JP2004220876A - 凝縮水排水システム及び燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料ガスから気液分離した凝縮水を排水する際に、燃料ガスのガス流路各部の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止する。
【解決手段】本発明の燃料電池システムは、燃料ガスのガス流路(17,20,26,28)に沿って配設された凝縮器(18)及び気液分離器(24,31)と、燃料ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための回収タンク(40)と、凝縮器(18)及び気液分離器(24,31)の各々から回収タンク(40)へ凝縮水を排水するための排水経路を構成する排水路(33,34,35)と、排水路(33,34,35)に配設された排水弁(36,37,38)を同時に二以上開弁しないように開閉制御して凝縮水の排水を制御する制御部(43)を備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水分含有ガスから気液分離した凝縮水の回収技術に関し、特に、燃料電池へ供給される燃料ガスから気液分離した凝縮水の回収技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来の燃料電池システムのシステム構成図である。同図に示すように、燃料電池システムは、主に、原燃料を改質して燃料ガスを生成する燃料改質装置60と、燃料ガスと酸化ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池77と、燃料ガスに含まれる水蒸気成分を冷却して凝縮水を回収する凝縮器68と、燃料ガスに含まれる水分を気液分離する気液分離器74,81と、凝縮水を回収する回収タンク87と、システム制御を行う制御部90を備えて構成されている。
【0003】
燃料改質装置60は原燃料を蒸気化して原燃料ガスを生成する蒸発部61と、原燃料ガスを水素リッチな燃料ガスに改質する改質部62と、燃料ガスのCO濃度を低下させるためのCO低減部63を備えて構成されている。改質部62においてメタノールを原燃料として水蒸気改質を行うと、下記の(1)式に示すメタノール分解反応と、(2)式に示す一酸化炭素のシフト反応とが同時に進行し、全体として(3)式に示す改質反応が生じる。
CHOH → CO+2H−90.0kJ/mol …(1)
CO+HO → CO+H+40.5kJ/mol …(2)
CHOH+HO → CO+3H−49.5kJ/mol …(3)
(3)式の改質反応は250℃〜300℃の温度環境下で進行し、この反応で生成される燃料ガスには多量の高温水蒸気が含まれている。システム運転時に燃料改質装置60から遮断弁64、逆止弁65、及び流量調整弁66を経てガス流路67に流下する燃料ガスは100℃前後に加熱しているため、凝縮器68において60℃〜80℃の温度範囲に降温されて凝縮水が除去されるとともに、凝縮器68からガス流路70、遮断弁71を経て気液分離器74へ流下し、含有水分が除去される。上記の経路を経て燃料電池77のアノード極に供給された燃料ガスは電池反応に供した後、水素オフガスとなって流量調整弁79、逆止弁80を経てガス流路78を流下し、気液分離器81においてさらに含有水分が除去される。
【0004】
制御部90はCPU93、ROM92、RAM94を備えて構成されるコンピュータシステムであり、凝縮器68、気液分離器74,81に備えられている液位センサ69,75,82からのセンサ出力信号を入出力ポート95を介して取り込み、凝縮器68、気液分離器74,81内に貯溜する凝縮水の液位が所定値になったことを検出すると、排水弁86を開弁制御し、凝縮器68、気液分離器74,81の各々から排水路83,84,85を介して回収タンク87へ凝縮水を排水する。回収タンク87には排気用のリリーフ弁88が備えられており、内圧を調整できるよう構成されている。
【0005】
尚、酸素を含有する酸化ガスはガス流路89から燃料電池77のカソード極に供給され、電池反応に供した後、酸素オフガスとなってガス流路91を経て排出される。また、ガス流路70には排気用のガス流路72が分岐しており、システム停止時には、遮断弁73が開弁する一方で、遮断弁71が閉弁することにより、燃料ガスを排気できるよう構成されている。
【0006】
燃料電池システムの凝縮水を回収する技術として、特開2001−199702号公報(特許文献1)には、改質部、変性部、浄化部、ガス排出部などの燃料ガス経路に凝縮水排出口を設け、システム起動時の不活性ガス注入によるパージ圧力又は凝縮水の自重滴下により凝縮水を回収する技術が提案されている。また特開昭62−165870号公報(特許文献2)には、燃料電池の上流側に配設された気液分離器と、燃料電池の流下側に配設されたリザーブタンクからの排水を、圧損部を介して行う技術が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−199702号公報
