JP2004221323A - 基板保持装置、露光装置、及びデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ウエハホルダ70では、その吸着力が及ぶ領域の境界近傍でウエハWを支持する複数のピン32B,32Cの各々の先端部の面積が、ピン32Aの先端部の面積よりも小さくなっている。このようにすれば、吸着力が低下した境界近傍でも、ウエハWに対するピン32B,ピン32Cそれぞれの吸着度を高めることができるようになり、プロセスを経て様々な形に変形したウエハWであっても、その変形が前述の吸着力によって矯正されたときに、その部分をより深く吸着させることができるので、ウエハWに対する矯正力を高め、その平面精度を高く維持した状態でウエハWを保持することができる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板保持装置、露光装置及びデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、平板状の基板を保持する基板保持装置、該基板保持装置を備える露光装置、及び該露光装置を用いて露光を行うデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下「レチクル」と総称する)に形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、「ウエハ」と総称する)上に転写する露光装置、例えばステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)や、このステッパに改良を加えたステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ)等の逐次移動型の投影露光装置が主として用いられている。
【0003】
このような投影露光装置においては、投影光学系の光軸に直交する2次元平面内を少なくとも移動可能なウエハステージが設けられており、このウエハステージ上に固定されたウエハホルダにより、ウエハが真空吸着或いは静電吸着等により保持されている。このようなウエハホルダでは、ウエハとの間に異物の挟み込みが生じると、ウエハ表面に凹凸が生じて露光の際の焦点ずれが発生し、ひいては転写精度が低下してしまう可能性がある。
【0004】
また、このような投影露光装置では、回路パターンの微細化の要求に対応するため、解像力の向上が至上命題となっている。そのため、投影光学系の開口数(N.A.)を大きくする大N.A.化が進んでいるが、その大N.A.化は、投影光学系の焦点深度の狭小化を招く。したがって、投影光学系の大N.A.化に対応するためには、ウエハホルダとウエハとの間の異物の挟み込みを回避することが重要となる。
【0005】
最近では、ウエハホルダとウエハとの間の異物の挟み込みを回避するため、様々なウエハホルダが提案されている。例えば、特許文献1などに開示されている多数のピン状の支持部材(以下、「ピン」という)によりウエハを支持するピンチャック式のウエハホルダが比較的多く用いられるようになってきた。かかるピンチャック式のウエハホルダによれば、複数のピンでウエハを支持するようになるため、ウエハホルダとウエハとの接触面積を著しく小さくし、前述の異物挟み込みの発生をほぼ確実に抑制することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平1−129438号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウエハはプロセスの進行に伴って次第に変形する。そのため、複数層のパターンの重ね合わせ転写を行う露光装置のウエハホルダには、ベアウエハだけでなく様々なプロセスを経てある程度変形したウエハが保持されることとなる。したがって、前述の焦点深度の狭小化に対応するためには、ピンチャック式のウエハホルダにおいても、プロセスの進行により変形したウエハを矯正、或いはウエハの平面精度を維持したうえでそのウエハを保持するのが望ましい。なお、ここで、「プロセス」とは、露光工程などを含む半導体素子等の製造プロセスを指す。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、平面精度を高く維持した状態で基板を保持することができる基板保持装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、露光精度の向上を図ることができる露光装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第3の目的は、高集積度のデバイスの生産性を向上することができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、平板状の基板(W)を保持する基板保持装置(70)であって、所定領域を有する本体部(26)と;前記所定領域上に離間して設けられ、前記所定領域上方の略同一平面内に配置されたそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の第1支持部(32A)と;前記本体部における前記所定領域の境界近傍にそれぞれ離間して設けられ、前記各第1支持部とともにそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の第2支持部(32B,32C)と;を備え、前記各第1支持部の先端部の面積よりも、前記各第2支持部の先端部の面積が小さいことを特徴とする基板保持装置(70)である。
【0012】
平板状の基板を保持する基板保持装置では、真空吸着や静電吸着等の作用により基板を吸着することによって、その基板を保持するものが多く用いられている。しかし、このような装置では、基板に対しその吸着力が及ぶ所定領域の境界付近、例えば基板の外縁部や基板の脱着機構などが存在する中心部近傍では、その吸着力が他の部分の吸着力(本来維持されるべき吸着力)に比べて弱くなる傾向が見られる。そこで、本発明の基板保持装置では、その境界近傍で基板を支持する複数の第2支持部の各々の先端部の面積を、本来の吸着力によって基板を支持する複数の第1支持部の各々の先端部の面積よりも小さくする。このようにすれば、吸着力が低下した境界近傍でも、基板に対する各第2支持部の吸着度を高めることができるようになる。したがって、プロセスを経て様々な形に変形した基板(前述の境界付近の部分が反りあがったり、盛り上がったりしている基板)であっても、その変形が前述の吸着力によって矯正されたときに、その部分をより深く吸着させることができるので、基板に対する矯正力を高め、その平面精度を高く維持した状態で基板を保持することができる。
【0013】
この場合、請求項2に記載の基板保持装置のごとく、前記各第1支持部の先端部に対する前記各第2支持部の先端部の面積比が、支持対象である前記基板の変形に応じて決定されていることとすることができる。基板の外縁部や脱着機構などが存在する中心部近傍において必要とされる基板に対する矯正力の大きさは、保持される基板の変形状態にも左右される。したがって、第1支持部の先端部に対する第2支持部の先端部の面積比は、その基板の変形に応じて決定されているのが望ましい。
【0014】
上記請求項1又は2に記載の基板保持装置において、請求項3に記載の基板保持装置のごとく、前記各第2支持部は、その先端部の大きさが0.2mm程度以下であることとすることができる。
【0015】
上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項4に記載の基板保持装置のごとく、前記各第1支持部の先端部及び前記各第2支持部の先端部は略円形であることとすることができる。
【0016】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項5に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が部分的に異なることとすることができる。
【0017】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項6に記載の基板保持装置のごとく、前記所定領域の外周に設けられた第1隔壁(28)と、前記基板を着脱するための着脱機構(34a,34b,34c)を突出及び退避可能とするために前記所定領域に囲まれた領域に形成された開口部(84)を取り囲む第2隔壁(35A,35B,35C)との少なくとも一方をさらに備え、前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上及び前記第2隔壁上の少なくとも一方に設けられていることとすることができる。
【0018】
この場合、請求項7に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上及び前記第2隔壁上にそれぞれ設けられ、前記第1隔壁上の前記各第2支持部の先端部の面積と、前記第2隔壁上の前記各第2支持部の先端部の面積とが互いに異なるように設定されていることとすることができる。
【0019】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項8に記載の基板保持装置のごとく、前記所定領域の外周に設けられる第1隔壁を更に備え、前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上に設けられていることとすることができる。
【0020】
