JP2004225808A - ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔間のずれを無くしてボールの循環を円滑にでき、かつガイドプレートを容易に加工できるガイドプレート式のボールねじを提供する。
【解決手段】ガイドプレート式のボールねじ1において、ガイドプレート5とナットとに、互いに嵌合する凸部18および凹部をそれぞれ設ける。ガイドプレート5とナットとを、上記凸部18および凹部の嵌合と止めねじとで固定する。上記凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16を設ける。ガイドプレート5は、プレート本体5Aと、上記ガイド面16の設けられた凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分ける。プレート本体5Aには、凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合する。
【選択図】 図9
【解決手段】ガイドプレート式のボールねじ1において、ガイドプレート5とナットとに、互いに嵌合する凸部18および凹部をそれぞれ設ける。ガイドプレート5とナットとを、上記凸部18および凹部の嵌合と止めねじとで固定する。上記凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16を設ける。ガイドプレート5は、プレート本体5Aと、上記ガイド面16の設けられた凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分ける。プレート本体5Aには、凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合する。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高速運転の用途や、各種の機器、例えば射出成形機やプレス機、工作機械等に用いられるガイドプレート式のボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじにおいて、ねじ軸とナットのねじ溝間で形成される転走路のボールは、ナットに設けられた循環路を通って転走路に戻される。この循環路の形式によって、ボールねじは、ガイドプレート式や、その他種々の形式に分類されている。いずれの形式においても、ボールが循環路と転走路の間を行き来する際に、ボールが不安定な挙動を起こし、ボールの流れに速度変動が生じてボールが詰まり易くなる現象がある。ボール詰まりが生じると、トルクむらを招き、また位置決め精度が低下する。
ガイドプレート式のボールねじにおいて、このボールの詰まりを解消するものとして、循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向でかつリード角方向に設定したものがある(例えば、特許文献1)。このようにリード角方向に設定した場合、循環路の両端の方向が180°逆になることに対応して、ガイドプレートに設けられる循環路は略S字状に形成される。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−276764号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガイドプレートは、止めねじのみでナットに固定されているため、ガイドプレートに形成されている止めねじの挿通孔の遊び分だけ、組立時にガイドプレートが動くことができる。このため、組立時にガイドプレートの循環路とナットのボール通過孔の間にずれが生じ、ボールの円滑な循環を妨げる恐れがある。
また、上記のように循環路を略S字状に形成した場合、循環路に変曲点が存在するため、高速運転時はこの変曲点の部分が早期に摩耗するという問題があることが分かった。
【0005】
このような問題を解消するひとつの対策として、ガイドプレートのボール循環路を略直線形状とし、さらにガイドプレートに一体形成した凸部と、ナットに一体形成した凹部を嵌合させて、組立時にガイドプレートのボール循環路とナットのボール通過孔との間でずれが生じることを妨げる構造のものを先に提案した(特願2002−282070号)。
【0006】
しかし、このようにガイドプレートに凸部を一体形成した場合、凸部の高さが高くなると、ガイドプレートを加工する際に削り出す部分が多くなってしまうため、加工に手間がかかるという新たな問題が生じる。また、ガイドプレートのボール循環路が2列、3列…と多くなった場合、ガイドプレートの凸部の加工が多くなり、やはり加工に手間がかかる。
【0007】
この発明の目的は、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔間のずれを無くしてボールの循環を円滑にでき、かつガイドプレートを容易に加工できるガイドプレート式のボールねじを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面と、このねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面とに、互いに対向するねじ溝が形成され、上記ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝間で形成される転走路内に複数のボールが介在し、上記ナットに取付けられたガイドプレートのボール循環溝とナットとの間に上記ボールが通過する循環路が形成され、この循環路の両端が上記ナットに設けられたボール通過孔により上記転走路に接続され、その接続部に上記転走路のボールを上記循環路に掬い上げる手段を有するものとする。
この構成のボールねじにおいて、上記ナットに、上記ボール通過孔が底面に開口した嵌合用の凹部を設ける。この凹部に嵌合する凸部をガイドプレートに設け、この凸部に、上記循環路の内面の一部を形成するガイド面を設ける。上記ガイドプレートとナットとを、上記凸部および凹部の嵌合と止めねじとで固定する。上記ガイドプレートは、上記ボール循環溝のあるプレート本体と、上記ガイド面の設けられた上記凸部を形成する凸部形成部材とに分け、上記プレート本体に、上記凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に上記凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合する。
