JP2004223448A - 排水への滅菌剤注入量の自動制御方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】排水を中和処理した後にろ過した処理水を貯留する処理水槽2に、塩素系滅菌剤を溶解した滅菌剤溶液タンク7から滅菌剤溶液xの注入管5を接続し、注入管5に注入ポンプ6を介設し、処理水zの酸化還元電位差を測定する酸化還元電位差計9を処理水槽2に配備し、酸化還元電位差計9をコントローラ12を介して注入ポンプ6に接続し、酸化還元電位差計9により測定される酸化還元電位差が600mV〜800mVになるようにコントローラ12にて滅菌剤溶液の注入量を制御する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば、ごみ焼却場の排水処理設備でごみ収集車の洗車排水や床洗排水などを含む各種排水(以下、排水という)などの、いわゆる有機系排水、あるいは無機系排水および有機系・無機系が混合された排水を浄化処理するための排水処理設備において、排水をたとえば中和処理してろ過した処理水などを次亜塩素酸ソーダのような塩素系滅菌剤で滅菌する際に、その滅菌剤の流入量を自動制御する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような有機系排水を塩素系滅菌剤で滅菌する場合に、従来より、たとえば処理水の供給路の途中に、固形の滅菌剤を充填した滅菌器を介設し、滅菌剤を処理水で溶解しながら処理水に混合する方法が実施されている。
【0003】
また、滅菌剤を溶解した溶液を注入ポンプを介して回転数をポンプコントロールにて作業者が手動で設定することにより滅菌水槽に一定量注入し、混合する方法も実施されている。そして、この場合、滅菌剤の注入量を、滅菌水槽内の水から漂う塩素臭等の濃淡などによって作業者が経験的に判断している。
【0004】
その他、主に医療施設の排水を下水道や河川などに放流する場合に、pH調整剤でpHを所定値に調整した後、塩素系滅菌剤を注入後の残留塩素濃度が通常、500ppm前後になるように注入している。この塩素系滅菌剤の注入量を酸化還元電位を測定し酸化性雰囲気になるよう、具体的には0mV以上になるよう決定している(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−117758号公報(段落番号0006・0007・0024・0034)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の一般的な滅菌剤の注入・混合方法および上記公報に記載の方法では、つぎのような不都合がある。すなわち、
a)上記した前者の二つの方法をごみ処理場の排水の滅菌処理に適用したところ、排水の水質が変化したときに滅菌処理が不十分になって滅菌処理水にスライム(一般に微生物の繁殖によって生じる泥状の粘着性物質)が発生し、再利用先への供給用配管やストレーナなどが閉塞された。
【0007】
b)上記公報に記載の方法は、下水道や河川に放流するのに必要な基準を満たすもので、残留塩素濃度が通常、500ppmと非常に高くて機器類を腐食するおそれがあるうえ、再利用水には残留塩素濃度があまりに高すぎて(再利用水では通常、10〜30ppm前後)適用できない。また、酸化還元電位を測定して塩素系滅菌剤の注入量を調整しているが、残留塩素濃度と酸化還元電位の関係については一切説明がなく、単に酸化性雰囲気になるように(具体的には0mV以上)設定するとしか、記載されていない。このため、たとえば残留塩素濃度を10〜30ppmに調整するのに、酸化還元電位差をどの程度に設定すればよいか全く不明である。
【0008】
