JP2013245786A - 負荷感応型変速装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】負荷が設定値未満である場合に等速伝動姿勢を維持し、負荷が設定値を超えた場合に減速伝動姿勢に変位する複数の切換部材20をリングギヤ12に変位自在に支持し、複数の切換部材20を繋ぐ付勢部材5を備えた。切換部材20が等速伝動姿勢であると、係合部23をキャリア15の凹状部15Aに係合させてサンギヤとリングギヤ12とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を現出する。切換部材20が減速伝動姿勢に変位すると、当接アーム22をミッションケース側の拘束歯部3に係合させ、係合部23を凹状部15Aから離脱させてリングギヤ12を拘束して減速を現出する。
【選択図】図3
Description
また、切換部材に対して余計な摺動抵抗の無い付勢部材の付勢力が直接的に作用するため、負荷トルクの変化に対して感度良く変速を行うことが可能となり、隣接する切換部材を繋ぐ位置に付勢部材を備えているので、複数の切換部材の姿勢を連動して変化させることも可能となる。
特に、変速作動時には、切換部材が等速伝動姿勢から減速伝動姿勢に切り換わり、切換部材の当接部がケースの拘束部に当接したタイミングで、切換部材の係合体をキャリアの被係合部に係合する状態を継続し、この後に、切換部材を更に変位させることで係合体をキャリアの被係合部から分離させることも可能となり、動力が伝えられない空転状態を招くことがない。尚、減速伝動状態から等速伝動状態に切り換わる際にも同様の作動により空転状態を招くことがない。
従って、負荷に基づき機械的な作動により自動的な変速を円滑に行う変速装置が少ない部品点数で小型で低廉に構成された。
一対の支持軸を持つ、もう一つのメリットは、単一の支持軸しか持たない場合と比べ、回転中心となる支持軸から付勢部材(スプリング)支持部までの長さの設定可能範囲が広がることにより、切換しきい値設定の自由度が大きくなることである。
〔第1実施形態・基本構成〕
図1、図3〜図5に示すように、本発明の負荷感応型変速装置は、入力軸1と、出力軸2とを主軸芯Xと同軸芯でミッションケースMに支持し、このミッションケースMの内部に入力軸1の駆動トルクSを出力軸2に伝える遊星ギヤ変速機構P(遊星ギヤ伝動系の一例)を備えている。この負荷感応型変速装置は、出力軸2に作用する負荷トルクTが設定値未満である場合には、図1、図3、図6(a)に示すように切換機構Aが遊星ギヤ変速機構Pでの変速を行わせず入力軸1の回転速度と等しい速度となる回転トルクを出力軸2に伝える等速伝動状態を現出する。これに対して、出力軸2に作用する負荷トルクTが設定値を超えた場合には図6(c)に示すように切換機構Aが遊星ギヤ変速機構Pで減速を行わせ入力軸1の回転速度より低速度の回転トルクを出力軸2に伝える減速伝動状態を現出する。
切換機構Aは、リングギヤ12のプレート部13に対し支持部Acによって変位自在に支持される複数(3つ)の切換部材20と、複数の切換部材20に付勢力を作用させる付勢部材としての複数の引っ張りコイル型のスプリング5と、前述したキャリア15と、ミッションケースMの内部において出力軸2を取り囲む領域においてギヤ状に形成された拘束部としての拘束歯部3とを備えて構成されている。
この切換機構Aでは、支持部Acとして切換部材20に支持軸としてのシャフトを突設し、このシャフトが係入する孔部をリングギヤ12に形成する構成を採用することにより、リングギヤ12に対して変位自在に切換部材20を支持するように構成しても良い。これと同様に、被係合部として多数の係合用のピン類をキャリア15(キャリア15と一体回転するディスク類でも良い)の外周に突設し、このピン類と係脱する凹状部を切換部材20に形成しても良い。
付勢部材としてのスプリングとして圧縮コイル型のスプリングを用いることが可能であり、トーション型のスプリングを用いることも可能である。また、付勢部材は切換部材20同士を直接的に繋ぐ位置に配置するものに限るものではなく、例えば、切換部材20とリングギヤ12とを繋ぐ位置に配置することで、リングギヤ12と切換部材20との間で付勢力を作用させる構成であっても良い。
入力軸1に印加される駆動トルクSの作用方向を図3に示す方向(反時計方向)とし、駆動トルクSと逆方向(時計方向)に出力軸2に作用する負荷トルクを負荷トルクTとし、図2に示す相対的な回転状態を示す図に基づいて変速作動を説明する。尚、本発明の負荷感応型変速装置では、入力軸1が駆動トルクSの作用方向に回転し、出力軸2も駆動トルクSの作用方向と同方向に回転するものであるが、出力軸2に作用する負荷トルクTは駆動トルクSの作用方向に対して逆向きに作用する。