この場合、請求項9に記載の基板保持装置のごとく、前記本体部に対して前記基板を着脱する着脱機構と前記本体部とを相対移動するために前記所定領域に形成される開口部を取り囲む第2隔壁を更に備え、前記複数の第2支持部は前記第2隔壁上にも設けられていることとすることができる。
【0021】
上記請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項10に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、その一部に対して残りが前記所定領域から離れる方向に関して離間して設けられていることとすることができる。
【0022】
この場合、請求項11に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域から離れる方向に関して異なることとすることができる。
【0023】
この場合、請求項12に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域に最も近い一部で最大となることとすることができる。
【0024】
上記請求項11又は12に記載の基板保持装置において、請求項13に記載の基板保持装置のごとく、前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域から離れるにしたがって小さくなることとすることができる。
【0025】
上記請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板保持装置において、請求項14に記載の基板保持装置のごとく、前記各第1支持部の側面には、段差が形成されていないこととすることができる。
【0026】
請求項15に記載の発明は、平板状の基板(W)を保持する基板保持装置(70)であって、所定領域を有する本体部(26)と;前記所定領域上に離間して設けられ、前記所定領域上方の略同一平面内に配置されたそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の支持部(32A,32B,32C)と;を備え、前記複数の支持部の少なくとも一部の側面には段差が形成されていないことを特徴とする基板保持装置(70)である。
【0027】
基板を支持する複数の支持部の側面に段差が設けられていた場合には、その段差に異物が付着しやすくなり、その異物によって基板が押し上げられその基板が変形し易くなる。請求項15に記載の基板保持装置では、基板を支持する複数の支持部のうちの少なくとも一部の支持部の側面には段差が設けられていないので、その支持部には異物が付着しにくくなり、結果的に、平面精度を高く維持した状態で基板を保持することができるようになる。
【0028】
請求項16に記載の発明は、パターンを、投影光学系(PL)を介して基板(W)上に転写する露光装置であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板保持装置(70)を備え、前記基板保持装置によって保持された基板に、前記パターンを、前記投影光学系を介して転写することを特徴とする露光装置(100)である。
【0029】
これによれば、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板保持装置によって基板が保持されているため、その基板がその平面精度を高く維持するように支持される。そして、その平坦度良く支持された基板に対してパターンが転写される。したがって、基板上の露光領域(被露光領域)を、投影光学系の焦点深度内に高精度に合致させることが容易となり、デフォーカスに起因するパターンの転写精度の劣化が殆どない、高精度な露光が可能となる。
【0030】
この場合、請求項17に記載の露光装置のごとく、前記各第1支持部の先端部に対する前記各第2支持部の先端部の面積比が互いに異なる複数の前記基板保持装置を備えることとすることができる。
【0031】
この場合、請求項18に記載の露光装置のごとく、複数の前記基板保持装置の中から選択された基板保持装置を、前記パターンの転写位置に搬送する搬送系をさらに備えることとすることができる。かかる場合には、基板保持装置を手動で転写位置に設置する必要がなくなるため、その作業を行う作業者の負担が軽減されるとともにその設置に要する時間を短縮することができる。
【0032】
上記請求項17又は18に記載の露光装置において、請求項19に記載の露光装置のごとく、前記基板の変形に応じた前記面積比を算出する算出装置をさらに備えることとすることができる。
【0033】
上記請求項17〜19のいずれか一項に記載の露光装置において、請求項20に記載の露光装置のごとく、複数の前記基板保持装置の中から、前記基板の変形に応じた前記面積比を有する基板保持装置を選択する選択装置をさらに備えることとすることができる。かかる場合には、複数の基板保持装置の中から、基板保持装置を自動的に選択することができるようになるため、その作業を行う作業者の負担を軽減することができるとともに、その選択のために要する時間を短縮することができる。
【0034】
請求項21に記載の発明は、パターンを、投影光学系(PL)を介して基板(W)上に転写する露光装置であって、請求項15に記載の基板保持装置(70)を備え、前記基板保持装置によって保持された基板に、前記パターンを、前記投影光学系を介して転写することを特徴とする露光装置(100)である。
【0035】
これによれば、請求項15に記載の基板保持装置によって基板が保持されているため、基板との間に異物を挟む確率を低減して基板が平坦度良く支持され、請求項16に記載の露光装置と同様に、高精度な露光が可能となる。
【0036】
請求項22に記載の発明は、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、前記リソグラフィ工程では、請求項16〜21のいずれか一項に記載の露光装置(100)を用いて露光を行うデバイス製造方法である。
【0037】
これによれば、請求項16〜21のいずれか一項に記載の露光装置によって露光が行われるため、デフォーカスに起因するパターンの転写精度の劣化が殆どない高精度な露光が可能となるので、高集積度のデバイスの生産性を向上することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図5(B)に基づいて説明する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置であり、照明系10、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、露光対象である基板としてのウエハWが搭載されるステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。
【0040】
照明系10は、例えば特開平6−349701号公報などに開示されるように、光源、オプティカル・インテグレータ(フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)あるいは回折光学素子等)などを含んで構成される照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、レチクルブラインド、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。
【0041】
この照明系10は、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域をエネルギビームとしての照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(出力波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(出力波長193nm)、あるいはF2レーザ光(出力波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。照明光ILとして、超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)を用いることも可能である。
【0042】
レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含む不図示のレチクルステージ駆動部によって、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここではY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0043】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報は主制御装置20に供給される。主制御装置20は、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部(不図示)を介してレチクルステージRSTを駆動制御する。
【0044】
投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックで所定の縮小倍率(例えば1/4又は1/5)を有する屈折光学系が使用されている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルRの照明領域が照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分倒立像)が、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上で、照明領域と実質的に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。