ところで、再利用水としては残留塩素濃度が10〜30ppm前後になるように塩素系滅菌剤の注入量を調整すればよいが、残留塩素計は水道水やプールの水を対象にしているため、1〜2ppmと低濃度の残留塩素しか測定できない。そこで、残留塩素計で再利用水用の処理水の残留塩素を測定するには、採取した処理水を純水(蒸留水)で10倍前後に希釈する必要もある。このため、処理水を残留塩素計で直接測定できないから、塩素系滅菌剤の注入量を残留塩素計によって自動制御することは困難である。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、ごみ焼却場などの排水処理設備において生じる排水を再利用水として適用可能な処理水になるように滅菌する際に、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系滅菌剤の注入量を自動制御する方法と装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明にかかる排水への滅菌剤注入量の自動制御方法は、排水処理設備で生じる排水を処理して再利用したり放流したりするために次亜塩素酸ソーダなどの塩素系滅菌剤の注入量を自動制御する方法において、前記排水又はろ過や中和などの処理を施したその処理水に前記塩素系滅菌剤を注入する際に、酸化還元電位差が600mV〜800mVになるように注入量を制御することを特徴としている。
【0011】
上記の構成を有する本発明の滅菌剤注入量の自動制御方法によれば、滅菌した排水又は処理水の残留塩素濃度が高くて残留塩素計では測定できない場合に、塩素系滅菌剤の注入量が適正であるか否かを酸化還元電位差に基づいて測定することができる。そして、残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係から酸化還元電位差が600mV以上で排水又は処理水の水質が安定することを目視等で確認しており、酸化還元電位差が600mV〜800mVになるように塩素系滅菌剤の注入量を制御することによって排水又は処理水の水質に拘わらず滅菌状態を適正に維持できる。
【0012】
上記の目的を達成するために本発明にかかる排水への滅菌剤注入量の自動制御装置は、排水処理設備で生じる排水を処理して再利用したり放流したりするために次亜塩素酸ソーダなどの塩素系滅菌剤の注入量を自動制御する装置において、前記排水を中和したりろ過したりするなどした処理水を貯留する処理水槽に、前記塩素系滅菌剤を溶解した滅菌剤溶液のタンクから滅菌剤溶液の注入管を接続し、該注入管に注入ポンプを介設し、処理水の酸化還元電位差を測定する酸化還元電位差計(ORP計)を前記処理水槽に配備し、前記酸化還元電位差計をコントローラを介して前記注入ポンプに接続し、前記酸化還元電位差計により測定される酸化還元電位差が600mV〜800mVになるように前記コントローラにて前記滅菌剤溶液の注入量を制御することを特徴としている。
【0013】
本発明の滅菌剤注入量の自動制御装置によれば、上記した自動制御方法を確実に実施することができる。
【0014】
請求項3記載の自動制御装置は、前記コントローラは酸化還元電位差計の出力を反転するリバース変換器を備え、反転した酸化還元電位差計(ORP計)の出力値に応じて前記コントローラにて前記注入ポンプの駆動能力(吐出量)を0%〜100%の範囲で制御することを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の滅菌剤注入量の自動制御装置によれば、ORP計の出力を反転させてコントローラに入力し、注入ポンプの吐出量を制御するので、制御が簡単になる。
【0016】
請求項4記載の自動制御装置は、前記処理水槽が曝気用ディフューザを備えており、処理水槽の上流側に設けられるろ過水槽から処理水槽へ供給するろ過ポンプの駆動に連動して前記注入ポンプを駆動するとともに、前記ろ過ポンプの駆動時以外に前記注入ポンプを間欠駆動するためのタイマーを設けたことを特徴としている。
【0017】
滅菌剤注入量の自動制御装置によれば、処理水槽内の処理水が曝気の気泡で十分に撹拌されるので、滅菌剤が処理水にほぼ均一に混合され、また注入ポンプの停止時に曝気により処理水中の滅菌剤が外部に放散されて減少することがあっても、タイマーで注入ポンプを間欠運転し、滅菌剤を自動注入して補充するので、処理水の滅菌処理が確実に保証される。
【0018】
