JP2004225091A - スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粉末冶金法で製造されるターゲットを容易にリサイクルできる、スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を原料として放電プラズマ焼結法により焼結することを特徴とする。また、前記粉末材料を使用済みターゲットのエロージョン面側に充填したり、使用済みターゲットを粉砕して得た塊と粉末材料を混合することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を原料として放電プラズマ焼結法により焼結することを特徴とする。また、前記粉末材料を使用済みターゲットのエロージョン面側に充填したり、使用済みターゲットを粉砕して得た塊と粉末材料を混合することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末冶金法により製造されるターゲットにおいて、スパッタリングで用いられた使用済みターゲットのリサイクル方法に係り、より詳しくは使用済みターゲットに原料粉を加えて焼結するスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の分野で機能性薄膜を用いた各種の製品が実用化されている。CD(Compact Disk)、DVD(Digital Video Disk)、MOD(Magnetic Optical Disk:光磁気ディスク)等の光ディスクはそうした製品の1例である。こうした製品の製造に用いられる機能性薄膜を形成する方法としては、一般に、マグネトロンスパッタリング法が広く用いられている。このマグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングターゲット(以下説明の便宜上「ターゲット」と称する)と呼ばれる板状の原料を用い、希薄ガス中で発生させたプラズマによってターゲットから所用物質を放出させ、それを基板上に堆積させることにより薄膜を形成する方法であり、機能性薄膜を形成するのに非常に優れた方法である。
【0003】
しかしながら、このマグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングされるターゲットの利用効率が低いという欠点がある。すなわち、この方法では磁場により局所化したプラズマによってターゲットが局所的に掘られるために、ターゲット全体の30〜50%程度を使用した時点でターゲットが使用できなくなるという問題があった。かかる対策として、磁石をターゲットに沿って移動させて磁場を比較的均一に発生させことで、全体的に均一に掘られたターゲットを形成することも可能であるが、この方法は装置にかかるコストが高くつき経済性に問題があった。このため、使用済みターゲットを経済的にリサイクルできる方法が求められている。また、最近では環境保護の観点から使用済みターゲット等の廃棄物を極力減らすことが求められており、この点からもリサイクルは重要となってきている。
【0004】
従来、粉末冶金法で製造される各種ターゲットのリサイクル法としては、▲1▼使用済みターゲットを原料粉末に戻し、通常の粉末冶金法によるターゲットの製造技術でターゲットを製造し直す方法と、▲2▼使用済みターゲットに新たに原料粉を追加してホットプレス法や熱間等方圧焼結法(以下HIP法と称する)によりターゲットを製造する方法が知られている。
しかし、▲1▼の方法はターゲット製造の初期の工程まで戻るため、ターゲットにリサイクルされるまでに多くの時間とコストがかかる上、ターゲットを粉砕する際に酸化されることによりターゲットの品質も劣化するという問題がある。
また、▲2▼のホットプレス法やHIP法による方法では、加圧加熱時に、使用済みターゲットと原料粉末の界面付近において良好に接合できず、この界面付近でターゲットにクラックや割れが発生してしまうという問題がある。さらに、HIP法では、容器の中に試料を入れ静水圧により四方から圧力をかけるために、加圧により焼結体が凹んだ形状となって製品形状と異なるものとなる。このため、良好な形状のターゲットを得るためには、凹んだ部分を切削する必要があるが、多量の原料と大幅な研削加工が必要となり効率が悪くなるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した▲2▼の従来技術の問題を解決するためになされたもので、粉末冶金法で製造されるターゲットを容易にリサイクルできる、スパッタリングターゲットの製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるスパッタリングターゲットの製造方法は、使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を原料として焼結法によりターゲットを製造する方法において、前記使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を放電プラズマ焼結法により焼結することを特徴とするものである。また、前記粉末材料を使用済みターゲットのエロージョン面側に充填することを特徴とし、さらに、使用済みターゲットを粉砕して得た塊と粉末材料を混合することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、焼結方法として従来技術のホットプレス法やHIP法に替えて放電プラズマ焼結法を用いたのは、以下に記載する理由による。
放電プラズマ焼結法は、ホットプレス法と同様に被焼結物に対して加熱加圧を施すが、その加熱方法として電流パルスを印加して被焼結物を加熱する点に特徴を有する焼結法である。この方法を用いた場合には、電流印加により新しく投入した原料粉末の粒子間隙で放電現象が起こり、粒子間隙部分が局所的に高温となり焼結する。この放電現象が、原料粉末の粒子と使用済みターゲットの界面付近で起こり、原料粉末と使用済みターゲットの界面で良好な接合が行われるため、上記界面でターゲットにクラックや割れが発生するという現象は起こりにくくなる。さらに、ホットプレス法と同様に製品形状に近い焼結体を得ることが可能であり、投入原料に対する製品歩留りも良好となる。このため、本発明では放電プラズマ焼結法を採用したのである。
