静電潜像が形成される。
(4) 感光体140には、第1色目のマゼンタ用の現像器10Mの現像ローラのみが接触し、これによって上記静電潜像が現像され、第1色目のマゼンタのトナー像が感光体140上に形成される。
(5) 次いで、仕事関数が大きなトナーから順に複数のトナーを重ねて画像を形成される。
(6) すべての画像が感光体上に形成された後に、中間転写ベルト36には、上記トナーの帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体140上に形成されたトナー像が一次転写部T1において中間転写ベルト36上に一括して転写される。このとき、二次転写ローラ38およびベルトクリーナ39は中間転写ベルト36から離間している。
(7) 感光体140上に残留しているトナーがクリーニング手段170によって除去された後、除去手段41から徐電光L2によって感光体140が除電される。
(8) 所定のタイミングで給紙装置50からシートSが給送され、シートSの先端が二次転写部T2に達する直前あるいは達した後に、すなわちシートS上の所望の位置に、中間転写ベルト36上のトナー像が転写されるタイミングで、二次転写ローラ38が中間転写ベルト36上のトナー像、すなわち4色のトナー像が重ね合わせられたフルカラー画像がシートS上に転写される。また、ベルトクリーナ39が中間転写ベルト36に当接し、二次転写後に中間転写ベルト36上に残留しているトナーが除去される。
(9) 記録媒体Sが定着装置60を通過することによってシートS上のトナー像が定着し、その後、シートSが所定の位置に向け(両面印刷でない場合にはシート受け部81に向け、両面印刷の場合にはスイッチバック経路71または72を経て返送ローラ73に向け)搬送される。
【0178】
本発明の第3の画像形成装置は、潜像担持体上に静電潜像を形成し、複数色のトナーからなる複数の現像器を用いて現像を行い、潜像担持体上に各色毎に得られるトナー像を中間転写媒体上に順次転写し、中間転写媒体上での色重ねによりフルカラートナー画像を形成した後、一括して転写材に転写し、定着するものである。
【0179】
本発明の第3の画像形成装置は、潜像担持体上に各色毎に得られるトナー像を中間転写媒体上に順次転写し、中間転写媒体上での色重ねによりフルカラートナー画像を形成する以外は、上述した図5に示す第2の画像形成装置(4サイクルカラープリンター)と同様である。相違する点を説明する。
【0180】
現像器としてマゼンタ用の現像器10M、イエロー用の現像器10Y、シアン用の現像器10C、およびブラック用の現像器10Kが設けられ、感光体140上の静電潜像を現像する。本発明の第3の画像形成装置においては、仕事関数の最も大きい第1色トナーにより現像されたトナー像は、中間転写ベルト36上に転写される。第1色トナー画像が中間転写ベルトに転写された後、感光体は、除電光を経て、クリーニング手段170により感光体140の外周面の残存トナーをクリーニングされる。感光体は、再度、帯電−露光工程を経て、仕事関数の二番目に大きい第2色トナーにより静電潜像を現像した後、中間転写ベルト36上の第1色トナー上に色重ねして転写される。この工程を繰り返すことにより、中間転写ベルト上に、ベルト側から第1色トナー、第2色トナー、第3色トナー、第4色トナーが順次色重ねされたフルカラートナー像が形成される。
【0181】
中間転写ベルト上に得られたフルカラートナー像は、第2の画像形成装置と同様に紙、OHP等の転写材上に一括して転写される。
【0182】
本発明の第4の画像形成装置は、潜像担持体上に静電潜像を形成し、トナーからなる現像器を用いて現像を行うトナー像形成手段を複数色のトナー毎に設け、各潜像担持体上に得られる各色トナー像を中間転写媒体上に順次転写し、中間転写媒体上での色重ねによりフルカラートナー画像を形成した後、一括して転写材に転写し、定着するものである。
【0183】
本発明の第4の画像形成装置(タンデム方式のフルカラープリンター)の概略正面図を図6に示す。この場合には、感光体と現像部ユニットが同一のユニットすなわち、プロセスカートリッジとして装着できるようになっており、現像は圧接現像方式、非接触現像方式いずれも採用できる。
【0184】
この画像形成装置は、駆動ローラ10、従動ローラ20の2本のローラのみ張架されて図示矢印方向(反時計方向)HW循環駆動される中間転写ベルト30と、この中間転写ベルト30に対して複数個(4個)配置された単色トナー像形成手段40(Y、C、M、K)とを備え、中間転写ベルト30に対して複数個の単色トナー像形成手段40によるトナー像が個別の転写手段51、52、53、54で順次一次転写されるようになっている。それぞれの一次転写部をT1Y、T1C、T1M、T1Kで示す。
【0185】
単色トナー像形成手段は、イエロー用のもの40(Y)と、マゼンタ用のもの40(M)と、シアン用のもの(C)と、ブラック用のもの40(K)とが配置されている。これらの単色トナー像形成手段40(Y、C、M、K)はそれぞれ外周面に感光層を有する感光体41とこの感光体41の外周面を一様に帯電させる帯電手段としての帯電ローラ42と、この帯電ローラ42より一様に帯電させられた外周面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光手段43と、この露光手段43により形成された静電潜像に現像剤あるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像手段としての現像ローラ44と、この現像ローラ44により現像されたトナー像が一次転写対象である中間転写ベルト30に転写された後に感光体41の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレード45とを有している。
