JP2004231515A - 生花風の加工物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】これまでのドライフラワー作成技術では困難であった、天然の植物体の形態、感触を変化せしめることなく、長期間の保存性を有し、長期間生花風の香りがする観賞用、装飾用としての天然の植物体を使用した生花風植物を製造することである。
【解決手段】これらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、植物体を乾燥し、脂肪酸エステルまたは炭化水素またはその混合物を含んだ溶液に植物体を浸漬し、それらを植物体表面に吸着させ、さらに疎水性樹脂を表面コートすることにより、容易に長期保存性生花風植物体が得られることを見いだし、本発明に至った。さらに香料内包マイクロカプセルを植物体表面にコートすることにより、長期間生花風の香りがする植物体である。
【選択図】 なし
【解決手段】これらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、植物体を乾燥し、脂肪酸エステルまたは炭化水素またはその混合物を含んだ溶液に植物体を浸漬し、それらを植物体表面に吸着させ、さらに疎水性樹脂を表面コートすることにより、容易に長期保存性生花風植物体が得られることを見いだし、本発明に至った。さらに香料内包マイクロカプセルを植物体表面にコートすることにより、長期間生花風の香りがする植物体である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は天然の植物体の形態、感触を変化せしめることなく長期間の保存性を有する天然の植物体を使用した観賞用、装飾用としての生花風植物及びその加工方法に関する。
【0002】
【従来技術および問題点】
自然の産物である木の枝葉や花及び草花である植物体をカットして水にさし観賞用に利用されている。これら植物体をカットして水にさされた観賞用植物は、そのきれいな外観から愛用されているだけではなく、その植物体より発生されるほのかな香りがアロマセラピー効果を生み、観る人たちをリラックスさせる効果も大きい。しかしカットした植物体は水にさしても寿命が短く、長い間その形状を保つことが出来なかった。また植物体の形状を保つ方法としてドライフラワーがあるが、ドライフラワーは植物体より水分を完全に除いたものであるため、柔軟性に欠け折れ易いという問題がある。さらにドライフラワーはその色彩に限りが有るという問題もある。そこで植物体の柔軟性をドライフラワーのように完全に損なうことなく、植物体に任意の色彩を付与し長期間その色彩と形状を保持することを目的とし、多価アルコールをカットした木の枝葉や花及び草花である植物体に吸収せしめる方法(特開平04−53418、特開2001−233702)や新鮮な花の組織水を植物主体の代謝に不適当な物質(ポリビニルアルコール等)で置換させた切り花(特開平04−505766)があるが、作成及び保存時に花の芳香性が失われるという問題があった。芳香保持生を有した長期保存可能型生花風植物として、多価アルコールを保存剤としかつ耐候性被膜形成剤を被覆させ、花部は芳香を保ち天然の風合いを保持する方法(特開平8−20502)があるが、生花としてラベンダーに限定され、他の植物には適用できないという問題点があった。また水溶性の多価アルコールや高分子類を花に浸漬したタイプでは、時間経過後に空気中の水分を吸収することにより花の含水分が過剰になり、花表面が過度に濡れてしまう欠点があった。そこで非水溶性物質であるパラフィン類(特開昭60−6322)や不飽和アルコール(特開平7−25200)を花に吸収させた例があり、これらは長時間しなやかさを保つが、機械的強度的に弱くもろいという欠点があった。機械的強度を上げるために花表面にメラミン樹脂等を浸漬・硬化させ、さらにニトリルゴム変性樹脂を塗布したタイプも考案されているが、しなやかさに欠けるという問題点があった。
【0003】
【解決しようとする課題】
本発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、植物体の柔軟性をドライフラワーのように完全に損なうことなく、植物体に任意の色彩・香りを付与し長期間その色彩・形状・香りを維持することを可能にした観賞用植物体を提供するものである。
【0004】
【課題の解決手段】
上記課題を解決するために本発明による観賞用植物体は、シリカゲルやアルミナ或いはアルコール類やケトン類、グリコール類等を用いてカットした木の枝葉や花及び草花である植物体組織を乾燥後、カルナバロウ等の脂肪酸エステル類やパラフィンワックス等の炭化水素、及びそれらの混合物を吸収せしめ、さらにポリスチレン樹脂等を表面コートすることにより、機械的に強くまたしなやかさをも有する。さらに各植物の天然および/または合成香料を内包した徐放性カプセルを植物体表面に付着させることにより作成されたことを特徴とする。
【0005】
また本発明は上述のような観賞用植物体の製造方法を提供するものであり、その製造方法はシリカゲルや多孔質アルミナ等の無機質脱水剤或いはイソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン等のケトン類、メチルセロソルブ等のグリコール類を用いて生花の脱水を行った後、エチルアルコール等の揮発性有機溶剤で一度軽く洗浄し、カルナバロウ等の脂肪酸エステルやパラフィンワックス等の炭化水素及びそれらの混合物と染料や顔料を分散させた前述揮発性有機溶剤とを混合し、植物体組織に浸し、さらに疎水性樹脂及び香料内包マイクロカプセルを表面コートする工程を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、疎水性の脂肪酸エステルや炭化水素が植物体組織に取り込まれて吸収され、前期植物体組織表面に均一に吸着するため、長期にわたって柔軟性と滑らかさを保持し、水、土壌、肥料及び太陽光を必要とせず観賞用としての生花風植物を作成できる。また表面に疎水性樹脂をコートしているため力学的強度が強くドライフラワーのように折れることもない。また長期にわたる香料の徐放が可能なカプセルを表面に付着させているため、他の生花風植物と違って、長期にわたって香りも保持する。