【0045】
ステージ装置50は、ウエハステージWST、該ウエハステージWST上に設けられたウエハホルダ70等を備えている。ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置され、リニアモータ、ボイスコイルモータ(VCM)等から成る不図示のウエハステージ駆動部により、XY平面内方向及びZ軸方向に移動可能であり、XY面に対する傾斜方向(X軸回りの回転方向(θx方向)及びY軸回りの回転方向(θy方向))に微小駆動可能となっている。すなわち、ウエハステージWSTは、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、ウエハW上の複数のショット領域をそれぞれ露光領域に対して相対移動して走査露光を行うことができるように、走査方向に直交する非走査方向(X軸方向)にも移動可能に構成されており、これにより、ウエハW上の各ショット領域を走査(スキャン)露光する動作と、次ショットの露光のための加速開始位置まで移動(ステップ)する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作が可能となる。なお、ウエハステージ駆動部はXY平面に対する傾斜方向に加えて、ウエハステージWSTをXY面内で微小駆動してもよい。
【0046】
ウエハステージWSTのXY平面内での位置(Z軸回りの回転(θz回転)を含む)は、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」と略述する)18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハ干渉計18は、測長軸を複数有する多軸干渉計であり、これらの干渉計によって、ウエハステージWSTの回転(θz回転(ヨーイング)、Y軸回りの回転であるθy回転(ピッチング)、及びX軸回りの回転であるθx回転(ローリング))が計測可能となっている。
【0047】
ウエハ干渉計18によって検出されたウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は主制御装置20に供給される。主制御装置20は、ウエハステージWSTの上記位置情報(又は速度情報)に基づき、不図示のウエハステージ駆動部を介してウエハステージWSTの位置を制御する。
【0048】
さらに、ウエハステージWSTは、ウエハWを保持する基板保持装置としてのウエハホルダ70を例えば後述するように、真空吸着により固定可能となっている。図2には、ウエハホルダ70を+Z側からみたときの平面図が示されており、図3には、ウエハホルダ70のA−A線断面図が示されている。図2では、ウエハホルダ70上には、ウエハWが保持されていないが、図3では、ウエハホルダ70上にウエハWが保持される直前の状態となっている(具体的には、後述するセンタアップ34a,34b,34cに保持された状態となっている)。ウエハホルダ70は、図2に示されるように、円形板状の本体部としてのベース部26、該ベース部26の上面(図2における紙面手前側の面)の中央部の所定領域に離間して設けられた複数の第1支持部としての突起状のピン32A,32A,……、これら複数のピン32Aが配置された所定領域を取り囲む状態で外周縁近傍に設けられた環状の第1隔壁としての凸部(以下、「リム部」と称する)28等を備えている。リム部28上には、複数の第2支持部の一部としての突起状のピン32B,32B, ……、がそれぞれ離間して設けられている。ピン32A,32Bは、図4(A),図4(B)に示されるように、先端部に近づくにつれて細くなるテーパ形状であって、それぞれの先端部が略同一平面内に位置するほぼ円形の平面となっており、ピン32Aの先端部の半径aは、ピン32Bの先端部の半径bよりも長くなっている。
【0049】
図2に戻り、ベース部26の中央部近傍には、ほぼ正三角形の各頂点の位置に上下方向(図2における紙面直交方向)の3つの貫通孔(開口部)84が、ピン32Aと干渉しない状態で形成されている。これらの貫通孔84それぞれには、円柱形状を有する上下動ピン(以下、「センタアップ」と称する)34a,34b,34cが挿入されており、これら3つのセンタアップ34a〜34cは、不図示の上下動機構を介して、上下方向(Z軸方向)に同時に同一量だけ、昇降(上下動)可能となっている。図3には、ウエハWが、センタアップ34a〜34cに支持された状態が図示されている(ただし、紙面より手前に配置されているセンタアップ34cは、図示されていない)。ウエハロード、ウエハアンロード時には、センタアップ34a〜34cが前述の上下動機構により駆動されることで、センタアップ34a〜34cによってウエハWを下方から支持し、あるいは保持した状態で上下動することが可能となっている。
【0050】
センタアップ34a〜34cを取り囲む状態で、センタアップ34a〜34cが挿入された貫通孔84と、ピン32Aが配置された所定領域とを隔てる第2隔壁としてのリム部35A〜35Cが、それぞれ設けられている。それらリム部35A〜35C上にも、第2支持部の一部としての複数の突起状のピン32Cが所定の間隔で設けられている。このピン32Cも、図4(B)に示されるピン32Bと同様に、先端部に近づくにつれて細くなるテーパ形状となっており、それぞれの先端部が略同一平面内に位置する半径bのほぼ円形の平面となっている。ウエハWは、真空吸着時には、複数のピン32Aの先端部と、リム部28及びリム部35A〜35C上に設けられた複数のピン32B,32Cの先端部によって支持される。
【0051】
なお、ウエハホルダ70は、低熱膨張率の材料、例えばセラミックス等のある程度弾性を有する材料より形成されており、全体として円板状のセラミックス(例えば、ショット社のゼロデュア(商品名)、Al2O3又はTiC)等の材料の表面をブラストエッチングすることによって、底面部を構成する円形板状のベース部26と、リム部28,35A〜35C及び複数のピン32A〜32Cとが一体的に形成されたものとなっている。
【0052】
なお、本実施形態では、ピン32Aの側面には、段差が形成されていない。ウエハWを支持するピン32Aの側面に段差が設けられていると、その段差に異物が付着しやすくなり、その異物によってウエハWが押し上げられ、ウエハWが変形し易くなる。ウエハホルダ70では、ウエハWを支持するピン32A〜32Cのうちの少なくとも一部のピン32Aの側面には、段差が設けられていないので、そのピン32Aには異物が付着しにくくなり、結果的に、平面精度を高く維持した状態でウエハWを保持することができるようになる。
【0053】
また、ベース部26の上面には、図2に示されるように、複数の給排気口36が、ベース部26上面の中心部近傍から放射状(ほぼ120°の中心角の間隔を有する3本の半径線の方向)に、所定間隔で形成されている。これら給排気口36も、ピン32Aと干渉しない位置に形成されている。給排気口36は、それらの直下の配管をそれぞれ介してベース部26内部に形成された給排気路38A,38B,38Cにそれぞれ接続され、これらの給排気路38A〜38Cが給排気枝管40a,40b,40cと連通しており、給排気枝管40a〜40cは、給排気本管40dと連通している。なお、給排気枝管40a〜40c、給排気本管40dとで給排気管40を構成し、給排気本管40dは、給排気機構80に接続されている。
【0054】
給排気機構80は、不図示の2台の真空ポンプ及び給気装置を備えている。これらの装置は、不図示のそれぞれの電磁弁(電磁バルブ)を介して給排気本管40dと接続されている。なお、2台の真空ポンプのうち1台は、高速排気用の真空室を介して給排気本管40dと接続されている。また、図示は省略されているが、給排気本管40dの一部には、給排気管40内部の気圧を計測するための気圧計が接続されている。この気圧計による計測値は図1の主制御装置20に供給され、主制御装置20は、気圧計による計測値とウエハWのロード、アンロードの制御情報とに基づいて、各電磁弁の開閉と、各真空ポンプ及び給気装置の動作とを制御するようになっている。なお、これらの動作については、後に更に詳述する。
【0055】
すなわち、本実施形態では、給排気機構80、給排気管40、給排気路38A〜38C、及び給排気口36によって、真空吸着機構が構成されている。
【0056】
前記給排気路38A〜38Cについて、図3に示される給排気路38Aを代表的に採り上げて簡単に説明する。この給排気路38Aは、ベース部26の外周面からベース部26の中心部近傍にかけて半径方向(X軸方向)に沿って形成された幹路88Aと、該幹路88Aから半径方向に所定間隔を隔てて、それぞれ+Z方向に分岐された複数(ここでは5つ)の分岐路86A1〜86A5とから成る通路である。この場合、分岐路86A1〜86A5の上端の開口端それぞれが、前述した給排気口36となっている。なお、残りの2つの給排気路38B,38Cも給排気路38Aと同様の構成となっている。
【0057】
