JP2004212083A - 電波時計のケース構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属時計ケースを使用しても、何の支障もなく電波を受信することができ、防水品質及び外観品質の向上並びにデザインバリエーションの拡大を図ることが可能な電波時計のケース構造を提供することにある。
【解決手段】このケース構造においては、アンテナ37と時計装置とを収納した時計ケース30内に電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下に設定された非磁性部材42,43を設けている。非磁性部材42,43を設けると、金属材料に起因するアンテナ近傍での共振現象の乱れを低減することができ、金属時計ケースであっても十分な受信感度を得ることができる。これにより電波時計であっても時計ケースにチタン、ステンレススチール等を使用することができるようになる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時刻情報を含む所定の電波を受信して時刻を表示する電波時計に関するものであり、特に、通常の金属時計ケースを使用した場合における電波受信性能の向上を目指した電波時計のケース構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
標準電波を受信する電子時計、即ち時刻情報を含む標準電波(搬送波)を受信し、この電波から時刻情報を取り出すことにより、正確な時刻を得ることのできる電波時計は既に知られている。この時刻情報を含む電波は、各国毎に周波数が異なり、例えば、日本では総務省、郵政事業庁の管轄下において、40kHz及び60kHzの標準電波が発信されている。
【0003】
図5は、このような電波時計の機能の概略を示すブロック図である。この電波時計は、アンテナ1、電波時計受信機2、CPU3、表示駆動部4、入力装置5等から構成されている。その他、図示していないが時分秒の各指針又は液晶等による表示部が含まれている。
【0004】
この電波時計においては、はじめにアンテナ1で時刻情報を含む電波を受信する。電波時計受信機2は、アンテナ1が受信した電波を増幅検波し、電波から時刻情報を取り出して出力する。CPU3は、電波時計受信機2から出力された時刻情報に基づき、現在時刻データを出力する。表示駆動部4は、CPU3から出力された現在時刻データに基づき、表示部に現在時刻を表示させる。尚、入力装置5は、例えば、CPU3に対してリセット等の操作情報を入力する際に使用される。
【0005】
電波に含まれている時刻情報(タイムコード)は、60秒周期のパルス信号であり、1秒ごとに、200、500、800msecのいずれかの幅を有するパルスが1つ乗っている。これらパルスの組み合わせにより、60秒で時刻情報が得られる。CPU3は、受け取ったパルス信号から1秒ごとのパルスのパルス幅を読み取っていくことにより、時刻情報(現在時刻)を取得する。そして、CPUは、取得した時刻情報により、表示駆動部4を介して表示部における表示時刻を修正する。よって、電波時計は、受信した時刻情報に基づき、表示時刻が所定間隔毎に修正されることにより、常に正確な時刻を表示できる。
【0006】
このような電波時計として、アンテナ、電波時計受信機、CPU、表示駆動部および表示部を、アンテナ収納体であるケースの中に収納した腕時計が、すでに提供されている。このケースの素材には、アンテナが電波を受信するために合成樹脂やセラミックなどの非導電性材料が主として用いられてきた。即ち、金属などの導電材料からなるケース内部にアンテナを収納すると、アンテナ近傍に発生する磁束が導電材料に吸い取られ、共振現象が妨げられるため、アンテナが標準電波を受信できなくなるほどに、アンテナの受信機能が低下してしまうからである。
【0007】
しかしながら、このようなアンテナの受信障害を避けるため、合成樹脂製のケースを用いると、ケースの耐傷性、あるいは耐薬品性の低下をまねくばかりか、装身具としての腕時計に必要とされる高級感や美観も損なわれることになる。このため、ケースに金属を用いた電波腕時計が提案されている。
【0008】
図6は、ケースの一部に金属を用いた電波腕時計の構造の一例を示す断面図である。この腕時計のケース10は、胴11と裏蓋12と風防13とから概略構成されている。バンド(図示せず)が連結される胴内部に、ムーブメント14が公知の手段で配置されている。ムーブメント14の上方には、時刻表示部である文字板15と針16が、同じく公知の手段で配置されている。そして、ムーブメント14の下方で、かつ裏蓋12の上方に位置するように、磁気長波アンテナであるバーアンテナ17が配置されている。このバーアンテナ17は、フェライト材からなる磁芯部材18と、この磁芯部材18に巻回されたコイル20とよりなり、合成樹脂製の保持部材の上面に固定されている。
