JP2004238303A - チロシナーゼ阻害剤及び皮膚外用剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な美白作用を天然素材により実現する。
【解決手段】本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、いずれも黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有する。黒大豆種皮抽出組成物は、黒大豆種皮を酸水を用いて抽出及び濃縮し、中和後、限外濾過膜を用いて脱塩濃縮処理を行った抽出組成物である。黒大豆種皮から水抽出により溶出させた水溶性の成分がチロシナーゼ阻害に効果を発揮することは実験的に確かめられており、黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、良好な美白作用を発揮する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、いずれも黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有する。黒大豆種皮抽出組成物は、黒大豆種皮を酸水を用いて抽出及び濃縮し、中和後、限外濾過膜を用いて脱塩濃縮処理を行った抽出組成物である。黒大豆種皮から水抽出により溶出させた水溶性の成分がチロシナーゼ阻害に効果を発揮することは実験的に確かめられており、黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、良好な美白作用を発揮する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、美白剤として有用なチロシナーゼ阻害剤に関するものであり、さらには、美白作用等を有する新規な皮膚外用剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
皮膚のトラブルとしては、老化して弾力性を失うことにより生ずるシワの問題が代表的であるが、その他、肌の黒ずみ、シミ、ソバカス等もあり、これらも特に女性にとって大きな問題である。前記肌の黒ずみ、シミ、ソバカス等は、メラニン色素の沈着によって引き起こされるものであり、メラノサイト(色素母細胞)という皮膚組織で、アミノ酸の1種であるチロシンがチロシナーゼの存在下にドーパへと変換され、さらにドーパキノンとなり、その後自動酸化によりメラニンを形成するという代謝経路によって起こる。この代謝経路はチロシナーゼが関与している酸化還元反応が主体で、酸化の途中で多くの活性化酸素(フリーラジカル)が生じ、これらが細胞障害を引き起こすこともある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の肌の黒ずみやシミ、ソバカス等については、これを解消するための美白剤が種々提案され、既に数多く市販されているが、特にチロシナーゼの活性を阻害してメラニンの生成を抑えるチロシナーゼ阻害剤については、未だ十分な効果を有するものは見出されていない。また、ある程度の効果を有するものであっても、皮膚への浸透性の不足や皮膚に対する刺激の問題等、いくつかの課題を残している。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、チロシナーゼの活性を阻害してメラニンの生成を抑え、しかも副作用も少なく美白成分として有用なチロシナーゼ阻害剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、チロシナーゼ阻害機能を有し、化粧料等として有用な新規な皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の目的を達成するために、長期に亘り鋭意研究を重ねてきた。その結果、黒大豆の種皮から抽出した黒大豆種皮抽出組成物にチロシナーゼ阻害機能を有する成分が含まれていることを見出すに至った。
【0006】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、いずれも黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0007】
黒大豆種皮抽出組成物に含まれるチロシナーゼ阻害物質がいかなる化合物であるかについては、未だその詳細は不明であるが、黒大豆種皮から水抽出により溶出させた水溶性の成分がチロシナーゼ阻害に効果を発揮することは実験的に確かめられている。したがって、黒大豆種皮抽出組成物は、そのまま本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤の構成成分とすることで美白作用が発現する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のチロシナーゼ阻害剤、及び皮膚外用剤について説明する。
【0009】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、黒大豆の種皮から水抽出により溶出させた水溶性の抽出組成物を構成成分として含むものである。黒大豆は、中国等において大量に栽培されており、その種皮は大豆加工の製造工程で剥がれ落ち、副産物として例えば家畜の飼料に利用されている。この副産物種皮には、アントシアニン(特にシアニジン−3−グルコシド)が多く含まれる。本発明は、その有効成分を抽出、精製し、機能性に富む新素材として活用するものである。
