JP2004236547A - 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置 - Google Patents

細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2004236547A
JP2004236547A JP2003027710A JP2003027710A JP2004236547A JP 2004236547 A JP2004236547 A JP 2004236547A JP 2003027710 A JP2003027710 A JP 2003027710A JP 2003027710 A JP2003027710 A JP 2003027710A JP 2004236547 A JP2004236547 A JP 2004236547A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
disk
cell culture
solution
cell
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003027710A
Other languages
English (en)
Inventor
Tsutomu Suzuki
力 鈴木
Shigeo Watabe
成夫 渡部
Norito Kuno
範人 久野
Minoru Ueda
実 上田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Healthcare Manufacturing Ltd
Original Assignee
Hitachi Medical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Medical Corp filed Critical Hitachi Medical Corp
Priority to JP2003027710A priority Critical patent/JP2004236547A/ja
Publication of JP2004236547A publication Critical patent/JP2004236547A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

【課題】従来は、複数の培養容器を用いて人手による培地交換作業と継代作業を行っていたため、コンタミネーションが発生しやすく、細胞へのストレスも大きく,多量の細胞培養が難しかった。
【解決手段】ディスク2000上に構成した、初代培養容器2100と2代培養容器2200と2202と2204を継代流路2105で接続し、また、2代培養容器2200と3代培養容器2300と2302と2304と2306を継代流路2205で接続し、継代流路2105または2205内で発生する表面張力とディスク2000を回転させて発生する遠心力をもとにしたサイフォンの原理で継代を行い,培養容器2100,2200,2300他おのおのから培地等を抜き取り、ピペッタで培地等を供給することで細胞培養を自動化する。
細胞培養に関わる作業を自動化でき、コンタミネーションの発生を押さえ、細胞にストレスを与えず、多量の細胞培養を自動化できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器と、これを用いて細胞を培養するための自動操作を行う細胞培養装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
接着依存性細胞を増殖させるために行う培養操作は,そのほとんどが手作業によって行われている。この主たる操作としては、培養容器内部の培地を新しく交換する作業(以下、培地交換作業)、培地容器内部に広がった細胞をより広い培養面積をもつ容器や複数の容器へ移し替える作業(以下、継代作業)がある(非特許文献1 参照)。
【0003】
【非特許文献1】
株式会社 秀潤社発行「バイオ実験イラストレイテッド(6)すくすく育て細胞培養」P92,93〜95
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の細胞培養操作では、そのほとんどが手作業で行われていた。そのため、培養容器が多くなると操作者に多大な負担が掛かり、培養操作中にコンタミネーションが発生し細胞が死滅しやすく、目標の細胞数が得られなくなる問題がある。また、細胞培養操作のため培養容器を細胞培養に適した環境を保持した保管庫(以下、インキュベータ)から取り出すため、一時的ではあるが環境が激変しこのストレスによって細胞が弱ってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の手作業による細胞培養操作から発生する問題点に着目し、細胞培養操作の自動化を容易にする細胞培養容器と、これを用いて細胞を培養するための自動操作を行う細胞培養装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願の特徴によれば、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクを備え、前出ディスクに培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を供給するためのピペッタと、前出ディスクを回転させる手段と、前出ディスクに保持された培地の色や濁りを検出するための手段と、前出細胞培養容器内部で培養される細胞の形態を観察するための手段と、前出ディスク付近の二酸化炭素の濃度を検出する手段と、前出ディスク付近の温度を検出する手段と、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を4℃に保持する手段およびこれらの溶液を加熱する手段を備え、前出ディスクを回転させることで生じる遠心力をもとにサイフォンの原理を用いて前出細胞を含む溶液を継代するとともに、前出細胞培養容器中遠心力が最大になる部分に設置した隔室に細胞を凝集させることによって達成できる。
【0007】
本願の別の特徴によれば、本願に係わる細胞培養ディスクは、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、サイフォンの原理を用いて前出細胞を含む溶液を継代することを特徴とする。
【0008】
本願のさらに別の特徴によれば、上記細胞培養ディスクは、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、前出の継代するための流路中にある前出細胞を含む溶液の送液制御に、前出の継代するための流路の壁面と前出細胞を含む溶液が接触することによって発生する表面張力を用いることを特徴とする。
【0009】
本願のさらに別の特徴によれば、上記細胞培養ディスクは接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、前出細胞を遠心力によって前出細胞培養容器中遠心力が最大になる部分に設置した隔室に細胞を凝集させることを特徴とする。
【0010】
本願のさらに別の特徴によれば、上記細胞培養ディスクは、細胞培養における継代において、継代先の細胞培養容器が複数あって、この全ての細胞培養容器へ同時に継代することを特徴とする
