JP2004210965A - 一液型エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される基板との間を封止するアンダーフィル材料に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、 CSPやBGA等の半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される回路基板との間を封止するアンダーフィル材料用の一液型エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルカメラ、一体型VTR、携帯電話機などの小型電子機器が普及するにつれて、LSI装置の小型化が求められている。このため、LSI等の半導体ベアチップを保護したり、テストを容易に行ったりすることができる従来のチップ実装用パッケージの特徴を生かしながら、ベアチップ並みに小型化し、特性の向上を図る目的でCSPやBGAなどの新しいパッケージが普及しつつある。
【0003】
このリードのないチップキャリアは、比較的小さいパッケージの中で、チップとそれに対応する基板との間に多数の入出力接続部を備えている。リードのないチップキャリアは、一般的に、アルミナのような一枚のセラミックを含むパッケージからなり、そのセラミックがチップキャリア即ちベースを形成し、そのベース上にチップが実装される。チップが実装されたパッケージは、さらにより大きいプリント回路基板(PCB)などに実装される。具体的には、パッケージのコンタクトパッドと鏡像関係にあるコンタクトパッドがPCB上に形成され、両者を符合させた後、リフロー半田付け等を行うことによって、電気的及び機械的に接続され、表面実装される。パッケージをPCBに半田により接続する場合は、通常、半田ペーストを用いるか、ソルダバンプが用いられる。パッケージとPCBとの間のソルダバンプによって生じる隙間には、エポキシ系などの封止樹脂(アンダーフィル材料)が注入されるのが一般的である。
【0004】
また、チップをパッケージやPCBに実装する際に必要とされる面積を低減するための方法の一つとして、フリップチップ接続法がある。これは、チップの上面側にある接続用パッドを下面側へ向け、対向するパッケージやPCBにソルダバンプにより接続する方法である。この場合も、チップ素子面とチップキャリア、あるいはチップ素子面とPCBとの間にソルダバンプによる隙間が生じるため、同様にアンダーフィル材料が注入される。アンダーフィル材料は、上記接続部における隙間や空間を埋めるだけでなく、電気的接点を密封して周囲から保護するとともに、例えばパッケージとPCBとを接着する機能を有し、小さな機械的接合点であるソルダバンプ接合部に過度の力が作用することを防ぐ目的も併せ持っている。
【0005】
このアンダーフィル材料の充填方法としては、チップまたはパッケージの外周に沿って塗布し、毛細管現象を利用して充填するキャピラリーフローと、充填する場所にあらかじめアンダーフィル材料を滴下しておき、その上からチップまたはパッケージを載せるコンプレッションフローの二通りがあるが、最近は、前記のキャピラリーフローが主流である。
この工程においては、過剰のアンダーフィル材料がチップあるいはパッケージの外周から流出してしまうことがあるため、アンダーフィル材料の量や種類、あるいは処理工程を厳しく管理するなどの試みが行われてきた。
【0006】
通常、このアンダーフィル材料には、線膨張係数が半田に近似しているエポキシ樹脂を用いることが多い。これによって温度疲労による寿命を改善している。また、不活性な充填材を配合することにより、流れ特性を調整することが行われる。
従来、汎用的に使用されてきた一液型エポキシ樹脂としては、ジシアンジアミドを硬化剤として使用したものがあるが、線膨張係数をより半田に近似させる目的で充填材を添加するため、粘度を下げにくいという問題がある。また、ジシアンジアミドが固形の硬化剤であるため、隙間が20μm以下になると、エポキシ樹脂と硬化剤とが分離し、反応しない液状エポキシ樹脂が残り、これが接続信頼性に悪影響を及ぼすという問題があった。また、公知の酸無水物硬化剤を使用した一液型エポキシ樹脂の場合では、粘度が低くなり、十分なフィレット(充填後のアンダーフィル材料の、端部分の厚さ)が形成されず、ヒートサイクル試験における接続信頼性が得られないことがあるという問題があった。
【0007】
また、このようなアンダーフィル材料には熱硬化性樹脂を用いるために、従来は配線基板にCSPやBGAを実装した後に、CSPやBGA上のLSIの不良、CSPやBGAと配線基板との接続不良等が発見されたときに、これらの熱硬化性樹脂を剥離してCSPやBGAを交換することが困難であり、リペア性に劣るという問題があった。
【0008】
このような半導体装置のリペア性を向上させる手段として、ベアチップと基板との固定接続を所定温度で硬化する樹脂を用いて行い、半導体装置に不具合が発生した場合は、この所定温度より高い温度で軟化させてベアチップを取り外す方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、信頼性とリペア特性の両方を満足する具体的なアンダーフィル材料そのものについては依然として知られていなかった。
