JP2004232449A - 木製防火扉 - Google Patents

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JP2004232449A JP2003167188A JP2003167188A JP2004232449A JP 2004232449 A JP2004232449 A JP 2004232449A JP 2003167188 A JP2003167188 A JP 2003167188A JP 2003167188 A JP2003167188 A JP 2003167188A JP 2004232449 A JP2004232449 A JP 2004232449A
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Yoichiro Kuroiwa
陽一郎 黒岩
Shinichi Sugawara
進一 菅原
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Abstract

【課題】できるだけ簡単な構造で非常に優れた防火性能を発揮できると共にコストを大幅に低減できる木製防火扉を提供する。
【解決手段】木製の芯材20と、表面に設けられた化粧合板30とを有する木製防火扉10において、芯材20に、ポリリン酸アンモニウム及びホウ酸の少なくとも一方を含む防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤を含浸することにより、十分な防火性能を発揮することができる木製防火扉10が実現される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、住宅や会社等の扉として用いられ、火災発生時に火や熱をトラップするという防火性能を有する木製防火扉に関する。特に、無機材料からなる燃焼遅延剤を含浸させた木材を芯材として用いた木製防火扉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特定防火設備60としてはスチール製しか認められなかったので、防火扉は一般的にはスチール製である。スチール製の防火扉は頑丈であるが、重く、高熱で反ってしまい、また、輻射熱が大きい(木の5〜8倍)などの欠点を有する。
【0003】
そこで、平成2年に甲種防火扉及び乙種防火扉の試験方法が改正され、一定条件を満たせば木製戸であっても特定防火設備60若しくは特定防火設備20として認可されるようになったことを契機として桐材を用いた木製防火扉が開発されている。
【0004】
そして、桐の集成材を積層した桐積層板を用いたもの(特許文献1参照)、桐集成材と熱硬化性樹脂積層板とを積層したもの(特許文献2参照)、桐材と不燃紙とを組み合わせたもの(特許文献3参照)、桐材とフェノールフォームとを組み合わせたもの(特許文献4参照)、桐集成材に耐火シートを組み合わせたもの(特許文献5参照)、桐材と火山性ガラス繊維板とを組み合わせたもの(特許文献6参照)等が開発されている。また、桐材の反りを防止する構造(特許文献7参照)、災害時の脱出を容易にする構造(特許文献8参照)等が開発されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−208033号公報 (特許請求の範囲、第2図)
【特許文献2】
特開平7−259445号公報 (特許請求の範囲、第2図)
【特許文献3】
特開平7−293127号公報 (特許請求の範囲、第1図)
【特許文献4】
特開平7−324561号公報 (特許請求の範囲、第1図)
【特許文献5】
特開平9−256746号公報 (特許請求の範囲、第2図)
【特許文献6】
特開2000−179245号公報 (特許請求の範囲、第2図)
【特許文献7】
特開2000−310090号公報 (特許請求の範囲、第1図)
【特許文献8】
特開2001−17560号公報 (特許請求の範囲、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の木製防火扉は、例えば、経年変化の中での性能低下やコスト、或いは、火災発生時等の防火性能の点で問題があり、十分に満足できる製品は得られていない。すなわち、ISO基準に基づく平均約900℃の燃焼試験において60分の防火性能を得ることができず、「特定防火設備」の国土交通大臣認定を受けることができない。
【0007】
また、木製防火扉の防火性能を高めるためには、上述したように、フェノールフォームや火山性ガラス繊維板等を用いるため、製造コストが増大してしまい、最終的には、製品コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、できるだけ簡単な構造で非常に優れた防火性能を発揮できると共にコストを大幅に低減できる木製防火扉を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、木製の芯材と、表面に設けられた化粧合板とを有する木製防火扉において、前記芯材には、ポリリン酸アンモニウム及びホウ酸の少なくとも一方を含む防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記燃焼遅延剤には、燃焼時に溶融状態となって炭化残渣を固定する無機材料が含有されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記無機材料が、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウ酸塩およびシリカから選択される少なくとも一種からなることを特徴とする木製防火扉にある。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記化粧合板にも前記燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記芯材と前記化粧合板とは、耐火接着剤を介して接合されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0014】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記耐火接着剤は、少なくともシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有していることを特徴とする木製防火扉にある。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記芯材が、桐材を主体とするものであることを特徴とする木製防火扉にある。
