JP2004239326A - 減速比自動切換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】太陽歯車、遊星歯車および内歯車24を含む遊星歯車機構と、所定トルクを超える負荷が前記内歯車24に付与された際、ロックレバー54a、54bの爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合して該内歯車24の回転を停止させてロックさせ、アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、モータの回転を逆転させて前記入力軸28およびカム44を反転させてロック状態を解除することにより、出力軸からアクチュエータに伝達される減速比を自動的に切り換える。
【選択図】図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊星歯車機構、内歯車ロック手段および内歯車ロック解除手段を用いて出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えることが可能な減速比自動切換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば、減速比切換機構が適用されたものとして、ナットやボルト等のねじの自動締め付け工具であるナットランナが知られている。
【0003】
この種のナットランナは、エアモータの駆動軸の先端部に第1減速部として機能し遊星歯車機構を構成する太陽歯車および遊星歯車を設け、前記第1減速部の遊星歯車に一体的に連結した第1出力軸の回転数を少なくしてその出力トルクを大きく設定している。さらに、前記ナットランナでは、この第1減速部に同じく遊星歯車機構からなる第2、第3減速部を連結してさらに減速させることにより第3減速部の出力軸に装着したナット締め付け用ソケットに高いトルクを発生させ、そのトルクによってナットの締め付けを行うようにしている。
【0004】
前記ナットランナに関する特許文献1には、減速部である遊星歯車機構内の内歯車を回転自在に構成するとともに、出力軸側が無負荷時には出力軸と内歯車とを一体的に回転させ、一方、負荷時には内歯車の回転を停止状態にして出力軸を減速回転させるクラッチ部を前記内歯車に配設する構成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−295278号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に開示された技術的思想を、例えば、流体圧シリンダのピストンロッド、リニアアクチュエータのスライダ等のように直線状に往復動作するアクチュエータに適用した場合、エアモータを逆転させても食い込んだコロをはずすことができないため減速比を切り換えることができず、往路に沿って変位した後のピストンロッドまたはスライダを復路に沿って高速で変位させることができない、という不具合がある。
【0007】
換言すると、前記特許文献1に開示された技術的思想では、往路の変位終端において内歯車の回転が停止されて高トルクが発生した後、減速比の切り換えが行われることなく内歯車の回転停止状態のまま復路に沿って低速で変位するようになるからである。
【0008】
本発明は、前記の不具合を考慮してなされたものであり、往路に沿って変位するアクチュエータが変位終端で高トルクを発生させた後、減速比を自動的に切り換えて復路に沿って高速で変位させることが可能な減速比自動切換装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって往復動作するアクチュエータの変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、
前記回転駆動源に連結される入力軸と前記アクチュエータに連結される出力軸とを有し、相互に噛合する太陽歯車、遊星歯車および内歯車によって構成される遊星歯車機構と、
前記アクチュエータから予め設定された所定トルクを超える負荷が出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転していた前記内歯車が該太陽歯車と異なる方向に回転することにより該内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、
前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記内歯車ロック手段として、内歯車の壁部にロックレバーを設け、前記ロックレバーがハウジングの内周面に形成されたラチェット部と係合することにより内歯車をロックさせてもよいし、あるいは、ハウジングに軸支されるロックレバーを設け、前記ロックレバーが内歯車の外周面に形成されたラチェット部と係合することにより内歯車をロックさせてもよい。
【0011】
なお、前記回転駆動源およびアクチュエータを一体的に連結する連結手段が設けられるとよい。
【0012】
本発明によれば、アクチュエータの変位部材が往路に沿って変位する際、太陽歯車と内歯車とが同一の回転方向に回転した状態にある。前記アクチュエータから予め設定された所定トルクを超える負荷が出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転していた前記内歯車が該太陽歯車と異なる方向に回転することにより、内歯車ロック手段によって該内歯車の回転が停止されてロックされる。前記内歯車がロック状態となることより、出力軸を介して伝達される減速比が自動的に切り換わり、例えば、往路の変位終端位置においてアクチュエータの変位部材が高トルク、低速で変位する。
【0013】
一方、前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の電流の極性を逆転させ、前記太陽歯車を反転させて前記内歯車のロック状態を解除する。従って、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比が自動的に切り換わり、アクチュエータの変位部材は、低トルク、高速で往路に沿って変位する。
【0014】
本発明では、このように往復動作するアクチュエータの変位部材の往路、復路に対応して自動的に減速比を切り換えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る減速比自動切換装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
図1において参照数字10は、本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置を示す。
【0017】
この減速比自動切換装置10は、ブロック体からなり、直線状に貫通する断面円形状の孔部12の内壁面に周方向に沿って凹凸歯が連続して形成されたラチェット部14を有するハウジング16を含む。前記ハウジング16の四隅角部に近接する部位には、例えば、ボルト等の後述する連結手段を介して該ハウジング16を他の部材に取り付けるための取付用孔部18が形成される。
【0018】