【0007】
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明による観賞用植物体は、その植物体組織中及び表面に脂肪酸エステルや炭化水素が吸収されている。この脂肪酸エステルや炭化水素は植物体の柔軟性、滑らかさを長期間にわたって保持せしめたるものである。このような脂肪酸エステルとしては、カルナバロウ、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソオクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、酢酸ラノリン、ラノリン、ラノリンアルコール、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、トリオレイルリン酸、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、バルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ポリオキシエチレンオレイルエステル、ポリオキシエチレンステアリルエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等の単体やその混合物が挙げられる。また炭化水素としては、αオレフィンオリゴマー、プリスタン、ワセリン、パラフィン、ワイクロクリスタルワックス、オゾケライト、セレシン、ワイクロクリスタルワックス、ペンタトリアコンタン、ドトリアコンタン、ヘキサコタン、ヘプタコタン、オクタコタン、ノナコサン、1−テトラコンテン等が挙げられる。また前述観賞用植物体は疎水性樹脂を表面にコートさせており、力学的強度を向上させている。このような疎水性樹脂としてはウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイン酸樹脂、セルロース誘導体、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また疎水性樹脂を表面コートする際、その分散液に香料内包マイクロカプセルを同時に分散させた液を用いることにより、疎水性樹脂をコーティングすると同時に香料内包マイクロカプセルも花表面にコートさせることが出来る。このような徐放性カプセルの壁材としては、セルロース、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート吸油性樹脂等の有機質壁材や、多孔性シリカ、多孔性炭化ケイ素、多孔性アルミナ、ゼオライト、多孔性ガラス等の多孔性無機質化合物壁材を挙げることが出来る。また薔薇香料としてはゲラニオールやシトロネロール、1,3−ジメトキシ−5−メチルベンゼン等を挙げることが出来る。また椿香料としてはリナロールやリナロールオキサイド等が挙げられる。カーネーション香料としては、2−エチルヘキサナールやリナロール、α−テルピネオール、ジェスモン、シス−3−ヘキセノール、メチルジャスモネート等が挙げられる。また蘭香料としてはオイゲノール、バニリン、メチルエピジャスモネート、メチルジャスモネート、トランス−ファルネソール、β−ファルネッセン、ネロリドール等が挙げられ、更にその他多数の花香料が考えられる。また花香料以外にも癒し系香料としてアニス、イランイラン、エストラゴン、オニオン、オリバナム、カミツレ、カヤプテ、キャラアウエー、クローブ、コリアンダー、ローズマリー等を挙げることが出来るが、香料の種類は、特に限定されるものではない。
【0008】
植物体としては、本発明において基本的に限定されるものではなく、薔薇、椿、すみれ、カーネーション、蘭等の草花、木の枝、カットした木などの植物体であることが出来る。
【0009】
このような観賞用植物体を作成するには、まずシリカゲルやアルミナ等の吸湿性多孔質粉体中に植物を陥没させたり、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコールやアセトン等のケトン類、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のグリコール類に浸漬することにより、植物を完全脱水する。
【0010】
脂肪酸エステルや炭化水素は、前述のように植物体組織を長期間にわたって柔軟にかつ滑らかに保持するためのものであるが、このままでは植物体組織に吸収されにくいため、植物体組織に吸収されやすい有機溶剤に溶解し、その有機溶剤とともに植物体組織に吸収せしめる。このような有機溶剤としては、メタノールやエタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、または四塩化炭素、メチレンクロライド、クロロホルム、1、1−ジクロロエタン、1、2−ジクロロエタン、1、1,1−トリクロロエタン等の塩素系溶剤、またヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油ベンジン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類やそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0011】
この有機溶剤には、染料や顔料を添加することが出来る。染料や顔料を添加する場合、前記植物体を容易に着色できる。前記染料としては、用いる有機溶剤に可溶な染料で有れば基本的にいかなるものでも良い。ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料,アゾイック染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン・ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン・インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン・オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料等が挙げられる。