【0011】
本願のさらに別の特徴によれば、上記細胞培養ディスクは、複数の細胞培養容器から同量の培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を同時に抜き取るために、全ての細胞培養容器についてこれらを抜き取るための流路の長さを同じにしたことを特徴とする。
【0012】
本願のさらに別の特徴によれば、上記細胞培養ディスクは、通気性はあるが培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を漏らさず可視光について透明な薄フィルムで、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器の表面を封止したことを特徴とする。
【0013】
本願のさらに別の特徴によれば、本願に係わる細胞培養装置は、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器とこれらを間で細胞を継代するための流路を備えたディスクと、前出ディスクに培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を供給するためのピペッタと、前出ディスクを回転させる手段と、前出ディスクに保持された培地の色や濁りを検出するための手段と、前出細胞培養容器内部で培養される細胞の形態を観察するための手段と、前出ディスク付近の二酸化炭素の濃度を検出する手段と、前出ディスク付近の温度を検出する手段と、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を4℃に保持する手段およびこれらの溶液を加熱する手段を備え、前出ディスクを回転させることで生じる遠心力をもとにサイフォンの原理を用いて前出細胞を含む溶液を継代することを特徴とする。
【0014】
本願のさらに別の特徴によれば、本願に係わる細胞培養装置は、接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器とこれらを間で細胞を継代するための流路を備えたディスクと、前出ディスクに培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を供給するためのピペッタと、前出ディスクを回転させる手段と、前出ディスクに保持された培地の色や濁りを検出するための手段と、前出細胞培養容器内部で培養される細胞の形態を観察するための手段と、前出ディスク付近の二酸化炭素の濃度を検出する手段と、前出ディスク付近の温度を検出する手段と、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を4℃に保持する手段およびこれらの溶液を加熱する手段を備え、前出ディスクを回転させることで生じる遠心力をもとに前出細胞培養容器中遠心力が最大になる部分に設置した隔室に細胞を凝集させることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の1実施を図面に基づいて説明する。
図1aは、本発明による細胞培養装置1000を示したもので、前面には培養室ドア1010と培養液室ドア1020の2つのドアがあり、それぞれ培養を行うための培養室1015と、培養に用いる培地等の試薬を保存する培養液室1025(ここでは表示していない)へ別々にアクセスするために設置している。
【0016】
図1bは説明のため培養室ドア1010と培養液室ドア1020を表示しないで、培養室1015と培養液室1025の内部を示したものである。培養室1015の上部には、撹拌扇3080を設置し内部の温度や湿度、二酸化炭素濃度等、細胞培養のための雰囲気を一様にする。また、培養室1015の奥面には、温度センサ3060や湿度センサ3070、二酸化炭素濃度センサ3050が設置され、これらのセンサが雰囲気の状態変化を検出し(表示しない)制御装置に信号を伝達し、それぞれに設定した範囲を超える変動が検出されたときには、この値を設定範囲に戻すような制御を加える。培養室1015の床部には、細胞培養容器としてディスク2000が中心シャフト3005を介して回転モータ3000に接続されて設置されている。この細胞培養装置1000の制御は、前面に設置した操作パネル1040を利用して、操作手順や培養条件の入力、培養操作の開始と停止等が可能で、さらに電源パネル1030に設置した(表示しない)外部インターフェースを介して細胞培養装置1000とは別に設置した制御装置やコンピュータで細胞培養装置1000を一台または複数台を制御することができる。なお、培養液室1025は、この内部に設置した交換用培地バッグや細胞剥離のための薬剤(例えばトリプシン等)バッグ3100、(表示しない)リン酸緩衝食塩水用バッグの温度を4℃に保ち、これらをディスク2000に注入する直前に細胞培養に適した温度(例えば37℃)に加熱する機構(表示しない)を有する。
【0017】
図2は、説明のためドアや壁、培養液室1025を表示せず、培養室1015の内部を示したものである。細胞培養容器としてディスク2000が回転モータ3000に接続されて設置され、回転モータ3000はディスク2000の内部で遠心力が50×908m毎秒毎秒に達するよう制御される。ディスク2000の上部には培地モニタ3040が設置されていて、ディスク2000に保持された培地について、そのpH値に依存して変化する色のほか濁りを検出すし、(表示しない)制御装置に信号を伝達している。また、培地やリン酸緩衝食塩水、細胞剥離のための薬剤(例えばトリプシン等)を供給するためのピペッタ3010が設置されている。ピペッタ3010の先端には、2本以上のピペッタチューブが設置されており、図2に示したように2本の設置では、培地とリン酸緩衝食塩水を注入するためのピペッタチューブと、細胞剥離のための薬剤(例えばトリプシン等)を注入するためのピペッタチューブに分類している。これらは、(表示しない)ピペッタ駆動装置でピペッタ3010の回転停止位置を制御すること、及び、培養液室1025からの(表示しない)送液パイプ途中に設置した(表示しない)切り替え装置による流路切り替えによってディスク2000への注入が制御されている。また、ディスク2000から培養した細胞を取り出すためのピペッタ3020と、これによって取り出された細胞を格納するチューブ3110が設置されている。これについては後述する。ディスク2000の下面には、位相差顕微鏡3030が設置されていて、ディスク2000についてこれの反対側に設置した(表示しない)照明光源によって照明されたディスク2000の一部の細胞の個数や形態を観察する。さらに、スライダー3032を用いて位相差顕微鏡3030をディスク2000についてその半径方向に走査するとともに、ディスク2000をその回転方向について走査することで、ディスク2000の全面の細胞の個数や形態を観察する。
【0018】
図3aは、細胞培養容器としてディスク2000の表面を示したもので、説明のために、ディスク面上の一部のフィルムを表示していない。ディスク2000はポリスチレン製で、初代培養容器2100他、2代培養容器2200、3代培養容器2300の他、これらを結ぶ継代流路が形成されており、この表面を防水で通気性のある通気性フィルム2010が覆っている。通気性フィルム2010には、初代培養容器2100他、2代培養容器2200、3代培養容器2300へ培地等を注入するための注入穴2040と、これらの内部の湿度や圧力等雰囲気を培養室1015と均一にするための空気穴2050が、培養容器ごとに設置されている。