前記ハウジング16の中心部に形成された前記孔部12内には、図2に示されるように、単数の小径な太陽歯車20と、複数(3個)の中径な遊星歯車22と、単数の大径な内歯車24とから構成された遊星歯車機構26が収納される。この場合、中心に位置する太陽歯車20の外周側には、周方向に沿って約120度の離間角度を有する3個の遊星歯車22が前記太陽歯車20と噛合して公転(および自転)するように設けられ、さらに、前記遊星歯車22の外周側には、大径な内歯車24が設けられる。
【0019】
前記内歯車24は、図3に示されるように、後述する入力軸28に所定のクリアランスを介して遊嵌された円板状の壁部30と、前記壁部30から直交する略水平方向に突出し遊星歯車22に噛合する歯部が内周面に形成されたフランジ部32とを有する。この場合、前記内歯車24は、ハウジング16に固定されておらず、入力軸28によって回転運動が伝達されることがないフリー状態に設けられている。なお、遊星歯車22には、内歯車24の壁部30の内壁面に当接する軸受部34が設けられている。
【0020】
入力軸28が設けられた前記ハウジング16の一方には、出力軸36に負荷が付与されたときに前記内歯車24の回転を停止させるストッパ機構38が配設される。
【0021】
前記遊星歯車機構26は、ハウジング16の一方に設けられ、図示しない回転駆動源の回転駆動軸にカップリング部材(図示せず)を介して同軸状に連結される入力軸28を有する。前記入力軸28の反対側には、各々の遊星歯車22に軸着された複数のピン40によって係止される円板部42を有し、前記円板部42に一体的に連結されて図示しないアクチュエータ側に前記回転駆動源の回転運動を伝達する出力軸36が設けられる。一方の入力軸28と他方の出力軸36とは、同軸状に設けられる。また、ハウジング16には、入力軸28および出力軸36を回転自在に軸支するプレート等の軸受部材(図示せず)を設けるとよい。
【0022】
前記入力軸28には、内歯車24の壁部30を間にして所定間隔離間するカム44(後述する)と太陽歯車20とが一体的に同軸状に連結され、図示しない回転駆動源の回転駆動作用下に該入力軸28を介して前記カム44と太陽歯車20とが一体的に回転するように設けられる。
【0023】
図3に示されるように、前記入力軸28は内歯車24の壁部30に形成された孔部46を貫通するように設けられ、前記内歯車24の壁部30に形成された孔部46と前記入力軸28の外周面との間には、図示しないクリアランスが設けられる。従って、前記内歯車24は、入力軸28の回転運動に対してフリー状態となるように設けられる。
【0024】
ストッパ機構38は、図4に示されるように、外周面に180度離間し且つ半径内方向に窪んだ一組のV溝48a、48bが形成され、入力軸28と一体的に回転する円板状のカム44と、長孔50に係合するピン52を介して前記内歯車24の壁部30に装着される一組のロックレバー54a、54bと、前記長孔50に近接する一組のロックレバー54a、54bの一端部にそれぞれ係着され、所定間隔離間する該ロックレバー54a、54bの端部同士が近接する方向に引張するばね部材56とを有する。
【0025】
前記一組のロックレバー54a、54bは、それぞれ断面略L字状からなる対称形状に形成され、前記カム44のV溝48a、48bに係合するカム用突起部58と、ハウジング16のラチェット部14に係合する爪部60とを有し、前記カム用突起部58と前記爪部60とは相互に反対方向に突出するように設けられる。前記一組のロックレバー54a、54bは、断面楕円形状に形成された長孔50に係合するピン52を支点として所定角度だけ揺動自在に設けられる。
【0026】
なお、前記一組のロックレバー54a、54bは、それぞれ内歯車24に装着(固定)されているため、内歯車24と一体的に回転するように設けられている。
【0027】
本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0028】
先ず、ストッパ機構38は、図4に示されるように、カム44のV溝48a、48bにロックレバー54a、54bのカム用突起部58が係合し、前記ロックレバー54a、54bによってカム44が係止された状態を初期位置とする。
【0029】
このような初期位置において、図示しない回転駆動源を付勢して前記回転駆動源の回転駆動力を、入力軸28を介してカム44および太陽歯車20に伝達する。前記回転駆動力は、入力軸28から出力軸36の方向(図3の矢視Z方向)に見て、入力軸28、カム44および太陽歯車20を時計回り方向に回転させるものとする。
【0030】
この場合、太陽歯車20が回転することにより、前記太陽歯車20に噛合する3個の遊星歯車22が該太陽歯車20の回りを公転するとともに、カム44が回転することにより、ロックレバー54a、54bを介して内歯車24が前記カム44と同一方向(時計回り方向)に回転する(図4参照)。
【0031】
換言すると、カム44を係止するロックレバー54a、54bが内歯車24に装着されているため、前記カム44と内歯車24とが同一方向(時計回り方向)に回転するとともに、太陽歯車20と遊星歯車22との噛合作用下に前記遊星歯車22が太陽歯車20を中心として時計回り方向に公転する。この場合、内歯車24はハウジング16等に固定されていないため、遊星歯車22が自転することがなく太陽歯車20の周りを公転するだけである。
【0032】
従って、遊星歯車22および内歯車24は同一方向に回転し、前記遊星歯車22に軸着されたピン40および円板部42を介して出力軸36が回転する。この結果、出力軸36には入力軸28に対応する回転速度が伝達されて高速回転し、前記出力軸36からアクチュエータに対して高速回転運動が伝達される。
【0033】
前記アクチュエータの変位部材が直線状に往復動作する機構、例えば、所定間隔離間する一組のアーム(変位部材)62a、62bが相互に接近する方向に変位してワークWを把持するチャック装置66を用いた場合、前記出力軸36から伝達される高速回転運動によって、図8Aに示される所定間隔離間する初期位置から、前記一組のアーム62a、62bをワークW側に向かって接近する方向に高速で変位させることができる。
【0034】
図8Bに示されるように、前記一組のアーム62a、62bがワークW側に向かって所定距離変位してワークWに当接し、出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は前記とは反対方向である反時計回り方向に回転する。換言すると、出力軸36の回転が停止しても入力軸28が回転しているため、内歯車24が前記とは反対方向の反時計回り方向に回転することになる。
【0035】
時計回り方向に回転するカム44に対して内歯車24が反時計回り方向に回転することにより、ばね部材56の引張力に抗して前記内歯車24に装着されたロックレバー54a、54bがカム44から離間する半径外方向に変位し、前記ロックレバー54a、54bのカム用突起部58がカム44のV溝48a、48bから離脱する。前記カム用突起部58が前記V溝48a、48bから飛び出してカム44の外周面に係合することにより、一組のロックレバー54a、54bは、長孔50に係合するピン52を支点とし互いに離間する方向(半径外方向)に所定角度だけそれぞれ揺動する。
【0036】
一組のロックレバー54a、54bが半径外方向に変位して爪部60の先端部がハウジング16のラチェット部14の先端部に当接した際、図5に示されるように、前記一組のロックレバー54a、54bはばね部材56のばね力に抗して長孔50に沿って相互に離間する方向に変位する。