【0009】
ムーブメント14は、前述した電波時計受信機、CPU、および表示駆動部を備え、導線21によってバーアンテナ17と電気的に導通される。従って、バーアンテナ17が受信した標準電波に基づいて、ムーブメント14のCPUが、表示駆動部における、図示しないギア機構を動作させて、表示部の針16の位置を常に修正するように駆動する。なお、ここで、上下方向とは、図6における上下を示している。
【0010】
胴11は導電材料で中空でない、即ちソリッド金属、たとえばソリッドステンレスからなる。胴11の最上部には、非導電材料であるガラスからなる風防13が、接着等の公知の手段で固定される。文字板15は、非導電材料である合成樹脂やセラミックなどからなる。裏蓋12は、胴11に固定されたステンレスからなる環状の縁枠22と、縁枠内に固定されたガラス23とからなる。このように、この腕時計は、ケースの上下面には非導電材料が視認されるものの、ケースの側面部分を金属で構成しているため、装身具としての高級感や美観を損なわないという利点がある(特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−33571号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示される腕時計は、携帯使用する上での電波受信性能について大きな問題はないが、裏蓋12の縁枠22にガラス23が固定されているため、腕時計を落とす等の衝撃を与えるとガラス23が破損するという問題がある。また、裏蓋12は、腕に密接しているので、長期の使用において、汗等によりガラス23が縁枠22から外れたり、腕時計内部のムーブメント(アンテナ1、電波時計受信機2、CPU3、表示駆動部4等)に汗、水、ホコリ等が入り込み、腕時計としての機能を著しく低下させる恐れもある。
【0013】
また、裏蓋12にガラス23が設けられているので、部品点数が増えると共に組立工数も増え、コストアップをまねくという問題を有していた。また、非金属部材が外装に使用されているため、腕時計としての重厚感に欠け、高級感や外観品質にも問題を有していた。
【0014】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたもので、通常の金属時計ケースを使用しても、携帯上、何の支障もなく時刻情報等、所定の情報を含んだ電波を受信することができ、安定した防水品質及び高級感を有する外観品質の向上並びに一般の時計と同様のデザインバリエーションの拡大を図ることが可能な電波時計のケース構造を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の電波時計のケース構造は、請求項1に示すように、アンテナと時計装置とを収納した時計ケースと、該時計ケースの内面に少なくとも1つ固定され、電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下に設定された非磁性部材と、を備えている。また、請求項2及び3に示すように、前記時計ケース又は前記時計ケースに取り付け固定された裏蓋は、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトの中の少なくとも1つからなり、前記時計ケース又は前記裏蓋の内面に前記非磁性部材が固定されている。ここで本発明の時計ケース及び裏蓋に用いるステンレススチールとしては、オーステナイト系のステンレスが好ましく、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、請求項4及び5に示すように、前記非磁性部材は、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はそれらの合金の中の少なくとも1つからなるか又はその中の少なくとも2つが接合されて形成されている。また、請求項6に示すように、前記非磁性部材の内面には樹脂部材が密接されている。また、請求項7及び8に示すように、前記アンテナは、磁芯部材とこの磁芯部材に複数巻かれたコイルとから構成され、前記磁芯部材の軸線を含む少なくとも1つの平面に沿って、前記アンテナが平行に投影される位置に前記非磁性部材が配置されるか又は少なくとも前記アンテナの端部とそれぞれ相対する位置に前記非磁性部材が配置されている。また、請求項9及び10に示すように、前記時計ケース又は前記時計ケースに取り付けられた裏蓋は、チタン、チタン合金、ステンレススチールの中の少なくとも1つからなる素材に前記非磁性部材を圧接接合したクラッド材からできている。また、請求項11及び12に示すように、前記非磁性部材は、圧入、カシメ、溶接、ロー付、接着剤の中の少なくとも1つの手段で前記時計ケース又は前記裏蓋に固定されている。