【0019】
図3bは、ディスク2000の裏面を示したもので、説明のために、ディスク面上の一部のフィルムを表示していない。この面には、初代培養容器2100、2代培養容器2200や3代培養容器2300から培地等を抜き取るための培地抜き流路2145(表示しない)、2245,2400等が設置されており、この表面を防水性フィルム2030が覆っている。防水性フィルム2030には、初代培養容器2100,2代培養容器2200や3代培養容器2300からの培地等をディスク2000から取り出すための培地抜き穴2150,2265,2442の他に、ディスク2000に回転駆動力を伝えるためのピン穴2060や中心穴2020が設置されている。
【0020】
図3aと図3bに示したディスク2000の培養容器や継代流路が形成されている部分は、ポリスチレンを射出成形して製作する他に、同じポリスチレンを板材に成形した後に切削しても製作することができる。また、ポリスチレンの材料の他に、メタクリル樹脂を射出成形やこれの切削でも製作することができる。いずれの場合でも、接着系細胞の形態や培地の様子を観察するためにディスク2000を透明にするとともに、接着依存性細胞が増殖するために接着する初代培養容器2100他、2代培養容器2200、3代培養容器2300の床面を、細胞が接着しやすくなるように、その表面にコラーゲンをコーティングしたり、プラズマ照射によってラジカルを発生させたりする。なお、樹脂材料の他にガラス材でディスク2000を形成したり、薄いガラス材を初代培養容器2100他、2代培養容器2200、3代培養容器2300の床面に貼り付けても、ディスク2000を透明にしてその内部を観察することができ、また、細胞を培養することができる。
【0021】
図4は、説明のためディスク2000の一部を抜き出して表示したもので、これの表面にある通気性フィルム2010は特に表示していない。図4において、培養を始める細胞を培地に懸濁した溶液を(表示しない)手動のピペッタを使って初代培養容器2100に注入する。このとき、溶液の液面が初代培養容器2100を覆う通気性フィルムに接することがないよう注入量を多くし、接着依存性細胞以外の細胞や不純物の溶液中濃度を低くして、これらを原因とするコンタミネーションの発生を抑える。また、溶液の注入速度を高くして初代培養容器2100内で溶液が渦を巻くようにし、細胞を初代培養容器2100内の渦中心付近に集合させて、細胞数が少ない場合に細胞密度を高くして細胞培養を開始できるようにする。この走査の後、ディスク2000を細胞培養装置1000の培養室ドア1010を開けて中心シャフト3005上に装着し、キャップ3007でこれに固定する。
【0022】
装着後しばらくして、初代培養容器2100の壁面における培地4000の液面が安定するようになると、底面に(表示しない)接着依存性細胞4010が貼り付き、この後増殖を始める。この時点で、培地4000の交換作業を行い、接着依存性細胞4010とそれ以外の細胞との分別を行う。
【0023】
この分別では、図5において、初代培養容器2100の底面であってディスク2000を回転させたときに生じる遠心力が最大になる場所に設置した底穴2140から、ディスク2000の下面に設置した培地抜き流路2145と培地抜き穴2150を経由して中心シャフト3005に設置された培地抜き軸穴を通して培地を抜き取る。このとき、ディスク2000は静止しているが、抜き取る培地4000の残液が少なくなってきたときには、ディスク2000を回転させてこの培地4000に10m毎秒毎秒以下の遠心力を掛けるようにしてもよい。このようにすると、残液を初代培養容器2100底面で遠心力方向外側に設置した底穴2140に寄せることができ残液を残さず抜き取ることができる。
【0024】
次に、新しい培地をピペッタ3010を使って初代培養容器2100に注入する。このときは、培地の注入量を初代培養容器2100の底面より2mm位の深さにするとともに、その注入速度を低くして水圧による細胞へのダメージを低減する。また、初代培養容器2100は、2代培養容器2200と3代培養容器2300も同様であるが、その壁面が底面に対して斜めに構成して培地等の注入時に液の流入をスムーズにして、水圧による細胞へのダメージを低減する。この後、定期的、または、培地モニタ3040で培地の色の変化が変化した時点で、(古い)培地を抜き取り新しい培地を注入する培地交換作業を繰り返し行う。
【0025】
次に、一定の時間が経過した後、または、顕微鏡3030をスライダー3032でディスク2000の半径方向に移動させながらディスク2000を回転走査させて初代培養容器2100の底面に貼り付いた接着依存性細胞4010の密度を観測してこれが高くなってきたときに2代培養容器2200への継代作業を行う。この密度の値は経験値であり、細胞の種類や培養条件によって変化する。
【0026】
継代作業では、まず、これまでの培地交換作業と同様に培地を抜き取りる。そして、ピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水を注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の表面をはじめ初代培養容器2100内部を洗浄した後、これも同様に抜き取る。次に、接着依存性細胞4010を初代培養容器2100の底面から剥離させるために、ピペッタ3010で細胞剥離剤、例えば5%濃度以下のトリプシン溶液を注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の剥離を促進させる。このとき、初代培養容器2100の底面付近を顕微鏡3030で観察し、ディスク2000の動きに同期して移動する細胞がなくなり、すべての細胞が剥離したことを確認する。次に、細胞剥離剤、例えば前出のトリプシン溶液の効果を押さえて細胞のダメージを抑えるため、ピペッタ3010でトリプシンを中和する中和剤、例えば新しい培地を注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて中和を促進する。この状態では、細胞は培地によってその効果が押さえられたトリプシン溶液中に浮遊している状態である。
【0027】
次に、この中から細胞を選択的に取り出し新しい2代培養容器2200へ継代するために、ディスク2000を回転させて遠心力を発生させる。この遠心分離によって、図6に示すように、細胞は継代流路2105の途中にある遠心力が最大になる流路部分2110に集まる。この遠心分離をしばらく続けると、細胞は遠心力が最大になる流路部分2110で凝集し、ディスク2000の回転を止めて遠心力を無くしても、トリプシンと培地の溶液が初代培養容器2100へと戻るのにつられることなく遠心力が最大になる流路部分2110に留まる。これに続いて、トリプシンと培地の溶液を底穴2140から抜き取り、替わって、ピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水または新しい培地を注入し、さらに、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて流路部分2110に留まった細胞を再び懸濁し洗浄する。
