JP4445991B2 - 木質材料用不燃化薬剤及びその製造方法 - Google Patents

木質材料用不燃化薬剤及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、住宅や店舗、その他建築構造物の内外装に利用される木材を不燃化する木質材料用不燃化薬剤と、その製造方法とに関する。
平成10年度に建築基準法が改正になり、一定の性能を満たせば、木質材料も不燃材料としての認定が受けられるようになった。それ以降、木質材料の不燃化に関する研究開発が盛んになった。
木質材料の不燃性能の評価方法の一つとして、コーンカロリーメータを用いた発熱性試験が規定されている。かかる評価方法において不燃の基準を満たすには、同装置による20分間の加熱試験において以下の3つの基準を満たす必要がある。
第1の基準:総発熱量が8MJ/m2 以下であること。
第2の基準:防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと。
第3の基準:最高発熱速度が10秒以上継続して200kw/m2 を超えないこと。
かかる第1から第3の3つの基準を満たすためには、木質材料中にかなり大量の薬剤を導入する必要がある。この木質材料中に大量の薬剤を導入するためには、高濃度の溶液を調製するか、特許第3538194号に記載されているように、木質材料への薬剤の含浸と、薬剤が浸透した木質材料の乾燥を複数回繰り返すことが必須となる。高濃度の溶液を得る方法としては、リン酸やリン酸の無機化合物など溶解度が極めて高い薬剤を使用するか、あるいは特開2006−219329に記載されているように処理溶液を加温する、またあるいは、複数の薬剤を用いて溶解度を高めることを挙げることができる。
一方、複数の薬剤を混合して溶解度を高める方法としては以下のような方法が知られている。
(1)特開2006−082533のように炭酸水素ナトリウムを添加することによりホウ素系化合物の濃度を高める方法。
(2)特開2007−090839のように水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムでpHを調整してホウ酸を高濃度に溶解させる方法。
(3)特開平08−073212のようにEDTAやクエン酸などのキレート剤を使ってホウ素系化合物の溶解度を高める方法。
(4)特開平03−223205や特開平07−088808のように有機アミンを用いてホウ素化合物を高濃度に溶解する方法。
特許第3538194号 特開2006−219329 特開2006−082533 特開2007−090839 特開平08−073212 特開平03−223205 特開平07−088808 北海道立林産試験場報 第13巻 第2号 8〜14ページ
しかしながら、上述した方法のうち、特許第3538194号のように、木質材料への薬剤の含浸と、薬剤が浸透した木質材料の乾燥を複数回繰り返す方法では、処理期間が極めて長くなるという致命的な欠点がある。
また、高濃度の溶液を得るために、溶解度が高いリン酸やリン酸の無機化合物などを使用する方法には、リン酸やリン酸の無機化合物などの極めて高い吸湿性のため、それで処理された木質材料が空気中の湿気を多量に吸い込み、それによって薬剤が滲み出すという大きな欠点を有している。
さらに、その薬剤の滲み出しを抑制するために、木質材料の表面に塗装などの表面コーティング膜を形成するが、薬剤の滲み出しは表面コーティング膜にも悪影響を及ぼし、剥離や亀裂が短時間で発生することになる。すなわち、リン酸やリン酸の無機化合物などを用いた高濃度の溶液を木質材料に導入する方法は、リン酸やリン酸の無機化合物などがもっている極めて高い吸湿性のため、現実には実施できないものである。
また、特開2006−219329に記載されているように処理溶液を加温することで、溶解度を高め、高濃度の溶液を得ることは難しいことではないが、木質材料への含浸等の処理時にも加温が必要で、作業が煩雑になり、装置も複雑なものとなる。したがって仮に実用化されたとしても、製造コストが高くなると考えられる。
また、ホウ素系化合物の溶解度を高めるために用いられている薬剤はいずれも、吸湿性が高く、処理後にも木質材料中に全てが残存するために、それで処理された木質材料は著しく重く、吸湿性も高く、自ら吸った湿気で薬剤が滲み出すという現象が生じる。また、(3)や(4)の方法で用いられている薬剤は有機物で加熱時には発熱があると考えられ、不燃性の発現を目的とする処理薬剤としてはその添加は好ましいものではない。ちなみに(4)の薬剤は防虫を主な目的としたものであるが、それを防火薬剤として用いた研究では、所期の目標を達成することができなかった旨の報告(北海道立林産試験場報 第13巻 第2号 8〜14ページ) がある。