また、請求項13及び14に示すように、前記時計ケース又は前記裏蓋に固定された前記非磁性部材は、湿式メッキ法又は金属溶射法の手段で形成されている。また、請求項15に示すように、前記非磁性部材は、50μmから2000μmの範囲の厚さを有している。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の電波時計のケース構造においては、アンテナと時計装置とを収納した時計ケース内に、電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下に設定された非磁性部材を設けている。また、この非磁性部材は、アンテナが平行に投影される位置又はアンテナの端部とそれぞれ相対する位置に配置されるように、時計ケース又は裏蓋に固定される。このように非磁性部材を設けると、金属材料に起因するアンテナ近傍での共振現象の乱れを低減することができるため、金属時計ケースであっても十分な受信感度を得ることが可能となる。これにより、電波時計であっても時計ケース又は裏蓋にチタン、ステンレススチール等を使用することができるようになり、受信感度を犠牲にすることなく、時計ケースの機構上及び外観上の機能を向上させることができる。尚、非磁性部材の電気抵抗率等に関しては、実験による検証を重ねることで得られた最も効果的な値を提示している。
【0017】
【実施例】
以下図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る電波時計のケース構造を示す断面図である。時計ケース30は、略筒状をなし、その図中上方の開口部の内周縁にある段部30aにパッキン31を介してガラス32が取り付けられ、図中下方の開口部に裏蓋33が圧入、螺合、ネジ等の手段により取り付けられている。尚、図1に示す裏蓋33は圧入にて時計ケース30に取り付けられており、その立ち上がり部33aと時計ケース30の内側面30cとの間にパッキン44が挟み込まれている。また、時計ケース30は金属からなるものであり、その材質に関しては後述する。
【0018】
時計ケース30の中には、前述した図5に示す電波時計受信機、CPU、及び表示駆動部等を備えたムーブメント34が収められている。ムーブメント34の図中上方には、時刻表示部である文字板35と指針36が設けられている。このムーブメント34は、時計ケース30の段部30aを形成する内方突出部30bの図中下面に文字板35が当接することにより位置決めされ、裏蓋33の立ち上がり部33aの上面に配設された樹脂中枠45との間に挟み込まれることで固定されている。また、このムーブメント34と裏蓋33との間には所定の空間が設けられており、その空間の中にアンテナ37が配置されている。このアンテナ37は、フェライト材等からなる棒状の磁芯部材38と、この磁芯部材38に巻回されたコイル40とから構成されており、ムーブメント34の下面に固定されている。
【0019】
また、本実施例においては、時計ケース30の内側面30cと裏蓋33の内面33cに非磁性部材42,43を設けている。非磁性部材42は板状をなし、裏蓋33の立ち上がり部33aの内側のムーブメント34に対面する内面33c上に設けられており、磁芯部材38の軸線を含む平面に対面すると共にアンテナ37が平行に投影される位置に配置されている。また、非磁性部材43は、時計ケース30の内側面30cに沿ったリング状をなすか又はその一部を構成する彎曲した板状をなすもので、アンテナ37の端部に相対する位置に配置されている。この非磁性部材42,43は、電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下の材料からなるものであり、その材質に関しては後述する。
【0020】
上記構成からなる電波時計においては、アンテナ37が受信した標準電波に基づいて、ムーブメント34内のCPUが、表示駆動部を動作させて、指針36を常に修正するように駆動する。このときに、本実施例におけるケース構造では、時計ケース30及び裏蓋33とアンテナ37との間に、非磁性部材42,43が介在しており、金属からなる時計ケース30や裏蓋33に起因するアンテナ近傍での共振現象の乱れを低減し、受信感度を向上させている。
【0021】
次に、時計ケース30及び裏蓋33と非磁性部材42,43の材質の選定に関する実験とその結果について説明する。はじめに、アンテナ37の受信感度の低下が少ない金属を選定するため、0.5mm厚の金属板の上に、導体径65μmコイル2000ターンの実験用アンテナを設置し、所定位置に設置された送信アンテナから40kHzの信号を送信する実験を行った。受信状態の評価は、図2に示すように、受信した信号のピーク高さである利得と周波数帯域幅Δfとピーク周波数foから求められるQ値=fo/Δfを比較することにより行っている。尚、利得が高いほど受信感度が良好であり、Q値が高いほど周波数選択性が良好であることを示す。この実験の結果、銅、真鍮、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、それらの合金上にアンテナを設置した場合は、チタン、チタン合金、ステンレススチールの場合に比べて、利得が2〜3dB(デシベル)高くなった。
