JP2004220720A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】非塩化ビニル系の結合剤を用いた磁気記録媒体であって、平滑でエラーレートが低く、優れた電磁変換特性を有し、かつ優れた走行耐久性と保存安定性とを有する磁気記録媒体の提供。
【解決手段】非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有するか、又は非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、前記磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤は、アクリル系共重合体を含有し、前記アクリル系共重合体は、窒素を含有するラジカル重合性単量体単位を1〜75質量%、水酸基を0.2〜2質量%、エポキシ基を0.2〜15質量%の割合で含み、かつ親水性極性基を含む。
【選択図】 なし
【解決手段】非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有するか、又は非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、前記磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤は、アクリル系共重合体を含有し、前記アクリル系共重合体は、窒素を含有するラジカル重合性単量体単位を1〜75質量%、水酸基を0.2〜2質量%、エポキシ基を0.2〜15質量%の割合で含み、かつ親水性極性基を含む。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関し、さらに詳しくは、腐食性ガスを放出することによる問題がなく、優れた電磁変換特性、走行耐久性及び保存安定性を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、様々な情報を記録し、かつ記録した情報を再生する必要があるため、長期に亘る保存安定性と耐久性を有することが要求される。磁気記録媒体は、通常、磁性粉末、結合剤、有機溶剤、その他必要な成分を含む磁性層塗料を、ポリエステルフィルム等の支持体上に塗布し、これを乾燥することにより製造される。この際、使用される結合剤としては、磁性体粉末の分散性に優れ、磁気記録媒体に優れた電気的特性を付与すると同時に、耐久性にも優れるものが望まれる。
【0003】
近年、磁気記録媒体の高性能化に伴い、0.3μm以下の記録波長を用いて高密度記録することが要求される。このような高密度記録用の磁気記録媒体は、抗磁力Hcが高く、かつ粒径が小さい磁性体粉末を用いる必要がある。しかし、このような磁性体粉末は、粒径が小さいため、極めて凝集しやすい。このため、磁性粉末の分散性及び耐久性に優れた塩化ビニル系樹脂を含む結合剤が磁性層用の結合剤として広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂は熱安定性が悪いと、光、熱などのエネルギーにより分解され、微量ながら塩化水素ガス(HCl)を放出するという欠点がある。このため、放出された塩化水素ガスにより磁性層が変質を起こし、磁性層の耐久性が低下するという問題があった。また、塩化水素ガスは、磁性層中の磁性粉末粒子を酸化あるいは変性させるため、磁気記録媒体の出力を低下させるという問題があった。さらに、塩化水素ガスは、記録再生ヘッドを腐食するという問題もあった。
【0005】
上記問題を解決するため、最近では塩化ビニル系樹脂に代わる樹脂としてアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の非塩化ビニル系樹脂を用いた結合剤に関する研究が進められている。しかし、これらの樹脂を単独で用いた場合、いずれも凝集力が強すぎるため、高抗磁力Hcを有する粒径0.1μm以下の微小な磁性粉末を磁性層に分散させ、かつ安定して保持することができなかった。このため、これらの樹脂を高記録密度の磁気記録媒体における磁性層用の結合剤として使用することはできなかった。
このような問題を解決し得る結合剤として、最近ではアクリル樹脂とウレタン樹脂とを組み合せた結合剤の開発もされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、磁性層用の結合剤として極性基を有する分子量1,000〜10,000のアクリル樹脂とポリウレタン樹脂とを含む磁気記録媒体が開示されている。しかし、結合剤の磁性層における分散性については、結合剤に含まれるアクリル樹脂の分子量、極性基種、及び添加量のみに着目し、アクリル樹脂の骨格が分散性に及ぼす影響を考慮していない。このため、磁性層における結合剤として超微粒子の強磁性粉末を良好に分散させることはできない。また、特許文献1に記載される発明は、磁性層で用いられる結合剤に注目した発明であって、非磁性層で用いられる結合剤を提供することを目的とするものではない。
【0007】
また、特許文献2は、窒素を含むラジカル重合性単量体、窒素を含まない親水性極性基を有するラジカル重合性単量体、及びホモポリマーの溶解パラメーターが9.5以上で極性基を有しないラジカル重合性単量体を共重合したアクリル系共重合体からなる結合剤を用いた磁気記録媒体を開示する。しかし、最近の磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)に対応した塗布型超薄層磁気記録媒体で用いられている長軸長0.1μm以下の微細な強磁性金属粉末又は40nm以下の六方晶フェライト粉末を強磁性粉末として用いる場合、特許文献2に記載された結合剤では、上記強磁性粉末を良好に分散した磁性層は得られず、必要な電磁変換特性や磁性層の表面平滑性を確保することはできない。また、特許文献2に記載された発明は、前記同様、磁性層で用いられる結合剤に注目した発明であって、非磁性層で用いられる結合剤を提供することを目的とするものではない。
【0008】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、微細な強磁性粉末又は非磁性粉末であっても、良好に分散でき、表面状態の良好な磁性層又は非磁性層が得られる非塩化ビニル系の結合剤を用いた磁気記録媒体であって、エラーレートが低く、優れた電磁変換特性を有し、かつ優れた走行耐久性と保存安定性とを有する磁気記録媒体を提供することにある。特に本発明の目的は、磁性層に磁気記録された信号を磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)で再生する磁気記録再生システムにおいて、高出力を保持した状態で再生可能な磁気記録媒体を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−176016号公報(特許請求の範囲、第4頁左下欄第10行目〜右下欄第7行目)
【特許文献2】
特開平8−180366号公報(請求項1、第2頁[0005])
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、磁性層を有する磁気記録媒体、及び非磁性層及び磁性層の重層構造を有する磁気記録媒体において、これまで磁性層及び非磁性層の結合剤として用いられてきた塩化ビニル系樹脂に代わる結合剤としてアクリル系樹脂の実用化を目指して鋭意検討した。その結果、従来のアクリル系樹脂では磁気ヘッドと磁性層の接触(ヘッド当たり)が悪くなったり、繰り返される磁気ヘッドの摺動により磁性層表面が削れ、ドロップアウトやヘッド汚れの原因となる等の問題があることが分かった。また、非磁性層の結合剤としてアクリル系樹脂を使用した場合、磁性層の表面が粗くなってスペーシングロスを生じ、電磁変換特性に悪影響を与えることも分かった。さらに、従来のアクリル系樹脂にポリウレタン樹脂を併用すると、イソシアネートを含む硬化剤を使用したときに、硬化性を確保したままで強靭な塗膜を形成することは困難であることが分かった。
【0011】
本発明者らは、上記知見に基づき鋭意検討を重ねた結果、窒素を含むラジカル重合性単量体単位と所定量の官能基とを有する所定のアクリレート系共重合体を含む結合剤を使用すれば、強磁性粉末が良好に分散した磁性層及び非磁性粉末が良好に分散した非磁性層が得られ、かつ磁性層と非磁性層の間の力学的強度を高めることができることを見出した。そして、本発明者らは、さらにこの結合剤を用いて得られた磁気記録媒体が優れた電磁変換特性を有すると共に、走行耐久性及び保存安定性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有するか、又は非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、前記磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤は、アクリル系共重合体を含有し、前記アクリル系共重合体は、窒素を含有するラジカル重合性単量体(以下、「窒素含有ラジカル重合性単量体」と記す)単位を1〜75質量%、水酸基を0.2〜2質量%、エポキシ基を0.2〜15質量%の割合で含み、かつ親水性極性基を有する。
【0013】
本発明は、所定の割合の窒素含有ラジカル重合性単量体単位と所定の割合の官能基を含むアクリル系共重合体を結合剤に用いることで、磁性層では0.2μm以下の微粒子強磁性粉末を良好に分散でき、また非磁性層では非磁性粉末を良好に分散できる。さらに上記アクリル系共重合体は、熱、光、薬品などに対して優れた熱安定性及び耐久性を示すので、本発明の磁気記録媒体は、光、熱などのエネルギーが加えられても分解せず、塩化水素ガス(腐食性ガス)を生じることはない。また、塩化水素ガスを生じないため、磁気記録媒体が変性されて機械的性質を劣化させることもなく、磁性層中の磁性粉末粒子に悪影響を及ぼして出力を低下させることもない。さらに、記録再生ヘッドを腐食させない等の多くのメリットを有する。
【0014】
また、本発明の磁気記録媒体は、磁性層に磁気記録された信号を磁気抵抗型磁気ヘッド(MRヘッド)で再生する磁気記録再生システムで用いるための磁気記録媒体であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気記録媒体をさらに詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体は、磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤がアクリル系共重合体を含有する。
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、少なくとも▲1▼窒素含有ラジカル重合性単量体単位、▲2▼水酸基、▲3▼エポキシ基、及び▲4▼親水性極性基を含む。さらに本発明は、▲1▼の単量体単位及び▲2▼〜▲4▼の官能基を有さない他の(メタ)アクリレート系単量体単位を含むものであってもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものである。
また、上記▲1▼〜▲4▼の含有量(質量%)は、磁性層及び非磁性層に含まれるアクリル系共重合体のそれぞれについて独立に決定することができ、いずれも各アクリル系共重合体の質量に対するものである。磁性層と非磁性層の両層にアクリル系共重合体を含む場合、上記▲1▼〜▲4▼の含有量が異なるアクリル系共重合体を磁性層及び非磁性層のそれぞれに含有させることができ、あるいは磁性層と非磁性層の両層で同一のアクリル系共重合体を含有させることもできる。
【0016】
[窒素含有ラジカル重合性単量体単位]
本発明で使用される窒素含有ラジカル重合性単量体単位を形成する窒素含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカルバゾール、2−ビニル−4,6−ジアミノ−5−トリアジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、マレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0017】
窒素含有ラジカル重合性単量体単位は、磁性層又は非磁性層において1〜75質量%の割合で含まれ、好ましくは2〜60質量%であり、より好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは5〜45質量%である。窒素含有ラジカル重合性単量体単位を1質量%以上含めば、磁性層又は非磁性層において凝集を生じることなく強磁性粉末又は非磁性粉末を良好に分散できる。また、ポリウレタン樹脂と併用した場合であっても、ポリウレタン樹脂との相溶性が低下することはない。一方、75質量%以下であれば、溶剤の溶解性を確保できるため好ましい。
【0018】
[水酸基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体には水酸基が含まれる。アクリル系共重合体に水酸基が含まれると、水酸基がイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と硬化反応し、強靭な磁性層塗膜及び非磁性層塗膜を形成できる。水酸基は、水酸基又は水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体を共重合することによってアクリル系共重合体に導入することができる。
水酸基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチルモノ(メタ)アリルエーテル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類、(メタ)アリルアルコール等を挙げることができる。
【0019】
上記水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニルを挙げることができる。水酸基への置換方法は、例えば、ビニルアルコール単位については酢酸ビニルを共重合した後、溶媒中で苛性アルカリを用いたケン化反応により行われる。
上記水酸基又は水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体は、後述する親水性極性基の種々の導入法によりアクリル系共重合体に導入できる。
【0020】
水酸基のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層及び非磁性層のいずれにおいても0.2〜2質量%であり、0.5〜2質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがさらに好ましい。水酸基の割合が0.2質量%以上であれば、イソシアネート系硬化剤との架橋反応を確保できるため好ましい。一方、水酸基の割合が2重量%以下であれば、溶剤に対する溶解性を確保できる。
【0021】
[エポキシ基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記窒素含有ラジカル重合性単量体単位と水酸基のほかに、エポキシ基を含む。エポキシ基は、加熱により環化反応を起こして水酸基を生ずることができる。したがって、エポキシ基は、前記水酸基と同様、イソシアネート系硬化剤と硬化反応し、強靭な塗膜を形成するために、エポキシ基を有する共重合可能な単量体を共重合することによりアクリル系共重合体に導入することができる。
エポキシ基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテルなどの不飽和アルコールのグリシジルエーテル類、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネートなどの不飽和酸のグリシジルエステル類、ブタジエンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセンなどのエポキシオレフィンなどを挙げることができる。
上記エポキシ基を含む共重合可能な単量体は、後述する親水性極性基の種々の導入法によりアクリル系共重合体に導入できる。
【0022】
エポキシ基のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層及び非磁性層のいずれにおいても0.2〜15質量%であり、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。エポキシ基の割合が0.2質量%以上であれば、アクリル系共重合体とイソシアネート系硬化剤との架橋反応性を確保できるため好ましい。一方、エポキシ基の割合が15重量%以下であれば、アクリル系共重合体の溶剤に対する溶解性を確保できる。