【0016】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記芯材が、桐集成材の積層板であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0017】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記芯材が、前記桐集成材の3層クロス張りの積層板であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0018】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記芯材は、前記桐集成材を前記耐火接着剤により接合した3層クロス張りの積層板であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0019】
本発明の第11の態様は、第7の態様において、前記芯材が、当該芯材の中心を他の木材で構成し、且つ当該他の木材を前記桐材で挟み込んだ積層板であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0020】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記芯材は、前記桐材と前記他の木材とのそれぞれを前記耐火接着剤により接合した積層板であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0021】
本発明の第13の態様は、第11又は12の態様において、前記他の木材が、桐、杉、及び唐松から選択される一種の木材又はこれら各木材の間伐材若しくは集成材であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0022】
本発明の第14の態様は、第13の態様において、前記他の木材は、杉材又は杉の間伐材若しくは杉集成材であり、且つ当該他の木材には、前記燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0023】
本発明の第15の態様は、第3〜14の何れかの態様において、前記芯材と前記化粧合板との間に前記燃焼遅延剤を含浸させた少なくとも一つのダミー材を介在させ、且つ、当該ダミー材は、前記芯材及び前記化粧合板のそれぞれと前記耐火接着剤により接合されていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0024】
本発明の第16の態様は、第15の態様において、前記ダミー材が、桐、杉、及び唐松から選択される一種の木材又はこれら各木材の間伐材若しくは集成材であることを特徴とする木製防火扉にある。
【0025】
本発明の第17の態様は、第1〜16の何れかの態様において、前記扉の端面近傍には、グラファイト系発泡材がその長手方向に亘って設けられていることを特徴とする木製防火扉にある。
【0026】
本発明によると、火災発生時には、少なくとも芯材に防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤を含浸させてあるので、その芯材が火や熱をトラップし、非常に優れた防火性能を発揮する。
【0027】
具体的には、本発明の木製防火扉は、芯材に燃焼遅延剤を含浸させた比較的簡単な構造にも関わらず、ISO基準に基づく平均約900℃の燃焼試験において60分以上の防火性能が得られ、「特定防火設備」の国土交通大臣認定を受けることができるものである。
【0028】
ここで、芯材に含浸させる燃焼遅延剤としては、リン酸系タイプ、ホウ酸系タイプ、ノンハロゲン系の水溶性タイプ等を使用するのが好ましく、無毒無臭であり、且つ揮発性有機化合物(VOC)等を一切使用していないものが好ましい。
【0029】
特に、本発明では、少なくとも防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤を用いるのが好ましい。このような防炎薬剤としては、少なくともポリリン酸アンモニウム及びホウ酸の少なくとも一方を成分として含み、芯材に含浸するものであれば特に限定されない。このような燃焼遅延剤に含まれるホウ酸等は、芯材等の燃焼時に、木材の組織体(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等)に含まれるOH基と反応することで、燃えにくい炭化層と水とを発生し、可燃性物質の生成を防止する作用(脱水炭化作用)を発揮するものである。このため、燃焼遅延剤にはホウ酸等を多く含有させると効果的である。例えば、ホウ酸化合物を常温で5g/水100gに相当する溶解度以上となるように混合した高濃度ホウ酸化合物を含有した燃焼遅延剤であるのが好ましい。勿論、燃焼遅延剤には、このようなホウ酸化合物の他に、必要に応じて、例えば、リン酸、シラノール塩、及び高分子材料等を含有させてもよい。特に好ましくは、金属イオン封鎖剤や湿潤浸透性の界面活性剤の一種以上とリン酸化合物やシラノール塩等からなる高濃度ホウ酸化合物を含有しているのがよい。
【0030】
ここで、このような防炎薬剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムを主成分とし、必要に応じて、さらに他の成分を含有する防炎薬剤が挙げられる。または、ホウ酸を主成分とし、必要に応じてさらに他の成分を含有する防炎薬剤が挙げられる。勿論、これら各防炎薬剤を混同した防炎薬剤を用いてもよい。なお、このようなホウ酸等のホウ酸系の化合物は、防腐防蟻効果が期待できる。
【0031】