【0010】
黒大豆の種皮から前記有効成分を抽出するには、例えば特開2002−128689号公報に記載される方法等を利用することもできるが、本発明での用途を考えた場合、樹脂及び有機溶媒を使わず、特に酸水による抽出が有利である。図1に酸水による抽出プロセスの一例を示す。
【0011】
図1に示す抽出プロセスでは、先ず、酸水抽出工程1により黒大豆種皮から酸水により水溶性成分を溶出させる。酸水に含まれる酸としては、任意の酸を用いることができるが、入手が容易で安価な塩酸が好適である。酸水抽出工程1では、酸水のpHは1.0〜2.0に設定する。酸水のpHが2.0を越えると、抽出効率が低下する虞れがある。
【0012】
前記抽出後、中和工程2において酸水を中和し、濾過工程3において通常の濾過を行う。中和工程2では、pHが3.0〜4.0(例えばpH3.8)になるように中和を行うが、これは黒大豆種皮抽出物の自然のpH値という理由による。中和に際しては任意のアルカリを使用することが可能であるが、入手が容易で安価なこと等からNaOHが好適である。
【0013】
前記濾過工程3の後、限外濾過工程4により脱塩濃縮、精製を行うが、ここで、限外濾過は、市販のUF膜を用いて行えばよい。
【0014】
以上により黒大豆種皮抽出組成物が得られるが、この抽出組成物は、例えばデキストリン添加工程5により含量調整を行った後、噴霧乾燥工程6で噴霧乾燥される。さらに、品質検査工程7において品質検査を行って製品化され、梱包工程8において梱包される。
【0015】
図1に示す抽出プロセスにしたがって抽出される黒大豆種皮抽出組成物は、種々の有効成分を高濃度で含有する。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析では、有効成分と考えられるアントシアニン含量は10重量%以上であり、また、UV吸度分析では、ポリフェノール含量が50重量%以上であった。
【0016】
抽出された黒大豆種皮抽出組成物は、チロシナーゼ阻害剤の有効成分として配合されるが、チロシナーゼ阻害剤として製剤化する場合、剤形としては、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形を採用することができる。その際、保存や取り扱いを容易にするために、デキストリン、シクロデキストリン等のキャリヤ、保存料、その他任意の助剤を必要に応じて配合することができる。
【0017】
前記チロシナーゼ阻害剤は、経皮的に吸収されてメラノサイト(色素母細胞)に達し、チロシナーゼの活性を阻害してメラニンが生成されないようにする。
【0018】
チロシナーゼ阻害剤の作用を最も有効に利用する方法は、化粧料、その他任意の皮膚外用剤に配合することである。配合対象として好適な皮膚外用剤としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤等を挙げることができる。ここで、黒大豆種皮抽出組成物の好適配合比率は、0.01〜10重量%である。前記配合比率が0.01重量%未満であると、十分な効果が期待できない。逆に、10重量部を越えると、黒大豆種皮抽出組成物自体の色等が問題になる。
【0019】
化粧料等の皮膚外用剤に美白作用を付与するために本発明のチロシナーゼ阻害剤を配合しても、それにより皮膚外用剤本来の組成が制限されることはない。したがって、本発明による皮膚外用剤には、一般的な化粧料等の製造に通常使用される各種主剤、及び助剤を常法により配合することができる。また、他にも、配合されるチロシナーゼ阻害物質の作用向上に有効な任意の助剤を含有させることができる。
【0020】
代表的な構成成分としては、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等を挙げることができる。
【0021】
ここで、収斂剤としては、クエン酸またはその塩類、酒石酸またはその塩類、乳酸またはその塩類、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ジユエキス、エイジツエキス、ハマメリスエキス、ゲンノショウコエキス、チャカテキン類、ガイヨウエキス、オドリコソウエキス、オトギリソウエキス、ダイオウエキス、ヤグルマソウエキス、スギナエキス、キズタエキス、キューカンバーエキス、マロニエエキス、サルビアエキス、メリッサエキス等を例示することができる。
【0022】
殺菌・抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン液、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、感光素101号、感光素201号、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ハロカルバン、レゾルシン、パラクロロフェノール、フェノキシエタノール、ビサボロール、ヒノキチオール、メントール、キトサン、キトサン分解物、ジユエキス、クジンエキス、エンメイソウエキス、ビワエキス、ウワウルシエキス、ホップエキス、ユッカエキス、アロエエキス、ケイヒエキス、ガジュツエキス等を挙げることができる。
【0023】