【0023】
[親水性極性基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、さらに親水性極性基を有する。親水性極性基は、上記水酸基及びエポキシ基以外の親水性を有する極性基であって、磁性粉末又は非磁性粉末の分散性を向上できるものであることが好ましい。
このような親水性極性基としては、例えば−SO3M、−PO(OM)2、−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウムを表す)、アミノ基、又は4級アンモニウム塩基が好ましく、中でも−SO3Mが分散性に優れるため特に好ましい。親水性極性基の含有量は、1×10−6〜50×10−5eq/gであることが好ましく、5×10−6〜20×10−5eq/gであることが好ましい。1×10−6eq/g以上であれば親水性極性基の効果を得ることができる。また50×10−5eq/g以下であれば、塗料粘度が高すぎて作業性が低下することもなく、取扱いも容易である。なお、本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記親水性極性基を2種類以上有していてもよく、例えば、−SO3Mの他に−COOMを併有していてもよい。
【0024】
アクリル系共重合体に親水性極性基を導入する方法としては、例えば、親水性極性基を含有しない、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基及びエポキシ基並びに水酸基及びエポキシ基を有しない(メタ)アクリレート系単量体からなるアクリレート系共重合体に親水性極性基を有する化合物を付加反応で導入する方法を挙げることができる。具体的には−SO3Mを(メタ)アクリレート系共重合体に導入する場合、先ず、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基を有する共重合可能な単量体、エポキシ基を有する共重合可能な単量体、(メタ)アクリレート系単量体、グリシジル基を有する共重合可能な単量体、及び必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を共重合させ、共重合と同時又は共重合体を得た後に−SO3Mを有する化合物と付加反応させることにより得られる。グリシジル基を導入するための共重合可能な単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を同時に併用してもよい。
【0025】
また、アクリル系共重合体に親水性極性基を導入する別の方法として、共重合親水性極性基を有する共重合可能な単量体を窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基を有する共重合可能な単量体、エポキシ基を有する共重合可能な単量体、並びに水酸基及びエポキシ基を有しない(メタ)アクリレート系単量体とともに共重合させてもよい。親水性極性基を有する共重合可能な単量体としては、例えば−SO3Mを導入する場合、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和炭化水素スルホン酸及びこれらの塩、(メタ)アクリル酸スルホエチルエステル、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル等の(メタ)アクリル酸のスルホアルキルエステル類及びこれらの塩などを挙げることができる。−SO3Mの他に−COOMの導入を導入する場合における−COOMを有する共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸やこれらの塩類を挙げることができる。
【0026】
さらに、アクリル系共重合体に上記親水性極性基を導入する別の方法として、親水性極性基含有ラジカル重合開始剤を用いて単量体混合物を共重合させる方法、片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤の存在下に単量体混合物を共重合させる方法を挙げることができる。
上記親水性極性基含有ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、単量体混合物の合計の質量に対して1〜10質量%の割合とすればよいが、好ましくは1〜5質量%である。また、上記片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤としては、重合反応において連鎖移動が可能で、かつ片末端に親水性極性基を有するものであれば特に限定されないが、片末端に親水性極性基を有するハロゲン化化合物、メルカプト化合物やジフェニルピクリルヒドラジン等を挙げることができる。
【0027】
上記ハロゲン化化合物の具体例としては、2−クロロエタンスルホン酸、2−クロロエタンスルホン酸ナトリウム、4−クロロフェニルスルホキシド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、4−(ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが例示される。この中でも2−クロロエタンスルホン酸ナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0028】
上記メルカプト化合物としては、好ましくは2−メルカプトエタンスルホン酸(塩)(ここで、「(塩)」とは、当該化合物が、塩の形態を含むことを意味する。)、3−メルカプト−1,2プロパンジオール、メルカプト酢酸(塩)、2−メルカプト−5−ベンゾイミダゾールスルホン酸(塩)、3−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプトブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、N(2−メルカプトプロピル)グリシン、チオグルコール酸アンモニウム又はβ−メルカプトエチルアミン塩酸塩が用いられる。これらの片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤は、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましく用いられる片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤は、極性の強い2−メルカプトエタンスルホン酸(塩)である。これらの連鎖移動剤の使用量は単量体の合計の質量に対し、0.1〜20質量%とすればよいが、好ましくは0.2〜20質量%であり、より好ましくは0.2〜15質量%である。
【0029】
上記親水性極性基のアクリル系共重合体に対する割合は、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。親水性極性基の割合が0.01質量%以上であれば、磁性粉末又は非磁性粉末の分散性を確保できるため好ましい。一方、20質量%以下であれば塗料粘度高すぎて作業性が低下することもないので好ましい。
【0030】
[(メタ)アクリレート系単量体単位]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基、及び親水性極性基の他に、さらに(メタ)アクリレート系単量体単位を含むことができる。(メタ)アクリレート系単量体単位には、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位と芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とが含まれ、これらは単独又は両者を併用することができる。
【0031】
アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を形成するアルキル(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は1種類又は2種類以上を併用してもよい。
【0032】
また、上記芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を形成する芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリレート系単量体単位のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層又は非磁性層において15〜75質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、15〜65質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート系単量体単位が15質量%以上含まれると、アクリル系共重合体がケトン類、エステル類等の有機溶剤への溶解が容易になる。また75質量%以下であれば、得られるアクリル系共重合体を結合剤として含む磁性層又は非磁性層塗膜の強度を確保することができる。
【0034】
また、(メタ)アクリレート系単量体として芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体を用いる場合、磁性層又は非磁性層の結合剤として用いられるアクリル系共重合体の質量に対して5〜45質量%の割合で含まれることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜35質量%であることがさらに好ましい。芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体の割合が5質量%以上であれば、塗膜において十分な平滑性(光沢)と耐久性が得られる等、強磁性粉末及び非磁性粉末の分散性を改良する効果が得られる。一方、45質量%以下であれば、所望の塗料粘度が得られるため好ましい。
【0035】
本発明で用いられるアクリル系共重合体の数平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。1,000以上であれば、得られる磁気記録媒体の物理的強度が低下することもなく、耐久性にも影響を与えることはない。また数平均分子量が20,0000以下であれば、所定濃度で塗料粘度が高く、作業性が著しく低下することもなく、また取扱いも容易である。
【0036】
上記共重合可能な単量体類、連鎖移動剤を含む重合反応系を共重合させるには、公知の重合方法、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を用いることができる。これらの重合方法のうち、得られたアクリル系共重合体を保存安定性の高い固形状体で容易に保存できる点から、乾燥作業性のよい懸濁重合や乳化重合を用いることが好ましく、特に乳化重合を用いることが好ましい。
【0037】
懸濁重合における懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物等のポリビニルアルコール系重合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マレイン酸−スチレン共重合体、マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体等の合成高分子;でんぷん、ゼラチン等の天然高分子などが挙げられる。
【0038】
また、乳化重合における乳化剤としては、例えば、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが挙げられる。
【0039】
重合条件は、用いる共重合可能な単量体類や重合開始剤、連鎖移動剤の種類等により異なるが、一般にオートクレーブ中にて、温度は50〜80℃程度、ゲージ圧力は1〜4MPa程度、時間は5〜30時間程度であることが好ましい。重合は、反応に不活性な気体の雰囲気下で行うことが反応制御のしやすさの点で好ましい。そのような気体としては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられ、好ましくは経済性の点から窒素が用いられる。
【0040】
重合に際しては、上記重合反応系に上述の成分以外に他の成分を添加してもよい。そのような成分としては、例えば乳化剤、電解質、高分子保護コロイド等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いられる結合剤は、さらに従来から結合剤で使用されている公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂及びこれらの混合物を併用できる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000ものを挙げることができる。
具体的には、ポリウレタン樹脂、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む共重合体、各種ゴム系樹脂を挙げられる。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物等が挙げられる。
本発明で用いられる結合剤に併用可能な樹脂の含有量は、アクリル系共重合体の100質量部に対し、1〜400質量部であることが好ましく、10〜300質量部であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明で用いられるアクリル系共重合体の含有量は、強磁性粉末又は非磁性粉末100質量部に対して5〜50質量部の範囲である。特に、その含有量を7〜45質量部の範囲内に設定することにより、磁性層又は非磁性層表面の光沢度が高くなる等の現象が見られ、強磁性粉末又は非磁性粉末の分散状態が良好であることが分かる。さらにその含有量を10〜40質量部の範囲内に設定することによって、電磁変換特性を著しく改善できる。含有量が5質量部以上であれば、強磁性粉末又は非磁性粉末が結合されずに粉落ち等が発生することはない。一方、50質量部以下であれば、強磁性粉末又は非磁性粉末の分散状態を良好に維持でき、磁性層における強磁性粉末の充填度の低下は少なく、かつ電磁変換特性も低下することはない。
【0043】
次に、本発明の磁性層、非磁性層を含む、非磁性支持体、製造方法、層構成、物理的性質についてさらに詳細に説明する。
[磁性層]
<強磁性粉末>
本発明の磁性層で用いられる強磁性粉末は、特に制限はないが、強磁性金属粉末又は六方晶フェライト粉末であることが好ましい。
(強磁性金属粉末)
本発明の磁性層で用いられる強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co,Al,Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
【0044】
これらの強磁性金属粉末は、後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理してもかまわない。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物又は酸化物を含むもの等であってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
【0045】
強磁性金属粉末の結晶子サイズは、8〜20nmであることが好ましく、10〜18nmであることがさらに好ましく、12〜16nmであることが最も好ましい。強磁性金属粉末の平均長軸長は、好ましくは0.01〜0.10μmであり、より好ましくは0.03〜0.09μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.08μmである。平均長軸長が0.01μm以上あれば熱揺らぎの影響を受けずに安定した磁化が得られ、また平均長軸長が0.10μm以下であればノイズを低く抑えることができる。本発明の磁性層に使用される強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、30〜50m2/gであることが好ましく、38〜48m2/gであることがさらに好ましい。これにより、良好な表面性と低ノイズを両立できる。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、pH4〜12であるが、好ましくはpH7〜10である。強磁性金属粉末は、必要に応じてAl、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は、強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり、表面処理を施すと、脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり、好ましい。