【0008】
【特許文献2】
特開昭62−165870号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、システム運転時に燃料改質装置60から燃料電池77に供給される燃料ガスは流量調整弁66で一定のガス圧に昇圧されるが、ガス流路67,70,76,78を流下する過程において、配管内の空気分子や配管内壁或いは各種の弁機構との衝突を繰り返すことで、分子エネルギーが次第に減少し、圧力損失が生じる。ダルシー・ワイスバッハの式によれば、圧力損失は配管内径に反比例し、管内平均流速の二乗と配管長に比例することが知られている。従って、ガス流路67,70,76,78の配管長が長く、配管径が小さいほど圧力損失は大きくなる。また、凝縮器68、気液分離器74,81内に貯溜する凝縮水を排水すると、ガス収容空間容積が増大するため、ガス圧がさらに低下する。凝縮器68のガス圧力をP1、気液分離器74のガス圧力をP2、気液分離器81のガス圧力をP3とすれば、P1>P2>P3となる。このため、図3に示すように、排水路83,84,85から成る配管系統を下流側で合流させ、相互に通水可能に構成すると、凝縮器68、気液分離器74,81相互間の差圧によって、凝縮水が内圧の低い気液分離器74,81へ逆流してしまう不都合が生じていた。
【0010】
一方、システム停止時には、遮断弁71及び圧力調整弁79を閉弁し、遮断弁73を開弁して燃料改質装置60のガス圧を降圧させるため、凝縮器68の内圧は気液分離器74の内圧よりも低下し、P2>P1≧P3となる。この場合においても、凝縮器68、気液分離器74,81相互間の差圧によって、凝縮水が内圧の低い気液分離器81又は凝縮器68へ逆流してしまう不都合が生じていた。
【0011】
このような不都合を回避するため、凝縮水の逆流防止のための逆止弁を設けることも考えられるが、圧力損失がさらに増大するため、システム全体のガス圧をその分だけ大きく設定しなくてはならなくなり、エネルギー損失も増大する。
【0012】
そこで、本発明は水分含有ガスから気液分離した凝縮水を排水する際に、水分含有ガスのガス流路各部の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止する凝縮水排水システムを提供することを課題とする。また、本発明は燃料ガスから気液分離した凝縮水を排水する際に、燃料ガスのガス流路各部の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止する燃料電池システムを提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の凝縮水排水システムは、水分含有ガスのガス流路に沿って少なくとも2以上配設された気液分離手段と、前記水分含有ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための貯溜手段と、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ前記凝縮水を排水するための排水経路を構成する排水系統と、前記排水系統に配設された弁機構と、選択された何れか一つの気液分離手段から前記貯溜手段へ至る排水経路を確立するよう前記弁機構を制御する制御部と、を備える。かかる構成により、二以上の気液分離手段から貯溜手段へ至る排水経路が同時に確立しないよう弁機構が制御されるため、気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0014】
好ましくは、前記制御部は、前記気液分離手段の各々が前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する。かかる構成により、気液分離手段相互間が排水系統を通じて遮水されるため、気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0015】
好ましくは、前記制御部は、前記ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と前記ガス流路の下流側に配設された気液分離手段とが前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する。かかる構成により、気液分離手段相互間が排水系統を通じて遮水されるため、ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と、ガス流路の下流側に配設された気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0016】
