JP5262059B2 - 複合繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
複合形態としては、成分Aが少なくとも繊維表面の一部を形成していれば、従来公知の複合形態が採用できるが、本発明の口金汚れ防止剤の効果をより高く発揮するには、芯鞘複合(含む1芯、多芯)、サイドバイサイド複合であることが好ましい。
繊維の横断面形状としては、丸型、楕円型、扁平型、ダルマ型、多角形型、歯車型、花びら型、多葉型、星型、C型等、Y型、T型、田型、中空型といった形状が挙げられ、得られる繊維の複合形態が安定化し易い点で、丸型、楕円型、扁平型、ダルマ型、Y型が好ましい。
ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)酸化チタンに接触または接近し、酸化チタンに働く摩擦力を低減して摩擦帯電を抑
える
(B)酸化チタンに接触または接近し、酸化チタンの帯電電荷を除電する
(C)成分Aと成分Bとの界面に接触または接近し、界面に働く摩擦力を低減して摩擦帯
電を抑える
(D)成分Aと成分Bとの界面に接触または接近し、界面近傍の酸化チタン、またはポリ
マーの帯電電荷を除電する
(E)口金孔壁面に接触または接近し、口金孔壁面近傍での酸化チタンまたはポリマーに
働く摩擦力を低減して摩擦帯電を抑える
(F)口金孔壁面に接触または接近し、口金孔壁面近傍の酸化チタン、またはポリマーの
帯電電荷を除電する
(G)酸化チタンの表面に凝集する、あるいは自身の中に酸化チタンを取り込み、PTT
またはPBT中での酸化チタンの分散性を高める。
アニオン界面活性剤の対イオンとしてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノ−ルアミンなど)を挙げることができる。
ノニオン界面活性剤の中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸ポリエチレングリコール、が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては例えば三洋化成工業株式会社製、‘エマルミン’シリーズ、‘サンノニック’シリーズが挙げられる。またポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、三洋化成工業株式会社製、‘ニューボール’シリーズが挙げられる。脂肪酸ポリエチレングリコールとしては、三洋化成工業株式会社製、‘イオネット’シリーズ、エマルミン862が挙げられる。
特に上述した(G)の効果、すなわち酸化チタンの表面に凝集する、あるいは自身の中に酸化チタンを取り込み、PPTポリマーまたはPBT中での酸化チタンの分散性を高める効果に優れる点で、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、ポリアミド、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールの共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリエーテルエステルアミド共重合体が好ましい。
−[(CH2)a−O]b − ・・・(1)
(1)式を満足するものとしては、例えば、ポリエチレングリコール(a=2)、ポリプロピレングリコール(a=3)、ポリブチレングリコールグリコール(a=4)、が挙げられるが、親水性が高く口金汚れ防止効果が高い点で、ポリエチレングリコールが好ましい。繰り返し数のbは分子量が100〜50,000の範囲で選択すればよく、1000〜6,000が好ましい範囲である。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールは1種で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
アルキレンテレフタレート成分とポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位の共重合比率は(重量比)は5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
本発明およびポリエーテルアミド中のポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位とポリアミド単位との共重合比率(重量比)は、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
その他、これらとは別に、分子中に4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩等のイオン基を含有するポリマー、アイオノマーが好ましく用いられる。例えば、第一工業製薬株式会社製、商品名レオレックスAS170、三井・デュポン・ポリケミカルズ株式会社製、商品名エンティラAS、商品名ハイミラン等が挙げられる。
また、繊維中の酸化チタンの粗大粒子の個数は、繊維の製造に用いるPTTポリマー、またはPBTポリマー中に存在する粗大粒子の個数よりも少なくなるといった現象も確認されることである。これは恐らく本発明の口金汚れ防止剤が、上述した(G)の効果等により、酸化チタンの分散性を高める作用を示し、凝集していた酸化チタンが紡糸機内での剪断流動によって、分散されるためと推定される。
なお本発明の口金汚れ防止剤は、酸化チタンを含有するPTTまたはPBTを単独の繊維として製造する場合に用いても、口金孔周りの汚れ抑制に対して効果があるが、本発明のごとく複合繊維を製造する工程において、より大きな改善効果がみられる。これは本発明の口金汚れ防止剤が、上述の(C)、(D)の如く成分Aと成分Bとの界面に作用する効果が高いためと考えられる。
本発明の成分Bは、熱可塑性ポリマーからなることを特徴とする。本発明の熱可塑性ポリマーは、繊維形成能を有するもので、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリオキシメチレン等の多種多様なエンジニアリングプラスチックから選択することができる。繊維形成能が高い点で、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンであることが好ましい。また複合繊維の1成分である成分AがPPT、またはPBTを含んでなることから、溶融紡糸における成分Aの熱流動性を確保し、かつ熱分解を抑制できる点で、融点が130〜270℃である熱可塑性ポリマーであることが好ましく、150〜260℃であることがさらに好ましい。
本発明における成分Bが、熱可塑性ポリマーからなるとは、成分Bの90重量%以上が、上述の熱可塑性ポリマーからなるものと定義する。より好ましくは93重量%以上、さらに好ましくは、95重量%以上である。成分Bは目的に応じて、10重量部未満の範囲で、他のポリマー、粒子、艶消し剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、老防剤、末端封鎖剤、導電剤、染料、顔料等の添加物を含有していてもよい。
ポリエステルとは、カルボン酸とアルコールのエステル化反応により形成されるポリエステルであり、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、などが挙げられるが、融点が上述の範囲である点で、ポリエチレンテレフタレート(融点254℃)、ポリトリメチレンテレフタレート(融点230℃)、ポリブチレンテレフタレート(融点224℃)、が好ましい。
また脂肪族ポリエステルとは、脂肪族アルキル鎖がエステル結合で連結されたポリマーであり、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等が挙げられるが、上述の融点範囲を満たす点で、ポリ乳酸(融点170℃)、ポリヒドロキシブチレート(融点175℃)、ポリグリコール酸(融点230℃)、等が好ましく、得られる繊維物性が良好となる点で、ポリ乳酸がより好ましい。
ポリオレフィンとは、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合により、ビニル基を有するモノマーを付加重合されたポリマーであり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデンなどが挙げられるが、融点が上記範囲にあり、得られる繊維の物性が良好となる点で、ポリプロピレン(融点170℃)が好ましい。