美白剤としては、アスコルビン酸及びその誘導体、イオウ、胎盤抽出物、コウジ酸及びその誘導体、グルコサミン及びその誘導体、アゼライン及びその誘導体、アルブチン及びその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸及びその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、センキュウエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、ハマボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物またはその抽出物、ギムネマエキス、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、ジユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、油溶性カンゾウエキス(カンゾウ疎水性フラボン、グラブリジン、グラブレン、リコカルコンA)等を例示することができる。
【0024】
紫外線吸収剤としては、β−イソプロピルフラノン誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、シノキサート、ジイソプロピルケイヒ酸メチル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタン、β−カロチン、γ−オリザノール、コメヌカエキス、アロエエキス、カバノキエキス、シラカンバエキス、カミツレエキス、コゴメグサエキス、セイヨウサンザシエキス、ヘンナエキス、チョウチグルミエキス、マロニエエキス、イチョウ葉エキス、カミツレエキス、セイヨウサンザシエキス、油溶性カンゾウエキス等を挙げることができる。
【0025】
保湿剤としては、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン、ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸またはそのエステル類、エイコサペンタエン酸またはそのエステル類、ペクチン、アルゲコロイド、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物またはその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ−オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マロニエエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマ、コメヌカエキス等を挙げることができる。
【0026】
細胞賦活剤としては、リボフラビンまたはその誘導体、ピリドキシンまたはその誘導体、ニコチン酸またはその誘導体、パントテン酸またはその誘導体、α−トコフェロールまたはその誘導体、アルニカエキス、ニンジンエキス、ナタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ヘチマエキス(サポニン)、シコンエキス、シラカンバエキス、オオバクエキス、ボタンピエキス、シャクヤクエキス、ムクロジエキス、ベニバナエキス、アシタバエキス、ビワ葉エキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、黄杞エキス、サルビアエキス、ニンニクエキス、マンネンロウエキス等が挙げられる。
【0027】
消炎・抗アレルギー剤としては、アズレン、アラントイン、アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、イプシロンアミノカプロン酸、オキシベンゾン、グリチルリチン酸またはその誘導体、グリチルレチン酸またはその誘導体、感光素301号、感光素401号、塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸またはその誘導体、アデノシンリン酸、エストラジオール、エスロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プロゲステロン、コルチコステロン、アルニカエキス、インチンコウエキス、サンシシエキス、ジュウヤクエキス、セイヨウトチノキエキス、カンゾウエキス、トウキエキス、ヨモギエキス、ワレモコウエキス、リンドウエキス、サイコエキス、センキュウエキス、ボウフウエキス、セイヨウノコギリソウエキス、オウレンエキス、シソエキス等である。
【0028】
抗酸化・活性酸素消去剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、バイカリン、バイカレイン、スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、ローズマリーエキス、メリッサエキス、オウゴンエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、ホップエキス、ハマメリスエキス、シャクヤクエキス、セージエキス、キナエキス、カミツレエキス、シソエキス、イチョウ葉エキス、ユーカリエキス、タイムエキス、カルダモンエキス、キャラウェイエキス、ナツメグエキス、メースエキス、ローレルエキス、クローブエキス、ターメリックエキス、ヤナギタデエキス等を例示することができる。
【0029】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実験結果に基づいて説明する。