この構成によると、ガイドプレートをナットに対して、凹部と凸部とで嵌合させた状態で止めねじにより固定するようにしたため、止めねじとその挿通用の取付孔間の遊びの問題なく、凹部と凸部との嵌合による位置決め状態で止めねじによる固定が行われる。そのため、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔との間でずれが生じることが防げ、ずれによる段差等でボールの循環が妨げられることがなく、ボールの循環が円滑に行える。
また、ガイドプレートに設けた凸部に、循環路の内面の一部を形成するガイド面を設けたため、湾曲したガイド面を形成する箇所が厚くできて、ガイド面の全体を継ぎ目のない面とできる。そのため、循環路におけるボールの流れがより一層円滑に得られる。
特に、ガイドプレートは、ボール循環溝のあるプレート本体と、ガイド面の設けられた凸部を形成する凸部形成部材とに分けており、プレート本体に、凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合して構成されるので、一つの部材にボール循環部と凸部とを形成してガイドプレートとする場合に比べて、ガイドプレートの加工が容易になる。
【0009】
この発明において、上記循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向で、かつリード角方向としても良い。また、上記ボール循環溝を略直線形状としても良い。
このように循環路のねじ溝とを接続部が、ねじ溝の接線方向でかつリード角方向に合致している場合、接続部において、ボールはねじ軸の径方向についても、またリード角方向についても挙動が安定する。そのため、ボールの流れの速度変動によるボール詰まりが抑制される。また、ガイドプレートのボール循環路を構成するボール循環溝を略直線形状とした場合、ボール循環路に変曲点が無くなるため、高速運転時でも循環路の早期摩耗を防ぐことができる。循環路の接続部がリード角方向であるため、循環路の略直線状の部分と接続部との間で急な曲がり部分が生じるが、この曲がり部分は曲がり方向が一定であり、曲がり方向の逆転部分である変曲点は生じないため、早期摩耗の問題は生じない。
【0010】
この発明において、上記プレート本体を樹脂製、または焼結合金製、またはプレス加工品製とし、かつ上記凸部形成部材を樹脂製、または焼結合金製としても良い。プレート本体および凸部形成部材のいずれにおいても、焼結合金製とする場合は、金属粉体を可塑状として射出成形された成形体を焼結してなる焼結合金製とすることが好ましい。
このようにプレート本体および凸部形成部材を成形品製とした場合、ボール循環溝のあるプレート本体およびガイド面を有する凸部形成部材が、そのボール循環溝やガイド面にかかわらず、旋削や研削等の機械加工が不要で、共に量産が行い易く、コストを下げることができる。
【0011】
この発明において、上記循環路が複数有る場合に、上記ガイドプレートを軸方向に並べて複数設け、各ガイドプレートが上記循環路のボール循環溝をそれぞれ1本有するものとしても良い。
このようにガイドプレートを循環路毎に分割した場合、ボール循環列が複数列である場合でも、1列用のガイドプレートを数列分用いれば良くなり、部品種類数が少なくなり、また各ガイドプレートが簡素な形状となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図9と共に説明する。図1に示すように、このボールねじ1は、ねじ軸2と、このねじ軸2の外周に遊嵌するナット3と、複数のボール4とを備え、ナット3にはガイドプレート5が取付けられる。ナット3は、円筒状に形成されたナット本体3aと、その一端に設けられたフランジ3bを有する。ねじ軸2は、その外径面に螺旋状のねじ溝6が形成されている。ボール4は、ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7との間に形成された螺旋状の転走路8内に、連なり状態で転動自在に収容される。
【0013】
ガイドプレート5は、ナット3の外周の一部に形成した平坦面部3aaに固定されて、ナット3と共に円筒状の組立部品を構成する。ガイドプレート5の裏面には、ボール4が通過するボール循環溝9が図8のように形成されている。ボール循環溝9は、略直線状とされている。このボール循環溝9は、ナット3で溝開口部が蓋されることにより、孔状の循環路12(図3)を形成する。この実施形態ではナット3にもボール循環溝9と対向して溝19が形成され(図7)、両溝9,19が合わさってボール4の通過する循環路12を形成する。なお、ナット3の溝19は必ずしも設けなくても良く、その場合、ガイドプレート5のボール循環溝9を、ボールの通過が可能な深さに形成する。
ガイドプレート5のボール循環溝9は、図8のように2本が軸方向に並んで設けられ、それぞれが別の循環路12を構成する。各循環路12と上記転走路8とで、一連のボール周回経路14が構成される。したがって、この実施形態では2つのボール周回経路14(図1)が形成されている。なお、このボール周回経路14は一つとしても、3つ以上としても良い。
【0014】
循環路12の両端は、ねじ軸2とナット3間の転走路8に接続される接続部10となっている。接続部10は、ナット3に形成されたボール通過孔10aにより主に形成される。
図3,図4に示すように、ナット3のねじ溝7内には、転走路8のボール4を循環路12に掬い上げるボール拾い上げ手段11が配置されている。ボール拾い上げ手段11は、デフレクタ部材からなり、一部がナット3のねじ溝7内に嵌合してナット3に固定され、残り部分がねじ軸2のねじ溝6に嵌まり込む。このデフレクタ部材からなるボール拾い上げ手段11は、図6(A),(B)に示すように螺旋の一部を成す部材であり、その固定は、例えば取付孔11bの部分で固定ねじ(図示せず)等により行われる。ボール拾い上げ手段11の端面11aはナット3のボール通過孔10aの内面に滑らかに続く傾斜面とされ、ボール通過孔10aと同じ傾斜角度を持つ。ボール拾い上げ手段11の端面11aは、ボール4の半径よりも若干大きな半径の円弧状の断面形状とされている。上記ボール拾い上げ手段11は、循環路12の両側の接続部10に対してそれぞれ別のものが設けられる。
【0015】
循環路12の各接続部10の延びる方向、つまりボール通過孔10aの延びる方向は、ねじ溝6,7の接線方向T(図4)で、かつねじ溝6,7のリード角β(図1)の方向に設定されている。ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ溝6,7間に形成された転走路8におけるボール軌道中心径となる円の接線方向のことであり、上記の円は、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面における転走路8のボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0016】