ポリアミドとは、繰り返し単位中にアミド結合を有するポリマーであり、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドが挙げられるが、上述の融点範囲を満たす点で脂肪族ポリアミドが好ましく用いられる。例えば、ポリアミド6(融点225℃)、ポリアミド11(融点187℃)、ポリアミド12(融点176℃)、ポリアミド5,6(融点254℃)、ポリアミド6,6(融点265℃)、ポリアミド5,10(融点218℃)、ポリアミド6,10(融点225℃)、ポリアミド6,12(融点190℃)等を挙げることができる。
本発明の成分Bを構成する熱可塑性ポリマーは、目的に応じて、他のモノマーが共重合されたポリマーであってもよいが、得られる繊維の物性、および紡糸性が良好となる点で、共重合比率は10モル%未満が好ましく、5モル%未満がより好ましく、3モル%未満がさらに好ましい。
本発明者らの検討の結果、成分Bが脂肪族ポリエステルからなる場合、酸化チタンを含有したPTTまたはPBTによる口金孔汚れが誘発され易いことがわかった。そして成分Bがポリ乳酸からなる場合、最も口金汚れが誘発されることがわかった。
成分Bが脂肪族ポリエステルからなる場合に、口金孔周りが汚れ易い理由は定かではないが、恐らくこれらの熱可塑性ポリマーと、PTTまたはPBTとの組み合わせにおいて、ポリマー間の摩擦帯電の影響が顕著となるものと推定している。
ここでポリ乳酸についてより詳細に説明する。ポリ乳酸とは−(O−CHCH3−CO)n−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体(D−乳酸)のみからなるポリD乳酸と、L体(L−乳酸)のみからなるポリL乳酸、およびD−乳酸とL−乳酸の両者を含んでなるポリ乳酸がある。本発明におけるポリD乳酸とはD−乳酸を80重量%以上含んでなるポリ乳酸であると定義し、ポリL乳酸とはL−乳酸を80重量%以上含んでなるポリ乳酸であると定義する。ポリL乳酸に含まれるD−乳酸の重量分率(以下、単にD体分率と記載することがある)、ポリD乳酸に含まれるL−乳酸の重量分率(以下、単にL体分率と記載することがある)が高いと、ポリL乳酸、ポリD乳酸の結晶性が低くなり、融点が低下する傾向にある。上述したように融点が130℃以上であることが好ましいことから、ポリL乳酸中のD体分率は10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることが好ましい。同様の理由により、ポリD乳酸中のL体分率は10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることが好ましい。
また、L−乳酸単位からなるポリL乳酸と、D−乳酸単位からなるポリD乳酸とをブレンドして繊維化した後に、140℃以上の高温熱処理を施すことで、L−乳酸単位とD−乳酸単位が共晶化したステレオコンプレックス結晶が形成され、ポリマーの融点を220〜230℃まで高めることができ、好ましい。この場合、成分Bを構成するポリ乳酸は、ポリL乳酸とポリD乳酸の混合物を指し、そのブレンド比は40/60〜60/40であると、ステレオコンプレックス結晶の比率を高めることができ、好ましい。
そしてポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合したものであってもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリ(アルキレンオキシド)グリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。ポリ乳酸中には低分子量残留物としてラクチド(環状2量体)や環状3〜6量体、直鎖状の3〜10量体が存在し、特にラクチドの残存量が特異的に多い。これら低分子量残留物は、紡糸糸切れを誘発する原因となる。また、繊維や繊維成型品の加水分解を促進し、耐久性を低下させる。このため、ポリ乳酸中の残存ラクチド量は好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.03重量%以下である。
具体的には、重量平均分子量は13万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、17万以上であることがさらに好ましい。一方で、PTTまたはPBTの適正な溶融温度範囲での溶融流動性が高い点で、重量平均分子量は、30万以下であることが好ましく、27万以下であることがより好ましく、25万以下であることがさらに好ましい。
また成分Bがポリエチレンテレフタレート(以下PETと記載することがある)の場合は、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位からなるポリエステルであり、結晶性が高まり、得られる繊維の強度、耐熱性が高まる点で、繰り返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
ただしホモPET(繰り返し単位の100モル%がエチレンテレフタレート単位からなる)は融点が254℃程度と、ホモPTT(融点230℃)よりも高いため、PETの選定にあたっては、PTTの適正な溶融温度領域での流動性を高めることが好ましい。具体的には低分子量化したホモPETや、共重合により融点を低下せしめた共重合PETが好ましい。共重合PETとしては、ジカルボン酸成分、グリコール成分に、例えばイソフタル酸やビスフェノールAなどの屈曲、嵩高成分を共重合して融点を下げた共重合PETが好適に用いられるが、得られる繊維が耐熱性、力学特性に優れる点で、低分子量であるホモPETであることがより好ましい。
低分子量のホモPETである場合、分子量の指標である固有粘度は0.6dl/g以下であることが好ましく、0.56dl/g以下であることがより好ましく、0.53dl/g以下であることがさらに好ましい。一方で、曵糸性に優れ、得られる繊維の耐熱性、力学特性にも優れる点で、PETの固有粘度は0.4dl/g以上であることが好ましく、0.43dl/g以上であることがより好ましく、0.46dl/g以上であることがさらに好ましい。
また、ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては以下の化合物が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いてもよいし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらジオール化合物のうち1種を単独で用いてもよいし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、1つの化合物に水酸基とカルボン酸とを有するヒドロキシカルボン酸も挙げられ、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらヒドロキシカルボン酸のうち1種を単独で用いてもよいし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
複合繊維における、成分Aの複合比率(複合繊維総重量に対する成分Aの含有量)は目的用途に応じて選択すればいいが、低ヤング率、高弾性回復性等の優れた特性を与える点で、繊維総重量に対して、30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、45重量%以上であることがさらに好ましい。
また複合繊維における、成分Bの複合比率(複合繊維総重量に対する成分Bの含有量)も目的に応じて選択すればよいが、成分Bの存在により、複合繊維の特性を向上させるには、繊維総重量に対する成分Bの複合比率が15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましい。
なお本発明の製造方法で得られる複合繊維は繊維総重量の80重量%以上が成分Aと成分Bから構成され、繊維総重量の20重量%未満の範囲で、他のポリマーを複合した3成分複合繊維であってもよいが、溶融紡糸において紡糸糸切れが抑えられる点で、2成分複合繊維であることが好ましい。
本発明の製造方法で得られる複合繊維は、成分Aと成分Bとを口金装置内で複合した後、成分Aが少なくとも繊維表面の1部を形成するように複合流として吐出させて溶融紡糸することが必要である。溶融紡糸の方法については従来公知の方法を採用すればよいが、より具体的に好ましい方法を以下に例示する。