【0008】
放電プラズマ焼結法を用いてターゲットのリサイクルを行う場合には、下記の2通りの方法が考えられる。
(1)使用済みターゲットをそのまま用いる方法で、図1に示すように、黒鉛型1の中に使用済みターゲット2をエロージョン面(スパッタリングにより掘れた面)が上になるように置き、その型の中にスパッタで使用された分よりも若干多い原料粉3を補充して焼結を行う方法である。
(2)使用済みターゲットを数mm程度の小塊に破砕したものを用いる方法で、図2に示すように、黒鉛型1の中に数mm程度の小塊に破砕した使用済みターゲット片4を置き、スパッタで使用された分よりも若干多い原料粉3を混合して焼結を行う方法である。
実際に上記(1)(2)の方法でリサイクルを行う場合には、焼結前に使用済みターゲットの表面を清浄にする処理を施しておくことが必要である。
また、この(1)(2)の方法によって得られた焼結体を、通常のターゲットの焼結方法と同様に後加工を施すことにより、ターゲットとして使用できるようになる。
なお、本発明における新規原料粉末の粒度としては、特に限定するものではないが、1〜200μm程度でよい。
【0009】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。なおここでは、MODで用いられるFeTbCoCr合金ターゲットと、DVDで用いられるGeSbTe合金ターゲットの実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0010】
実施例1
使用済みの直径φ127mm、高さ10mmの円柱形のFe−23at%Tb−7at%Co−3at%Cr合金ターゲットを用意した。使用効率はほぼ40%であった。このターゲットは酸化を防ぐためにアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、切削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径50μmを有する同一組成の合金粉600gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットをエロージョン面が上になるように置き、その上から合金粉を充填する形で原材料の投入を行った。
焼結試験は直径φ128mmの黒鉛型を用い放電プラズマ焼結装置により数10−4〜10−5torrの真空雰囲気中で実施した。その際、放電プラズマ焼結装置では加圧方向に電流パルスを印加し、焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度1000℃、焼結時間2時間とした。その結果、クラックや割れの無い品質良好な焼結体が得られた。
次に、この焼結体に表面研削加工を施してバッキングプレートにボンディングし、スパッタ試験を実施した。スパッタ試験では、ガラス基板上に膜厚3000オングストロ−ムの薄膜を成膜して膜組成と、磁気特性として保磁力の測定を実施した。その結果、本発明のリサイクルターゲットを用いた場合にも、通常のターゲットを用いた場合とほぼ同等の膜組成が得られた。また、通常のターゲットと比較して保磁力の差も±0.5ek以内であることが確認された。
【0011】
実施例2
使用済みの直径φ200mm、高さ6mmの円柱形のGe−22at%Sb−56at%Te合金ターゲットを用意した。使用効率はほぼ30%であった。このターゲットも実施例1と同様、酸化を防ぐためアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、研削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径10μmを有する同一組成の合金粉700gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットを数mm角以下に粉砕した破片と合金粉を混合して充填する形で材料の投入を行った。
焼結試験はφ202mmの黒鉛型を用い放電プラズマ焼結装置によりアルゴン雰囲気中で実施した。その際、放電プラズマ焼結装置では加圧方向に電流パルスを印加し、焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度500℃、焼結時間2時間とした。その結果、本実施例においても、クラックや割れの無い良好な焼結体が得られた。
次に、この焼結体に表面研削加工を施した後、実施例1と同様の条件にてスパッタ試験を実施し、ガラス基板上に成膜した膜厚3000オングストロームの薄膜の膜組成を測定した結果、本実施例においても通常のターゲットを用いた場合とほぼ同等の膜組成を得られることが確認された。
【0012】
比較例1
実施例1と同じ使用済みの直径φ127mm、高さ10mmの円柱形Fe−23at%Tb−7at%Co−3at%Cr合金ターゲットを用意した。使用効率も実施例1の場合と同じほぼ40%であった。このターゲットも実施例1と同様、酸化を防ぐためにアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、切削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径50μmを有する同一組成の合金粉600gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットをエロージョン面が上になるように置き、その上から合金粉を充填する形で原材料の投入を行った。