【0037】
すなわち、一組のロックレバー54a、54bは、爪部60の先端部がハウジング16のラチェット部14の先端部に当接することにより半径外方向に対する変位が規制され、前記一組のロックレバー54a、54bは、前記爪部60と反対側の端部に設けられた長孔50に沿って離間する方向に変位する。
【0038】
換言すると、一組のロックレバー54a、54bの爪部60の先端部がハウジング16のラチェット部14の先端部に当接したとき、前記ロックレバー54a、54bに対して大きな負荷が付与されるが、逃げとして機能する長孔50に沿ってロックレバー54a、54bが変位することにより、該ロックレバー54a、54bに付与される負荷を好適に吸収することができる。
【0039】
さらに、一組のロックレバー54a、54bの先端部に形成された爪部60がハウジング16の孔部12に形成されたラチェット部14に噛合することにより、内歯車24がロック状態となり該内歯車24の反時計回り方向の回転が停止される。実際には、内歯車24が反時計回り方向に回転しているため、一方のロックレバー54aの爪部60のみがラチェット部14に噛合し、他方のロックレバー54bの爪部60がラチェット部14と噛み合った場合であっても、内歯車24の反時計回り方向の回転を停止させる力にはならない。
【0040】
図6に示されるように、ロックレバー54a、54bの爪部60がハウジング16のラチェット部14に噛合する際、ばね部材56のばね力によってロックレバー54a、54bの端部が引張され、一組のロックレバー54a、54bの端部は長孔50に沿って相互に接近する方向に変位する。
【0041】
この結果、内歯車24がロックレバー54a、54bを介してハウジング16側に固定されたロック状態となることにより、太陽歯車20の回転によって遊星歯車22が前記太陽歯車20の周りを自転しながら公転しようとし、ピン40を介して前記遊星歯車22に連結された出力軸36に減速された回転速度と増大されたトルクとが伝達される。前記出力軸36を介して増大されたトルクがチャック装置66の一組のアーム62a、62bに伝達されることにより、前記一組のアーム62a、62bによってワークWが強固な力でクランプされる(図8C参照)。
【0042】
なお、前記内歯車24がロックされた状態における減速比は、太陽歯車20の歯数Z(A)、内歯車の歯数Z(C)とすると、1/(1+Z(C)/Z(A))と表され、出力軸36から導出される出力トルクは、入力軸28から導入される入力トルクの(1+Z(C)/Z(A))倍となる。例えば、太陽歯車20の歯数を12歯とし、内歯車24の歯数を66歯とした場合、6.5倍の高トルクが得られる。
【0043】
一方、前記ワークWが一組のアーム62a、62bによってクランプされた状態を保持しながら所望の位置まで搬送された後、図示しない回転駆動源に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸28に伝達される回転運動が前記とは反対方向に逆転し、ロックレバー54a、54bによる内歯車24のロック状態が解除される。
【0044】
すなわち、ロックレバー54a、54bによって内歯車24がロックされた状態において、図7に示されるように、入力軸28を介してカム44および太陽歯車20を前記とは反対の反時計回り方向に回転させることにより、ロックレバー54a、54bの爪部60がばね部材56の引張作用下にハウジング16のラチェット部14から離間する半径内方向に変位し、ハウジング16のラチェット部14に対するロックレバー54a、54bの爪部60の係合状態が解除される。従って、カム44が反時計回り方向に回転して前記カム44のV溝48a、48b内にロックレバー54a、54bのカム用突起部58が係合することにより、カム44がロックレバー54a、54bによって係止され、該カム44と内歯車24とが同一方向に回転する。
【0045】
このように、回転駆動源の極性を切り換えて反時計回り方向にカム44を回転させることにより、ロックレバー54a、54bによる内歯車24のロック状態が自動的に解除され、カム44と内歯車24とを同一方向に高速回転させることができる。
【0046】
この結果、図8Dに示されるように、チャック装置66の一組のアーム62a、62bをワークWから離間する方向に高速に直線状に変位させて初期位置に復帰させることができる。
【0047】
出力軸36に連結されるアクチュエータとしては、前記チャック装置66に限定されるものではなく、例えば、ピストンロッド(変位部材)が往復動作する図示しない流体圧シリンダ、スライダ(変位部材)が往復動作するリニアアクチュエータ、ロータリーアクチュエータ、クランプアーム(変位部材)が往復動作するクランプ装置等のように直線状または回転状に往復動作する機構が全て含まれる。
【0048】
なお、図26に示されるように、回転駆動源として機能するモータ61と、例えば、ボールねじ軸からなる回転駆動力伝達軸63に伝達される回転運動を直線運動に変換してロッド(変位部材)64が進退動作するアクチュエータ65との間に減速比自動切換装置10を介装し、例えば、ボルト67等の連結手段を介して、前記アクチュエータ65、減速比自動切換装置10およびモータ61を一体的に構成することができる。
【0049】
すなわち、モータ61にねじ締結されたブラケット68およびハウジング16の四隅角部に形成された取付用孔部18に沿ってボルト67を挿通させ、前記ボルト67の図示しないねじ部をアクチュエータボデイ69に形成されたねじ孔(図示せず)に螺入することにより、アクチュエータボデイ69、ハウジング16およびモータ61が一体的に連結される。
【0050】
この場合、第1カップリング部材71aを介してモータ61の回転軸73と入力軸28とを同軸状に連結し、第2カップリング部材71bを介してアクチュエータ65の回転駆動力伝達軸63と出力軸36とを同軸状に連結することにより、モータ61の回転駆動力が回転駆動力伝達軸63に伝達される。また、減速比自動切換装置10のハウジング16の側面と面一となるようにモータ61およびアクチュエータボデイ69を形成するとよい。なお、ロッド64の端部にはアクチュエータボデイ69の内壁面に係止されて前記ロッド64の回り止め機能を営む突起部75が形成される。
【0051】
さらに、モータ61とアクチュエータ65との間に介装される減速比自動切換装置10は、単数に限定されるものではなく、図27に示されるように、連結手段を介して複数の減速比自動切換装置10a、10bを一体的に連設することにより、減速比を増大させることができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る減速比自動切換装置70を図9乃至図12に示す。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
この第2の実施の形態に係る減速比自動切換装置70では、ハウジング16のラチェット部14に対するロックレバー54a、54bの爪部60の係合状態(ロック状態)を確実に解除することが可能なロック解除機構72を備える点に特徴がある。
【0054】