好ましくは、前記弁機構は、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ至る各々の排水経路につき少なくとも1以上配設された排水弁を含み、前記制御部は、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁しないよう前記弁機構を制御する。かかる構成により、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁することによる凝縮水の逆流を防止できる。
【0017】
本発明の燃料電池システムは、燃料ガスのガス流路に沿って少なくとも2以上配設された気液分離手段と、前記燃料ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための貯溜手段と、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ前記凝縮水を排水するための排水経路を構成する排水系統と、前記排水系統に配設された弁機構と、選択された何れか一つの気液分離手段から前記貯溜手段へ至る排水経路を確立するよう前記弁機構を制御する制御部と、を備える。かかる構成により、二以上の気液分離手段から貯溜手段へ至る排水経路が同時に確立しないよう弁機構が制御されるため、気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0018】
好ましくは、前記制御部は、前記気液分離手段の各々が前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する。かかる構成により、気液分離手段相互間が排水系統を通じて遮水されるため、気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0019】
好ましくは、前記制御部は、前記ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と前記ガス流路の下流側に配設された気液分離手段とが前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する。かかる構成により、気液分離手段相互間が排水系統を通じて遮水されるため、ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と、ガス流路の下流側に配設された気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【0020】
好ましくは、前記弁機構は、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ至る各々の排水経路につき少なくとも1以上配設された排水弁を含み、前記制御部は、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁しないよう前記弁機構を制御する。かかる構成により、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁することによる凝縮水の逆流を防止できる。
【0021】
好ましくは、前記燃料ガスは原燃料を水蒸気改質した水素リッチガスである。水蒸気改質した燃料ガスには多量の高温水蒸気が含まれているため、燃料電池に供給する前段階で適度に水分除去するのが望ましく、本発明に好適である。
【0022】
好ましくは、前記気液分離手段は、前記原燃料を水蒸気改質して前記燃料ガスを生成する燃料改質装置から燃料電池へ燃料ガスを供給するガス流路に配設されている。燃料改質装置から燃料電池へ供給される燃料ガスには多量の高温水蒸気が含まれているため、燃料電池に供給する前段階で適度に水分除去するのが望ましく、本発明に好適である。
【0023】
好ましくは、前記気液分離手段は、前記燃料電池から排出される水素オフガスのガス流路に配設されている。水素オフガスは原燃料を蒸気化するための燃焼燃料として再利用できるため、気液分離手段で気液分離するのが望ましく、本発明に好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、各図を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0025】
図1は本実施形態の燃料電池システムの構成図である。ここでは、説明の便宜上、燃料ガスに含まれる水分を気液分離した凝縮水の回収経路を中心とする主要部分を図示している。同図に示すように、燃料電池システムは、主に、原燃料を改質して燃料ガスを生成する燃料改質装置10と、燃料ガスと酸化ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池27と、燃料ガスに含まれる水蒸気成分を冷却して凝縮水を回収する凝縮器18と、燃料ガスに含まれる水分を気液分離する気液分離器24,31と、凝縮水を貯溜する回収タンク(リザーブタンク)40と、燃料電池システムの制御処理を実行する制御部43を備えて構成されている。
【0026】
