JP2004225179A - 羽毛袋体用織物 - Google Patents

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Hide Ono
秀 小野
Toshinari Nagura
俊成 名倉
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Nisshinbo Holdings Inc
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Nisshinbo Industries Inc
Nisshin Spinning Co Ltd
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Abstract

【課題】繰り返し洗濯しても通気度が大きくならず、しかも、肌触りがよく、製造が容易な羽毛袋体用織物を提供する。
【解決手段】収縮性短繊維と非収縮性短繊維とを両繊維が均等な状態で混合した状態で紡績糸を作る。この紡績糸を経糸・緯糸にして織物を織る。できた織物を、たとえば、所定温度以上の熱水に所定時間浸漬する等によって収縮処理をする。すると、紡績糸の中の収縮性繊維の部分が縮み、非収縮性繊維の方は、収縮性繊維に引きづられて複雑に蛇行した状態になる。その結果、紡績糸は嵩高な糸になる。このような紡績糸から構成された織物は、糸と糸との間の目が狭くなり、通気性が4cm/cm/sec以下に低下して羽毛袋体として使用した場合、羽毛の吹き出しを防止できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、羽毛布団やダウンジャケット等の羽毛を収容した羽毛袋体に用いる織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
羽毛布団は保温性に優れているが、収容されている羽毛が外側の生地から吹き出す可能性がある。そのため、ダウンプルーフ加工がされた生地内に羽毛を収容することが一般に行われている。
【0003】
ダウンプルーフ加工は、生地を構成する繊維を押しつぶして繊維と繊維の間の隙間を少なくしたものである。この加工によって、羽毛の吹き出しは減少するが、ダウンプルーフ加工した布地は肌触りが悪くなり、身に着けた当初は冷たい感じがする。
【0004】
そこで、特許文献1(登録実用新案第3058779号)では、身体に接触する側をニット生地で覆った羽毛布団を提案している。また、ニット生地とダウンプルーフ生地との間に中綿を入れた構成をも併せて提案している。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3058779号 請求の範囲、図2
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のものにあっては、ダウンプルーフ加工した生地は、繰り返し洗濯をすることで通気度が大きくなって、羽毛の吹き出しが徐々に増加するという問題がある。また、ニット生地を付加するので、構造が複雑になり、製造コストが上がってしまう。
【0007】
本発明は、繰り返し洗濯しても通気度が大きくならず、しかも、肌触りがよく、製造が容易な羽毛袋体用織物を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の羽毛袋体用織物は、収縮性短繊維と、非収縮性短繊維とを混紡して紡いだ紡績糸を経糸及び/又は緯糸にして織物とし、上記収縮性短繊維を収縮処理した後の該織物の通気度を4cm/cm/sec以下としたことを特徴としている。
【0009】
上記織物の織り密度が、60番手換算で経緯総本数200〜360本/2.54cmである構成としたり、収縮性短繊維の収縮率が40%を越える構成とすることができる。
【0010】
【作用】
収縮性短繊維と非収縮性短繊維とを混合した状態で紡績糸を作る。この紡績糸を経糸・緯糸にして織物とし、できた織物を、たとえば、所定温度以上の熱水に所定時間浸漬する等によって収縮処理をする。すると、紡績糸の中の収縮性繊維の部分が縮み、非収縮性繊維の方は、収縮性繊維に引きづられて複雑に蛇行した状態になる。その結果、紡績糸は嵩高な糸になる。このような紡績糸から構成された織物は、糸と糸との間の目が狭くなり、通気性が4cm/cm/sec以下に低下して羽毛袋体として使用した場合、羽毛の吹き出しを防止できる。
【0011】