すなわち、ピン32A等によってウエハWが支持された状態で、真空吸着機構による真空吸着動作が開始されると、ウエハWとベース部26、リム部28,35A〜35Cによって囲まれた領域の気体がその給排気機構80の真空ポンプによって、給排気口36、給排気路38A〜38Cを介して吸い出され、その領域が減圧状態となる。すると、大気圧によってウエハWが−Z側に押しつけられ、ウエハホルダ70に真空吸着されるようになる。なお、ウエハWの裏面のうち、ウエハWとベース部26、リム部28、35A〜35Cによって囲まれた領域以外の裏面、すなわち外気圧空間に開放されている部分を外気開放部或いは非吸着部と呼ぶ。本実施形態では、センタアップ34a〜34cによって支持される部分や、リム部28よりも外周側のわずかな部分が外気開放部(非吸着部)に相当する。なお、上述の真空吸着動作については、後に更に詳述する。
【0058】
図1に戻り、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20によってオン・オフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を、光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハW表面での反射光束を受光する受光系60bとから成る斜入射方式の多点焦点位置検出系から成る焦点位置検出系が設けられている。なお、本実施形態の焦点位置検出系(60a、60b)と同様の多点焦点位置検出系の詳細な構成は、例えば特開平6−283403号公報等に開示されている。なお、同公報に記載の多点焦点位置検出系は、ウエハW上の露光領域だけでなく、走査方向のウエハWの起伏を先読みする機能等を有しているが、それらの機能は有していなくても良く、また、照射系60aによって照射される光束の形状は、平行四辺形等の他、別の形状であっても良い。
【0059】
主制御装置20は、後述する走査露光時等に、受光系60bからのデフォーカス信号に基づいて焦点ずれが0となるように、ウエハステージ駆動部(不図示)を介してウエハステージWSTのZ軸方向への移動、及び2次元の傾斜(すなわち、θx,θy方向の回転)を制御する。すなわち、多点焦点位置検出系(60a、60b)を用いてウエハステージWSTの移動等を制御することにより、照明光ILの照射領域(照明領域と結像関係となる露光領域)内で投影光学系PLの結像面とウエハWの表面とを実質的に合致させる、換言すれば投影光学系PLの焦点深度内にウエハWの表面を維持するオートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。
【0060】
次に、本実施形態の露光装置100におけるウエハWのロード及びアンロード動作について説明する。なお、ウエハWのロード前には、給排気機構80の電磁弁は全て閉じられており、給排気機構80による給気動作及び排気動作はオフされているものとする。
【0061】
不図示のウエハローダにより、ウエハWがウエハホルダ70上方に搬送されると、主制御装置20は、不図示の上下動機構を介してセンタアップ34a〜34cを上昇させる。ここでセンタアップ34a〜34cの上昇量が所定量に達すると、ウエハローダ上のウエハWがセンタアップ34a〜34cに受け渡され、ウエハローダがウエハホルダ70上方から退避する。その後、主制御装置20がセンタアップ34a〜34cを下降させることにより、ウエハホルダ70上にウエハWが載置される。
【0062】
上記のようにしてウエハホルダ70上にウエハWが載置されると、主制御装置20は、給排気機構80の高速排気用の真空室に通じる電磁弁を開き、ベース部26、リム部28,35A〜35C、及びウエハWで囲まれた空間内の気体を高速に吸引(排気)する。この際、本実施形態では、スループットの向上を図るため、その真空室を使用することによって吸引圧力を、例えば−800hPa程度と高く(高度な真空状態に)設定している。
【0063】
このようにして、ウエハWを高速に吸着保持することでウエハロードが終了する。その後、主制御装置20は、真空室に通じる電磁弁を閉じ、通常時に使用するもう1つの真空ポンプに通じる電磁弁を開く。これ以降はその真空ポンプの吸引力によりウエハWが吸着保持されることとなる。
【0064】
ここで、ウエハWをウエハホルダ70上に吸着保持してから、ウエハWを取り出すまでの間は、ウエハステージWSTの移動等によりウエハWが横ずれしてアライメント精度等に悪影響を与えない程度の吸引圧力(吸着力)があれば良く、本実施形態では、真空吸着によるウエハWの変形を最小限に抑えるように、通常使用する真空ポンプによる吸引圧力を、例えば−266.5hPa〜−333.2hPa程度と低く(低度の真空状態に)設定している。また、ウエハWをウエハホルダ70上に載置する場合とそれ以外の動作を行う場合とで吸引圧力を異ならせることで、ウエハロードに要する時間を短縮できる。
【0065】
一方、ウエハWをアンロードするに際しては、主制御装置20は、まず、開いていた電磁弁を閉じ、前述の吸着動作をオフする。次いで、主制御装置20は、センタアップ34a〜34cを所定量上昇させるとともに、給気装置に接続された電磁弁(給気弁)を開き、ウエハWの底面に向けて気体を吹き付ける。これにより、上述の真空状態が直ちに解除される。
【0066】
センタアップ34a〜34cが所定量上昇すると、ピン32A等にて支持されているウエハWがセンタアップ34a〜34cに受け渡されるので、不図示のウエハアンローダがウエハWの下側に入り込むとともに、センタアップ34a〜34cが下降することで、センタアップ34a〜34cからウエハアンローダにウエハWが受け渡される。そして、ウエハアンローダがウエハホルダ70上から退避することにより、ウエハアンロードが終了する。このように、ウエハWをウエハホルダ70からアンロードする際にウエハWの底面に気体を吹き付けることにより、ウエハWのアンロード時間が短縮されることになる。
【0067】
なお、照明光ILとして真空紫外光等を使用する場合には、照明光ILの光路上の気体をヘリウム等の照明光に対して透過性の高い気体で置換するが、このような場合には、ウエハWの底面に吹き付ける気体も、照明光ILに対して透過性の高い気体(例えば同一の気体)とすることが望ましい。また、ウエハWの底面に吹き付ける気体の量は、ウエハWが浮き上がらないような微小量とすることが望ましい。
【0068】
上述したような動作によって、ウエハWのウエハホルダ70へのロード、アンロードが実行されるが、その際、ウエハホルダ70にロードされるウエハWは、ベアのウエハだけではなく、様々なプロセスを経たウエハである場合もある。そのようなウエハは、プロセスの影響により、変形している場合が多く、例えば、中心から円周部(外縁部)に向かって反りあがっていたり、中心がその周辺部に比べて盛り上がっていたりする場合がある。このようなウエハの変形は、プロセスが進むにつれて大きくなっていく。
【0069】
本実施形態では、ウエハホルダ70上に配設された複数のピン32A〜32CによってウエハWが支持されるようになるが、前述のように、ピン32B,32Cの先端部の半径は、真空吸着が行われる領域に配設されたピン32Aの先端部の半径よりも小さくなるように設定されている。さらに、本実施形態では、ピン32B,32Cの先端部の半径は、例えば0.1mm程度以下に設定されている。
【0070】
ここで、保持対象となるウエハWがプロセスを経て変形し、ピン32B,32Cの先端部に対応する部分が反りあがって(盛り上がって)いたウエハWをウエハホルダ70上に保持した場合を考える。ウエハWが上述の真空吸着動作によって吸着されると、図5(A)に示されるように、ウエハWが、その吸着力によってピン32Aに支持されるようになるとともに、リム部28とウエハWとの間に生じた負圧により発生する吸着力により、その反りあがりが矯正され、ウエハWがピン32Bにも支持されるようになる。
【0071】
しかしながら、リム部28とウエハWとの間に生ずる負圧は、ピン32Aが設けられている領域とウエハWとの間に生ずる負圧よりも小さくなり、ウエハWに対する吸着力が弱くなる。そこで、本実施形態では、ピン32Bの先端部の面積を、ピン32Aの先端部の面積よりも小さくし、吸着力が低下したリム部28上でも、ウエハWに対するピン32B各々の吸着度を高めることができるようにする。このようにすれば、その変形が前述の吸着力によって矯正されたときに、その部分をより深く吸着させることができるので、ウエハWに対する矯正力を高め、その平面精度を高く維持した状態で保持することができるようになる。
【0072】
また、ウエハWのセンタアップ34a付近でも、図5(B)に示されるように、ウエハWが上述の真空吸着動作によって吸着されたときに、リム部35AとウエハWとの間に生ずる負圧は、ピン32Aが設けられている領域とウエハWとの間に生ずる負圧よりも小さくなり、ウエハWに対する吸着力が弱くなるが、ピン32Cの先端部の面積が、ピン32Aの先端部の面積よりも小さくなっているため、吸着力が低下したリム部35Aの上でも、ウエハWに対するピン32C各々の吸着度を高めることができるようになり、その変形が前述の吸着力によって矯正されたときに、その部分をより深く吸着させることができるので、ウエハWに対する矯正力を高め、その平面精度を高く維持した状態で保持することができるようになる。
【0073】
次に、本実施形態の露光装置100における走査露光動作について簡単に説明する。露光装置100によると、通常のスキャニング・ステッパと同様に、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。主制御装置20は、ウエハWの各ショット領域にレチクルRの回路パターンを、投影光学系PLを介して走査露光方式により縮小転写する。ここで、上記の走査露光中には、ウエハW上の照明領域(露光領域)が投影光学系PLの結像面に実質的に一致した状態で露光が行われる必要があるため、前述した焦点位置検出系(60a、60b)の出力に基づくオートフォーカス、オートレベリングが主制御装置20により実行される。露光装置100では、上述したウエハホルダ70のピン32A〜32Cに関する特徴により、保持するウエハWの平坦度が向上するため、焦点位置検出系(60a、60b)の追従性の範囲内で精度良く走査露光中におけるオートフォーカス、オートレベリングが実行されるので、高精度な露光を実現することができる。