また、上述したようなアンダーフィル材料を基板から剥離するために、有機溶剤等に浸漬してから剥離する方法があるが、剥離性(リペア性)を向上させると、アンダーフィル材料本来の接着性能が低下し、アンダーフィル材料の接着性や耐久性を向上させると剥離性が低下するといった状況にあり、アンダーフィル材料としての本来の接着性能と、剥離性を両立するものは未だに得られていない。さらに、一液型あるいは二液型のアンダーフィル材料に、アクリル酸エステル類、芳香族または脂肪族のエステル類などの可塑剤を配合する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。この方法は、CSPやBGA等の半導体装置を配線基板に短時間の熱硬化で接続でき、耐ヒートショック性に優れ、かつ不良が発見されたときに容易にCSPやBGAを取り外すことが可能であるとされているが、上記の可塑剤を配合するため、耐久性や耐熱性、耐ヒートサイクル性が低下したり、硬化物中からの可塑剤成分のブリードによって周囲を汚染したりするといった問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平06−69280号公報
【特許文献2】
特開平10−204259号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、短時間の硬化が可能で生産性がよく、または比較的低温での熱硬化で配線基板上の各部品に悪影響を及ぼさずに、配線基板上にCSPやBGA等の半導体装置を確実に接続することができ、硬化後の耐ヒートショック性に優れ、硬化物中からの汚染物質のブリードがないアンダーフィル封止用の一液型エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
さらに、アンダーフィル工程における樹脂組成物の流出を改善し、CSPやBGA等の半導体装置に不具合が発見された際には、半導体装置を容易に配線基板から取り外すことができ、正常な配線基板、または半導体装置の再利用が可能なリペア性に優れたアンダーフィル封止用の一液型エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(5)によって達成される。
(1)半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される基板との間を封止するアンダーフィル材料に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
(2)前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記キシレン樹脂5〜40重量部を含有する上記(1)に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(3)前記キシレン樹脂は、数平均分子量が290〜600である上記(1)又は(2)に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(4)前記酸無水物の一部として、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを含有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(5)前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート1〜20重量部を含有する上記(4)に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある)は、半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される基板との間を封止するアンダーフィル材料に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の組成物において用いられるエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のグリシジル基を有するものであり特に限定されないが、ビスフェノールタイプエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのほか、カテコール、レゾルシノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテルも使用できる。また、P−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂等も使用することができ、これらを単独あるいは混合して使用してもよい。
【0014】
上記エポキシ樹脂の形態は特に限定されず、液体でも固体でもよいが、通常は後述する酸無水物硬化剤と混合した場合に液状となるものが好ましく使用される。これらの中でも、比較的低分子量であるビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂が好ましい。これにより、組成物製造時の作業性や硬化後の特性を良好なものにでき、かつ材料コストを抑えることができる。
なお、単価のアルコール系の飽和脂肪族あるいは不飽和脂肪族エポキシ樹脂などを用いる場合は、アダクト系化合物などの潜在性硬化剤を溶解させる傾向があり、これらの潜在性硬化剤を併用する場合は保存安定性に影響する場合がある。
【0015】