【0028】
なお、リン酸緩衝食塩水または新しい培地の液量は、先のトリプシンと培地の液量と同じく、ディスク2000の回転中に初代培養容器2100中にあるこれらの溶液の喫水線4020が継代流路2105の途中に設けられた流路断面の周囲長が変化する部分2115よりもディスク2000の円周方向外側で流路断面の周囲長がより長い部分に位置するように決める。これは、この液量にすると、ディスク2000の回転を止めて遠心力を無くしても、継代流路2105内の溶液の喫水線4030が表面張力によって継代流路2105内を2代培養容器の向きへ移動せず、おもな溶液が初代培養容器2100へと戻るのにつられて喫水線4030は初代培養容器の向き(液面移動を示す矢印4040方向)へ移動するからである。
【0029】
この後、再びディスク2000を回転させて細胞を遠心分離し、これを継代流路2105の途中にある遠心力が最大になる流路部分2110に集める。この洗浄の繰り返しは、細胞へのダメージの程度または細胞を増殖させるスループットに対応するよう決定される。
【0030】
洗浄終了後、再び、ピペッタ3010で新しい培地を注入しディスク2000を緩やかに正逆回転させて流路部分2110に留まった細胞を再び懸濁する。そして、ディスク2000を回転させるが、このときの注入量は、図7に示すように、ディスク2000を回転させたときに継代流路2105中の喫水線4070が流路断面の周囲長が変化する部分2115よりもディスク2000の円周方向内側で流路断面の周囲長がより短い部分に位置するように決める。また、回転数は、この回転による遠心力で細胞が遠心力が最大になる流路部分2110で凝集する時間がより長くなるように低くする。
【0031】
次に、ディスク2000の回転数を徐々に落として遠心力を小さくしてゆき、継代流路2105中の喫水線4070の部分において継代流路2105内壁による表面張力が遠心力よりも強くなるようにする。但し、ディスク2000の回転は停止させないようにする。これは、初代培養容器2100壁面での継代流路2105の取り入れ口に気泡が混入しないようにするためである。この結果、細胞が懸濁されている培地は表面張力によって継代流路2105中を2代培養容器2200の向き(液面移動を示す矢印4080方向)へ移動する。そして、継代流路の集合部2120で3つの継代流路2125と2130と2135に分かれ、最終的には、それぞれの流路が2代培養容器2200に到達する部分まで移動する。
【0032】
次に、ディスク2000の回転数を徐々に上げて遠心力を大きくしてゆく。すると、継代流路2125と2130と2135のそれぞれが2代培養容器2202,2204,2200に到達する部分の培地4000に掛かる遠心力は、初代培養容器2100中の培地4000の喫水線4060よりも大きくなるため、サイフォンの原理によって初代培養容器2100中の培地4000の全てがそれぞれの2代培養容器2200へ移動する。このとき、継代流路2025と2130と2135の流路長を全て同じに構成すると、2代培養容器2200へは同量の細胞が懸濁されている培地が移動する。
【0033】
次に、移動先の2代培養容器2200,2202,2204は初代培養容器2100よりも面積が広いため、それぞれの培養容器で培地の深さが2mmになるよう新たな培地を追加注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて細胞を2代培養容器2200の床面にわたって均一に播種する。
【0034】
2代培養容器2200での細胞培養については、初代培養容器2100での培養方法と同様である。すなわち、2代培養容器2200底面に(表示しない)接着依存性細胞4010が貼り付き、この後増殖を始める。次に、ピペッタ3010を使って新しい培地を2代培養容器2200に注入する。このときは、培地の注入量を2代培養容器2200の底面より2mm位の深さにするとともに、その注入速度を低くして水圧による細胞へのダメージを低減する。この後、定期的、または、培地モニタ3040で培地の色の変化が変化した時点で、(古い)培地を抜き取り新しい培地を注入する培地交換作業を繰り返し行う。図8aは、初代培養容器2100と2代培養容器2200とこれらの間の継代流路2205を表示したもので、培地等を抜き取るための底穴2240を2代培養容器2100の底であってディスク2000を回転させたときに生じる遠心力が最大になる場所に設置している。底穴2240は、図8bに示すように、ディスク2000の裏面に設置した培地抜き流路2245、および培地抜き穴2265、(表示しない)培地抜き軸穴へと接続しており、培地をこの経路を通して抜き取る。なお、図8aで示した3つの2代培養容器2200と2202と2204からそれぞれ培地等を抜き取るための培地抜き流路2245,2250,2255の流路長(培養容器の取り入れ口から培地抜き流路の集合部2260まで)はすべて同じにして、2代培養容器2200と2202と2204から培地等の抜き取りが同時に終了するようにしている。これは、培養容器から培地を一つでも先に抜き取ると、その容器から培地等を抜き取る培地抜き流路に空気が流入して、残った培地を抜き取るための圧力差が小さくなってしまうからである。
【0035】
この後、一定の時間が経過した後、または、顕微鏡3030をスライダー3032でディスク2000の半径方向に移動させながらディスク2000を回転走査させて2代培養容器2200の底面に貼り付いた接着依存性細胞4010の密度を観測してこれが高くなってきたとき2代培養容器2300他への継代作業を行う。
【0036】
この継代作業は、初代培養容器2100から2代培養容器2200への継代方法と同様である。すなわち、図9において、2代培養容器2200から培地を抜き取る。次に、ピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水をこれに注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の表面をはじめ2代培養容器2200内部を洗浄しこれを抜き取る。次に、接着依存性細胞4010を2代培養容器2200の底面から剥離させるために、ピペッタ3010で細胞剥離剤、例えば5%濃度以下のトリプシン溶液を注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の剥離を促進させる。このとき、2代培養容器2200の底面付近を顕微鏡3030で観察し、ディスク2000の動きに同期して移動する細胞がなくなり、すべての細胞が剥離したことを確認する。次に、細胞剥離剤、例えば前出のトリプシン溶液の効果を押さえて細胞のダメージを抑えるため、ピペッタ3010でトリプシンを中和する中和剤、例えば新しい培地を注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて中和を促進する。この状態では、細胞は培地によってその効果が押さえられたトリプシン溶液中に浮遊している状態である。次に、ディスク2000を回転させ、溶液中の細胞を遠心分離によって継代流路2205中で遠心力が最大になる部分2210に凝集させる。ディスク2000の回転を停止させる(細胞は、流路部分2210に凝集したまま)。次に、トリプシンと培地の溶液を抜き取り、替わってリン酸緩衝食塩水または新しい培地をピペッタ3010で注入し、さらに、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて流路部分2210に留まった細胞を再び懸濁し洗浄する。