本発明に使用するPTTポリマーまたはPBTポリマーの製造方法は公知方法を用いることができる。例えば、テレフタル酸を主とするジカルボン酸またはテレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルコールエステル誘導体と、1,3−プロパンジオール、または1,4−ブタンジオールを反応させて、テレフタル酸と1,3−プロパンジオール、または1,4−ブタンジオールのエステルおよび/またはそのオリゴマーを生成させた後、溶融状態で重縮合反応させる方法(溶融重合)等を採用することができる。また溶融重合のみで所望の固有粘度に相当する重合度とする1工程法や、一定の固有粘度までは溶融重合で重合度を上げ、引き続いて固相重合によって所望の固有粘度に相当する重合度まで上げる2工程法が挙げられるが、PTTである場合、溶融重合と固相重合を組み合わせる2工程法であることが、環状ダイマーの含有量が少ないPTTポリマーとなる点で好ましい。1工程法で得たPTTポリマーを用いる場合には、紡糸に供する前のいずれかの工程において、抽出処理などにより環状ダイマーを3重量%以下まで減少させておくことが好ましい。
PTTポリマーまたはPBTポリマーカルボキシル末端基濃度の低いPTTポリマーほど、溶融貯留時の耐熱性が高まるため好ましく、30eq/ton以下であるポリマーを用いることが好ましく、20eq/ton以下であることがより好ましく、10eq/ton以下であることがさらに好ましい。
そして酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)などを任意の段階で少量添加し、ポリマーの耐熱性を高めることも好ましい。
図1は本発明で好ましく用いられる紡糸装置の概略図である。まずホッパー1に成分Bを構成する熱可塑性ポリマーを投入し、エクストルーダー2で溶融・押し出してギヤポンプブロック5にて計量し溶融ポリマーをスピンブロック7に内蔵された紡糸パック8へ移送する。同様に、ホッパー3に成分Aを投入し、エクストルーダー4で溶融・押し出して、ギヤポンプブロック6で計量し、溶融ポリマーをスピンブロック7に内蔵された紡糸パック8に移送する。パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金9で所望の複合繊維が得られるように成分Aと成分Bとを貼り合わせた後、吐出して紡出糸12を得る。紡出糸は冷却装置11によって一旦冷却・固化された後、給油ガイド装置13で油剤を付与され、交絡装置ノズル14で適度に交絡を与えられた後、第1ロール15及び第2ロール16で引き取られ、巻取機17で巻き取り、チーズパッケージ18を得る。なお、繊維から昇華した低融点物を取り除くため、口金直下に吸引装置を設けている。また、紡糸でのモノマー、オリゴマー析出を抑制し、紡糸性を向上させるために、必要に応じて口金下に2〜20cmの加熱筒を設けてもよく、ポリマーの酸化劣化を抑えるために空気、スチーム、N2などの不活性ガス発生装置を設置してもよい。
次いで得られた未延伸糸をそのまま用いてもよいし、従来公知の方法により、延伸機により延伸、熱処理して延伸糸として用いてもよいし、未延伸糸または延伸糸を捲縮加工(仮撚加工、BCF加工、機械捲縮加工)して捲縮糸として用いてもよいし、目的応じた繊維を製造すればよい。またこれらの延伸、熱処理、捲縮加工、については溶融紡糸とは別の工程として行ってもよいし、同一の工程、すなわち紡出糸を巻き取らずに連続的におこなってもよい。例えば、紡出糸に連続的に、延伸、熱処理を施した後に巻き取る装置としては、図2に例示され、紡出糸に連続的に熱処理を施したのち巻き取る装置としては、図3が例示される。
製造する複合繊維の総繊度は、マルチフィラメントであれば10〜5000dtexの範囲で選択すればよく、1本の繊維の繊度である、単繊維繊度は0.3〜100dtexの範囲で選択すればよい。1糸条当たりの繊維の本数については任意である。
また本発明の製造方法で得られる複合繊維が短繊維である場合、紡出糸を総繊度が1〜50万dtexとなるように合糸してサブトウを形成し、該サブトウをキャンに堆積させた後、キャンから該サブトウを引き出し、1〜50本のサブトウを合わせ、温水バスあるいはスチーム、加熱ロールから選ばれる熱源を用いて延伸したのち、必要に応じてスチーム等で予熱した後、機械捲縮を施し、所望の繊維長にカットする、製造方法を採用することができる。
そして酸化チタンは、溶融紡糸において成分Aが口金孔から吐出されるまでのいずれかの段階において成分Aに添加されればよい。例えば、溶融重合完了前の段階で所望量添加せしめる方法、あるいは溶融重合完了後のPTTまたはPBTに2軸エクストルーダー等の混練機によって添加せしめる方法、溶融紡糸においてホッパーにPTTまたはPBTとドライブレンドして投入する方法、を挙げることができる。PTTまたはPBT中での酸化チタン分散性を高める点で、溶融重合完了前の段階で所望量添加せしめる方法、あるいは溶融重合完了後のPTTまたはPBTに2軸エクストルーダー等の混練機によって添加せしめる方法を採用することが好ましい。添加形態としては、酸化チタン粉体を添加する方法や、酸化チタンを水や有機溶媒に分散させた分散液として添加する方法が挙げられるが、酸化チタンが微分散されやすい点で、分散液として添加することが好ましい。分散液として添加する場合には、調整段階で形成された酸化チタンの凝集体を、遠心分離等の手段により除いておくことも好ましい手法である。またPTTやPBT中で酸化チタンが微分散し易い点で、前記した範囲の酸化チタンを用いることが好ましい。これら酸化チタンは、予め高濃度で酸化チタンが添加されたPTTまたはPBTポリマーを調整し、繊維の成分A中に酸化チタンが所望量となるように、溶融紡糸段階でPTTまたはPBTで稀釈する等の手段も好適に採用される。
本発明の口金汚れ防止剤は、溶融紡糸において成分Aが口金孔から吐出されるまでのいずれかの段階において成分Aに添加されればよく、PTTまたはPBTポリマー溶融重合完了前の段階で所望量添加せしめる方法、あるいは溶融重合完了後のPTTまたはPBTポリマーに2軸エクストルーダー等の混練機によって添加せしめる方法、溶融紡糸においてPTTまたはPBTとドライブレンドして投入する方法、等を挙げることができるが、重合工程や、乾燥工程における熱履歴によって、口金汚れ防止剤の分解を抑制できる観点から、溶融紡糸においてドライブレンドして投入する方法が最も好ましい。そして成分A中に口金汚れ防止剤を均一に分散させるため、押出機は1軸または2軸エクストルーダーであることが好ましく、2軸エクストルーダーであることが最も好ましい。
押出機、ポリマー配管など、成分ごとに別々の温度設定ができる部位の温度は、それぞれが溶融するポリマーの融点、および熱分解性によって適宜選択すればよく、具体的にはポリマーの融点+5℃以上、融点+70℃以下の範囲において選択すればよい。例えばホモPTTであれば235〜300℃、ホモPBTであれば229〜294℃、ホモPETであれば259〜324℃、ホモポリ乳酸であれば175〜240℃である。ここでPTTやポリ乳酸は熱分解しやすいポリマーであるため、ポリマーの融点+5℃以上、融点+50℃以下であることがより好ましい。スピンブロックは、ポリマー配管や、紡糸パックの温度制御を行うため、それぞれの成分の溶融流動性が確保され、かつそれぞれの成分が熱分解を起こしにくい温度設定とすることが肝要である。本発明において紡糸パックの温度はスピンブロック(電熱ヒーターや、熱媒によって紡糸パックおよび/またはポリマー配管を加熱するブロック)の温度と同一であると見なす。
例えば、成分AがPTTまたはPBTを含んでなり、成分BがPETからなる場合、PTTの熱分解性、ならびにPETの溶融流動性を考慮すると、最適なスピンブロック温度範囲は、260〜280℃である。
また例えば、成分AがPTTまたはPBTを含んでなり、成分Bがポリ乳酸からなる場合、ポリ乳酸の熱分解性、ならびにPTTまたはPBTの溶融流動性を考慮すると、スピンブロック温度は235〜265℃が好ましく、240〜260℃がより好ましい。特にポリ乳酸は熱分解しやすいポリマーであるため、ポリ乳酸の滞留時間はできるだけ短くすることが好ましく、滞留時間30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、15分以下がさらに好ましい。なお、滞留時間とは、ポリマーの溶融から紡出までの滞留時間を指し、これは混練機のバレルとスクリューとの間隙やスクリューのスペック、混練機と紡糸パックとの間の配管サイズ、紡糸パック内の寸法等から見積もることができる。また上述にて示したように、ポリ乳酸の熱分解を考慮して、高分子量ポリ乳酸を用いることが好ましい。またポリ乳酸の耐熱性を高めるために、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)などを任意の段階で少量添加することも好ましい。