請求項5記載の自動制御装置は、前記注入ポンプを介設した滅菌剤溶液の注入管を、前記処理水槽の他、前記排水を中和する中和槽および前記処理水槽から再利用先へ供給する配管にそれぞれ接続し、前記排水の供給ポンプおよび前記再利用先への処理水の供給ポンプにそれぞれ連動して注入ポンプを駆動することを特徴としている。
【0019】
請求項5記載の自動制御装置によれば、処理水槽内の処理水だけでなく、中和槽および処理水槽から再利用先へ処理水を供給する配管にも、同時に滅菌剤を自動注入でき、処理水槽を中心にその上流側および下流側の各種機器類にスライムが発生するのを防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる滅菌剤注入量の自動制御装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は処理水槽にろ過処理水を供給する過程で滅菌剤溶液の注入量を自動制御する装置をふくむ自動滅菌処理設備を示すフロー図である。
【0022】
図1において、処理水槽2には滅菌処理水zが貯留されており、この滅菌処理水zに滅菌剤溶液xを自動制御により注入して滅菌処理する滅菌剤注入量自動制御装置をふくむ自動滅菌処理設備1が配備されている。この自動滅菌処理設備1として、ろ過処理水源(図示せず)からろ過処理水yを供給する配管3の一端が接続され、配管3には供給ポンプ(ろ過ポンプ)4が介設されている。この配管3の途中に滅菌剤の注入管5の一端が接続されている。注入管5の他端は注入ポンプ6に接続され、この注入ポンプ6は下部の液中ピストンポンプ部6aを滅菌剤貯留タンク7の滅菌剤溶液x中に浸漬している。滅菌剤溶液xに、本例では次亜塩素酸ソーダ(ナトリウム)溶液を使用している。上記のろ過処理水yは、ろ過処理前に中和槽(図7の符号21を参照)で中和されている。なお、ろ過処理水yは、ごみ焼却場においてごみ収集車の洗車排水や床洗排水などの排水を原水としている。
【0023】
処理水槽2の底部付近に同処理水zの取り出し口2aが設けられ、この取り出し口2aにORP(酸化還元電位差)計測槽8が配管13で接続されている。ORP計測槽8には、薬液洗浄型ORP計9が配装されている。ORP計9には変換器10が接続され、この変換器10にてORP計9により計測されたORP値を電流値に変換する。さらに変換器10がリバース変換器11に接続され、そこで出力値(たとえば4〜20mA)を反転(20〜4mA)させる。
【0024】
また、リバース変換器11は注入ポンプ6用のインバータ方式のコントローラ12に接続されている。注入ポンプ6はろ過処理水yの供給ポンプ4の運転に連動して駆動されるように、ポンプコントローラ12へ供給ポンプ4の運転/停止の信号を送るように電気信号線14が配線されている。
【0025】
処理水槽2内の底部付近にディフューザー15を配管し、空気供給管16を接続している。曝気ブロワー17から空気を吸い込んでディフューザー15から滅菌処理水z中に空気を吹き出し曝気している。これにより、処理水槽2内の滅菌処理水zは撹拌され、次亜塩素酸ソーダ溶液も均一に混合される。このような曝気システムを採用した関係上、滅菌した処理水z中に混合された次亜塩素酸ソーダの固気分が処理水槽2の外部へ放散され、残留塩素濃度が低下するおそれがある。そこで、供給ポンプ4の運転に連動して注入ポンプ6を駆動するのに加えて、タイマー18により供給ポンプ4の停止時にも間欠運転するようにした。
【0026】
本実施形態では、滅菌処理水zの残留塩素濃度が高すぎて従来の残量塩素計が使用できないことから、上記したORP計9にて計測される酸化還元電位差を基準に、つまり酸化還元電位差をパラメータに使用している。このため、残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係を求める必要が生じた。そこで、処理水槽2に貯留されている滅菌処理水zの水質を目視で観察し、水質の良し悪しを確認した。また、残留塩素濃度は残留塩素計の測定範囲をオーバーした際には、純水により採取した滅菌処理水zを希釈し、残留塩素計にて測定した。
【0027】