【0046】
強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ない方が好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また、形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば、針状、粒状、米粒状又は板状のいずれでもかまわないが、特に針状の強磁性金属粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、平均針状比(針状比(長軸長/短軸長)の算術平均)は、4〜12が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
【0047】
強磁性金属粉末の抗磁力Hcは、好ましくは160〜240kA/m(2000〜3000 Oe)であり、さらに好ましくは170〜230kA/m(2100〜2900 Oe)である。また飽和磁束密度は、好ましくは150〜300T・mであり、さらに好ましくは160〜290T・mである。飽和磁化σsは、好ましくは140〜170A・m2/kgであり、さらに好ましくは145〜160A・m2/kgである。
【0048】
(六方晶フェライト粉末)
トラック密度を上げる目的で磁気抵抗ヘッド(MRヘッド)を用いて再生する場合には磁気記録媒体自体のノイズを低く抑える必要がある。そのためには、本発明の磁性層で使用する六方晶フェライト粉末の平均板径は40nmとする必要がある。但し、平均板径が5nm未満では熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。そこで、本発明で使用される六方晶フェライト粉末の平均板径は、10〜35nmであることが好ましく、15〜30nmであることがさらに好ましい。平均板状比{板状比(板径/板厚)の算術平均}は、1〜15であることが好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。平均板状比が1〜15の範囲であれば、磁性層中の高充填性及び配向性を維持した状態で、粒子間のスタッキングによるノイズの発生を低く抑えることができる。上記粒子サイズ範囲にある六方晶フェライトのBET法による比表面積(SBET)は、10〜200m2/gを示す。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は、通常、狭いほど好ましい。粒子板径・板厚は、粒子TEM写真より500粒子を測定する。分布は正規分布でない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0049】
六方晶フェライト粉末の磁性体の抗磁力Hcは、40〜400kA/m(500〜5000 Oe)の範囲である。抗磁力Hcは、高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明における六方晶フェライト粉末の抗磁力Hcは、好ましくは160〜240kA/m(2000〜3000 Oe)程度であるが、より好ましくは175〜220kA/m(2200〜2800 Oe)である。ヘッドの飽和磁化が1.4Tを越える場合は、160kA/m(2000 Oe)以上にすることが好ましい。抗磁力Hcは、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と質量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは、40〜80A・m2/kgとすることが好ましい。飽和磁化σsは高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化σsの改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択こと等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0050】
六方晶フェライトの磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することもできる。表面処理剤として、例えば、無機化合物、有機化合物を使用できる。主な化合物としてはSi、Al、P等の化合物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。表面処理剤の使用量は、磁性体の質量に対して0.1〜10質量%である。六方晶フェライト磁性体のpHも分散には重要であり、通常、pH4〜12程度である。分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から前記pH値としてpH6〜11程度が選択される。六方晶フェライト磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0051】
六方晶フェライト粉末の製法としては、▲1▼酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後、溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱した後、洗浄、乾燥、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、乾燥し、1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る共沈法、等があり、本発明では六方晶バリウムフェライト粉末が特に好ましい。
【0052】
<添加剤>
本発明の磁気記録媒体において磁性層には分散効果、潤滑効果、帯電防止効果、可塑効果などを付与するための添加剤を使用してもよい。
これら添加剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等のベンゼン環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、(イソ)ノニルホスホン酸、(イソ)デシルホスホン酸、(イソ)ウンデシルホスホン酸、(イソ)ドデシルホスホン酸、(イソ)ヘキサデシルホスホン酸、(イソ)オクタデシルホスホン酸、(イソ)エイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、燐酸フェニル、燐酸ベンジル、燐酸フェネチル、燐酸α−メチルベンジル、燐酸1−メチル−1−フェネチル、燐酸ジフェニルメチル、燐酸ビフェニル、燐酸ベンジルフェニル、燐酸α−クミル、燐酸トルイル、燐酸キシリル、燐酸エチルフェニル、燐酸クメニル、燐酸プロピルフェニル、燐酸ブチルフェニル、燐酸ヘプチルフェニル、燐酸オクチルフェニル、燐酸ノニルフェニル等の芳香族燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、燐酸オクチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸イソオクチル、燐酸(イソ)ノニル、燐酸(イソ)デシル、燐酸(イソ)ウンデシル、燐酸(イソ)ドデシル、燐酸(イソ)ヘキサデシル、燐酸(イソ)オクタデシル、燐酸(イソ)エイコシル等の燐酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。
また、上記炭化水素基以外にもニトロ基及びF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基をもつものでもよい。
【0053】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0054】
これらの具体例としては、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3,ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製、デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0055】
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は、磁性層及び非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着又は結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着又は結合し、一度吸着した分散剤は金属又は金属化合物等の表面から脱着し難いと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面又は非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末又は非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末又は非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層及び磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層あるいは非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0056】
[非磁性層]
<非磁性粉末>
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層の間に非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層を有することができる。以下、この非磁性粉末について詳述する。
非磁性層で使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。
具体的には、二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr2O3、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等が単独又は2種類以上の組み合わせで使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0057】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。これら非磁性粉末の平均粒径は、0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組合せたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは0.01〜0.2μmである。0.005μm以上であれば良好な分散性が得られ、また2μm以下であれば、表面粗さが大きくなることはない。非磁性粉末の比表面積は、1〜100m2/gであり、好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。1m2/g以上であれば、表面粗さが大きすぎることはなく、また100m2/g以下であれば、所望の結合剤量で分散でき、良好な分散性が得られる。非磁性粉末のpHは、pH2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2以上であれば、高温、高湿下であっても摩擦係数が大きくなりすぎることはない。またpHが11以下であれば、十分な脂肪酸の遊離量が得られ、摩擦係数が大きくなりすぎることもない。
【0058】
これらの非磁性粉末の表面は、表面処理することによりAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnOを存在させることが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組合せて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後に、その表層にシリカを存在させる方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0059】
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20,ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0060】
非磁性層には、非磁性粉末と共にカーボンブラックを混合し、表面電気抵抗(Rs)を下げることができ、光透過率を小さくすることができる。光透過率の調整は、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0061】
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は、通常100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は、通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの平均粒子径は、5〜80nm、好ましく10〜50nmである。カーボンブラックのpHは、2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は、0.1〜1g/mlが好ましい。
【0062】
本発明の非磁性層で用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカ−ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは、上記無機質粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40質量%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは、単独又は組合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0063】
また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリル−スチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。
【0064】
非磁性層の潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0065】
[非磁性支持体]
上記の材料で調製した塗布液を非磁性支持体上に塗布して非磁性層及び/又は磁性層を形成する。本発明で用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾ−ルなどの公知のフィルムが使用できる。好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。また必要に応じ、磁性層面と非磁性支持体面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。
【0066】
これらの非磁性支持体には、あらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また本発明の非磁性支持体としてアルミ又はガラス基板を適用することも可能である。
【0067】
本発明で用いられる非磁性支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は、中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
得られた支持体の算術平均粗さは(Ra)の値[JIS B0660−1998、ISO 4287−1997]で0.1μm以下であることが、得られた磁気記録媒体のノイズが小さくなるので好ましい。
【0068】
[バックコート層、下塗り層]
