JP6923912B2 - 難燃化処理水溶液 - Google Patents
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Description
また、本発明は、かかる難燃化処理水溶液の製造方法、難燃化基材の製造方法、かかる難燃化処理水溶液を製造するための組成物やその製造方法に関する。
本発明の難燃化処理水溶液は、可燃性基材を含浸させることにより、可燃性基材に難燃性・防炎性を付加することができる水溶性の高い処理液である。
例えば、ホウ素化合物であるホウ酸は、咳、咽頭痛、眼の充血や痛み、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、皮疹、頭痛、痙攣等の症状を引き起こすことが指摘されている(非特許文献1)。
また、ホウ素(ホウ素化合物)を含有する従来の難燃・防炎剤は、木材に対してホウ素(ホウ素化合物)に起因する白化現象、布や紙に対してゴワゴワ感を発生させるが、本発明の難燃化処理水溶液は、そのような問題をほとんど発生させない。
更に、本発明の難燃化処理水溶液は、水に対する溶解性が高く、粘度が低く、また、高性能な含浸促進剤を使用しているため、可燃性基材に浸透・含浸させやすい。このため、十分に可燃性基材に浸透・含浸させることができ、浸透・含浸コストの削減にも寄与する。
本発明の難燃化処理水溶液は、浸漬、塗布、吹付、穿孔注入、含浸装置等による含浸等の方法により、これらの可燃性基材の内部に浸透・含浸し、これらの可燃性基材に難燃性と防炎性を付与する。
「難燃性」とは、可燃性基材が燃焼しにくいことをいい、「防炎性」とは、可燃性基材が炎を上げて激しく燃焼しにくいことをいうが、両者に明確な違いは無い。以下、本明細書では、両者を含めて「難燃性」という。また、可燃性基材に難燃性を付与することを、「難燃化する」という。
前記のように、ホウ素(又はホウ酸等のホウ素化合物)は、難燃性と防蟻性を併せ持つことから、木材を対象とした難燃化処理剤としての性能自体は優れていたが、人体への有害性等の問題があるので、これを改善するため、本発明の難燃化処理水溶液は、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有させていない。
リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)は、水溶性肥料、防炎剤、発酵助剤、助剤、金属表面処理剤等に使用され、水溶性が高く、人体に対する安全性が高い物質である。
リン酸二水素アンモニウムは、公益財団法人日本防炎協会において、毒性審査済みの成分で、その安全性が確認されている。
硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)は、水溶性肥料、防炎剤、雪面硬化剤等に使用され、水溶性が高く、人体に対する安全性が高い物質である。
硫酸アンモニウムも、公益財団法人日本防炎協会において、毒性審査済みの成分で、その安全性が確認されている。
具体的には、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、硫酸アンモニウムの含有比率は、1〜1.5質量部が好ましく、1.1〜1.4質量部がより好ましく、1.2〜1.3質量部が特に好ましい。
アンモニア(NH3)は、弱アルカリ性を示す物質である。リン酸二水素アンモニウムや硫酸アンモニウムは、弱酸性である。弱酸性の水溶液を布や紙に浸透・含浸した場合、布や紙を変色(黄変)させるため、この変色を防止するためにpHを中性又は弱アルカリ性にする目的と、難燃性向上の目的で、本発明の難燃化処理水溶液には、アンモニアを含有させる。
アンモニアは、市販のアンモニア水(例えば、25%アンモニア水)を適宜使用することができる。必要に応じて希釈したアンモニア水を使用してもよい。
pHが上記範囲内であると、紙や布の黄変を十分に防止しやすい。
pHが上記範囲内であると、難燃成分が木材の内部にまで浸透しやすくなり、難燃性が向上しやすい。
紙又は布に使用する場合、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、アンモニアの比率は、0.01〜0.12質量部が好ましく、0.02〜0.10質量部がより好ましく、0.03〜0.09質量部が特に好ましい。
木材に使用する場合、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、アンモニアの比率は、0.01〜0.12質量部が好ましく、0.02〜0.10質量部がより好ましく、0.03〜0.09質量部が特に好ましい。