【0074】
以上詳細に説明したように、本実施形態では、そのベース部26上(正確にはリム部28,35A〜35C上)境界近傍で、ウエハWを支持する複数のピン32B,32Cの先端部の面積を、本来の吸着力によってウエハWを支持する複数のピン32Aの先端部の面積よりも小さくする。このようにすれば、吸着力が低下したリム部28,35A〜35C上、すなわち真空吸着機構による吸着力が及ぶ範囲の境界近傍(非吸着部近傍)でも、ウエハWに対するピン32B,32Cの吸着度を高めることができるようになる。したがって、プロセスを経て様々な形に変形したウエハW(リム部28,35A〜35C近傍に対応する部分が反りあがったり、盛り上がったりしているウエハW)であっても、その変形が前述の吸着力によって矯正されたときに、その部分をより深く吸着させることができるので、ウエハWの矯正力を高め、その平面精度を高く維持した状態で保持することができるようになる。
【0075】
また、本実施形態では、異物を挟み込み易いウエハWの外気開放部(非吸着部)近傍のピン32B,ピン32Cの先端部の面積を小さくすることによってウエハWとの間に異物を挟み込んでしまう確率を低減し、ウエハWを、その平面精度を高く維持した状態で保持することができるようになる。
【0076】
なお、本実施形態では、ピン32A〜32Cをテーパ形状とし、それらの先端部を略円形としたが、本発明はこれに限定されず、ウエハWを支持するこれらのピンの少なくとも一部は、例えば円柱形状や、三角錐、四角錐を底面に平行な面で切断したような形状(この切断面がそれぞれの先端部となる)や、他の形状であっても良い。この状態であっても、ピン32B,32Cの先端部の面積は、ピン32Aの先端部の面積よりも小さいことが要求される。このとき、ピン32B,32Cは、その先端部の大きさが、例えば、0.2mm程度以下であることが好ましい。
【0077】
また、ピン32Aの先端部に対するピン32B,32Cの先端部の面積比は、支持対象となるウエハWの変形に応じて決定されているのが望ましい。プロセスを経たウエハWは、真空吸着される領域における吸着力と、その領域の境界近傍の吸着力との違いなどにより変形し、その変形に応じて必要となる矯正力も異なるため、ピン32Aの先端部に対するピン32B,32Cの先端部の面積比をそのウエハWの変形に応じて異なるようにしておけば、ウエハWの形状に適合した形でウエハWを支持することができるようになる。
【0078】
また、本実施形態では、ピン32Aの先端部に対するピン32Bの先端部の面積比と、ピン32Aの先端部に対するピン32Cの先端部の面積比とは必ずしも同じでなくてもよく、保持するウエハWの部分に必要な吸着力に応じた面積比となっていれば良い。例えば、ウエハWの中央部に対して必要な吸着力が、ウエハWの縁に対して必要な吸着力よりも小さい場合には、ピン32Cの先端部の面積と異ならせる、例えばピン32Bの先端部の面積よりもより小さくなるようにしても良い。さらに、本実施形態では、リム部28とリム部35A〜35Cとの両方にピン32B,32Cを設けるものとしたが、リム部28とリム部35A〜35Cとの一方のみにピンを設けるだけでも良い。このとき、ピンが設けられていない他方のリム部ではその上端面を、複数のピン32Aで規定される平面と同一としても良いし、あるいはその平面よりも僅かに低くしても良い。
【0079】
また、リム部28,35A〜35Cが必ずしも配設されている必要はなく、ピン32Aと同様に、ピン32B,32Cをベース部26上にそのまま配設するようにしても良い。この場合でも、ピン32Aの先端部の面積に対して、ピン32B,32Cの先端部の面積は、小さく設定される必要がある。いずれにしても、本実施形態では、ウエハWを支持する領域の境界近傍(外気開放部近傍)でウエハWを支持する部分のピン32B,32Cの先端部の面積を、ピン32Aの先端部の面積よりも小さくすることにより、保持するウエハWの形状に適合するようになっていれば良い。また、この場合、ピン32B,32Cの側面にも段差が形成されていない方が望ましいことは言うまでもない。
【0080】
また、ウエハホルダ70は、その本体の表面を加工してピンやリム部を形成した後、例えばホルダ本体と同一又は異なる材料でその表面をコーティングした上で最終仕上げを行うようにして形成されたものであっても良い。なお、この場合にも、ピン32Aの側面には段差が設けられていないようにするのが望ましい。
【0081】
なお、本実施形態の露光装置100において、ウエハホルダ70のピン32Aの先端部に対するピン32B,32Cの先端部の面積比は固定となっており、1台のウエハホルダ70を備えただけでは、様々なウエハWの変形に対応することは実質的に困難である。そこで、露光装置100或いは、その露光装置100が動作する半導体製造ラインにおける基板処理システムにおいて、ウエハホルダ70と構成がほぼ同一で、前述の面積の比がそれぞれ異なっている何種類かの複数のウエハホルダを、例えばクリーンルーム内の収納装置に用意しておき、それらのウエハホルダの中から露光対象であるウエハWの変形量に応じたウエハホルダを選択し、まず、選択したウエハホルダをウエハステージWST上に装着してから、そのウエハWを保持して上述した走査露光動作を実行するようにしても良い。なお、ここでいう基板処理システムとは、複数の露光装置を備え、例えばリソグラフィ工程の各プロセスを管理するホストコンピュータの指示によって、それらの露光装置が協調して露光動作を実行するリソグラフィシステムのことである。露光装置100は、通常このような基板処理システムの露光装置として、他の露光装置とともに、ホストコンピュータからの指示によりウエハWの露光動作を行っている。
【0082】
なお、複数のウエハホルダから、ウエハWの変形に適合した形状を有するウエハホルダを選択するには、まず、ウエハWの変形量を計測する必要がある。そこで、このような基板処理システムでは、複数の露光装置の他に、プロセスにより変形したウエハWの変形量を計測する計測装置を備えていても良い。このような計測装置で計測されたウエハWの計測量の情報は、例えばその計測装置とホストコンピュータとを繋ぐLANなどのネットワークを介して、ホストコンピュータに送信され、ウエハWのプロセス管理情報とともに、例えばホストコンピュータが管理するデータベース等に格納される。そして、ホストコンピュータにより、あるウエハWの露光を露光装置100で行うような工程が、スケジューリングされたとすると、ホストコンピュータから露光装置100(この装置も前述のネットワークに接続されているものとする)に対し、そのウエハWの露光指示(処理するウエハWの識別番号などがこの指示に含まれている)が送信されるとともに、そのウエハWの変形に関する情報が前述のデータベースから読み出されて送信される。
【0083】
露光装置100の主制御装置20は、受信したウエハWの変形に関する情報を、例えば不図示の表示装置などに表示すると、オペレータは、表示された情報を参照して、複数のウエハホルダの中から、ウエハWの変形に最も適合するウエハホルダを選択し、そのウエハホルダを露光装置100のウエハステージWST上に装着し(前回の露光に用いられたウエハホルダがウエハステージWSTに搭載されたままであればそのウエハホルダと交換)、この装着完了後、露光対象のウエハWが露光装置100に搬送され、そのウエハWの形状に最も適合するウエハホルダ上に真空吸着(ロード)された後、そのウエハWの露光が上述したように実行される。このようにすれば、ウエハWを吸着保持するウエハホルダの形状は、常にプロセスの進行によるウエハWの変形に応じたものとなるので、様々な変形を有するウエハWに対応することができる。
【0084】
なお、上述のウエハホルダの交換等の作業は、オペレータ等の手作業により行っても良いが、主制御装置20による制御により自動化するようにしても良い。図6(A)には、露光装置100の本体チャンバ12をXY面に平行な面に沿って切断した場合の断面図が示されている。図6(A)に示されるように、本体チャンバ12内には、図1に示される主制御装置20や照明系10の一部などを除く各構成要素(図6(A)では、ウエハステージWSTのみ図示されている)の他に、主制御装置20の制御により動作するウエハホルダ搬送系132、ウエハホルダの収納装置116が備えられている。ウエハホルダ搬送系132は、多関節ロボットであり、支柱94に備えられた駆動部92をはじめとする各関節に備えられた回転モータ等の駆動部の回転駆動により、アーム90上に載置されるウエハホルダを搬送する搬送系である。なお、駆動部92の駆動により、アーム90は、上下方向(Z軸方向)にも移動可能となっている。
【0085】
図6(B)には、収納装置116の一例の斜視図が示されている。図6(B)に示されるように、この収納装置116は、土台部120の上に設けられた本体ケース122の中に、14段の収納棚126が設けられており、各収納棚126にそれぞれウエハホルダを格納可能となっている。なお、それぞれのウエハホルダの収納位置は予め決められており、例えば、一番上の棚から順番に、識別番号1番、2番・・・14番のウエハホルダというように収納されるようになっているものとする。また、図6(B)に示されるように、この収納装置116には、パーティクルが除去されたクリーンな雰囲気ガス(例えばドライエア)を収納棚126に供給できるように、給気管130及びエア噴出機構124が設けられているが、これらは設けられていなくても良い。また、収納棚126の数は14段には限られない。