このように、従来公知となっている不燃処理薬剤により処理された木質材料は、いずれも吸湿性が決めて高く、空気中の湿気を吸い込み、それが原因で薬剤の滲み出しや塗装等の表面コーティング膜の剥離や亀裂が発生することから、使用環境が著しく制約されるという基本的な問題を含んでいた。
このため、不燃木質材料の吸湿性を抑制できれば、その用途は飛躍的に拡大すると考えられ、その処理技術の確立が強く望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、処理期間が短く、加工装置も簡単で加工作業も容易で、吸湿性に起因する表面コーティング膜等に悪影響を及ぼす木質材料用不燃化薬剤の木質材料からの滲み出しが発生することがない木質材料用不燃化薬剤、この木質材料用不燃化薬剤の製造方法、木質材料の不燃化方法及び不燃化木質材料を提供することを目的としている。
本発明に係る木質材料用不燃化薬剤は、水に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤が溶解されるとともに、リン酸系不燃薬剤が単独の溶解度以上溶解されており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩である。
さらに、前記アンモニウム系薬剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムのいずれか、あるいは両者の混合物を用いる。
一方、本発明に係る木質材料用不燃化薬剤の製造方法は、水にリン酸系不燃薬剤を単独の溶解度以上に混ぜる工程と、この水に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤を溶解させて、リン酸系不燃薬剤を水に溶解させる工程とを有しており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩である。
また、本発明に係る木質材料用不燃化薬剤の製造方法は、水にリン酸系不燃薬剤を単独の溶解度以上に混ぜる工程と、この水に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤を溶解させて、リン酸系不燃薬剤を水に溶解させる工程とを有しており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩である。
発明者は、このような状況下にあって、できる限り簡便な手法により、不燃木質材料の吸湿性を抑制する技術を開発すべく検討を重ねてきた。既知の事実により、有機アミンや第4級アンモニウム塩の存在下で、ホウ素系化合物が溶解度をはるかに超えて溶解することは明らかであり、無機アンモニウム塩においても同様の効果が得られるであろうことは推察できた。ここでは、その吸湿性が問題となるので、処理後の木質材料にそれが残存しなければ、全て問題が解決すると思われた。
化学大辞典(共立出版株式会社、昭和46年 縮小版第11刷発行) の第5巻、「炭酸アンモニウム」の項には、「加熱すれば58℃で分解する。水溶液は70℃で分解してアンモニアと二酸化炭素と水になる。市販の炭酸アンモニウムはNH 4 HCO 3 ・NH 4 CO 2 NH 2 の組成をもった白色結晶で、熱すれば昇華する。」とあった。また、「炭酸水素アンモニウム」の項には「35〜60℃でアンモニアと二酸化炭素および水に分解する。」とあった。
アンモニウム塩は一般に吸湿性が高いが、これらのどちらか、あるいは両者の混合物を用いて不燃薬剤を所定の濃度に溶解し、木材中に持ち込んだ後、所定の温度をかけることで木材中から分解除去すれば、軽量で吸湿性のない不燃木質材料が製造できると推量した。後述するように、その後いくつもの実験を行い、その製造方法を確立し、本発明を完成するに至った。
(1)木質材料用不燃化薬剤
水500mlに加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤としての炭酸水素アンモニウム100gを溶解させた後、リン酸系不燃薬剤としてのリン酸グアニル尿素15g、リン酸グアニジン285gからなる有機リン酸塩混合物300gを投入し、約30℃に水温を保ちながら撹拌した結果、有機リン酸塩混合物は全てが溶解して、透明な溶液(木質材料用不燃化薬剤)が得られた。
なお、リン酸グアニジンの20℃での溶解度は15.5g/100mlであるので、炭酸水素アンモニウムが溶解された水500mlに、リン酸グアニジンが285gも溶解したのは、単独の溶解度以上に水に溶解させていることになる。
(2)試験材
本実施例における試験材は、60℃で十分に乾燥させた密度0.29g/cm 3 のスギ辺材板目板(厚さ15mm、板幅120mm、繊維方向の長さ120mm)である。
(3)試験材への木質材料用不燃化薬剤の浸透、加熱乾燥
かかる試験材を前記木質材料用不燃化薬剤中に沈め、加圧式注入缶を用いて、約50hPaの減圧を45分、続いて約1.2MPaの加圧を1.5時間という条件で含浸し、送風式の乾燥機を用いて、60℃で恒量になるまで乾燥させた。