【0030】
黒大豆種皮抽出組成物の調製
黒大豆種皮100kgを温水600リットルに投入し、塩酸を加えてpH1.0〜2.0に調整した。pH調整後、緩やかに撹拌を続けながら3時間、室温に保った。
【0031】
その後、この抽出液をpH3.8になるまでNaOHで中和し、濾過により固形物を除去した。さらに、濾過液を限外濾過膜(UF膜)を用いて限外濾過し、脱塩濃縮処理を行った。
【0032】
得られた濃縮液にデキストリンを加え、アントシアニン含量が10重量%となるまで含量調整を行った後、噴霧乾燥機で乾燥した。これにより粉末状の黒大豆種皮抽出組成物1.2kgが得られた。
【0033】
チロシナーゼ阻害機能の評価
先に調製した黒大豆種皮抽出組成物を含むチロシナーゼ阻害剤について、チロシナーゼ阻害機能について評価した。
【0034】
評価に際して、黒大豆種皮抽出組成物は、1/15mol/Lリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解し、最終濃度の3倍濃度溶液を用時調製して試験に用いた。また、比較対照物質として化粧品に使われているコージ酸を用い、また陽性対照物質として1−フェニル−2−チオ尿素(PTU:和光純薬社製)を用いた。比較対照物質であるコージ酸は、リン酸緩衝液に溶解し、最終濃度の3倍濃度溶液を用時調製して試験に用いた。陽性対照物質であるPTUは、ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)に溶解し、50mg/mL溶液を用時調製した(最終濃度100μg/mLの500倍濃度)。これをリン酸緩衝液に0.6vol%添加し、最終濃度の3倍濃度溶液を調製して試験に用いた。チロシナーゼ(マッシュルーム由来)及びDOPA[(−)−3−(3,4−dihydroxyphenyl)−L−alanine]は、リン酸緩衝液に溶解した。評価方法は次の通りである。
【0035】
96ウェルプレートに3倍濃度の被験物質、PTU、コージ酸溶液を100μLずつ分注した。これらにチロシナーゼ溶液(110units/mL)100μLを加え、37℃で10分間インキュベートした。さらに、DOPA溶液(300μg/mL)を100μL加えた(PTU処理群における最終溶媒濃度は0.2vol%)。さらに37℃で5分間インキュベートした後、吸光度OD(476nm)をマイクロプレートリーダー(Tecan)測定した。また、被験物質自体がチロシナーゼ反応に関係なく吸光度に影響を与える可能性があるため、DOPA溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えた群も設け、同時に測定を行った。
【0036】
各群のDOPA存在下での吸光度からDOPA非存在下での吸光度を引いた値を算出し、これに基づいて各群の陰性対照(無処理または0.2vol%DMSO)に対する相対チロシナーゼ活性を算出した。算出した相対チロシナーゼ活性は、チロシナーゼ溶液に何も加えない場合を100%とする相対活性(%)である。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表3において、例えば黒大豆種皮抽出組成物を10μg/ml含むサンプルのODを見ると、DOPA非存在下において被験物質自体の色のせいでODが高くなっている(比較対照物質:0.041、10μg/ml:0.074)にもかかわらず、DOPA存在下ではODが低くなっている(比較対照物質:0.247、10μg/ml:0.217)。この時の相対活性は69.4%であり、コージ酸10μg/mlの66%とほぼ同じである。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、美白作用の点において、優れた効果を発揮する。例えば、本発明のチロシナーゼ阻害剤は、優れた美白作用を発揮することから、この点において、本発明のチロシナーゼ阻害剤を配合した化粧料は、若々しい肌を維持するのに極めて有効なものとなる。
【0040】
また、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、食品である黒大豆の種皮の水溶性成分を有効成分とするものであるので、皮膚外用剤構成成分として皮膚に塗布しても障害を起こす虞れはなく、塗布されたものが仮に口中に入ったとしても何ら心配が要らず、安全で使いやすいという特徴を有する。さらに、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、水抽出による黒大豆種皮の水溶性成分を有効成分としているので、溶解性が良好で皮膚への浸透性もよいという特徴を有する。さらにまた、黒大豆種皮の水溶性成分の抽出に樹脂や有機溶媒を用いることがないので、製造コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抽出プロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、美白剤として有用なチロシナーゼ阻害剤に関するものであり、さらには、美白作用等を有する新規な皮膚外用剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