【0186】
これら単色トナー像形成手段40(Y、C、M、K)は中間転写ベルト30の弛み側に配置されている。中間転写ベルト30に順次一次転写され、中間転写ベルト30上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写部T2において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、排紙ローラ対62によって所定の場所(図示しない排紙トレイ上等)へ排出される。63は記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写部T2への記録媒体Pの給紙タイミングを規定するゲートローラ対である。
【0187】
また、66は中間転写ベルト30との間で二次転写部T2を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト30の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。二次転写後のクリーニングブレード67は、従動ローラ20にではなく駆動ローラ10への中間転写ベルト30の巻きかけ部において中間転写ベルト30に当接している。
【0188】
本発明の第4の画像形成装置においては、単色トナー像形成手段40(Y、C、M、K)における仕事関数の相違するトナーによりそれぞれの感光体の静電潜像がそれぞれ現像されるが、仕事関数の最も大きい第1色トナーの単色トナー像形成手段により現像されたトナー像が、まず、中間転写ベルト30上に転写された後、仕事関数の二番目に大きい第2色トナーの単色トナー像形成手段により現像されたトナー像が、中間転写ベルト30上の第1色トナー像上に色重ね転写される。この工程を繰り返すことにより、ベルト側から第1色トナー、第2色トナー、第3色トナー、第4色トナーが順次色重ねされたフルカラートナー像が中間転写ベルト上に形成される。
【0189】
本発明の第3、第4の画像形成装置においては、中間転写媒体上で色重ねされるものであるが、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーが順次色重ねされるに際して、仕事関数の大きいトナーより順に中間転写媒体上に転写することにより、第2トナーから第1トナー、第3トナーから第2トナー、第4トナーから第3トナーへのそれぞれのトナー間で電子を移動させることができ第1トナーに電子を集中させることができるので、中間転写媒体と色重ねされたトナー層とが電気的(鏡像力と静電気力)に強固に接触し、色替え毎の転写時におけるトナーの散りや色ズレおよび飛散が生じないものとできる。
【0190】
また、トナーの色重ね時に際して、仕事関数の大きいトナーより順に中間転写媒体上に転写することにより、トナー同士が反撥することなく互いに引き合い、かつ、上に重なるトナーの電荷量を逐次小さくすることができるので、トナーの層厚が異なっても各色トナー層の転写効率の低下が減少し、比較的小さい転写電圧で中間転写媒体への転写が良好となる。また、転写効率が向上するのみならず、像荒れや白抜け、転写ムラを防止し、色再現性も向上する。
【0191】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。まず、下記の各実施例で使用した有機感光体、現像ローラ、トナー層規制ブレード、中間転写媒体等の作製例を示す。
(有機感光体(OPC1)の製造例)
アルミ素管の直径85.5mmの導電性支持体に、下引き層として、アルコール可溶性ナイロン(東レ(株)製 CM8000)の6重量部とアミノシラン処理された酸化チタン微粒子4重量部をメタノール100重量部に溶解、分散させてなる塗工液を、リングコーティング法で塗工し、温度100℃で40分乾燥させ、膜厚1.5〜2μmの下引き層を形成した。
【0192】
この下引き層上に、電荷発生顔料のオキシチタニルフタロシアニン1重量部とブチラール樹脂(積水化学(株)製 BX−1)1重量部とジクロルエタン100重量部とを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで8時間分散させた。得られた顔料の分散液を、上記で作製した支持体上にリングコーティング法で塗工し、80℃で20分間乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。 この電荷発生層上に、下記構造式(1)のスチリル化合物の電荷輸送物質40重量部とポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製 パンライトTS)60重量部をトルエン400重量部に溶解させ、乾燥膜厚が22μmになるように浸漬コーティング法で塗工、乾燥させて電荷輸送層を形成し、2層からなる感光層を有する有機感光体(OPC1)を作製した。
【0193】
得られた有機感光体の一部を切り欠いて試料片とし、その仕事関数を表面分析装置(理研計器(株)製 AC−2型)を用い、照射光量500nWで測定したところ、5.47eVを示した。
(構造式1)
【0194】
【化1】
【0195】
(有機感光体(OPC2)の製造例)
有機感光体(OPC1)において、アルミ素管の直径を30mmとし、電荷輸送物質を下記構造式(2)のジスチリル化合物に代えた以外は同様にして有機感光体(OPC2)を作製した。この有機感光体の仕事関数を同様にして測定すると、5.50eVであった。