その結果、試験材の重量増加率は、103%となった。乾燥後の試験材にはアンモニア臭は全くなく、加熱乾燥工程において炭酸水素アンモニウムが完全に除去されたことが確認された。これは、炭酸水素アンモニウムが、加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤であるため、両試験材から加熱乾燥時にガス化して蒸散したためと考えられる。また、加熱乾燥後の試験材の重量増加率から推定しても、加熱乾燥後の試験材中に炭酸水素アンモニウムが残存しているとは考えられない。
(4)試験材に対する発熱性試験
次いで、かかる試験材を23℃で相対湿度50%の恒温恒湿器中で調湿した後に、コーンカロリーメータによる20分間の発熱性試験を行った。
その結果、試験材の総発熱量は6.40MJ/m 2 となり、不燃の基準値を満たした。同条件で処理した試験材であるスギ材の30℃、相対湿度90%における平衡含水率は14.6%で、無処理木材のそれより(19.2%)もはるかに低くなった。
(1)木質材料用不燃化薬剤
水500mlに加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤としての炭酸水素アンモニウム100gを溶解させた後、リン酸系不燃薬剤としてのリン酸グアニル尿素15g、リン酸グアニジン285gからなる有機リン酸塩混合物300gと、ホウ酸14gを投入し、約30℃に水温を保ちながら撹拌した結果、有機リン酸塩混合物は全てが溶解して、透明な溶液(木質材料用不燃化薬剤)が得られた。
なお、リン酸グアニジンの20℃での溶解度は15.5g/100mlであるので、炭酸水素アンモニウムが溶解された水500mlに、リン酸グアニジンが285gも溶解したのは、単独の溶解度以上に水に溶解させていることになる。
(2)試験材
本実施例における試験材は、60℃で十分に乾燥させた密度0.29g/cm 3 ならびに0.36g/cm 3 のスギ辺材板目板(厚さ15mm、板幅120mm、繊維方向の長さ120mm)である。なお、本実施例中において、密度0.29g/cm 3 のスギ辺材板目板を第1の試験材、密度0.36g/cm 3 のスギ辺材板目板を第2の試験材とする。
(3)試験材への木質材料用不燃化薬剤の浸透、加熱乾燥
第1及び第2の試験材を前記木質材料用不燃化薬剤中に沈め、加圧式注入缶を用いて、約50hPaの減圧を45分、続いて約1.2MPaの加圧を1.5時間という条件で含浸した。そのとき、前記木質材料用不燃化薬剤の試験材への浸透性は良好であり、理論最大値どおりの注入量を得た。
次いで、第1及び第2の試験材を送風式の乾燥機を用いて、60℃で恒量になるまで乾燥させた結果、第1の試験材の重量増加率は105%、第2の試験材の重量増加率は90.2%となった。
乾燥後の第1及び第2の試験材にはアンモニア臭は全くなく、加熱乾燥工程において炭酸水素アンモニウムが完全に除去されたことが確認された。これは、炭酸水素アンモニウムが、加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤であるため、両試験材から加熱乾燥時にガス化して蒸散したためと考えられる。
また、第1及び第2の乾燥後の試験材の重量増加率から推定しても、乾燥後の試験材中に炭酸水素アンモニウムが残存しているとは考えらない。
(4)試験材に対する発熱性試験
次いで、23℃で相対湿度50%の恒温恒湿器中で調湿した後に、コーンカロリーメータによる20分間の発熱性試験を行った。
その結果、総発熱量は第1の試験材では4.80MJ/m 2 、第2の試験材では6.20MJ/m 2 となり、ともに不燃の基準値を満たした。同条件で処理した試験材であるスギ材のの30℃、相対湿度90%における平衡含水率は15.5%で、無処理木材のそれより(19.2%)もはるかに低くなった。
(1)木質材料用不燃化薬剤
水500mlに加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤としての炭酸水素アンモニウム100gを溶解させた後、リン酸系不燃薬剤としてのリン酸グアニル尿素及びリン酸グアニジンからなる有機リン酸塩混合物300gを投入し、約30℃に水温を保ちながら撹拌した結果、有機リン酸塩混合物は全てが溶解して、透明な溶液(木質材料用不燃化薬剤)が得られた。なお、これは上述した実施例1における木質材料用不燃化薬剤と同様のものである。
(2)試験材
本実施例における試験材は、60℃で十分に乾燥させたスギ辺材板目板(厚さ12mm、板幅70mm、繊維方向の長さ150mm)である。
なお、本実施例においては、ウエザメータによる塗膜の耐候性試験では、15mm×150mmの大きさの板材が要求され、かつウエザメータには厚い板を入れることができないので、12mm厚のものとした。