ナット3には、ボール通過孔10aに続く嵌合用の凹部17が設けられ、この凹部17に嵌合する凸部18(図5)がガイドプレート5に設けられている。この凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16が設けられる。ガイド面16は、上記のように方向の定められたボール通過孔10aから、直線状のボール循環溝9に滑らかに続く曲面とされており、図5(A)に示すように横断面において円弧状に湾曲し、かつ同図(B)のように縦断面においても円弧状に湾曲した面とされている。循環路12における凸部18のガイド面16と対向する内面部分は、ナット3のボール通過孔10aに続く循環路形成面10bからなる。
【0017】
図8に示すように、ガイドプレート5の上記各凸部18は、外周の一部が上記ガイド面16となる異形断面の柱状に形成されている。ナット3の上記凹部17(図7)は、ガイドプレート5の凸部18が、ナット軸方向に対しては略隙間なく嵌合する形状,大きさとされ、またナット幅方向の中間側に対しても略隙間なく嵌合する形状,大きさとされ、ナット幅方向の外側に対しては開放された形状となっている。ガイドプレート5は、軸方向に対しては、各凸部18がナット3の凹部17に嵌まることで位置決めされ、ナット幅方向に対しては、両側の凸部18がナット3の凹部17に嵌まって中央側への移動が阻止されることで、幅方向両側へ移動が生じないように位置決めされる。ガイドプレート5のナット3への固定は、この凸部18と凹部17との嵌合による位置決め状態で、ガイドプレート5に設けられた取付孔21(図8)に挿通された止めねじ(図示せず)をナット3のねじ孔22(図7)にねじ込むことで行われる。
【0018】
上記ガイドプレート5は、図9(A)に分解図で示すように、上記ボール循環溝9のあるプレート本体5Aと、上記ガイド面16の設けられた上記凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分けられている。上記プレート本体5Aに、上記凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に上記凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合する。プレート本体5Aに対する凸部形成部材5Bの固定は、上記基端の嵌合を圧入状態とすることで行っても良く、また止めねじ、接着剤等を用いて固定しても良い。
プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bは、例えば鋼材の削り出し品とされる。
【0019】
この構成のボールねじ1によると、ガイドプレート5をナット3に対して、凹部17と凸部18とで嵌合させた状態で止めねじにより固定するようにしたため、止めねじとその挿通用の取付孔21間の遊びの問題なく、凹部17と凸部18との嵌合による位置決め状態で止めねじによる固定が行われる。そのため、ガイドプレート5のボール循環溝9とナット3のボール通過孔10aとの間でずれが生じることが防げ、ずれによる段差等でボール4の循環が妨げられることがなく、ボール4の循環が円滑に行える。
また、このガイドプレート5に設けた凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16を設けたため、単なる平板状のガイドプレートに形成する場合と異なり、湾曲したガイド面16を形成する箇所が厚くできて、ガイド面16の全体を継ぎ目のない面とできる。すなわち、循環路12の内面における接続部10と略直線状のボール循環溝9の間で生じる急な曲がり部分の全体を、ガイドプレート5に設けることができる。そのため、この曲がり部分の途中にガイドプレート5とナット3との分割部分が生じることがなく、分割部分の段差の問題がなくて、循環路12におけるボール4の流れがより一層円滑に得られる。
【0020】
特に、ガイドプレート5は、ボール循環溝9のあるプレート本体5Aと、ガイド面16の設けられた凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分け、プレート本体5Aに、凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合して構成されるので、一つの部材にボール循環部9と凸部18とを形成してガイドプレートとする場合に比べて、ガイドプレート5の加工が容易になる。凸部形成部材5Bは、プレート本体5Aに設けられた嵌合用凹み部23に基端を嵌合させるようにしているので、単にプレート本体5Aの表面に固着する場合に比べて、堅固に固定ができるだけでなく、その嵌合深さ分だけ、凸部形成部材5Bに設けるガイド面16の範囲を広げることができて、動作の円滑性にも優れたものとなる。
また、凸部形成部材5Bは、ボール径が同一でリード角βが略同じであれば、様々な軸径,リードのボールねじに兼用でき、したがって複数種類のボールねじの製造において、部品の共通化による生産性の向上が図れる。
【0021】
また、この実施形態では、循環路12の転走路8との接続部10が、ねじ溝6,7の接線方向Tでかつリード角βの方向に合致して設定されているため、接続部10において、ボール4はねじ軸2の径方向についても、またリード角βの方向についても挙動が安定する。そのため、ボール4の流れの速度変動によるボール詰まりが抑制される。これにより、トルクむらがなく、高位置決め精度のボールねじ1とすることができる。
さらに、ガイドプレート5の循環路12を構成するボール循環溝9が略直線形状であるため、ボール循環路12に変曲点が無くなり、高速運転時でも循環路12の早期摩耗を防ぐことができる。循環路12の接続部がリード角βの方向であるため、循環路12の略直線状の部分と接続部10との間で急な曲がり部分が生じるが、この曲がり部分は曲がり方向が一定であり、曲がり方向の逆転部分である変曲点は生じないため、早期摩耗の問題は生じない。
なお、上記ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ軸2とナット3のねじ溝6,7間に形成された転走路におけるボール軌道中心径となる円の接線方向のことであり、上記の円は、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面におけるボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0022】
