JP2004218097A - 海島型ブレンド繊維の製造方法 - Google Patents

海島型ブレンド繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶ポリエステルからなる繊維は、摩擦によりフィブリル化しやすい、耐疲労性が低い等の欠点を有しているが、これらの欠点を著しく改善し、操業的にも優れた繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】島成分として液晶ポリエステル(A)と海成分として液晶性を示さないポリマー(B)から構成される海島型ブレンド繊維の製造方法において、剪断速度100sec−1、温度Tにおける液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)の溶融粘度をそれぞれηA、ηB、体積分率をφA、φBとしたときの関係が下記式1、2を満足し、液晶ポリエステル(A)が60〜90体積%、液晶性を示さないポリマー(B)が40〜10体積%となるように紡糸することを特徴とする海島型ブレンド繊維の製造方法である。
(φA/φB)<(ηA/ηB) (式1)
ηA>ηB (式2)
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ポリエステルの高強度・高弾性率を有し、かつ耐摩耗性、耐疲労性に優れている繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ポリエステル繊維は、分子鎖が繊維軸方向に高度に配向しているために、高強力高弾性率を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、繊維軸に直角な方向では弱い分子間力が働くのみであるため、摩擦により容易にフィブリル化し、張力低下を引き起こして破損に至るなどトラブルの原因となっていた。また、座屈によるキンクバンドが発生し易く、かつそれが局在化する傾向があることから耐疲労性に劣るものであった。
【0003】
これらの欠点を改善する目的で、芯成分が液晶ポリエステル、鞘成分がポリフェニレンスルフィドからなる芯鞘型の複合繊維が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、ポリフェニレンスルフィドを重合後に酸洗浄を行い、主鎖型液晶ポリマーと複合紡糸することにより界面剥離の生じにくい芯鞘型の複合繊維を得る製造法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。さらに界面剥離の生じにくい複合繊維として、芯成分が液晶ポリエステル、鞘成分が液晶ポリエステルとポリフェニレンスルフィドとをポリフェニレンスルフィドの体積比が鞘全体の0.50〜0.75となるように混合した成分からなる芯鞘型の複合繊維が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これらは芯鞘複合とするため特殊な紡糸機、口金が必要であるほか、鞘割れを防止することが出来なくフィブリル化が起こり、耐摩耗性、耐疲労性に劣る。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−174408号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平1−229815号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平4−174722号公報
【0007】
【特許文献4】
特開平5−230715号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述のとおり、液晶ポリエステルの周囲をフィブリル化し難いポリマーで被覆する芯鞘構造にすることで、耐フィブリル化性、耐摩耗性が改良されるのは事実である。しかし、鞘成分の液晶性を示さないポリマーであるポリフェニレンスルフィドは、各種の改質を施したとしてもなお液晶ポリエステルとの親和性に乏しく、かつ液晶ポリエステルにあわせた低い紡糸速度で引き取り、延伸を必要としないことから、ポリフェニレンスルフィドは未延伸状態のままであり、強度を上げることを目的として高温で固相重合すると熱結晶化して脆くなり、鞘の剥離等の問題がしばしば生じていた。そこで、本発明者らは界面の剥離、耐フィブリル化性、耐疲労性などの改善について鋭意検討を行った結果、本発明を見いだしたものである。
【0009】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、液晶ポリエステルからなる繊維は、摩擦によりフィブリル化しやすい、耐疲労性が低い等の欠点を有しているが、これらの欠点を著しく改善し、操業的にも優れた海島型ブレンド繊維の製造方法を提供し、さらには液晶ポリエステルの高強度・高弾性率を有し、かつ耐摩耗性、耐疲労性に優れている海島型ブレンド繊維の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、島成分が液晶ポリエステル(A)と海成分が液晶性を示さないポリマー(B)から構成される海島型ブレンド繊維の製造方法において、剪断速度100sec−1、温度Tにおける液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)の溶融粘度をそれぞれηA、ηB、体積分率をφA、φBとしたときの関係が下記式1、2を満足し、液晶ポリエステル(A)が60〜90体積%、液晶性を示さないポリマー(B)が40〜10体積%となるように紡糸することを特徴とする海島型ブレンド繊維の製造方法である。
(φA/φB)<(ηA/ηB) (式1)
ηA>ηB (式2)