【0086】
なお、図示されていないが、ウエハステージWSTは、ウエハホルダを支持した状態で、上下動可能な上下動機構(ウエハWにとってのセンタアップ34a〜34cに相当)を有しているものとする。
【0087】
前述のように、オペレータが、複数のウエハホルダの中から、ウエハWの変形に最も適合するウエハホルダを選択し、主制御装置20の不図示のキーボード等の入力装置により、選択するウエハホルダを指定すると、主制御装置20は、ウエハホルダの交換作業を実行する。なお、ここでは、ウエハステージWST上には、指定されていたウエハホルダでなく、別のウエハホルダが搭載されているものとする。
【0088】
まず、主制御装置20は、前述の上下動機構を上昇させ、その上下動機構によって、ウエハホルダをウエハステージWSTから浮かせた状態で支持させる。そして、主制御装置20は、ウエハホルダ搬送系132を駆動し、そのアーム90をウエハホルダの下に進入させる(図6(A)では、このときのウエハホルダ搬送系132の状態が2点鎖線(仮想線)で示されている)。この状態で、主制御装置20の指示により、上下動機構を下降させると、ウエハホルダはアーム90に支持される。
【0089】
次に、主制御装置20は、ウエハホルダ搬送系132を駆動して、そのアーム90を、ウエハホルダを支持したまま、収納装置116の前まで移動させる(図6(A)では、このときのウエハホルダ搬送系132の状態が実線で示されている)。そして、主制御装置20の指示により、アーム90が、支持するウエハホルダがかつて収納されていた収納棚126のZ軸方向に関する位置に移動し、アーム90をその収納棚に進入させる。各収納棚126には、アーム90の厚みよりも厚い例えば2枚の板状のスペーサが底面に設置されている。主制御装置20は、アーム90を収納棚126に進入させた後、アーム90を収納棚126に接触しない程度に下降させ、ウエハホルダをそのスペーサに支持させた後、アーム90を収納棚126から退避させる。
【0090】
次に、主制御装置20は、指定されたウエハホルダが収納されている収納棚126の高さにアーム90を移動させ、アーム90をその収納棚126の底面とウエハホルダとの間に進入させ、アーム90をわずかに上昇させて、収納されているウエハホルダを上段の収納棚126に接触させることなくスペーサから浮かせた状態で支持し、アーム90をその収納棚から退避させる。そして、主制御装置20は、アーム90をウエハステージWSTの上に移動させ、前述の上下動機構を上昇させ、アーム90が支持しているウエハホルダを上下動機構によって支持させた後、アーム90を退避させる。そして、主制御装置20の制御により、上下動機構が下降して、ウエハホルダがウエハステージWSTに載置され、ウエハホルダの自動交換が完了する。なお、主制御装置20は、このとき載置しているウエハホルダの識別番号を、後の交換動作のときのために不図示の記憶装置に記憶しておくようにする。また、このシステムでは、ウエハホルダを搬送する専用のウエハホルダ搬送系132を本体チャンバ12内に設置するものとしたが、この搬送系の少なくとも一部を、ウエハWをロード、アンロードするウエハローダ、ウエハアンローダに代行させるようにしても良い。また、収納装置116の各収納棚126に、本体チャンバ12の外部からウエハホルダをオペレータが収納できるように、本体チャンバ12及び収納装置116に開閉扉を設置するようにしても良い。
【0091】
なお、上述の説明では、入出力装置に表示されたウエハWの変形に関する情報に基づいて、オペレータがウエハホルダを選択したが、主制御装置20が、ホストコンピュータから送信されたウエハWの変形に関する情報に基づいて、複数のウエハホルダの中から、自動的にウエハホルダを選択するようにしても良い。例えば、主制御装置20の前述の記憶装置の中に、ウエハWの変形に関する情報と、その変形量に最も適合するウエハホルダの識別番号とが対応付けられたテーブルを記憶しておき、選択装置としての主制御装置20が、ホストコンピュータからウエハWの変形に関する情報を受信すると、その情報に基づいて、そのウエハWの形状に最も合致するウエハホルダをそのテーブルを参照して検出し、上述のウエハホルダ交換動作を行うようにすれば良い。
【0092】
また、このウエハホルダの選択の際に、算出装置としての主制御装置20は、送信されるウエハWの変形に関する情報から、そのウエハWに適合するピン32Aの先端部に対するピン32Bの先端部の面積比と、ピン32Aの先端部に対するピン32Cの先端部の面積比とを算出し、前述の記憶装置に記憶されたウエハホルダの面積比が記憶されているテーブルを参照し、算出された面積比に対応する最適なウエハホルダを選択するようにしても良い。例えば、ウエハWの変形に関する情報に含まれるウエハWの外縁部の反りあがりや盛り上がり量と、ウエハWを矯正するのに要する吸引力を生みだすのに必要な、ピン32Aの先端部に対するピン32Bの先端部の面積比や、ピン32Aの先端部に対するピン32Cの先端部の面積比などとの関係式を求めておき、その関係式に基づいてそれらの面積比を主制御装置20において算出するようにすれば良い。
【0093】
なお、上述の例では、露光装置100内に複数のウエハホルダを用意するとしたが、基板処理システム全体で複数のウエハホルダを管理し、システム内の複数の露光装置で、それらのウエハホルダを共通して用いるようにしても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、主制御装置20は、選択装置、算出装置としての役割を果たすものとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、外付けの装置や、前述のホストコンピュータなどにこれらの役割を与えるようにしても良い。
【0095】
図7には、ウエハホルダ交換を自動的に行う際の制御系のブロック図の一例が示されている。図7に示されるように、ウエハホルダ交換動作の制御系は、主制御装置20を中心に構成されており、主制御装置20の制御により、ウエハホルダ搬送系132が、ウエハホルダをウエハステージWST上あるいは収納装置116に搬送する。主制御装置20は、ウエハ干渉計18から得られる位置情報によってウエハステージWSTの位置を把握し、ウエハホルダを支持する上下動機構135を上昇あるいは下降させる。なお、主制御装置20は、ウエハホルダ搬送系132の各関節に取り付けられた回転モータのエンコーダなどから得られるそれらの回転情報に基づいて、ウエハホルダ搬送系132の姿勢制御を行い、上述の交換動作を実行する。
【0096】
また、上記実施形態では、図2,図3等に示されるように、リム28,35A〜35C上の複数のピン32B,32Cは、その一部に対して残りが前述の所定領域(ピン32Aの配設領域)から離れる方向に関して離間して設けられており、具体的には、環状のリム28又は35A〜35C上に、半径が異なる2つの同心円状に並んで配置されている、いわゆる2列構成となっている(ここでは、同じ円上に配設されたピン群を1列としている)。しかし、複数のピン32B,32Cは、1つの円上にしか配置されていない、いわゆる1列構成であっても良いし、前述の方向に関して3列以上の構成(半径が互いに異なる3つの同心円状に離間して配置された構成)であっても良い。このようなピン32B,32Cの列数の違いによっても、外気開放部(非吸着部)近傍のウエハに対する吸着力が変化するため、本発明では、ピン32B,32Cが1列構成のウエハホルダや、複数列(2列、3列…)構成のウエハホルダを複数用意し、それらを、前述と同様に、ウエハの変形に応じて選択的に使用するようにしても良い。
【0097】
図8には、ピン32Bが3列構成となっているウエハホルダの断面図が示されている。図8に示されるように、このウエハホルダでは、全てのピン32Aの先端部の直径はL1で同一であるが、ピン32Bでは自らが所属する列に応じて、その先端部の直径が規定されている。ピン32Aの先端部の直径L1と、最もピン32A側の列のピン32Bの先端部の直径L2と、中央列のピン32Bの先端部の直径L3と、最外周列のピン32Bの先端部の直径L4については、L1>L2>L3>L4の関係がある。すなわち、本発明では、第2支持部たる複数のピン32B又は複数のピン32Cの一部の先端部の面積を所定領域から離れる方向に関して異ならせるようにしても良く、図8のウエハホルダのように、その所定領域に最も近いピン32B又はピン32Cの先端部の面積を最大とし、所定領域から離れるにしたがって小さくなるようにすることもできる。このようにすれば、外気開放部(非吸着部)周辺におけるウエハWに対するピン32B,32Cの接触圧を、さらにきめ細かく調整することができるようになり、ウエハの複雑な変形(例えば、ウエハの周辺部にしたがって曲率が大きくなっているような変形)にも対応することができるようになる。なお、上述のように、ピン32B,32Cの半径を0.1mm以下と規定している場合には、ピン32A側のピン32B(又はピン32C)の半径を、例えば0.1mmとし、所定領域から離間するにしたがって、その半径を小さくしていけば良い。
【0098】