なお、第1の実施形態において、プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bは鋼材の削り出し品としたが、プレート本体5Aを樹脂成形品製、または焼結合金製、またはプレス加工品製等の成形品製とし、かつ上記凸部形成部材5Bを樹脂成形品製または焼結合金製等の成形品製としても良い。プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bのいずれにおいても、焼結合金製とする場合は、金属粉体を可塑状として射出成形した成形体を焼結してなる焼結合金製、いわゆるMIM(Metal Injection Molding) 製としても良い。
【0023】
この射出成形による焼結合金製品の製造方法の一例を説明する。まず、金属粉と、プラスチックおよびワックスからなるバインダとを混練機で混練し、その混練物をペレット状造粒する。上記金属粉としては、後に浸炭焼入れが可能な材質が好ましく、例えば、炭素(C)が0,3%、ニッケル(Ni)が1〜2%、残りが鉄(Fe)からなるものとする。
【0024】
前記のように造粒したペレットは、図10のように、射出成形機29のホッパ30に供給し、金型31内に加熱溶融状態で押し込むことにより成形する。射出成形機29は、プラスチック用のものと同様であり、ノズル32aを先端に有するシリンダ32内に、油圧シリンダ33および油圧モータ34で駆動されるスクリュウ35を設け、外部に加熱溶融用のヒータ36を設けたものである。
このように金型31で射出成形した成形体は、脱脂した後に焼結する。焼結の後、必要に応じて浸炭焼入を行い、プレート本体5A,凸部形成部材5Bが完成する。
【0025】
このように、プレート本体5Aや凸部形成部材5Bを焼結合金製とすることにより、射出成形および焼結によって製造できて、旋削や研削等の機械加工が不要になり、優れた量産性が得られる。そのため、金型31に必要なコストにかかわらず、多量ロット品の場合に十分な製造コストの低下が図れる。また、このような射出成形と粉末冶金の焼結技術との組合せ技術は、寸法精度の良いものが開発されており、ガイドプレート5を精度良く製作することができる。
【0026】
図11は、第1の実施形態において、鋼材削り出し品の代わりに成形品製とする場合のうち、プレート本体5Aを板金のプレス加工製品した実施形態を示す。プレート本体5Aの裏面形状は、ボール循環溝9の形成部分および嵌合用凹み部23の形成部分が突出した凹凸面形状となっている。凸部形成部材5Bは、樹脂製またはMIM製等の焼結合金製のいずれかとされる。
【0027】
図12は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、第1の実施形態において、ナット3の全体として循環路12を複数(例えば3本)有していて、それぞれ1本のボール循環溝9を有するガイドプレート5を軸方向に並べて複数(例えば3つ)設けたものである。各ガイドプレート5の互いの隣接側の側辺は、直線状に設けられるボール循環溝9の方向に沿っており、ナット中心軸に対して傾斜している。
このようにガイドプレート5を循環路12毎に分割した場合、図13のように複数本(ここでは3本)の循環路13を1つのガイドプレート5’に形成する場合に比べて汎用性が高くなる。すなわち、図13のガイドプレート5’では3本の循環路12を設けるボールねじにしか使用できないが、図11のガイドプレート5では、ボールねじに設けられる循環路12の本数だけ、一種類のガイドプレート5を並べて設けることにより対応できる。そのため、複数種のボールねじの製造において、ガイドプレート5の種類数が少なくできて、生産性が向上し、部品管理も容易になる。
【0028】
【発明の効果】
この発明のボールねじは、ナットにボール通過孔が底面に開口した嵌合用の凹部を設け、この凹部に嵌合する凸部をガイドプレートに設け、この凸部に循環路の内面の一部を形成するガイド面を設け、上記ガイドプレートとナットとを、上記凸部および凹部の嵌合と止めねじとで固定し、上記ガイドプレートは、上記ボール循環溝のあるプレート本体と、上記ガイド面の設けられた上記凸部を形成する凸部形成部材とに分け、上記プレート本体に、上記凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に上記凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合したため、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔間のずれを無くしてボールの循環を円滑にでき、かつガイドプレートを容易に加工することができる。
循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向で、かつリード角方向とし、さらに上記ボール循環溝を略直線形状とした場合は、ボール詰まりが抑制され、また変曲点が生じないために早期摩耗が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態におけるボールねじの正面図である。
【図2】同ボールねじの平面図である。
【図3】同ボールねじにおける部分横断面図である。
【図4】図3の一部の拡大図である。
【図5】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおける循環路の接続部を示す横断面図および縦断面図である。
【図6】その掬い上げ手段の側面図および平面図である。
【図7】(A),(B)は同ボールねじにおけるナットの平面図、(B)は同ナットの部分横断面図である。
【図8】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおけるガイドプレートの裏面図および倒立状態で示す断面図である。
【図9】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおけるガイドプレートの分解断面図および組立断面図である。
【図10】同ガイドプレートのプレート本体や凸部形成部材の射出成形機の概略側面図である。
【図11】(A)はプレート本体をプレス加工品製としたガイドプレートの裏面図、(B),(C)は同ガイドプレートの分解断面図および組立断面図である。
【図12】ガイドプレートの他の例を示す裏面図である。
【図13】3本の循環路が形成されたガイドプレートの例を示す裏面図である。
【符号の説明】
1…ボールねじ
2…ねじ軸
3…ナット
4…ボール
5…ガイドプレート
5A…プレート本体
5B…凸部形成部材
6,7…ねじ溝
8…転走路
9…ボール循環溝
10…接続部
10a…ボール通過孔
11…ボール拾い上げ手段
12…循環路
16…ガイド面