このロック解除機構72では、カム用突起部58の鋭角な先端部にピン74を介して回動自在に軸着されたローラ76をそれぞれ設けるとともに、前記ローラ76を案内する断面略V字状のガイド溝78をカム80に形成している。なお、前記ガイド溝78の溝幅は、ローラ76の直径よりも大きく設定されている。
【0055】
前記カム80は外周が略楕円形状からなり、その長軸に沿った外周部には断面略三角形状の突起部82(図12参照)が所定間隔離間してそれぞれ対向するように形成される。前記断面略三角形状の突起部82は、カム本体の平面部84と面一の高さとなるように形成されている。
【0056】
前記ガイド溝78を間にしたカム80の外周面には、ローラ76をガイド溝78内に案内するための一組のガイド溝導入部86が前記外周面に連続して形成される(図12参照)。
【0057】
前記ロック解除機構72の概略動作を説明すると、図9に示されるように、初期位置では、ガイド溝78内にローラ76が係合した状態において、入力軸28、カム80、ロックレバー54a、54bおよび内歯車24が時計回りの同一方向に回転している状態にある。
【0058】
初期位置において出力軸36側に設けられたアクチュエータから付与された負荷トルクによって出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は、前記とは反対方向である反時計回り方向に回転し、前記ローラ76がガイド溝78から離脱してロックレバー54a、54bの爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合してロック状態となる。
【0059】
この場合、図10に示されるように、ロックレバー54a、54bの爪部60の先端部がハウジング16のラチェット部14の先端部に接触した際、ロックレバー54a、54bの端部が長孔50に沿ってラチェット部14側(半径外方向)に向かって僅かに変位した後、前記爪部60がラチェット部14と係合することにより、さらにロックレバー54a、54bが長孔50の前記とは反対側(半径内方向)に向かって僅かに変位してロック状態となる。
【0060】
このように爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合したロック状態において、図示しない回転駆動源に通電する電流の極性を反転させることにより入力軸28を介してカム80および太陽歯車20が反時計回り方向(矢印D方向)に回転する(図12参照)。その際、カム用突起部58に軸着されたローラ76は、カム80の外周面およびガイド溝導入部86に沿って転動し断面三角形状の突起部82に当接した後、カム80の断面略三角形状の突起部82に係合しながらガイド溝78に沿って案内される(図12参照)。
【0061】
このように爪部60がラチェット部14に係合したロックレバー54a、54bのロック状態において、ローラ76をカム80の断面V字状のガイド溝78に沿って強制的に転動させることにより、ロックレバー54a、54bを半径内方向に向かって変位させる力(引張力)が発生し、ハウジング16のラチェット部14からロックレバー54a、54bの爪部60を離間させることができる。なお、ラチェット部14から離間したロックレバー54a、54bのローラ76は、ガイド溝78から離脱することがなく前記ガイド溝78内に保持されて初期位置に復帰する。
【0062】
従って、ロック解除機構72を設けることにより、ロックレバー54a、54bを半径内方向に向かって引張する力が作用し、ロックレバー54a、54bのロック状態を容易且つ強制的に解除することができる。
【0063】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る減速比自動切換装置90を図13に示す。
【0064】
この第3の実施の形態に係る減速比自動切換装置90では、一端部に屈曲する爪部92を有し、内歯車24の壁部に連結された取付部93に軸着されたピン94を支点として傾動自在に設けられたロックレバー96a、96bと、前記ピン94に係着された復帰ばね98とを備える。前記復帰ばね98は一端部が内歯車24の壁部に当接し他端部がロックレバー96a、96bに係着され、復帰ばね98のばね力によってロックレバー96a、96bが内歯車24の壁部30と略平行となるように付勢されている。
【0065】
カム100の外周部には、前記ロックレバー96a、96bの端部101が係合する一組のカム溝102が周方向に沿って180度だけ離間して形成される。また、周方向に沿って所定角度離間する複数の凹部104が形成されたプレート106が設けられ、前記プレート106はハウジング16に固定される。なお、前記カム溝102および凹部104は、それぞれ、入力軸28の軸線と略平行に窪んで形成される。
【0066】
この場合、前記ロックレバー96a、96bの端部101は、図示しない傾斜面を介してカム溝102から離脱してカム100の平面部まで乗り上げる。従って、ロックレバー96a、96bの端部101が前記カム溝102から離脱して押し上げられ、該ロックレバー96a、96bがピン94を支点として傾動することにより、前記ロックレバー96a、96bの爪部92が凹部104に係合してロック状態となる。
【0067】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る減速比自動切換装置110を図14乃至図17に示す。
【0068】
この第4の実施の形態に係る減速比自動切換装置110は、図15に示されるように、入力軸28に連結されて太陽歯車20と一体的に回動する第1ギア112と、ハウジング16に固定された固定板114と、前記固定板114に軸着された第1軸部材116を介して回動自在に軸支され、前記第1ギア112のギア歯と噛合するギア歯が形成された第2ギア118と、前記固定板114に軸着された第2軸部材120を介して回動自在に軸支され、前記第2ギア118のギア歯と噛合するギア歯が形成された第3ギア122とを備える。
【0069】
前記第3ギア122と固定板114との間には、例えば、フェルト等からなる摩擦部材123と、略U字状に分岐する一組の腕部124a、124bを有する係合部材126とが第2軸部材120を介して軸支される。前記一組の腕部124a、124bは、第2軸部材120を支点として円弧状に揺動自在に設けられる。
【0070】
また、前記第2軸部材120にはその外周面を囲繞するようにロック部材130が装着され、前記ロック部材130は、前記第2軸部材120を支点として円弧状に揺動自在に軸支される爪部128と、係合部材126の孔部に圧入されて該係合部材126と一体的に連結された円筒状のボス部129とを有する。前記爪部128は、内歯車24のフランジ部32の外周面に形成された外周側ラチェット部132と係合するように設けられる。前記ボス部129を介して連結される係合部材126とロック部材130の爪部128とは、第2軸部材120を支点として一体的に回動するように設けられる。
【0071】
前記第3ギア122とロック部材130との間には、コイルスプリングからなるばね部材134が介装され、前記ばね部材134の弾発力によって第3ギア122が摩擦部材123を介して係合部材126に押圧され、第3ギア122と係合部材126との間に所望の摩擦力(軽摩擦力)が付与される。
【0072】