(ただし、温度Tとは、溶融粘度の測定温度で、液晶ポリエステル(A)の融点Tmが290℃以上の場合はT=Tm+10℃とし、融点Tmが290℃未満ではT=300℃とする)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる液晶ポリエステルは、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールなどのモノマーから選ばれた構造単位からなる重合物であり、異方性溶融相を形成するポリエステルである。異方性溶融相とは、例えば液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより認定できる。
【0012】
ここで芳香族オキシカルボン酸の具体例としては、特に制限されるものではないものの、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸などが挙げられ、またこれら芳香族オキシカルボン酸のアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体などが挙げられる。これら芳香族オキシカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損なわない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0013】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、特に制限されるものではないものの、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などが挙げられ、またこれら芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体などが挙げられる。これら芳香族ジカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損なわない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
脂環族ジカルボン酸の具体例としては、特に制限されるものではないものの、ビシクロオクタンジカルボン酸などが挙げられ、またこれら脂環族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体などが挙げられる。これら脂環族ジカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損なわない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
芳香族ジオールの具体例としては、特に制限されるものではないものの、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールSなどが挙げられ、またこれら芳香族ジオールのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体などが挙げられる。これら芳香族ジオールのうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損なわない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、またこれら脂肪族ジオールのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体などが挙げられる。これら脂肪族ジオールのうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損なわない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
本発明に用いる液晶ポリエステルは、上記モノマー以外に、液晶性を損なわない程度の範囲でさらに他のモノマーを共重合することができ、それら他のモノマーとしては特に制限されるものではないものの、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル、ポリシロキサン、芳香族イミノカルボン酸、芳香族ジイミン、および芳香族ヒドロキシイミンなどが挙げられる。
【0018】
本発明に用いる、前記のモノマーなどを重合した液晶ポリエステルの好ましい例としては、特に制限されるものではないものの、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸とが共重合された液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸とエチレングリコールとテレフタル酸および/またはイソフタル酸とが共重合された液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸および/またはイソフタル酸とが共重合された液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸とエチレングリコールと4,4´−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸および/またはイソフタル酸とが共重合された液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸とハイドロキノンとテレフタル酸および/またはイソフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とが共重合された液晶ポリエステル、などが挙げられる。
【0019】
本発明に用いる液晶ポリエステルの製造方法については特に制限されるものではなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造でき、例えば、次の製造方法(1)〜(5)が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とから脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とに無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とのジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に、所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0020】