(構造式2)
【0196】
【化2】
【0197】
(有機感光体(OPC3)の製造例)
有機感光体(OPC1)において、アルミ素管の直径を140mmに代えた以外は同様にして有機感光体(OPC3)を作製した。この有機感光体の仕事関数を同様にして測定すると、5.47eVであった。
(有機感光体(OPC4)の製造例)
有機感光体(OPC2)において、電荷輸送物質を下記構造式(3)のブタジエン化合物に代えた以外は同様にして有機感光体(OPC4)を作製した。この有機感光体の仕事関数を同様にして測定すると、5.27eVであった。
(構造式3)
【0198】
【化3】
【0199】
(有機感光体(OPC5)の製造例)
有機感光体(OPC4)において、アルミ素管の直径を140mmに代えた以外は同様にして有機感光体(OPC5)を作製した。この有機感光体の仕事関数を同様にして測定すると、5.27eVであった。
(現像ローラの作製)
直径18mmのアルミニウムパイプ表面に、厚さ10μmのニッケルメッキ層を形成し、表面粗さ(Rz)4μmの表面を得た。この現像ローラ表面の仕事関数を測定したところ、4.58eVであった。
(規制ブレードの作製)
厚さ80μmのSUS板に厚さ1.5mmの導電性ウレタンチップを導電性接着剤で貼り付けて作製した。ウレタン部の仕事関数を同様に測定したところ5eVであった。
(中間転写ベルトの製造例)
アルミニウムを蒸着した厚さ130μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に、
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 ・・・ 30重量部
・導電性カーボンブラック ・・・ 10重量部
・メチルアルコール ・・・ 70重量部
からなる均一分散液を、厚さが20μmになるようにロールコーティング法にて塗工乾燥し、中間導電性層を形成した。
【0200】
次いで、中間導電性層上に
の組成を混合分散してなる塗工液を厚さ10μmとなるようにロールコーティング法にて同様に塗工乾燥し、転写層を形成した。
【0201】
この塗工シートを長さ540mmに裁断し、塗工面を上にして端部を合わせ、超音波溶着を行うことにより転写ベルトを作製した。この転写ベルトの体積抵抗は8.8×109 Ω・cmであった。また、仕事関数は5.69、規格化光電子収率7.39を示した。
【0202】
(実施例1)
スチレンモノマー80重量部、アクリル酸ブチル20重量部、およびアクリル酸5重量部からなるモノマー混合物を、水105重量部、ノニオン乳化剤(第一工業製薬製エマルゲン950)1重量部、アニオン乳化剤(第一工業製薬製ネオゲンR)1.5重量部、および過硫酸カリウム0.55重量部の水溶液混合物に添加し、窒素気流中下で攪拌を行いながら70℃で8時間重合を行った。重合反応後冷却し、乳白色の粒径0.25μmの樹脂エマルジョンを得た。
【0203】
次に、この樹脂エマルジョン200重量部、ポリエチレンワックスエマルジョン(三洋化成工業(株)製)20重量部およびフタロシアニンブルー7重量部を界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2重量部を含んだ0.2リットルの水中へ分散し、ジエチルアミンを添加してpHを5.5に調整後攪拌しながら電解質として硫酸アルミニウム0.3重量部を加え、次いで攪拌装置(TKホモミキサー)で高速攪拌して分散を行った。
【0204】
更に、スチレンモノマー40重量部、アクリル酸ブチル10重量部、サリチル酸亜鉛5重量部を水40重量部と共に追加し、窒素気流下で攪拌しながら同様にして、90℃に加熱し、過酸化水素水を加えて5時間重合し、粒子を成長させた。重合停止後会合粒子の結合強度を上げるため、pHを5以上に調整しながら95℃に昇温し、5時間保持した。
【0205】
その後得られた粒子を水洗し、45℃で真空乾燥を10時間行った。得られたシアントナーは平均粒径6.8μm、円形度0.98のトナーを得た。
【0206】
なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(シスメックス株式会社製FPIA2100)を用いて行い、下記式(1)で表現した。
【0207】
R=L0/L1…(1)
(ただし、L1は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長(μm)である。また、L0は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)である。)
得られたシアントナー母粒子の仕事関数を表面分析装置(AC−2型、理研計器(株)製)を用い、照射光量500nWで測定したところ、5.57eVであった。
【0208】
このトナーに対して、重量比で流動性改良剤である平均一次粒子径が約7nmの疎水性シリカを0.1重量%、平均一次粒子径が40nmの疎水性シリカを0.3重量%添加混合した後、平均一次粒子径が20nmの疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタンを0.5重量%と平均一次粒子径が13nmのアルミナを0.2重量%と下記表3に示す金属石けん粒子を0.2重量%添加混合し、トナー2(C2)〜トナー5(C5)を得た。なお、トナー1(C1)は、金属石けん粒子無添加トナーである。
【0209】
得られたトナーの仕事関数を表面分析装置(理研計器製AC−2型)を用い、照射光量500nWで測定すると
トナー1(C1):5.56eV