【0022】
また、銅、真鍮、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛それらの合金に関してQ値が41〜47と高く、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タンタルカーバイトに関してQ値が32前後と低下することが認められた。
【0023】
次に、同様の実験を、時計ケース30及び裏蓋33に相当する実験用外装を用いて行った。即ち、図3に示すように、時計ケース30及び裏蓋33に相当する実験用外装50内に、アンテナ37に相当する実験用アンテナ51を収めたものを樹脂板52の上に載置し、所定位置に設置された送信アンテナ53から一定周波数の電波を送信し、実験用アンテナ51の受信状態を測定した。
【0024】
この実験の結果、時計ケース30に相当するケース部50aと裏蓋33に相当する蓋部50bを共に受信感度が低下すると認められたステンレススチール等の金属で形成すると、Q値は5と低下し、電波時計としては好ましくないことが認められた。また、ケース部50aを受信感度が低下すると認められたステンレススチール等の金属で形成し、蓋部50bを受信感度が良好と認められた真鍮等の金属で形成すると、Q値は8前後となって受信感度が良好となった。そこで、時計外装に使用することを想定してケース部50aはステンレススチール等の金属のままに、外側をステンレススチール等の金属で形成し且つ内側を真鍮等の金属で形成した蓋部50bを使用すると、Q値は8〜9と更に良好な状態になった。その上、アンテナの利得も1〜2dB向上することもできた。
【0025】
上記実験結果から、受信感度が低下する金属で時計ケース30や裏蓋33を形成したとしても、その内側に受信感度が良好となる金属を設けることで、時計ケース内側にあるアンテナ37の受信感度を向上させることが可能であることが検証できた。
【0026】
一方、実験に使用した金属の電気抵抗率を比較してみると、受信感度を低下させるチタンやステンレススチールでは、電気抵抗率が55〜74μΩ−cmと高く、受信感度が良好となるアルミニウムでは、電気抵抗率が2.69μΩ−cmと低いことがわかった。そこで、電気抵抗率と受信感度との関係を検証するため、外側と内側に設ける金属を電気抵抗率に基づいて組み合わせたところ、受信感度が良好となる金属の電気抵抗率を7μΩ−cm以下に設定することにより、これに組み合わせる金属の電気抵抗率が高くても良好な受信感度を保つことが可能であることが判明した。
【0027】
その結果、銅、真鍮、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛それらの合金のような電気抵抗率が7μΩ−cm以下の金属で非磁性部材42,43を形成すれば、外観品質に優れたチタン、チタン合金、ステンレススチール、タンタルカーバイトのように電気抵抗率が高い金属で時計ケース30及び裏蓋33を形成しても受信感度を良好にすることが可能であることが検証できた。
【0028】
また、非磁性部材42,43の厚みと受信感度との関係を調べるため、図3に示すケース部50aと蓋部50bをステンレススチール(オーステナイト系)で形成し、蓋部50bの内側に薄いアルミニウム素材を設け、その厚みを0(アルミニウム素材なし)から徐々に増加させる実験を行った。その結果、Q値は、厚み0のときの9.9から厚みを増すと厚みが500μmのときの14.3まで上昇し、厚みが1000μmのときの14.6になると厚みを増してもほぼその値のままとなることがわかった。更に、アンテナの利得も厚さ500μm以上で約3dB向上することもわかった。
【0029】
その結果、アルミニウム素材の厚みが50μmになると利得及びQ値が上昇し、1000μm前後で利得及びQ値が最も高い値で一定になるため、非磁性部材42,43の厚みを50μm以上に設定することが好ましいことがわかった。また、その厚みの上限に関しては、時計ケース30や裏蓋33とムーブメント34やアンテナ37との間の距離、あるいは製造・組立時における非磁性部材42,43の取り扱い易さ等を考慮して2000μm以下に設定することが好ましい。
【0030】
上記各実験等の結果に基づけば、時計ケース30と裏蓋33は、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトで形成し、非磁性部材42,43は、電気抵抗率が7μΩ−cm以下の銅、真鍮、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛それらの合金で形成し、更にその厚みを50〜2000μmに設定することが最も好ましいことになる。