前記第2ギア118の一側面には、図14に示されるように、断面菱形状を呈するカム136が一体的に形成され、前記カム136は第1軸部材116を中心として該第2ギア118とともに回転するように設けられる。なお、断面菱形状に形成された前記カム136の長い方の対角線は、一組の腕部124a、124b間の内側離間距離よりも僅かに短く設定されている。
【0073】
第4の実施の形態に係る減速比自動切換装置110の概略動作を説明すると、図14に示されるように、初期位置では、ロック部材130の爪部128によって内歯車24がロックされておらず、太陽歯車20と内歯車24とが時計回りの同一方向に回転した状態にある。
【0074】
従って、初期位置では、図14に示されるように、第1ギア112が太陽歯車20と一体的に時計回り方向に回転し、前記第1ギア112に噛合する第2ギア118がカム136と一体的に反時計回り方向に回転し、前記第2ギア118に噛合する第3ギア122が時計回り方向に回転する。この結果、第2軸部材120に軸支された係合部材126およびロック部材130は、ばね部材134の弾発力および摩擦部材123による軽摩擦力によって時計回り方向に回転するように付勢された状態にあるが、内歯車24の外周側ラチェット部132が時計回り方向に回転しているために前記内歯車24がロック部材130の爪部128によってロックされることがない。
【0075】
このような初期位置において出力軸36側に設けられたアクチュエータから付与された負荷トルクによって前記出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は、前記とは反対方向である反時計回り方向に回転し、ばね部材134による摩擦力の作用下に時計回り方向に付勢されていたロック部材130の爪部128が内歯車24の外周側ラチェット部132に係合してロック状態となる(図16参照)。その際、ロック部材130の爪部128と同様に、ばね部材134による摩擦力によって係合部材126の一組の腕部124a、124bも時計回り方向に向かって僅かに揺動する。
【0076】
このようにロック部材130の爪部128が内歯車24の外周側ラチェット部132に係合して該内歯車24の回転が阻止されたロック状態において、図示しない回転駆動源に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸28を介して第1ギア112および太陽歯車20が反時計回り方向に回転する。その際、図17に示されるように、前記第1ギア112に噛合する第2ギア118がカム136と一体的に時計回り方向に回転し、前記第2ギア118に噛合する第3ギア122が反時計回り方向に回転する。従って、前記第3ギア122が反時計回り方向に回転することにより、第2軸部材120に軸支された係合部材126およびロック部材130は、ばね部材134の弾発力および摩擦部材123による摩擦力によって反時計回り方向に回転するように付勢された状態にある。
【0077】
この場合、図17に示されるように、第2ギア118と一体的に時計回り方向に回転するカム136の先端部が係合部材126の一方の腕部124aに係合して該腕部124aを矢印E方向に向かって押圧する。従って、前記係合部材126と一体的に連結されたロック部材130の爪部128が矢印F方向に揺動して内歯車24の外周側ラチェット部132から離間することにより前記内歯車24のロック状態が解除される。
【0078】
次に、本発明の第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置140を図18乃至図22に示す。
【0079】
この第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置140は、図18に示されるように、入力軸28と一体的に回転するカム部材142と、内歯車24の壁部30にピン144aを介して軸着されハウジング16のラチェット部14に係合する爪部60が形成されたロックレバー146と、前記ロックレバー146と対称な位置にピン144bを介して内歯車24の壁部30に軸着されたトルクリミッタレバー148と、前記ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の突起部150a、150bにそれぞれ係着され、所定間隔離間した該ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148同士を近接する方向に引張するばね部材152とを有する。
【0080】
前記一組のロックレバー146およびトルクリミッタレバー148は、それぞれピン144a、144bを介して内歯車24に装着されているため、該内歯車24と一体的に回転するように設けられる。
【0081】
ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148は、所定間隔離間して対向する一組の円柱状突起部154a、154bを有し、ピン144a、144bを支点として所定角度だけ回動自在に設けられる。前記ロックレバー146に近接する部位には内歯車24に固着されたストッパピン156が設けられ、前記ロックレバー146がストッパピン156に係止されることにより、ピン144aを支点とした反時計回り方向の回転が規制される。
【0082】
カム部材142は、円弧部142aと、半径外方向に向かって徐々に幅狭となる突片142bとが一体的に組み合わされた複合形状からなる。また、前記カム部材142の周面は、前記突片142bの先端部158を間にした両側に形成され、ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の一組の円柱状突起部154a、154bが係合する一組の曲面部160a、160bと、前記曲面部160a、160bから連続する一組の直線状の側面部162a、162bと、前記側面部162a、162bに連続する円弧面部164とを有する。前記ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の一組の円柱状突起部154a、154bを、例えば、ローラによって形成することにより、係合する曲面部160a、160bとの間で安定した摩擦力が得られて好適である。
【0083】
なお、ロックレバー146と対称形状に形成されるトルクリミッタレバー148の先端部には爪部60が形成されているが、前記トルクリミッタレバー148の爪部60は、後述するように内歯車24が反時計回り方向に回転した場合、内歯車24の回転を停止させてロックするものではない。
【0084】
第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置140の概略動作を説明すると、図18に示されるように、初期位置では、ロックレバー146の爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合していないため内歯車24がロックされておらず、太陽歯車20(入力軸28)と内歯車24とが時計回りの同一方向に回転した状態にある。
【0085】
すなわち、初期位置では、図18に示されるように、ロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の一組の円柱状突起部154a、154bと、カム部材142の突片142bの先端部158に形成された一組の曲面部160a、160bとが係合し、前記一組の円柱状突起部154a、154bの間にカム部材142の突片142bの先端部158が保持された状態にある。