このようにして残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係を求めた結果、つぎのことが確認された。すなわち、
図2に示すように、残留塩素濃度5〜20mg/lでORP値が700〜750mVになる。またORP値が600mV以上に上がると、滅菌処理水zの水質が安定する。そして、ORP値が800mV前後になると飽和してしまうために、それ以上は数値が上がらなくなる。このため、残留塩素濃度が30〜40mg/l以上に上昇しても、ORP値はほぼ一定(800弱mV)に保たれる。なお図2に示すように、残留塩素濃度およびORP値がやや高めに表れているが、これは処理水槽2内の処理水zに滅菌剤溶液xが十分に均一に混合されていない部分があるからと推測される。また、図2中の◎○△は水質を表すもので、◎は優、○は良、△は不可である。
【0028】
本例では、図3に示すように、上記ORP計9による出力値4mA=400mV(ORP値)、同出力値20mA=900mV(ORP値)にそれぞれ該当している。また、上記ORP計9による出力値4mA−20mAをリバース変換器11で出力値20mA−4mAに反転させてポンプコントローラ12へ入力しているが、ポンプコントローラ12では入力値20mAのときに注入ポンプ6の最大運転能力(最大吐出量)の100%、4mAのときに同0%、12mAのときに同50%に、注入ポンプ6の吐出量比率が制御されるように設定した。
【0029】
さらに、残留塩素濃度が0mg/l若しくは0mg/l近くまで低下したときに警報を発するORP値を、図2のグラフから300mVに設定した。
【0030】
以上のようにORP計9により測定され出力される出力値に基づくポンプコントロール12による具体的な数値を設定して、図1に示す処理水槽2に供給されるろ過処理水yに次亜塩素酸ソーダ溶液xを自動注入する滅菌剤注入量自動制御装置を備えた自動滅菌処理設備1を稼働した。
【0031】
ここで、自動滅菌処理設備1の動作について図1を参照して説明する。図1に示すように、ろ過処理水源から供給ポンプ4により配管3を通してろ過処理水yが処理水槽2に供給される。同時に、次亜塩素酸ソーダ溶液xの貯留タンク7から次亜塩素酸ソーダ溶液xが注入管5より注入ポンプ6にて、配管3中のろ過処理水yに注入される。このため、次亜塩素酸ソーダ溶液xを処理水槽2内に直接注入するのに比べて、ろ過処理水yに対し均一に混合される。また、処理水槽2内では、ディフューザー15から吹き出す曝気用空気によって撹拌され、混合される。処理水槽2内に貯留されている滅菌処理水zは、配管13を通してORP計測槽8へも供給されており、この滅菌処理水zのORP値がORP計9にて測定されている。
【0032】
ORP計9にて4〜20mAが出力されるが、変換器10での変換後にリバース変換器11で反転してポンプコントローラ12へ入力される。ポンプコントローラ12により注入ポンプ6の吐出量が制御され、配管3中のろ過処理水yに注入される次亜塩素酸ソーダ溶液xの注入量が自動制御される。なお、供給ポンプ4の停止時には、タイマー18でポンプコントローラ12を介して注入ポンプ6が駆動され、注入管5より処理水槽2に次亜塩素酸ソーダ溶液xが注入されるが、この状態でもORP計測槽8中の処理水zのORP値がORP計9にて測定され、ORP計9にて出力される出力値がリバース変換器11で反転されてポンプコントローラ12へ入力され、注入ポンプ6の吐出量が制御される。
【0033】
以上のようにして次亜塩素酸ソーダ溶液xの注入量が自動制御される。この自動制御による滅菌処理過程で、残留塩素濃度と酸化還元電位差の関係を調べた。この関係を図4に示している。図4に示すように、処理水zの水質はORP値が600mV以上で安定し、700mV前後に維持された。図4からも確認されるように、処理水槽2内の滅菌処理水zの残留塩素濃度も10〜20ppm(mg/l)前後と適正に維持された。なお、図2および図4に示すように酸化還元電位差および残留塩素濃度のいずれもやや高く表れているが、これは処理水槽2内の処理水zに次亜塩素酸ソーダ溶液が全体的に見て均等に混合されておらず、高く表示される傾向があるためである。
【0034】
