JP6923912B2 - 難燃化処理水溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、木材、紙又は布である可燃性基材を難燃化させるための難燃化処理水溶液に関し、更に詳しくは、人体に有害なホウ素(又はホウ素化合物)を含有しない難燃化処理水溶液に関する。
また、本発明は、かかる難燃化処理水溶液の製造方法、難燃化基材の製造方法、かかる難燃化処理水溶液を製造するための組成物やその製造方法に関する。
本発明の難燃化処理水溶液は、可燃性基材を含浸させることにより、可燃性基材に難燃性・防炎性を付加することができる水溶性の高い処理液である。
木材、布、紙等の可燃性基材に難燃性・防炎性を付与するための薬剤としては、ホウ素化合物を添加したもの等が知られている(特許文献1〜5)。
ホウ素化合物は、難燃性・防炎性と防蟻性に優れているが、ホウ素化合物は、人体に対して、様々な悪影響を及ぼすことが知られている。
例えば、ホウ素化合物であるホウ酸は、咳、咽頭痛、眼の充血や痛み、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、皮疹、頭痛、痙攣等の症状を引き起こすことが指摘されている(非特許文献1)。
2013年7月20日から適用されているヨーロッパの新しい玩具指令によれば、ホウ素(ホウ素化合物)が新たに有害物質の対象となり、玩具材料や玩具塗料からの人体への有害物質であるホウ素(ホウ素化合物)等の移行限度値が設定された。
また、ホウ素(ホウ素化合物)は、それらが含浸された木材、布、紙が土壌中に廃棄された場合には、国の定めた土壌汚染対策法基準の土壌汚染と地下水汚染という環境負荷を引き起こす可能性のある物質であると規定されている。
ホウ素(ホウ素化合物)は、主にガラス繊維の原料に使用されている。このため、木材に含浸させると木材表面に白化現象が生じ、布や紙に含浸させるとゴワゴワ感が生じてしまう。
ホウ素(ホウ素化合物)は、水に対する溶解性が低い有害物質であり、木材に含浸する場合には、真空・加圧含浸法等の強制含浸法を用いることがほとんどであるが、その際に高度な圧力調整技術と高いコストが必要となる。
このため、ホウ素(ホウ素化合物)の代替となる成分を使用した難燃性・防炎性に優れた処理液の開発が望まれている。
特開2004−050828号公報 特開2014−139269号公報 特開2002−348574号公報 特開2010−248110号公報 特表2001−527093号公報
国立医薬品食品衛生研究所「国際化学物質安全性カード」 ホウ酸(BORIC ACID)
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、その課題は、ホウ素(ホウ素化合物)を含有する従来の難燃・防炎剤の問題点を解決することのできる難燃化処理水溶液を提供することにある。
具体的には、本発明の難燃化処理水溶液は、ホウ素(ホウ素化合物)のように健康障害・環境負荷を引き起こす成分は使用せず、安全な成分のみを使用する。
また、ホウ素(ホウ素化合物)を含有する従来の難燃・防炎剤は、木材に対してホウ素(ホウ素化合物)に起因する白化現象、布や紙に対してゴワゴワ感を発生させるが、本発明の難燃化処理水溶液は、そのような問題をほとんど発生させない。
更に、本発明の難燃化処理水溶液は、水に対する溶解性が高く、粘度が低く、また、高性能な含浸促進剤を使用しているため、可燃性基材に浸透・含浸させやすい。このため、十分に可燃性基材に浸透・含浸させることができ、浸透・含浸コストの削減にも寄与する。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水溶性の高いリン酸二水素アンモニウムと硫酸アンモニウム、アンモニア、含浸促進剤を水に溶解・分散させることによって、難燃性・防炎性においてホウ素(ホウ素化合物)に劣らない上に、可燃性基材に浸透・含浸されやすい難燃化処理水溶液を作製することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、木材、紙又は布を難燃化させるための難燃化処理水溶液であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、水、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、アンモニア及び含浸促進剤を含有することを特徴とする難燃化処理水溶液を提供するものである。