また、本発明では、燃焼遅延剤に、上述した防炎薬剤と共に芯材等が燃焼して炭化した炭化残渣を固定するために無機材料を含有させることができる。すなわち、無機材料は、高温加熱下で溶融してガラス状態となって燃えにくい炭化残渣を固定化するように作用し、炭化残渣が落下するのを防止し、さらに水を発生する性能があるので、表面温度を低下させるものであり、これにより、耐火性能がさらに向上する。より詳細には、結晶水を持つ無機塩類が、燃焼時に、その結晶水を放出又は分解して、炭化残渣を固定化するように作用し、吸熱効果を発揮する。このような炭化残渣を固定化する無機材料としては、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウ酸塩、およびシリカから選択される少なくとも一種が挙げられ、ケイ酸塩としては、例えば、二酸化ケイ素とアルカリとを融解して得られたケイ酸アルカリ塩である水ガラスが挙げられる。但し、通常の水ガラスを使用するとアルカリ成分が強すぎるので、アルカリ性を70〜80%低減したものを用いることが好ましい。また、ホウ酸塩としては、例えば、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)が挙げられる。なお、このようなホウ酸塩についても、上述したホウ酸と同様に、防腐防蟻効果を期待できる。
【0032】
このように、本発明では、上述した燃焼遅延剤に特定の無機材料を含有させることで、脱水炭化作用と吸熱作用とが複合的に作用し、さらに優れた防火性能を得ることができる。
【0033】
また、このような燃焼遅延剤の含浸量は、含浸させる木材の種類や寸法に応じて、所望の防火性能が得られるように適宜調整すれば限定されるものではないが、厚さ40mmで、900mm×2200mmの芯材で、有効成分として200g〜500g程度が目安となり、特に、250〜350g程度が好ましい。
【0034】
さらに、このように、木材に燃焼遅延剤を含浸させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、容器に十分な量の燃焼遅延剤を入れた後、約80℃に温度を上げ、その中に木材を所定温度下で一定時間浸漬して含浸させる方法等が挙げられる。なお、本発明でいう木材に燃焼遅延剤を含浸させるとは、燃焼遅延剤を溜めた容器内に木材を漬ける、いわゆるディッピングに限定されず、加圧による含浸も含む。
【0035】
ここで、本発明の木製防火扉は、上述したように、芯材に燃焼遅延剤を含浸させることで優れた防火性能を発揮するものであるが、要求される防火性能に応じて、これ以外に扉に対して防火対策、例えば、芯材と化粧合板とを特定の耐火接着剤により接合してもよい。
【0036】
このような耐火接着剤としては、少なくともシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有しているのが好ましい。
【0037】
具体的には、耐火接着剤は、ホウ酸化合物やフッ化物等の無機酸の存在下で、金属ケイ素(純度99%)と水酸化ナトリウムとを水溶媒中で反応させることで生成したシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有している。そして、このような無機材料は、Si/Naの成分比が2以上であり、アモルファス状でpHが12以下、硬度500cP以下の低粘性を有する材料である。このような耐火接着剤は、例えば、コーミックス社から、水性造膜性無機化合物「リキッドセラミックス(LC)シリカ系」などとして市販されている。
【0038】
このような耐火接着剤は、シロキサンやシラノール塩とからなる無機材料を含有しているので、火災発生時に比較的高い温度で加熱されると、無機発泡体となり、優れた断熱性能を有すると共に、優れた防水性能を有する材料となる。そして、本発明では、このような耐火接着剤により芯材と化粧合板とを接合することで、火災発生時には、この耐火接着剤が無機発泡体となり、火や熱をトラップするので、芯材に対する影響が低減される。
【0039】
すなわち、本発明の木製防火扉では、化粧合板が燃焼する際に、耐火接着剤が無機発泡体となり、この無機発泡体が火や熱を長時間遮断することができる。また、この無機発泡体による断熱効果が低減した場合でも、芯材に燃焼遅延剤を含浸させているので、火や熱により芯材が燃焼してしまうのを有効に防止でき、且つ、燃焼遅延剤が芯材の炭化により生成した炭化残渣を固定するように作用するので、火や熱を有効に遮断できる。したがって、非常に優れた防火性能を有する木製防火扉を実現できる。
【0040】
また、このような耐火接着剤は、上述したように、防水効果が期待できるので、この耐火接着剤が防水シートとしての役割を果たし、芯材からの水分の発散による反りの発生を効果的に防止することができる。したがって、芯材等の反りが有効に防止され、経年変化の中での性能低下の問題はない。
【0041】
このような特定の耐火接着剤、若しくは、燃焼遅延剤を含浸させた芯材を用いた木製防火扉は従来存在せず、これを用いることにより、従来の耐火性板や耐火シートなどを用いるよりも高い防火性能を有する木製防火扉を低コストで提供できる。
【0042】
ここで、本発明では、上述した耐火接着剤の特性を利用して、さらに防火性能を高めることもできる。すなわち、芯材と化粧合板との間にダミー材を設けて、そのダミー材を、芯材及び化粧合板のそれぞれと耐火接着剤により接合することで、さらに防火性能を高めることができる。また、このようなダミー材にも、上述した燃焼遅延剤を含浸させれば、より効果的に防火性能を高めることができる。このようなダミー材としては、例えば、桐、杉、唐松、及び椋等の木材、あるいは、これら各木材の集成材、間伐材、積層材等が挙げられる。特に、防火性能を高める点では、燃焼遅延剤を含浸できる材質であるのが好ましく、杉材を用いるのがよい。勿論、これら木材に限定されず、樹脂や紙等をダミー材として利用してもよい。
【0043】
また、上述した木製防火扉の芯材としては、防火性能や軽量化の点で、桐材を主体とするものが好ましく、特に、桐集成材の積層板、あるいは、この桐集成材の3層クロス張りの積層板を用いるのが好ましい。
【0044】