これにより、図2(a)に示す如く、リングギヤ12とキャリア15とを一体化させ、結果として、サンギヤ11とリングギヤ12とプラネタリギヤ14とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を実現する。尚、この等速伝動状態では、出力軸2と入力軸1とが等速で回転する。
リングギヤ12とキャリア15との相対回転により凹状部15Aが係合ピン23に強く当接する状態では、係合ピン23を、主軸芯Xから離間させる方向に外方に力を作用させる。この力の作用により切換部材20は、同図において時計回り方向に回転する変位を行い、この変位により切換部材20は駆動トルクSの作用方向の上流側の支持ボルト25の部位を中心にして時計回り方向に回転する。この回転により係合ピン23をキャリア15の凹状部15Aから離脱させるためキャリア15が出力軸2と一体的回転する状態に達する。
このとき、プラネタリギヤ14が自転するので、キャリア15から離脱したリングギヤ12は駆動トルクSの作用方向と逆方向に回転を始める。同様に切換部材20も主軸芯X回りに駆動トルクSの作用方向と逆方向に少し回転した後に、図6(c)に示すように当接アーム22の突出端が拘束歯部3の一方の当接歯面3Tに当接する状態に至り安定する。
このように、本発明の負荷感応型変速装置は、リングギヤ12に対して変位自在に複数の切換部材20を支持し、隣接する切換部材20を繋ぐ形態で互いに付勢力を作用させるスプリング5を備えることにより、簡単で少ない部品で自動変速が可能な作動を実現する。この構成では、電気的な制御を行うためのセンサやアクチュエータ類を備えることなく、機械的な作動だけで等速伝動状態と低速伝動状態との切り換えを実現する。
この第2実施形態は、リングギヤ12に対して複数(3つ)の切換部材20を支持部Acにより変位自在に支持し、隣接する切換部材20を繋ぐ形態でスプリング5を備え、変位により拘束歯部3に係脱する切換機構Aを備えた基本的な構成において第1実施例と共通する。
出力軸2に作用する負荷(負荷トルクT)が設定値未満である場合には、スプリング5の付勢力により3つの切換部材20が図9(a)に示す等速伝動姿勢に維持される。この等速伝動姿勢では、切換部材20の係合ピン23がキャリア15の外周に形成された複数の凹状部15Aの何れかに係合すると共に、当接アーム22が拘束歯部3から離間する位置関係となる。これにより、サンギヤ11とリングギヤ12とプラネタリギヤ14とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を実現する。
この第2実施形態では、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同様の作用・効果を奏するが、これらの作用・効果に加えて以下の作用・効果を奏する。キャリア15に形成される凹状部15Aの開口幅W1が、この凹状部15Aの底部幅W2より狭く形成されているので、この凹状部15Aに係入する係合ピン23の脱落を抑制して切換部材20の減速伝動姿勢への変位を確実に行わせる。
この第3実施形態は、第1実施例と同様にリングギヤ12に対して複数(3つ)の切換部材20を支持部Acにより変位自在に支持し、隣接する切換部材20を繋ぐ形態でスプリング5を備え、変位により拘束歯部3に係脱する切換機構Aを備えた基本的な構成において共通する。尚、この第3実施形態では第1実施形態と同じ機能を有するものには、第1実施形態と共通する番号・符号を付している。
この第3実施形態では、支持部Acとして切換部材20に軸体としてのシャフトを突設し、このシャフトが係入する孔部をリングギヤ12に形成する構成を採用することにより、リングギヤ12に対して変位自在に切換部材20を支持するように構成しても良い。
出力軸2に作用する負荷(負荷トルクT)が設定値未満である場合には、スプリング5の付勢力により3つの切換部材20が図12(a)に示す等速伝動姿勢に維持される。この等速伝動姿勢では、切換部材20の係合突起26が係合ディスク31の外周の複数の係合凹部31Aの何れかに係合すると共に、当接アーム22は拘束歯部3から離間する位置関係となる。これにより、サンギヤ11とリングギヤ12とプラネタリギヤ14とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を実現する。