また前記顔料としては、ハンサイエロー、ペンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、エオシントーナー、トルイジントーナー、ローダミントーナー、マダーレーキ、レッドレーキ、リソールレッド、ピーコックブルー、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、ジスアゾエロー、ジスアゾオレンジ、ブリリアントカーミン、ウオッチングレッド、ナフトールレッド、ファーストスカイブルー、キナクリドンレッド、ファーストエロー、ジスアゾエロー、ジスアゾオレンジ、ブリリアントカーミン、ナフトールレッド、ボンマルーン、トルイジンレッド、バルカンオレンジ、アニリンブラック、リゾールレッド、コバルトバイオレット、メチルバイオレットレーキ、ファーストスカイブルー、チオインジゴバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の有機顔料やピグメントレッド、クロムイエロー、ウルトラマリン、パリスブルー、酸化コバルト、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、スタロンチウムエロー、チタニウムエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブテン赤、モリブテンホワイト、リサージ、リトポン、エメラルドグリーン、ギネー緑、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青等の無機顔料が挙げられる。
【0012】
前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合割合は1:2〜1:200(体積比)で好適には1:4〜1:8である。脂肪酸エステル1に対して有機溶剤の割合が1:2に満たないと前記植物体組織への吸収に時間を要し、逆に有機溶剤の割合が1:200を越えると植物体への脂肪酸エステルの吸収が不足し植物体の柔軟性が保てない。また前記疎水性樹脂と低級アルコールの割合は1:2〜1:200(重量比)である。
前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液は前記植物体の水分の通路である導管や葉の機構より植物体に吸収されまた表面に吸着し、木の枝葉や花及び草花の茎や葉または花を柔軟に、かつ滑らかに保持せしめることが出来る。また染料や顔料を混合液中に含有させることにより植物体の色彩を変化させることが出来る。
【0013】
このような前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液に処理すべき植物体を浸漬する。この浸漬時間は植物体の種類により異なるが、0.1秒〜60日間着色液槽に浸すことが望ましく、好適には5〜10秒ある。0.1秒以下であれば完全に脂肪酸エステルが植物表面に吸着するのが難しく、60日以上であれば有機溶剤により植物体自身の保持形成能力が失われる恐れがある。保存液の温度は10〜40℃であることが望ましい。10℃より低い温度では前記植物体組織が不活性になり、40℃を越えると植物体組織が変質する恐れがあるからである。
【0014】
次に前記混合液より植物体を取り出し、香料を直接花部へ添加することにより、花に香りをつけることが出来る。また脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液中に香料を添加して脂肪酸エステルを植物体表面に吸着させる際に、同時に香料も植物体表面に吸着させることもできる。一般に香料は揮発性を有するため、これらを直接植物体に吸着させた場合、その芳香性は時間と共に徐々に低下するが、香料をマイクロカプセル化することにより、その持続性を向上させることが出来る。香料を内包したカプセルを分散させた疎水性樹脂溶液に浸漬し、疎水性樹脂の植物体への吸着と同時に香料内包カプセルが植物体の表面に吸着する。香料のカプセルへの内包は、カプセル作成時に香料を作成溶媒中に分散させる方法や後にカプセル内部に香料を浸漬させる方法等がある。またカプセル壁材としては前述したとおり、有機質壁材のタイプや多孔質無機質壁材のタイプが有るが、有機質壁材のカプセルを用いると、カプセル崩壊時に香料が拡散され、香料の芳香持続性を制御するのが難しいが、多孔性無機壁材のカプセルを用いると、その細孔径等を制御することにより香料の芳香持続性等を制御でき、長期間にわたる香料の芳香性を持続させることが出来る。
【0015】
香料内包カプセルは、疎水性樹脂溶液中に必ずしも分散させて用いる必要はない。例えば植物体を疎水性樹脂溶液中に浸漬後、香料内包カプセルそのままを植物体にふりかけたり、また香料内包カプセルを含んだ分散液を植物体にスプレーする事により、植物体にカプセルを付着させることもできる。この際、ポリアクリル酸等のバインダーを併用すれば、植物体と香料内包カプセルの密着性が強まり、カプセルの植物体への保持性が高まる。
【0016】
また前記脂肪酸エステルと疎水性樹脂を混ぜ合わせた混合溶液中に乾燥した植物体を浸漬してもかまわない。この場合、浸漬工程数を減らすことが出来、極めて生産性が高い。
【0017】
この後、前記植物体を乾燥する。自然乾燥の場合、2時間〜10日であることが望ましく、30〜45℃の場合は1〜10時間であるのがよい。これによって揮発性の溶媒を揮発させることが出来、脂肪酸エステルや疎水性樹脂は揮発されないため、植物体組織中に吸収保持された状態になる。また香料はカプセル内に内包されているため、この乾燥工程において著しく蒸発することなくカプセル内に留まり、乾燥終了後極めてゆっくりと徐々にカプセル外へ放出されてゆく。それゆえ長期間にわたって持続的に前記植物体より香りが発生することとなる。
【0018】
【実施例】
次に実施例により、具体的に本発明を説明するが、本発明の趣旨はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例1】