具体的には、桐材として反りが出難いとされている品質の材料を用いるのが好ましい。また、芯材は、天然の桐から切り出した桐材又は桐の集成材の何れを用いてもよく、1枚物でも積層材でもよいが、積層する場合には奇数枚用いるのが好ましい。何れにしても、要求される防火性能や、コスト等を考慮して、芯材を形成する木種を適宜決定すればよい。一般的には桐の集成材を用いて複数枚積層して用いるのが好ましく、さらに、木目(繊維方向)を略直交するようにクロスさせて3層構造とした積層材が特に好ましい。このように、芯材を積層材により構成する場合には、燃焼遅延剤を含浸させた集成材を3層クロス張りしてもよく、積層材とした後に燃焼遅延剤を含浸させてもよい。さらに、このようにして3層クロス張りする場合には、それぞれの積層材を上述した耐火接着剤を介して接合するようにしてもよい。
【0045】
また、本発明では、桐材を用いた芯材であれば基本的には限定されるものではないが、防火特性の点で問題がなければ、他の木材を用いて芯材を構成してもよい。すなわち、芯材に用いる桐材は、それ自体で耐火性能を発揮するものであるが、このような桐材の他に、上述した燃焼遅延剤の含浸量、コスト、扉重量、あるいは扉の強度等を考慮して、例えば、杉、唐松、及び椋等の木材を用いることができる。
【0046】
具体的には、防火性能を高める点では、燃焼遅延剤の含浸量の多い杉材等を用いるのが好ましく、扉の強度を考慮すると杉材、唐松及び椋等を用いるのが好ましく、コスト面を考慮すると杉及び唐松等の間伐材を用いるのが好ましい。また、扉重量を考慮すると桐材を用いるのが好ましく、このように扉の軽量化を図れば、運搬費を低く抑えることができ、取付時の作業性を向上できる。特に、防火性能及び扉強度を高める点では、芯材のすべてに燃焼遅延剤を含浸した杉材を用いるのが好ましい。また、上述したダミー材を耐火接着剤により芯材及び化粧合板のそれぞれと接合する場合には、十分な防火性能を確保できるので、芯材の中心を構成する木材に、燃焼遅延剤を含浸させずに、塗布だけでもよい。ただし、防火性能を確保する点では、芯材の中心を構成する木材を挟み込む桐材等には燃焼遅延剤を含浸させておくのが好ましい。
【0047】
特に、本発明の木製防火扉では、桐材の他に杉材を用いて芯材を構成することで、木製防火扉の所望の防火性能を確保しつつ、扉重量の軽量化を図ることができる。すなわち、杉材は、桐材に比べて燃焼遅延剤の含浸量が多く防火性能を高めることができ、桐材を用いることで扉重量の軽量化を図ることができるからである。
【0048】
さらに、扉の強度を高める点では、桐材と杉材とをクロスさせて3層クロス張り構造からなる積層板により芯材を構成するのが好ましく、杉材として杉の間伐材を用いれば、コストを低減することができる。
【0049】
このように芯材に桐材の他に杉材を用いる場合には、杉材が桐材よりも燃焼遅延剤の含浸量が多く、十分な防火性能を確保できるため、杉材を挟み込む桐材の少なくとも化粧合板側の表面側に燃焼遅延剤を塗布、あるいは燃焼遅延剤を桐材の厚さ方向に約3〜5mm含浸させて、燃焼遅延層を形成してもよく、必要に応じて、桐材には燃焼遅延剤による防火対策を施さなくてもよい。
【0050】
また、本発明では、芯材に桐材を使用する場合には、桐材は熱による反りが生じやすいので、必要に応じて、面方向の四方、すなわち、扉の四辺を、桐材より堅く、反りにくい木材からなる補強部材(框材)で覆うようにする必要がある。このような補強部材としては、比重0.5以上の天然木集成材であるのが好ましく、人工合板、L.V.L(天然目平行合板集成材)などの框材を挙げることができる。また、補強部材は、防火性能を高める点で、上述した耐火接着剤を介して積層材等に接合するのが好ましい。勿論、桐材であっても、その桐材を用いて桐集成材とすれば、強度は確保できるので、補強部材として用いてもよい。また、本発明では、補強部材として天然木集成材を三層クロス張りしたものを用いてもよい。この場合には、各天然木集成材を耐火接着剤により接合することで、防火性能をさらに高めることができる。そして、積層材と補強部材とは、凹凸部を介して相互に嵌合する構造により接合してもよく、このような場合にも、耐火接着剤を介して接合するのが防火性能の点で好ましい。なお、本発明では、このような補強部材を積層材に含めて芯材という。また、上述したように、芯材に他の木材を使用する場合、特に、桐材を杉材等のダミー材で挟み込む場合には、桐材の反りが扉全体に与える影響は小さくなるため、このような場合には、必要に応じて、補強部材を設けなくてもよい。
【0051】
このような補強部材を取り付けた芯材の場合には、そのまま全体に燃焼遅延剤を含浸させてもよいが、桐材や他の木材のみに燃焼遅延剤を含浸させた後、補強部材を取り付けてもよい。勿論、このように補強部材を後付する場合、補強部材にも燃焼遅延剤を含浸させるのが好ましいが、燃焼遅延剤を塗布するのみでも十分に防火性能を向上させることができる。
【0052】
また、本発明の木製防火扉の最外表面には化粧合板が設けられている。化粧合板に用いる材質は、天然の木材で形成されていれば特に限定されず、勿論、天然の木材を用いて形成した集成材、積層材等であってもよい。このような芯材の表面に設けられた化粧合板に、上述した防火薬剤を少なくとも含有する燃焼遅延剤を塗布又は含浸すれば、さらに防火性能が向上するという効果がある。勿論、化粧合板には、燃焼遅延剤を含浸しなくてもよい。
【0053】
そして、本発明では、少なくともこのような芯材に防炎薬剤を含浸させる以外は、木製防火扉の構造は特に限定されず、要求される防火性能に応じて従来からの公知の防火構造を有するものであればよい。
【0054】
例えば、桐集成材と熱硬化性樹脂積層板とを積層したもの(特許文献2参照)、桐材と不燃紙とを組み合わせたもの(特許文献3参照)、桐材とフェノールフォームとを組み合わせたもの(特許文献4参照)、桐集成材に耐火シートを組み合わせたもの(特許文献5参照)、桐材と火山性ガラス繊維板とを組み合わせたもの(特許文献6参照)等を用いることができるが、桐の集成材を積層した桐積層板のみを用いたもの(特許文献1参照)でもよく、さらに、桐材の反りを防止する構造(特許文献7参照)を適用してもよい。
【0055】