本発明に用いる液晶ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用して重縮合反応を行うことができる。
【0021】
本発明に用いる液晶ポリエステルは、融点(以下Tm)が220〜360℃の範囲のものが好ましく、さらに好ましくはTmが250〜350℃である。ここで、融点(Tm)とは示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)で行う示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から16℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持し、室温まで急冷した後(急冷時間および室温保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)を意味する。
【0022】
本発明に用いる液晶性を示さないポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などが挙げられる。操作性を考えると、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドが好ましく、さらに好ましくはポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、より好ましくはポリフェニレンスルフィドである。特に直鎖状ポリフェニレンスルフィドを用いた場合には製糸性が良好となり、耐薬品性、力学的特性、耐フィブリル化性等の点で顕著な効果が得られる。
【0023】
また、接着性の点から、好ましくはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tなどに代表されるポリアミドが挙げられる。
【0024】
さらに、耐摩耗性の点から、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどに代表されるポリエステルが挙げられる。本発明に用いる液晶性を示さないポリマーには、本発明の効果を損なわない程度で、酸化チタンやカオリン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの各種添加剤を添加しても良い。
【0025】
さらに本発明で用いるポリフェニレンスルフィドとは下記化1に示す反復構成単位を70モル%以上より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、繰り返し単位が70モル%未満では耐熱性が損なわれるため好ましくない。ポリフェニレンスルフィドは一般に、特公昭45−3368号公報で代表される製造法により得られる比較的分子量の小さい重合体と特公昭52−12240号公報で代表される製造法により得られる本質的に線状で比較的高分子量の重合体等があり、前記特公昭45−3368号公報記載の方法で得られた重合体においては、重合後酸素雰囲気下において加熱することにより、あるいは過酸化物などの架橋剤を添加して加熱することにより高重合度化して用いることも可能であり、本発明においてはいかなる方法により得られたポリフェニレンスルフィドを用いることも可能であるが、海島型ブレンド繊維の海島界面剥離などを抑制するため特開平4−174722号公報に示されるように酸洗浄を行ったポリフェニレンスルフィドを用いることが好ましい。
【0026】
【化1】
Figure 2004218097
【0027】
本発明の海島型ブレンド繊維は、剪断速度100sec−1、温度Tにおける液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)の溶融粘度をそれぞれηA、ηB、体積分率をφA、φBとしたときの関係が下記式1、2を満足していることが重要である。
(φA/φB)<(ηA/ηB) (式1)
ηA>ηB (式2)
(ただし、温度Tとは、溶融粘度の測定温度で、液晶ポリエステル(A)の融点Tmが290℃以上の場合はT=Tm+10℃とし、融点Tmが290℃未満ではT=300℃とする。)
本発明では、液晶ポリエステルの体積分率(φA)を液晶性を示さないポリマーの体積分率(φB)で除した値より、液晶ポリエステルの溶融粘度(ηA)を液晶性を示さないポリマーの溶融粘度(ηB)で除した値が大きく、且つ、液晶性を示さないポリマーの溶融粘度(ηB)より、液晶ポリエステルの溶融粘度(ηA)が大きいことが重要である。ここで、体積分率は、各ポリマーの単位時間あたりの重量に各ポリマーの溶融密度を乗じて体積を求め、そこから体積分率を求める。
【0028】
この式1、2を満足していれば液晶ポリエステル(A)の体積分率φAが液晶性を示さないポリマー(B)の体積分率φBよりも大きい場合であっても液晶ポリエステル(A)が島成分となり得るのである。これまでポリマーアロイで分散状態を決める溶融粘度は、口金孔での剪断速度から求められる溶融粘度と考えられていたが、本発明者らは鋭意検討を行った結果、口金孔内では滞留時間が非常に短く、分散状態には何ら影響を与えず、ポリマー配管内やパック内のようなポリマー流速が遅く、滞留時間が比較的長い箇所での溶融粘度が分散状態を決定する上で非常に重要であることが分かった。このポリマー配管内やパック内での剪断速度は約100sec−1程度であり、この低剪断領域での溶融粘度が分散状態を決定する上で非常に重要であることを見いだした。これにより液晶ポリエステル(A)の体積分率φAが液晶性を示さないポリマー(B)の体積分率φBよりも大きい場合であっても液晶ポリエステル(A)が島成分となり、液晶ポリエステルの高強度・高弾性率を有し、かつ耐摩耗性、耐疲労性に優れている本発明の海島型ブレンド繊維を製造することができたのである。