薔薇の花を摂取し、シリカ粒子(商品名ゴッドボールB−25C)中に約3日間埋め込み、乾燥処理を施し、ついで乾燥花を取り出す。その後5%のセバシン酸ジイソプロピルを溶解させたプロピルアルコール中に花を浸漬し、セバシン酸ジイソプロピルを表面より浸漬せしめ、5秒後引き上げる。その後染料マラカイトグリーンとアクリル樹脂を溶解したプロピルアルコール溶液に薔薇香料ゲラニオール内包シリカマイクロカプセルを分散させ、得られた混合液中に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を放ち、萎れることなく生花風を保った。一方、何も処理を施していない花は6時間後には完全に萎れた。
【0020】
【実施例2】
カーネーションの花を採取し、プロピルアルコール中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後7%のパラフィンワックスを溶解させたトルエン中に花を浸漬し、パラフィンワックスを表面より浸漬せしめ、10秒後引き上げる。その後、サファロースイエローとヒドロキシメチルセルロースを溶解したエタノール溶液にカーネーション香料リナロール内包ポリメチルメタクリレート内包カプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は半年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0021】
【実施例3】
椿の花を採取し、アセトン中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のカルナバワックスを溶解させた四塩化炭素中に花を浸漬し、カルナバワックスを表面より浸漬せしめ、7秒後引き上げる。その後、ブリリアントブルーとポリスチレンを溶解したメチレンクロライド溶液に椿香料リナロールオキサイド内包シリカマイクロカプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0022】
【実施例4】
胡蝶蘭の花を摂取し、アルミナゲル中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後、15%のソルビタンモノオレートを溶解させたクロロホルム中に花を浸漬し、ソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、2時間後引き上げる。その後クロムイエローを分散させ、ポリスチレン樹脂を溶解させたトルエン溶液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ30℃で1時間乾燥させた。その後、蘭香料オイゲノール内包シリカマイクロカプセル5%を分散し、バインダーとして2%のポリアクリル酸を溶解したエタノール分散液を花に直接スプレーし、自然乾燥することにより、本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0023】
【実施例5】
桜の花枝を採取し、エタノール中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のセレシンとソルビタンモノオレートを溶解させたシクロヘキサン中に花を浸漬し、セレシンを表面より浸漬せしめ、90分後引き上げる。その後、アゾイック染料とポリビニルエステル樹脂を溶解したトルエン溶液に癒し系香料アニス内包多孔質ガラスカプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は10ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0024】
【実施例6】
薔薇の花を採取し、メタノール中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のソルビタントリステアレートとソルビタンモノオレートを溶解させたシクロヘキサン中に花を浸漬し、ソルビタントリステアレートとソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、90分後引き上げる。その後、キノリン染料とポリビニルエステル樹脂を溶解したトルエン溶液に薔薇香料シトロネロールを分散させ、得られた混合液に上記花を2日間浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は2ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0025】
【実施例7】
椿の花を採取し、アセトン中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のカルナバワックスを溶解させた四塩化炭素中に花を浸漬し、カルナバワックスを表面より浸漬せしめ、7秒後引き上げる。その後、ポリスチレンを溶解したメチレンクロライド溶液に椿香料リナロールオキサイドを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は3ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0026】
【実施例8】
胡蝶蘭の花を摂取し、アルミナゲル中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後、15%のソルビタンモノオレートを溶解させたクロロホルム中に花を浸漬し、ソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、2時間後引き上げる。その後クロムイエローを分散させ、ポリスチレン樹脂を溶解させたトルエン溶液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ30℃で1時間乾燥させた。その後、自然乾燥することにより、本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は6ヶ月以上、萎れることなく生花風を保った。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、前記脂肪酸エステルや炭化水素が植物体組織に取り込まれて吸収され、さらに疎水性樹脂が表面にコートされるため、長期間にわたって柔軟性と滑らかさを保持し、更に表面に付着したマイクロカプセルより香りが長期的に放出される生花風花が作成できる。これは水、土壌、肥料及び太陽光を必要としないので、長期観賞用に適している。またドライフラワーのように折れることもない。水に濡れても色落ちしない特徴を有している。