【0037】
なお、リン酸緩衝食塩水または新しい培地の液量は、先のトリプシンと培地の液量と同じく、ディスク2000の回転中に2代培養容器2200中にあるこれらの溶液の喫水線4200が継代流路2205の途中に設けられた流路断面の周囲長が変化する部分2215よりもディスク2000の円周方向外側で流路断面の周囲長がより長い部分に位置するように決める。これは、この液量にすると、ディスク2000の回転を止めて遠心力を無くしても、継代流路2205内の溶液の喫水線4200が表面張力によって継代流路2205内を2代培養容器の向きへ移動せず、おもな溶液が2代培養容器2200へと戻るのにつられて喫水線4210は初代培養容器の向き(液面移動を示す矢印4220方向)へ移動するからである。
【0038】
この後、再びディスク2000を回転させて細胞を遠心分離し、これを継代流路2205の途中にある遠心力が最大になる流路部分2210に集める。この洗浄の繰り返しは、細胞へのダメージの程度または細胞を増殖させるスループットに対応するよう決定される。
【0039】
洗浄終了後、再び新しい培地をピペッタ3010で注入しディスク2000を緩やかに正逆回転させて流路部分2210に留まった細胞を再び懸濁する。そして、ディスク2000を回転させるが、このときの注入量は、図10に示すように、ディスク2000を回転させたときに継代流路2205中の喫水線4240が流路断面の周囲長が変化する部分2215よりもディスク2000の円周方向内側で流路断面の周囲長がより短い部分に位置するように決める。また、回転数は、この回転による遠心力で細胞が遠心力が最大になる流路部分2210で凝集する時間が長くなるように低くする。
【0040】
次に、ディスク2000の回転数を徐々に落として遠心力を小さくしてゆき、継代流路2205中の喫水線4240の部分において継代流路2205内壁による表面張力が遠心力よりも強くなるようにする。但し、ディスク2000の回転は停止させないようにし、2代培養容器2200壁面での継代流路2205の取り入れ口に気泡が混入しないようにする。この結果、細胞が懸濁されている培地は表面張力によって、継代流路2205中を3代培養容器2300の向き(液面移動を示す矢印4250方向)へ移動しはじめ、継代流路の集合部2220で2つの継代用分岐流路2225と2227に分かれ、さらに、継代用分岐流路2225は(継代用分岐流路2227も同様)2つの継代用分岐流路2230と2235に分かれ、最終的には、それぞれの流路が3代培養容器2300と2302に到達する部分まで移動する。
【0041】
次に、ディスク2000の回転数を徐々に上げて遠心力を大きくしてゆく。すると、継代用分岐流路2230と2235が3代培養容器2300または2302に到達する部分の培地4000に掛かる遠心力は、2代培養容器2200中の培地4000の喫水線4230よりも大きくなるため、サイフォンの原理によって2代培養容器2200中の培地4000が3代培養容器2300または2302へ移動する。
【0042】
このとき、3代培養容器2300にある継代用分岐流路2230出口から継代流路の集合部2220までと3代培養容器2302にある継代用分岐流路2235出口から継代流路の集合部2220までと3代培養容器2304にある継代用分岐流路2228出口から継代流路の集合部2220までと3代培養容器2306にある継代用分岐流路2229出口から継代流路の集合部2220までの流路長を全て同じに構成すると、2代培養容器2200から3代培養容器2300,2302,2304,2306へは同量の細胞が懸濁されている培地が移動する。
【0043】
次に、移動先の3代培養容器2300,2302,2304,2306すべての面積は2代培養容器2200よりも大きいため、それぞれの培養容器で培地の深さが2mmになるよう新たに培地を追加注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて細胞を3代培養容器2300,2302,2304,2306それぞれの床面にわたって均一に播種する。
【0044】
3代培養容器2300での細胞培養については、初代培養容器2100や2代培養容器2200での培養方法と同様である。すなわち、3代培養容器2300底面に接着依存性細胞4010が貼り付き、この後増殖を始める。次に、新しい培地をピペッタ3010を使って3代培養容器2300に注入する。このときは、培地の注入量を3代培養容器2300の底面より2mm位の深さにするとともに、その注入速度を低くして水圧による細胞へのダメージを低減する。この後、定期的、または、培地モニタ3040で培地の色の変化が変化した時点で、(古い)培地を抜き取り新しい培地を注入する培地交換作業を繰り返し行う。
【0045】
図11は、2代培養容器2200と3代培養容器2300と2302、これらの間の継代流路2205を表示したもので、3代培養容器2300から培地等を抜き取るための底穴2310は、3代培養容器2300の底であってディスク2000を回転させたときに生じる遠心力が最大になる場所に設置している。図12はディスク2000の裏面を示したもので、説明のため防水フィルム2030は表示していない。図12において、底穴2310は、ディスク2000の裏面に設置した培地抜き流路2400、2430を通って培地抜き穴2450、(表示しない)培地抜き軸穴へと接続しており、培地をこの経路を通して抜き取る。なお、図11で示した3代培養容器2300と2302からそれぞれ培地等を抜き取るための培地抜き流路2400、2410について、培地抜き流路2430を通って培地抜き流路の集合部2440までの流路長は同じにして、3代培養容器2300と2302から培地等の抜き取りが同時に終了するようにしている。その他の3代培養容器についても、培地抜き取り流路の入り口にある底穴から培地抜き流路の集合部2440までの流路長は同じにしている。これは、培養容器から培地を一つでも先に抜き取ることによって培地抜き流路に空気が流入し、その時点で残った培地を抜き取るための圧力差が小さくなってしまうのを防ぐためである。
【0046】
一定の時間が経過した後、または、顕微鏡3030をスライダー3032でディスク2000の半径方向に移動させながらディスク2000を回転させて3代培養容器2300他の底面に貼り付いた接着依存性細胞4010の密度を観測してこれが高くなってきたとき細胞の収穫を行う。
【0047】