【0029】
本発明のブレンド方法は特に限定されないが、液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)をあらかじめ2軸または1軸エクストルダー等により液晶ポリエステル(A)の融点Tm+10から30℃で溶融混練後チップ化しそれを用いて紡糸を行ってもかまわない。あるいは両チップをドライブレンドして紡糸を行ってもかまわない。好ましくは、それぞれを溶融させ、液晶ポリエステル(A)の融点Tm+10から30℃で静的または動的混合機において溶融混練し紡糸することが好ましい。
【0030】
本発明の海島型ブレンド繊維は、繊維横断面において、単繊維の外接円より求めた繊維径を(R)とし、同様に、1つの島成分(液晶ポリエステル)において、その島成分の外接円より求めた径を(r)とした場合に、全ての島成分がr/R≦0.3であり、かつ繊維横断面全体に分散していることが好ましい。ここで、成分界面剥離を抑制するためには、r/R≦0.2であることが好ましい。また、高強度高弾性率を有するためには、最小島成分径は、r/R≧0.001であることが好ましく、より好ましくはr/R≧0.005である。
【0031】
本発明の海島型ブレンド繊維は、高強度高弾性率繊維とするために液晶ポリエステル(A)が50〜90体積%、繊維表面を十分被覆するために液晶性を示さないポリマー(B)が50〜10体積%であることが重要である。液晶ポリエステル(A)が50体積%未満であれば強度が低くなるため高強度高弾性率繊維を得ることができず、90体積%を超えれば高強度高弾性率繊維を得ることができるが、液晶性を示さないポリマー(B)が繊維表面を十分に覆うことができず、耐摩耗性、耐疲労性が劣る。特に、液晶ポリエステル(A)が60〜75体積%、液晶性を示さないポリマー(B)が40〜25体積%であることが好ましい。
【0032】
本発明の海島型ブレンド繊維は、摩擦や摩耗によるフィブリル化を防止するため、繊維表面に露出した液晶性を示さないポリマー(B)の繊維横断面における弧長の総和が繊維外周長の60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0033】
本発明の海島型ブレンド繊維の製造方法として例えば、液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)を上述のブレンド方法によりブレンドした後、液晶ポリエステル(A)の融点Tm+10から30℃の温度範囲で加熱した押出機、紡糸機を経由して、パック内に溶融ブレンド物を導入し、#30から#300のモランダムサンドやメタルパウダー、金網フィルター、絶対濾過径が2から50μmの金属不織布フィルターなどの既知の濾過材でポリマーに含まれる異物やゲル化物を濾過除去し、吐出孔径φ0.1から0.4mm、L/Dが0.5から5の口金を用い、液晶ポリエステル(A)の融点Tm+10から30℃の温度範囲で吐出する。その後、口金面から100mmまでの間で冷却を開始することが好ましい。また、高強度高弾性率を有するためには冷却開始位置が口金から50mm以下とすることがより好ましい。冷却方法としては一方向から温度を制御した冷却風を送り出す既知のユニフローチムニーや円筒状の全円周方向から温度を制御した冷却風を送り出す既知の環状チムニーなどを用いることができる。冷却風の温度は25℃以下が好ましい。そして、既知のオイリングローラーや給油ガイドを用いて給油し、500から2000m/minの引取速度で巻き取る。このとき、単糸繊度が0.5から30dtexとなるように吐出量を調整する。
【0034】
本発明の海島型ブレンド繊維は、紡糸しただけで既に十分な強度、弾性率を有しているが、弛緩熱処理あるいは定長熱処理により性能をさらに向上させることができる。
【0035】
熱処理は、窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気の如き酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能である。熱処理雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。熱処理条件としては、液晶ポリエステル(A)の融点マイナス40℃以下から液晶性を示さないポリマー(B)の融点以下まで順次昇温して行く温度パターンで行うことが好ましい。さらに処理時間は、目的性能により数分から数十時間行われる。
【0036】
熱処理時における熱の供給は、気体、液体等の媒体を用いる方法、加熱板、赤外線ヒーター等による輻射を利用する方法、熱ローラー、熱プレート等に接触させて行う方法、高周波等を利用した内部加熱方法等が使用できる。また、熱処理は目的により緊張下あるいは無緊張下で行ない、形態はパッケージ状、カセ状、トウ状(例えば、金属網等にのせて行う)、あるいはローラー間で連続的に処理することも可能である。さらに、繊維の形態はフィラメント状あるいはカットファイバー状いずれも可能である。
【0037】
以上のように、本発明により製造される繊維は、高強力・高弾性率の特徴を保持し耐フィブリル化性、耐疲労性、難燃性、摩擦防融性が著しく改善されたものであり、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。特に有効な用途としては、スクリーン紗、コンピュターリボン、プリント基盤用基布、紗紙用のカンバス、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、PET用鎖代替糸、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等がある。
【0038】
【実施例】
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