燃料改質装置10は、原燃料を蒸気化させて原燃料ガスを生成する蒸発部11と、原燃料ガスを水素リッチな燃料ガスに改質する改質部12と、燃料ガス中に含まれている一酸化炭素を低減するCO低減部13とを備えて構成されている。蒸発部11としては、原燃料と加熱媒体との間で熱交換を行い、原燃料を蒸気化する熱交換装置などが好適である。原燃料としては、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、ガソリン、軽油、天然ガス、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、ジメチルエーテル(CHOCH)、アセトン(CHC(=O)CH)などが好適である。
【0027】
改質部12の内部には、銅−亜鉛系触媒(Cu−Zn系触媒)、銅−亜鉛−クロム系触媒(Cu−Zn−Cr系触媒)、銅−亜鉛−アルミニウム系触媒(Cu−Zn−Al系触媒)、亜鉛−クロム系触媒(Zn−Cr系触媒)などの改質触媒が充填されており、水蒸気改質、部分酸化改質、又はこれらを併用したオートサーマル改質を行う。部分酸化改質は発熱反応であるため、システム暖機時には発熱反応を伴う部分酸化改質を中心に行いつつ、暖機完了後には負荷追従性に優れたオートサーマル改質を行うのが望ましい。メタノールと水の混合溶液を原燃料として水蒸気改質を行うと、上述の(1)式〜(3)式の水蒸気改質反応が進行する。改質部12に酸素を導入すると、(1)式〜(3)式の水蒸気改質反応に加えて(4)式の部分酸化改質反応が進行する。
CHOH+(1/2)O → CO+2H+189.5kJ/mol …(4)
改質部12の内部温度は電気触媒加熱ヒータなどの加熱作用によって、改質反応に適度な温度範囲に保たれている。メタノール改質を行う場合、水蒸気改質では200℃〜300℃、部分酸化改質では400℃〜600℃、オートサーマル改質では200℃〜600℃の温度範囲が好適である。原燃料ガスの改質反応を行っている改質部12の内部には、高温水蒸気が充満しており、燃料ガスとともにCO低減部13に供給される。
【0028】
CO低減部13には一酸化炭素の選択酸化触媒である白金触媒、ルテニウム触媒、パラジウム触媒、金触媒、或いはこれらを第1元素とした合金触媒を担持した担体が充填されている。CO低減部13内部には、一酸化炭素の選択酸化反応に要する酸素を含有する精製用エアが供給される。燃料電池77における電池反応を良好に促進するには、燃料ガス中の一酸化炭素濃度は数ppm程度以下が望ましい。
【0029】
燃料改質装置10から燃料電池27に燃料ガスを供給するための配管系統を構成するガス流路17,20,26上には凝縮器18と、気液分離器24が配設されている。凝縮器18は燃料ガスに含まれる水蒸気成分を冷却して結露させ、含有水分を凝縮水として回収する気液分離手段である。燃料改質装置10から供給される燃料ガスには高温(例えば、100℃前後)の水蒸気が多量に混入されているため、凝縮器18としては、例えば、冷却水を還流させた冷却管に燃料ガスを接触させて熱交換方式により冷却する熱交換方式の凝縮器や、燃料ガスに冷却水を噴霧して燃料ガスを冷却し、飽和水を除去する冷却水噴霧式の凝縮器などが好適である。燃料ガスは凝縮器18において低温(例えば、60℃〜80℃)に降温される。凝縮器18には装置内部で凝縮した水滴の貯蔵量(液位)を計測するための液位センサ19が設置されている。凝縮器18の駆動電力として、燃料電池27の運転中に生じる余剰電力を用いることができる。
【0030】
ガス流路17には上流側から流下側にかけて遮断弁14、逆止弁15、及び流量調整弁16が配設されており、ガス流路17を流下する燃料ガスは流量調整弁16で所定のガス圧に昇圧された後、凝縮器18に供給される。流量調整弁16の弁開度は燃料電池27の要求発電量に対応して適宜調整される。凝縮器18で含有水部の大部分が凝縮された燃料ガスはガス流路20を流下して気液分離器24に導入される。気液分離器24は燃料ガス中に含まれている水分をある程度除去し、燃料ガスを適度に加湿した状態で燃料電池27に供給するために設けられた気液分離手段である。気液分離器24としては、例えば、燃料ガスを旋回させてその遠心力によって水分を分離するサイクロン式分離器などが好適である。気液分離器24には装置内部で気液分離した水滴の貯蔵量(液位)を計測するための液位センサ25が設置されている。
【0031】
尚、ガス流路20には排気用のガス流路22が分岐しており、システム停止時に遮断弁23を開弁して燃料ガスを排出するとともに、遮断弁21を閉弁して燃料電池27への燃料ガスの供給を停止するように構成されている。
【0032】
燃料電池27には、ガス流路26から水素リッチな燃料ガスが供給され、アノード極において(5)式の酸化反応が生じるとともに、ガス流路41から酸素を含む酸化ガスが供給され、カソード極において(6)式の還元反応が生じる。燃料電池27全体としては、(7)式の起電反応が生じる。燃料電池27としては、固体高分子電解質型の燃料電池が好適である。高分子電解質型の燃料電池は、常温で起動できるために起動時間が短い、常温で高い電流密度が得られる、低負荷運転が可能、小型軽量化が可能といったメリットがあり、車両搭載用の燃料電池として優れた特性を備えている。高負荷状態では、高分子電解質膜を流れる電流密度が増加し、電気浸透現象による高分子電解質膜の乾燥が生じるため、燃料ガスと酸化ガスは適度に加湿していることが望ましい。