皮膚のトラブルとしては、老化して弾力性を失うことにより生ずるシワの問題が代表的であるが、その他、肌の黒ずみ、シミ、ソバカス等もあり、これらも特に女性にとって大きな問題である。前記肌の黒ずみ、シミ、ソバカス等は、メラニン色素の沈着によって引き起こされるものであり、メラノサイト(色素母細胞)という皮膚組織で、アミノ酸の1種であるチロシンがチロシナーゼの存在下にドーパへと変換され、さらにドーパキノンとなり、その後自動酸化によりメラニンを形成するという代謝経路によって起こる。この代謝経路はチロシナーゼが関与している酸化還元反応が主体で、酸化の途中で多くの活性化酸素(フリーラジカル)が生じ、これらが細胞障害を引き起こすこともある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の肌の黒ずみやシミ、ソバカス等については、これを解消するための美白剤が種々提案され、既に数多く市販されているが、特にチロシナーゼの活性を阻害してメラニンの生成を抑えるチロシナーゼ阻害剤については、未だ十分な効果を有するものは見出されていない。また、ある程度の効果を有するものであっても、皮膚への浸透性の不足や皮膚に対する刺激の問題等、いくつかの課題を残している。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、チロシナーゼの活性を阻害してメラニンの生成を抑え、しかも副作用も少なく美白成分として有用なチロシナーゼ阻害剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、チロシナーゼ阻害機能を有し、化粧料等として有用な新規な皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の目的を達成するために、長期に亘り鋭意研究を重ねてきた。その結果、黒大豆の種皮から抽出した黒大豆種皮抽出組成物にチロシナーゼ阻害機能を有する成分が含まれていることを見出すに至った。
【0006】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、いずれも黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0007】
黒大豆種皮抽出組成物に含まれるチロシナーゼ阻害物質がいかなる化合物であるかについては、未だその詳細は不明であるが、黒大豆種皮から水抽出により溶出させた水溶性の成分がチロシナーゼ阻害に効果を発揮することは実験的に確かめられている。したがって、黒大豆種皮抽出組成物は、そのまま本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤の構成成分とすることで美白作用が発現する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のチロシナーゼ阻害剤、及び皮膚外用剤について説明する。
【0009】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、黒大豆の種皮から水抽出により溶出させた水溶性の抽出組成物を構成成分として含むものである。黒大豆は、中国等において大量に栽培されており、その種皮は大豆加工の製造工程で剥がれ落ち、副産物として例えば家畜の飼料に利用されている。この副産物種皮には、アントシアニン(特にシアニジン−3−グルコシド)が多く含まれる。本発明は、その有効成分を抽出、精製し、機能性に富む新素材として活用するものである。
【0010】
黒大豆の種皮から前記有効成分を抽出するには、例えば特開2002−128689号公報に記載される方法等を利用することもできるが、本発明での用途を考えた場合、樹脂及び有機溶媒を使わず、特に酸水による抽出が有利である。図1に酸水による抽出プロセスの一例を示す。
【0011】
図1に示す抽出プロセスでは、先ず、酸水抽出工程1により黒大豆種皮から酸水により水溶性成分を溶出させる。酸水に含まれる酸としては、任意の酸を用いることができるが、入手が容易で安価な塩酸が好適である。酸水抽出工程1では、酸水のpHは1.0〜2.0に設定する。酸水のpHが2.0を越えると、抽出効率が低下する虞れがある。
【0012】
前記抽出後、中和工程2において酸水を中和し、濾過工程3において通常の濾過を行う。中和工程2では、pHが3.0〜4.0(例えばpH3.8)になるように中和を行うが、これは黒大豆種皮抽出物の自然のpH値という理由による。中和に際しては任意のアルカリを使用することが可能であるが、入手が容易で安価なこと等からNaOHが好適である。
【0013】
前記濾過工程3の後、限外濾過工程4により脱塩濃縮、精製を行うが、ここで、限外濾過は、市販のUF膜を用いて行えばよい。
【0014】
以上により黒大豆種皮抽出組成物が得られるが、この抽出組成物は、例えばデキストリン添加工程5により含量調整を行った後、噴霧乾燥工程6で噴霧乾燥される。さらに、品質検査工程7において品質検査を行って製品化され、梱包工程8において梱包される。
【0015】
図1に示す抽出プロセスにしたがって抽出される黒大豆種皮抽出組成物は、種々の有効成分を高濃度で含有する。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析では、有効成分と考えられるアントシアニン含量は10重量%以上であり、また、UV吸度分析では、ポリフェノール含量が50重量%以上であった。
【0016】