この第3実施形態では、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同様の作用・効果を奏するが、これらの作用・効果に加えて以下の作用・効果を奏する。切換部材20に形成される支持部Acを構成する孔部24を非円形に形成しているので、切換部材20が等速伝動姿勢にある場合には、係合突起26が係合ディスク31の係合凹部31Aから離間する方向への変位が規制する。また、切換部材20が減速伝動姿勢に達した場合には孔部24が、係合突起26が係合凹部31Aから確実に離脱する方向への変位を許容し、減速伝動状態に移行する。
この第4実施形態は、リングギヤ12に対して複数(3つ)の切換部材20を支持部Acで変位自在に支持し、隣接する切換部材20を繋ぐ形態でスプリング5を備え、変位により拘束歯部3に係脱する切換機構Aを備えた基本的な構成において第1実施例と共通する。尚、この第4実施形態では第1実施形態と同じ機能を有するものには、第1実施形態と共通する番号・符号を付している。
出力軸2に作用する負荷(負荷トルクT)が設定値未満である場合には、スプリング5の付勢力により3つの切換部材20が図13(a)に示す等速伝動姿勢に維持される。この等速伝動姿勢では、切換部材20の係合ピン23がキャリア15の外周に形成された複数の凹状部15Aの何れかに係合すると共に、当接アーム22が拘束歯部3から離間する位置関係となる。これにより、サンギヤ11とリングギヤ12とプラネタリギヤ14とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を実現する。
この第4実施形態では、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同様の作用・効果を奏するが、これらの作用・効果に加えて以下の作用・効果を奏する。切換部材20に長孔状の孔部24を形成し、この切換部材20に制御突起20Aを形成し、規制ピン35を備え、孔部24に単一の支持シャフト32を挿通するように支持部Acを構成している。このように支持部Acを構成することにより、部品点数で簡単な構成で切換部材20を変位自在に支持することが可能となり、切換部材20を適正に変位させて等速伝動状態と減速伝動状態とを現出する。
この第5実施形態は、リングギヤ12に対して複数(3つ)の切換部材20を支持部Acにより変位自在に支持し、隣接する切換部材20を繋ぐ形態でスプリング5を備え、変位により拘束歯部3に係脱する切換機構Aを備えた基本的な構成において第1実施例と共通する。尚、この第5実施形態では第1実施形態と同じ機能を有するものには、第1実施形態と共通する番号・符号を付している。
出力軸2に作用する負荷(負荷トルクT)が設定値未満である場合には、スプリング5の付勢力により3つの切換部材20が図18(a)に示す等速伝動姿勢に維持される。この等速伝動姿勢では、係合ピン23が姿勢制御孔43の底部43Aに位置するため係合ピン23がキャリア15の外周に形成された複数の凹状部15Aの何れかに係合し、当接アーム22が拘束歯部3から離間する位置関係となる。これにより、サンギヤ11とリングギヤ12とプラネタリギヤ14とキャリア15とを一体回転させる等速伝動状態を実現する。
この第5実施形態では、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同様の作用・効果を奏するが、これらの作用・効果に加えて以下の作用・効果を奏する。切換部材20をリングギヤ12のプレート部13に対して揺動させるように支持し、この切換部材20に対してスライド部材42を直線的にスライド移動自在に支持することにより、2種の単純な作動を合成する形態で係合ピン23を作動させ確実な作動を行わせることが可能となる。
3 拘束部・拘束歯部
3T 当接歯面
5 付勢部材(スプリング)
11 サンギヤ
12 リングギヤ
14 プラネタリギヤ
15 キャリア
15A 被係合部・凹状部
20 切換部材
22 当接部(当接アーム)
23 係合部・係合ピン
24 孔部
25 支持軸(支持ボルト)
26 係合部(係合突起)
32 支持軸(支持シャフト)
35 規制部材(規制ピン)
41 連動リング
42 スライド部材
43 制御機構(姿勢制御孔)
Ac 支持部
M ケース(ミッションケース)
W1 開口幅
W2 底部幅
X 軸芯(主軸芯)
Claims (8)
- 入力軸から駆動トルクが伝えられるサンギヤと、このサンギヤを取り囲むリングギヤと、前記サンギヤ及び前記リングギヤに咬合するプラネタリギヤと、プラネタリギヤとともに主軸芯を中心に回転運動することが可能なキャリアと、キャリアの回転運動を取り出す出力軸と、その内部に前記入力軸、前記サンギヤ、前記リングギヤ、前記プラネタリギヤ、前記キャリア及び前記出力軸を収容するケースとを備えて遊星ギヤ伝動系を構成し、