【技術分野】
本発明は天然の植物体の形態、感触を変化せしめることなく長期間の保存性を有する天然の植物体を使用した観賞用、装飾用としての生花風植物及びその加工方法に関する。
【0002】
【従来技術および問題点】
自然の産物である木の枝葉や花及び草花である植物体をカットして水にさし観賞用に利用されている。これら植物体をカットして水にさされた観賞用植物は、そのきれいな外観から愛用されているだけではなく、その植物体より発生されるほのかな香りがアロマセラピー効果を生み、観る人たちをリラックスさせる効果も大きい。しかしカットした植物体は水にさしても寿命が短く、長い間その形状を保つことが出来なかった。また植物体の形状を保つ方法としてドライフラワーがあるが、ドライフラワーは植物体より水分を完全に除いたものであるため、柔軟性に欠け折れ易いという問題がある。さらにドライフラワーはその色彩に限りが有るという問題もある。そこで植物体の柔軟性をドライフラワーのように完全に損なうことなく、植物体に任意の色彩を付与し長期間その色彩と形状を保持することを目的とし、多価アルコールをカットした木の枝葉や花及び草花である植物体に吸収せしめる方法(特開平04−53418、特開2001−233702)や新鮮な花の組織水を植物主体の代謝に不適当な物質(ポリビニルアルコール等)で置換させた切り花(特開平04−505766)があるが、作成及び保存時に花の芳香性が失われるという問題があった。芳香保持生を有した長期保存可能型生花風植物として、多価アルコールを保存剤としかつ耐候性被膜形成剤を被覆させ、花部は芳香を保ち天然の風合いを保持する方法(特開平8−20502)があるが、生花としてラベンダーに限定され、他の植物には適用できないという問題点があった。また水溶性の多価アルコールや高分子類を花に浸漬したタイプでは、時間経過後に空気中の水分を吸収することにより花の含水分が過剰になり、花表面が過度に濡れてしまう欠点があった。そこで非水溶性物質であるパラフィン類(特開昭60−6322)や不飽和アルコール(特開平7−25200)を花に吸収させた例があり、これらは長時間しなやかさを保つが、機械的強度的に弱くもろいという欠点があった。機械的強度を上げるために花表面にメラミン樹脂等を浸漬・硬化させ、さらにニトリルゴム変性樹脂を塗布したタイプも考案されているが、しなやかさに欠けるという問題点があった。
【0003】
【解決しようとする課題】
本発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、植物体の柔軟性をドライフラワーのように完全に損なうことなく、植物体に任意の色彩・香りを付与し長期間その色彩・形状・香りを維持することを可能にした観賞用植物体を提供するものである。
【0004】
【課題の解決手段】
上記課題を解決するために本発明による観賞用植物体は、シリカゲルやアルミナ或いはアルコール類やケトン類、グリコール類等を用いてカットした木の枝葉や花及び草花である植物体組織を乾燥後、カルナバロウ等の脂肪酸エステル類やパラフィンワックス等の炭化水素、及びそれらの混合物を吸収せしめ、さらにポリスチレン樹脂等を表面コートすることにより、機械的に強くまたしなやかさをも有する。さらに各植物の天然および/または合成香料を内包した徐放性カプセルを植物体表面に付着させることにより作成されたことを特徴とする。
【0005】
また本発明は上述のような観賞用植物体の製造方法を提供するものであり、その製造方法はシリカゲルや多孔質アルミナ等の無機質脱水剤或いはイソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン等のケトン類、メチルセロソルブ等のグリコール類を用いて生花の脱水を行った後、エチルアルコール等の揮発性有機溶剤で一度軽く洗浄し、カルナバロウ等の脂肪酸エステルやパラフィンワックス等の炭化水素及びそれらの混合物と染料や顔料を分散させた前述揮発性有機溶剤とを混合し、植物体組織に浸し、さらに疎水性樹脂及び香料内包マイクロカプセルを表面コートする工程を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、疎水性の脂肪酸エステルや炭化水素が植物体組織に取り込まれて吸収され、前期植物体組織表面に均一に吸着するため、長期にわたって柔軟性と滑らかさを保持し、水、土壌、肥料及び太陽光を必要とせず観賞用としての生花風植物を作成できる。また表面に疎水性樹脂をコートしているため力学的強度が強くドライフラワーのように折れることもない。また長期にわたる香料の徐放が可能なカプセルを表面に付着させているため、他の生花風植物と違って、長期にわたって香りも保持する。
【0007】
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明による観賞用植物体は、その植物体組織中及び表面に脂肪酸エステルや炭化水素が吸収されている。この脂肪酸エステルや炭化水素は植物体の柔軟性、滑らかさを長期間にわたって保持せしめたるものである。このような脂肪酸エステルとしては、カルナバロウ、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソオクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、酢酸ラノリン、ラノリン、ラノリンアルコール、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、トリオレイルリン酸、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、バルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ポリオキシエチレンオレイルエステル、ポリオキシエチレンステアリルエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等の単体やその混合物が挙げられる。また炭化水素としては、αオレフィンオリゴマー、プリスタン、ワセリン、パラフィン、ワイクロクリスタルワックス、オゾケライト、セレシン、ワイクロクリスタルワックス、ペンタトリアコンタン、ドトリアコンタン、ヘキサコタン、ヘプタコタン、オクタコタン、ノナコサン、1−テトラコンテン等が挙げられる。