リン酸二水素アンモニウムとアンモニアの比率を上記範囲内とすることにより、難燃化処理水溶液のpHを上記範囲内に調整しやすい。
含浸促進剤は、難燃化処理水溶液の難燃成分が可燃性基材の内部にまで浸透するのを助けるのに使用される。含浸促進剤を使用することにより、可燃性基材内部に満遍無く難燃成分を行き渡らせることができ、難燃性が向上する。
このうち、ポリエーテル類が好ましく、中でも、アミノ基等の塩基性基を有するポリエーテル類が特に好ましい。
含浸促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記範囲内であると、難燃成分が容易に可燃性基材内部に浸透し、難燃性を十分に発揮しやすくなる。
本発明の難燃化処理水溶液は、他に、防蟻剤、防腐剤、防藻剤、防カビ剤等を含有することができる。
防蟻剤としては、他の成分との相溶性に優れ、難燃成分(リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム)による難燃化作用を阻害しないものであれば、公知の防蟻剤を使用することができる。
具体的には、例えば、ジノテフラン、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、アセタミプリド等のネオニコチノイド系化合物;シフルトリン、ピレトリン等のピレスロイド系化合物;カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;等が挙げられる。
防蟻剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記範囲内であると、木材の内部に、偏りなく難燃成分が浸透し、難燃性を十分なものとしやすい。
布や紙の場合、木材と比べて難燃成分が浸透しやすいので、コスト的な観点から上記範囲の水分含有率が好ましい(水分以外の成分を、上記範囲を超えて含有させても、難燃性は向上せず、無駄である場合がある)。
また、本発明は、前記した難燃化処理水溶液を乾燥させることを特徴とする、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有する組成物の製造方法にも関する。
更に、本発明は、かかる組成物に水を添加することを特徴とする難燃化処理水溶液の製造方法にも関する。
本発明の組成物(固形物や濃縮液)に、水やアンモニアを添加することにより、本発明の難燃化処理水溶液として使用することが可能となる。
固形物や濃縮液の状態とすることにより、運搬費用を抑えることができる。また、固形物や濃縮液の状態で保存することにより、保存安定性が向上する場合がある。
また、難燃化処理水溶液を乾燥させて本発明の組成物を得る際の乾燥方法に特に限定は無く、天日乾燥、アルコールランプ、ヒーター等による加熱乾燥、真空乾燥等が例示できる。
浸漬時間の下限が上記以上であると、可燃性基材の内部まで十分に成分が浸透し、得られる難燃化基材の難燃性が優れたものとなる。また、浸漬時間の下限が上記以下であると、生産性が十分となる(浸漬時間の上限を上記以上にしても、難燃化基材の性能は優れたものとはならず、無意味である)。
自然乾燥の場合、乾燥時間は、30分以上1週間以下が好ましく、1時間以上2日以下がより好ましく、2時間以上1日以下が特に好ましい。
強制乾燥の場合、乾燥時間は、1分以上8時間以下が好ましく、2分以上3時間以下がより好ましく、3分以上1時間以下が特に好ましい。
本発明の難燃化処理水溶液が優れた難燃性を示す作用・原理は明らかではないが、以下のことが考えられる。ただし本発明は、以下の作用効果の範囲に限定されるわけではない。
具体的には、難燃成分(リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム)が、可燃性基材の燃焼時に熱分解することで窒素ガスを発生し、この窒素ガスが酸素を遮断し燃焼を抑制しているものと考えられる。また、難燃成分が可燃性基材表面で炭素との混合物膜を生成し、燃焼を抑制しているものと考えられる。
また、難燃成分が分解することで生成するアンモニウムイオン(NH4 +)、リン酸水素イオン(HPO4 2−)、リン酸二水素イオン(H2PO4 −)等による負触媒効果も、燃焼の抑制に寄与しているものと考えられる。
以下の組成の溶液1を調製した。
・水 70.0質量部
・リン酸二水素アンモニウム 12.0質量部
(太平化学産業株式会社製)
・硫酸アンモニウム 15.0質量部
(米山薬品工業株式会社製)
・25%アンモニア水 2.0質量部