まず、3代培養容器2300他すべてから培地を抜き取る。次に、ピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水をこれら培養容器に注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の表面をはじめ培養容器の内部を洗浄しこれを抜き取る。次に、接着依存性細胞4010を培養容器の底面から剥離させるために、ピペッタ3010で細胞剥離剤、例えば5%濃度以下のトリプシン溶液を培養容器に注入してから、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて、接着依存性細胞4010の剥離を促進させる。このとき、3代培養容器2200他の底面付近を顕微鏡3030で観察し、ディスク2000の動きに同期して移動する細胞がなくなり、すべての細胞が剥離したことを確認する。次に、細胞剥離剤、例えば前出のトリプシン溶液の効果を押さえて細胞のダメージを抑えるため、ピペッタ3010でトリプシンを中和する中和剤、例えば新しい培地を培養容器に注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて中和を促進する。この状態では、細胞は培地によってその効果が押さえられたトリプシン溶液中に浮遊している状態である。次に、ディスク2000を回転させ、溶液中の細胞を遠心分離によって3代培養容器2300中で遠心力が最大になる斜面2320の外側にある細胞収集穴2330に凝集させる。次に、ディスク2000の回転を徐々に下げ停止させる(細胞は、細胞収集穴2330に凝集したまま)。次に、トリプシンと培地の溶液を抜き取り、替わってピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水または新しい培地を注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて細胞収集穴2330に留まった細胞を再び懸濁し洗浄する。次に、ディスク2000を回転させ、溶液中の細胞を遠心分離によって3代培養容器2300中で遠心力が最大になる斜面2320の外側にある細胞収集穴2330に凝集させる。次に、ディスク2000の回転を徐々に下げ停止させる(細胞は、細胞収集穴2330に凝集したまま)。次に、ピペッタ3010でリン酸緩衝食塩水を注入し、ディスク2000を緩やかに正逆回転させて細胞収集穴2330に留まった細胞を再び懸濁し洗浄する。
【0048】
図13aは、この洗浄の様子を示したもので、ディスク2000を回転させた状態ではリン酸緩衝食塩水4300は3代培養容器2300中で外側に偏っており、さらに、接着依存性細胞4010は細胞収集穴2330の中で外側に偏る。この状態からディスク2000の回転を徐々に下げ停止させると、図13bに示すように、リン酸緩衝食塩水4300はその水面が3代培養容器2300の底面と平行になり、接着依存性細胞4010を含む細胞収集穴2330中の溶液とは分離するようになる。また、細胞収集穴2330の中では、接着依存性細胞4010が底に、リン酸緩衝食塩水4300がその上に積層した状態となる。そのため、わずかなリン酸緩衝食塩水4300を用いた洗浄液が接着依存性細胞4010と混ざり合ってしまうので、リン酸緩衝食塩水を用いる細胞の洗浄を数度繰り返すことで、洗浄の程度を向上させる。
【0049】
次に、ディスク2000にある12カ所の細胞収集穴2330から収穫用ピペッタ3020を使って収穫用チューブ3100へ細胞を収穫する。図14において、収穫用ピペッタ3020の先端には収穫用ピペッタチューブ3024と、このチューブがディスク2000の表面を覆う通気性フィルム2010を通して接着依存性細胞4010を含むリン酸緩衝食塩水4300を吸入するために通気性フィルム2010に穴を開ける穴開け用カッタ3022が取り付けられている。
【0050】
細胞の収穫の前に、ピペッタ駆動装置3026で収穫用ピペッタ3020を持ち上げながら穴開け用カッタ3022を収穫用チューブ3100の上に位置決めする。穴開け用カッタ3022が収穫用チューブ3100の入り口を封止しているフィルムを突き刺して穴を開けるようピペッタ駆動装置3026が収穫用ピペッタ3020の上下位置を下げる。この収穫用チューブ3100の入り口を封止しているフィルムは、収穫用チューブ3100を細胞培養の開始時にインキュベータ1000内へ装着するため、細胞の収穫までの長い時間に収穫用チューブ3100の内部が汚染されるのを防ぐために設置している。
【0051】
次に、細胞の収穫では、ピペッタ駆動装置3026で収穫用ピペッタ3020を持ち上げながら穴開け用カッタ3022を対象となる細胞収集穴2330の上に位置決めする(これに合わせてディスク2000も回転方向について、対象となる細胞収集穴2330を穴開け用カッタ3022の下に位置決めする)。図15aにおいて、穴開け用カッタ3022が対象となる細胞収集穴2330の直上にある通気性フィルム2010を突き刺して穴を開けるようピペッタ駆動装置3026が収穫用ピペッタ3020の上下位置を下げる。次に、穴開け用カッタ3022が細胞収集穴2330中のリン酸緩衝食塩水4300に触れないところまで下げた後、穴開け用カッタ3022の先端がディスク2000から完全に離れるまで収穫用ピペッタ3020を上昇させる。次に、ピペッタ駆動装置3026で収穫用ピペッタ3020を回転させて、収穫用ピペッタチューブ3024が対象となる細胞収集穴2330の上に位置決めする。
【0052】
次に、図15bにおいて、収穫用ピペッタ3020がその先端を対象となる細胞収集穴2330の直上にある通気性フィルム2010に開いた穴を通してる細胞収集穴2330の底面まで到達するように収穫用ピペッタ3020を下降させ、接着依存性細胞4010を含むリン酸緩衝食塩水4300を吸入する。次に、収穫用ピペッタ3020の先端がディスク2000から完全に離れるまで収穫用ピペッタ3020を上昇させた後、収穫用ピペッタ3020を回転させてその先端を収穫用チューブ3100の上に位置決めする。次に、収穫用ピペッタ3020がその先端を収穫用チューブ3100の中に入るまで収穫用ピペッタ3020を下降させ、接着依存性細胞4010を含むリン酸緩衝食塩水4300を静かに吐出する。これと同様にして、残りの細胞収集穴からも接着依存性細胞4010を含むリン酸緩衝食塩水4300を収穫用チューブ3100へ収穫する。
【0053】
この後、収穫用チューブ3100をインキュベータ1000から取り出してキャップをかぶせてから、冷蔵庫内で保存する。または、収穫用チューブ3100から手動ピペッタで接着依存性細胞4010を含むリン酸緩衝食塩水4300を別のチューブに移してからこれにキャップをかぶせてから、冷蔵庫内に保存してもよい。
【0054】
なお、トリプシンと培地の溶液や洗浄用のリン酸緩衝食塩水または新しい培地を抜き取る際、ディスク2000の回転数を前出の回転数よりも低く設定し、これらの溶液中の細胞が継代流路2105の途中にある遠心力が最大になる流路部分2110、継代流路2205の途中にある遠心力が最大になる流路部分2210、または、細胞収集穴2330に凝集するまでもなくほぼ集まった時点で、ディスク2000が回転中にそのまま溶液を抜き取る方法が、前出の構成では可能である。この方法では、ディスク細胞収集穴2330の回転中に溶液を抜き取るための機構として中心シャフト3005に回転する物体側から静止側に液体を取り出す継ぎ手を使用する必要があるが、ディスク2000の回転数を低く抑えて回転モータ3000のコストを下げることができる、ディスク2000酸緩衝食塩水4300に細胞を懸濁しやすくなり細胞の洗浄時間と継代時間を短くできるという利点がある。
【0055】
以上の説明のとおり、人手を使うことなく培地交換作業が自動化でき、細胞培養装置1000内にディスク2000入れたまま細胞を培養するため細胞の育成環境に変化がなく細胞へのストレスを押さえることができ、コンタミネーションも押さえることができるため、少量の細胞を培養して多量の細胞を得ることができる。