また前述観賞用植物体は疎水性樹脂を表面にコートさせており、力学的強度を向上させている。このような疎水性樹脂としてはウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイン酸樹脂、セルロース誘導体、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また疎水性樹脂を表面コートする際、その分散液に香料内包マイクロカプセルを同時に分散させた液を用いることにより、疎水性樹脂をコーティングすると同時に香料内包マイクロカプセルも花表面にコートさせることが出来る。このような徐放性カプセルの壁材としては、セルロース、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート吸油性樹脂等の有機質壁材や、多孔性シリカ、多孔性炭化ケイ素、多孔性アルミナ、ゼオライト、多孔性ガラス等の多孔性無機質化合物壁材を挙げることが出来る。また薔薇香料としてはゲラニオールやシトロネロール、1,3−ジメトキシ−5−メチルベンゼン等を挙げることが出来る。また椿香料としてはリナロールやリナロールオキサイド等が挙げられる。カーネーション香料としては、2−エチルヘキサナールやリナロール、α−テルピネオール、ジェスモン、シス−3−ヘキセノール、メチルジャスモネート等が挙げられる。また蘭香料としてはオイゲノール、バニリン、メチルエピジャスモネート、メチルジャスモネート、トランス−ファルネソール、β−ファルネッセン、ネロリドール等が挙げられ、更にその他多数の花香料が考えられる。また花香料以外にも癒し系香料としてアニス、イランイラン、エストラゴン、オニオン、オリバナム、カミツレ、カヤプテ、キャラアウエー、クローブ、コリアンダー、ローズマリー等を挙げることが出来るが、香料の種類は、特に限定されるものではない。
【0008】
植物体としては、本発明において基本的に限定されるものではなく、薔薇、椿、すみれ、カーネーション、蘭等の草花、木の枝、カットした木などの植物体であることが出来る。
【0009】
このような観賞用植物体を作成するには、まずシリカゲルやアルミナ等の吸湿性多孔質粉体中に植物を陥没させたり、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコールやアセトン等のケトン類、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のグリコール類に浸漬することにより、植物を完全脱水する。
【0010】
脂肪酸エステルや炭化水素は、前述のように植物体組織を長期間にわたって柔軟にかつ滑らかに保持するためのものであるが、このままでは植物体組織に吸収されにくいため、植物体組織に吸収されやすい有機溶剤に溶解し、その有機溶剤とともに植物体組織に吸収せしめる。このような有機溶剤としては、メタノールやエタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、または四塩化炭素、メチレンクロライド、クロロホルム、1、1−ジクロロエタン、1、2−ジクロロエタン、1、1,1−トリクロロエタン等の塩素系溶剤、またヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油ベンジン、石油エーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類やそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0011】
この有機溶剤には、染料や顔料を添加することが出来る。染料や顔料を添加する場合、前記植物体を容易に着色できる。前記染料としては、用いる有機溶剤に可溶な染料で有れば基本的にいかなるものでも良い。ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料,アゾイック染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン・ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン・インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン・オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料等が挙げられる。また前記顔料としては、ハンサイエロー、ペンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、エオシントーナー、トルイジントーナー、ローダミントーナー、マダーレーキ、レッドレーキ、リソールレッド、ピーコックブルー、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、ジスアゾエロー、ジスアゾオレンジ、ブリリアントカーミン、ウオッチングレッド、ナフトールレッド、ファーストスカイブルー、キナクリドンレッド、ファーストエロー、ジスアゾエロー、ジスアゾオレンジ、ブリリアントカーミン、ナフトールレッド、ボンマルーン、トルイジンレッド、バルカンオレンジ、アニリンブラック、リゾールレッド、コバルトバイオレット、メチルバイオレットレーキ、ファーストスカイブルー、チオインジゴバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の有機顔料やピグメントレッド、クロムイエロー、ウルトラマリン、パリスブルー、酸化コバルト、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、スタロンチウムエロー、チタニウムエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブテン赤、モリブテンホワイト、リサージ、リトポン、エメラルドグリーン、ギネー緑、カドミウム黄、カドミウム赤、コバルト青等の無機顔料が挙げられる。
【0012】