また本発明の成分AがPTTを含む場合、ポリ乳酸ほどではないがPTTも熱分解し易いポリマーであるため、成分Aの滞留時間は35分以下とすることが好ましく、25分以下がより好ましく、15分以下がさらに好ましい。
口金面の温度は、高いほど、PTTまたはPBTの剪断粘度が下がり、口金孔壁との摩擦力が低減されることで口金孔周りの汚れがさらに抑えられるため好ましい。一方で、口金面の温度を適度な範囲に抑えることで、口金孔内でのPTTやポリ乳酸等の耐熱性が低いポリマーの熱分解を抑えられ、口金孔内での複合流が安定化し、断面の均一な繊維が得られるため好ましい。よって口金面温度は240〜280℃であることが好ましく、245〜275℃がより好ましく、250〜270℃がさらに好ましい。口金面が雰囲気や冷却風などによって影響を受けやすい場合は、口金面の周囲に接触型、非接触型のヒーターを配置し、口金面を積極的に加熱する手法も好ましい。例えば図1、図2、図3の口金ヒーター10がこれに該当する。
本発明で用いる紡糸口金としては、従来公知のものを任意に採用することができる。従来口金孔周りの汚れが生じ易い繊維を溶融紡糸により製造する場合は、汚れを抑制する為に、例えば口金孔径を大きくして、ポリマーの吐出線速度(吐出孔の最終絞り部のポリマー流速)を低下せしめたり、吐出孔出口にアール加工を施したりするなど、口金設計に制限があった。しかしながら本発明の製造方法によれば、口金汚れ防止剤の効果により、口金の孔スペックの選択幅が広がることも、本発明の大きなメリットである。たとえばポリマーの吐出線速度を高める口金孔スペックを選択できることで、従来よりも細繊度の繊維を製造し易くなったり、紡糸速度3000〜8000m/分の高速紡糸が容易になる等のメリットがある。
口金孔内での複合流を安定化せしめる意味で、紡糸口金の最終プレートにおける吐出孔径Dと吐出孔長Lの比であるL/Dを1以上とすることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、吐出孔径Dと吐出孔長は前記L/Dを満たす範囲で自由に選択でき、吐出孔径Dは0.1〜3mmの範囲で選択すればよい。なお口金孔形状が丸断面でない場合は、吐出孔の最終絞り部の断面積を算出し、その断面積になるように丸断面換算して直径を求め、その直径を吐出孔径Dとして算出する。
紡糸油剤は従来公知の油剤を採用することができ、例えば、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有するアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを共重合した化合物およびそれらから誘導された化合物が好ましく用いられる。
アルコールとしては、炭素数1〜30の天然および合成の任意の一価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソアミルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、二価アルコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールなど)および三価以上のアルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールなど)が挙げられる。
炭素数2〜4のアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとを共重合する場合、エチレンオキサイドの比率は50〜80重量%であることが必要である。エチレンオキサイド比率が50重量%未満では粘度が高くなりすぎ、80重量%を越えると耐熱性が乏しくなる。また、付加様式はランダム付加、ブロック付加のいずれでもよい。前記平滑剤の平均分子量は、平滑性および耐熱性の点で500〜20,000の範囲が好ましく、1,000〜10,000の範囲がより好ましい。
これら平滑剤の含有量は、油剤全体に対し55重量%以上に調整し、その他の成分としてイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、糊特性向上剤、制電剤、pH低下防止剤、耐水剤を適宜添加すればよい。
また、紡糸油剤は繊維全体に対して0.1〜3.0重量%付着されていることが好ましい。油剤の付着量を0.1重量%にすることで、上記特性が効果的に発揮される。一方、油剤の付着量が3重量%を越えると仮撚ヒーターやロール、施撚体の汚れがひどくなる。より好ましくは0.2〜2.0重量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.0重量%である。
本発明で好ましく用いられる油剤は、そのまま薄めずに糸条に付着させるよりも、均一に油剤を付着させるために水エマルジョン油剤として繊維に付着させることが好ましい。このときの油剤の濃度は加水粘性による増粘を抑制するために5〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%とすることがより好ましい。
交絡ノズル14は図1に示すように紡糸線上に設置してもよいし、ゴデットロール間または巻取機前に設置してもよい。交絡度を高くしたい場合は糸条張力の低いゴデットロール間や巻取機前に設置することが好ましく、交絡度を低くしたい場合は紡糸線上に設置することが好ましい。
また、紡糸速度(図1では第1ロール15の周速度)は、目的に応じて選択すればよく、500〜8000m/分の範囲で選択すればよい。未延伸糸は巻き取る前の段階において、PTTまたはPBTの遅延回復による巻締まりを防止すること等を目的として、図3の如く加熱ロールを用いて熱処理してから巻き取ることも好ましい。このときの熱処理温度は60〜120℃の範囲内で行えばよいが、過度に繊維を結晶化させないために、60〜100℃の範囲が好ましく、60〜80℃の範囲がより好ましい。また下記の式で表されるリラックス率は0.5〜5%の範囲で、巻取張力が0.05〜0.15cN/dtexの範囲で選択すればよい。
リラックス率(%)=(巻き取り直前のロール速度−巻取速度)/巻取速度×100
延伸糸を製造する場合には、延伸倍率は1.1〜3.0倍(図2の直接紡糸延伸装置においては、ロール21と22の速度比)の範囲で、得られる延伸糸の残留伸度が目的の範囲となるように調整すればよい。延伸温度は30〜90℃、熱処理温度は80〜200℃の範囲で選択すればよい。また繊維の遅延回復を抑え、巻締まりを防止するためにリラックス処理することが好ましく、リラックス率は3〜18%の範囲で、巻取張力が0.05〜0.15cN/dtexの範囲で選択すればよい。紡糸と延伸を連続的に行う場合も、延伸条件、巻取条件は上記の範囲で選択すればよい。
また巻取機のローラーベイルもしくはドライブロールがパッケージに接触している線長に対する荷重(パッケージに対する圧力に相当。以下、面圧と称する)は、6〜30kg/mの範囲にすることが好ましい。面圧を6kg/m以上にすることで、パッケージに適度な硬度を与え、パッケージ崩れやサドルを抑制することができる。また、面圧を30kg/m以下にすることで、パッケージの潰れや、バルジを抑制することができる。より好ましい範囲は7〜22kg/m、さらに好ましくは8〜16kg/mである。また、綾角は5〜10°の範囲にすることで、パッケージ端面の糸落ちを抑制しつつ、高速解舒においても安定した解舒張力が得られるとともに、端面部への糸崩れを抑えることができる。より好ましくは5.5〜8°であり、さらに好ましくは5.8〜7°である。
巻取時の駆動方式は、巻取速度が4000m/分以下であればドライブローラーによる従動駆動でもよいが、好ましくはスピンドル駆動方式であり、さらに巻取機のローラーベイルを強制駆動してローラーベイルとの摩擦を低減して発熱を抑制することが好ましい。このとき、ローラーベイルを強制駆動する場合のパッケージ表面速度に対するローラーベイル速度を0.05〜1%オーバーフィードするとパッケージフォームを良好にすることができ好ましい。