また、本発明は、木材、紙又は布である可燃性基材に、上記の難燃化処理水溶液を浸透・含浸させることを特徴とする難燃化基材の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、水を添加して上記の難燃化処理水溶液を調製するための組成物であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有することを特徴とする組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の組成物に水を添加することを特徴とする難燃化処理水溶液の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の難燃化処理水溶液を乾燥させることを特徴とする、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有する組成物の製造方法を提供するものである。
本発明の難燃化処理水溶液は、木材、布、紙等の可燃性基材の難燃化に資することができるとともに、ホウ素(ホウ素化合物)や重金属等の有害物質が含まれていないため、健康障害や環境負荷の危険性も生じない。
また、本発明の難燃化処理水溶液には、ホウ素(ホウ素化合物)が含まれていないため、ホウ素(ホウ素化合物)に起因する木材の白化現象や、布製品や紙製品のゴワゴワ感がほとんど発生しない。
本発明の難燃化処理水溶液は、従来のホウ素(ホウ素化合物)を含有する難燃・防炎剤に比べて、水溶性が高くて粘度が低い。このため、本発明の難燃化処理水溶液は、木材に対して浸透・含浸しやすく、高度な技術が無くても、容易に浸透・含浸作業を行うことができ、コストの削減につながるだけでなく、難燃化された基材は十分な難燃性を発揮することができる。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
本発明の難燃化処理水溶液は、可燃性基材に浸透・含浸させることにより、該可燃性基材を難燃化(又は防炎化)するものである。本発明における「可燃性基材」とは、具体的には、木材、紙又は布である。
本発明の難燃化処理水溶液は、浸漬、塗布、吹付、穿孔注入、含浸装置等による含浸等の方法により、これらの可燃性基材の内部に浸透・含浸し、これらの可燃性基材に難燃性と防炎性を付与する。
「難燃性」とは、可燃性基材が燃焼しにくいことをいい、「防炎性」とは、可燃性基材が炎を上げて激しく燃焼しにくいことをいうが、両者に明確な違いは無い。以下、本明細書では、両者を含めて「難燃性」という。また、可燃性基材に難燃性を付与することを、「難燃化する」という。
本発明の難燃化処理水溶液は、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有しない。
前記のように、ホウ素(又はホウ酸等のホウ素化合物)は、難燃性と防蟻性を併せ持つことから、木材を対象とした難燃化処理剤としての性能自体は優れていたが、人体への有害性等の問題があるので、これを改善するため、本発明の難燃化処理水溶液は、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有させていない。
本発明の難燃化処理水溶液は、水、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、アンモニア及び含浸促進剤を含有する。
<リン酸二水素アンモニウム>
リン酸二水素アンモニウム(NHPO)は、水溶性肥料、防炎剤、発酵助剤、助剤、金属表面処理剤等に使用され、水溶性が高く、人体に対する安全性が高い物質である。
リン酸二水素アンモニウムは、公益財団法人日本防炎協会において、毒性審査済みの成分で、その安全性が確認されている。
<硫酸アンモニウム>
硫酸アンモニウム((NHSO)は、水溶性肥料、防炎剤、雪面硬化剤等に使用され、水溶性が高く、人体に対する安全性が高い物質である。
硫酸アンモニウムも、公益財団法人日本防炎協会において、毒性審査済みの成分で、その安全性が確認されている。
リン酸二水素アンモニウムと硫酸アンモニウムは、ともに難燃性・防炎性を有する物質であるが、本発明の難燃化処理水溶液は、リン酸二水素アンモニウムと硫酸アンモニウムが特定の比率で混合されていることにより、難燃性が著しく向上している。
具体的には、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、硫酸アンモニウムの含有比率は、1〜1.5質量部が好ましく、1.1〜1.4質量部がより好ましく、1.2〜1.3質量部が特に好ましい。
<アンモニア>