焼結試験はφ128mmの黒鉛型を用い、放電プラズマ焼結装置に替えて、ホットプレス装置により真空雰囲気中で実施した。ホットプレス装置の焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度1000℃、焼結時間2時間とした。その結果、ホットプレス装置を用いた場合には割れが発生して焼結体を得ることができなかった。
【0013】
比較例2
実施例2と同じ使用済みの直径φ200mm、高さ6mmの円柱形のGe−22at%Sb−56at%Te合金ターゲットを用意した。使用効率は実施例2の場合と同じほぼ30%であった。このターゲットも実施例2と同様、酸化を防ぐためアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、研削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径10μmを有する同一組成の合金粉700gを用いて焼結試験を実施した。焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットを数mm角以下に粉砕した破片と合金粉を混合して充填する形で材料の投入を行った。
焼結試験はφ202mmの黒鉛型を用い、比較例1と同様のホットプレス装置によりアルゴン雰囲気中で実施した。ホットプレス装置の焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度500℃、焼結時間2時間とした。その結果、比較例1と同様、割れが発生して焼結体を得ることができなかった。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明方法は、使用済みターゲットと原料粉末の焼結手段として、放電プラズマ焼結法を採用したことにより、使用済みターゲットを原料粉末と同じ程度まで細かく粉砕する必要がなくなり処理コストが安くつくのみならず、原料粉末と使用済みターゲットの界面で良好な接合が行われるため、この界面でターゲットにクラックや割れが発生することがなくなる上、ホットプレス法と同様に製品形状に近い焼結体を得ることが可能となり、さらに投入原料に対する製品歩留りも良好となる等、品質良好なスパッタリングターゲットを安価に製造することができる。したがって、本発明方法によれば、粉末冶金法で製造される使用済みターゲットのリサイクル化をより促進することが可能となり、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放電プラズマ焼結法の一実施例を示す図で、使用済みターゲットをそのまま用いる方法を実施するための焼結装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の放電プラズマ焼結法の他の実施例を示す図で、使用済みターゲットを数mm程度の小塊に破砕したものを用いる方法を実施するための焼結装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 黒鉛型
2、4 使用済みターゲット
3 原料粉
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末冶金法により製造されるターゲットにおいて、スパッタリングで用いられた使用済みターゲットのリサイクル方法に係り、より詳しくは使用済みターゲットに原料粉を加えて焼結するスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の分野で機能性薄膜を用いた各種の製品が実用化されている。CD(Compact Disk)、DVD(Digital Video Disk)、MOD(Magnetic Optical Disk:光磁気ディスク)等の光ディスクはそうした製品の1例である。こうした製品の製造に用いられる機能性薄膜を形成する方法としては、一般に、マグネトロンスパッタリング法が広く用いられている。このマグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングターゲット(以下説明の便宜上「ターゲット」と称する)と呼ばれる板状の原料を用い、希薄ガス中で発生させたプラズマによってターゲットから所用物質を放出させ、それを基板上に堆積させることにより薄膜を形成する方法であり、機能性薄膜を形成するのに非常に優れた方法である。
【0003】
しかしながら、このマグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングされるターゲットの利用効率が低いという欠点がある。すなわち、この方法では磁場により局所化したプラズマによってターゲットが局所的に掘られるために、ターゲット全体の30〜50%程度を使用した時点でターゲットが使用できなくなるという問題があった。かかる対策として、磁石をターゲットに沿って移動させて磁場を比較的均一に発生させことで、全体的に均一に掘られたターゲットを形成することも可能であるが、この方法は装置にかかるコストが高くつき経済性に問題があった。このため、使用済みターゲットを経済的にリサイクルできる方法が求められている。また、最近では環境保護の観点から使用済みターゲット等の廃棄物を極力減らすことが求められており、この点からもリサイクルは重要となってきている。
【0004】
従来、粉末冶金法で製造される各種ターゲットのリサイクル法としては、▲1▼使用済みターゲットを原料粉末に戻し、通常の粉末冶金法によるターゲットの製造技術でターゲットを製造し直す方法と、▲2▼使用済みターゲットに新たに原料粉を追加してホットプレス法や熱間等方圧焼結法(以下HIP法と称する)によりターゲットを製造する方法が知られている。
しかし、▲1▼の方法はターゲット製造の初期の工程まで戻るため、ターゲットにリサイクルされるまでに多くの時間とコストがかかる上、ターゲットを粉砕する際に酸化されることによりターゲットの品質も劣化するという問題がある。