以上説明したように、本発明に係る木製防火扉は、少なくとも芯材に燃焼遅延剤を含浸させることにより、ISO基準に基づく平均約900℃の燃焼試験において60分以上の防火性能が得られ、「特定防火設備」の国土交通大臣認定を受けることができるものである。また、耐火接着剤を用いて、少なくとも芯材と化粧合板とを接合することで、防火性能をさらに高めることができる。
【0056】
また、本発明に係る木製防火扉は、耐火シートやケミカル板等を用いなくても、比較的簡単な構造で、優れた防火性能を発揮するため、製造コストを低減することができ、芯材を構成する木材に間伐材を用いれば、製造コストを大幅に低減することができる。さらに、芯材に少なくとも桐材を用いることで、従来品と比べて、木製防火扉の扉重量の軽量化を図ることができるという効果も奏する。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を一実施形態に基づいて説明する。
【0058】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る木製防火扉の概略斜視図である。また、図2は、本発明の実施形態1に係る木製防火扉の断面図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【0059】
図1及び図2に示すように、本実施形態の木製防火扉10は、複数の桐部材21〜23を積層した桐積層板24と、その四方に設けられた補強部材25とからなる芯材20と、芯材20の表面に接合された化粧合板30とを具備する。
【0060】
桐積層板24は、木目方向(繊維方向)が長手方向に一致した桐部材21、22との間に、桐部材21、22の木目方向と直交する方向である桐部材23を挟持して積層した3層クロス張り構造である。なお、この桐積層板24を構成する桐部材21〜23は、それぞれ所定の大きさに形成されたものであってもよいし、短い寸法のものを複数枚継ぎ合わせたものであってもよい。このように桐部材21〜23の木目方向が略直交するようにクロス張りすることによって形成された桐積層板24は効果的に反りの発生を防止することができる。
【0061】
また、桐積層板24の上下左右の端面には、桐材より堅い木材、本実施形態では合成合板からなる補強部材25が設けられている。このような補強部材25は、例えば、本実施形態では、桐集成材を用いた。このように、桐積層板24の四方を補強部材25で囲って芯材20としたので、反りをより確実に防止することができる。なお、補強部材25の厚さ(扉の面方向の寸法)は、木製防火扉の防火性能によって異なるが、60分防火試験を満足するためには、150mm厚程度のものが必要となる。
【0062】
ここで、このような桐積層板24と補強部材25とから構成される芯材20には、燃焼遅延剤として、少なくともポリリン酸アンモニウム及びホウ酸の少なくとも一方を含む防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤が含浸されている。このようなポリリン酸アンモニウム及びホウ酸を含有する防炎薬剤は、芯材20に含浸させると、火災発生時には、芯材20の組織に対する酸素供給を実質的に止める作用がある。すなわち、芯材20に含浸させた防炎薬剤は、断熱効果が大きく燃焼速度の遅い炭化残渣の生成を多くし、自己消化性能を高める燃焼遅延剤としての作用がある。例えば、本実施形態では、ホウ酸を含む防炎薬剤を用いた。
【0063】
具体的には、本実施形態で用いる防炎薬剤に含まれるホウ酸は、芯材20、及び化粧合板30の燃焼時に、木材の組織体に含まれるOH基と反応することで、燃えにくい炭化層と水とを発生し、可燃性物質の生成を防止する作用(脱水炭化作用)を発揮するものである。これにより、例えば、芯材20の燃焼速度分速0.6mm/minを、1/5〜1/7に低下させることができ、すなわち、含浸させないものと比較すると燃焼を約5〜7倍遅らせることができる。
【0064】
このように、本実施形態では、芯材20に防炎薬剤からなる燃焼遅延剤を含浸させれば、十分な防火性能を有する木製防火扉10を実現できる。
【0065】
また、芯材20に、防炎薬剤と共に燃焼時に溶融状態となって炭化残渣を固定する無機材料を含有する燃焼遅延剤を含浸させるようにしてもよい。このような無機材料は、火災発生時等に溶融して、例えば、ガラス状態となり、芯材20等が炭化して生成した炭化残渣を相互に固定するように作用する。すなわち、無機材料を防炎薬剤と共に芯材20に含浸させれば、無機材料により炭化残渣が相互に固定され、炭化残渣が崩れ落ちるのが防止される。このような無機材料を防炎薬剤と共に含有する燃焼遅延剤を芯材20等に含浸させることにより、木製防火扉10の防火性能をさらに向上させることができる。このような無機材料としては、例えば、水ガラスのアルカリ性を70%〜80%低減させたもの等が挙げられる。なお、このような無機材料は、必要な防火性能に応じて適宜加えればよく、勿論、添加しなくてもよいことはいうまでもない。
【0066】
このように、芯材20に燃焼遅延剤を含浸させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、容器に十分な量の燃焼遅延剤を入れてその中に芯材20を一定時間浸漬して含浸させる方法等が挙げられる。なお、浸漬したのち、水分を乾燥させることにより、一定量の有効成分を含浸させた芯材20を得ることができる。また、燃焼遅延剤は、芯材20全体に含浸させてもよいが、桐積層板24に含浸させた後、補強部材25を設けて芯材20としてもよい。本実施形態では桐積層板24のみに含浸させ、その後、同様の燃焼遅延剤を塗布した補強部材25を設けて芯材20とした。
【0067】
例えば、芯材20の寸法を、厚さ40mm、幅900mm、高さ2200mmとした場合には、厚さ40mm、幅600mm、高さ1800mmの桐積層板24に燃焼遅延剤の有効成分を300g程度含浸させるのが好ましい。この場合、桐積層板24を燃焼遅延剤中に74時間程度浸せばよい。その後、このようにして燃焼遅延剤を含浸した桐積層板24全体を25℃、30%RHの条件下で2時間程度乾燥する。なお、このような燃焼遅延剤を含浸させる量は、必要な防火性能に応じて適宜調整すればよく、勿論、上述したものに限定されない。