アンモニア(NH)は、弱アルカリ性を示す物質である。リン酸二水素アンモニウムや硫酸アンモニウムは、弱酸性である。弱酸性の水溶液を布や紙に浸透・含浸した場合、布や紙を変色(黄変)させるため、この変色を防止するためにpHを中性又は弱アルカリ性にする目的と、難燃性向上の目的で、本発明の難燃化処理水溶液には、アンモニアを含有させる。
アンモニアは、市販のアンモニア水(例えば、25%アンモニア水)を適宜使用することができる。必要に応じて希釈したアンモニア水を使用してもよい。
本発明の難燃化処理水溶液のpHは、3.0以上7.5以下であることが好ましく、4.0以上7.3以下であることが特に好ましい。
紙又は布に使用する場合、pHは6.0以上7.5以下が好ましく、6.5以上7.3以下が特に好ましい。
pHが上記範囲内であると、紙や布の黄変を十分に防止しやすい。
木材に使用する場合、pHは3.0以上6.5以下であることが好ましく、4.0以上6.0以下であることが特に好ましい。
pHが上記範囲内であると、難燃成分が木材の内部にまで浸透しやすくなり、難燃性が向上しやすい。
リン酸二水素アンモニウムや硫酸アンモニウムに対するアンモニアの含有比率を調節することにより、本発明の難燃化処理水溶液のpHを、上記範囲内にすることができる。
紙又は布に使用する場合、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、アンモニアの比率は、0.01〜0.12質量部が好ましく、0.02〜0.10質量部がより好ましく、0.03〜0.09質量部が特に好ましい。
木材に使用する場合、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、アンモニアの比率は、0.01〜0.12質量部が好ましく、0.02〜0.10質量部がより好ましく、0.03〜0.09質量部が特に好ましい。
リン酸二水素アンモニウムとアンモニアの比率を上記範囲内とすることにより、難燃化処理水溶液のpHを上記範囲内に調整しやすい。
<含浸促進剤>
含浸促進剤は、難燃化処理水溶液の難燃成分が可燃性基材の内部にまで浸透するのを助けるのに使用される。含浸促進剤を使用することにより、可燃性基材内部に満遍無く難燃成分を行き渡らせることができ、難燃性が向上する。
含浸促進剤としては、ポリエーテル類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、リン酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
このうち、ポリエーテル類が好ましく、中でも、アミノ基等の塩基性基を有するポリエーテル類が特に好ましい。
また、市販の製品名としては、ジョンクリル(登録商標、BASFジャパン(株)製)、ソルスパース(登録商標、日本ルーブリゾール(株)製)、サンセパラー(登録商標、三洋化成(株)製)、ディスパロン(登録商標、楠本化成(株)製)等が挙げられる。
含浸促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の難燃化処理水溶液において、含浸促進剤の含有比率は0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。含浸促進剤の含有比率が上記範囲内であると、難燃成分が十分に可燃性基材内部に浸透し、難燃性を十分に発揮しやすくなる。
また、リン酸二水素アンモニウム1質量部に対して、含浸促進剤の比率は、0.01〜0.5質量部が好ましく、0.03〜0.2質量部がより好ましく、0.05〜0.1質量部が特に好ましい。
上記範囲内であると、難燃成分が容易に可燃性基材内部に浸透し、難燃性を十分に発揮しやすくなる。
<他の成分>
本発明の難燃化処理水溶液は、他に、防蟻剤、防腐剤、防藻剤、防カビ剤等を含有することができる。
防蟻剤は、木材に防蟻性(シロアリ等の害虫を木材に近づけないようにする性質ないしは近づいたシロアリ等を殺傷する性質)を付与するものである。
防蟻剤としては、他の成分との相溶性に優れ、難燃成分(リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム)による難燃化作用を阻害しないものであれば、公知の防蟻剤を使用することができる。
具体的には、例えば、ジノテフラン、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、アセタミプリド等のネオニコチノイド系化合物;シフルトリン、ピレトリン等のピレスロイド系化合物;カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;等が挙げられる。