17…凹部
18…凸部
23…嵌合用の凹み部
【発明の属する技術分野】
この発明は、高速運転の用途や、各種の機器、例えば射出成形機やプレス機、工作機械等に用いられるガイドプレート式のボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじにおいて、ねじ軸とナットのねじ溝間で形成される転走路のボールは、ナットに設けられた循環路を通って転走路に戻される。この循環路の形式によって、ボールねじは、ガイドプレート式や、その他種々の形式に分類されている。いずれの形式においても、ボールが循環路と転走路の間を行き来する際に、ボールが不安定な挙動を起こし、ボールの流れに速度変動が生じてボールが詰まり易くなる現象がある。ボール詰まりが生じると、トルクむらを招き、また位置決め精度が低下する。
ガイドプレート式のボールねじにおいて、このボールの詰まりを解消するものとして、循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向でかつリード角方向に設定したものがある(例えば、特許文献1)。このようにリード角方向に設定した場合、循環路の両端の方向が180°逆になることに対応して、ガイドプレートに設けられる循環路は略S字状に形成される。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−276764号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ガイドプレートは、止めねじのみでナットに固定されているため、ガイドプレートに形成されている止めねじの挿通孔の遊び分だけ、組立時にガイドプレートが動くことができる。このため、組立時にガイドプレートの循環路とナットのボール通過孔の間にずれが生じ、ボールの円滑な循環を妨げる恐れがある。
また、上記のように循環路を略S字状に形成した場合、循環路に変曲点が存在するため、高速運転時はこの変曲点の部分が早期に摩耗するという問題があることが分かった。
【0005】
このような問題を解消するひとつの対策として、ガイドプレートのボール循環路を略直線形状とし、さらにガイドプレートに一体形成した凸部と、ナットに一体形成した凹部を嵌合させて、組立時にガイドプレートのボール循環路とナットのボール通過孔との間でずれが生じることを妨げる構造のものを先に提案した(特願2002−282070号)。
【0006】
しかし、このようにガイドプレートに凸部を一体形成した場合、凸部の高さが高くなると、ガイドプレートを加工する際に削り出す部分が多くなってしまうため、加工に手間がかかるという新たな問題が生じる。また、ガイドプレートのボール循環路が2列、3列…と多くなった場合、ガイドプレートの凸部の加工が多くなり、やはり加工に手間がかかる。
【0007】
この発明の目的は、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔間のずれを無くしてボールの循環を円滑にでき、かつガイドプレートを容易に加工できるガイドプレート式のボールねじを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、ねじ軸の外径面と、このねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面とに、互いに対向するねじ溝が形成され、上記ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝間で形成される転走路内に複数のボールが介在し、上記ナットに取付けられたガイドプレートのボール循環溝とナットとの間に上記ボールが通過する循環路が形成され、この循環路の両端が上記ナットに設けられたボール通過孔により上記転走路に接続され、その接続部に上記転走路のボールを上記循環路に掬い上げる手段を有するものとする。
この構成のボールねじにおいて、上記ナットに、上記ボール通過孔が底面に開口した嵌合用の凹部を設ける。この凹部に嵌合する凸部をガイドプレートに設け、この凸部に、上記循環路の内面の一部を形成するガイド面を設ける。上記ガイドプレートとナットとを、上記凸部および凹部の嵌合と止めねじとで固定する。上記ガイドプレートは、上記ボール循環溝のあるプレート本体と、上記ガイド面の設けられた上記凸部を形成する凸部形成部材とに分け、上記プレート本体に、上記凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に上記凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合する。
この構成によると、ガイドプレートをナットに対して、凹部と凸部とで嵌合させた状態で止めねじにより固定するようにしたため、止めねじとその挿通用の取付孔間の遊びの問題なく、凹部と凸部との嵌合による位置決め状態で止めねじによる固定が行われる。そのため、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔との間でずれが生じることが防げ、ずれによる段差等でボールの循環が妨げられることがなく、ボールの循環が円滑に行える。
また、ガイドプレートに設けた凸部に、循環路の内面の一部を形成するガイド面を設けたため、湾曲したガイド面を形成する箇所が厚くできて、ガイド面の全体を継ぎ目のない面とできる。そのため、循環路におけるボールの流れがより一層円滑に得られる。
特に、ガイドプレートは、ボール循環溝のあるプレート本体と、ガイド面の設けられた凸部を形成する凸部形成部材とに分けており、プレート本体に、凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合して構成されるので、一つの部材にボール循環部と凸部とを形成してガイドプレートとする場合に比べて、ガイドプレートの加工が容易になる。
【0009】
この発明において、上記循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向で、かつリード角方向としても良い。また、上記ボール循環溝を略直線形状としても良い。
このように循環路のねじ溝とを接続部が、ねじ溝の接線方向でかつリード角方向に合致している場合、接続部において、ボールはねじ軸の径方向についても、またリード角方向についても挙動が安定する。そのため、ボールの流れの速度変動によるボール詰まりが抑制される。また、ガイドプレートのボール循環路を構成するボール循環溝を略直線形状とした場合、ボール循環路に変曲点が無くなるため、高速運転時でも循環路の早期摩耗を防ぐことができる。循環路の接続部がリード角方向であるため、循環路の略直線状の部分と接続部との間で急な曲がり部分が生じるが、この曲がり部分は曲がり方向が一定であり、曲がり方向の逆転部分である変曲点は生じないため、早期摩耗の問題は生じない。