【0086】
このような初期位置において、出力軸36側に設けられたアクチュエータから付与された負荷トルクによって前記出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は、前記とは反対方向である反時計回り方向に回転し、カム部材142の突片142bの先端部158がロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の一組の円柱状突起部154a、154bの間から離脱する。なお、ロックレバー146とトルクリミッタレバー148の間に介装されるばね部材152のばね力(引張力)は、カム部材142の突片142bの先端部158が一組の円柱状突起部154a、154bの間からはずれる力、すなわち内歯車24に伝達される負荷トルクを設定するものであり、アクチュエータから伝達される負荷トルクが設定値を超えることにより、カム部材142の突片142bの先端部158が一組の円柱状突起部154a、154bの間から離脱する。
【0087】
この場合、図19に示されるように、ロックレバー146の円柱状突起部154aは、カム部材142の曲面部160aを離脱して直線状の側面部162aに係合することにより、ピン144aを支点として時計回り方向に回転する。
【0088】
ロックレバー146の円柱状突起部154aがカム部材142の周面に沿って移動し、図20に示されるように、ロックレバー146の円柱状突起部154aが円弧面部164に係合して該ロックレバー146がピン144aを支点として時計回り方向にさらに回転することにより、該ロックレバー146の爪部60がラチェット部14に係合してロック状態となる。
【0089】
このようにロックレバー146の爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合して該内歯車24の回転が阻止されたロック状態において、図示しない回転駆動源に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸28を介してカム部材142および太陽歯車20(入力軸28)が反時計回り方向に回転する。
【0090】
この場合、図21に示されるように、入力軸28を介して反時計回り方向に回転するカム部材142の突片142bの側面部162aがロックレバー146の円柱状突起部154aに係合し、前記円柱状突起部154aを上方側に向かって押圧する。従って、ロックレバー146はピン144aを支点として反時計回り方向の力が付与されることにより、ロックレバー146の爪部60がハウジング16のラチェット部14から離間して前記内歯車24のロック状態が解除される。
【0091】
入力軸28を支点としてカム部材142がさらに反時計回り方向に回転すると、図22に示されるように、カム部材142の突片142bの先端部158がロックレバー146およびトルクリミッタレバー148の一組の円柱状突起部154a、154bの間に挟まれて保持された初期位置となる。
【0092】
ロック状態を解除する際、ロックレバー146はピン144aを支点として反時計回り方向に回転するが、前記ロックレバー146がストッパピン156に当接することにより、その回転動作が規制されて初期位置に復帰する。
【0093】
なお、アクチュエータから付与される負荷トルクによって内歯車24が時計回り方向に回転するように構成した場合には、ストッパピン156をトルクリミッタレバー148側に設置し、前記トルクリミッタレバー148の爪部60をハウジング16のラチェット部14に係合させてロックさせることも可能である。
【0094】
次に、本発明の第6の実施の形態に係る減速比自動切換装置170を図23乃至図25に示す。なお、第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置140と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
この第6の実施の形態に係る減速比自動切換装置170では、カム部材172の形状が、円弧部172aを間にして約180度離間した直線状からなる一対の突片172b、172cによって一体的に形成され、さらに、前記カム部材172が回転したときに該カム部材172の突片172b、172cの先端部158に係合することが可能なカム係合機構174を設けている点で第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置140と相違している。
【0096】
この減速比自動切換装置170は、カム部材172に一対の突片172b、172cを形成することにより、単一の突片とした場合と比較してロック状態を解除するときのカム部材172の回転角度を小さくすることができる利点がある。すなわち、単一の突片を有するカム部材では、最大限360度の回転角度を必要とするのに対し、直線状からなる一対の突片172b、172cを有するカム部材172では、最大限180度の回転角度ですむからである。
【0097】
このカム係合機構174は、カム部材172の突片172b、172cの先端部158に接触する円柱状係合部176を有しピン178を支点として所定角度回動自在に設けられた対称形状からなる一組の係合部材180a、180bと、前記一組の係合部材180a、180bの突起部にそれぞれ係着され、該一組の係合部材180a、180bを相互に接近する方向に引張するばね部材182と、前記一組の係合部材180a、180bの回動範囲を規制するとともに、前記ばね部材182によって引張された一組の係合部材180a、180bの離間間隔を規制する一組のストッパピン183a、183bとを備える。
【0098】
第6の実施の形態に係る減速比自動切換装置170の概略動作を説明すると、図23に示されるように、初期位置では、一組の円柱状突起部154a、154bの間にカム部材172の一方の突片172bの先端部158が保持されるとともに、他方の突片172cの先端部158は一組の円柱状係合部176の間で離間した状態で太陽歯車20(入力軸28)と内歯車24とが時計回りの同一方向に回転した状態にある。
【0099】
このような初期位置において出力軸36側に設けられたアクチュエータから付与された負荷トルクによって前記出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は、前記とは反対方向である反時計回り方向に回転し、カム部材172の一方の突片172bの先端部158が一組の円柱状突起部154a、154bの間から離脱するとともに、他方の突片172cの先端部158が係合部材180aの円柱状係合部176に接触する(図24参照)。
【0100】
ロックレバー146の円柱状突起部154aがカム部材172の側面部162aに沿って移動し、図25に示されるように、トルクリミッタレバー148の円柱状突起部154bがカム部材172の一方の突片172bの曲面部160aに係合して保持されるとともに、他方の突片172cの先端部158が係合部材180aの円柱状係合部176に係合して保持されることにより、該ロックレバー146の爪部60がハウジング16のラチェット部14に係合してロック状態となる。
【0101】