防蟻剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の難燃化処理水溶液は、木材に使用する場合は、難燃成分の含有量が多く濃度の高いものを使用し、布や紙に使用する場合は、難燃成分の含有量が少なく濃度の低いものを使用するのがよい。
具体的には、本発明の難燃化処理水溶液における水分含有率は、対象となる可燃性基材が木材である場合は、30質量%以上80質量%以下が好ましく、40質量%以上75質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
上記範囲内であると、木材の内部に、偏りなく難燃成分が浸透し、難燃性を十分なものとしやすい。
また、本発明の難燃化処理水溶液における水分含有率は、対象となる可燃性基材が布や紙である場合は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上95質量%以下がより好ましく、80質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
布や紙の場合、木材と比べて難燃成分が浸透しやすいので、コスト的な観点から上記範囲の水分含有率が好ましい(水分以外の成分を、上記範囲を超えて含有させても、難燃性は向上せず、無駄である場合がある)。
本発明は、水を添加して前記した難燃化処理水溶液を調製するための組成物であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有することを特徴とする組成物にも関する。
また、本発明は、前記した難燃化処理水溶液を乾燥させることを特徴とする、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有する組成物の製造方法にも関する。
更に、本発明は、かかる組成物に水を添加することを特徴とする難燃化処理水溶液の製造方法にも関する。
すなわち、水溶液の形で可燃性基材に浸透・含浸させて使用される難燃化処理水溶液を、固形物(若干の水分を含んだものを含む)や、濃縮液の形で保存してもよい。
本発明の組成物(固形物や濃縮液)に、水やアンモニアを添加することにより、本発明の難燃化処理水溶液として使用することが可能となる。
固形物や濃縮液の状態とすることにより、運搬費用を抑えることができる。また、固形物や濃縮液の状態で保存することにより、保存安定性が向上する場合がある。
本発明の組成物の状態に特に限定はなく、顆粒状や粉末状の組成物が例示できる。
また、難燃化処理水溶液を乾燥させて本発明の組成物を得る際の乾燥方法に特に限定は無く、天日乾燥、アルコールランプ、ヒーター等による加熱乾燥、真空乾燥等が例示できる。
本発明は、木材、紙又は布である可燃性基材に、前記した難燃化処理水溶液を浸透・含浸させることを特徴とする難燃化基材の製造方法にも関する。
浸透・含浸させる方法は浸漬、塗布、吹付、穿孔注入、含浸装置等による含浸等が挙げられる。特に、可燃性基材が木材の場合、木材の内部まで十分に成分を浸透・含浸させることにより、本発明の効果が発揮されやすくなるので、含浸装置等による含浸や穿孔注入が好ましい。
浸漬の場合、浸漬時間は30分以上1週間以下が好ましく、1時間以上2日以下がより好ましく、2時間以上1日以下が特に好ましい。
浸漬時間の下限が上記以上であると、可燃性基材の内部まで十分に成分が浸透し、得られる難燃化基材の難燃性が優れたものとなる。また、浸漬時間の下限が上記以下であると、生産性が十分となる(浸漬時間の上限を上記以上にしても、難燃化基材の性能は優れたものとはならず、無意味である)。
また、浸漬は1回行うのではなく、途中で可燃性基材をいったん取り出し乾燥させ、複数回に分けて浸漬を行うのも好ましい。浸漬の際に、気泡の発生等により、局所的に難燃成分が浸透しにくい部位が生ずることがあるが、複数回に分けて浸漬すれば、このようなことを防止することができる。
浸漬後の乾燥は、自然乾燥が好ましいが、熱風乾燥機等による強制乾燥でもよい。
自然乾燥の場合、乾燥時間は、30分以上1週間以下が好ましく、1時間以上2日以下がより好ましく、2時間以上1日以下が特に好ましい。
強制乾燥の場合、乾燥時間は、1分以上8時間以下が好ましく、2分以上3時間以下がより好ましく、3分以上1時間以下が特に好ましい。