→ 2H+2e …(5)
(1/2)O+2H+2e → HO …(6)
+(1/2)O → HO …(7)
起電反応に供した燃料ガスは水素オフガスとなって燃料電池27からガス流路28を経由して排出される一方、起電反応に供した酸化ガスは酸素オフガスとなって燃料電池27からガス流路42を経由して排出される。ガス流路28には、上流側から流下側にかけて流量調整弁29、逆止弁30、及び気液分離器31が配設されている。燃料電池27から排出される水素オフガスには水分が含有されているため、気液分離器31にて気液分離される。気液分離器31は気液分離器24と同等の機能を有する気液分離手段である。気液分離器31には装置内部で気液分離した水滴の貯蔵量(液位)を計測するための液位センサ32が設置されている。気液分離器31から排出される水素オフガスは前述の蒸発部11において、原燃料(被加熱媒体)を加熱する燃焼ガス(加熱媒体)を生成するために再利用される。上述の凝縮器18、気液分離器24,31のそれぞれにおいて気液分離された凝縮水は、凝縮水貯溜手段として機能する回収タンク40へ排水される。回収タンク40に集水された凝縮水には、高分子電解質膜の溶出や分解などによってフッ酸や硫酸などの多くの不純物が含まれているため、イオン交換樹脂などの濾過膜によって不純物が除去され、水蒸気改質の改質水などに利用される。
【0033】
凝縮器18と回収タンク40との間の排水経路を構成する排水路33には凝縮器18内部に貯溜する凝縮水を排水する排水弁36が配設されている。同様に、気液分離器24と回収タンク40との間の排水経路を構成する排水路34には排水弁37が配設され、気液分離器31と回収タンク40との間の排水経路を構成する排水路35には排水弁38が配設されている。上述の排水路33,34,35によって燃料電池システムにおける凝縮水の排水系統が構築されている。回収タンク40には排気用のリリーフ弁39が備えられており、内圧を調整できるように構成されている。
【0034】
燃料電池システムを制御する制御部43は、マイクロコンピュータを中心としたコンピュータシステムとして構成されており、システム制御に必要な各種のプログラム(後述する排水弁制御処理ルーチンを含む)及び各種データを記憶したROM44と、ROM44に書き込まれているプログラムを読み取ってこれを実行するCPU45と、CPU45のワークメモリとして機能するRAM46と、上述した液位センサ19,25,32のセンサ出力信号を取り込むとともに、排水弁36,37,38,遮断弁14,21,23,流量調整弁16,29の開閉制御を行うための各種制御信号を出力する入出力ポート47を備えて構成されている。制御部24には、図示しない上位コントローラからシステム起動/停止信号が入力される。
【0035】
尚、本明細書において、「気液分離手段」とは、水分含有ガスから水分を気液分離する手段をいい、上述の凝縮器18,気液分離器24,31を含む。本実施形態では、水分含有ガスとして燃料ガスを例示するが、酸化ガスやその他のガスであってもよい。また、「貯溜手段」とは、水分含有ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための手段をいい、上述の回収タンク40を含む。貯溜手段は一つに限らず、二以上存在していてもよい。「排水経路」とは、各々の気液分離手段から貯溜手段へ凝縮水を排水するための経路をいい、一又は二以上の排水路から成る。「排水路」は特定の気液分離手段の排水経路を専用するものに限らず、二以上の気液分離手段の排水経路の一部を共用するものであってもよい。言い換えれば、二以上の排水経路が経路の途中で合流するものであってもよい。二以上の排水経路が経路の途中で合流する合流部を有するものである場合には、弁機構は気液分離手段と合流部との間に設けられる。つまり、本発明においては、任意の気液分離手段から他の気液分離手段に至る経路には少なくとも1以上の排水弁が配設されており、合流部から上流側で二以上の気液分離手段が相互に通水しないように構成されている。単一の気液分離手段から単一の貯溜手段へ至る排水経路は一つに限らず、二以上であってもよい。また、「排水系統」とは、全ての排水経路を総称するものとする。「弁機構」とは、排水系統に配設された二以上の排水弁を総称するものであり、排水弁の開閉制御を通じて排水路の通水状態と遮水状態を相互に切り換え、気液分離手段から貯溜手段へ至る排水経路の確立(通水)、遮断(遮水)、変更を制御する手段であり、上述の排水弁36,37,38の他、後述する切換弁を含む。気液分離手段から貯溜手段に至る排水経路上に配設される排水弁は一つに限らず二以上であってもよい。
【0036】