【0068】
また、化粧合板30は、このような燃焼遅延剤を含浸した芯材20の表面に耐火接着剤100を介して接合されており、本実施形態では、厚さ4mmの化粧合板を用いた。具体的には、芯材20と化粧合板30とは、少なくともシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有する耐火接着剤100を介して接合されている。
【0069】
このような耐火接着剤は、例えば、本実施形態では、ホウ酸化合物やフッ化物等の無機酸の存在下で、金属ケイ素(純度99%)と水酸化ナトリウムとを水溶媒中で反応させることで生成したシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有させた。また、このような無機材料は、Si/Naの成分比が2以上であり、アモルファス状でpHが12以下、硬度500cP以下の低粘性を有する材料である。例えば、本実施形態では、このような耐火接着剤として、水性造膜性無機化合物「リキッドセラミックス(LC)シリカ系」(商品名:コーミックス(株)製)を用いた。
【0070】
このような耐火接着剤100は、シロキサンやシラノール塩とからなる無機材料を含有しているので、火災発生時に比較的高い温度で加熱されると、無機発泡体となり、優れた断熱性能を有すると共に、優れた防水性能を有する材料となる。このため、本実施形態の木製防火扉10は、火災発生時には、耐火接着剤100が発泡した無機発泡体が火や熱を長時間遮断する。そして、この無機発泡体による断熱効果が低減しても、芯材20に燃焼遅延剤が含浸されているので、火や熱により芯材20が燃焼してしまうのを有効に防止でき、且つ、芯材20の炭化により生成した炭化残渣を固定することで、火や熱を遮断できる。また、このような耐火接着剤100は、防水効果があり、防水シートとしての役割を果たすため、芯材20からの水分の発散による反りの発生を効果的に防止することができる。したがって、本実施形態の木製防火扉10は、火や熱を長時間遮断すると共に反りの発生を防止できるので、非常に優れた防火性能を得ることができる。
【0071】
なお、本実施形態の木製防火扉10においては、補強部材25の扉端面側の表面には、発泡材40が長手方向に亘って埋め込まれるように設けられており、発泡材40を覆うように補強部材25の扉端面側表面には大手材又は横手材となる化粧材50が設けられている。
【0072】
ここで、発泡材40としては、例えば、230℃程度で厚さ方向に10倍程度に膨張するグラファイト系発泡材を用いればよく、これにより間口との隙間を完全に塞ぐことができ、煙の流れを防止すると共に延焼を防止することができる。この発泡材40は本実施形態では、防火扉の四方に設けたが、少なくとも三方の端面に設ければよい。また、化粧材50は、場所によっては必要に応じて省略できるものである。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の木製防火扉10は、少なくとも芯材20に燃焼遅延剤を含浸するようにしたので、火災発生時に、木製防火扉10の自己消化性能が高められ、且つできるだけ簡単な構造にも関わらず、ISO基準に基づく平均約900℃の燃焼試験において60分以上の防火性能が得られ、「特定防火設備」の国土交通大臣認定を受けることができるものである。
【0074】
また、木製防火扉10は、耐火接着剤100の防水効果により、芯材20等の反りが有効に防止され、経年変化の中での性能低下やコスト等の問題もない。
【0075】
さらに、燃焼遅延剤として、上述したように、防炎薬剤にさらに無機材料を別途加えれば、火災発生時に、無機材料が溶融したガラス状成分によって芯材20等が炭化して生成した炭化残渣が相互に固定され、炭化残渣が崩れ落ちることを防止できる。これにより、木製防火扉10の防火性能をさらに向上させることができるという効果がある。
【0076】
さらに、化粧合板30に、芯材20と同様の燃焼遅延剤を含浸させてもよい。これにより、木製防火扉10の防火性能をさらに向上させることができることはいうまでもない。なお、化粧合板30の場合、厚さ5mmで、900mm×2200mmの寸法で、有効成分として、50〜150g程度が目安となり、特に90g程度が好ましい。勿論、少なくとも芯材20に燃焼遅延剤を含浸させることにより優れた防火性能が得られるので、化粧合板30には燃焼遅延剤を含浸しなくてもよいことは言うまでもない。
【0077】
また、本実施形態では、芯材20を桐集成材24により構成するようにしたので、扉重量の軽量化を図ることができ、運搬取付費を低減することができるという効果も奏する。
【0078】
なお、本実施形態では、燃焼遅延剤を芯材20に含浸させ、その芯材20と化粧合板30とを耐火接着剤100により接合した構造の木製防火扉10を例示して説明したが、勿論これに限定されるものではない。以下の各実施形態において、本発明に係る木製防火扉の他の構造例について詳細に説明する。
【0079】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。なお、本実施形態では、上述した図1及び図2で説明した同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0080】
図3(a)に示すように、本実施形態の木製防火扉10Aは、芯材20Aの中心に燃焼遅延剤を含浸した杉材26を用い、且つその杉材26の両面に桐部材21,22を耐火接着剤100により接合した積層材24Aからなる芯材20Aを有し、各桐部材21,22に燃焼遅延剤を含浸した以外は上述した実施形態1と同様である。
【0081】
杉材26は、各桐部材21,22よりも燃焼遅延剤の含浸量が多く、また、桐部材21,22よりも且つ扉の強度を高める点で有効である。したがって、本実施形態の木製防火扉10Aは、芯材20Aの中心に燃焼遅延剤を含浸した杉材26を用いることで、十分な扉の強度を確保しつつ、防火性能をさらに高めることができる。なお、このような杉材26として間伐材を用いれば、コストの低減を図ることができるという効果もある。例えば、このように杉材26として間伐材を用いることで製造費を約40%低減することができ、また、これに桐部材21,22を接合した積層材24Aを用いて芯材20Aを構成することで扉重量の軽量化(約45〜48kg)により運搬取付費を低減することができる。