前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合割合は1:2〜1:200(体積比)で好適には1:4〜1:8である。脂肪酸エステル1に対して有機溶剤の割合が1:2に満たないと前記植物体組織への吸収に時間を要し、逆に有機溶剤の割合が1:200を越えると植物体への脂肪酸エステルの吸収が不足し植物体の柔軟性が保てない。また前記疎水性樹脂と低級アルコールの割合は1:2〜1:200(重量比)である。
前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液は前記植物体の水分の通路である導管や葉の機構より植物体に吸収されまた表面に吸着し、木の枝葉や花及び草花の茎や葉または花を柔軟に、かつ滑らかに保持せしめることが出来る。また染料や顔料を混合液中に含有させることにより植物体の色彩を変化させることが出来る。
【0013】
このような前記脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液に処理すべき植物体を浸漬する。この浸漬時間は植物体の種類により異なるが、0.1秒〜60日間着色液槽に浸すことが望ましく、好適には5〜10秒ある。0.1秒以下であれば完全に脂肪酸エステルが植物表面に吸着するのが難しく、60日以上であれば有機溶剤により植物体自身の保持形成能力が失われる恐れがある。保存液の温度は10〜40℃であることが望ましい。10℃より低い温度では前記植物体組織が不活性になり、40℃を越えると植物体組織が変質する恐れがあるからである。
【0014】
次に前記混合液より植物体を取り出し、香料を直接花部へ添加することにより、花に香りをつけることが出来る。また脂肪酸エステルと有機溶剤の混合液中に香料を添加して脂肪酸エステルを植物体表面に吸着させる際に、同時に香料も植物体表面に吸着させることもできる。一般に香料は揮発性を有するため、これらを直接植物体に吸着させた場合、その芳香性は時間と共に徐々に低下するが、香料をマイクロカプセル化することにより、その持続性を向上させることが出来る。香料を内包したカプセルを分散させた疎水性樹脂溶液に浸漬し、疎水性樹脂の植物体への吸着と同時に香料内包カプセルが植物体の表面に吸着する。香料のカプセルへの内包は、カプセル作成時に香料を作成溶媒中に分散させる方法や後にカプセル内部に香料を浸漬させる方法等がある。またカプセル壁材としては前述したとおり、有機質壁材のタイプや多孔質無機質壁材のタイプが有るが、有機質壁材のカプセルを用いると、カプセル崩壊時に香料が拡散され、香料の芳香持続性を制御するのが難しいが、多孔性無機壁材のカプセルを用いると、その細孔径等を制御することにより香料の芳香持続性等を制御でき、長期間にわたる香料の芳香性を持続させることが出来る。
【0015】
香料内包カプセルは、疎水性樹脂溶液中に必ずしも分散させて用いる必要はない。例えば植物体を疎水性樹脂溶液中に浸漬後、香料内包カプセルそのままを植物体にふりかけたり、また香料内包カプセルを含んだ分散液を植物体にスプレーする事により、植物体にカプセルを付着させることもできる。この際、ポリアクリル酸等のバインダーを併用すれば、植物体と香料内包カプセルの密着性が強まり、カプセルの植物体への保持性が高まる。
【0016】
また前記脂肪酸エステルと疎水性樹脂を混ぜ合わせた混合溶液中に乾燥した植物体を浸漬してもかまわない。この場合、浸漬工程数を減らすことが出来、極めて生産性が高い。
【0017】
この後、前記植物体を乾燥する。自然乾燥の場合、2時間〜10日であることが望ましく、30〜45℃の場合は1〜10時間であるのがよい。これによって揮発性の溶媒を揮発させることが出来、脂肪酸エステルや疎水性樹脂は揮発されないため、植物体組織中に吸収保持された状態になる。また香料はカプセル内に内包されているため、この乾燥工程において著しく蒸発することなくカプセル内に留まり、乾燥終了後極めてゆっくりと徐々にカプセル外へ放出されてゆく。それゆえ長期間にわたって持続的に前記植物体より香りが発生することとなる。
【0018】
【実施例】
次に実施例により、具体的に本発明を説明するが、本発明の趣旨はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
【実施例1】
薔薇の花を摂取し、シリカ粒子(商品名ゴッドボールB−25C)中に約3日間埋め込み、乾燥処理を施し、ついで乾燥花を取り出す。その後5%のセバシン酸ジイソプロピルを溶解させたプロピルアルコール中に花を浸漬し、セバシン酸ジイソプロピルを表面より浸漬せしめ、5秒後引き上げる。その後染料マラカイトグリーンとアクリル樹脂を溶解したプロピルアルコール溶液に薔薇香料ゲラニオール内包シリカマイクロカプセルを分散させ、得られた混合液中に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を放ち、萎れることなく生花風を保った。一方、何も処理を施していない花は6時間後には完全に萎れた。
【0020】
【実施例2】
カーネーションの花を採取し、プロピルアルコール中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後7%のパラフィンワックスを溶解させたトルエン中に花を浸漬し、パラフィンワックスを表面より浸漬せしめ、10秒後引き上げる。その後、サファロースイエローとヒドロキシメチルセルロースを溶解したエタノール溶液にカーネーション香料リナロール内包ポリメチルメタクリレート内包カプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は半年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0021】
【実施例3】
椿の花を採取し、アセトン中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のカルナバワックスを溶解させた四塩化炭素中に花を浸漬し、カルナバワックスを表面より浸漬せしめ、7秒後引き上げる。その後、ブリリアントブルーとポリスチレンを溶解したメチレンクロライド溶液に椿香料リナロールオキサイド内包シリカマイクロカプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0022】