抽出された黒大豆種皮抽出組成物は、チロシナーゼ阻害剤の有効成分として配合されるが、チロシナーゼ阻害剤として製剤化する場合、剤形としては、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形を採用することができる。その際、保存や取り扱いを容易にするために、デキストリン、シクロデキストリン等のキャリヤ、保存料、その他任意の助剤を必要に応じて配合することができる。
【0017】
前記チロシナーゼ阻害剤は、経皮的に吸収されてメラノサイト(色素母細胞)に達し、チロシナーゼの活性を阻害してメラニンが生成されないようにする。
【0018】
チロシナーゼ阻害剤の作用を最も有効に利用する方法は、化粧料、その他任意の皮膚外用剤に配合することである。配合対象として好適な皮膚外用剤としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、入浴剤等を挙げることができる。ここで、黒大豆種皮抽出組成物の好適配合比率は、0.01〜10重量%である。前記配合比率が0.01重量%未満であると、十分な効果が期待できない。逆に、10重量部を越えると、黒大豆種皮抽出組成物自体の色等が問題になる。
【0019】
化粧料等の皮膚外用剤に美白作用を付与するために本発明のチロシナーゼ阻害剤を配合しても、それにより皮膚外用剤本来の組成が制限されることはない。したがって、本発明による皮膚外用剤には、一般的な化粧料等の製造に通常使用される各種主剤、及び助剤を常法により配合することができる。また、他にも、配合されるチロシナーゼ阻害物質の作用向上に有効な任意の助剤を含有させることができる。
【0020】
代表的な構成成分としては、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素消去剤等を挙げることができる。
【0021】
ここで、収斂剤としては、クエン酸またはその塩類、酒石酸またはその塩類、乳酸またはその塩類、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛、ジユエキス、エイジツエキス、ハマメリスエキス、ゲンノショウコエキス、チャカテキン類、ガイヨウエキス、オドリコソウエキス、オトギリソウエキス、ダイオウエキス、ヤグルマソウエキス、スギナエキス、キズタエキス、キューカンバーエキス、マロニエエキス、サルビアエキス、メリッサエキス等を例示することができる。
【0022】
殺菌・抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン液、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、感光素101号、感光素201号、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ハロカルバン、レゾルシン、パラクロロフェノール、フェノキシエタノール、ビサボロール、ヒノキチオール、メントール、キトサン、キトサン分解物、ジユエキス、クジンエキス、エンメイソウエキス、ビワエキス、ウワウルシエキス、ホップエキス、ユッカエキス、アロエエキス、ケイヒエキス、ガジュツエキス等を挙げることができる。
【0023】
美白剤としては、アスコルビン酸及びその誘導体、イオウ、胎盤抽出物、コウジ酸及びその誘導体、グルコサミン及びその誘導体、アゼライン及びその誘導体、アルブチン及びその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸及びその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、センキュウエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、ハマボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物またはその抽出物、ギムネマエキス、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、ジユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、油溶性カンゾウエキス(カンゾウ疎水性フラボン、グラブリジン、グラブレン、リコカルコンA)等を例示することができる。
【0024】
紫外線吸収剤としては、β−イソプロピルフラノン誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、シノキサート、ジイソプロピルケイヒ酸メチル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタン、β−カロチン、γ−オリザノール、コメヌカエキス、アロエエキス、カバノキエキス、シラカンバエキス、カミツレエキス、コゴメグサエキス、セイヨウサンザシエキス、ヘンナエキス、チョウチグルミエキス、マロニエエキス、イチョウ葉エキス、カミツレエキス、セイヨウサンザシエキス、油溶性カンゾウエキス等を挙げることができる。
【0025】