【0082】
また、図3(b)に示すように、杉材26と各桐部材21,22とを上述した実施形態で用いた耐火接着剤100により接合した積層材24Bからなる芯材20Bを用いた木製防火扉10Bとしてもよい。このように、杉材26と各桐部材21,22とを耐火接着剤100により接合することで、火災発生時には、防火性能をさらに高めることができる。
【0083】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。なお、本実施形態では、上述した図1〜図3で説明した同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0084】
図4に示すように、本実施形態の木製防火扉10C,10Dは、芯材20A,Bと化粧合板30との間に、燃焼遅延剤を含浸させたダミー材60を設け、このダミー材60を耐火接着剤100により接合した以外は上述した実施形態2と同様である。
【0085】
また、このようなダミー材60としては、例えば、桐、杉、唐松、及び椋等の木材、あるいは、これら各木材の集成材、間伐材、積層材等が挙げられる。特に、防火性能を高める点では、燃焼遅延剤を含浸できる材質であるのが好ましく、本実施形態では、杉材を用いた。なお、このダミー材60は、芯材としての役割も有する。
【0086】
このように、本実施形態の木製防火扉10C,10Dは、ダミー材60を設けて、耐火接着剤100の層を増やすことにより、さらに防火性能が高められ、且つ扉の強度を高めることができる。なお、本実施形態のように、ダミー材60を杉材とする場合には、杉の間伐材を用いれば、コストの低減を図ることができるという効果も奏する。
【0087】
また、本実施形態では、ダミー材60を耐火接着剤100により芯材20A,20B及び化粧合板30のそれぞれと接合することで防火性能を高めることができるので、芯材24A,24Bの中心を構成する杉材26に燃焼遅延剤を含浸させずに塗布だけでもよい。または、上述した実施形態1と同様に、杉材26の代わりに燃焼遅延剤が含浸又は塗布された桐材、若しくは桐集成材を用いて芯材の中心を構成するようにしてもよい。
【0088】
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。なお、本実施形態では、上述した図1〜図4で説明した同一部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0089】
図5(a)に示すように、各天然木集成材70を三層クロス張りした補強部材25Eを用いた木製防火扉10Eとした以外は上述した実施形態1と同様である。また、桐積層板24と補強部材25Eとは、両者の接合部分に設けられた凹凸部80を介して相互に嵌合している。これにより、十分な接合強度が得られ、扉強度を高めることができる。
【0090】
さらに、図5(b)に示すように、各天然木集成材70を耐火接着剤100により接合した構造の補強部材25Fを用いた木製防火扉10Fとしてもよい。また、この木製防火扉10Fでは、さらに、補強部材25Fと桐積層材24とを耐火接着剤100により接合し、芯材24Fを構成する各桐部材21〜23を相互に耐火接着剤100により接合している。これにより、非常に優れた防火性能を得ることができる。
【0091】
勿論、本実施形態の木製防火扉10E,10Fの扉構造に、上述した実施形態2,3の構造を採用してもよいことは言うまでもない。
【0092】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0093】
(実施例1)
厚さが13mmの桐材を用意し、この桐材に燃焼遅延剤として防炎薬剤「JERICO MF」(商品名:(株)日本環境研究所社製)を用い、有効成分を90g含浸させたものを実施例1の桐材とした。
【0094】
(実施例2)
水ガラスのアルカリ性を70%低減させたものを防炎薬剤と共に含有する燃焼遅延剤を含浸させた以外、実施例1と同様のものを実施例2の桐材とした。
【0095】
(比較例1)
燃焼遅延剤を含浸させていない以外、実施例1と同一のものを比較例1の桐材とした。
【0096】
(試験例1)
実施例1,2及び比較例1の厚さ13mmの桐材の一方面側から約800℃の炎で炙り、30分以上の耐火試験を行った。そして、桐材が貫通する直前までの時間を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0097】
【表1】
Figure 2004232449
【0098】
上記表1に示すように、実施例1の桐材は、30分で貫通しなかったのに対し、比較例1の桐材は、10分で貫通してしまった。このことから、防炎薬剤を桐材に含浸させることにより、優れた防火性能が得られることは明らかである。
【0099】
また、実施例2の桐材は、炭化残渣を固定化する無機材料が作用して炭化残渣の脱落が防止され、40分でも貫通しなかった。このことから、防炎薬剤と共に炭化残渣の脱落を防止する無機材料を桐材に含浸させれば、防火性能がさらに向上することが確認できた。
【0100】
(実施例3)
燃焼遅延剤としてホウ酸を含有する防炎薬剤を厚さ12mmの杉材に含浸させた後、乾燥することで、有効成分を30%含浸した杉材を作製した。この杉材の両面に、シロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有する耐火接着剤として水性造膜性無機化合物「リキッドセラミック(LC)シリカ系」(商品名;コーミックス(株)製)を用いて厚さ15mmの桐材を接合し、3層クロス張り構造の積層材を作製した。そして、この積層材の上下左右の端面に、桐集成材からなる補強部材を接合し、これを芯材とした。また、この芯材の両面に、上述と同一の耐火接着剤を用いて厚さ2.7mmの化粧合板を接合した。これを実施例3の木製防火扉とした(図3(b)参照)。
【0101】
(実施例4)