トナー2(C2):5.52eV
トナー3(C3):5.56eV
トナー4(C4):5.55eV
トナー5(C5):5.54eV
であった。
【0210】
次に、図5に示す4サイクルカラープリンター(第3の画像形成装置として使用)を、上記で作製した有機感光体(OPC1)、現像ローラ、トナー規制ブレード、転写ベルトを使用して組み立てると共に、シアントナー現像器10(c)のみを使用して、上記で得たトナー1(C1)〜トナー5(C5)について、非接触1成分現像方式による作像試験を下記の条件で実施した。なお、本実施例は、疎水性シリカ粒子を外添したトナー母粒子に金属石けん粒子を外添することによる効果を示すものである。
【0211】
作像条件は、有機感光体の周速を180mm/s、現像ローラの周速は感光体に対して周速比1.3とし、また、有機感光体と中間転写媒体である転写ベルトとの周速差をベルトが3%早くなるように設定した。3%以上とすると、転写画像にチリの発生が認められる。
【0212】
また、現像ローラと感光体の間隔を210μmとし(ギャップコロで隙間を調整)、直流現像バイアス−200Vに重畳するACは周波数2.5kHz、P−P電圧1400Vの設定で、現像ローラと供給ローラは同電位とした。
【0213】
また、トナー規制ブレードの規制条件は、現像ローラ上のトナー搬送量が0.38mg/cm2 〜0.40mg/cm2 となるように調整し、5%原稿を2枚印字した後の現像ローラ上のトナーの帯電特性(帯電量(μC/g)、+トナー量個数%)を帯電量分布測定器(ホソカワミクロン(株)製「E−SPART III」を使用して求め、その結果を同じく表3、表4に示す。
【0214】
また、ベタ画像を印字し、定着後の画像濃度(反射濃度)と感光体上の非画像部のカブリ濃度をテープ転写法で求めた。そして、ベタ画像を形成した後に感光体上に戻る、所謂「逆転写トナー」濃度も同様にテープ転写法で求めて、同様に表4に示す。
【0215】
なお、テープ転写法とは感光体上のトナーにテープ(住友スリーエム製メンディングテープ)を貼り付けてトナーを剥離し、そのテープを白紙上に貼り付けた反射濃度値からテープ自体の反射濃度値を差し引いて得られる反射濃度値を求める方法である。
【0216】
また、各トナーについて、トナー母粒子からの外添剤(疎水性シリカ粒子、疎水性酸化チタン)の個数遊離率をパーティクルアナライザー(横川電機(株)製「PT1000」)を使用して求め、同じく表4に示す。ここで、個数遊離率は測定元素(Si、Ti)の検出個数から計算されるもので次式で定義される。
個数遊離率(%)=(遊離外添剤の検出個数÷外添剤の全検出個数)×100
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
表から明らかなように、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数の関係は、トナー母粒子と略同一(±0.15eV)の仕事関数を示す金属石けん粒子を添加したトナーであるトナー3(C3)〜トナー5(C5)が、ベタOD値が高く、帯電量も相対的に高くなり、その結果+トナー量も少なくなり、カブリと逆転写トナーも少なくなることがわかる。
【0220】
最も良好なのは、トナー母粒子と仕事関数が同じであるステアリン酸マグネシウム(M3StMg)であることがわかる。また、外添剤の個数遊離率はトナー母粒子に金属石けん粒子を添加したいずれにおいても、無添加(トナー1(C1))に比して小さな値を示し、金属石けん粒子を添加することにより外添剤の遊離を抑制できることがわかった。
【0221】
(実施例2)
芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの重縮合ポリエステルと該重縮合ポリエステルの多価金属化合物による一部架橋物の50:50(重量比)混合物(三洋化成工業(株)製)100重量部、シアン顔料のフタロシアニンブルーを5重量部、離型剤として融点が152℃、重量平均分子量Mwが4000のポリプロピレン3重量部、および荷電制御剤としてのサリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)4重量部をヘンシェルミキサーを用い、均一混合した後、内温150℃の二軸押出し機で混練した後、冷却した。
【0222】
冷却物を2mm角以下に粗粉砕し、次いでジェットミルで微粉砕し、ローター回転による分級装置により分級し、平均粒径7.6μmで、円形度0.911の分級トナーを得た。分級したトナーに対し、重量比で0.2重量%の疎水性シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積250m2 /g)を加え表面処理を行った後、熱風球形化装置サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業製 SFS−3型)を使用し、熱処理温度200℃に設定し、部分的に球形化処理を行った後、同様にして再度分級し平均粒径7.6μm、円形度0.940のトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の仕事関数は、5.45eVであった。
【0223】
このトナー母粒子に対し、重量比でヘキサメチルシラザン(HMDS)により表面処理した疎水性シリカ粒子(平均一次粒子径が約12nm)を0.5重量%、同様に表面処理した疎水性シリカ粒子(平均一次粒子径が40nm)を0.5重量%添加混合した後、シランカップリング剤により表面処理した疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタン(平均一次粒子径が20nm)を0.5重量%と下記表5に示す金属石けん粒子を0.2重量%添加混合し、トナー7(C7)〜トナー13(C13)を得た。なお、トナー6(C6)は、金属石けん粒子無添加トナーである。