図2は燃料ガスから気液分離された凝縮水を回収タンク40に排水するための排水弁制御処理ルーチンを記述したフローチャートである。制御部43は主制御プログラム中で予め定められた一定のインターバルで発生する本ルーチンのイベント処理を繰り返し実行する。制御部43は、本ルーチンへ移行すると、まず、上位コントローラからシステム停止信号を受信したか否かをチェックする(ステップS1)。システム停止信号を受信していない場合には(ステップS1;NO)、液位センサ19のセンサ出力信号をチェックし、凝縮器18内部に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS2)。凝縮水の液位が閾値を超えている場合は(ステップS2;YES)、排水弁36を開弁し、凝縮器18の排水経路(排水路33)を通水状態とする一方、排水弁37,38を閉弁し、気液分離器24,31の排水経路(排水路34,35)を遮水する(ステップS3)。このように、凝縮器18,気液分離器24,31相互間を通水しないように排水系統の排水弁36,37,38の開閉制御を行うことで、内圧の低い気液分離器24,31への凝縮水の逆流を防止し、凝縮器18から回収タンク40へ凝縮水の排水を行うことができる。制御部43はこの状態をT1秒間維持し(ステップS4)、凝縮器18に貯溜する凝縮水の大部分を回収タンク40に排水した後、ステップS1に再帰する。
【0037】
ここで、ステップS2において、制御部43は凝縮器18内に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えていないと判断すると(ステップS2;NO)、排水弁36を閉弁し、凝縮器18の排水経路(排水路33)を遮水する(ステップS6)。次いで、液位センサ25のセンサ出力信号をチェックし、気液分離器24内部に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS7)。凝縮水の液位が閾値を超えている場合は(ステップS7;YES)、排水弁37を開弁し、気液分離器24の排水経路(排水路34)を通水状態とする一方、排水弁38を閉弁し、気液分離器31の排水経路(排水路35)を遮水する(ステップS8)。制御部43はこの状態をT2秒間維持し(ステップS9)、気液分離器24に貯溜する凝縮水の大部分を回収タンク40に排水した後、ステップS1に再帰する。
【0038】
また、ステップS7において、制御部43は気液分離器24内に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えていないと判断すると(ステップS7;NO)、排水弁36,37を閉弁し、凝縮器18と気液分離器24の排水経路(排水路33,34)を遮水する(ステップS10)。次いで、液位センサ32のセンサ出力信号をチェックし、気液分離器31内に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS11)。凝縮水の液位が閾値を超えている場合は(ステップS11;YES)、排水弁38を開弁し、気液分離器31の排水経路(排水路35)を通水状態とする(ステップS12)。制御部43はこの状態をT3秒間維持し(ステップS13)、気液分離器31に貯溜する凝縮水の大部分を回収タンク40に排水した後、ステップS1に再帰する。
【0039】
一方、ステップS11において、制御部43は気液分離器31内に貯溜する凝縮水の液位が閾値を超えてないと判断すると(ステップS11;NO)、排水弁38を閉弁し(ステップS14)、ステップS1に再帰する。また、ステップS1において、制御部43は上位コントローラからシステム停止信号を受信すると(ステップS1;YES)、遮断弁23を開弁してガス流路22から燃料ガスを排気する一方、遮断弁21を閉弁して燃料電池27への燃料ガスの供給を停止する(ステップS5)。制御部43はステップS5の処理ステップを終了すると、ステップS6以降の処理ステップを順次実行する。
【0040】
以上、説明したように本実施形態によれば、回収タンク40に凝縮水を回収する際に、排水弁36,37,38が同時に二以上開弁しないよう弁機構を制御する構成であるため、凝縮器18,気液分離器24,31相互間が排水系統を通じて通水することがなく、凝縮器18,気液分離器24,31相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。また、逆止弁を用いないため、システム全体のエネルギー損失を低減しつつ、凝縮水の逆流を防止することができる。
【0041】
尚、本発明は上述の構成に限られるものではなく、例えば、凝縮器18,気液分離器24,31の排水経路の各々に連通する3つの入力ポートと、回収タンク40に連通する1つの出力ポートを具備する切換弁を排水系統に設け、出力ポートに連通すべき入力ポートの切換制御を行うことで、凝縮器18,気液分離器24,31相互間が排水系統を通じて通水しないように回収タンク40への排水を行うように制御してもよい。もとより、排水弁と上述の切換弁を適宜組み合わせて排水系統内に配設してもよい。また、本発明は燃料電池システムに限らず、水分含有ガスを気液分離した凝縮水を貯溜手段に排水する機構を備えた任意の凝縮水排水システムに応用できる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、気液分離手段から貯溜手段へ凝縮水を排水する際に、気液分離手段相互間の差圧に起因する凝縮水の逆流を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の燃料電池システムの構成図である。