図8においては、ピン32A,32Bの直径は、例えばL1:L2:L3:L4=1:0.9:0.8:0.7となるように設定されている。すなわち、ピン32Bの最も内側(ピン32A側)のピン32Bの列を1列目、その次の列を2列目、最外周の列を3列目とし(すなわち、そのピン32Bが所属する列をn(nは自然数)とし)、ピン32Aの直径に対するピン32Bの先端部の直径の比をyとすると、ピン32Bの列nと先端部の直径比yとは、y=−0.1n+1.0となるように規定されている。このように、本発明では、ピン32Bの先端部の大きさを、ピンの列に応じた、すなわち所定領域からの距離に応じた1次式で規定すれば、ピン32Bの先端部の大きさを、所定領域からの距離によって段階的に変化させることができるようになる。
【0099】
このようにすれば、その1次式の傾きなどが互いに異なるウエハホルダを複数用意し、上述と同様に、ウエハの変形に適した傾きを有するウエハホルダを選択して用いるようにすることもできる。例えば、ウエハの変形が大きい場合には、その1次式の傾きが大きいウエハホルダを使用すれば良い。
【0100】
また、ウエハホルダの製造段階では、ウエハの平面度を確保するため、ピン部32A〜32Cの先端部を、研磨装置を用いて精密研磨加工する。本発明のウエハホルダでは、ピン32A〜32Cの先端部の大きさが異なる(ピン32B,32Cは、各列のピンによっても先端部の大きさが異なる)ため、ピン32B,32Cにおいては、研磨装置の研磨部(加工部)に対する単位面積当たりの接触圧力が、ピン32Aのそれに比べて大きくなる。また、ピン32Aと、ピン32B,32Cとでは、研磨時に用いられる砥粒の回り込みに差が生じる。このため、ピン32B,32Cの加工速度は、ピン32Aの加工速度に比べて速くなる。
【0101】
この加工速度の差により、ピン32Aの先端部と、ピン32B,ピン32Cの先端部との間には、加工段差が生じるようになる。そこで、上述のように、多列構造となっているピン32B及びピン32Cの先端部の大きさを、ピン32Aに近い順に、徐々に変化させていく(小さくする)ようにすれば、ピン32Aの先端部とピン32B,32Cの先端部との加工段差が小さくなり、緩やかなウエハの傾斜が発生することはあっても、局所的な部分における急激な変化が収まり、例えば、25mm×8mmのローカルエリアにおける起伏を40nm以内、望ましくは30nm〜20nm以内に抑えることができるようになるので、ウエハの平坦度の悪化を防止することもできる。
【0102】
なお、各列のピン32B,32Cの先端部の大きさは、1次式で表されるようになっていなくても良く、2次式や他の関係式で表されるものであっても良い。また、ピン32B,32Cが2列又は4列以上である場合にも、関係式による先端部の規定を当然に適用することができる。
【0103】
また、ピン32B,32Cだけでなく、複数のピン32Aのうち、外気開放部(非吸着部)周辺のピン32Aについても、その先端部の大きさが、徐々に(段階的に)小さくなるようにしても良く、全てのピン32A〜32Cの先端部の大きさが、外気開放部(非吸着部)に近づくにつれて、段階的に小さくなるようにしても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、ウエハホルダ70の給排気口36は、放射状に配置されているとしたが、これには限定されず、円周状に所定間隔で配置されていても良いし、所定間隔でマトリクス状又は井桁状に配置されていても良い。また、給排気機構80は、単に1台の真空ポンプ及び給気装置から構成されていても良く、さらに多くの真空ポンプを備え、きめ細かな真空吸着を行うようにしても良い。また、真空吸着機構でなく、静電吸着機構によってウエハWを吸着しても良い。また、上記実施形態では、3本の上下動ピン(センタアップ)を用いるものとしたが、その本数やウエハとの接触部の形状などは任意で良く、例えば特開2000−100895号公報(対応米国特許第6,184,972号)に開示されている1本の上下動ピンを採用しても良い。さらに、上記実施形態では上下動ピン(センタアップ)を駆動してウエハのロード及びアンロードを行うものとしたが、センタアップを駆動する代わりに、例えばウエハホルダ70を駆動してセンタアップとの位置関係を調整してウエハのロード及びアンロードを行っても良い。
【0105】
さらに、上記実施形態では、ウエハホルダ70のリム部28は、その外径がウエハWの外径よりも僅かに小さいものとしたが、リム部28の外径をウエハWの外径と同程度以上としても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、ウエハホルダを、例えば真空吸着にてウエハステージWSTに固定するものとしたが、ウエハホルダをウエハステージWSTの少なくとも一部と同一部材で構成する、即ちウエハホルダをウエハステージWSTの少なくとも一部を加工して前述したピン32A〜32Cやリム部28,35A〜35Cなどを形成しても良い。
【0107】
なお、上記実施形態では、ウエハのアンロード時に気体の吹き付けを必ずしも行わなくても良い。また、上記実施形態では、ウエハなどの円形基板を保持するホルダを用いるものとしたが、基板保持装置で保持する基板は円形に限られるものではなく、例えば矩形基板などでも良い。さらに、上記実施形態では、本発明の基板保持装置がウエハホルダに採用される場合について説明したが、本発明の基板保持装置はこれに限られるものではなく、例えば反射型レチクルではその裏面側をレチクルホルダにて保持するので、このようなレチクルホルダに対して本発明を適用するとしても良い。
【0108】
また、光源として、Ar2レーザ光源(出力波長126nm)などの他の真空紫外光源を用いても良い。また、例えば、真空紫外光として上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB(Distributed FeedBack、分布帰還)半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。この場合には、ランプ出力制御、NDフィルタ等の減光フィルタ、光量絞り等によって露光エネルギの調整を行えば良い。また、EUV光、X線、あるいは電子線及びイオンビームなどの荷電粒子線を露光ビームとして用いる露光装置に本発明を適用しても良い。
【0109】
なお、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないことは勿論である。すなわちステップ・アンド・リピート方式、ステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置またはプロキシミティ方式などの露光装置、あるいはミラープロジェクション・アライナー、及びフォトリピータなどにも本発明は好適に適用できる。なお、例えば国際公開WO99/49504などに開示される、投影光学系PLとウエハWとの間に液体が満たされる液浸露光装置に本発明を適用しても良い。
【0110】
また、上記実施形態では、本発明が半導体製造用の露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子、マイクロマシン、有機DL、DNAチップなどを製造するための露光装置などにも本発明を広く適用できる。
【0111】
なお、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み、光学調整をするとともに、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより、上記実施形態の露光装置を製造することができる。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0112】
また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。
【0113】
さらに、上記実施形態では、本発明が露光装置に適用された場合について説明したが、プロセスによって変形するウエハを保持し、そのウエハを平坦度良く保持する必要があるのであれば、露光装置以外の検査装置、加工装置などの装置であっても、本発明を好適に適用することができる。
【0114】
《デバイス製造方法》
次に、上述した露光装置100をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0115】
図9には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図9に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ202(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ203(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0116】
次に、ステップ204(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ203で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ205(デバイス組立てステップ)において、ステップ204で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ205には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0117】
最後に、ステップ206(検査ステップ)において、ステップ205で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
【0118】