【0224】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー6(C6) :5.44eV
トナー7(C7) :5.41eV
トナー8(C8) :5.43eV
トナー9(C9) :5.41eV
トナー10(C10):5.41eV
トナー11(C10):5.44eV
トナー12(C10):5.42eV
トナー13(C10):5.42eV
であった。
【0225】
実施例1と同様にして、図5に示す4サイクルカラープリンターにおけるシアントナー現像器10(C)のみを使用して、上記で得たトナー6(C6)〜トナー13(C13)について、非接触1成分現像方式による作像試験を実施例1と同じ条件で実施した。なお、本実施例も、疎水性シリカ粒子を外添したトナー母粒子に金属石けん粒子を外添することによる効果を示すものである。
【0226】
実施例1と同様に測定した各トナーの帯電特性、外添剤個数遊離率、作像試験結果を下記の表5、表6に示す。
【0227】
【表5】
【0228】
【表6】
【0229】
表から明らかなように、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数の関係は、トナー母粒子と略同一(±0.15eV)の仕事関数を示す金属石けん粒子を添加したトナーであるトナー8(C8)、トナー11(C11)〜トナー13(C13)がベタOD値が高く、帯電量も相対的に高くなり、その結果+トナー量も少なくなり、カブリと逆転写トナーも少なくなることがわかる。
【0230】
最も良好なのは、トナー母粒子と仕事関数がほぼ同じであるステアリン酸カルシウム(M4StCa)であることがわかる。また、外添剤の個数遊離率はトナー母粒子に金属石けん粒子を添加したいずれにおいても、無添加(トナー6(C6))に比して小さな値を示し、金属石けん粒子を添加することにより外添剤の遊離を抑制できることがわかった。
【0231】
(実施例3)
実施例1のトナー母粒子において、顔料をピグメントイエロー180に変更し、また、二次粒子の会合と造膜結合強度を上げる温度を90℃のままで同様にして重合を行い、仕事関数が5.61eVのイエロートナー母粒子を作製した。
【0232】
このトナー母粒子に対して、実施例2で添加混合した流動性改良剤と、下記表8の金属石けん粒子とを同様に添加混合し、平均粒径約7μm、円形度0.972のトナー14(Y1)〜トナー16(Y3)の各トナーを作製した。
【0233】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー14(Y1) :5.60eV
トナー15(Y2) :5.60eV
トナー16(Y3) :5.60eV
であった。
【0234】
実施例1と同様にして、図5に示す4サイクルカラープリンターにおけるイエロートナー現像器10(Y)のみを使用して、上記で得たトナー6(C6)〜トナー13(C13)について、非接触1成分現像方式による作像試験を実施例1と同じ条件で実施した。なお、本実施例も、疎水性シリカ粒子を外添したトナー母粒子に金属石けん粒子を外添することによる効果を示すものである。
【0235】
実施例1と同様に測定した各トナーの帯電特性、外添剤個数遊離率、作像試験結果を下記の表7、表8に示す。
【0236】
【表7】
【0237】
【表8】
【0238】
表から明らかなように、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数の関係は、金属石けん粒子を添加したトナーであるトナー15(Y2)がベタOD値が高く、帯電量も相対的に高くなり、その結果+トナー量も少なくなり、カブリと逆転写トナーも少なくなることがわかる。トナー母粒子と略同一(±0.15eV)の仕事関数を示す金属石けん粒子(ステアリン酸亜鉛(M2StZn))であることがわかる。また、外添剤の個数遊離率はトナー母粒子に金属石けん粒子を添加したいずれにおいても、無添加(トナー14(Y1))に比して小さな値を示し、金属石けん粒子を添加することにより外添剤の遊離を抑制できることがわかった。
【0239】
(実施例4)
実施例3のトナー母粒子において、顔料をキナクリドンとカーボンブラックに代えた以外は同様にして重合を行い、マゼンタトナー母粒子(平均粒径約6.9μm、円形度0.972、仕事関数5.64eV)とブラックトナー母粒子(平均粒径約6.9μm、円形度0.973、仕事関数5.49eV)をそれぞれ作製した。
【0240】
これらのトナー母粒子に対して、重量比でヘキサメチルシラザン(HMDS)により表面処理した疎水性シリカ粒子(平均一次粒子径が約12nm)を0.5重量%、同様に表面処理した疎水性シリカ粒子(平均一次粒子径が40nm)を0.5重量%添加混合した後、シランカップリング剤により表面処理した疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタン(平均一次粒子径が20nm、比表面積90m2 /g)を0.5重量%と、マゼンタトナーにはステアリン酸亜鉛(M2StZn)の金属石けん粒子を0.2重量%、ブラックトナーにはステアリン酸カルシウム(M4StCa)を添加混合し、トナー17(M1)、トナー18(Z1)を得た。