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。本発明の支持体の磁性塗料及びバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。
【0069】
また、本発明の磁気記録媒体は、さらに非磁性支持体と磁性層又は非磁性層の間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層を設けることによって非磁性支持体と磁性層又は非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂が使用される。下塗り層は厚さとして0.5μm以下のものが用いられる。
【0070】
[製造方法]
本発明の磁気記録媒体は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に非磁性層塗布液及び/又は磁性層塗布液を所定の膜厚となるように塗布することによって製造する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性層塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
【0071】
本発明の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性層塗布液の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層磁性層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布する。
【0072】
上記磁性層は、異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。この極薄層の磁性層を安定的に塗布するためには、非磁性支持体上に無機粉末を含有する非磁性層を介在させて、その上に磁性層をウエット・オン・ウエットで塗布することが望ましい。
【0073】
磁性層塗布液の塗布層には、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を使用せず、無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置する、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは、強磁性金属微粉末の場合は、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライト粉末の場合は、一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また、異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向してもよい。
【0074】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また、磁石ゾ−ンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
【0075】
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し、磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することができる。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲である。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0076】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の磁性層の厚みは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化され、0.01〜0.1μmであり、好ましくは0.02〜0.08μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.08μmである。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。磁性層を複数設けた場合、磁性層厚みは、個々の磁性層の厚みとする。また、本発明の磁気記録媒体における非磁性支持体の厚みは、3〜80μmとすることが好ましい。
【0077】
[物理特性]
本発明の磁性層の飽和磁束密度は100〜300T・m(1000〜3000G)である。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143〜318kA/m(1800〜4000 Oe)であるが、好ましくは159〜279kA/m(2000〜3500 Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0078】
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面104〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm2)、残留伸びは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0079】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜120℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0080】
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0081】
磁性層のTOPO−3Dのmirau法で測定した中心面表面粗さRaは、4.0nm以下であり、好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロ−ル表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0082】
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0083】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」の表示は特に断らない限り「質量部」を示す。
【0084】
アクリル系共重合体の合成
[合成例1]
撹拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水360部、開始剤として過硫酸カリウム5部、炭酸ソーダ1.6部を仕込み、窒素置換後57℃に昇温した。一方、あらかじめ脱イオン水390部、ベンジルメタクリレート200部、ダイアセトンアクリルアミド200部、2−ヒドロキシメチルメタクリレート60部、アリルグリシジルエーテル40部、ラウリル硫酸ナトリウム10部をホモミキサーで混合乳化したものを上記重合容器中へ8時間をかけて均一に滴下させ、さらに57℃で2時間反応させ重合を完結した後、メタノール500部、硫酸ナトリウム50部を添加してポリマーを析出させた。析出したポリマーをメタノール5000部で2回、次いで脱イオン水5000部で4回洗浄し、ろ過、乾燥してアクリル系樹脂AC−1を得た。親水性極性基であるスルホン酸ナトリウム基含有量は6.2×10−5eq/g、水酸基含有量は92×10−5eq/g、エポキシ基含有量は70×10−5eq/gだった。
【0085】
[合成例2〜12]
合成例1と同様にして表1に示される単量体の種類、量比(質量%)で共重合し、同様の方法で処理してアクリル系樹脂AC−2〜12を得た。
【0086】
【表1】
【0087】
[比較合成例1〜6]
合成例1と同様にして表2に示される単量体の種類、量比(質量%)で共重合し、同様の方法で処理して比較例用のアクリル系樹脂(比較合成例1〜6)を得た。
【0088】
【表2】
【0089】
[実施例1]
磁性層塗布液の調製
強磁性針状金属粉末 100部
組成:Fe/Co/Al/Y=62/25/5/8,
表面処理剤:Al2O3,Y2O3,
抗磁力Hc:167kA/m(2100 Oe),
結晶子サイズ:11nm,
長軸長:60nm,
針状比:6,
BET比表面積SBET:70m2/g,
飽和磁化σs:110A・m2/kg(emu/g)
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂A 10部
ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール/シクロヘキサンジメタノール/アジピン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸=2/3/3/1mol比、Mn1500)
鎖延長剤(3−メチルペンタンジオール)
ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート)
重量平均分子量 65000、
Tg85℃、
ウレタン基濃度2.8meq/g、
SO3Na基濃度0.12meq/g
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0090】
非磁性層塗料液の調製
非磁性無機質粉体 85部
α−酸化鉄
表面処理剤:Al2O3,SiO2,
長軸径:0.15μm,
タップ密度:0.8,
針状比:7,
BET比表面積:52m2/g,
pH8,
DBP吸油量:33g/100g
カーボンブラック 20部
DBP吸油量:120ml/100g,pH:8,
BET比表面積:250m2/g,揮発分:1.5%
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂A 12部
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0091】
上記磁性層塗料及び非磁性層塗料の組成物のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料及び非磁性塗料を調製した。さらに上記非磁性層塗料を乾燥後の厚さが1.8μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。両層が未乾燥の状態で300T・m(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行なった後、70℃で24時間加熱硬化処理を行い3.8mm幅にスリットし磁気テープを作成した。
【0092】
[実施例2〜13]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表3に示したように変更し、実施例1と同様の方法で実施例2〜13を作成した。
【0093】
[比較例1〜5−2]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表3に示されるように変更し、実施例1と同様の方法で比較例1〜5−2を作成した。
【0094】
[実施例14]
磁性体を以下に示したように変更し、実施例14を作成した。
磁性層塗料液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9.1/0.2/0.8,
抗磁力Hc:195kA/m(2450 Oe),
板径:26nm,
板状比:4,
BET比表面積SBET:50m2/g,
飽和磁化σs:60A・m2/kg(emu/g)
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂 12部
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0095】
上記磁性層塗料の各成分を実施例1と同様の方法で磁性塗料を調製した。なお、非磁性層塗料については実施例1と同様の方法で調製した。
【0096】
さらに上記非磁性層塗料を乾燥後の厚さが1.8μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。両層が未乾燥の状態で300T・m(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行い、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で24時間加熱硬化処理を行い、3.8mm幅にスリットし磁気テープを作成した。
【0097】
[実施例15〜26]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表4に示したように変更し、実施例14と同様の方法で実施例14〜24を作成した。
【0098】
[比較例6〜10−2]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表4に示したように変更し、実施例14と同様の方法で比較例6〜10−2を作成した。
【0099】
〔測定方法〕
1.磁性層ゾル分率の測定
磁性層0.5gを秤取り、ヘキサン50mlに30分浸漬し、潤滑剤を抽出してヘキサンを除去した後、THF80mlに1時間浸漬してバインダーゾル分を溶出させた。THF及び溶出バインダー液を蒸発させた後、再度ヘキサンで潤滑剤を抽出してから真空乾燥機で乾燥し、ゾル分を秤量し、ゾル分率を算出した。
2.テープエッジ(磁性層)のクラックの測定
スリット後のテープエッジ部の磁性層面を顕微鏡で観察し、クラックが観察されたものをX、観察されなかったものを○とした。
3.磁性層表面粗さRaの測定
デジタルオプチカルプロフィメーター(WYKO製)を用いたる光干渉法により、カットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さをRaとした。
4.500パス走行後ヘッド汚れ
DDSドライブでサンプルテープを全長500パス繰り返し走行させ、走行後のヘッド汚れを観察した。汚れが見られたものをX、見られなかったものを○とした。さらにテープサンプルを60℃dry雰囲気下に7日間保存した後、同じ評価をした。
上記測定結果を表4に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表1〜4に示されるように窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基のいずれも本発明の範囲にある実施例1〜13(強磁性金属粉末)及び14〜26(六方晶フェライト粉末)は、いずれもテープエッジのクラックが発生しない。これに対して、比較例1、3〜5−2、及び比較例6、8〜10−2は、いずれもテープエッジのクラックが発生した。これより本発明の磁気記録媒体は、比較例と比べて磁性層の硬化性が向上していることが分かる。
また、走行後ヘッド汚れについては、本発明の実施例1〜13及び13〜26のいずれも初期及び7日保存後のヘッド汚れが見られなかった。これに対し、比較例1〜10−2ではいずれもヘッド汚れが見られた。これより本発明の磁気記録媒体は、比較例と比べて走行耐久性が向上していることが分かる。
さらに、磁性層のゾル分率と磁性層表面粗さについては、本発明の実施例1〜13及び13〜26のいずれも磁性層のゾル分率が低く、かつ表面粗さも小さい。これに対して、比較例5−1、5−2、10−1及び10−2では表面粗さが小さい場合であっても磁性層のゾル分率が大きい場合には、ヘッド汚れが見られた。これより、ゾル分率が低い場合には、耐久性と保存安定性を向上できることが分かる。
