JP2013188932A - 難燃木質パネルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の難燃木質パネルの製造方法は、低比重材からなるエンドグレインパネルを180℃以上の高温で加熱処理した後、難燃剤液を含浸させ、次いで乾燥することを特徴とする。高温加熱処理の温度は190℃以上、特に200℃以上であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、ホウ酸とホウ砂が、室温以上に加熱された温度でのそれぞれの単独化合物の溶解度を超える量で含有されてなるホウ素化合物の液状組成物を木材等に含浸させることが記載されており、特許文献2には、減圧状態で木材に不燃処理剤を含浸させる減圧含浸工程と加圧状態で木材に不燃処理剤を含浸させる加圧含浸工程とを含む不燃処理剤の含浸方法を更に改良した不燃木材の製造方法が記載されている。
また、特許文献3には、木材を構成する細胞壁に存在する壁孔中の壁孔壁を破壊した壁孔壁破壊木材を用いることによって、難燃剤液を木材内部まで容易に浸透させることが記載されている。なお、壁孔壁を破壊する処理としては、温度の上昇及び下降を繰り返すこと等が記載されている。
なお、特許文献4には、木材の組織内に難燃剤を含ませる複合化工程と、木材を100〜250℃の温度で加熱処理する加熱工程とを有することを特徴とする改質木材の製造方法が記載されているが、同文献には、複合化工程後に加熱処理することしか記載されておらず、特許文献4の方法を用いても、バルサ材などの低比重材に難燃剤液を含浸させた後の乾燥時に生じる落ち込みによる表面の変形や内部割れを防止できない。落ち込みによる表面の変形とは、水の引張力による負圧で異常変形した細胞が、特定の場所に集団的に発生することにより、木材の表面に凹凸が発生する現象をいう。
本発明の難燃木質パネルの製造方法においては、低比重材からなるエンドグレインパネルを180℃以上の高温で加熱処理した後、難燃剤液を含浸させ、次いで乾燥する。
エンドグレインパネルは、低比重の木材(低比重材)からなるものを用いる。即ち、エンドグレインパネルは、その構成要素である小片が、低比重の樹種から得られた低比重材からなる。低比重の樹種としては、バルサ、ファルカタ、ポプラ、キリ、スギ等が挙げられるが、特にバルサであることが好ましい。エンドグレインパネルを構成する低比重材の比重(小片の比重)は、0.35以下であり、0.06〜0.30であることが好ましく、より好ましくは、0.08〜0.20である。低比重材からなるエンドグレインパネルを用いることによって、高温加熱処理を行っても、難燃薬剤溶液を内部に充分に含浸させることができる。
高温加熱処理は、180℃以上の高温下にエンドグレインパネルを所定時間置くことにより行う。高温加熱処理の温度は190℃以上、特に200℃以上であることがより好ましく、250℃以下、特に230℃以下であることが好ましい。エンドグレインパネルを、180〜250℃の範囲(好ましくは190〜250℃、更に好ましくは200〜230℃の範囲)の高温で処理する時間は、30分以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10時間であり、更に好ましくは2〜5時間である。
図2のグラフに示されるように、高温加熱処理は、好ましくは、昇温工程、高温維持工程及び降温工程を経て行う。高温維持工程では、加熱室内の温度を前記の設定温度(図示例では210℃)に所定時間維持することが好ましく、降温工程では、熱交換器での冷却を行ったり、無酸素の気体を導入することも好ましい。
180℃以上の高温での加熱処理は、昇温工程において加熱室内の温度が180℃以上となった時点から、降温工程において温度が180℃未満となるまで継続される。
上述した加熱装置の構成や温度変化は、あくまでも一例であり、昇温工程の昇温速度、高温維持工程の温度や時間、降温工程の降温速度等は、適宜に変更して実施することができる。
好ましい方法の一例としては、例えば、上方が開放された容器内で、難燃剤液にエンドグレインパネルを浸漬させる方法が挙げられる。この場合、エンドグレインパネルを浸漬させる難燃剤液を50℃以上、特に60℃以上に加熱することも好ましい。難燃剤液の加熱温度は100℃以下、特に95℃以下であることが好ましい。
また、エンドグレインパネルは、上記の好ましい温度範囲に維持した難燃剤液に1時間以上、特に8〜24時間浸漬することが好ましい。エンドグレインパネルへの難燃剤液を含浸方法としては、エンドグレインパネルを難燃剤液に浸漬させるのに代えて、エンドグレインパネル上に難燃剤液を注いだり、エンドグレインパネルに向かって噴射した難燃剤液に該パネルを接触させても良い。
難燃剤液としては、木材の難燃化(不燃化も含む概念)に従来用いられている各種公知の液状の難燃(不燃)化処理剤を特に制限なく用いることができる。
難燃剤液に含まれる難燃剤又は難燃剤液によって生じる難燃剤は、無機系難燃剤であっても有機系難燃剤であっても良い。
有機系難燃剤としては、例えば、リン酸系、リン窒素系、含ハロゲンリン酸エステル系等が挙げられる。
難燃剤液は、上記各種の難燃剤の一種を含むものであっても良いし、複数種類を含むものであっても良い。
なお、落ち込みによる表面の変形や内部割れを抑制できた理由の一つは、木材中の親水基であるヘミセルロースが選択的に分解され、難燃剤液含浸後の乾燥時における水の引張力が低減されたことにあると思われる。
(I)エンドグレインパネル(以下、EGPという)の製造
図3(a)に示すように、バルサ材からなる複数本の小角材20(比重0.15)を、隣り合う小角材20間にメラミン樹脂系接着剤を介在させ横一列に配置し、これらを横方向から加圧して接着一体化させた。次いで、この複合材を、小角材20の木口面が位置する一端から所定の幅で順次切断して、図3(b)に示すように、ブロック状の小片21が複数繋がった棒状中間体22を複数本得た。そして、それらの棒状中間体22を、小片21の木口面21a,21bがパネルの上下面を形成するように向きを変えた後、図3(c)に示すように、その棒状中間体22の側面どうしを、メラミン樹脂系接着剤を介して接合させ、厚み25mm、幅920mm、長さ1830mmのEGPを得た。