【0241】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー17(M1) :5.64eV
トナー18(B1) :5.48eV
であった。
【0242】
次に、作製したトナーのうち、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数がほぼ同一であるトナーを選び、色重ねを行う連続印字試験を行った。シアントナーにはトナー4(C4、仕事関数5.55eV)、イエロートナーにはトナー15(Y2、仕事関数5.60eV)、マゼンタトナーにはトナー17(M1、仕事関数5.64eV)、ブラックトナーにはトナー18(Z1、仕事関数5.48eV)とし、図6に示すタンデム方式のフルカラープリンタの各色現像カートリッジに装填した。なお、図6では転写媒体の進む上流側からY、C、M、Kで図示しているが、現像器の配置として、転写媒体の進む上流側からM、Y、C、Kの順に配置してもよい。
【0243】
現像方式は非接触現像方式とし、現像順は、トナーの仕事関数が大きい順、つまりマゼンタトナー、イエロートナー、シアントナー、ブラックトナーとなるようにした。また、4本の有機感光体には、使用のトナーの中で最小の仕事関数を有するブラックトナー(仕事関数5.48eV)より仕事関数の大きいOPC2(仕事関数5.50eV)を使用し、また、現像ローラと規制ブレードは実施例1と同様とし、また、中間転写ベルトは上記で作製した転写ベルトを使用した。また、トナー搬送量は、各色において0.38〜0.40mg/cm2 の範囲となるように規制ブレードを調整した。
【0244】
また、ベタ画像印字時の有機感光体上の現像付着量を0.5〜0.53mg/cm2 となるように現像バイアス条件を設定した。作像はDCの現像バイアス−200Vに重畳するACは周波数2.5kHz、P−P電圧1400Vの条件で印加し、各色5%カラー原稿に相当する文字原稿を10,000枚連続印字してプリントを行った。4本の感光体と転写ベルトのクリーニング量の合計を測定したところ、約23gであった。この量は予定していたクリーニングトナー回収容器の収容する量に対して約1/5の量であった。
【0245】
また、有機感光体をOPC4(仕事関数5.27eV)に代えて同様に10,000枚の連続印字を行い、クリーニング回収量の合計を測定したところ、約45gであった。感光体の仕事関数が使用のトナーの中で最小の仕事関数を有するトナーの仕事関数より小さいとクリーニング回収量が増加することがわかる。
【0246】
この結果から、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数をほぼ同一とし、また、有機感光体の仕事関数を、使用のトナーの中で最小の仕事関数を有するトナーより大きいものとし、仕事関数の最も大きいトナーから順次、現像、転写することにより、転写効率が著しく向上し、その結果としてクリーニングトナー量を少なくでき、装置の小型化を可能とすることがわかる。
【0247】
また、上記において、トナー搬送量を0.52〜0.55g/cm2 、ベタ画像印字時の有機感光体上の現像付着量を0.56〜0.58mg/cm2 となるように条件設定した以外は同様にして、10,000枚の連続印字を行い、クリーニング回収量の合計を測定したところ、約43gであった。トナー搬送量を0.5g/cm2 以下、現像付着量を0.55以下とすることにより、クリーニング回収量を少なくできることがわかる。
【0248】
(実施例5)
実施例2のトナー母粒子において、顔料をナフトールAS系の6Bに代えた以外は同様にして粉砕、分級、熱処理、際分級を行い、マゼンタトナー母粒子(平均粒径6.5μm、円形度0.942、仕事関数5.56eV)を得た。このトナー母粒子に実施例2と同様に外添剤を添加した後、トナー母粒子とほぼ同一の仕事関数を有するステアリン酸マグネシウム(M3StMg)0.2重量%と、シランカップリング剤により表面処理した疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタン(平均一次粒子径が20nm、比表面積90m2 /g)を0.5重量%を添加混合し、トナー19(M2)を得た。
【0249】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー19(M2) :5.55eV
であった。
【0250】
また、顔料をピグメントイエロー180に代えた以外は同様にしてイエロートナー母粒子(平均粒径6.5μm、円形度0.942、仕事関数5.59eV)を得た。このトナー母粒子に実施例2と同様に外添剤を添加した後、トナー母粒子とほぼ同一の仕事関数を有するステアリン酸マグネシウム(M5StMg)0.2重量%と、シランカップリング剤により表面処理した疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタン(平均一次粒子径が20nm、比表面積90m2 /g)を0.5重量%を添加混合し、トナー20(Y4)を得た。
【0251】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー20(Y4) :5.58eV
であった。
【0252】
また、顔料をカーボンブラックに代えた以外は同様にしてブラックトナー母粒子(平均粒径6.5μm、円形度0.942、仕事関数5.65eV)を得た。このトナー母粒子に実施例2と同様に外添剤を添加した後、トナー母粒子とほぼ同一の仕事関数を有するステアリン酸亜鉛(M2StZn)0.2重量%と、シランカップリング剤により表面処理した疎水性ルチルアナターゼ型酸化チタン(平均一次粒子径が20nm、比表面積90m2 /g)を0.5重量%を添加混合し、トナー21(B2)を得た。