表1に、本発明の難燃化処理水溶液の一例について、一般財団法人日本文化用品安全試験所にて行なわれた有害17元素19項目に関する試験結果を示す。本発明の難燃化処理水溶液は、EN71−3(2013年7月20日よりEUで玩具の安全を対象に新しく適用開始された基準)の規格値を全てで下回っている。本発明の難燃化処理水溶液は、ホウ素(ホウ素化合物)を含んでいないため、溶解性ホウ素も規格値をはるかに下回る数値であった。
Figure 0006923912
また、表1に示した本発明の難燃化処理水溶液の一例は、室内濃度指針値が設定された13物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、クロルピリホス、フェノブカルブ、ダイアジノン、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)を一切含んでおらず、社団法人日本しろあり対策協会と公益財団法人日本木材保存協会にて認定された健康障害と環境負荷を引き起こさない処理液である。
<作用・原理>
本発明の難燃化処理水溶液が優れた難燃性を示す作用・原理は明らかではないが、以下のことが考えられる。ただし本発明は、以下の作用効果の範囲に限定されるわけではない。
本発明の難燃化処理水溶液は、燃焼中に有機物の炭化を著しく促進して可燃性の炭素含有気体の生成を減少させ、燃焼速度の遅い炭素の生成量を増加させることにより、可燃性基材の燃焼を抑制していると考えられる。
具体的には、難燃成分(リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム)が、可燃性基材の燃焼時に熱分解することで窒素ガスを発生し、この窒素ガスが酸素を遮断し燃焼を抑制しているものと考えられる。また、難燃成分が可燃性基材表面で炭素との混合物膜を生成し、燃焼を抑制しているものと考えられる。
また、難燃成分が分解することで生成するアンモニウムイオン(NH )、リン酸水素イオン(HPO 2−)、リン酸二水素イオン(HPO )等による負触媒効果も、燃焼の抑制に寄与しているものと考えられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
<調製例1>
以下の組成の溶液1を調製した。
[溶液1組成]
・水 70.0質量部
・リン酸二水素アンモニウム 12.0質量部
(太平化学産業株式会社製)
・硫酸アンモニウム 15.0質量部
(米山薬品工業株式会社製)
・25%アンモニア水 2.0質量部
(株式会社小林製)
・含浸促進剤 0.9質量部
(日本ルーブリゾール株式会社製、ソルスパース20000)
・防腐剤 少量
(大阪ガスケミカル株式会社製、スラオフ72N)
・防藻剤 少量
(日本曹達株式会社製、バイオカット−AF40)
各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液が得られた。
また、溶液1のpHは5.5であった。
<調製例2>
調製例1において、水の添加量及び25%アンモニア水の添加量を変化させて、pH及び水分含有量が表2に示すような値である溶液を、それぞれ調製した。
何れの溶液も、各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液だった。
<調製例3>
以下の組成の溶液2を調製した。
[溶液2組成]
・水 90.0質量部
・リン酸二水素アンモニウム 4.0質量部
(太平化学産業株式会社製)
・硫酸アンモニウム 5.0質量部
(米山薬品工業株式会社製)
・25%アンモニア水 0.5質量部
(株式会社小林製)
・含浸促進剤 0.3質量部
(日本ルーブリゾール株式会社製、ソルスパース20000)
・防腐剤 少量
(大阪ガスケミカル株式会社製、スラオフ72N)
・防藻剤 少量
(日本曹達株式会社製、バイオカット−AF40)
各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液が得られた。
また、溶液2のpHは5.0であった。
<調製例4>
調製例3において、水の添加量及び25%アンモニア水の添加量を変化させて、pH及び水分含有量が表4に示すような値である溶液を、それぞれ調製した。
何れの溶液も、各成分は十分に相溶し、透明で均一な溶液だった。
<実施例1>
リュウキュウマツの板をサンプルとして、本発明の難燃化処理水溶液の難燃化性能を試験した。リュウキュウマツは、他の木材と比較して、密度が高く、液剤の成分が浸透・含浸しにくいと言われている。
調製例1で調製した溶液1を、バットの中に充填し、10cm×10cm×1.5cmのリュウキュウマツの板を12時間浸漬した。その後、板を取り出して自然乾燥させた後、再び、溶液1に12時間浸漬した。その後、再び板を取り出し、自然乾燥させた。