ところで、2ヶ月にほぼ1回の割合で焼却炉の運転を停止し点検を終了した後に、焼却炉の立ち上げをするが、この立ち上げ時に警報が発生した。そこで、原因を調査したところ、下記のことが判った。
【0035】
焼却炉の停止時に、空気中の酸素により焼却炉に付属のボイラー内部の腐食を防止するため、清缶剤であるヒドラジン(N2H4)をボイラー水に溶解し、ボイラー内に満杯にしている。このボイラー水の約半分の量を焼却炉の立ち上げ時にブローし、排水処理設備に流入させている。この結果、下記の反応式から判るように、ヒドラジンが次亜塩素酸ソーダと酸化還元反応を起こして次亜塩素酸ソーダが消費され、酸化還元電位差が低下したからである。
【0036】
N2H4+2NaOCl→N2+2NaC+2H2O
なお、念のために、焼却炉立ち上げ前のボイラー水ブロー時に、ボイラーブロー水槽、純水廃液槽、中和槽、再利用水槽の各水槽における酸化還元電位差の変化を測定したが、この結果を図5に示している。図5から明らかなように、ボイラー水をブローした直後は酸化還元電位差が0mV以下になっているが、日時の経過により上昇する。同日の1回目は午前に、2回目は午後に測定した数値である。
【0037】
図6は、本発明にかかる自動滅菌処理設備の第2実施形態を示すフロー図である。本実施形態の滅菌剤注入量自動制御装置をふくむ自動滅菌処理設備1’が上記設備1と相違するところは、上記注入ポンプ6の最大吐出容量が50ml/minの1台であったのに対し、300ml/minと吐出容量の大きな注入ポンプ19を滅菌剤貯留タンク7に追加設置して同注入ポンプ19を介設した注入管5’を配管3に接続し、専用のコントローラ20を設けて次亜塩素酸ソーダ溶液xの注入量を即時に増大できるようにしたことである。そして、その注入ポンプ19は、処理水槽2内の滅菌処理水zのORP値が550mVに低下したときに起動するようにしたことである。このときの注入ポンプ19の吐出量比率は、専用のポンプコントローラ20の設定を注入ポンプ6のコントローラ12と共通にしているので、注入ポンプ6と同じである。
【0038】
本実施形態の自動滅菌処理設備1’によれば、焼却炉の立ち上げ時に上記の処理水槽2内の滅菌処理水zがボイラー水ブローの影響を受けてORP値が低下しても、550mVで大吐出量の注入ポンプ19が起動し、次亜塩素酸ソーダ溶液xを即刻注入するので、ORP値が300mVまで低下することはなく、警報を発する事態になることがない。
【0039】
図7は、本発明にかかる自動制御装置の第3実施形態を示すフロー図である。本実施形態の滅菌剤注入量自動制御装置をふくむ自動滅菌処理設備1”では、処理水槽2内の滅菌した処理水zを再利用先へ供給するための配管22を処理水槽2に接続し、供給ポンプ(ろ過ポンプ)23により供給するようにしている。このため、配管22に別の注入管25を接続し、滅菌剤貯留タンク7に設置した別の注入ポンプ26で次亜塩素酸ソーダ溶液xを滅菌処理水zに注入するようにしている。
【0040】
また、ろ過処理水源へ排水を供給する前に、いったん中和槽21に供給ポンプ(原水ポンプ)31を介設した配管32にて供給して貯留した排水を中和したのち、図示を省略したろ過水槽およびろ過器を経てろ過するようにしている。中和槽21内の排水が十分に滅菌されていない場合は下流側のろ過器等にスライムが発生するので、さらに別の注入管27を接続し、滅菌剤貯留タンク7に設置したさらに別の注入ポンプ28で次亜塩素酸ソーダ溶液xを中和槽21内の排水に注入するようにしている。中和槽21には、排水を撹拌混合するため、モータ34で回転する撹拌装置33が配備されている。
【0041】
中和槽21に次亜塩素酸ソーダ溶液xを注入するための注入ポンプ28は、排水の供給ポンプ31に連動して運転/停止させるとともに、再利用先へ供給途中の滅菌処理水zに次亜塩素酸ソーダ溶液xを注入するための注入ポンプ26は、供給ポンプ23に連動して運転/停止させる。
【0042】