【0253】
得られたトナーの仕事関数をトナー1と同様に測定すると
トナー21(B2) :5.64eV
であった。
【0254】
次に、作製したトナーのうち、トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数がほぼ同一であるトナーを選び、図4の一括転写方式のフルカラープリンタを採用し、色重ねを行う連続印字試験を行った。シアントナーにはトナー8(C8、仕事関数5.43eV)、マゼンタトナーにはトナー19(M2、仕事関数5.55eV)、トナー20(Y4、仕事関数5.58eV)、ブラックトナーにはトナー21(B2、仕事関数5.64eV)を各現像カートリッジ内に入れ、プリンタ本体に装着した。
【0255】
有機感光体は、使用のトナーの中で最小の仕事関数を有するシアントナー(仕事関数5.43eV)より仕事関数の大きいOPC3(仕事関数5.47eV)を使用し、また、現像ローラと規制ブレードは実施例1と同様とした。また、図4では感光体の上流側からM、Y、C、Kの順に配置しているが、現像器の配置として、感光体の進む上流側からK、Y、M、Cの順に配置してもよい。
【0256】
現像方式は非接触現像方式とし、現像順をトナーの仕事関数が大きい順、つまりブラックトナー(仕事関数5.64eV)、イエロートナー(仕事関数5.58eV)、マゼンタトナー(仕事関数5.55eV)、シアントナー(仕事関数5.43eV)となるようにした。
【0257】
なお、作像に際しては、有機感光体の周速を200mm/s、現像ローラの周速は有機感光体に対して周速比1:4とし、また、前述のトナー規制ブレードの規制条件を調整して現像ローラ上のトナー搬送量は、各色において略単層となる0.4〜0.43mg/cm2 に調整した。また、現像ローラと感光体とのギャップを210μm(ギャップコロで隙間を調整)とし、DCの現像バイアス−200Vに重畳するACは周波数2.5kHz、P−P電圧1400Vの条件で、現像ローラと供給ローラは同電位とした。連続印字試験は、各色5%カラー原稿(文字およびカラーの線画像を含む)に相当する文字原稿を10,000枚連続印字してプリントを行い、その後、感光体のクリーニングトナー量を測定したところ約85gであった。
【0258】
比較として、前述の4色トナーの作製に際して、トナー母粒子の仕事関数とかけはなれた値を有するステアリン酸アルミニウム(M9StAl)を使用した以外は同様にして4色トナーを作製し、同様に仕事関数の大きい順に現像、転写を行い、10,000枚の連続印字試験後の感光体のクリーニングトナー量を測定したところ約180gであった。
【0259】
このように、トナー母粒子の仕事関数と略同一の仕事関数を有する金属石けん粒子を添加することにより、各色のトナー層間の色重ねにおいて、現像順位1位のトナー層への電子(電荷)の移動を阻害することがなく、現像順位1位のトナー層を中心に各色トナー層が重なり合うものとできるので、トナーの散りを生じない色再現性と高画質化につながり、また、転写効率も向上すると共に、クリーニングトナー量の減少、廃トナーボックスのより小型化、フルカラープリンターのより小型化を可能とするものである。
【0260】
また、比較として、前述のシアントナー(仕事関数5.43eV)より仕事関数の小さい有機感光体(OPC5、仕事関数5.27eV)を組合せて、同様の連続印字試験を10,000枚行い、感光体のクリーニングトナー量を測定したところ105gであった。有機感光体における仕事関数は、仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数と略同一以上である方が転写効率が高く、その結果、感光体のクリーニングトナー量が少なくなることは明らかである。
【0261】
【発明の効果】
本発明は、静電潜像が形成された潜像担持体の現像時に色重ねされるか、または現像後、転写材への転写時に色重ねされる複数色のトナー、また、そのトナーを使用した画像形成装置において、転写効率が高く、トナーの散り、色ズレやトナー飛散、また、転写像の像荒れ、白抜け、転写ムラを防止でき、色再現性に優れると共にクリーニングした廃トナー量を極端に少なくでき、画像装置自体の小型化を可能とし、また、潜像担持体やクリーニングブレードの長寿命化を可能として低ランニングコストを達成できるトナー、その製造方法およびそのトナーを使用した画像形成装置とできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、仕事関数の測定に使用する試料測定セルを説明する図である。
【図2】図2は、仕事関数の測定方法を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の第1の画像形成装置の要部を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の第1の画像形成装置の全体を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の第2の画像形成装置、および第3の画像形成装置を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の第4の画像形成装置を説明するための図である。
【符号の説明】