保湿剤としては、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン、ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸またはそのエステル類、エイコサペンタエン酸またはそのエステル類、ペクチン、アルゲコロイド、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物またはその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ−オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マロニエエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマ、コメヌカエキス等を挙げることができる。
【0026】
細胞賦活剤としては、リボフラビンまたはその誘導体、ピリドキシンまたはその誘導体、ニコチン酸またはその誘導体、パントテン酸またはその誘導体、α−トコフェロールまたはその誘導体、アルニカエキス、ニンジンエキス、ナタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ヘチマエキス(サポニン)、シコンエキス、シラカンバエキス、オオバクエキス、ボタンピエキス、シャクヤクエキス、ムクロジエキス、ベニバナエキス、アシタバエキス、ビワ葉エキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、黄杞エキス、サルビアエキス、ニンニクエキス、マンネンロウエキス等が挙げられる。
【0027】
消炎・抗アレルギー剤としては、アズレン、アラントイン、アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、イプシロンアミノカプロン酸、オキシベンゾン、グリチルリチン酸またはその誘導体、グリチルレチン酸またはその誘導体、感光素301号、感光素401号、塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸またはその誘導体、アデノシンリン酸、エストラジオール、エスロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プロゲステロン、コルチコステロン、アルニカエキス、インチンコウエキス、サンシシエキス、ジュウヤクエキス、セイヨウトチノキエキス、カンゾウエキス、トウキエキス、ヨモギエキス、ワレモコウエキス、リンドウエキス、サイコエキス、センキュウエキス、ボウフウエキス、セイヨウノコギリソウエキス、オウレンエキス、シソエキス等である。
【0028】
抗酸化・活性酸素消去剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、バイカリン、バイカレイン、スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、ローズマリーエキス、メリッサエキス、オウゴンエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、ホップエキス、ハマメリスエキス、シャクヤクエキス、セージエキス、キナエキス、カミツレエキス、シソエキス、イチョウ葉エキス、ユーカリエキス、タイムエキス、カルダモンエキス、キャラウェイエキス、ナツメグエキス、メースエキス、ローレルエキス、クローブエキス、ターメリックエキス、ヤナギタデエキス等を例示することができる。
【0029】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実験結果に基づいて説明する。
【0030】
黒大豆種皮抽出組成物の調製
黒大豆種皮100kgを温水600リットルに投入し、塩酸を加えてpH1.0〜2.0に調整した。pH調整後、緩やかに撹拌を続けながら3時間、室温に保った。
【0031】
その後、この抽出液をpH3.8になるまでNaOHで中和し、濾過により固形物を除去した。さらに、濾過液を限外濾過膜(UF膜)を用いて限外濾過し、脱塩濃縮処理を行った。
【0032】
得られた濃縮液にデキストリンを加え、アントシアニン含量が10重量%となるまで含量調整を行った後、噴霧乾燥機で乾燥した。これにより粉末状の黒大豆種皮抽出組成物1.2kgが得られた。
【0033】
チロシナーゼ阻害機能の評価
先に調製した黒大豆種皮抽出組成物を含むチロシナーゼ阻害剤について、チロシナーゼ阻害機能について評価した。
【0034】
評価に際して、黒大豆種皮抽出組成物は、1/15mol/Lリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解し、最終濃度の3倍濃度溶液を用時調製して試験に用いた。また、比較対照物質として化粧品に使われているコージ酸を用い、また陽性対照物質として1−フェニル−2−チオ尿素(PTU:和光純薬社製)を用いた。比較対照物質であるコージ酸は、リン酸緩衝液に溶解し、最終濃度の3倍濃度溶液を用時調製して試験に用いた。陽性対照物質であるPTUは、ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)に溶解し、50mg/mL溶液を用時調製した(最終濃度100μg/mLの500倍濃度)。これをリン酸緩衝液に0.6vol%添加し、最終濃度の3倍濃度溶液を調製して試験に用いた。チロシナーゼ(マッシュルーム由来)及びDOPA[(−)−3−(3,4−dihydroxyphenyl)−L−alanine]は、リン酸緩衝液に溶解した。評価方法は次の通りである。
【0035】