なお、その他の作用効果は、第5の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0102】
次に、本発明の第7の実施の形態に係る減速比自動切換装置200を図28乃至図32に示す。なお、第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0103】
この第7の実施の形態に係る減速比自動切換装置200は、周方向に沿って複数の歯部が形成され、入力軸28と一体的に回転する駆動用ギア202と、内歯車24の壁部30に第1軸部材204を介して重畳して軸支され、前記駆動用ギア202の歯部に噛合する2歯を有する第1切り欠きギア206および1歯を有する第2切り欠きギア208と、前記内歯車24の壁部30に第2軸部材210を介して所定角度回動自在に軸支されるロックレバー212と、前記内歯車24の壁部30に第3軸部材214を介して所定角度回動自在に軸支されるトルクリミッタレバー216とを備える。
【0104】
図30に示されるように、2歯を有する第1切り欠きギア206および1歯を有する第2切り欠きギア208は、駆動用ギア202の歯部の上下方向に積層して噛合するように配設され、前記2歯および1歯は、それぞれ略同一の歯形形状に形成される。
【0105】
前記2歯を有する第1切り欠きギア206には半径外方向に向かって突出する突出部218が形成され、前記突出部218には円柱状のローラ220が軸着される。
【0106】
前記ロックレバー212の一端部には、ハウジング16のラチェット部14に係合する爪部222が形成され、該ロックレバー212の他端部には第1ばね部材224を係着するばね係着孔226aが設けられる。なお、ロックレバー212の一端部に近接する内歯車24の壁部30には、第2軸部材210を支点として該ロックレバー212の反時計回り方向の回転を規制するストッパ部材228が設けられる。
【0107】
前記第1ばね部材224は、1歯を有する第2切り欠きギア208に連結されたばね係着孔226bとロックレバー212の他端部に連結されたばね係着孔226aとの間に装着され、該第1ばね部材224のばね力(引張力)によって1歯を有する第2切り欠きギア208が時計回り方向に回転するように付勢された状態にある。この場合、2歯を有する第1切り欠きギア206には、1歯を有する第2切り欠きギア208の時計回り方向の回転を阻止するストッパピン230が設けられ、1歯を有する第2切り欠きギア208は前記ストッパピン230によって時計回り方向の回転が規制される。
【0108】
トルクリミッタレバー216には、第2ばね部材232の一端部を係着するばね係着孔234aが設けられる。前記第2ばね部材232の他端部は、内歯車24の壁部30に固着されたばね係着部材234bに係着される。第2ばね部材232のばね力は第1ばね部材224のばね力よりも大きく設定され、第3軸部材214を支点としてトルクリミッタレバー216を反時計回り方向に回転するように付勢している。
【0109】
前記トルクリミッタレバー216には、2歯を有する第1切り欠きギア206の突出部218に軸着されたローラ220に係合するアーム236が設けられ、前記アーム236は三角形状の突起片238を間にして初期位置にローラ220を保持する第1係合部240と、ロックレバー212による内歯車24のロック位置にローラ220を保持する第2係合部242とを有する。
【0110】
第7の実施の形態に係る減速比自動切換装置200の概略動作を説明すると、図29に示されるように、初期位置では、2歯を有する第1切り欠きギア206の突出部218に軸着されたローラ220がトルクリミッタレバー216のアーム236の第1係合部240に係合し、且つ第1切り欠きギア206の2歯と第2切り欠きギア208の1歯とが重畳しない状態で太陽歯車20(入力軸28)と内歯車24とが同一方向である時計回り方向に回転した状態にある。
【0111】
このような初期位置において出力軸36側に設けられたアクチュエータから付与された負荷トルクによって前記出力軸36の回転数が入力軸28の回転数より小さくなると、前記内歯車24は、前記とは反対方向である反時計回り方向に回転し、第1切り欠きギア206の2歯と駆動用ギア202の歯部との噛合作用下に前記第1切り欠きギア206が第1軸部材204を支点として反時計回り方向に所定角度回転する。この場合、前記第1切り欠きギア206の突出部218に軸着されたローラ220がトルクリミッタレバー216のアーム236の三角形状の突起片238を乗り越えて先端側の第2係合部242に保持される。この場合、トルクリミッタレバー216は、第2ばね部材232のばね力(引張力)に抗して、第3軸部材214を支点として時計回り方向に僅かに回転する。
【0112】
なお、駆動用ギア202の歯部との噛合作用下に第1切り欠きギア206を反時計回り方向に回動させ、突出部218に軸着されたローラ220がトルクリミッタレバー216のアーム236の三角形状の突起片238を乗り越えるときの駆動トルクが所定トルクとなる。
【0113】
略同時に、ストッパピン230に係止された第2切り欠きギア208の1歯が駆動用ギア202の歯部に噛合して該第2切り欠きギア208が第1軸部材204を支点として反時計回り方向に所定角度だけ回動し、前記第2切り欠きギア208の1歯と第1切り欠きギア206の2歯の一方とが重畳した状態となる(図31参照)。
【0114】
従って、第1ばね部材224のばね力によって引張されたロックレバー212が第2軸部材210を支点として時計回り方向に僅かに回動し、図31に示されるように、該ロックレバー212の爪部222がハウジング16のラチェット部14に係合してロック状態となる。
【0115】
このようにロックレバー212の爪部222がハウジング16のラチェット部14に係合して内歯車24の回転が阻止されたロック状態において、図示しない回転駆動源に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸28を介して太陽歯車20および駆動用ギア202が反時計回り方向に回転する。
【0116】
この場合、図32に示されるように、第2切り欠きギア208の1歯が駆動用ギア202の歯部に噛合して第1軸部材204を支点として時計回り方向に所定角度回転すると、前記第2切り欠きギア208がストッパピン230を押圧し、第1切り欠きギア206の2歯が駆動用ギア202の歯部に噛合して第1軸部材204を支点として時計回り方向に所定角度回転する。その際、第1切り欠きギア206の突出部218に軸着されたローラ220が三角形状の突起片238を乗り越えて内側の第1係合部240に保持され、初期位置に復帰する。
【0117】
同時に、ロックレバー212は、第1切り欠きギア206に押されて第2軸部材210を支点として反時計回り方向に力が付与され、該ロックレバー212の爪部222がハウジング16のラチェット部14から離間して前記内歯車24のロック状態が解除される。
【0118】
第7の実施の形態では、出力軸36を介して伝達される減速比が自動的に切り換わってアクチュエータの変位部材が高トルク、低速で変位する状態を、入力軸28と一体的に回転する駆動用ギア202の回転数に影響されることがなく保持することができる。従って、例えば、スポンジのような柔軟なワークを把持する場合や圧入等のように高トルク状態を所定時間継続する必要がある場合に好適である。また、ロック状態の解除を瞬時に遂行することができる利点がある。