本発明において硬化剤として用いられる酸無水物としては特に限定されないが、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ジクロルコハク酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、テトラブロム無水フタル酸、ポリアゼライン酸無水物、無水クロレンディク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、製造時の取り扱いの作業性や硬化後の特性、材料コスト、工業的な供給安定性を考慮すると、常温で液状であるものが好ましく、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。なお、カルボン酸基を有する無水トリメリット酸は保存安定性が低下する場合がある。
【0016】
また、酸無水物の配合量としても特に限定されないが、エポキシ樹脂1当量に対して、0.8〜1.2当量配合することが好ましい。さらに好ましくは0.9当量〜1.1当量である。これにより、低粘度で、かつ未硬化部分が生じにくく、適切な機械的強度を有する硬化物を得ることができる。配合量が前記下限値未満では機械的強度が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、組成物の粘度が低下するようになり、未硬化部分を生じやすく、機械的強度が低下することがある。
【0017】
本発明において用いられる酸無水物としては、主たる成分は上記の化合物であるが、これらの酸無水物のみでは、組成物をチップと回路基板との間に充填後、加熱硬化する際に粘度低下により外側に流出し、チップと回路基板との間に隙間ができ接続信頼性が低下することがある。このため、本発明の組成物においては、酸無水物としてグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを併用することが好ましい。これにより、硬化時の粘度上昇が速くなり、チップの外側への組成物の流出を防止すると考えられ、さらには、硬化時間が短くなり内部に浸透する前に硬化を開始する効果をも有すると考えられる。
【0018】
グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートの配合量としては特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対し、1〜20重量部が好ましい。さらに好ましくは5〜10重量部である。これにより、組成物に適度な速硬化性を付与することができる。配合量が前記下限値より少ないと、速硬化性の向上効果が十分でなく、アンダーフィル作業時にチップの外側へ組成物が流出することがあり、一方、前記上限値を超えると、組成物の保存安定性が低下することがある。
【0019】
本発明の組成物には、硬化剤として前記酸無水物を用いるとともに、硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としては特に限定されないが、潜在性硬化剤として市販されているアダクト系化合物が使用できる。例えば、味の素ファインテクノ社製・「アミキュアPN−23」、同・「アミキュアMY−24」、あるいは、富士化成工業社製・「フジキュアFX−1000」などが挙げられる。また、一般的なイミダゾール化合物や、特開平1−70523号公報に開示されている一液性エポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤、特開平6−73156号公報に開示されている潜在性硬化剤などを用いてもよい。
【0020】
本発明の組成物には、エポキシ樹脂のほかに樹脂成分としてキシレン樹脂を配合する。これにより、本発明の組成物をアンダーフィル材料として用いた場合にリペア性を付与することができる。
本発明の組成物で用いられるキシレン樹脂は、キシレンとホルムアルデヒドとを反応させて得られるものであり、その性状としては特に限定されないが、溶剤を含有しない状態で液体であり、数平均分子量が290〜600であることが好ましい。数平均分子量が前記下限値未満では、熱時に密着性が下がらないためリペア性の付与効果が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、エポキシ樹脂に対する分散安定性が低下するようになるため、製造時及び使用時の取り扱い性が低下することがある。
このような性状を有するキシレン樹脂としては、例えば、三菱瓦斯化学株式会社製・「ニカノール」などの市販品を用いることができる。
【0021】
本発明の組成物において、上記キシレン樹脂の配合量としては特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましい。さらに好ましくは10〜30重量部である。これにより、他の特性に実質的に影響を与えることなく、組成物に良好なリペア性を付与することができる。キシレン樹脂の配合量が前記下限値未満では、キシレン樹脂の配合効果が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、可塑化効果が大きくなり、常温での密着性が低下して、本来の目的である接続信頼性が低下する傾向がある。
【0022】
本発明の組成物において、キシレン樹脂は、エポキシ樹脂と相溶性がよく、常温において可塑剤として用いても、他の可塑剤と比較して密着性や耐熱性に及ぼす影響を小さくすることができる。さらに、芳香環を有するため剛直であり、組成物の特性劣化が少ない。そして、100℃以上を超えてから、可塑化効果が発揮され、密着性が低下してリペア性が向上すると考えられる。
【0023】