本実施形態の場合は注入ポンプ6・26・28が3台であり、これらの注入ポンプ6・26・28に対応して3つのコントローラ12・29・30を独立させて設け、各コントローラ12にリバース変換器11をそれぞれ接続している。また、注入ポンプ26・28には最大吐出量を注入ポンプ12と共通の50ml/minのポンプを使用したが、コントローラ29・30による注入ポンプ26・28の吐出量比率をORP値(出力)が4mAのときに80%、12mAのときに40%、20mAのときに0%と、注入ポンプ6に比べて20%低減して次亜塩素酸ソーダ溶液xの注入量を減らした。こうした3つのポンプコントローラの関係を図8に示すもので、図8は処理水のORP値とORP計出力値と各注入ポンプ吐出量との関係を示す線図で、図3に対応している。その他の構成については、上記2つの実施形態と共通するので、共通の部材は同一の符号を付けて表し説明を省略する。
【0043】
上記の構成からなる第3実施形態の自動滅菌処理設備1”について、その動作を図7に基づいて説明する。
【0044】
中和槽21には、ゴミ焼却場の排水処理設備から生じる排水が供給され、塩酸などの酸性溶液あるいは苛性ソーダなどのアルカリ性溶液が注入されることによって中和される。そして、中和された排水は、図示を省略したろ過水槽に貯留され、さらにろ過器を通してろ過された後、上記ろ過処理水yとなって配管3より処理水槽2へ供給ポンプ4にて供給される。この供給途中で、注入管5より次亜塩素酸ソーダ溶液xを注入し、滅菌処理することは上記したとおりである。本例では、処理水槽2から再利用先へ滅菌処理水zを供給する過程で注入管25により注入ポンプ26にて次亜塩素酸ソーダ溶液xを注入し、滅菌処理を再度施している。また、中和槽21内で中和処理される排水にも、注入管27より注入ポンプ28にて次亜塩素酸ソーダ溶液xを注入し、滅菌処理される。これにより、下流側に設置されているろ過器などにスライムが発生して流路を閉塞するのが防止される。
【0045】
いずれの場合も、処理水槽2内の滅菌処理水zの酸化還元電位差をORP計9にて測定し、ポンプコントローラ12・29・30を介して注入ポンプ6・26・28の吐出量が制御されることにより、次亜塩素酸ソーダ溶液xの注入量がそれぞれ自動設定される。
【0046】
上記に3つの実施形態を説明したが、本発明では次のように実施することもできる。
【0047】
▲1▼ 焼却炉の立ち上げが頻繁に行われない場合は、警報の発生を防止するための大型の注入ポンプ19やそのコントローラ20を省くことができる。
【0048】
▲2▼ 処理水槽のほかに滅菌剤を注入する箇所はとくに限定するものではなく、スライムの発生するおそれのある箇所の有無で決定すればよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明にかかる排水への滅菌剤注入量の自動制御方法とその装置には、次のような優れた効果がある。
【0050】
本発明の自動制御方法は、残留塩素計では測定不可能な残留塩素濃度の高い処理水の滅菌処理を酸化還元電位差に基づいて測定することにより、確実な滅菌処理を施すことができ、また残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係をあらかじめ求めて被処理水である排水の水質に応じて、塩素系滅菌剤を適量だけ注入できるようにしたから、滅菌剤を必要以上に注入しないので無駄がなく、また残留塩素濃度が高くなりすぎて機器類の腐食を起こしたりしない。
【0051】
本発明の自動制御装置は、あらかじめ求めた残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係から酸化還元電位差を600〜800mVの範囲内になるようにコントローラで注入ポンプを制御し、滅菌剤の注入量を自動的に制御するようにしたから、排水の水質が変化してもその変化に応じて適正な残留塩素濃度に維持でき、確実な滅菌処理が保証される。また、酸化還元電位差計、コントローラのほか、滅菌剤溶液タンクおよび注入ポンプ、注入管などで構成されるから、構成が複雑にならず、比較的低コストで製造される。
【0052】