【0039】
実施例中の強伸度、弾性率はJIS L1013に準じオリエンテック社製テンシロンUCT−100を用いて測定した。
【0040】
溶融粘度については、温度T℃、剪断速度100sec−1の条件で東洋精機社製キャピログラフ1Bを用いて測定した。ただし、温度Tは、液晶ポリエステル(A)の融点Tmが290℃以上の場合はT=Tm+10℃とし、融点Tmが290℃未満ではT=300℃とする。
【0041】
融点(Tm)はパーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7(DSC)を用いて2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。この時の昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0042】
耐摩耗性の評価については、熱処理糸を用いて、φ3mmの梨地の金属棒に接触角35°で糸をかけ、金属棒から340mmの所で糸張力20gとして把持し、ストローク長30mm、速度100回/minで500回の往復運動を与えた。これを5回実施し、5回とも500回往復運動を達成した場合は○として500回以上と記録した。5回のうち1回でも500回往復運動が達成できなかった場合は、×として糸切れをした回数の平均を記録した。その後、繊維表面観察を行った。
【0043】
海成分と島成分の分散状態の確認、繊維表面に露出している海成分の割合の確認には、透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM(H−800型))にて横断面観察をし、また、耐摩耗性評価後の繊維表面の確認には、走査型電子顕微鏡(ニコン製ESEM−2700)にて繊維側面観察を行った。
【0044】
実施例1
液晶ポリエステル(A)として、p−アセトキシ安息香酸から生成した構造単位(1)と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸から生成した構成単位(2)からなり、構造単位(1)が全体の72モル%、構造単位(2)が28モル%を占め、融点Tmが280℃の液晶ポリエステルを用いた。この液晶ポリエステルは、融点Tmが290℃以下のため、温度Tを300℃として剪断速度100sec−1においての溶融粘度(ηA)を測定したところ、1513poiseであった。
【0045】
液晶性を示さないポリマー(B)としては、酸洗浄を行ったポリフェニレンスルフィドを用いた。このポリフェニレンスルフィドの300℃、剪断速度100sec−1においての溶融粘度(ηB)は、513poiseであった。
【0046】
このときの(ηA/ηB)は約2.95となり、式1を満足させるために液晶ポリエステル(φA)を70体積%、ポリフェニレンスルフィド(φB)を30体積%となるようにペレット状態で混合した。これを、2軸エクストルーダー(スクリュー径φ30mm)により、スクリュー回転数25rpmで溶融・混練し、紡糸温度315℃で、吐出孔径φ0.13mm、L/D=2、24ホールの口金より吐出し、口金面から30mmから環状チムニーで冷却風温度25℃、風速25m/minで冷却を開始して、給油した後、紡糸速度600m/minで紡糸し、226dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく良好なパッケージを得ることができた。得られた糸の横断面での海島成分の分散状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、島成分が液晶ポリエステル、海成分がポリフェニレンスルフィドで構成されていた。その糸の性能は、強度 8.9cN/dtex、伸度 2.2%、弾性率 446cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は72%であった。この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.16であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 17.2cN/dtex、伸度 2.6%、弾性率 491cN/dtex、であった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、表層の島成分が数本剥離している程度であった。
【0047】
実施例2
式1を満足できるように液晶ポリエステル(φA)を65体積%、ポリフェニレンスルフィド(φB)を35体積%としたこと以外、実施例1と同様の方法により紡糸し、235dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく、実施例1と同様に良好なパッケージを得ることができ、得られた糸は、海島成分のポリマー構成が実施例1と同様であり、その性能は、強度 8.0cN/dtex、伸度 2.4%、弾性率 410cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は85%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.14であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 15.6cN/dtex、伸度 2.8%、弾性率 453cN/dtex、であった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、実施例1と同様、表層の島成分が数本剥離している程度であった。
【0048】
実施例3