また、磁性層と非磁性層の(メタ)アクリル系単量体単位、窒素含有ラジカル共重合体単量体単位の含有量を変えた場合であっても、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基のいずれも本発明の範囲にある場合には、いずれもテープエッジのクラックが発生せず、かつヘッド汚れも見られなかった(実施例13、実施例26)。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気記録媒体の磁性層及び/又は非磁性層で用いられる結合剤は、所定割合の窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基、及び親水性極性基を有するアクリル系共重合体を含む。これにより本発明の磁気記録媒体は、良好に分散した強磁性粉末又は非磁性粉末を含む磁性層又は非磁性層が得られるため、磁性層の平滑性を向上することができ、エラーレートの少ない優れた電磁変換特性を得ることができる。また、本発明の磁気記録媒体であれば、磁性層の硬化性が高く、優れた走行耐久性と保存安定性を有する磁気記録媒体を提供できる。さらに本発明の磁気記録媒体は、非塩化ビニル系の結合剤を用いるため、塩化水素ガスの問題のない信頼性に優れた磁気記録媒体であることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布型の磁気記録媒体に関し、さらに詳しくは、腐食性ガスを放出することによる問題がなく、優れた電磁変換特性、走行耐久性及び保存安定性を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、様々な情報を記録し、かつ記録した情報を再生する必要があるため、長期に亘る保存安定性と耐久性を有することが要求される。磁気記録媒体は、通常、磁性粉末、結合剤、有機溶剤、その他必要な成分を含む磁性層塗料を、ポリエステルフィルム等の支持体上に塗布し、これを乾燥することにより製造される。この際、使用される結合剤としては、磁性体粉末の分散性に優れ、磁気記録媒体に優れた電気的特性を付与すると同時に、耐久性にも優れるものが望まれる。
【0003】
近年、磁気記録媒体の高性能化に伴い、0.3μm以下の記録波長を用いて高密度記録することが要求される。このような高密度記録用の磁気記録媒体は、抗磁力Hcが高く、かつ粒径が小さい磁性体粉末を用いる必要がある。しかし、このような磁性体粉末は、粒径が小さいため、極めて凝集しやすい。このため、磁性粉末の分散性及び耐久性に優れた塩化ビニル系樹脂を含む結合剤が磁性層用の結合剤として広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂は熱安定性が悪いと、光、熱などのエネルギーにより分解され、微量ながら塩化水素ガス(HCl)を放出するという欠点がある。このため、放出された塩化水素ガスにより磁性層が変質を起こし、磁性層の耐久性が低下するという問題があった。また、塩化水素ガスは、磁性層中の磁性粉末粒子を酸化あるいは変性させるため、磁気記録媒体の出力を低下させるという問題があった。さらに、塩化水素ガスは、記録再生ヘッドを腐食するという問題もあった。
【0005】
上記問題を解決するため、最近では塩化ビニル系樹脂に代わる樹脂としてアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の非塩化ビニル系樹脂を用いた結合剤に関する研究が進められている。しかし、これらの樹脂を単独で用いた場合、いずれも凝集力が強すぎるため、高抗磁力Hcを有する粒径0.1μm以下の微小な磁性粉末を磁性層に分散させ、かつ安定して保持することができなかった。このため、これらの樹脂を高記録密度の磁気記録媒体における磁性層用の結合剤として使用することはできなかった。
このような問題を解決し得る結合剤として、最近ではアクリル樹脂とウレタン樹脂とを組み合せた結合剤の開発もされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、磁性層用の結合剤として極性基を有する分子量1,000〜10,000のアクリル樹脂とポリウレタン樹脂とを含む磁気記録媒体が開示されている。しかし、結合剤の磁性層における分散性については、結合剤に含まれるアクリル樹脂の分子量、極性基種、及び添加量のみに着目し、アクリル樹脂の骨格が分散性に及ぼす影響を考慮していない。このため、磁性層における結合剤として超微粒子の強磁性粉末を良好に分散させることはできない。また、特許文献1に記載される発明は、磁性層で用いられる結合剤に注目した発明であって、非磁性層で用いられる結合剤を提供することを目的とするものではない。
【0007】
また、特許文献2は、窒素を含むラジカル重合性単量体、窒素を含まない親水性極性基を有するラジカル重合性単量体、及びホモポリマーの溶解パラメーターが9.5以上で極性基を有しないラジカル重合性単量体を共重合したアクリル系共重合体からなる結合剤を用いた磁気記録媒体を開示する。しかし、最近の磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)に対応した塗布型超薄層磁気記録媒体で用いられている長軸長0.1μm以下の微細な強磁性金属粉末又は40nm以下の六方晶フェライト粉末を強磁性粉末として用いる場合、特許文献2に記載された結合剤では、上記強磁性粉末を良好に分散した磁性層は得られず、必要な電磁変換特性や磁性層の表面平滑性を確保することはできない。また、特許文献2に記載された発明は、前記同様、磁性層で用いられる結合剤に注目した発明であって、非磁性層で用いられる結合剤を提供することを目的とするものではない。
【0008】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、微細な強磁性粉末又は非磁性粉末であっても、良好に分散でき、表面状態の良好な磁性層又は非磁性層が得られる非塩化ビニル系の結合剤を用いた磁気記録媒体であって、エラーレートが低く、優れた電磁変換特性を有し、かつ優れた走行耐久性と保存安定性とを有する磁気記録媒体を提供することにある。特に本発明の目的は、磁性層に磁気記録された信号を磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)で再生する磁気記録再生システムにおいて、高出力を保持した状態で再生可能な磁気記録媒体を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−176016号公報(特許請求の範囲、第4頁左下欄第10行目〜右下欄第7行目)
【特許文献2】
特開平8−180366号公報(請求項1、第2頁[0005])
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、磁性層を有する磁気記録媒体、及び非磁性層及び磁性層の重層構造を有する磁気記録媒体において、これまで磁性層及び非磁性層の結合剤として用いられてきた塩化ビニル系樹脂に代わる結合剤としてアクリル系樹脂の実用化を目指して鋭意検討した。その結果、従来のアクリル系樹脂では磁気ヘッドと磁性層の接触(ヘッド当たり)が悪くなったり、繰り返される磁気ヘッドの摺動により磁性層表面が削れ、ドロップアウトやヘッド汚れの原因となる等の問題があることが分かった。また、非磁性層の結合剤としてアクリル系樹脂を使用した場合、磁性層の表面が粗くなってスペーシングロスを生じ、電磁変換特性に悪影響を与えることも分かった。さらに、従来のアクリル系樹脂にポリウレタン樹脂を併用すると、イソシアネートを含む硬化剤を使用したときに、硬化性を確保したままで強靭な塗膜を形成することは困難であることが分かった。
【0011】
本発明者らは、上記知見に基づき鋭意検討を重ねた結果、窒素を含むラジカル重合性単量体単位と所定量の官能基とを有する所定のアクリレート系共重合体を含む結合剤を使用すれば、強磁性粉末が良好に分散した磁性層及び非磁性粉末が良好に分散した非磁性層が得られ、かつ磁性層と非磁性層の間の力学的強度を高めることができることを見出した。そして、本発明者らは、さらにこの結合剤を用いて得られた磁気記録媒体が優れた電磁変換特性を有すると共に、走行耐久性及び保存安定性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有するか、又は非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、前記磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤は、アクリル系共重合体を含有し、前記アクリル系共重合体は、窒素を含有するラジカル重合性単量体(以下、「窒素含有ラジカル重合性単量体」と記す)単位を1〜75質量%、水酸基を0.2〜2質量%、エポキシ基を0.2〜15質量%の割合で含み、かつ親水性極性基を有する。
【0013】
本発明は、所定の割合の窒素含有ラジカル重合性単量体単位と所定の割合の官能基を含むアクリル系共重合体を結合剤に用いることで、磁性層では0.2μm以下の微粒子強磁性粉末を良好に分散でき、また非磁性層では非磁性粉末を良好に分散できる。さらに上記アクリル系共重合体は、熱、光、薬品などに対して優れた熱安定性及び耐久性を示すので、本発明の磁気記録媒体は、光、熱などのエネルギーが加えられても分解せず、塩化水素ガス(腐食性ガス)を生じることはない。また、塩化水素ガスを生じないため、磁気記録媒体が変性されて機械的性質を劣化させることもなく、磁性層中の磁性粉末粒子に悪影響を及ぼして出力を低下させることもない。さらに、記録再生ヘッドを腐食させない等の多くのメリットを有する。
【0014】
また、本発明の磁気記録媒体は、磁性層に磁気記録された信号を磁気抵抗型磁気ヘッド(MRヘッド)で再生する磁気記録再生システムで用いるための磁気記録媒体であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気記録媒体をさらに詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体は、磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤がアクリル系共重合体を含有する。
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、少なくとも▲1▼窒素含有ラジカル重合性単量体単位、▲2▼水酸基、▲3▼エポキシ基、及び▲4▼親水性極性基を含む。さらに本発明は、▲1▼の単量体単位及び▲2▼〜▲4▼の官能基を有さない他の(メタ)アクリレート系単量体単位を含むものであってもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものである。
また、上記▲1▼〜▲4▼の含有量(質量%)は、磁性層及び非磁性層に含まれるアクリル系共重合体のそれぞれについて独立に決定することができ、いずれも各アクリル系共重合体の質量に対するものである。磁性層と非磁性層の両層にアクリル系共重合体を含む場合、上記▲1▼〜▲4▼の含有量が異なるアクリル系共重合体を磁性層及び非磁性層のそれぞれに含有させることができ、あるいは磁性層と非磁性層の両層で同一のアクリル系共重合体を含有させることもできる。
【0016】
[窒素含有ラジカル重合性単量体単位]
本発明で使用される窒素含有ラジカル重合性単量体単位を形成する窒素含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカルバゾール、2−ビニル−4,6−ジアミノ−5−トリアジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、マレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0017】
窒素含有ラジカル重合性単量体単位は、磁性層又は非磁性層において1〜75質量%の割合で含まれ、好ましくは2〜60質量%であり、より好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは5〜45質量%である。窒素含有ラジカル重合性単量体単位を1質量%以上含めば、磁性層又は非磁性層において凝集を生じることなく強磁性粉末又は非磁性粉末を良好に分散できる。また、ポリウレタン樹脂と併用した場合であっても、ポリウレタン樹脂との相溶性が低下することはない。一方、75質量%以下であれば、溶剤の溶解性を確保できるため好ましい。
【0018】
[水酸基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体には水酸基が含まれる。アクリル系共重合体に水酸基が含まれると、水酸基がイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と硬化反応し、強靭な磁性層塗膜及び非磁性層塗膜を形成できる。水酸基は、水酸基又は水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体を共重合することによってアクリル系共重合体に導入することができる。
水酸基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチルモノ(メタ)アリルエーテル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類、(メタ)アリルアルコール等を挙げることができる。
【0019】
上記水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニルを挙げることができる。水酸基への置換方法は、例えば、ビニルアルコール単位については酢酸ビニルを共重合した後、溶媒中で苛性アルカリを用いたケン化反応により行われる。
上記水酸基又は水酸基に置換し得る基を有する共重合可能な単量体は、後述する親水性極性基の種々の導入法によりアクリル系共重合体に導入できる。
【0020】
水酸基のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層及び非磁性層のいずれにおいても0.2〜2質量%であり、0.5〜2質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがさらに好ましい。水酸基の割合が0.2質量%以上であれば、イソシアネート系硬化剤との架橋反応を確保できるため好ましい。一方、水酸基の割合が2重量%以下であれば、溶剤に対する溶解性を確保できる。
【0021】
[エポキシ基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記窒素含有ラジカル重合性単量体単位と水酸基のほかに、エポキシ基を含む。エポキシ基は、加熱により環化反応を起こして水酸基を生ずることができる。したがって、エポキシ基は、前記水酸基と同様、イソシアネート系硬化剤と硬化反応し、強靭な塗膜を形成するために、エポキシ基を有する共重合可能な単量体を共重合することによりアクリル系共重合体に導入することができる。
エポキシ基を有する共重合可能な単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテルなどの不飽和アルコールのグリシジルエーテル類、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネートなどの不飽和酸のグリシジルエステル類、ブタジエンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセンなどのエポキシオレフィンなどを挙げることができる。
上記エポキシ基を含む共重合可能な単量体は、後述する親水性極性基の種々の導入法によりアクリル系共重合体に導入できる。
【0022】
エポキシ基のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層及び非磁性層のいずれにおいても0.2〜15質量%であり、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。エポキシ基の割合が0.2質量%以上であれば、アクリル系共重合体とイソシアネート系硬化剤との架橋反応性を確保できるため好ましい。一方、エポキシ基の割合が15重量%以下であれば、アクリル系共重合体の溶剤に対する溶解性を確保できる。
【0023】
[親水性極性基]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、さらに親水性極性基を有する。親水性極性基は、上記水酸基及びエポキシ基以外の親水性を有する極性基であって、磁性粉末又は非磁性粉末の分散性を向上できるものであることが好ましい。
このような親水性極性基としては、例えば−SO3M、−PO(OM)2、−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウムを表す)、アミノ基、又は4級アンモニウム塩基が好ましく、中でも−SO3Mが分散性に優れるため特に好ましい。親水性極性基の含有量は、1×10−6〜50×10−5eq/gであることが好ましく、5×10−6〜20×10−5eq/gであることが好ましい。1×10−6eq/g以上であれば親水性極性基の効果を得ることができる。また50×10−5eq/g以下であれば、塗料粘度が高すぎて作業性が低下することもなく、取扱いも容易である。なお、本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記親水性極性基を2種類以上有していてもよく、例えば、−SO3Mの他に−COOMを併有していてもよい。