【0056】
さらに、培地交換作業が自動化させることによって、人手による培地交換作業に比べて培地交換の頻度を高めることができ、細胞培養容器中での最大細胞培養密度を高めることができ、小さなディスクで多量の細胞を培養することができる可能性がある。また、人手による培地交換作業では難しかった古い培地を最大50%残して、新たな培地を不足分だけ注入することが正確にできるため、細胞培養中に細胞自体が生み出す微量物質を培地交換後でも失うことがなくなるため、細胞培養条件をさらに最適化することができるという特色がある。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、接着依存性細胞を細胞培養するうえで、培地の交換作業、継代作業を自動化できるので、細胞培養のコストを下げることができること、コンタミネーションによる細胞の死滅を押さえることができること、培養環境の変化による細胞へのストレスを押さえることができるという効果がある。
【0058】
さらに、培地交換の頻度を高められるので効率の良い細胞培養が可能、古い培地と新しい培地が混合するように培地交換できるので細胞培養条件をさらに最適化することができるという効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞培養器及び細胞培養器内部説明するための図。
【図2】細胞培養器内部を説明するための図。
【図3】細胞培養ディスクの構造を説明するための図。
【図4】細胞培養ディスク上の細胞培養容器と、継代に用いる流路とこの中を移動する溶液の様子を説明する図。
【図5】細胞培養ディスク上の細胞培養容器から培地等を抜き取るための構造とこの中を移動する溶液の様子を説明する図。
【図6】細胞培養ディスク上の細胞培養容器間で継代における溶液の様子を説明する図。
【図7】細胞培養ディスク上の細胞培養容器間で継代における溶液の様子を説明する図。
【図8】細胞培養ディスクの構造を説明するための図。
【図9】細胞培養ディスク上の細胞培養容器間で継代における溶液の様子を説明する図。
【図10】細胞培養ディスク上の細胞培養容器間で継代における溶液の様子を説明する図である。
【図11】細胞培養ディスク上の細胞培養容器と、継代に用いる流路とこの中を移動する溶液の様子を説明する図。
【図12】細胞培養ディスクの構造を説明するための図。
【図13】細胞を収穫するための構造と、中を移動する溶液の様子を説明する図。
【図14】細胞を収穫するための構造と、動作を説明する図。
【図15】細胞を収穫するための構造と、動作を説明する図。
【符号の説明】
1000 細胞培養装置、2000 ディスク、2010 通気性フィルム、2030 防水フィルム、2040 注入穴、2050 空気穴、2100 初代培養容器、2105,2205 継代流路、2115,2215 断面の周囲長が変化する部分、2120,2220継代流路の集合部分、2125,2130,2135 継代分岐流路、2140,2240,2310 底穴、2145,2245,2400 培地抜き流路、2150,2262,2442 抜き穴、2200,22022,2204 代培養容器、2260,2420,2440 培地抜き流路の集合部分、2300,2302,2304,2306 3代培養容器、2320 斜面、2330 細胞収集穴、3000 回転モータ、3010 ピペッタ、3020 収穫用ピペッタ、3022 穴開け用カッタ、3024 収穫用ピペッタチューブ、3026 ピペッタ駆動装置、3030 位相差顕微鏡、3040 培地モニタ、3110 収穫用チューブ、4000 培地、4010 接着依存性細胞、4020,4030,4060,4070,4200,4210,4230,4240 喫水線

Claims (8)

  1. 接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、サイフォンの原理を用いて前出細胞を含む溶液を継代することを特徴とする細胞培養ディスク。
  2. 接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、前出の継代するための流路中にある前出細胞を含む溶液の送液制御に、前出の継代するための流路の壁面と前出細胞を含む溶液が接触することによって発生する表面張力を用いることを特徴とする細胞培養ディスク。
  3. 接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器を複数設置し、前出細胞を含む水溶液をこれらの細胞培養容器間で継代するための流路を設置し、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を抜き取るための流路を設置し、これを回転させることで前出細胞培養容器や継代するための流路中の前出細胞を含む溶液に遠心力を発生させることが可能な1枚の円盤状または回転による振動が発生しない板状のディスクであって、前出細胞を遠心力によって前出細胞培養容器中遠心力が最大になる部分に設置した隔室に細胞を凝集させることを特徴とする細胞培養ディスク。
  4. 細胞培養における継代において、継代先の細胞培養容器が複数あって、この全ての細胞培養容器へ同時に継代することを特徴とする、請求項1から請求項3記載の細胞培養ディスク。
  5. 複数の細胞培養容器から同量の培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を同時に抜き取るために、全ての細胞培養容器についてこれらを抜き取るための流路の長さを同じにしたことを特徴とする、請求項1から請求項4記載の細胞培養ディスク。
  6. 通気性はあるが培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を漏らさず可視光について透明な薄フィルムで,接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器の表面を封止したことを特徴とする,請求項1から請求項5記載の細胞培養ディスク。
  7. 接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器とこれらを間で細胞を継代するための流路を備えたディスクと、前出ディスクに培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を供給するためのピペッタと、前出ディスクを回転させる手段と、前出ディスクに保持された培地の色や濁りを検出するための手段と,前出細胞培養容器内部で培養される細胞の形態を観察するための手段と、前出ディスク付近の二酸化炭素の濃度を検出する手段と、前出ディスク付近の温度を検出する手段と、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を4℃に保持する手段およびこれらの溶液を加熱する手段を備え、前出ディスクを回転させることで生じる遠心力をもとにサイフォンの原理を用いて前出細胞を含む溶液を継代することを特徴とする細胞培養装置。