上記の織物は、ダウンプルーフ加工を施していないので、繊維は自然の状態を保っており、ソフトな肌触りを保っている。また、紡績糸自身の特性によるものなので、繰り返し洗濯しても通気度が上昇することはない。
【0012】
織り密度を60番手換算で経緯総本数200〜360本/2.54cmにしたり、収縮性短繊維の収縮率が40%を越えるものを使用することで、上記の通気度を達成し易くなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の収縮性短繊維と非収縮性短繊維からなる糸は、両繊維を原綿又はスライバ等の段階で混綿してから、粗紡機、精紡機を通して紡績糸としている。精紡機としては、リング精紡機の他、空気精紡機を用いてもよい。
【0014】
なお、両繊維を別々の粗糸としてリング精紡機に供給して精紡交撚する精紡交撚糸としてもよい。また、収縮性短繊維と非収縮性短繊とをそれぞれ別々の紡績糸とし、得られた糸を2本以上撚り合わせた合撚糸としたり、あるいは、収縮性繊維のフィラメントをコアとし、非収縮性短繊維をシースとしたコアスパン糸などを用いてもよい。ただし、原綿又はスライバ段階で混紡した紡績糸の方が、両繊維が均一な状態で混合するので、収縮処理した際の嵩高が大きくなり、望ましいといえる。
【0015】
収縮性短繊維の収縮率としては、40%以上収縮するものが望ましい。このような収縮率を有する収縮性短繊維としては、収縮性ポリエステル短繊維(例えば、帝人株式会社製、商品銘柄:TR08、収縮率64%、)等がある。これは、熱水処理により収縮するタイプである。
【0016】
ここでいう収縮率は、原綿の状態で荷重を加えずに沸騰した湯に30分間浸漬し、浸漬する前後の長さを荷重をかけずに直線状にして測定し、収縮前後の長さの差を収縮前の長さで割って求めた数値(%)である。
【0017】
非収縮性短繊維としては、収縮性短繊維の収縮処理により収縮しないか、又は収縮率が少ないものを使用する。収縮性短繊維に応じて適宜選択されるが、収縮性短繊維が収縮性ポリエステル短繊維の場合は、綿、麻等の天然セルロース繊維、テンセル(商品名)等の高強度再生セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維が挙げられる。
【0018】
収縮性短繊維と非収縮性短繊維の混合比率は重量比で、収縮性短繊維:非収縮性短繊維=20:80〜55:45が好ましい。収縮性短繊維の割合が20未満になると収縮不足のため嵩高性が充分ではなくなり、又、収縮性短繊維の割合が55を越えると非収縮性繊維が少なくなって、やはり十分な嵩高性を得られなくなるからである。
【0019】
本発明では、この紡績糸を使用して通常の織機により織物とする。布団側地とする場合は、布団側地に適した規格にする。すなわち、30番手から160/2番手の太さの糸を用い、60番手換算した織り密度が、経緯総本数で200〜360本/2.54cmの平織り、綾織り又は朱子織りとする。
【0020】
本発明の効果を発揮する織組織としては、接続点の少ない、浮きの大きい組織が嵩高性を発現し易いので望ましい。例えば平織より綾織が好ましく、綾織より朱子織が好ましい。
【0021】
なお、編組織についてであるが、通常のメリヤス編みでも収縮処理を行うことで、優れた嵩高性を得ることができる。しかし、メリヤス編みなどの編み組織では、布地が伸縮自在なので、編目が大きくなり易く、羽毛が吹き出し易くなることから、本発明の羽毛袋体用織物としては不適である。
【0022】
織物組織の作成にあたっては、本発明の混紡された紡績糸を経糸、緯糸の双方に使用するのが好ましいが、経糸又は緯糸の一方に使用してもよい。ただし、経糸に本発明の紡績糸を使用する場合は、60℃以下の低温サイジングをする必要がある。すなわち、製織時の糊付けを60℃以下で行い、糸が縮まないようにする必要がある。本発明では、製織後の布を収縮処理をすることで、通気性を抑制した生地が得られるので、製織前に収縮してしまっては、意味が無くなるからである。このことから、経糸には、通常の非収縮性の糸を用い、緯糸に収縮性短繊維を含む紡績糸を使用することが、特別のサイジングを不要とするので、望ましいと言える。
【0023】
こうして織り上がった織物は、次に、収縮処理される。収縮処理は、収縮性短繊維の種類により適宜選択されるが、収縮性短繊維が収縮性ポリエステル短繊維の場合は、温度80℃以上の熱水に10分間以上浸漬して処理する。通常の織物の場合、製織したあと、95〜100℃の熱水に30〜40分浸漬して糊抜精錬するので、この工程で収縮処理を行うことができる。したがって、収縮処理について、余分な工程を付加する必要がない。