【0024】
アクリル系共重合体に親水性極性基を導入する方法としては、例えば、親水性極性基を含有しない、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基及びエポキシ基並びに水酸基及びエポキシ基を有しない(メタ)アクリレート系単量体からなるアクリレート系共重合体に親水性極性基を有する化合物を付加反応で導入する方法を挙げることができる。具体的には−SO3Mを(メタ)アクリレート系共重合体に導入する場合、先ず、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基を有する共重合可能な単量体、エポキシ基を有する共重合可能な単量体、(メタ)アクリレート系単量体、グリシジル基を有する共重合可能な単量体、及び必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を共重合させ、共重合と同時又は共重合体を得た後に−SO3Mを有する化合物と付加反応させることにより得られる。グリシジル基を導入するための共重合可能な単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を同時に併用してもよい。
【0025】
また、アクリル系共重合体に親水性極性基を導入する別の方法として、共重合親水性極性基を有する共重合可能な単量体を窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基を有する共重合可能な単量体、エポキシ基を有する共重合可能な単量体、並びに水酸基及びエポキシ基を有しない(メタ)アクリレート系単量体とともに共重合させてもよい。親水性極性基を有する共重合可能な単量体としては、例えば−SO3Mを導入する場合、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和炭化水素スルホン酸及びこれらの塩、(メタ)アクリル酸スルホエチルエステル、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル等の(メタ)アクリル酸のスルホアルキルエステル類及びこれらの塩などを挙げることができる。−SO3Mの他に−COOMの導入を導入する場合における−COOMを有する共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸やこれらの塩類を挙げることができる。
【0026】
さらに、アクリル系共重合体に上記親水性極性基を導入する別の方法として、親水性極性基含有ラジカル重合開始剤を用いて単量体混合物を共重合させる方法、片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤の存在下に単量体混合物を共重合させる方法を挙げることができる。
上記親水性極性基含有ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、単量体混合物の合計の質量に対して1〜10質量%の割合とすればよいが、好ましくは1〜5質量%である。また、上記片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤としては、重合反応において連鎖移動が可能で、かつ片末端に親水性極性基を有するものであれば特に限定されないが、片末端に親水性極性基を有するハロゲン化化合物、メルカプト化合物やジフェニルピクリルヒドラジン等を挙げることができる。
【0027】
上記ハロゲン化化合物の具体例としては、2−クロロエタンスルホン酸、2−クロロエタンスルホン酸ナトリウム、4−クロロフェニルスルホキシド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、4−(ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが例示される。この中でも2−クロロエタンスルホン酸ナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0028】
上記メルカプト化合物としては、好ましくは2−メルカプトエタンスルホン酸(塩)(ここで、「(塩)」とは、当該化合物が、塩の形態を含むことを意味する。)、3−メルカプト−1,2プロパンジオール、メルカプト酢酸(塩)、2−メルカプト−5−ベンゾイミダゾールスルホン酸(塩)、3−メルカプト−2−ブタノール、2−メルカプトブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、N(2−メルカプトプロピル)グリシン、チオグルコール酸アンモニウム又はβ−メルカプトエチルアミン塩酸塩が用いられる。これらの片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤は、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましく用いられる片末端に親水性極性基を有する連鎖移動剤は、極性の強い2−メルカプトエタンスルホン酸(塩)である。これらの連鎖移動剤の使用量は単量体の合計の質量に対し、0.1〜20質量%とすればよいが、好ましくは0.2〜20質量%であり、より好ましくは0.2〜15質量%である。
【0029】
上記親水性極性基のアクリル系共重合体に対する割合は、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。親水性極性基の割合が0.01質量%以上であれば、磁性粉末又は非磁性粉末の分散性を確保できるため好ましい。一方、20質量%以下であれば塗料粘度高すぎて作業性が低下することもないので好ましい。
【0030】
[(メタ)アクリレート系単量体単位]
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、上記窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基、及び親水性極性基の他に、さらに(メタ)アクリレート系単量体単位を含むことができる。(メタ)アクリレート系単量体単位には、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位と芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とが含まれ、これらは単独又は両者を併用することができる。
【0031】
アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を形成するアルキル(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は1種類又は2種類以上を併用してもよい。
【0032】
また、上記芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を形成する芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等を挙げることができ、特にベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリレート系単量体単位のアクリル系共重合体に対する割合は、磁性層又は非磁性層において15〜75質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましく、15〜65質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート系単量体単位が15質量%以上含まれると、アクリル系共重合体がケトン類、エステル類等の有機溶剤への溶解が容易になる。また75質量%以下であれば、得られるアクリル系共重合体を結合剤として含む磁性層又は非磁性層塗膜の強度を確保することができる。
【0034】
また、(メタ)アクリレート系単量体として芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体を用いる場合、磁性層又は非磁性層の結合剤として用いられるアクリル系共重合体の質量に対して5〜45質量%の割合で含まれることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜35質量%であることがさらに好ましい。芳香族環を有する(メタ)アクリレート系単量体の割合が5質量%以上であれば、塗膜において十分な平滑性(光沢)と耐久性が得られる等、強磁性粉末及び非磁性粉末の分散性を改良する効果が得られる。一方、45質量%以下であれば、所望の塗料粘度が得られるため好ましい。
【0035】
本発明で用いられるアクリル系共重合体の数平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。1,000以上であれば、得られる磁気記録媒体の物理的強度が低下することもなく、耐久性にも影響を与えることはない。また数平均分子量が20,0000以下であれば、所定濃度で塗料粘度が高く、作業性が著しく低下することもなく、また取扱いも容易である。
【0036】
上記共重合可能な単量体類、連鎖移動剤を含む重合反応系を共重合させるには、公知の重合方法、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を用いることができる。これらの重合方法のうち、得られたアクリル系共重合体を保存安定性の高い固形状体で容易に保存できる点から、乾燥作業性のよい懸濁重合や乳化重合を用いることが好ましく、特に乳化重合を用いることが好ましい。
【0037】
懸濁重合における懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物等のポリビニルアルコール系重合体;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マレイン酸−スチレン共重合体、マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体等の合成高分子;でんぷん、ゼラチン等の天然高分子などが挙げられる。
【0038】
また、乳化重合における乳化剤としては、例えば、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが挙げられる。
【0039】
重合条件は、用いる共重合可能な単量体類や重合開始剤、連鎖移動剤の種類等により異なるが、一般にオートクレーブ中にて、温度は50〜80℃程度、ゲージ圧力は1〜4MPa程度、時間は5〜30時間程度であることが好ましい。重合は、反応に不活性な気体の雰囲気下で行うことが反応制御のしやすさの点で好ましい。そのような気体としては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられ、好ましくは経済性の点から窒素が用いられる。
【0040】
重合に際しては、上記重合反応系に上述の成分以外に他の成分を添加してもよい。そのような成分としては、例えば乳化剤、電解質、高分子保護コロイド等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いられる結合剤は、さらに従来から結合剤で使用されている公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂及びこれらの混合物を併用できる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000ものを挙げることができる。
具体的には、ポリウレタン樹脂、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む共重合体、各種ゴム系樹脂を挙げられる。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物等が挙げられる。
本発明で用いられる結合剤に併用可能な樹脂の含有量は、アクリル系共重合体の100質量部に対し、1〜400質量部であることが好ましく、10〜300質量部であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明で用いられるアクリル系共重合体の含有量は、強磁性粉末又は非磁性粉末100質量部に対して5〜50質量部の範囲である。特に、その含有量を7〜45質量部の範囲内に設定することにより、磁性層又は非磁性層表面の光沢度が高くなる等の現象が見られ、強磁性粉末又は非磁性粉末の分散状態が良好であることが分かる。さらにその含有量を10〜40質量部の範囲内に設定することによって、電磁変換特性を著しく改善できる。含有量が5質量部以上であれば、強磁性粉末又は非磁性粉末が結合されずに粉落ち等が発生することはない。一方、50質量部以下であれば、強磁性粉末又は非磁性粉末の分散状態を良好に維持でき、磁性層における強磁性粉末の充填度の低下は少なく、かつ電磁変換特性も低下することはない。
【0043】
次に、本発明の磁性層、非磁性層を含む、非磁性支持体、製造方法、層構成、物理的性質についてさらに詳細に説明する。
[磁性層]
<強磁性粉末>
本発明の磁性層で用いられる強磁性粉末は、特に制限はないが、強磁性金属粉末又は六方晶フェライト粉末であることが好ましい。
(強磁性金属粉末)
本発明の磁性層で用いられる強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co,Al,Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
【0044】
これらの強磁性金属粉末は、後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理してもかまわない。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物又は酸化物を含むもの等であってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
【0045】
強磁性金属粉末の結晶子サイズは、8〜20nmであることが好ましく、10〜18nmであることがさらに好ましく、12〜16nmであることが最も好ましい。強磁性金属粉末の平均長軸長は、好ましくは0.01〜0.10μmであり、より好ましくは0.03〜0.09μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.08μmである。平均長軸長が0.01μm以上あれば熱揺らぎの影響を受けずに安定した磁化が得られ、また平均長軸長が0.10μm以下であればノイズを低く抑えることができる。本発明の磁性層に使用される強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、30〜50m2/gであることが好ましく、38〜48m2/gであることがさらに好ましい。これにより、良好な表面性と低ノイズを両立できる。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、pH4〜12であるが、好ましくはpH7〜10である。強磁性金属粉末は、必要に応じてAl、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は、強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり、表面処理を施すと、脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり、好ましい。
【0046】
強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ない方が好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また、形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば、針状、粒状、米粒状又は板状のいずれでもかまわないが、特に針状の強磁性金属粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、平均針状比(針状比(長軸長/短軸長)の算術平均)は、4〜12が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。
【0047】