前記出力軸に作用する負荷トルクが設定値未満である場合に等速伝動姿勢に設定されることで前記サンギヤと前記リングギヤと前記プラネタリギヤと前記キャリアとを一体回転させる等速伝動状態を作り出し、前記負荷トルクが前記設定値を超える場合に減速伝動姿勢に設定されることで前記リングギヤの回転を阻止しながらキャリアの回転を許容して減速伝動状態を作り出す複数の切換部材を前記リングギヤに変位自在に備えると共に、
前記切換部材が、前記キャリアと一体回転する被係合部に対して前記等速伝動姿勢で係合し、前記減速伝動姿勢で前記被係合部から分離する係合部と、前記ケースの拘束部に対して前記等速伝動姿勢で分離し、前記減速伝動姿勢で前記拘束部に当接する当接部とを備えて構成され、
前記切換部材の変位力を隣接する前記切換部材に伝えるように隣接する位置の切換部材を繋ぐ状態で配置される付勢部材を備えて構成されている負荷感応型変速装置。 - 前記リングギヤに前記切換部材を支持する支持部が、前記リングギヤ又は前記切換部材に備えた支持軸と、この支持軸が挿通するように前記切換部材又は前記リングギヤに形成された孔部とを備えて構成され、
前記切換部材が前記等速伝動姿勢から前記減速伝動姿勢に変化して前記拘束部に前記当接部が当接した際に、前記被係合部から係合部材が離間する方向への前記切換部材の変位を許す形状に前記孔部が設定されている請求項1記載の負荷感応型変速装置。 - 前記支持部が、一対の前記支持軸と、各々の支持軸が挿通し、長手方向の両端側ほど接近するように円弧状に形成された前記孔部とを備えて構成され、前記切換部材が等速伝動姿勢にある場合に一対の前記支持軸が対応する前記孔部の端部に当接するように位置関係が設定されている請求項2記載の負荷感応型変速装置。
- 前記係合部が、前記主軸芯と平行する姿勢の係合ピンで形成され、前記被係合部が、前記キャリア又は前記キャリアと一体回転する部材の外周において前記主軸芯の方向に窪む凹状部で構成されると共に、前記凹状部の開口部の開口幅が、前記凹状部の底部幅より狭く設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の負荷感応型変速装置。
- 前記係合部が、前記主軸芯と平行する姿勢で前記切換部材に形成される係合ピンで構成され、前記被係合部が、前記キャリア又は前記キャリアと一体回転する部材の外周において前記主軸芯の方向に窪む凹状部で構成されると共に、
前記リングギヤに前記切換部材を支持する支持部が、前記リングギヤに備えた支持軸と、この支持軸が挿通するように前記切換部材に形成された孔部とを備えて構成され、この孔部は、前記等速伝動姿勢にある状態で前記切換部材が前記リングギヤに対して半径方向に変位を許す長孔状に形成され、
前記切換部材が前記等速伝動姿勢にある状態で、この切換部材の前記リングギヤの軸芯から離間する方向への変位を規制する規制部材を備えている請求項1記載の負荷感応型変速装置。 - 前記切換部材が前記等速伝動姿勢にある状態で、前記リングギヤの半径方向に移動自在にスライド部材が前記切換部材に支持され、このスライド部材に前記係合部を形成すると共に、前記切換部材が前記等速伝動姿勢にある状態では前記係合部を前記リングギヤの中心側に変位する状態を維持し、前記切換部材が前記減速伝動姿勢にある状態では前記係合部が前記被係合部から離間する方向への変位を許す制御機構を備えている請求項1記載の負荷感応型変速装置。
- 前記リングギヤに対し前記主軸芯と同軸芯で相対回転自在に連動リングを備え、前記切換部材の姿勢変更の力を前記連動リングに伝えて回転作動させる連動部を、前記切換部材と前記リングギヤとの間に形成している請求項1〜6のいずれか一項に記載の負荷感応型変速装置。
- 前記拘束部が、前記遊星ギヤ伝動系を内蔵する前記ケースにギヤ状に形成された複数の拘束歯部で構成され、前記当接部が、前記切換部材が前記減速伝動姿勢に変位した際に複数の前記拘束歯部の間に入り込む形態で前記拘束歯部に当接する当接アームで構成されると共に、
前記拘束歯部に前記当接アームが当接した状態で、これらの間に相対回転力が作用した場合に、前記拘束歯部からの前記当接アームの抜け出しを阻止する係合構造が前記拘束歯部と前記当接アームとの間に形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の負荷感応型変速装置。
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