さらに、請求項3に記載のように、リバース変換器を用いてORP値を反転させて注入ポンプの吐出量を制御することにより、制御が簡単になり、滅菌剤の注入量を正確に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】処理水槽にろ過処理水を供給する過程で滅菌剤溶液の注入量を自動制御する装置をふくむ自動滅菌処理設備の第1実施形態を示すフロー図である。
【図2】滅菌剤の手動注入時における残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係を示す線図である。
【図3】本発明にかかる処理水のORP値とORP計出力値と注入ポンプ6の吐出量との関係を示す線図である。
【図4】本発明にかかる滅菌剤の自動注入時における残留塩素濃度と酸化還元電位差との関係を示す線図である。
【図5】焼却炉立ち上げ時におけるボイラーブロー水槽、純水廃液槽、中和槽および再利用水槽の各水槽における酸化還元電位差の変化を示す図面である。
【図6】本発明にかかる自動制御装置をふくむ自動滅菌処理設備の第2実施形態を示すフロー図である。
【図7】本発明にかかる自動制御装置をふくむ自動滅菌処理設備の第3実施形態を示すフロー図である。
【図8】本発明にかかる処理水のORP値とORP計出力値と3台の各注入ポンプ吐出量との関係を示す線図で、図3に対応している。
【符号の説明】
1・1’・1”自動滅菌処理設備
2 処理水槽
3・13・22・32 配管
4・23・31 供給ポンプ
5・25・27 滅菌剤の注入管
6・28・29 注入ポンプ
7 滅菌剤貯留タンク
8 ORP(酸化還元電位差)計測槽
9 薬液洗浄型ORP計
10 変換器
11 リバース変換器
12・29・30 ポンプコントローラ
14 電気信号線
15 ディフューザー
16 空気供給管
17 曝気ブロワー
18 タイマー
x 滅菌剤溶液(次亜塩素酸ソーダ溶液)
y ろ過処理水
z 滅菌処理水
Claims (5)
- 排水処理設備で生じる排水を処理して再利用したり放流したりするために次亜塩素酸ソーダなどの塩素系滅菌剤の注入量を自動制御する方法において、
前記排水又はろ過や中和などの処理を施したその処理水に前記塩素系滅菌剤を注入する際に、酸化還元電位差が600mV〜800mVになるように注入量を制御すること
を特徴とする滅菌剤注入量の自動制御方法。 - 排水処理設備で生じる排水を処理して再利用したり放流したりするために次亜塩素酸ソーダなどの塩素系滅菌剤の注入量を自動制御する装置において、
前記排水をろ過したり中和したりするなどした処理水を貯留する処理水槽に、前記塩素系滅菌剤を溶解した滅菌剤溶液のタンクから滅菌剤溶液の注入管を接続し、該注入管に注入ポンプを介設し、
処理水の酸化還元電位差を測定する酸化還元電位差計を、前記処理水槽に配備し、
前記酸化還元電位差計をコントローラを介して前記注入ポンプに接続し、
前記酸化還元電位差計により測定される酸化還元電位差が600mV〜800mVになるように前記コントローラにて前記滅菌剤溶液の注入量を制御すること
を特徴とする滅菌剤注入量の自動制御装置。 - 前記コントローラは酸化還元電位差計の出力を反転するリバース変換器を備え、反転した酸化還元電位差計の出力値に応じて前記コントローラにて前記注入ポンプの駆動能力を0%〜100%の範囲で制御すること
を特徴とする請求項2記載の滅菌剤注入量の自動制御装置。 - 前記処理水槽が曝気用ディフューザを備えており、処理水槽の上流側に設けられるろ過水槽から処理水槽へ供給するろ過ポンプの駆動に連動して前記注入ポンプを駆動するとともに、
前記ろ過ポンプの駆動時以外に前記注入ポンプを間欠駆動するためのタイマーを設けたこと
を特徴とする請求項2又は3記載の滅菌剤注入量の自動制御装置。 - 前記注入ポンプを介設した滅菌剤溶液の注入管を、前記処理水槽の他、前記排水を中和する中和槽および前記処理水槽から再利用先へ供給する配管にそれぞれ接続し、
前記排水の供給ポンプおよび前記再利用先への処理水の供給ポンプにそれぞれ連動して注入ポンプを駆動すること
を特徴する請求項2〜4のいずれか記載の滅菌剤注入量の自動制御装置。
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