(3)試験材への木質材料用不燃化薬剤の浸透、加熱乾燥
かかる試験材を前記木質材料用不燃化薬剤中に沈め、加圧式注入缶を用いて、約50hPaの減圧を45分、続いて約1.2MPaの加圧を1.5時間という条件で含浸し、送風式の乾燥機を用いて、60℃で恒量になるまで乾燥させた。
(4)試験材に対する耐候性試験
次いで、23℃で相対湿度50%の雰囲気中で調湿後、試験材の表面を♯240のサンドペーパーで軽く研削した後、耐候性クリア塗料(日本ペイント(株) 製のファインウレタンU)を、メーカーのカタログに示された条件にしたがって塗布した。
この耐候性クリア塗料を塗布して一定期間養生後、クロスカット法(碁盤の目テープ法)による塗膜の付着性試験および、スーパーキセノンウェザメータによる耐候性試験を実施した。その結果、碁盤の目テープ法による塗膜の付着性試験では分類0(傷の縁が完全に滑らかでどの格子の目も剥がれていない状態)となった。
また、ウェザメータ1000時間後にも塗膜には亀裂や剥離が観察されなかった。
すなわちこの木質材料用不燃化薬剤が含浸、乾燥された試験材の塗膜の付着性や耐候性は、極めて良好であることが分かった。
なお、クロスカット法(碁盤の目テープ法)とは、JISK5600−5−6に定められた塗膜の付着性能を評価する試験方法であって、1乃至2mmの間隔で縦横に塗膜を傷つけ、これにセロファンテープを貼り付けた後、一気にセロファンテープを剥がしとることで塗膜の付着性能を評価する方法をいう。
次に、上述した実施例に対する比較例を挙げる。
比較例1
(1)木質材料用不燃化薬剤
水500mlにリン酸アンモニウム100gを溶解させた後、リン酸グアニル尿素とリン酸グアニジンからなる有機リン酸塩混合物250gを投入し、約30℃に水温を保ちながら撹拌した結果、リン酸グアニル尿素とリン酸グアニジンからなる有機リン酸塩混合物は全てが溶解して、透明な溶液(木質材料用不燃化薬剤)を得た。
なお、この比較例1における木質材料用不燃化薬剤は、前記実施例1における木質材料用不燃化薬剤での炭酸水素アンモニウムの代わりにリン酸アンモニウムを用いたものである。
(2)試験材
本比較例における試験材は、60℃で十分に乾燥させた密度0.34g/cm 3 のスギ辺材板目板(厚さ15mm、板幅120mm、繊維方向の長さ120mm)とする。
(3)試験材への木質材料用不燃化薬剤の浸透、加熱乾燥
前記試験材を前記木質材料用不燃化薬剤中に沈め、加圧式注入缶を用いて、約50hPaの減圧を45分、続いて約1.2MPaの加圧を1.5時間という条件で含浸した。そのとき、前記木質材料用不燃化薬剤の試験材への浸透性は良好であり、理論最大値どおりの注入量を得た。
次いで、第1及び第2の試験材を送風式の乾燥機を用いて、60℃で恒量になるまで乾燥させた。その結果、試験材の重量増加率は130%となり、実施例1と比較しても明らかに重たくなった。なお、実施例1での試験材の重量増加率は、103%である。
(4)試験材に対する発熱性試験
かかる試験材を23℃で相対湿度50%の恒温恒湿器中で調湿した後に、コーンカロリーメータによる20分間の発熱性試験を行った。その結果、総発熱量は4.68MJ/m 2 となり、不燃の基準値を満たした。
しかし、同条件で処理したスギ材の30℃、相対湿度90%における平衡含水率は46.3%で、無処理木材のそれ(19.2%)よりもはるかに高くなり、細胞壁内に取り込まれる結合水のほか、細胞内孔には明らかに自由水が存在して、木材表面からは薬剤の滲み出しによるべたつきが認められ、調湿時に試験片の下に置いておいた濾紙を汚染した。
比較例2
(1)木質材料用不燃化薬剤
水500mlにリン酸アンモニウム100gを溶解させた後、リン酸グアニル尿素とリン酸グアニジンからなる有機リン酸塩混合物250gを投入し、約30℃に水温を保ちながら撹拌した結果、リン酸グアニル尿素とリン酸グアニジンからなる有機リン酸塩混合物は全てが溶解して、透明な溶液(木質材料用不燃化薬剤)を得た。
なお、この比較例2における木質材料用不燃化薬剤は、前記比較例1における木質材料用不燃化薬剤と同等であり、前記実施例1における木質材料用不燃化薬剤での炭酸水素アンモニウムの代わりにリン酸アンモニウムを用いたものである。
(2)試験材
本比較例における試験材は、スギ辺材板目板(厚さ12mm、板幅70mm、繊維方向の長さ150mm)である。
(3)試験材への木質材料用不燃化薬剤の浸透、加熱乾燥
前記試験材を前記木質材料用不燃化薬剤中に沈め、加圧式注入缶を用いて、約50hPaの減圧を45分、続いて約1.2MPaの加圧を1.5時間という条件で含浸した。そのとき、前記木質材料用不燃化薬剤の試験材への浸透性は良好であり、理論最大値どおりの注入量を得た。
次いで、試験材を送風式の乾燥機を用いて、60℃で恒量になるまで乾燥させた。その結果、試験材の重量増加率は130%となり、実施例1と較しても明らかに重たくなった。なお、実施例1での試験材の重量増加率は、103%である。