【図2】本実施形態の排水弁制御処理ルーチンを記述したフローチャートである。
【図3】従来の燃料電池システムの構成図である。
【符号の説明】
10…燃料改質装置
17,20,26,28…ガス流路
18…凝縮器
24,31…気液分離器
33,34,35…排水路
36,37,38…排水弁
40…回収タンク
43…制御部

Claims (11)

  1. 水分含有ガスのガス流路に沿って少なくとも2以上配設された気液分離手段と、
    前記水分含有ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための貯溜手段と、
    前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ前記凝縮水を排水するための排水経路を構成する排水系統と、
    前記排水系統に配設された弁機構と、
    選択された何れか一つの気液分離手段から前記貯溜手段へ至る排水経路を確立するよう前記弁機構を制御する制御部と、
    を備える、凝縮水排水システム。
  2. 前記制御部は、前記気液分離手段の各々が前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する、請求項1に記載の凝縮水排水システム。
  3. 前記制御部は、前記ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と前記ガス流路の下流側に配設された気液分離手段とが前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する、請求項2に記載の凝縮水排水システム。
  4. 前記弁機構は、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ至る各々の排水経路につき少なくとも1以上配設された排水弁を含み、
    前記制御部は、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁しないよう前記弁機構を制御する、請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の凝縮水排水システム。
  5. 燃料ガスのガス流路に沿って少なくとも2以上配設された気液分離手段と、
    前記燃料ガスから気液分離された凝縮水を貯溜するための貯溜手段と、
    前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ前記凝縮水を排水するための排水経路を構成する排水系統と、
    前記排水系統に配設された弁機構と、
    選択された何れか一つの気液分離手段から前記貯溜手段へ至る排水経路を確立するよう前記弁機構を制御する制御部と、
    を備える、燃料電池システム。
  6. 前記制御部は、前記気液分離手段の各々が前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する、請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 前記制御部は、前記ガス流路の上流側に配設された気液分離手段と前記ガス流路の下流側に配設された気液分離手段とが前記排水系統を通じて相互に通水しないように前記弁機構を制御する、請求項6に記載の燃料電池システム。
  8. 前記弁機構は、前記気液分離手段の各々から前記貯溜手段へ至る各々の排水経路につき少なくとも1以上配設された排水弁を含み、
    前記制御部は、二以上の排水経路に配設された排水弁が全て同時に開弁しないように前記弁機構を制御する、請求項5乃至請求項7のうち何れか1項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記燃料ガスは原燃料を水蒸気改質した水素リッチガスである、請求項5乃至請求項8のうち何れか1項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記気液分離手段は、前記原燃料を水蒸気改質して前記燃料ガスを生成する燃料改質装置から燃料電池へ燃料ガスを供給するガス流路に配設されている、請求項9に記載の燃料電池システム。
  11. 前記気液分離手段は、前記燃料電池から排出される水素オフガスのガス流路に配設されている、請求項10に記載の燃料電池システム。
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