図10には、半導体デバイスにおける、上記ステップ204の詳細なフロー例が示されている。図10において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0119】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、上記実施形態のウエハホルダを用いたリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、次に、ステップ218(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0120】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0121】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の露光装置が用いられるので、精度良くレチクルのパターンをウエハ上に転写することができる。この結果、高集積度のデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることが可能になる。
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の基板保持装置によれば、平面精度を高く維持した状態で基板を保持することができるという効果がある。
【0123】
また、本発明の露光装置によれば、露光精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0124】
また、本発明のデバイス製造方法によれば、高集積度のデバイスの生産性を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のウエハホルダと、該ウエハホルダに接続された給排気機構を示す平面図である。
【図3】ウエハホルダの断面図である。
【図4】図4(A),図4(B)は、ピンの形状を示す図である。
【図5】図5(A)は、ウエハホルダのウエハの外縁部付近の断面図であり、図5(B)は、ウエハホルダのセンタアップ近傍の断面図である。
【図6】図6(A)は、本体チャンバをXY面に平行な面に沿って切断した場合の断面図であり、図6(B)は、ウエハホルダの収納装置を示す斜視図である。
【図7】ウエハホルダ自動交換を行う制御系のブロック図である。
【図8】本発明に係るウエハホルダの他の例を示す断面図である。
【図9】本発明に係るデバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9のステップ204の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
20…主制御装置(算出装置、選択装置)、26…ベース部(本体部)、28…リム部(第1隔壁)、32A…ピン(第1支持部)、32B,32C…ピン(第2支持部)、34a,34b,34c…センタアップ(着脱機構)、35A,35B,35C…リム部(第2隔壁)、70…ウエハホルダ、84…貫通孔(開口部)、100…露光装置、PL…投影光学系、W…ウエハ。
Claims (22)
- 平板状の基板を保持する基板保持装置であって、
所定領域を有する本体部と;
前記所定領域上に離間して設けられ、前記所定領域上方の略同一平面内に配置されたそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の第1支持部と;
前記本体部における前記所定領域の境界近傍にそれぞれ離間して設けられ、前記各第1支持部とともにそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の第2支持部と;を備え、
前記各第1支持部の先端部の面積よりも、前記各第2支持部の先端部の面積が小さいことを特徴とする基板保持装置。 - 前記各第1支持部の先端部に対する前記各第2支持部の先端部の面積比が、支持対象である前記基板の変形に応じて決定されていることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
- 前記各第2支持部は、その先端部の大きさが0.2mm程度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板保持装置。
- 前記各第1支持部の先端部及び前記各第2支持部の先端部は略円形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板保持装置。
- 前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が部分的に異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板保持装置。
- 前記所定領域の外周に設けられた第1隔壁と、前記基板を着脱するための着脱機構を突出及び退避可能とするために前記所定領域に囲まれた領域に形成された開口部を取り囲む第2隔壁との少なくとも一方をさらに備え、
前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上及び前記第2隔壁上の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板保持装置。 - 前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上及び前記第2隔壁上にそれぞれ設けられ、
前記第1隔壁上の前記各第2支持部の先端部の面積と、前記第2隔壁上の前記各第2支持部の先端部の面積とが互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の基板保持装置。 - 前記所定領域の外周に設けられる第1隔壁を更に備え、前記複数の第2支持部は、前記第1隔壁上に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
- 前記本体部に対して前記基板を着脱する着脱機構と前記本体部とを相対移動するために前記所定領域に形成される開口部を取り囲む第2隔壁を更に備え、前記複数の第2支持部は前記第2隔壁上にも設けられていることを特徴とする請求項8に記載の基板保持装置。
- 前記複数の第2支持部は、その一部に対して残りが前記所定領域から離れる方向に関して離間して設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板保持装置。
- 前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域から離れる方向に関して異なることを特徴とする請求項10に記載の基板保持装置。
- 前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域に最も近い一部で最大となることを特徴とする請求項11に記載の基板保持装置。
- 前記複数の第2支持部は、その先端部の面積が前記所定領域から離れるにしたがって小さくなることを特徴とする請求項11又は12に記載の基板保持装置。
- 前記各第1支持部の側面には、段差が形成されていないことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板保持装置。
- 平板状の基板を保持する基板保持装置であって、
所定領域を有する本体部と;
前記所定領域上に離間して設けられ、前記所定領域上方の略同一平面内に配置されたそれぞれの先端部によって前記基板を支持する複数の支持部と;を備え、
前記複数の支持部の少なくとも一部の側面には段差が形成されていないことを特徴とする基板保持装置。 - パターンを、投影光学系を介して基板上に転写する露光装置であって、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板保持装置を備え、
前記基板保持装置によって保持された基板に、前記パターンを、前記投影光学系を介して転写することを特徴とする露光装置。 - 前記各第1支持部の先端部に対する前記各第2支持部の先端部の面積比が互いに異なる複数の前記基板保持装置を備えることを特徴とする請求項16に記載の露光装置。
- 複数の前記基板保持装置の中から選択された基板保持装置を、前記パターンの転写位置に搬送する搬送系をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の露光装置。
- 前記基板の変形に応じた前記面積比を算出する算出装置をさらに備えることを特徴とする請求項17又は18に記載の露光装置。
- 複数の前記基板保持装置の中から、前記基板の変形に応じた前記面積比を有する基板保持装置を選択する選択装置をさらに備えることを特徴とする請求項17〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
- パターンを、投影光学系を介して基板上に転写する露光装置であって、
請求項15に記載の基板保持装置を備え、
前記基板保持装置によって保持された基板に、前記パターンを、前記投影光学系を介して転写することを特徴とする露光装置。 - リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法であって、
前記リソグラフィ工程では、請求項16〜21のいずれか一項に記載の露光装置を用いて露光を行うデバイス製造方法。
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