【0031】
また、非磁性部材42,43は、上記金属の内の1種類だけで形成されている必要はなく、その中の少なくとも2種類の金属を拡散接合、ロー付、接着、カシメ等によって接合することにより形成しても同様の効果が認められた。
【0032】
次に、時計ケース30及び裏蓋33と非磁性部材42,43との固定に関して説明する。時計ケース30及び裏蓋33と非磁性部材42,43をそれぞれ別々の部品として形成した場合には、通常、圧入、カシメ、溶接、ロー付、接着剤により接合する。
【0033】
また、時計ケース30及び裏蓋33に素材の段階で非磁性部材42,43を一体に接合して固定し、その後、形状を整えることも可能である。この場合には、チタン、チタン合金、ステンレススチール等からなる時計ケース30及び裏蓋33の素材に、銅、真鍮、アルミニウム,マグネシウム、亜鉛それらの合金等からなる非磁性部材を圧接した状態で加熱して拡散接合し、更に所定の厚さまで圧延することにより接合されたクラッド材を使用する。このクラッド材で時計ケース30及び裏蓋33を形成することにより、時計ケース30及び裏蓋33と非磁性部材42,43とが一体に接合された状態でそれらが形成されることになる。
【0034】
また、非磁性部材42,43を形成する際に、時計ケース30及び裏蓋33に密着するように形成して固定することも可能である。この場合には、湿式メッキによる電鋳、金属溶射法等により、非磁性部材42,43を時計ケース30や裏蓋33の所定の位置に形成する。この電鋳に関しては、ステンレススチールからなる裏蓋33に銅を析出させて非磁性部材42を形成する場合を例にとって説明する。はじめに、図4に示すように、裏蓋33の立ち上がり部33aの内側にある所定部分を除く裏蓋33の表面に、例えばエポキシ樹脂等の有機物からなるマスク60を形成する。次に、マスク60が形成されていない裏蓋33の内面に電解脱脂を施し、水洗いする。その後、裏蓋33に陰極を接続し、硫酸銅浴中で電鋳を行い、銅61を析出させる。このときの浴の組成と条件は、硫酸銅250g/l(リットル)、硫酸60g/l、温度20〜50℃、電流密度2〜20A/dm2、時間20〜30時間(析出する厚さに応じて設定する。尚、この条件においては6時間で約150μmの厚さとなる。)、pH0.8〜1.1に設定する。このように所定の厚さまで銅61を析出させた後、有機溶剤中に裏蓋33を漬浸してマスク60を剥離する。その後、裏蓋33を水洗いし、乾燥させることにより、裏蓋33の所定位置に非磁性部材42を形成することができる。
【0035】
尚、図1に示すケース構造においては、時計ケース30と裏蓋33にそれぞれ非磁性部材43,42を設けているが、時計ケース30と裏蓋33の一方に非磁性部材を設けただけでも受信感度を高めることができる。従って、必ずしも時計ケース30と裏蓋33の両方に非磁性部材を設ける必要はない。
【0036】
また、非磁性部材42,43とアンテナ37との間に樹脂板を設けたり、非磁性部材42,43の表面を樹脂層で覆うことにより、アンテナ37と非磁性部材42,43とが接触してアンテナ37が損傷することを防ぐように構成しても良い。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、時計ケースや裏蓋の構成にガラス等の特殊な構成を使用することなく受信感度を高めることができるので、携帯上、何の支障もなく時刻情報等を含む電波を受信する電波時計を提供することができる。
【0038】
また、時計ケースや裏蓋にチタン、ステンレススチール等を使用することができるので、安定した防水品質と、高級感のある外観品質とを有するケース構造にすることができる。
【0039】
更に、時計ケースや裏蓋を、電波時計ではない一般の時計と同様に設計・製造することができるので、電波時計におけるケースのデザインバリエーションを一般の時計並に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電波時計のケース構造を示す断面図である。
【図2】受信状態の優劣を示すアンテナの利得及びQ値の算出例を示す説明図である。
【図3】実験用外装を用いた受信実験の実験用設備を示す説明図である。
【図4】電鋳により非磁性部材を形成する場合の形成例を示す裏蓋の断面図である。
【図5】電波時計の機能の概略を示すブロック図である。
【図6】ケースの一部に金属を用いた電波腕時計の構造の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 アンテナ
2 電波時計受信機
3 CPU
4 表示駆動部
5 入力装置
10 ケース
11 胴
12 裏蓋
13 風防
14 ムーブメント
15 文字板
16 針
17 バーアンテナ