そのEGPを切断して、厚み25mm、縦303mm、横303mmのEGP試験片を製造した。
EGP試験片を熱風乾燥機内に入れて乾燥機内の温度を図2に示すグラフのように変化させて高温加熱処理を行った。最高温度210℃に維持した時間は2時間、180℃以上で処理した時間は2.5時間であった。
210℃に2時間維持した後は、乾燥機の扉を開放して、試験片が50℃以下になるまで放置した。
次いで、その試験片を、上方が開放された容器に入れ、難燃剤液に浸漬させた。難燃剤液としては、難燃剤として、ホウ酸ナトリウム塩(ホウ酸系薬剤)を30質量%含む水溶液を用いた。そして、試験片及び難燃剤液を入れた容器を下側から加熱し、難燃剤液を85℃に8時間維持した後、常温になるまで冷却させた。次いで、試験片を難燃剤液内から取り出し、温度20℃相対湿度70%の恒温高湿環境下に2日間放置して乾燥させた後、更に60℃に維持した乾燥機中に2日間放置して略絶乾状態まで乾燥させた。
このようにて実施例1の難燃木質パネルを得た。
実施例1の難燃木質パネルについて難燃剤の固形分量を計算して表1に示すと共に、その難燃木質パネルを9分割して、厚み25mm、縦100mm、横100mmの9枚の試験片とし、それらのうち重量が軽い方から4枚の試験片について、防耐火性能を評価するための燃焼試験を行った。
ところで、建築基準法でいう難燃材料(難燃木材)、準不燃材料(準不燃木材)、不燃材料(不燃木材)の条件として、指定性能評価機関が定める燃焼試験(発熱性試験ISO5660−1)の基準をクリアすることが必要である。
この基準によれば、準不燃材料の基準をクリアするためには、加熱時間10分、輻射強度50kW/m2の試験条件で、主に、
(1)総発熱量が8MJ/m2以下であること。
(2)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと。
(3)最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないこと。
が挙げられている。
そこで、上記の4枚の試験片(表1中、No.1〜No.4)について、コーンカロリーメータを用いた燃焼試験を行い、それらが、準不燃材料の基準を満たすか否かを調べ、その結果を表1に示した。
(比較例1)
高温加熱処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の難燃木質パネルを得た。この比較例1の難燃木質パネルと実施例1の難燃木質パネルの外観を目視にて観察して対比したところ、実施例1の難燃木質パネルは、落ち込みによる表面の変形も、内部割れもなかったのに対して、比較例1の難燃木質パネルは、パネルの側面が5mm程度落ち込んでいるところがあり、また、パネルを貫通していないものの、幅が2mm以上、長さが1cm以上の多数の内部割れが観察された。
この結果から、比較例1の難燃木質パネルは、防耐火性能の善し悪し以前に、外観上、製品化できるようなものではなかった。
バルサ材の辺材(比重0.15)からなる縦32mm、横32mm、高さ36mm(当初の寸法)の立方体形状のブロックを複数用意し、その一つのブロックについては、上記の実施例1と同様の条件で、高温加熱処理、難燃剤液の含浸処理及びその後の乾燥処理を行い、実施例2のブロック状の難燃木質材を得た。そして、もう一つの他のブロックについては、高温加熱処理を行わない以外は、同様にして、難燃剤液の含浸処理及びその後の乾燥処理を行い、比較例2のブロック状の難燃木質材を得た。
これらのブロック状の難燃木質材について、縦方向及び横方向それぞれの寸法について、当初の寸法(何れも32mm)と、乾燥後(含浸処理後の乾燥後)の寸法とを比較し、縦方向及び横方向のそれぞれについて、下記式により収縮率を求めた。
収縮率(%)=〔(当初の寸法−乾燥後の寸法)/当初の寸法〕×100
そして、縦方向の収縮率と横方向の収縮率との平均値を表2に示した。
なお、縦方向及び横方向の寸法は、当初の長さが32mmの長さの辺上に、その辺の長さを6等分する5点を取り、その5点それぞれから該辺に直交する方向に直線を引き、その直線に沿って測定した5点の長さ(N=5)の平均値とした。
なお、この試験は、エンドグレインパネルではなく、それを構成するバルサ材のブロックを用いたものであるが、エンドグレインパネルを用いて同様の試験を行った場合には、EGPを構成する個々の小片に同様の変化が生じることになるため、この試験の結果から、高温加熱処理を行わずに製造したエンドグレインパネルについては、それを構成する個々の小片に、比較例2のブロックと同等あるいはそれ以上の内部割れが生じ、エンドグレインパネルに落ち込みによる表面の変形や内部割れが生じるのに対して、高温加熱処理を行う本願発明の製造方法で製造したエンドグレインパネルには、それを構成する個々の小片及びエンドグレインパネル自体の何れにも、内部割れが生じにくく、エンドグレインパネルの表面(特に木口面以外の面の表面)にも落ち込みによる変形が生じにくいことが判る。
2a,2b 上下面
20 小角材
21 小片
21a,21b 木口面
22 棒状中間体
Claims (2)
- 低比重材からなるエンドグレインパネルを180℃以上の高温で加熱処理した後、難燃剤液を含浸させ、次いで乾燥することを特徴とする難燃木質パネルの製造方法。
- 前記低比重材がバルサ材である、請求項1記載の難燃木質パネルの製造方法。
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2012
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