【0010】
この発明において、上記プレート本体を樹脂製、または焼結合金製、またはプレス加工品製とし、かつ上記凸部形成部材を樹脂製、または焼結合金製としても良い。プレート本体および凸部形成部材のいずれにおいても、焼結合金製とする場合は、金属粉体を可塑状として射出成形された成形体を焼結してなる焼結合金製とすることが好ましい。
このようにプレート本体および凸部形成部材を成形品製とした場合、ボール循環溝のあるプレート本体およびガイド面を有する凸部形成部材が、そのボール循環溝やガイド面にかかわらず、旋削や研削等の機械加工が不要で、共に量産が行い易く、コストを下げることができる。
【0011】
この発明において、上記循環路が複数有る場合に、上記ガイドプレートを軸方向に並べて複数設け、各ガイドプレートが上記循環路のボール循環溝をそれぞれ1本有するものとしても良い。
このようにガイドプレートを循環路毎に分割した場合、ボール循環列が複数列である場合でも、1列用のガイドプレートを数列分用いれば良くなり、部品種類数が少なくなり、また各ガイドプレートが簡素な形状となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図9と共に説明する。図1に示すように、このボールねじ1は、ねじ軸2と、このねじ軸2の外周に遊嵌するナット3と、複数のボール4とを備え、ナット3にはガイドプレート5が取付けられる。ナット3は、円筒状に形成されたナット本体3aと、その一端に設けられたフランジ3bを有する。ねじ軸2は、その外径面に螺旋状のねじ溝6が形成されている。ボール4は、ねじ軸2のねじ溝6とナット3のねじ溝7との間に形成された螺旋状の転走路8内に、連なり状態で転動自在に収容される。
【0013】
ガイドプレート5は、ナット3の外周の一部に形成した平坦面部3aaに固定されて、ナット3と共に円筒状の組立部品を構成する。ガイドプレート5の裏面には、ボール4が通過するボール循環溝9が図8のように形成されている。ボール循環溝9は、略直線状とされている。このボール循環溝9は、ナット3で溝開口部が蓋されることにより、孔状の循環路12(図3)を形成する。この実施形態ではナット3にもボール循環溝9と対向して溝19が形成され(図7)、両溝9,19が合わさってボール4の通過する循環路12を形成する。なお、ナット3の溝19は必ずしも設けなくても良く、その場合、ガイドプレート5のボール循環溝9を、ボールの通過が可能な深さに形成する。
ガイドプレート5のボール循環溝9は、図8のように2本が軸方向に並んで設けられ、それぞれが別の循環路12を構成する。各循環路12と上記転走路8とで、一連のボール周回経路14が構成される。したがって、この実施形態では2つのボール周回経路14(図1)が形成されている。なお、このボール周回経路14は一つとしても、3つ以上としても良い。
【0014】
循環路12の両端は、ねじ軸2とナット3間の転走路8に接続される接続部10となっている。接続部10は、ナット3に形成されたボール通過孔10aにより主に形成される。
図3,図4に示すように、ナット3のねじ溝7内には、転走路8のボール4を循環路12に掬い上げるボール拾い上げ手段11が配置されている。ボール拾い上げ手段11は、デフレクタ部材からなり、一部がナット3のねじ溝7内に嵌合してナット3に固定され、残り部分がねじ軸2のねじ溝6に嵌まり込む。このデフレクタ部材からなるボール拾い上げ手段11は、図6(A),(B)に示すように螺旋の一部を成す部材であり、その固定は、例えば取付孔11bの部分で固定ねじ(図示せず)等により行われる。ボール拾い上げ手段11の端面11aはナット3のボール通過孔10aの内面に滑らかに続く傾斜面とされ、ボール通過孔10aと同じ傾斜角度を持つ。ボール拾い上げ手段11の端面11aは、ボール4の半径よりも若干大きな半径の円弧状の断面形状とされている。上記ボール拾い上げ手段11は、循環路12の両側の接続部10に対してそれぞれ別のものが設けられる。
【0015】
循環路12の各接続部10の延びる方向、つまりボール通過孔10aの延びる方向は、ねじ溝6,7の接線方向T(図4)で、かつねじ溝6,7のリード角β(図1)の方向に設定されている。ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ溝6,7間に形成された転走路8におけるボール軌道中心径となる円の接線方向のことであり、上記の円は、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面における転走路8のボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0016】
ナット3には、ボール通過孔10aに続く嵌合用の凹部17が設けられ、この凹部17に嵌合する凸部18(図5)がガイドプレート5に設けられている。この凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16が設けられる。ガイド面16は、上記のように方向の定められたボール通過孔10aから、直線状のボール循環溝9に滑らかに続く曲面とされており、図5(A)に示すように横断面において円弧状に湾曲し、かつ同図(B)のように縦断面においても円弧状に湾曲した面とされている。循環路12における凸部18のガイド面16と対向する内面部分は、ナット3のボール通過孔10aに続く循環路形成面10bからなる。
【0017】
図8に示すように、ガイドプレート5の上記各凸部18は、外周の一部が上記ガイド面16となる異形断面の柱状に形成されている。ナット3の上記凹部17(図7)は、ガイドプレート5の凸部18が、ナット軸方向に対しては略隙間なく嵌合する形状,大きさとされ、またナット幅方向の中間側に対しても略隙間なく嵌合する形状,大きさとされ、ナット幅方向の外側に対しては開放された形状となっている。ガイドプレート5は、軸方向に対しては、各凸部18がナット3の凹部17に嵌まることで位置決めされ、ナット幅方向に対しては、両側の凸部18がナット3の凹部17に嵌まって中央側への移動が阻止されることで、幅方向両側へ移動が生じないように位置決めされる。ガイドプレート5のナット3への固定は、この凸部18と凹部17との嵌合による位置決め状態で、ガイドプレート5に設けられた取付孔21(図8)に挿通された止めねじ(図示せず)をナット3のねじ孔22(図7)にねじ込むことで行われる。
【0018】