【0119】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0120】
すなわち、往路に沿って変位するアクチュエータは、変位終端で高トルクを発生させた後、内歯車ロック解除手段によって減速比が自動的に切り換えられる。従って、アクチュエータの変位部材を復路に沿って低トルク、高速で変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置の斜視図である。
【図2】図1に示す減速比自動切換装置を構成する遊星歯車機構の分解斜視図である。
【図3】図1に示す減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図4】内歯車の太陽歯車とが時計回りの同一方向に回転する初期位置を示す動作説明図である。
【図5】図4に示す状態から内歯車が反時計回り方向に回転する状態を示す動作説明図である。
【図6】図5に示す状態からロックレバーが回動して爪部がラチェット部に係合するロック状態を示す動作説明図である。
【図7】ロックレバーの爪部をラチェット部から離間させてロックを解除する状態を示す動作説明図である。
【図8】図8A〜図8Dは、それぞれ、チャック装置の一組のアームによってワークを把持した後に該ワークを離間させる状態を示す動作説明図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る減速比自動切換装置の初期位置を示す側面図である。
【図10】図9に示す状態から内歯車が反時計回り方向に回転する状態を示す動作説明図である。
【図11】図10に示す状態からロックレバーが回動して爪部がラチェット部に係合するロック状態を示す動作説明図である。
【図12】図9に示す減速比自動切換装置を構成するロック解除機構の斜視拡大図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る減速比自動切換装置の横断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る減速比自動切換装置の概略構成側面図である。
【図15】図14に示す減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図16】図14に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図17】図14に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置の概略構成側面図である。
【図19】図18に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図20】図18に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図21】図18に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図22】図18に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図23】本発明の第6の実施の形態に係る減速比自動切換装置の概略構成側面図である。
【図24】図23に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図25】図23に示す減速比自動切換装置の動作説明図である。
【図26】図1に示す単数の減速比自動切換装置をモータとアクチュエータとの間に介装した状態を示す一部切り欠き側面図である。
【図27】図1に示す複数の減速比自動切換装置をモータとアクチュエータとの間に介装した状態を示す一部切り欠き側面図である。
【図28】本発明の第7の実施の形態に係る減速比自動切換装置の一部省略斜視図である。
【図29】図28に示す減速比自動切換装置装置の初期位置における動作説明図である。
【図30】図28に示す減速比自動切換装置を構成する駆動用ギアの歯部と2歯を有する第1切り欠きギアおよび1歯を有する第2切り欠きギアとの噛合状態を示す部分切り欠き断面斜視図である。
【図31】図28に示す減速比自動切換装置装置のロック状態における動作説明図である。
【図32】図28に示す減速比自動切換装置装置のロックを解除する状態における動作説明図である。
【符号の説明】
10、10a、10b、70、90、110、140、170、200…減速比自動切換装置
14…ラチェット部 16…ハウジング
18…取付用孔部 20…太陽歯車
22…遊星歯車 24…内歯車
28…入力軸 30…壁部
32…フランジ部 36…出力軸
38…ストッパ機構 44、80、100…カム
50…長孔
54a、54b、96a、96b、146、212…ロックレバー
56、152…ばね部材 58…カム用突起部
60…爪部 61…モータ
62、62a…アーム 65…アクチュエータ
66…チャック装置 67…ボルト
72…ロック解除機構 112、118、122…ギア
142、172…カム部材 148、216…トルクリミッタレバー
Claims (4)
- 回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって往復動作するアクチュエータの変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、
前記回転駆動源に連結される入力軸と前記アクチュエータに連結される出力軸とを有し、相互に噛合する太陽歯車、遊星歯車および内歯車によって構成される遊星歯車機構と、
前記アクチュエータから予め設定された所定トルクを超える負荷が出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転していた前記内歯車が該太陽歯車と異なる方向に回転することにより該内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、
前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段と、
を備えることを特徴とする減速比自動切換装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記内歯車ロック手段は、内歯車の壁部に設けられたロックレバーを含み、前記ロックレバーがハウジングの内周面に形成されたラチェット部と係合することにより該内歯車がロックされることを特徴とする減速比自動切換装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記内歯車ロック手段は、ハウジングに軸支されるロックレバーを含み、前記ロックレバーが内歯車の外周面に形成されたラチェット部と係合することにより該内歯車がロックされることを特徴とする減速比自動切換装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記回転駆動源およびアクチュエータを一体的に連結する連結手段が設けられることを特徴とする減速比自動切換装置。
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