強磁性金属粉末の抗磁力Hcは、好ましくは160〜240kA/m(2000〜3000 Oe)であり、さらに好ましくは170〜230kA/m(2100〜2900 Oe)である。また飽和磁束密度は、好ましくは150〜300T・mであり、さらに好ましくは160〜290T・mである。飽和磁化σsは、好ましくは140〜170A・m2/kgであり、さらに好ましくは145〜160A・m2/kgである。
【0048】
(六方晶フェライト粉末)
トラック密度を上げる目的で磁気抵抗ヘッド(MRヘッド)を用いて再生する場合には磁気記録媒体自体のノイズを低く抑える必要がある。そのためには、本発明の磁性層で使用する六方晶フェライト粉末の平均板径は40nmとする必要がある。但し、平均板径が5nm未満では熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。そこで、本発明で使用される六方晶フェライト粉末の平均板径は、10〜35nmであることが好ましく、15〜30nmであることがさらに好ましい。平均板状比{板状比(板径/板厚)の算術平均}は、1〜15であることが好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。平均板状比が1〜15の範囲であれば、磁性層中の高充填性及び配向性を維持した状態で、粒子間のスタッキングによるノイズの発生を低く抑えることができる。上記粒子サイズ範囲にある六方晶フェライトのBET法による比表面積(SBET)は、10〜200m2/gを示す。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は、通常、狭いほど好ましい。粒子板径・板厚は、粒子TEM写真より500粒子を測定する。分布は正規分布でない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0049】
六方晶フェライト粉末の磁性体の抗磁力Hcは、40〜400kA/m(500〜5000 Oe)の範囲である。抗磁力Hcは、高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明における六方晶フェライト粉末の抗磁力Hcは、好ましくは160〜240kA/m(2000〜3000 Oe)程度であるが、より好ましくは175〜220kA/m(2200〜2800 Oe)である。ヘッドの飽和磁化が1.4Tを越える場合は、160kA/m(2000 Oe)以上にすることが好ましい。抗磁力Hcは、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と質量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは、40〜80A・m2/kgとすることが好ましい。飽和磁化σsは高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化σsの改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択こと等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0050】
六方晶フェライトの磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することもできる。表面処理剤として、例えば、無機化合物、有機化合物を使用できる。主な化合物としてはSi、Al、P等の化合物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。表面処理剤の使用量は、磁性体の質量に対して0.1〜10質量%である。六方晶フェライト磁性体のpHも分散には重要であり、通常、pH4〜12程度である。分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から前記pH値としてpH6〜11程度が選択される。六方晶フェライト磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0051】
六方晶フェライト粉末の製法としては、▲1▼酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後、溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱した後、洗浄、乾燥、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、乾燥し、1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る共沈法、等があり、本発明では六方晶バリウムフェライト粉末が特に好ましい。
【0052】
<添加剤>
本発明の磁気記録媒体において磁性層には分散効果、潤滑効果、帯電防止効果、可塑効果などを付与するための添加剤を使用してもよい。
これら添加剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等のベンゼン環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、(イソ)ノニルホスホン酸、(イソ)デシルホスホン酸、(イソ)ウンデシルホスホン酸、(イソ)ドデシルホスホン酸、(イソ)ヘキサデシルホスホン酸、(イソ)オクタデシルホスホン酸、(イソ)エイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、燐酸フェニル、燐酸ベンジル、燐酸フェネチル、燐酸α−メチルベンジル、燐酸1−メチル−1−フェネチル、燐酸ジフェニルメチル、燐酸ビフェニル、燐酸ベンジルフェニル、燐酸α−クミル、燐酸トルイル、燐酸キシリル、燐酸エチルフェニル、燐酸クメニル、燐酸プロピルフェニル、燐酸ブチルフェニル、燐酸ヘプチルフェニル、燐酸オクチルフェニル、燐酸ノニルフェニル等の芳香族燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、燐酸オクチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸イソオクチル、燐酸(イソ)ノニル、燐酸(イソ)デシル、燐酸(イソ)ウンデシル、燐酸(イソ)ドデシル、燐酸(イソ)ヘキサデシル、燐酸(イソ)オクタデシル、燐酸(イソ)エイコシル等の燐酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。
また、上記炭化水素基以外にもニトロ基及びF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基をもつものでもよい。
【0053】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0054】
これらの具体例としては、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3,ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製、デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0055】
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は、磁性層及び非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着又は結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着又は結合し、一度吸着した分散剤は金属又は金属化合物等の表面から脱着し難いと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面又は非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末又は非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末又は非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層及び磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層あるいは非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0056】
[非磁性層]
<非磁性粉末>
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層の間に非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層を有することができる。以下、この非磁性粉末について詳述する。
非磁性層で使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。
具体的には、二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr2O3、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等が単独又は2種類以上の組み合わせで使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0057】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。これら非磁性粉末の平均粒径は、0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組合せたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは0.01〜0.2μmである。0.005μm以上であれば良好な分散性が得られ、また2μm以下であれば、表面粗さが大きくなることはない。非磁性粉末の比表面積は、1〜100m2/gであり、好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。1m2/g以上であれば、表面粗さが大きすぎることはなく、また100m2/g以下であれば、所望の結合剤量で分散でき、良好な分散性が得られる。非磁性粉末のpHは、pH2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2以上であれば、高温、高湿下であっても摩擦係数が大きくなりすぎることはない。またpHが11以下であれば、十分な脂肪酸の遊離量が得られ、摩擦係数が大きくなりすぎることもない。
【0058】
これらの非磁性粉末の表面は、表面処理することによりAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnOを存在させることが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組合せて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後に、その表層にシリカを存在させる方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0059】
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20,ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0060】
非磁性層には、非磁性粉末と共にカーボンブラックを混合し、表面電気抵抗(Rs)を下げることができ、光透過率を小さくすることができる。光透過率の調整は、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0061】
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は、通常100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は、通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの平均粒子径は、5〜80nm、好ましく10〜50nmである。カーボンブラックのpHは、2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は、0.1〜1g/mlが好ましい。
【0062】
本発明の非磁性層で用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカ−ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは、上記無機質粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40質量%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは、単独又は組合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0063】
また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリル−スチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。
【0064】
非磁性層の潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0065】
[非磁性支持体]
上記の材料で調製した塗布液を非磁性支持体上に塗布して非磁性層及び/又は磁性層を形成する。本発明で用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾ−ルなどの公知のフィルムが使用できる。好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。また必要に応じ、磁性層面と非磁性支持体面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。
【0066】
これらの非磁性支持体には、あらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また本発明の非磁性支持体としてアルミ又はガラス基板を適用することも可能である。
【0067】
本発明で用いられる非磁性支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は、中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
得られた支持体の算術平均粗さは(Ra)の値[JIS B0660−1998、ISO 4287−1997]で0.1μm以下であることが、得られた磁気記録媒体のノイズが小さくなるので好ましい。
【0068】
[バックコート層、下塗り層]
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。本発明の支持体の磁性塗料及びバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。
【0069】
また、本発明の磁気記録媒体は、さらに非磁性支持体と磁性層又は非磁性層の間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層を設けることによって非磁性支持体と磁性層又は非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂が使用される。下塗り層は厚さとして0.5μm以下のものが用いられる。
【0070】
[製造方法]
本発明の磁気記録媒体は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に非磁性層塗布液及び/又は磁性層塗布液を所定の膜厚となるように塗布することによって製造する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性層塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
【0071】