また従来公知の方法により仮撚加工糸を製造することができる。図5の如く仮撚加工装置を用い、チーズパッケージ18から糸条26を引き出し、糸道ガイド25、27〜28を介して供給ローラー29に供給する。その後糸条26は施撚体である3軸ツイスター33により撚りを施されながら第1ヒーター30にて熱処理され、糸道ガイド31を通して冷却板32にて構造固定される。このとき、冷却板32〜3軸ツイスター33の間で測定した張力を加撚張力(T1)とし、3軸ツイスター33〜延伸ローラー34までの間で測定した張力を解撚張力(T2)とした。構造固定された糸条26は延伸ローラー34を介して第2ヒーター35へと供給され、その後デリベリローラー36を介して糸道ガイド37、38を経て仮撚加工糸39として巻き取られる。なお、第2ヒーター35は、用途に応じ、低収縮化が必須の場合に入れればよい。また、図5の装置には必要に応じ各種ガイド、張力制御装置、流体処理装置、給油装置などを配置すればよい。
第1ヒーター30は従来公知のヒーターを採用でき、接触式ヒーターの場合は設定温度100〜160℃の範囲で、非接触式ヒーターの場合は設定温度150〜350℃で選択すればよい。また加工倍率(供給ローラー29と延伸ローラー34の速度比)は、1.1〜2.5倍の範囲で選択すればよい。第1ヒーターの設定温度、加工倍率の選択により、得られる仮撚加工糸のバルキー性を所望の範囲に調整できる。
また未解撚の少ない高品位な仮撚加工糸を得るには、解撚張力(T2)と加撚張力(T1)の比であるT2/T1が1〜2となるように調整すればよく、これを目的として3軸ツイスター33の周速度(D)と、延伸ローラー34の速度(Y)の比(以下、D/Yと記載)は1.1〜2.0の範囲とすることが好ましい。
仮撚加工に3軸ツイスター33としてベルトニップ型摩擦仮撚具を好ましく用いることもできる。ベルトの回転方向に水平なベルト回転軸と、糸条が走行する方向に水平な糸条走行軸とのなす角度を2倍した角度(交差角度と呼ぶ)は、90〜120°の範囲であれば糸条に効率的に撚りを加えることができ、更にはベルトそのものの摩耗も低く抑えることが可能となるため好ましい。さらに、表面材質は、クロロピレンラバーやニトリルブチレンラバーを好ましく使用することができる。このときニトリルブチレンラバーであれば耐久性やコスト、柔軟性の点からより好ましい。ベルトニップ型摩擦仮撚具の表面硬度は60〜80度であることが好ましい。
また本発明の製造方法で得られる複合繊維の伸度は20〜60%であれば、強度と伸度のバランスに優れ、製造工程における通過性が高まるため好ましい。また糸斑の指標であるウースター斑についても、上述したように酸化チタンが微分散している効果により、Normalテスト、Half Inertテスト共に、0.2〜3の範囲である。より好ましく0.2〜1.5である。
沸騰水収縮率は2〜20%であることが好ましい。沸騰水収縮率が高いほど、染色工程や、スチーム処理などにおいて、繊維構造体の寸法変化が小さく、かつ粗硬化することもないため好ましい。
本発明の製造方法により、低ヤング率で柔らかく、高弾性回復性で弾発性に優れた複合繊維を、生産性良く得ることができる。また得られる複合繊維は、毛羽が少なく、糸斑も小さいなど高品位な繊維であるため、仮撚加工や混繊等の糸加工や、整経、製織での工程通過性に優れている。また、該複合繊維、および該複合繊維を含んでなる繊維構造体は、多種多様な用途に使用することができる。たとえば、衣料用途(アウトドアウェアやゴルフウェア、アスレチックウェア、スキーウェア、スノーボードウェアおよびそれらのパンツ等のスポーツウェア、ブルゾン等のカジュアルウェア、コート、防寒服およびレインウェア等の婦人・紳士用アウター、ユニフォームなど)、寝装資材用途(掛布団や敷布団、肌掛け布団、こたつ布団、座布団、ベビー布団、毛布等の布団類や枕、クッション等の表皮やカバー、マットレスやベッドパッド、病院用、医療用、ホテル用およびベビー用のシーツ等、さらには寝袋、揺りかごおよびベビーカー等のカバー等)、自動車、電車、飛行機の内装資材(シート、天井、ドアトリム用の表皮等)、医療資材(貼付剤基布)等に好適に用いることができる。
繊維に添加する酸化チタンの平均粒径は、酸化チタンをヘキサメタリン酸ナトリウム1g/リットル水溶液に分散させ、堀場製作所製レーザー回折式/散乱式粒度分布測定装置(LA−920)を用いて測定した。
B.繊維中の酸化チタン粗大粒子の数
繊維1mgを試料とし、該試料を2枚の15mm×15mmのカバーガラスに挟み込み、ホットプレート上で(PTTまたはPBTの融点+20〜30)℃の温度で溶融させた。溶融後、カバーガラス上に100gの荷重を掛け、溶融物がカバーガラスからはみ出さないように、2枚のカバーガラス間に密着させ広げ、それを冷水に投入して急冷した。光学顕微鏡を用い、観察倍率200倍にて、カバーガラス間に広がった酸化チタン含有ポリマー全域について観察を行い、酸化チタンの最大幅が5μm以上のものを酸化チタンの凝集による粗大粒子と判断して、該粗大粒子の数を求めた。試料とした繊維の重量で除することにより、単位重量当たりの酸化チタン粗大粒子の個数に換算した。測定は5回行い平均値を取った。
C.繊維中の酸化チタンの平均粒径
B項にて作成した試料について同様にして顕微鏡観察を行い、ランダムに選択した300個の酸化チタン粒子を選択して最大幅を測定して数平均を求めた。
D.口金孔周りの汚れサイズ
紡出開始から(口金から成分Aを吐出させてから)、48時間後に、口金孔周りの汚れをデジタルカメラで撮影し、得られたデジタル画像について画像解析を行うことにより、口金孔周りの汚れサイズを計測した。
口金孔周りの汚れの撮影は、口金の吐出面側から行い、デジタル画像の解像度は1600×1200ピクセル/2.54cmとし、撮影範囲が実寸換算で50cm2以下となる倍率まで拡大して撮影した。また撮影角が20〜40°の範囲となるようにカメラ位置を調整した。撮影角とは口金の吐出面の中心から垂直に下ろした直線と、口金の吐出面の中心とカメラのレンズとを結ぶ直線との交点(口金の吐出面の中心)で形成される、0〜180°未満の角度である。また撮影に先立ち、口金の吐出面側にスケーリング円(直径10mmの円)を刻印しておき、デジタル画像の中に、スケーリング円が収まるように撮影した。
撮影したデジタル画像について、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)を用い、汚れサイズを測定した。図7に示すように、口金孔の汚れの外接円(口金孔の汚れと2点以上の接点を有し、全ての口金汚れを包括する円)を描き、該外接円の面積Xを求めた。次にスケーリング円の面積Yを求めた。そして下記の式を用い、Xを、Yを用いて規格化することで汚れサイズを算出した。
汚れサイズ(mm2)=X/Y×100
ホール数が10以上の場合は、汚れサイズの大きい孔から10孔を選択して同測定を行って数平均を求めた。ホール数が10未満の場合は、全ての孔について同測定を行って数平均を求めた。汚れサイズの平均値が3mm2を越えると、糸切れが頻発する傾向にあることから、本発明の目標レベルは、48時間後における口金孔周りの汚れサイズが3mm2以下である。より好ましくは2mm2以下、さらにこのましくは1mm2以下、もっとも好ましくは0mm2(口金吐出孔周りの汚れなし)である。
E.製糸性(糸切れ回数)
1tonの複合繊維を溶融紡糸するに際し、糸切れが起こった回数の合計により製糸性の評価を行った。本発明の目標レベルは糸切れ回数10回/ton以下であり、少ないほど好ましい。より好ましくは5回/ton以下、さらに好ましくは3回/ton以下である。
F.複合形態の確認
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)、観察装置(日立製作所製 H−7100FA型)にて、加速電圧75kVで、倍率5,000〜1,000,000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、得られた写真から複合繊維の複合形態を確認した。
G.成分A、成分Bの含有量
溶融紡糸を行う際、成分Aの吐出量(g/分)と、成分Bの吐出量(g/分)、および繊維を構成する全成分の吐出量の和(g/分)とを別々に計量し、成分Aの吐出量を、全成分の吐出量の和で除した後、100倍することで成分Aの含有量を求めた。また成分Bの吐出量を、全成分の吐出量の和で除した後、100倍することで成分Bの含有量を求めた。
W2(重量%)=(A2×ρ2)/(A3×ρ3)×100