式1を満足出来るように液晶ポリエステル(φA)を60体積%、ポリフェニレンスルフィドを40体積%としたこと以外、実施例1と同様の方法により紡糸し、232dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等が無く実施例1と同様に良好なパッケージを得ることができ、得られた糸は、海島成分のポリマー構成が実施例1と同様であり、その性能は、強度 7.3cN/dtex、伸度 2.4%、弾性率 378cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は93%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.11であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 13.7cN/dtex、伸度 3.1%、弾性率 420cN/dtex、であった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、実施例1と同様、表層の島成分が数本剥離している程度であった。
【0049】
実施例4
液晶性を示さないポリマー(B)として、温度300℃、剪断速度100sec−1においての溶融粘度(ηB)が、635poiseのナイロン6(融点Tm:225℃)としたこと以外、実施例3と同様の方法により紡糸し、227dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく、実施例1と同様に良好なパッケージを得ることができた。得られた糸の横断面での海島成分の分散状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、島成分が液晶ポリエステル、海成分がナイロン6で構成されていた。その糸の性能は、強度 7.2cN/dtex、伸度 2.6%、弾性率 381cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は97%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.06であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 14.4cN/dtex、伸度 3.5%、弾性率 434cN/dtex、であった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、実施例1と同様、表層の島成分が数本剥離している程度であった。
【0050】
実施例5
液晶性を示さないポリマー(B)として、温度300℃、剪断速度100sec−1においての溶融粘度(ηB)が、1007poiseのポリエチレンナフタレート(融点Tm:278℃)としたこと以外、実施例3と同様の方法により紡糸し、230dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく、実施例1と同様に良好なパッケージを得ることができた。得られた糸の横断面での海島成分の分散状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、島成分が液晶ポリエステル、海成分がポリエチレンナフタレートで構成されていた。その糸の性能は、強度 6.8cN/dtex、伸度 2.3%、弾性率 408cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は82%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.13であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 12.9cN/dtex、伸度 3.3%、弾性率 451cN/dtex、であった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、実施例1と同様、表層の島成分が数本剥離している程度であった。
【0051】
比較例1
液晶ポリエステル(φA)を100体積%としたこと以外、実施例1と同様の方法により紡糸し、166dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく良好なパッケージを得ることができた。得られた糸の性能は、強度 7.8cN/dtex、伸度 1.8%、弾性率 478cN/dtexであった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 18.5cN/dtex、伸度 3.6%、弾性率 583cN/dtexであった。耐摩耗性試験では500回に至らず、わずか31回で断糸した。
【0052】
得られた熱処理糸は、強度・弾性率は高いが耐摩耗性は低く、糸加工時に生じる機械や糸との摩擦により容易に毛羽・フィブリルが発生し、それを欠陥とした糸切れが発生しやすいものであった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、繊維断面における表層の部分はフィブリル化して剥離しており、さらに繊維は大きく割れていた。
【0053】
比較例2
液晶ポリエステルを芯、ポリフェニレンスルフィドを鞘として、芯鞘の複合体積比を65:35(φA/φB=65/35)、紡糸温度320℃、吐出孔径φ0.13mm、L/D=2、10ホールの芯鞘複合口金より吐出し、紡糸速度600m/minで紡糸し、100dtexのマルチフィラメントを得た。このとき、吐出孔詰まり、吐出曲り、断糸等がなく良好なパッケージを得ることができた。得られた糸の性能は、強度 5.6cN/dtex、伸度 2.1%、弾性率 450cN/dtexであった。この繊維は芯鞘型の複合繊維であるため、繊維表面に露出しているPPSの割合は100%である。さらに、芯成分を島成分として考えた場合、(r/R)は0.75であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆どなく、繊維特性は、強度 18.2cN/dtex、伸度 3.2%、弾性率 545cN/dtexであった。耐摩耗性試験では500回に至らず、490回断糸した。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、鞘は大きく割れており、芯が露出していた。