また、▲2▼のホットプレス法やHIP法による方法では、加圧加熱時に、使用済みターゲットと原料粉末の界面付近において良好に接合できず、この界面付近でターゲットにクラックや割れが発生してしまうという問題がある。さらに、HIP法では、容器の中に試料を入れ静水圧により四方から圧力をかけるために、加圧により焼結体が凹んだ形状となって製品形状と異なるものとなる。このため、良好な形状のターゲットを得るためには、凹んだ部分を切削する必要があるが、多量の原料と大幅な研削加工が必要となり効率が悪くなるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した▲2▼の従来技術の問題を解決するためになされたもので、粉末冶金法で製造されるターゲットを容易にリサイクルできる、スパッタリングターゲットの製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるスパッタリングターゲットの製造方法は、使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を原料として焼結法によりターゲットを製造する方法において、前記使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を放電プラズマ焼結法により焼結することを特徴とするものである。また、前記粉末材料を使用済みターゲットのエロージョン面側に充填することを特徴とし、さらに、使用済みターゲットを粉砕して得た塊と粉末材料を混合することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、焼結方法として従来技術のホットプレス法やHIP法に替えて放電プラズマ焼結法を用いたのは、以下に記載する理由による。
放電プラズマ焼結法は、ホットプレス法と同様に被焼結物に対して加熱加圧を施すが、その加熱方法として電流パルスを印加して被焼結物を加熱する点に特徴を有する焼結法である。この方法を用いた場合には、電流印加により新しく投入した原料粉末の粒子間隙で放電現象が起こり、粒子間隙部分が局所的に高温となり焼結する。この放電現象が、原料粉末の粒子と使用済みターゲットの界面付近で起こり、原料粉末と使用済みターゲットの界面で良好な接合が行われるため、上記界面でターゲットにクラックや割れが発生するという現象は起こりにくくなる。さらに、ホットプレス法と同様に製品形状に近い焼結体を得ることが可能であり、投入原料に対する製品歩留りも良好となる。このため、本発明では放電プラズマ焼結法を採用したのである。
【0008】
放電プラズマ焼結法を用いてターゲットのリサイクルを行う場合には、下記の2通りの方法が考えられる。
(1)使用済みターゲットをそのまま用いる方法で、図1に示すように、黒鉛型1の中に使用済みターゲット2をエロージョン面(スパッタリングにより掘れた面)が上になるように置き、その型の中にスパッタで使用された分よりも若干多い原料粉3を補充して焼結を行う方法である。
(2)使用済みターゲットを数mm程度の小塊に破砕したものを用いる方法で、図2に示すように、黒鉛型1の中に数mm程度の小塊に破砕した使用済みターゲット片4を置き、スパッタで使用された分よりも若干多い原料粉3を混合して焼結を行う方法である。
実際に上記(1)(2)の方法でリサイクルを行う場合には、焼結前に使用済みターゲットの表面を清浄にする処理を施しておくことが必要である。
また、この(1)(2)の方法によって得られた焼結体を、通常のターゲットの焼結方法と同様に後加工を施すことにより、ターゲットとして使用できるようになる。
なお、本発明における新規原料粉末の粒度としては、特に限定するものではないが、1〜200μm程度でよい。
【0009】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。なおここでは、MODで用いられるFeTbCoCr合金ターゲットと、DVDで用いられるGeSbTe合金ターゲットの実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0010】
実施例1
使用済みの直径φ127mm、高さ10mmの円柱形のFe−23at%Tb−7at%Co−3at%Cr合金ターゲットを用意した。使用効率はほぼ40%であった。このターゲットは酸化を防ぐためにアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、切削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径50μmを有する同一組成の合金粉600gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットをエロージョン面が上になるように置き、その上から合金粉を充填する形で原材料の投入を行った。
焼結試験は直径φ128mmの黒鉛型を用い放電プラズマ焼結装置により数10−4〜10−5torrの真空雰囲気中で実施した。その際、放電プラズマ焼結装置では加圧方向に電流パルスを印加し、焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度1000℃、焼結時間2時間とした。その結果、クラックや割れの無い品質良好な焼結体が得られた。
次に、この焼結体に表面研削加工を施してバッキングプレートにボンディングし、スパッタ試験を実施した。スパッタ試験では、ガラス基板上に膜厚3000オングストロ−ムの薄膜を成膜して膜組成と、磁気特性として保磁力の測定を実施した。その結果、本発明のリサイクルターゲットを用いた場合にも、通常のターゲットを用いた場合とほぼ同等の膜組成が得られた。また、通常のターゲットと比較して保磁力の差も±0.5ek以内であることが確認された。
【0011】
実施例2