ここで、ρ1、ρ2、ρ3については、JIS−L−1013:1999 8.17.1(日本規格協会発行、化学繊維フィラメント糸試験方法)に定められた浮沈法に基づき、20℃±0.1℃の温度下にて測定した。ρ1の測定試料は成分Aの原料であるポリマーであり、ρ2の測定試料は成分Bの原料であるポリマーであり、ρ3の測定試料は複合繊維である。比重液としては、測定試料が溶解しない溶媒を重液、軽液とし、測定試料の比重を考慮して測定した。例えば比重が1以上であればNaBr水溶液を用いて、比重が1〜0.789の間であれば重液に水を軽液にエチルアルコールを用いた混合液体にて、比重が0.789〜0.659の間であれば重液にエチルアルコールを軽液にn−ヘキサンを用いた混合液体にて、それぞれの測定試料を30分放置した後の浮沈平衡状態を確認し、前述8.17.1項記載の通り、浮かびも沈みもしない混合液体の比重値を測定した。測定は5回行い、平均値からρ1、ρ2、ρ3を求めた。但し、成分Aの原料であるポリマー、成分Bの原料であるポリマーが入手出来ない場合、ρ1は成分AがPTTからなる場合は1.33とし、PBTからなる場合は1.35とした。ρ2は、複合繊維が成分Aと成分Bの2成分からなるものと見なして下記の式で算出した。
H.固有粘度
試料0.8gに、o−クロロフェノール(以下OCPと略記する)10mlを添加する。そして160℃、30分間で溶解した後、徐冷し測定溶液を得た。該測定溶液について、25℃にてオストワルド粘度計を用いて、相対粘度ηrを下式により求め、固有粘度を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度=0.0242ηr+0.2634
ここで、η:ポリマ溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm3)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0:OCPの密度(g/cm3)。
I.ポリ乳酸の重量平均分子量
試料(ポリ乳酸)のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。測定条件は下記の通りである。
GPC装置:Waters2690
カラム:Shodex GPC K−805L (8mmID*300mmL) 2本連結して使用
溶媒:クロロホルム(和光、HPLC用)
温度:40℃
流速:1ml/分
試料濃度:10mg/4ml
濾過:マイショリディスク0.5μ−TOSOH
注入量:200μl
検出器:示差屈折計RI(Waters 2410)
スタンダード:ポリスチレン(濃度:サンプル0.15mg/溶媒1ml)
測定時間:40分。
J.融点
Perkin elmer社製DSC−7を用いて2nd runで融点を測定した。この時、試料重量を約10mg、昇温速度を16℃/分とした。
K.カルボキシル末端濃度
精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。この時、例えばポリ乳酸の場合、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
L.環状ダイマーの含有量
試料300mgを秤量して100ml容量の三角フラスコに投入した。そしてヘキサフルオロイソプロパノール50ml、クロロホルム50ml同士を混合して均一溶液を調整し、三角フラスコに10ml添加した。そして室温にて三角フラスコを5時間振り混ぜて試料を溶解させた。その後クロロホルムを5ml加えて混合し、さらにアセトニトリル80mlを徐々に加えた。この混合溶液をガラスフィルターで吸引濾過し、濾液を200mlメスフラスコに入れて、アセトニトリルを加えて200ml溶液とした。そしてこの溶液を孔径0.45μmのディスクフィルターで濾過し、測定溶液を調整した。
該溶液について、HPLC測定を実施し、得られたクロマトグラムにおける環状ダイマーに帰属するピークの面積(Ap)を算出し、下記の式より環状ダイマーの含有量を求めた。
環状ダイマーの液中濃度(mg/l)=3.63×10―5×Ap
環状ダイマーの含有量(重量%)=環状ダイマーの液中濃度(mg/l)×0.2(l)/300(mg)×100
HPLCの測定条件を下記に示す。
装置:島津LC−10AD(systeml)
カラム:Inertsil ODS−3 3.0×250mm
移動相:アセトニトリル/水/(70/30)
流速:0.7ml/分
検出器:242nm
カラム温度:45℃
導入量:5μl
ここでApを液中での環状ダイマーの濃度に換算する回帰式を下記の手順で求めた。すなわち、標準試料として純度95%の環状ダイマーを用い、該環状ダイマーを10.7mg秤量し、クロロホルム25mlに定容したものを標準原液とした(純度100%の環状ダイマーの液中濃度は409μg/ml)。そして該標準溶液にアセトニトリルを加えて、純度100%の環状ダイマーの液中濃度が、80μg/ml、40μg/ml、20μg/ml、10μg/mlの4種類の希釈標準溶液を作製した。そしてそれぞれの希釈標準溶液について、HPLC測定を行い、環状ダイマーの液中濃度と、ピーク面積との関係から、回帰式を得た。
M.総繊度および単繊維繊度
検尺機にて100mの複合繊維をかせ状に測長し、該かせの重量を測定して100倍することにより総繊度(dtex)を算出した。測定は3回行い、平均値をもって総繊度(dtex)とした。そして 総繊度をフィラメント数で除することにより、単繊維繊度(dtex)を求めた。
N.強度、伸度
JIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に示される定速伸長条件に準じ、オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100を用いて、捲縮糸の強度および伸度を測定した。このとき、試料長200mm、引張速度200m/分として、強度はS−S曲線(応力−歪み曲線)における最大強力を示した点の強力を総繊度で除することにより求め、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
O.ヤング率
N項にて測定したS−S曲線において、初期長に対して3%伸長した際の応力(σ3%)を計測し、下記の式に基づき複合繊維のヤング率を測定した。
複合繊維のヤング率(cN/dtex)=σ3%/0.03
P.弾性回復率
オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100を用いて、繊維の弾性回復率を測定した。複合繊維を試料とし、初期長200mm、初荷重0.088cN/dtex、引張速度200mm/分とし、初期長の10%まで伸長後、1分間放置した。その後、200mm/分の速度でチャックを戻して繊維を収縮させ、S−S曲線を描く。繊維の収縮中に応力がゼロになったときの伸度を残留伸度(X)とする。そして下記の式を用いて弾性回復率を求めた。
弾性回復率(%)={(10−X)/10}×100
Q.CR
測定は捲縮糸についてのみ行った。繊維をカセ取りし、無荷重の状態で沸騰水中で15分間処理した後、25℃、相対湿度65%の雰囲気下にて24時間乾燥した。このサンプルに0.088cN/dtex(0.1gf/d)相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長L0を測定した。次に、水中で0.088cN/dtex相当のカセを除き、0.0018cN/dtex(2mgf/d)相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長L1を測定した。そして下式によりCRを計算した。
CR(%)={(L0−L1)/L0}×100
R.U%
Zellweger uster社製UT4−CX/Mを用い、糸速度200m/分、測定時間1分間でU%(Normal)を測定した。
S.沸騰水収縮率
複合繊維をカセ取りし、0.088cN/dtex相当の荷重下で初期長(L2)を測定した。その後、該荷重を取り外して無荷重の状態で沸騰水中で15分間処理し、25℃、相対湿度65%の雰囲気下にて24時間乾燥した。乾燥後のカセについて、0.088cN/dtex相当の荷重下で処理後長(L3)を測定し、下記の式により沸騰水収縮率を測定した。
沸騰水収縮率(%)={(L2−L3)/L2)}×100
T.毛羽数
東レ(株)製毛羽 テスター(DT−104型)を使用し、1万m当たりの毛羽数を測定した。F形検出部を用い、測定糸速300m/分、張力0.088cN/dtex、測定時間180分間の条件で測定し、得られた毛羽数を測定長(5.4万m)で除することにより1万m当たりの毛羽数を求めた。測定は5回行い、平均値をとった。本発明の目標レベルは1万m当たりの毛羽数が5個以下であり、3個以下がより好ましく、1個以下がさらに好ましく、0個以下が最良である。