上記ガイドプレート5は、図9(A)に分解図で示すように、上記ボール循環溝9のあるプレート本体5Aと、上記ガイド面16の設けられた上記凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分けられている。上記プレート本体5Aに、上記凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に上記凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合する。プレート本体5Aに対する凸部形成部材5Bの固定は、上記基端の嵌合を圧入状態とすることで行っても良く、また止めねじ、接着剤等を用いて固定しても良い。
プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bは、例えば鋼材の削り出し品とされる。
【0019】
この構成のボールねじ1によると、ガイドプレート5をナット3に対して、凹部17と凸部18とで嵌合させた状態で止めねじにより固定するようにしたため、止めねじとその挿通用の取付孔21間の遊びの問題なく、凹部17と凸部18との嵌合による位置決め状態で止めねじによる固定が行われる。そのため、ガイドプレート5のボール循環溝9とナット3のボール通過孔10aとの間でずれが生じることが防げ、ずれによる段差等でボール4の循環が妨げられることがなく、ボール4の循環が円滑に行える。
また、このガイドプレート5に設けた凸部18に、循環路12の内面の一部を形成するガイド面16を設けたため、単なる平板状のガイドプレートに形成する場合と異なり、湾曲したガイド面16を形成する箇所が厚くできて、ガイド面16の全体を継ぎ目のない面とできる。すなわち、循環路12の内面における接続部10と略直線状のボール循環溝9の間で生じる急な曲がり部分の全体を、ガイドプレート5に設けることができる。そのため、この曲がり部分の途中にガイドプレート5とナット3との分割部分が生じることがなく、分割部分の段差の問題がなくて、循環路12におけるボール4の流れがより一層円滑に得られる。
【0020】
特に、ガイドプレート5は、ボール循環溝9のあるプレート本体5Aと、ガイド面16の設けられた凸部18を形成する凸部形成部材5Bとに分け、プレート本体5Aに、凸部形成部材5Bの基端嵌合用の嵌合用凹み部23を設け、この嵌合用凹み部23に凸部形成部材5Bの基端を嵌合状態に結合して構成されるので、一つの部材にボール循環部9と凸部18とを形成してガイドプレートとする場合に比べて、ガイドプレート5の加工が容易になる。凸部形成部材5Bは、プレート本体5Aに設けられた嵌合用凹み部23に基端を嵌合させるようにしているので、単にプレート本体5Aの表面に固着する場合に比べて、堅固に固定ができるだけでなく、その嵌合深さ分だけ、凸部形成部材5Bに設けるガイド面16の範囲を広げることができて、動作の円滑性にも優れたものとなる。
また、凸部形成部材5Bは、ボール径が同一でリード角βが略同じであれば、様々な軸径,リードのボールねじに兼用でき、したがって複数種類のボールねじの製造において、部品の共通化による生産性の向上が図れる。
【0021】
また、この実施形態では、循環路12の転走路8との接続部10が、ねじ溝6,7の接線方向Tでかつリード角βの方向に合致して設定されているため、接続部10において、ボール4はねじ軸2の径方向についても、またリード角βの方向についても挙動が安定する。そのため、ボール4の流れの速度変動によるボール詰まりが抑制される。これにより、トルクむらがなく、高位置決め精度のボールねじ1とすることができる。
さらに、ガイドプレート5の循環路12を構成するボール循環溝9が略直線形状であるため、ボール循環路12に変曲点が無くなり、高速運転時でも循環路12の早期摩耗を防ぐことができる。循環路12の接続部がリード角βの方向であるため、循環路12の略直線状の部分と接続部10との間で急な曲がり部分が生じるが、この曲がり部分は曲がり方向が一定であり、曲がり方向の逆転部分である変曲点は生じないため、早期摩耗の問題は生じない。
なお、上記ねじ溝6,7の接線方向Tは、詳しくは、ねじ軸2とナット3のねじ溝6,7間に形成された転走路におけるボール軌道中心径となる円の接線方向のことであり、上記の円は、ボールねじ中心軸に対して垂直な平面におけるボール軌道中心の投影形状となる円である。
【0022】
なお、第1の実施形態において、プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bは鋼材の削り出し品としたが、プレート本体5Aを樹脂成形品製、または焼結合金製、またはプレス加工品製等の成形品製とし、かつ上記凸部形成部材5Bを樹脂成形品製または焼結合金製等の成形品製としても良い。プレート本体5Aおよび凸部形成部材5Bのいずれにおいても、焼結合金製とする場合は、金属粉体を可塑状として射出成形した成形体を焼結してなる焼結合金製、いわゆるMIM(Metal Injection Molding) 製としても良い。
【0023】
この射出成形による焼結合金製品の製造方法の一例を説明する。まず、金属粉と、プラスチックおよびワックスからなるバインダとを混練機で混練し、その混練物をペレット状造粒する。上記金属粉としては、後に浸炭焼入れが可能な材質が好ましく、例えば、炭素(C)が0,3%、ニッケル(Ni)が1〜2%、残りが鉄(Fe)からなるものとする。
【0024】
前記のように造粒したペレットは、図10のように、射出成形機29のホッパ30に供給し、金型31内に加熱溶融状態で押し込むことにより成形する。射出成形機29は、プラスチック用のものと同様であり、ノズル32aを先端に有するシリンダ32内に、油圧シリンダ33および油圧モータ34で駆動されるスクリュウ35を設け、外部に加熱溶融用のヒータ36を設けたものである。
このように金型31で射出成形した成形体は、脱脂した後に焼結する。焼結の後、必要に応じて浸炭焼入を行い、プレート本体5A,凸部形成部材5Bが完成する。
【0025】
このように、プレート本体5Aや凸部形成部材5Bを焼結合金製とすることにより、射出成形および焼結によって製造できて、旋削や研削等の機械加工が不要になり、優れた量産性が得られる。そのため、金型31に必要なコストにかかわらず、多量ロット品の場合に十分な製造コストの低下が図れる。また、このような射出成形と粉末冶金の焼結技術との組合せ技術は、寸法精度の良いものが開発されており、ガイドプレート5を精度良く製作することができる。
【0026】
図11は、第1の実施形態において、鋼材削り出し品の代わりに成形品製とする場合のうち、プレート本体5Aを板金のプレス加工製品した実施形態を示す。プレート本体5Aの裏面形状は、ボール循環溝9の形成部分および嵌合用凹み部23の形成部分が突出した凹凸面形状となっている。凸部形成部材5Bは、樹脂製またはMIM製等の焼結合金製のいずれかとされる。