本発明の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性層塗布液の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層磁性層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布する。
【0072】
上記磁性層は、異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。この極薄層の磁性層を安定的に塗布するためには、非磁性支持体上に無機粉末を含有する非磁性層を介在させて、その上に磁性層をウエット・オン・ウエットで塗布することが望ましい。
【0073】
磁性層塗布液の塗布層には、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を使用せず、無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置する、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは、強磁性金属微粉末の場合は、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライト粉末の場合は、一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また、異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向してもよい。
【0074】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また、磁石ゾ−ンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
【0075】
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し、磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することができる。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲である。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0076】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の磁性層の厚みは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化され、0.01〜0.1μmであり、好ましくは0.02〜0.08μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.08μmである。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。磁性層を複数設けた場合、磁性層厚みは、個々の磁性層の厚みとする。また、本発明の磁気記録媒体における非磁性支持体の厚みは、3〜80μmとすることが好ましい。
【0077】
[物理特性]
本発明の磁性層の飽和磁束密度は100〜300T・m(1000〜3000G)である。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143〜318kA/m(1800〜4000 Oe)であるが、好ましくは159〜279kA/m(2000〜3500 Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0078】
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面104〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm2)、残留伸びは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0079】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜120℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0080】
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0081】
磁性層のTOPO−3Dのmirau法で測定した中心面表面粗さRaは、4.0nm以下であり、好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロ−ル表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0082】
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0083】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」の表示は特に断らない限り「質量部」を示す。
【0084】
アクリル系共重合体の合成
[合成例1]
撹拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水360部、開始剤として過硫酸カリウム5部、炭酸ソーダ1.6部を仕込み、窒素置換後57℃に昇温した。一方、あらかじめ脱イオン水390部、ベンジルメタクリレート200部、ダイアセトンアクリルアミド200部、2−ヒドロキシメチルメタクリレート60部、アリルグリシジルエーテル40部、ラウリル硫酸ナトリウム10部をホモミキサーで混合乳化したものを上記重合容器中へ8時間をかけて均一に滴下させ、さらに57℃で2時間反応させ重合を完結した後、メタノール500部、硫酸ナトリウム50部を添加してポリマーを析出させた。析出したポリマーをメタノール5000部で2回、次いで脱イオン水5000部で4回洗浄し、ろ過、乾燥してアクリル系樹脂AC−1を得た。親水性極性基であるスルホン酸ナトリウム基含有量は6.2×10−5eq/g、水酸基含有量は92×10−5eq/g、エポキシ基含有量は70×10−5eq/gだった。
【0085】
[合成例2〜12]
合成例1と同様にして表1に示される単量体の種類、量比(質量%)で共重合し、同様の方法で処理してアクリル系樹脂AC−2〜12を得た。
【0086】
【表1】
【0087】
[比較合成例1〜6]
合成例1と同様にして表2に示される単量体の種類、量比(質量%)で共重合し、同様の方法で処理して比較例用のアクリル系樹脂(比較合成例1〜6)を得た。
【0088】
【表2】
【0089】
[実施例1]
磁性層塗布液の調製
強磁性針状金属粉末 100部
組成:Fe/Co/Al/Y=62/25/5/8,
表面処理剤:Al2O3,Y2O3,
抗磁力Hc:167kA/m(2100 Oe),
結晶子サイズ:11nm,
長軸長:60nm,
針状比:6,
BET比表面積SBET:70m2/g,
飽和磁化σs:110A・m2/kg(emu/g)
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂A 10部
ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール/シクロヘキサンジメタノール/アジピン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸=2/3/3/1mol比、Mn1500)
鎖延長剤(3−メチルペンタンジオール)
ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート)
重量平均分子量 65000、
Tg85℃、
ウレタン基濃度2.8meq/g、
SO3Na基濃度0.12meq/g
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0090】
非磁性層塗料液の調製
非磁性無機質粉体 85部
α−酸化鉄
表面処理剤:Al2O3,SiO2,
長軸径:0.15μm,
タップ密度:0.8,
針状比:7,
BET比表面積:52m2/g,
pH8,
DBP吸油量:33g/100g
カーボンブラック 20部
DBP吸油量:120ml/100g,pH:8,
BET比表面積:250m2/g,揮発分:1.5%
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂A 12部
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0091】
上記磁性層塗料及び非磁性層塗料の組成物のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料及び非磁性塗料を調製した。さらに上記非磁性層塗料を乾燥後の厚さが1.8μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。両層が未乾燥の状態で300T・m(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行ない、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行なった後、70℃で24時間加熱硬化処理を行い3.8mm幅にスリットし磁気テープを作成した。
【0092】
[実施例2〜13]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表3に示したように変更し、実施例1と同様の方法で実施例2〜13を作成した。
【0093】
[比較例1〜5−2]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表3に示されるように変更し、実施例1と同様の方法で比較例1〜5−2を作成した。
【0094】
[実施例14]
磁性体を以下に示したように変更し、実施例14を作成した。
磁性層塗料液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9.1/0.2/0.8,
抗磁力Hc:195kA/m(2450 Oe),
板径:26nm,
板状比:4,
BET比表面積SBET:50m2/g,
飽和磁化σs:60A・m2/kg(emu/g)
アクリル系樹脂AC−1(表1に記載) 6部
ポリウレタン樹脂 12部
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0095】
上記磁性層塗料の各成分を実施例1と同様の方法で磁性塗料を調製した。なお、非磁性層塗料については実施例1と同様の方法で調製した。
【0096】
さらに上記非磁性層塗料を乾燥後の厚さが1.8μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。両層が未乾燥の状態で300T・m(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行い、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で24時間加熱硬化処理を行い、3.8mm幅にスリットし磁気テープを作成した。
【0097】
[実施例15〜26]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表4に示したように変更し、実施例14と同様の方法で実施例14〜24を作成した。
【0098】
[比較例6〜10−2]
磁性層及び非磁性層に含まれる結合剤を表4に示したように変更し、実施例14と同様の方法で比較例6〜10−2を作成した。
【0099】
〔測定方法〕
1.磁性層ゾル分率の測定
磁性層0.5gを秤取り、ヘキサン50mlに30分浸漬し、潤滑剤を抽出してヘキサンを除去した後、THF80mlに1時間浸漬してバインダーゾル分を溶出させた。THF及び溶出バインダー液を蒸発させた後、再度ヘキサンで潤滑剤を抽出してから真空乾燥機で乾燥し、ゾル分を秤量し、ゾル分率を算出した。
2.テープエッジ(磁性層)のクラックの測定
スリット後のテープエッジ部の磁性層面を顕微鏡で観察し、クラックが観察されたものをX、観察されなかったものを○とした。
3.磁性層表面粗さRaの測定
デジタルオプチカルプロフィメーター(WYKO製)を用いたる光干渉法により、カットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さをRaとした。
4.500パス走行後ヘッド汚れ
DDSドライブでサンプルテープを全長500パス繰り返し走行させ、走行後のヘッド汚れを観察した。汚れが見られたものをX、見られなかったものを○とした。さらにテープサンプルを60℃dry雰囲気下に7日間保存した後、同じ評価をした。
上記測定結果を表4に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表1〜4に示されるように窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基のいずれも本発明の範囲にある実施例1〜13(強磁性金属粉末)及び14〜26(六方晶フェライト粉末)は、いずれもテープエッジのクラックが発生しない。これに対して、比較例1、3〜5−2、及び比較例6、8〜10−2は、いずれもテープエッジのクラックが発生した。これより本発明の磁気記録媒体は、比較例と比べて磁性層の硬化性が向上していることが分かる。
また、走行後ヘッド汚れについては、本発明の実施例1〜13及び13〜26のいずれも初期及び7日保存後のヘッド汚れが見られなかった。これに対し、比較例1〜10−2ではいずれもヘッド汚れが見られた。これより本発明の磁気記録媒体は、比較例と比べて走行耐久性が向上していることが分かる。
さらに、磁性層のゾル分率と磁性層表面粗さについては、本発明の実施例1〜13及び13〜26のいずれも磁性層のゾル分率が低く、かつ表面粗さも小さい。これに対して、比較例5−1、5−2、10−1及び10−2では表面粗さが小さい場合であっても磁性層のゾル分率が大きい場合には、ヘッド汚れが見られた。これより、ゾル分率が低い場合には、耐久性と保存安定性を向上できることが分かる。
また、磁性層と非磁性層の(メタ)アクリル系単量体単位、窒素含有ラジカル共重合体単量体単位の含有量を変えた場合であっても、窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基のいずれも本発明の範囲にある場合には、いずれもテープエッジのクラックが発生せず、かつヘッド汚れも見られなかった(実施例13、実施例26)。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気記録媒体の磁性層及び/又は非磁性層で用いられる結合剤は、所定割合の窒素含有ラジカル重合性単量体、水酸基、エポキシ基、及び親水性極性基を有するアクリル系共重合体を含む。これにより本発明の磁気記録媒体は、良好に分散した強磁性粉末又は非磁性粉末を含む磁性層又は非磁性層が得られるため、磁性層の平滑性を向上することができ、エラーレートの少ない優れた電磁変換特性を得ることができる。また、本発明の磁気記録媒体であれば、磁性層の硬化性が高く、優れた走行耐久性と保存安定性を有する磁気記録媒体を提供できる。さらに本発明の磁気記録媒体は、非塩化ビニル系の結合剤を用いるため、塩化水素ガスの問題のない信頼性に優れた磁気記録媒体であることができる。
Claims (1)
- 非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を有するか、又は非磁性粉末及び結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層及び/又は非磁性層に含まれる結合剤は、アクリル系共重合体を含有し、前記アクリル系共重合体は、窒素を含有するラジカル重合性単量体単位を1〜75質量%、水酸基を0.2〜2質量%、エポキシ基を0.2〜15質量%の割合で含み、かつ親水性極性基を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
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2003
- 2003-01-16 JP JP2003008743A patent/JP2004220720A/ja active Pending
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