  8. 接着依存性細胞を培養するための細胞培養容器とこれらを間で細胞を継代するための流路を備えたディスクと、前出ディスクに培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を供給するためのピペッタと、前出ディスクを回転させる手段と、前出ディスクに保持された培地の色や濁りを検出するための手段と,前出細胞培養容器内部で培養される細胞の形態を観察するための手段と、前出ディスク付近の二酸化炭素の濃度を検出する手段と、前出ディスク付近の温度を検出する手段と、培地や前出細胞を接着面から剥離するための溶液や前出細胞を洗浄するための溶液を4℃に保持する手段およびこれらの溶液を加熱する手段を備え、前出ディスクを回転させることで生じる遠心力をもとに前出細胞培養容器中遠心力が最大になる部分に設置した隔室に細胞を凝集させることを特徴とする細胞培養装置。
JP2003027710A 2003-02-05 2003-02-05 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置 Pending JP2004236547A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003027710A JP2004236547A (ja) 2003-02-05 2003-02-05 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003027710A JP2004236547A (ja) 2003-02-05 2003-02-05 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004236547A true JP2004236547A (ja) 2004-08-26

Family

ID=32955353

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003027710A Pending JP2004236547A (ja) 2003-02-05 2003-02-05 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004236547A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006320226A (ja) * 2005-05-18 2006-11-30 Hitachi Medical Corp 細胞培養装置
JP2007110996A (ja) * 2005-10-21 2007-05-10 Hitachi Medical Corp 細胞培養容器および細胞培養装置
JP2010279321A (ja) * 2009-06-08 2010-12-16 Brother Ind Ltd 細胞反応観察装置
JP2015133926A (ja) * 2014-01-17 2015-07-27 株式会社Ihi 細胞培養装置
WO2016208755A1 (ja) * 2015-06-25 2016-12-29 株式会社カネカ 液体注入方法
WO2023140302A1 (ja) * 2022-01-19 2023-07-27 株式会社カネカ 細胞剥離方法、及び細胞剥離機構を搭載する装置

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006320226A (ja) * 2005-05-18 2006-11-30 Hitachi Medical Corp 細胞培養装置
JP2007110996A (ja) * 2005-10-21 2007-05-10 Hitachi Medical Corp 細胞培養容器および細胞培養装置
JP2010279321A (ja) * 2009-06-08 2010-12-16 Brother Ind Ltd 細胞反応観察装置
JP2015133926A (ja) * 2014-01-17 2015-07-27 株式会社Ihi 細胞培養装置
WO2016208755A1 (ja) * 2015-06-25 2016-12-29 株式会社カネカ 液体注入方法
US20180135002A1 (en) * 2015-06-25 2018-05-17 Kaneka Corporation Liquid injection method
JPWO2016208755A1 (ja) * 2015-06-25 2018-05-31 株式会社カネカ 液体注入方法
US10793819B2 (en) * 2015-06-25 2020-10-06 Kaneka Corporation Liquid injection method
JP7420334B2 (ja) 2015-06-25 2024-01-23 株式会社カネカ 液体注入方法
WO2023140302A1 (ja) * 2022-01-19 2023-07-27 株式会社カネカ 細胞剥離方法、及び細胞剥離機構を搭載する装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN101370928B (zh) 细胞培养方法以及使用该方法的自动培养装置
JP4002720B2 (ja) 一細胞長期培養顕微観察装置
EP0009320B1 (en) Apparatus and method for harvesting material from micro-culture plates
JP6227638B2 (ja) サンプル調製装置
CN101300339A (zh) 细胞培养用振荡装置以及细胞培养方法的振荡培养方法
CN101965394B (zh) 开放连续模式的细胞培养的方法和装置
CN105392445A (zh) Ivf卵收集室
WO2009072006A2 (en) A centrifuge for separating a sample into at least two components
CN116179345B (zh) 一种自体脂肪干细胞培养装置及其使用方法
JP2006204263A (ja) 培養容器および培養方法
JP2015188391A (ja) 細胞培養方法、及び細胞培養システム
JP2004236547A (ja) 細胞培養ディスクおよびこれを用いる細胞培養装置
EP1268742B1 (en) Perfusion incubator
JP2005278564A (ja) 細胞培養装置
JPS6231908B2 (ja)
CN107475110B (zh) 一种用于培养人羊膜间充质干细胞的预处理装置及其培养方法
CN111909896B (zh) 一种脂肪组织干细胞的提取方法
JPWO2017141394A1 (ja) 遠心分離可能な反応装置
JP2005237274A (ja) 細胞培養方法、チャンバ及びそれを利用した細胞培養装置
JP7016371B2 (ja) 接着細胞培養基質サンプリングデバイス
JP2007222064A (ja) ホローファイバー型培養装置
CN207091415U (zh) 具有促进衰老细胞再活化作用的干细胞提取物检测试剂盒
CN111733076B (zh) 用于疫苗生产自动化动物细胞扩增的培养装置及培养方法
CN212051466U (zh) 一种易于细胞脱壁的高通量细胞培养器
JP2005218404A (ja) 細胞培養装置