(4)試験材に対する発熱性試験
試験材を20℃で相対湿度50%の雰囲気中で調湿後、表面を♯240のサンドペーパーで軽く研削後、耐候性クリア塗料(日本ペイント(株) 製のファインウレタンU)をメーカーのカタログに示された条件にしたがって塗布した。
この耐候性クリア塗料を塗布して一定期間養生後、クロスカット法(碁盤の目テープ法)による塗膜の付着性試験を行った。その結果は、分類4〜5で、塗膜の付着性に極めて問題があることが分かった。
すなわち、比較例1〜2によると、炭酸水素アンモニウムの代わりにリン酸アンモニウムを用いた木質材料用不燃化薬剤であると、不燃基準は満たすが、明らかに実施例1〜3に示す木質材料用不燃化薬剤を用いたものより試験材が重くなり、かつ試験材の含水率が高くなる。
これは、試験材の細胞壁内に取り込まれる結合水のほか、細胞内孔には明らかに自由水が存在することを意味しており、この自由水に起因して、試験材の表面からは木質材料用不燃化薬剤の滲み出しが生じ、これによるべたつきという不具合が発生する。
このべたつきは、調湿時に試験片の下に置いておいた濾紙を汚染することでも確認することができる。
これに対して、実施例1〜3における木質材料用不燃化薬剤では、不燃基準を満たしつつ、木質材料用不燃化方法が施された木質材料を比較例1〜2より軽くする構成することができ、最大の問題点であった木質材料用不燃化薬剤の滲み出しに起因するべたつきが発生しないことが確認された。
しかも、簡単な加圧式注入缶を用いて、木質材料用不燃化薬剤を木質材料に含浸させるものであるから、簡単に不燃化木質材料を得ることができる。
その上、クロスカット法による塗膜の付着性試験やスーパーキセノンウェザメータによる耐候性試験も良好にクリアした。すなわち、この木質材料用不燃化薬剤が含浸、乾燥された木質材料の塗膜の付着性や耐候性は、極めて良好であることが分かった。
なお、上述した各種実施例では、水に対して加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤としての炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムを溶解させた後、リン酸系不燃薬剤としてのリン酸グアニル尿素やリン酸グアニジンを単独での溶解度以上に溶解させているが、逆に、水にリン酸系不燃薬剤を単独での溶解度以上に混ぜ、その後に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤を溶解させることで、結果としてリン酸系不燃薬剤を単独での溶解度以上に溶解させるようにしてもよいことはいうまでもない。

Claims (7)

  1. 水に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤が溶解されるとともに、リン酸系不燃薬剤が単独の溶解度以上溶解されており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩であることを特徴とする木質材料不燃化薬剤。
  2. 前記アンモニウム系薬剤が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムのいずれか、あるいは両者の混合物であることを特徴とする請求項1記載の木質材料不燃化薬剤。
  3. 前記有機リン酸塩は、リン酸グアニジン又はリン酸グアニル尿素であることを特徴とする請求項1又は2記載の木質材料不燃化薬剤。
  4. 加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤を水に溶解させる工程と、この水にリン酸系不燃薬剤を単独の溶解度以上に溶解させる工程とを有しており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩であることを特徴とする木質材料不燃化薬剤の製造方法。
  5. 水にリン酸系不燃薬剤を単独の溶解度以上に混ぜる工程と、この水に加熱によりガス化するアンモニウム系薬剤を溶解させて、リン酸系不燃薬剤を水に溶解させる工程とを有しており、前記リン酸系不燃薬剤は、チッ素を含む有機リン酸塩であることを特徴とする木質材料不燃化薬剤の製造方法。
  6. 前記アンモニウム系薬剤が、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウムのいずれか、あるいは両者の混合物であることを特徴とする請求項4又は5記載の木質材料不燃化薬剤の製造方法。
  7. 前記有機リン酸塩は、リン酸グアニジン又はリン酸グアニル尿素であることを特徴とする請求項4、5又は6記載の木質材料不燃化薬剤の製造方法。
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