18 磁芯部材
20 コイル
21 導線
22 縁枠
23 ガラス
30 時計ケース
30a 段部
30b 内方突出部
30c 内側面
31 パッキン
32 ガラス
33 裏蓋
33a 立ち上がり部
33c 内面
34 ムーブメント
35 文字板
36 指針
37 アンテナ
38 磁芯部材
40 コイル
42,43 非磁性部材
44 パッキン
45 樹脂中枠
50 実験用外装
50a ケース部
50b 蓋部
51 実験用アンテナ
52 樹脂板
53 送信アンテナ
60 マスク
61 銅

Claims (15)

  1. アンテナと時計装置とを収納した時計ケースと、該時計ケースの内面に少なくとも1つ固定され、電気抵抗率が7.0μΩ−cm以下に設定された非磁性部材と、を備えていることを特徴とする電波時計のケース構造。
  2. 前記時計ケースは、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトの中の少なくとも1つからなり、前記時計ケースの内面に前記非磁性部材が固定されていることを特徴とする請求項1記載の電波時計のケース構造。
  3. 前記時計ケースに取り付け固定された裏蓋は、チタン、チタン合金、ステンレススチール、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトの中の1つからなり、前記裏蓋の内面に前記非磁性部材が固定されていることを特徴とする請求項1記載の電波時計のケース構造。
  4. 前記非磁性部材は、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はそれらの合金の中の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  5. 前記非磁性部材は、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はそれらの合金の中の少なくとも2つが接合されて形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  6. 前記非磁性部材の内面には樹脂部材が密接されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  7. 前記アンテナは、磁芯部材とこの磁芯部材に複数巻かれたコイルとから構成され、前記磁芯部材の軸線を含む少なくとも1つの平面に沿って、前記アンテナが平行に投影される位置に前記非磁性部材が配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  8. 前記アンテナは、磁芯部材とこの磁芯部材に複数巻かれたコイルとから構成され、少なくとも前記アンテナの端部とそれぞれ相対する位置に前記非磁性部材が配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  9. 前記時計ケースは、チタン、チタン合金、ステンレススチールの中の少なくとも1つからなる素材に前記非磁性部材を圧接接合したクラッド材からできていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  10. 前記時計ケースに取り付けられた裏蓋は、チタン、チタン合金、ステンレススチールの中の少なくとも1つからなる素材に前記非磁性部材を圧接接合したクラッド材からできていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  11. 前記非磁性部材は、圧入、カシメ、溶接、ロー付、接着剤の中の少なくとも1つの手段で前記時計ケースに固定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  12. 前記非磁性部材は、圧入、カシメ、溶接、ロー付、接着剤の中の少なくとも1つの手段で前記裏蓋に固定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  13. 前記時計ケースに固定された前記非磁性部材は、湿式メッキ法又は金属溶射法の手段で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  14. 前記裏蓋に固定された前記非磁性部材は、湿式メッキ法又は金属溶射法の手段で形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
  15. 前記非磁性部材は、50μmから2000μmの範囲の厚さを有していることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の電波時計のケース構造。
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