【0027】
図12は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、第1の実施形態において、ナット3の全体として循環路12を複数(例えば3本)有していて、それぞれ1本のボール循環溝9を有するガイドプレート5を軸方向に並べて複数(例えば3つ)設けたものである。各ガイドプレート5の互いの隣接側の側辺は、直線状に設けられるボール循環溝9の方向に沿っており、ナット中心軸に対して傾斜している。
このようにガイドプレート5を循環路12毎に分割した場合、図13のように複数本(ここでは3本)の循環路13を1つのガイドプレート5’に形成する場合に比べて汎用性が高くなる。すなわち、図13のガイドプレート5’では3本の循環路12を設けるボールねじにしか使用できないが、図11のガイドプレート5では、ボールねじに設けられる循環路12の本数だけ、一種類のガイドプレート5を並べて設けることにより対応できる。そのため、複数種のボールねじの製造において、ガイドプレート5の種類数が少なくできて、生産性が向上し、部品管理も容易になる。
【0028】
【発明の効果】
この発明のボールねじは、ナットにボール通過孔が底面に開口した嵌合用の凹部を設け、この凹部に嵌合する凸部をガイドプレートに設け、この凸部に循環路の内面の一部を形成するガイド面を設け、上記ガイドプレートとナットとを、上記凸部および凹部の嵌合と止めねじとで固定し、上記ガイドプレートは、上記ボール循環溝のあるプレート本体と、上記ガイド面の設けられた上記凸部を形成する凸部形成部材とに分け、上記プレート本体に、上記凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に上記凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合したため、ガイドプレートのボール循環溝とナットのボール通過孔間のずれを無くしてボールの循環を円滑にでき、かつガイドプレートを容易に加工することができる。
循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向で、かつリード角方向とし、さらに上記ボール循環溝を略直線形状とした場合は、ボール詰まりが抑制され、また変曲点が生じないために早期摩耗が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態におけるボールねじの正面図である。
【図2】同ボールねじの平面図である。
【図3】同ボールねじにおける部分横断面図である。
【図4】図3の一部の拡大図である。
【図5】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおける循環路の接続部を示す横断面図および縦断面図である。
【図6】その掬い上げ手段の側面図および平面図である。
【図7】(A),(B)は同ボールねじにおけるナットの平面図、(B)は同ナットの部分横断面図である。
【図8】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおけるガイドプレートの裏面図および倒立状態で示す断面図である。
【図9】(A),(B)はそれぞれ同ボールねじにおけるガイドプレートの分解断面図および組立断面図である。
【図10】同ガイドプレートのプレート本体や凸部形成部材の射出成形機の概略側面図である。
【図11】(A)はプレート本体をプレス加工品製としたガイドプレートの裏面図、(B),(C)は同ガイドプレートの分解断面図および組立断面図である。
【図12】ガイドプレートの他の例を示す裏面図である。
【図13】3本の循環路が形成されたガイドプレートの例を示す裏面図である。
【符号の説明】
1…ボールねじ
2…ねじ軸
3…ナット
4…ボール
5…ガイドプレート
5A…プレート本体
5B…凸部形成部材
6,7…ねじ溝
8…転走路
9…ボール循環溝
10…接続部
10a…ボール通過孔
11…ボール拾い上げ手段
12…循環路
16…ガイド面
17…凹部
18…凸部
23…嵌合用の凹み部
Claims (4)
- ねじ軸の外径面と、このねじ軸の外周に遊嵌するナットの内径面とに、互いに対向するねじ溝が形成され、上記ねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝間で形成される転走路内に複数のボールが介在し、上記ナットに取付けられたガイドプレートのボール循環溝とナットとの間に上記ボールが通過する循環路が形成され、この循環路の両端が上記ナットに設けられたボール通過孔により上記転走路に接続され、その接続部に上記転走路のボールを上記循環路に掬い上げる手段を有するボールねじにおいて、
上記ナットに上記ボール通過孔が底面に開口した嵌合用の凹部を設け、この凹部に嵌合する凸部をガイドプレートに設け、この凸部に上記循環路の内面の一部を形成するガイド面を設け、上記ガイドプレートとナットとを、上記凸部および凹部の嵌合と止めねじとで固定し、上記ガイドプレートは、上記ボール循環溝のあるプレート本体と、上記ガイド面の設けられた上記凸部を形成する凸部形成部材とに分け、上記プレート本体に、上記凸部形成部材の基端嵌合用の嵌合用凹み部を設け、この嵌合用凹み部に上記凸部形成部材の基端を嵌合状態に結合したことを特徴とするボールねじ。 - 請求項1において、上記循環路の転走路との接続部を、ねじ溝の接線方向で、かつリード角方向とし、上記ボール循環溝を略直線形状としたボールねじ。
- 請求項1または請求項2において、上記プレート本体を樹脂成形品製、または焼結合金製、またはプレス加工品製等の成形品製とし、かつ上記凸部形成部材を樹脂成形品製、または焼結合金製等の成形品製としたボールねじ。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記循環路が複数有る場合に、上記ガイドプレートを軸方向に並べて複数設け、各ガイドプレートが上記循環路のボール循環溝をそれぞれ1本有するものとしたボールねじ。
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EP2515000B1 (en) * | 2011-04-19 | 2015-07-15 | Aktiebolaget SKF | Ball screw assembly with recirculating cap and nut |
-
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