芯材と化粧合板との間に燃焼遅延剤を含浸させた厚さ5.5mmの杉材からなるダミー材を上述したのと同一の耐火接着剤により接合した以外は上述した実施例3と同様のものを実施例4の木製防火扉とした(図4(b)参照)。
【0102】
(試験例2)
実施例3及び4の木製防火扉の一方面側から平均約900℃の炎で炙り、60分以上の燃焼試験を行った。そして、木製防火扉が貫通する直前までの時間を測定した。なお、燃焼試験は、ISO基準に基づく「特定防火設備」の国土交通大臣認定に準じて行った。
【0103】
その結果、実施例3の木製防火扉は、各化粧合板が貫通するのに約5分づつ、各桐部材が貫通するのに約18.7分づつ、杉材が貫通するのに約30分かかり、扉全体が貫通するのに合計で約77.4分かかった。このことから、非常にすぐれた防火性能が得られることが分かった。これは、杉材に燃焼遅延剤を含浸させたことで、燃焼遅延剤が杉材等の炭化残渣を固定するように作用し、且つ耐火接着剤が無機発泡体となり、火や熱を長時間遮断できたためと考えられる。
【0104】
一方、実施例4の木製防火扉は、芯材と化粧合板との間にダミー材を耐火接着剤により接合したためか、扉全体が貫通するのに合計で約120分かかった。これにより、芯材と化粧合板との間に燃焼遅延剤を含浸したダミー材を介在させ、且つ、そのダミー材を耐火接着剤により接合することで、非常に優れた防火性能が得られることが分かった。
【0105】
そして、実施例3及び実施例4の木製防火扉は、ISO基準に基づく平均約900℃の燃焼試験において60分以上の防火性能が得られることから、「特定防火設備」の国土交通大臣認定を受けることができるのは明らかである。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来木製防火扉には適用されていなかった防炎薬剤を少なくとも含む燃焼遅延剤を少なくとも芯材に含浸するようにしたので、できるだけ簡単な構造で十分な防火性能を発揮する木製防火扉を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る木製防火扉の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る木製防火扉の断面図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態4に係る木製防火扉の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F 木製防火扉
20,20A,20B,20F 芯材
21、22、23 桐部材
24 桐積層板
24A,24B,24F 積層板
25 補強部材
26 杉材
30 化粧合板
40 発泡材
50 化粧材
60 ダミー材
100 耐火接着剤

Claims (17)

  1. 木製の芯材と、表面に設けられた化粧合板とを有する木製防火扉において、前記芯材には、ポリリン酸アンモニウム及びホウ酸の少なくとも一方を含む防炎薬剤を含有する燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉。
  2. 請求項1において、前記燃焼遅延剤には、燃焼時に溶融状態となって炭化残渣を固定する無機材料が含有されていることを特徴とする木製防火扉。
  3. 請求項2において、前記無機材料が、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ホウ酸塩およびシリカから選択される少なくとも一種からなることを特徴とする木製防火扉。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記化粧合板にも前記燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記芯材と前記化粧合板とは、耐火接着剤を介して接合されていることを特徴とする木製防火扉。
  6. 請求項5において、前記耐火接着剤は、少なくともシロキサンとシラノール塩とからなる無機材料を含有していることを特徴とする木製防火扉。
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、前記芯材が、桐材を主体とするものであることを特徴とする木製防火扉。
  8. 請求項1〜7の何れかにおいて、前記芯材が、桐集成材の積層板であることを特徴とする木製防火扉。
  9. 請求項8において、前記芯材が、前記桐集成材の3層クロス張りの積層板であることを特徴とする木製防火扉。
  10. 請求項9において、前記芯材は、前記桐集成材を前記耐火接着剤により接合した3層クロス張りの積層板であることを特徴とする木製防火扉。
  11. 請求項7において、前記芯材が、当該芯材の中心を他の木材で構成し、且つ当該他の木材を前記桐材で挟み込んだ積層板であることを特徴とする木製防火扉。
  12. 請求項11において、前記芯材は、前記桐材と前記他の木材とのそれぞれを前記耐火接着剤により接合した積層板であることを特徴とする木製防火扉。
  13. 請求項11又は12において、前記他の木材が、桐、杉、及び唐松から選択される一種の木材又はこれら各木材の間伐材若しくは集成材であることを特徴とする木製防火扉。
  14. 請求項13において、前記他の木材は、杉材又は杉の間伐材若しくは杉集成材であり、且つ当該他の木材には、前記燃焼遅延剤が含浸されていることを特徴とする木製防火扉。
  15. 請求項3〜14の何れかにおいて、前記芯材と前記化粧合板との間に前記燃焼遅延剤を含浸させた少なくとも一つのダミー材を介在させ、且つ、当該ダミー材は、前記芯材及び前記化粧合板のそれぞれと前記耐火接着剤により接合されていることを特徴とする木製防火扉。
  16. 請求項15において、前記ダミー材が、桐、杉、及び唐松から選択される一種の木材又はこれら各木材の間伐材若しくは集成材であることを特徴とする木製防火扉。
  17. 請求項1〜16の何れかにおいて、前記扉の端面近傍には、グラファイト系発泡材がその長手方向に亘って設けられていることを特徴とする木製防火扉。
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