[製造例1](ポリ乳酸(PLA)の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)を存在させてチッソ雰囲気下180℃で220分間重合を行い、ポリ乳酸(PLA)を得た。得られたPLAの重量平均分子量は21万であった。また、残留しているラクチド量は0.13重量%であった。PLA1のTgは58℃、融点は170℃であった。
[製造例2](ポリエーテルアミド(PEA)の製造)
ポリエチレングリコールにアルカリ触媒の存在下でアクリロニトリルを反応させ、さらに水素添加反応を行うことにより両末端の97%以上がアミノ基であるポリエチレングリコールジアミン(数平均分子量4,000)を合成し、これとアジピン酸を常法で塩反応させることによりポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートの45%の水溶液を得た。次に、容量2m3の濃縮缶に上記45%のポリエチレングリコールジアンモニウムアジペート水溶液を200kg、85%カプロラクタム水溶液を120kg、40%のヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレート水溶液を16kgを投入し、常圧で内温が110℃になるまで約2時間加熱し80%濃度に濃縮した。続いて容量800リットルの重合缶に上記濃縮液を移行し、重合缶内に2.5リットル/分で窒素を流入しながら加熱を開始した。内温が120℃になった時点でドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)を5.2kgと1,3,5トリメチル−2,4,6−トリ(3,5ジ−Tert−ブチル4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(TTB)5.2kgを添加し、攪拌を開始して内温が245℃になるまで、18時間加熱し重合を完結させた。重合終了後缶内に窒素で7kg/cm2の圧力をかけ溶融ポリマーを幅約15cm、厚さ1.5mmのベルト状として回転無端ベルト(長さ6m、ベルト材質:ステンレス、裏面を水スプレーで冷却)上に押し出し、冷却後、通常の方法でペレタイズした。得られたペレットの固有粘度は2.2であった。
[製造例3](ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(PEEA)の製造)
ε−カプロラクタム340部、テレフタル酸18部、数平均分子量が1000のポリエチレングリコール100部、さらにイルガノックス1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.1部およびトリメチルフォスフェート0.01部とともに重合反応容器に仕込み、窒素気流下に240℃で1時間加熱撹拌した後、三酸化アンチモン0.1部を添加し、昇温減圧プログラム下250℃、0.5mmHg以下の条件で4時間重合反応を行うことにより、ポリアミド形成性成分の割合が45重量%、ポリエーテルエステル形成性成分が55重量%であるポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を得た。この共重合体のオルトクロロフェノール溶液(濃度:0.5g/100ml)の25℃での相対粘度は2.1であった。
固有粘度1.5g/dl、Tg48℃、融点230℃、環状ダイマーの含有量2.6重量%、カルボキシル末端基濃度12eq/tonであり、平均粒径が0.4μmのアナターゼ型酸化チタンが1重量%添加されたPTTポリマー101重量部(PTT100重量部、酸化チタン1重量部からなる)に対し、口金汚れ防止剤として製造例2で製造したPEA1重量部をドライブレンドしたものを成分Aとして用いた。そして製造例1で製造したPLAを成分Bとして用いた。これらは全て真空乾燥によって予め水分率50ppm以下としたものを用いた。
図2に示す直接紡糸延伸機を用い紡出糸に延伸、熱処理を施したのち巻き取ることにより延伸糸を得た。まずホッパー1に成分Aを投入し、エクストルーダー2にて加熱溶融し、ギヤポンプ5により計量し、紡糸パック8に導いた。またホッパー3に成分Bを投入し、エクストルーダー4にて加熱溶融し、ギヤポンプ6により計量し、紡糸パック8に導いた。そして口金内部に配置した口金9にて成分Aと成分Bとを合流させて紡出糸を得た。このとき口金9には図4の(a)のごとく3枚組み合わせた口金を用いた。紡出糸に冷却装置11によって、冷却風を吹きつけて冷却、固化し、口金下2mの位置で給油装置13によって紡出糸を集束させながら油剤を付与し、交絡ノズル14にて作動圧空0.2MPaにて交絡を施し、第1ロール21(タンデム型)で引き取り、第1ロール21にて紡出糸を予熱し、第1ロール21と第2ロール22(タンデム型)との速度比によって延伸を施し、第2ロール22にて熱処理を施し、第3ロール23、第4ロール24を介して、巻取機17にて巻取り、84dtex48フィラメントの芯鞘複合繊維(成分Aが鞘成分、成分Bが芯成分)からなるパッケージ18を得た。このとき巻張力が0.1cN/dtexとなるように巻取速度を調整した。5kg巻ごとにドラムを交換し、5kg巻パッケージを200本(合計1ton)作製した。
実施例1において、紡糸、延伸において糸切れは発生せず、製糸性は極めて優れていた。また48時間経過時においても口金孔周りの汚れは皆無であり、得られた複合繊維中には酸化チタン粗大粒子は確認されなかった。また繊維中の酸化チタンの平均粒径は0.4μmであり、ポリマーに添加する前の平均粒径と同等であった。該延伸糸は毛羽が全くなく高品位なものであり、強度、ヤング率、弾性回復率、U%にも優れていた。得られた複合繊維はパウダー調の高級感のある光沢を呈した。実施例1の製造条件を下記に示す。実施例1の結果を表1に示す。
<実施例1の製造条件>
・成分Aのエクストルーダー温度:260℃
・成分Bのエクストルーダー温度:200℃
・スピンブロック温度:245℃
・総吐出量:31.3g/分(1パック1糸条、48フィラメント)
・成分Aの吐出量:21.93g/分
・成分Bの吐出量:9.39g/分
・濾層:成分A、成分Bともに、#30モランダムサンド、100gを充填
・フィルター:成分A、成分Bともに、10μm不織布フィルターを使用
・口金の3プレート(図4の模式図の3プレート。鞘成分と芯成分とが合流する口金):吐出孔径(図5の20)0.30mm、吐出孔長(図5の19)0.5mm、孔数48
・冷却風:冷却長1mのユニフロー使用。冷却風温度20℃、風速0.5m/秒
・口金面深度:0.08m
・口金ヒーター温度:280℃
・口金面温度:253℃
・油剤:紡糸油剤には平滑剤として重量平均分子量2000のポリエーテルを70重量%、重量平均分子量6000のポリエーテルを8重量%、エーテルエステルを12重量%、その他添加剤(制電剤、抗酸化剤、防錆剤)を10重量%として調整し、さらにこの油剤を濃度10重量%になるように水エマルジョンとして調整し、純油分として繊維に約0.8重量%付着させた。
・第1ロール(タンデム型)温度:55℃
・第2ロール(タンデム型)温度:150℃
・第3ロール温度:25℃
・第4ロール温度:25℃
・第1ロール(タンデム型)速度:2700m/分
・第2ロール(タンデム型)速度:4050m/分
・第3ロール速度:3950m/分
・第4ロール速度:3850m/分
・巻取速度:3726m/分
実施例1において、成分AにPEAを添加せず、成分Bを供給せずに単一成分とした以外は実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸を行った。参考例1の結果を表1に示す。参考例1では口金孔周りの汚れは問題となるレベルではなかった。また得られた繊維が含む酸化チタンの粗大粒子も少なく、毛羽も少ない繊維が得られた。しかしながら繊維のU%が高く糸斑の大きく、この繊維から得られる布帛は染色斑が生じ易いものであった。これはPTT繊維の遅延回復によってパッケージ上に巻き取られた繊維が除々に巻締まり、表層の繊維が内層の繊維を抑え付ける張力が生じたためと考えられる。実施例1のごとく複合繊維とすることにより、成分Bが存在することでPTTの遅延回復が抑えられ巻締まりが起こらないため、U%が良好な繊維が得られる。
実施例1において、成分Aにおける酸化チタンの重量部(PTT100重量部に対する)を変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を作成した。実施例2〜3、比較例1、参考例2の結果を表1に示す。それぞれの酸化チタンの重量部を下記に記載する。