1…感光体、2…帯電器、3…露光、4…中間転写媒体、5…クリーニングブレード、6…バックアップローラ、7…トナー供給ローラ、8…規制ブレード、9…現像ローラ、10…現像器、10(Y),10(M),10(C)、10(K)…現像器、11…用紙、12…給紙装置、13…給紙カセット、14…ピックアップローラ、15…転写ローラ、16…定着装置、17…排出部、18…スイッチバック経路18、19…返送ローラ、20(M),20(Y),20(C),20(K)…単色トナー像形成手段、30…中間転写装置、40…露光ユニット、50…給紙装置、100…像担持体カートリッジ、140…感光体、160…帯電ローラ、170…クリーニング手段、L1…露光、T…トナー
Claims (15)
- トナー母粒子に少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤がそれぞれ内添されると共に疎水性シリカ粒子、および金属石けん粒子がそれぞれ外添され、静電潜像が形成された潜像担持体の現像時に色重ねされるか、または現像後、転写材への転写時に色重ねされる複数色のトナーにおいて、前記複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)が0.02eV以上であると共に、色重ねに際しては仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものであり、かつ、トナー母粒子の仕事関数と金属石けん粒子の仕事関数の差(絶対値)を0.15eV以下とすることを特徴とするトナー。
- トナーがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーであって、仕事関数の最も大きいトナーの仕事関数が5.8〜5.6eVであり、次いで5.7〜5.5eV、5.6〜5.4eV、5.5〜5.3eVの順に小さい仕事関数の範囲を有することを特徴とする請求項1記載のトナー。
- トナー母粒子と金属石けん粒子の仕事関数の範囲が5.3〜5.8eVであることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 疎水性シリカ粒子の仕事関数がトナー母粒子の仕事関数より小さいことを特徴とする請求項1記載のトナー。
- トナーが一成分非磁性トナーであることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- トナーの個数基準の平均粒子径が4.5〜9μmであることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- トナーが、該トナー粒子の投影像の測定によって求めたトナー粒子の投影像の周囲長(μm)L1 と、トナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)L0 との比、L0 /L1 で表される円形度が0.94〜0.98であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 請求項1記載のトナーの製造方法であって、トナー母粒子に疎水性シリカ粒子を外添処理した後、前記トナー母粒子との仕事関数の差(絶対値)が0.15eV以下の金属石けん粒子を外添処理することを特徴とするトナーの製造方法。
- 静電潜像が形成された潜像担持体を、トナー母粒子に少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから選ばれた着色剤をそれぞれ内添すると共に疎水性シリカ粒子、および金属石けん粒子をそれぞれ外添した複数色のトナーにより現像した後、該トナー像を転写材上に転写するに際して、前記複数色のトナーが潜像担持体上で色重ねされるか、または転写材への転写時に色重ねされる画像形成装置において、前記複数色のトナー間の仕事関数の差(絶対値)が0.02eV以上であると共に、色重ねに際しては仕事関数の最も大きいトナーより順次色重ねされるものであり、かつ、前記複数色のトナーにおいてトナー母粒子の仕事関数と金属石けん粒子の仕事関数の差(絶対値)を0.15eV以下とするものであり、また、潜像担持体の仕事関数が仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数より大きいことを特徴とする画像形成装置。
- 潜像担持体の仕事関数と仕事関数の最も小さいトナーの仕事関数との差(絶対値)が0.07eV以下であることを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
- 潜像担持体の仕事関数が5.35〜5.6eVであることを特徴とする請求項9、または請求項10記載の画像形成装置。
- トナーが負帯電性トナーであり、また、潜像担持体が負帯電の有機感光体であり、反転現像されるものであることを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれか1つ記載の画像形成装置。
- トナーが非磁性一成分トナーであり、現像器におけるトナー搬送量が規制ブレードでの薄層規制により0.5mg/cm2 以下とされることを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか1つ記載の画像形成装置。
- トナーが非磁性一成分トナーであり、潜像担持体上に現像されたトナー量が0.55mg/cm2 以下であることを特徴とする請求項9〜請求項13のいずれか1つ記載の画像形成装置。
- 転写材が紙、またはOHPであることを特徴とする請求項9〜請求項14のいずれか1つ記載の画像形成装置。
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