使用済みの直径φ200mm、高さ6mmの円柱形のGe−22at%Sb−56at%Te合金ターゲットを用意した。使用効率はほぼ30%であった。このターゲットも実施例1と同様、酸化を防ぐためアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、研削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径10μmを有する同一組成の合金粉700gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットを数mm角以下に粉砕した破片と合金粉を混合して充填する形で材料の投入を行った。
焼結試験はφ202mmの黒鉛型を用い放電プラズマ焼結装置によりアルゴン雰囲気中で実施した。その際、放電プラズマ焼結装置では加圧方向に電流パルスを印加し、焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度500℃、焼結時間2時間とした。その結果、本実施例においても、クラックや割れの無い良好な焼結体が得られた。
次に、この焼結体に表面研削加工を施した後、実施例1と同様の条件にてスパッタ試験を実施し、ガラス基板上に成膜した膜厚3000オングストロームの薄膜の膜組成を測定した結果、本実施例においても通常のターゲットを用いた場合とほぼ同等の膜組成を得られることが確認された。
【0012】
比較例1
実施例1と同じ使用済みの直径φ127mm、高さ10mmの円柱形Fe−23at%Tb−7at%Co−3at%Cr合金ターゲットを用意した。使用効率も実施例1の場合と同じほぼ40%であった。このターゲットも実施例1と同様、酸化を防ぐためにアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、切削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径50μmを有する同一組成の合金粉600gを用いて焼結試験を実施した。この焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットをエロージョン面が上になるように置き、その上から合金粉を充填する形で原材料の投入を行った。
焼結試験はφ128mmの黒鉛型を用い、放電プラズマ焼結装置に替えて、ホットプレス装置により真空雰囲気中で実施した。ホットプレス装置の焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度1000℃、焼結時間2時間とした。その結果、ホットプレス装置を用いた場合には割れが発生して焼結体を得ることができなかった。
【0013】
比較例2
実施例2と同じ使用済みの直径φ200mm、高さ6mmの円柱形のGe−22at%Sb−56at%Te合金ターゲットを用意した。使用効率は実施例2の場合と同じほぼ30%であった。このターゲットも実施例2と同様、酸化を防ぐためアルゴン雰囲気中で加熱してバッキングプレートより剥離した後に、研削加工と研磨加工によりはんだ等の表面汚れを除去した。
この使用済みターゲットと平均粒径10μmを有する同一組成の合金粉700gを用いて焼結試験を実施した。焼結試験では、黒鉛型の中に使用済みターゲットを数mm角以下に粉砕した破片と合金粉を混合して充填する形で材料の投入を行った。
焼結試験はφ202mmの黒鉛型を用い、比較例1と同様のホットプレス装置によりアルゴン雰囲気中で実施した。ホットプレス装置の焼結条件は加圧圧力300kg/cm2、加熱温度500℃、焼結時間2時間とした。その結果、比較例1と同様、割れが発生して焼結体を得ることができなかった。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明方法は、使用済みターゲットと原料粉末の焼結手段として、放電プラズマ焼結法を採用したことにより、使用済みターゲットを原料粉末と同じ程度まで細かく粉砕する必要がなくなり処理コストが安くつくのみならず、原料粉末と使用済みターゲットの界面で良好な接合が行われるため、この界面でターゲットにクラックや割れが発生することがなくなる上、ホットプレス法と同様に製品形状に近い焼結体を得ることが可能となり、さらに投入原料に対する製品歩留りも良好となる等、品質良好なスパッタリングターゲットを安価に製造することができる。したがって、本発明方法によれば、粉末冶金法で製造される使用済みターゲットのリサイクル化をより促進することが可能となり、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放電プラズマ焼結法の一実施例を示す図で、使用済みターゲットをそのまま用いる方法を実施するための焼結装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の放電プラズマ焼結法の他の実施例を示す図で、使用済みターゲットを数mm程度の小塊に破砕したものを用いる方法を実施するための焼結装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 黒鉛型
2、4 使用済みターゲット
3 原料粉
Claims (3)
- 使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を原料として焼結法によりターゲットを製造する方法において、前記使用済みターゲットおよび該ターゲットと同一組成の粉末材料を放電プラズマ焼結法により焼結することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
- 粉末材料を使用済みターゲットのエロージョン面側に充填することを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
- 使用済みターゲットを粉砕して得た塊と粉末材料を混合することを特徴とする請求項1または2記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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