・実施例2:0.3重量部
・実施例3:3重量部
・比較例1:6重量部
・参考例2:0重量部
実施例1〜3を比較するとわかるように、本発明の口金汚れ防止剤を含むことにより、成分Aにおける酸化チタンの重量部が5重量部以下の範囲において、口金孔周りの汚れが抑制され、生産性良く複合繊維を製造できることがわかる。
実施例1において、成分Aにおける口金汚れ防止剤(PEA)の重量部(PTT100重量部に対する)を変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を作成した。実施例4〜5、比較例2〜3の結果を表1に示す。それぞれのPEAの重量部を下記に記載する。
・実施例4:0.3重量部
・実施例5:3重量部
・比較例2:0重量部
・比較例3:6重量部
実施例1、実施例4〜5を比較するとわかるように、本発明の成分Aが特定量の口金汚れ防止剤を含むことにより、口金孔周りの汚れが抑制され、繊維中の酸化チタン粗大粒子も少ない複合繊維を生産性良く得ることができる。
一方比較例3では、口金孔周りの汚れは解消されたものの、PEAの重量部が高すぎるため、PTTの優れた繊維形成性が阻害されてしまい、紡糸糸切れが多くなってしまった。
口金汚れ防止剤を下記の如く変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6〜12の芯鞘複合繊維を得た。実施例6〜12の結果を表2に示す。
<実施例6〜12で用いた口金汚れ防止剤>
・実施例6:製造例3で製造したPEEA
・実施例7:ポリアミド6(東レ株式会社製、製品名アミランCM1001)
・実施例8:ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製、製品名PEG20000)
・実施例9:エチレンテレフタレートとポリエチレングリコールの共重合体(以下PET/PEGと記載する。ポリエチレングリコールの数平均分子量4000、エチレンテレフタレートとPEGとの共重合比率(重量比)は90/10)
・実施例10:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下DBSと記載する。和光純薬工業株式会社製、製品名ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
・実施例11:ポリオキシメチレンオレイルエーテル(三洋化成工業株式会社製、製品名エマルミン40)
・実施例12:ドデシルトリメチルアンモニウム(以下DTACと記載、東京化成工業株式会社製、製品名:ドデシルトリメチルアンモニウム)
実施例1、実施例6〜12を比較するとわかるように、本発明にて好ましい、親水性重合体、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を口金汚れ防止剤として用いることにより、より高い汚れ防止効果が得られた。また得られた複合繊維中においても酸化チタンの粗大粒子が少ないものが得られた。
実施例1において、PTTポリマーの代わりに、固有粘度0.9g/dl、Tg25℃、融点224℃、カルボキシル末端基濃度15eq/tonであり、平均粒径が0.4μmのアナターゼ型酸化チタンが1重量%添加されたPBTポリマー101重量部(PBT100重量部、酸化チタン1重量部からなる)を用い、下記の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして複合繊維を得た。口金孔周りの汚れは殆ど無く、製糸性は良好であった。また得られた繊維は酸化チタンの粗大粒子を含まず、毛羽数も含まないものであった。実施例13の結果を表3に示す。
・第1ロール(タンデム型)温度:40℃
実施例1において、成分Bとして固有粘度0.5g/dl、Tg70℃、融点254℃、カルボキシル末端基濃度25eq/tonのPETを用い、下記の条件を変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。実施例14の結果を表3に示す。実施例14においても、実施例1と同様に口金汚れ防止剤による効果がえられた。
・成分Aのエクストルーダー温度:260℃
・成分Bのエクストルーダー温度:280℃
・スピンブロック温度:270℃
・口金ヒーター温度:290℃
・口金面温度:265℃
実施例15
実施例14において、サイドバイサイド複合繊維が得られる複合口金を用い(図8に示す如く、口金の最終プレートで成分Aと成分Bとを合流させる口金)、下記の条件を変更した以外は、実施例14と同様にして複合繊維を作成した。得られた複合繊維はCRが35%とバルキー性に優れていた。また口金孔周りの汚れも殆どなく、紡糸糸切れも少ないものであった。得られたサイドバイサイド複合繊維中の酸化チタンの粗大粒子は少なく、毛羽数も少ない高品位な繊維であった。実施例13の結果を表3に示す。
・成分Aの複合比率:50重量%
・成分Bの複合比率:50重量%
・総吐出量:23.1g/分(1パック1糸条、48フィラメント)
・成分Aの吐出量:11.55g/分
・成分Bの吐出量:11.55g/分
・第1ロール(タンデム型)速度:1300m/分
・第2ロール(タンデム型)速度:2990m/分
・第3ロール速度:2910m/分
・第4ロール速度:2820m/分
・巻取速度:2751m/分
実施例16
実施例1で得られた芯鞘複合繊維を原糸について、図6の仮撚加工装置にて、下記の条件で仮撚加工を施し、芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸を得た。実施例16の結果を表3に示す。仮撚加工において糸切れはなく、製造工程は安定していた。得られた仮撚加工糸はCR45%と高いバルキー性を示し、得られた仮撚加工糸は毛羽も無く、高品位なものであった。
・供給ローラー速度:463m/分
・延伸ローラー速度:500m/分
・第1ヒーター温度:130℃
・仮撚加工倍率:1.08
・DY比:1.35
・T2/T1:1.3
・デリベリローラー速度:480m/分
・巻取速度:466m/分
2:成分Aのエクストルーダー
3:成分Bのホッパー
4:成分Bのエクストルーダー
5:成分Aのギヤポンプ
6:成分Bのギヤポンプ
7:スピンブロック
8:紡糸パック
9:口金
10:口金ヒーター
11:ユニフロー冷却装置
12:紡出糸
13:給油装置
14:交絡ノズル
15:第1ロール
16:第2ロール
17:巻取機
18:チーズパッケージ
19:吐出孔長
20:吐出孔径
21:第1ロール(タンデム型)
22:第2ロール(タンデム型)
23:第3ロール
24:第4ロール
25、27、28、31、37、38:糸道ガイド
26:糸条
29:供給ローラー
30:第1ヒーター
32:冷却板
33:3軸ツイスター
34:延伸ローラー
35:第2ヒーター
36:デリベリローラー
39:仮撚加工糸
40:セパレートロール
Claims (6)
- 繰り返し構造単位の90モル%以上がトリメチレンテレフタレートからなるポリエステル、または繰り返し構造単位の90モル%がブチレンテレフタレート単位からなるポリエステル100重量部と、酸化チタン0.01〜5重量部と、界面活性剤および/または親水性重合体である口金汚れ防止剤0.01〜5重量部からなる成分Aと、熱可塑性ポリマーからなる成分Bとを口金装置内で複合した後、成分Aが繊維表面の1部を形成するように複合流として吐出させ、溶融紡糸することを特徴とする、複合繊維の製造方法。
- 成分Bが脂肪族ポリエステルからなることを特徴とする、請求項1記載の複合繊維の製造方法。
- 成分Bが繰り返し単位の90%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルからなることを特徴とする、請求項1記載の複合繊維の製造方法。
- 口金汚れ防止剤が、アニオン系界面活性剤および/またはノニオン系界面活性剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合繊維の製造方法。
- 複合形態が芯鞘複合構造であり、成分Aが繊維表面全体を形成するように複合させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合繊維の製造方法。
- 複合形態がサイドバイサイド複合構造である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合繊維の製造方法。
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