(株式会社小林製)
・含浸促進剤 0.9質量部
(日本ルーブリゾール株式会社製、ソルスパース20000)
・防腐剤 少量
(大阪ガスケミカル株式会社製、スラオフ72N)
・防藻剤 少量
(日本曹達株式会社製、バイオカット−AF40)
また、溶液1のpHは5.5であった。
調製例1において、水の添加量及び25%アンモニア水の添加量を変化させて、pH及び水分含有量が表2に示すような値である溶液を、それぞれ調製した。
何れの溶液も、各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液だった。
以下の組成の溶液2を調製した。
・水 90.0質量部
・リン酸二水素アンモニウム 4.0質量部
(太平化学産業株式会社製)
・硫酸アンモニウム 5.0質量部
(米山薬品工業株式会社製)
・25%アンモニア水 0.5質量部
(株式会社小林製)
・含浸促進剤 0.3質量部
(日本ルーブリゾール株式会社製、ソルスパース20000)
・防腐剤 少量
(大阪ガスケミカル株式会社製、スラオフ72N)
・防藻剤 少量
(日本曹達株式会社製、バイオカット−AF40)
また、溶液2のpHは5.0であった。
調製例3において、水の添加量及び25%アンモニア水の添加量を変化させて、pH及び水分含有量が表4に示すような値である溶液を、それぞれ調製した。
何れの溶液も、各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液だった。
リュウキュウマツの板をサンプルとして、本発明の難燃化処理水溶液の難燃化性能を試験した。リュウキュウマツは、他の木材と比較して、密度が高く、液剤の成分が浸透・含浸しにくいと言われている。
火炎照射後8分後の裏面の温度は75℃であり、その後も裏面の温度に大きな上昇はなく、炎が裏面に貫通する兆しは無かった。
溶液1に浸漬しなかったリュウキュウマツの板を使用した以外は、実施例1と同様にして火炎照射したところ、8分間経過後に、板の裏面に炎が貫通した。
調製例2で調製した各溶液を、バットの中に充填し、各溶液に実施例1で使用したのと同様のリュウキュウマツの板を12時間浸漬した。その後、板を取り出して自然乾燥させた後、再び、溶液に12時間浸漬した。その後、再び板を取り出し、自然乾燥させた。
自然乾燥させた板に対して、5分間ガスバーナーにて火炎照射した。使用ガスはプロパン、炎先端と試験体の距離は5cm、炎の先端温度は1000℃前後とした。
綿の薄手布(かなきん3号)をサンプルとして、本発明の難燃化処理水溶液による処理後の防炎性能について、消防法施行規則第4条の3に規定する防炎性能試験を公益財団法人日本防炎協会にて実施した。
薄手布を乾燥し、薬剤付着量を計測したところ、19.8質量%であった。
溶液2に代えて調製例4で調製した各溶液を使用した以外は、実施例3と同様にして、薄手布を1分加熱し、炭化面積を算出した。結果を表4に示す。
Claims (7)
- 木材を難燃化させるための難燃化処理水溶液であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、水、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、アンモニア及び含浸促進剤を含有し、pHが3.0以上6.0以下であることを特徴とする難燃化処理水溶液。
- 水分含有率が、30質量%以上60質量%以下である請求項1に記載の難燃化処理水溶液。
- 木材である可燃性基材に、請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を浸透・含浸させることを特徴とする難燃化基材の製造方法。
- 水を添加して請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を調製するための組成物であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有することを特徴とする組成物。
- 顆粒状又は粉体状である請求項4に記載の組成物。
- 請求項4又は請求項5に記載の組成物に水を添加することを特徴とする難燃化処理水溶液の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を乾燥させることを特徴とする、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有する組成物の製造方法。
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