【実施例4】
胡蝶蘭の花を摂取し、アルミナゲル中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後、15%のソルビタンモノオレートを溶解させたクロロホルム中に花を浸漬し、ソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、2時間後引き上げる。その後クロムイエローを分散させ、ポリスチレン樹脂を溶解させたトルエン溶液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ30℃で1時間乾燥させた。その後、蘭香料オイゲノール内包シリカマイクロカプセル5%を分散し、バインダーとして2%のポリアクリル酸を溶解したエタノール分散液を花に直接スプレーし、自然乾燥することにより、本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は1年以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0023】
【実施例5】
桜の花枝を採取し、エタノール中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のセレシンとソルビタンモノオレートを溶解させたシクロヘキサン中に花を浸漬し、セレシンを表面より浸漬せしめ、90分後引き上げる。その後、アゾイック染料とポリビニルエステル樹脂を溶解したトルエン溶液に癒し系香料アニス内包多孔質ガラスカプセルを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は10ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0024】
【実施例6】
薔薇の花を採取し、メタノール中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のソルビタントリステアレートとソルビタンモノオレートを溶解させたシクロヘキサン中に花を浸漬し、ソルビタントリステアレートとソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、90分後引き上げる。その後、キノリン染料とポリビニルエステル樹脂を溶解したトルエン溶液に薔薇香料シトロネロールを分散させ、得られた混合液に上記花を2日間浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は2ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0025】
【実施例7】
椿の花を採取し、アセトン中に2日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後6%のカルナバワックスを溶解させた四塩化炭素中に花を浸漬し、カルナバワックスを表面より浸漬せしめ、7秒後引き上げる。その後、ポリスチレンを溶解したメチレンクロライド溶液に椿香料リナロールオキサイドを分散させ、得られた混合液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ、自然乾燥することにより本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は3ヶ月以上芳香を保ち、萎れることなく生花風を保った。
【0026】
【実施例8】
胡蝶蘭の花を摂取し、アルミナゲル中に3日間浸漬し、乾燥処理を施す。その後、15%のソルビタンモノオレートを溶解させたクロロホルム中に花を浸漬し、ソルビタンモノオレートを表面より浸漬せしめ、2時間後引き上げる。その後クロムイエローを分散させ、ポリスチレン樹脂を溶解させたトルエン溶液に上記花を浸漬する。その後花を引き上げ30℃で1時間乾燥させた。その後、自然乾燥することにより、本発明の生花風植物を完成させた。得られた花は6ヶ月以上、萎れることなく生花風を保った。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、前記脂肪酸エステルや炭化水素が植物体組織に取り込まれて吸収され、さらに疎水性樹脂が表面にコートされるため、長期間にわたって柔軟性と滑らかさを保持し、更に表面に付着したマイクロカプセルより香りが長期的に放出される生花風花が作成できる。これは水、土壌、肥料及び太陽光を必要としないので、長期観賞用に適している。またドライフラワーのように折れることもない。水に濡れても色落ちしない特徴を有している。
Claims (8)
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂を植物体表面に吸着させた生花風植物。
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂を植物体表面に吸着させた生花風植物の製造方法。
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂と香料および/または染料および/または顔料を植物体表面に吸着させた生花風植物。
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂と香料および/または染料および/または顔料を植物体表面に吸着させた生花風植物の製造方法。
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂と染料および/または顔料および/または香料を内包した徐放性カプセルを植物体表面に吸着させた生花風植物。
- 脂肪酸エステルおよび/または炭化水素および/またはそれらの混合物と疎水性樹脂と染料および/または顔料および/または香料を内包した徐放性カプセルを植物体表面に吸着させた生花風植物の製造方法。
- 【請求項5】及び【請求項6】の徐放性カプセルが多孔性無機質化合物であることを特徴とした生花風植物。
- 【請求項5】及び【請求項6】の徐放性カプセルが多孔性無機質化合物であることを特徴とした生花風植物の製造方法。
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