上記処理前の板の質量は110.1gであったのに対し、上記処理後の板の質量は118.6gであり、難燃化処理水溶液の成分が含浸することにより、板の質量が8.5g増加していた。
自然乾燥させた板に対して、使用ガスはプロパン、炎先端と試験体の距離は5cm、炎の先端温度は1000℃前後として、火炎照射した。板の裏面(炎の反対側)には、温度計を設置し、50秒間隔で温度を測定した。
火炎照射後8分後の裏面の温度は75℃であり、その後も裏面の温度に大きな上昇はなく、炎が裏面に貫通する兆しは無かった。
<比較例1>
溶液1に浸漬しなかったリュウキュウマツの板を使用した以外は、実施例1と同様にして火炎照射したところ、8分間経過後に、板の裏面に炎が貫通した。
<実施例2>
調製例2で調製した各溶液を、バットの中に充填し、各溶液に実施例1で使用したのと同様のリュウキュウマツの板を12時間浸漬した。その後、板を取り出して自然乾燥させた後、再び、溶液に12時間浸漬した。その後、再び板を取り出し、自然乾燥させた。
自然乾燥させた板に対して、5分間ガスバーナーにて火炎照射した。使用ガスはプロパン、炎先端と試験体の距離は5cm、炎の先端温度は1000℃前後とした。
火炎照射後の板において、黒く変色した(炭化した)部分の面積を算出した結果を表2に示す。
Figure 0006923912
<実施例3>
綿の薄手布(かなきん3号)をサンプルとして、本発明の難燃化処理水溶液による処理後の防炎性能について、消防法施行規則第4条の3に規定する防炎性能試験を公益財団法人日本防炎協会にて実施した。
薄手布を、上記溶液2の中に4分間浸漬し、絞り率は116%であった。
薄手布を乾燥し、薬剤付着量を計測したところ、19.8質量%であった。
本発明の難燃化処理水溶液による処理後の薄手布は、表3に示す通り、残炎時間、残じん時間、炭化面積に関して、消防法施行規則第4条の3に規定する基準に適合していたため公益財団法人日本防炎協会にて防炎薬剤として登録された。
Figure 0006923912
<実施例4>
溶液2に代えて調製例4で調製した各溶液を使用した以外は、実施例3と同様にして、薄手布を1分加熱し、炭化面積を算出した。結果を表4に示す。
Figure 0006923912
本発明の難燃化処理水溶液は、難燃性に優れ、人体に対する安全性が高いので、木造住宅における木材の難燃化をはじめとして、障子、壁紙、襖、包装紙、ダンボール、証券、書類等の紙製品;カーテン、絨毯、布製ブラインド、シーツ、クッション、ぬいぐるみ等の布製品;ベニヤ板、木製建具、木製家具等の木製品;等の難燃化に広く利用されるものである。

Claims (7)

  1. 材を難燃化させるための難燃化処理水溶液であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、水、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、アンモニア及び含浸促進剤を含有し、pHが3.0以上6.0以下であることを特徴とする難燃化処理水溶液。
  2. 水分含有率が、30質量%以上60質量%以下である請求項1に記載の難燃化処理水溶液。
  3. 材である可燃性基材に、請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を浸透・含浸させることを特徴とする難燃化基材の製造方法。
  4. 水を添加して請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を調製するための組成物であって、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有することを特徴とする組成物。
  5. 顆粒状又は粉体状である請求項4に記載の組成物。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の組成物に水を添加することを特徴とする難燃化処理水溶液の製造方法。
  7. 請求項1又は請求項2に記載の難燃化処理水溶液を乾燥させることを特徴とする、ホウ素及びホウ素化合物の何れも含有せず、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム及び含浸促進剤を含有する組成物の製造方法。
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