96ウェルプレートに3倍濃度の被験物質、PTU、コージ酸溶液を100μLずつ分注した。これらにチロシナーゼ溶液(110units/mL)100μLを加え、37℃で10分間インキュベートした。さらに、DOPA溶液(300μg/mL)を100μL加えた(PTU処理群における最終溶媒濃度は0.2vol%)。さらに37℃で5分間インキュベートした後、吸光度OD(476nm)をマイクロプレートリーダー(Tecan)測定した。また、被験物質自体がチロシナーゼ反応に関係なく吸光度に影響を与える可能性があるため、DOPA溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えた群も設け、同時に測定を行った。
【0036】
各群のDOPA存在下での吸光度からDOPA非存在下での吸光度を引いた値を算出し、これに基づいて各群の陰性対照(無処理または0.2vol%DMSO)に対する相対チロシナーゼ活性を算出した。算出した相対チロシナーゼ活性は、チロシナーゼ溶液に何も加えない場合を100%とする相対活性(%)である。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表3において、例えば黒大豆種皮抽出組成物を10μg/ml含むサンプルのODを見ると、DOPA非存在下において被験物質自体の色のせいでODが高くなっている(比較対照物質:0.041、10μg/ml:0.074)にもかかわらず、DOPA存在下ではODが低くなっている(比較対照物質:0.247、10μg/ml:0.217)。この時の相対活性は69.4%であり、コージ酸10μg/mlの66%とほぼ同じである。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、美白作用の点において、優れた効果を発揮する。例えば、本発明のチロシナーゼ阻害剤は、優れた美白作用を発揮することから、この点において、本発明のチロシナーゼ阻害剤を配合した化粧料は、若々しい肌を維持するのに極めて有効なものとなる。
【0040】
また、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、食品である黒大豆の種皮の水溶性成分を有効成分とするものであるので、皮膚外用剤構成成分として皮膚に塗布しても障害を起こす虞れはなく、塗布されたものが仮に口中に入ったとしても何ら心配が要らず、安全で使いやすいという特徴を有する。さらに、本発明のチロシナーゼ阻害剤、皮膚外用剤は、水抽出による黒大豆種皮の水溶性成分を有効成分としているので、溶解性が良好で皮膚への浸透性もよいという特徴を有する。さらにまた、黒大豆種皮の水溶性成分の抽出に樹脂や有機溶媒を用いることがないので、製造コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抽出プロセスの一例を示すフローチャートである。
Claims (16)
- 黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤。
- 前記黒大豆種皮抽出組成物は、黒大豆種皮を酸水を用いて抽出及び濃縮し、中和後、限外濾過膜を用いて脱塩濃縮処理を行った抽出組成物であることを特徴とする請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
- 前記黒大豆種皮抽出組成物は、シアニジン−3−グルコシドを10重量%以上含有することを特徴とする請求項2記載のチロシナーゼ阻害剤。
- キャリヤ、保存料、その他の助剤のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
- 剤形が、粉末状、顆粒状、錠剤状のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
- 黒大豆種皮から抽出された黒大豆種皮抽出組成物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。
- 化粧料として用いられることを特徴とする請求項6記載の皮膚外用剤。
- 軟膏、クリーム、乳液、ローション、入浴剤のいずれかであることを特徴とする請求項6記載の皮膚外用剤。
- 黒大豆種皮抽出組成物の配合比率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項6記載の皮膚外用剤。
- 前記黒大豆種皮抽出組成物は、黒大豆種皮を酸水を用いて抽出及び濃縮し、中和後、限外濾過膜を用いて脱塩濃縮処理を行った抽出組成物であることを特徴とする請求項6記載の皮膚外用剤。
- 前記黒大豆種皮抽出組成物は、シアニジン−3−グルコシドを10重量%以上含有することを特徴とする請求項10記載の皮膚外用剤。
- 黒大豆種皮を酸水を用いて抽出及び濃縮し、中和後、限外濾過膜を用いて脱塩濃縮処理を行うことを特徴とする黒大豆種皮抽出方法。
- 前記酸水は、pH1.0〜2.0とすることを特徴とする請求項12記載の黒大豆種皮抽出方法。
- 前記酸水は、酸として塩酸を含有することを特徴とする請求項12記載の黒大豆種皮抽出方法。
- 前記中和は、pH3.0〜4.0となるようにアルカリを用いて中和することを特徴とする請求項12記載の黒大豆種皮抽出方法。
- 前記アルカリとして、NaOHを用いることを特徴とする請求項15記載の黒大豆種皮抽出方法。
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