【0024】
なお、収縮処理を熱水と同様の収縮効果を持ち、かつ溶解性のない程度に苛性アルカリ等の薬剤を溶解した溶液で行ってもよい。
収縮処理の際には、できるだけ収縮させるため、テンションは極力低くし、できればテンションなしとすることが好ましい。
【0025】
以上によって得られた織物は、通気度が4cm/cm/sec以下となり、繰り返し洗濯をしても通気度は大きくならなかった。また、ダウンプルーフ加工のように繊維を押しつぶすような加工をしていないので、肌触りもよく、ソフトな風合いの羽毛袋体用織物を得ることができた。
【0026】
〔実施例〕
本発明の実施例として、以下のようにして羽毛袋体用織物を得た。
(1)収縮性短繊維として、高収縮ポリエチレンテレフタレート(帝人株式会社製、商品銘柄:TR08、収縮率64%、)を用い、非収縮性短繊維として綿を使用した。収縮性短繊維を30重量%とし、非収縮性短繊維を70重量%としてスライバで混紡し、リング精紡機で80番手の紡績糸を紡出した。
【0027】
(2)経糸に非収縮性短繊維である60番手の綿糸を用い、上記の80番手の混紡糸を緯糸に用いた。織密度は経糸156本/2.54cm、緯糸160本/2.54cmで、織組織は、2/1綾織りとして製織した。
【0028】
(3)製織された織物を、浴比1:20(生地100gを熱水処理する際、熱水2000ccを使用したという意味)で、温度90℃の熱水中に30分間、テンションを加えない状態で浸漬して収縮処理した。
【0029】
(4)次に、通常の精錬、漂白、シルケット加工をして染色後、脱水、乾燥して仕上げ加工した。
【0030】
〔比較例1〕
(1)経緯糸共に60番手の綿100%の紡績糸を用い、織密度は経200本/2.54cm、緯160本/2.54cmの朱子織とした。
この後、上記実施例の(3)、(4)、(5)と同様の処理を行って比較例1の織物を得た。
【0031】
〔比較例2〕
比較例1と同様に仕上げ前まで実施し、ダウンプルーフ加工により仕上げた。
【0032】
この後、上記実施例、比較例1、比較例2、について、それぞれの通気度と風合を調査した。その結果は、表1の通りである。
【0033】
【表1】
Figure 2004225179
通気度は、洗濯0回(洗濯しない状態)、洗濯1回、洗濯10回の3回調査を行い、洗濯による通気度の変化も調べた。
【0034】
実施例では、洗濯を繰り返しても通気度は却って低くなっており、洗濯による通気度の上昇は見られなかった。このことは、本発明の織物を羽毛布団やダウンジャケット等に使用し、洗濯を繰り返しても、羽毛の吹き出しを確実に防止することができるということを意味している。
【0035】
比較例1は、通気度が5.5cm/cm/sec以上あり、羽毛の吹き出しを防止できない。なお、洗濯を繰り返しても、通気度は殆ど変化がない。
【0036】
比較例2は、洗濯する前の通気度は1.7cm/cm/secであり、非常によい。しかし、洗濯を繰り返すと、徐々に通気度が上昇することが分かる。
【0037】
風合いについては、ダウンプルーフ加工をしたものは肌触りが悪く、見た目にも固い感じがして風合いは悪かった。本発明の織物は、非収縮短繊維として使用した綿繊維が、収縮処理によって嵩高になったので、比較例1の通常の織物よりもソフト感に秀で、肌触りも良くなった。
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の羽毛袋体用織物によれば、収縮性短繊維と、非収縮性短繊維とを混紡して紡いだ紡績糸を経糸及び/又は緯糸にして織物とし、上記収縮性短繊維を収縮処理した後の該織物の通気度を4cm/cm/sec以下としたので、羽毛の吹き出しを防止でき、肌触りのソフトな織物を得ることができた。また、洗濯を繰り返しても通気度が上昇することがなく、羽毛の吹き出しを長期間に渡って安定して防止することができる。

Claims (3)

  1. 収縮性短繊維と、非収縮性短繊維とを混紡して紡いだ紡績糸を経糸及び/又は緯糸にして織物とし、上記収縮性短繊維を収縮処理した後の該織物の通気度を4cm/cm/sec以下としたことを特徴とする羽毛袋体用織物。
  2. 上記織物の織り密度が、60番手換算で経緯総本数200〜360本/2.54cmであることを特徴とする請求項1記載の羽毛袋体用織物。
  3. 収縮性短繊維の収縮率が40%を越えることを特徴とする請求項1又は2記載の羽毛袋体用織物。
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