【0054】
比較例3
液晶ポリエステル(φA)を80体積%、液晶性を示さないポリマー(φB)を20体積%となるようにペレット状態で混合した以外は、実施例1と同様に行った。
【0055】
このとき式1を満足しておらず、得られた糸の横断面での海島成分の分散状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、島成分がポリフェニレンスルフィド、海成分が液晶ポリエステルで構成されていた。その糸の性能は、強度 9.2cN/dtex、伸度 2.3%、弾性率 451cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は92%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.08であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆ど無く、繊維特性は、強度 18.3cN/dtex、伸度 3.6%、弾性率 561cN/dtex、であった。耐摩耗性試験では500回に至らず、わずか73回で断糸した。
【0056】
得られた熱処理糸は、強度・弾性率は高いが耐摩耗性は低く、糸加工時に生じる機械や糸との摩擦により容易に毛羽・フィブリルが発生し、それを欠陥とした糸切れが発生しやすいものであった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、繊維断面における表層の部分はフィブリル化して剥離しており、さらに繊維は大きく割れていた。
【0057】
比較例4
液晶ポリエステル(φA)を60体積%、液晶性を示さないポリマーとし、剪断速度100sec−1、300℃においての溶融粘度(ηB)が2648poiseのポリフェニレンスルフィドを用い、φBが40体積%となるようにペレット状態で混合した以外は、実施例1と同様に行った。
【0058】
このとき式1、2共に満足しておらず、得られた糸の横断面での海島成分の分散状態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、島成分がポリフェニレンスルフィド、海成分が液晶ポリエステルで構成されていた。その糸の性能は、強度 7.3cN/dtex、伸度 2.3%、弾性率 376cN/dtexであった。また、繊維表面に露出している海成分の割合は93%であり、この繊維中で最大の島成分の(r/R)は0.10であった。この糸を250℃で2時間、260℃で2時間、270℃で6時間窒素ガス雰囲気中で熱処理した。得られた熱処理糸は、繊維間膠着は殆ど無く、繊維特性は、強度 13.6cN/dtex、伸度 3.1%、弾性率 422cN/dtex、であった。耐摩耗性試験では500回に至らず、わずか61回で断糸した。
【0059】
得られた熱処理糸は、強度・弾性率は高いが耐摩耗性は低く、糸加工時に生じる機械や糸との摩擦により容易に毛羽・フィブリルが発生し、それを欠陥とした糸切れが発生しやすいものであった。この繊維の耐摩耗性評価後の糸表面を観察したところ、繊維断面における表層の部分はフィブリル化して剥離しており、さらに繊維は大きく割れていた。
【0060】
【表1】
Figure 2004218097
【0061】
【発明の効果】
本発明は、液晶ポリエステルの高強度・高弾性率を有し、かつ耐摩耗性、耐疲労性に優れている繊維の製造方法を提供することに成功したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られる顕微鏡写真による海島型ブレンド繊維の形状の一例を示す横断面図である。

Claims (5)

  1. 島成分が液晶ポリエステル(A)と海成分が液晶性を示さないポリマー(B)から構成される海島型ブレンド繊維の製造方法において、剪断速度100sec−1、温度Tにおける液晶ポリエステル(A)と液晶性を示さないポリマー(B)の溶融粘度をそれぞれηA、ηB、体積分率をφA、φBとしたときの関係が下記式1、2を満足し、液晶ポリエステル(A)が50〜90体積%、液晶性を示さないポリマー(B)が50〜10体積%となるように紡糸することを特徴とする海島型ブレンド繊維の製造方法。
    (φA/φB)<(ηA/ηB) (式1)
    ηA>ηB (式2)
    (ただし、温度Tとは、溶融粘度の測定温度で、液晶ポリエステル(A)の融点Tmが290℃以上の場合はT=Tm+10℃とし、融点Tmが290℃未満ではT=300℃とする。)
  2. 繊維表面に液晶性を示さないポリマー(B)が存在する割合が、60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の海島型ブレンド繊維の製造方法。
  3. 液晶性を示さないポリマー(B)として、ポリフェニレンスルフィドを用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載の海島型ブレンド繊維の製造方法。
  4. 液晶性を示さないポリマー(B)として、ポリアミドを用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載の海島型ブレンド繊維の製造方法。
  5. 液晶性を示さないポリマー(B)として、ポリエステルを用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載の海島型ブレンド繊維の製造方法。
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CN109796755A (zh) * 2018-12-29 2019-05-24 江苏博云塑业股份有限公司 耐表面疲劳磨损的热塑性聚酰胺复合材料及其制备方法

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