本発明の組成物には特に限定されないが、無機充填材を配合することができる。これにより、組成物の耐熱性の向上、熱膨張率の低減等を図ることができる。無機充填材としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、アルミナ、ガラス粉末等が挙げられる。これらの中でも、結晶シリカ、溶融シリカが好ましい。これにより、上記効果に加え、組成物の電気特性を向上させ、粘度上昇を低く抑えることができる。
【0024】
上記無機充填材を用いる場合の配合量としては特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対して、100〜200重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、作業性の観点から100〜150重量部である。これにより、組成物の線膨張係数を半田に近似させることができる。配合量が前記下限値未満では線膨張係数が低くなり接続信頼性が低下することがある。また、前記上限値を越えると、粘度が高くなるため作業性が低下することがある。
無機充填材の粒度については特に限定されないが、本発明の目的のためには分離沈降が少なく、粘度上昇が小さいことが望まれるので、平均粒径が1〜20μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満では、粒子径が小さいため粘度上昇やチキソ性が現れ、取り扱い上好ましくない場合がある。また、平均粒径が20μmを越えると保存時に無機充填材の沈降を生じることがある。
【0025】
なお、本発明の組成物には、以上に説明した配合物のほかに、本発明の目的に反しない範囲において、必要に応じて、染料、変性剤、チキソ性付与剤、着色防止剤、老化防止剤、離型剤、反応性ないしは非反応性の希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0026】
本発明の組成物の製造方法は、通常のエポキシ樹脂組成物の製造方法と同様な一般的な撹拌混合装置と加工条件が適用される。使用される設備としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押し出し機等である。加工条件としてはエポキシ樹脂等を溶解および/または低粘度化し撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために冷却してもよい。撹拌混合の時間は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
【0027】
【実施例】
以下実施例と比較例により本発明を説明する。
表1に示す配合量により、原材料をプラネタリミキサを用いて常温で均一分散されるまで十分に撹拌混合を行い、組成物を得た。表1の配合量はすべて重量部である。
【0028】
【表1】
【0029】
1.表の注(原材料)
(1)エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂A:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂・エポキシ当量 約170)
・エポキシ樹脂B:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂・エポキシ当量 約190)
(2)硬化剤
・酸無水物A:日立化成工業社製・「HN−2200」(メチルテトラヒドロ無水フタル酸)
・酸無水物B:新日本理化社製・「リカシッド MTA−15」(グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート)
(3)硬化促進剤
・アミン系化合物:味の素ファインテクノ社製・「アミキュアMY−24」(脂肪族ポリアミンのエポキシ樹脂アダクト硬化剤)
(4)キシレン樹脂
・キシレン樹脂A:三菱瓦斯化学社製・「ニカノールLLL」(数平均分子量=340)
・キシレン樹脂B:三菱瓦斯化学社製・「ニカノールHH」(数平均分子量=550)
(5)着色料
・顔料:三菱化成工業社製・「MA−600」:(カーボンブラック)
(6)チキソ付与剤
・日本アエロジール社製・「Aerosil#200」(コロイダルシリカ)
(7)添加剤
・消泡剤:信越化学工業社製・「KS−603」(シリコン系化合物)
(8)無機充填材
・電気化学工業社製・「FB−35」(溶融シリカ、平均粒径11μm)
【0030】
実施例および比較例の組成物について、以下の項目の評価を行った。結果を表2に示す。
【表2】
【0031】
2.表の注(測定方法)
(1)粘度(25℃):EH型粘度計(東機産業社製)による。ロータの型式は3度コーンを用いた。
(2)ゲルタイム:150℃熱盤を用いて測定した。
(3)保存安定性:組成物の製造直後の粘度(V0)を測定し、一方、容量200g容器内に充填密封した組成物を30℃の雰囲気で保存し、粘度(V)を経時的に測定した。これらの粘度の比率(V/V0:粘度変化比率 )が2.0を超えたときの保存日数を保存安定性とした。この日数が長いほど保存性が良好であることを示し、3日以上であることが好ましい。
(4)充填性:25mm×75mmのスライドガラス(厚み約1.2mm)上に、直径150μmの球状スペーサーを4隅に介して18mm×18mmのカバーガラス(厚み約0.5mm)を接着し、充填用の空間を作成した。室温に保持した状態で、組成物をシリンジで一辺に滴下し、10分間放置後硬化炉(120℃)に入れて30分硬化させ、硬化後の試料の外観を観察し、以下の基準で判定した。
◎:カバーガラス外周部からの組成物のはみ出しが1mm以内に収まり、充填用の空間が空隙なく充填されている
○:充填用の空間が組成物で充填されるが、充填に時間がかかる
△:カバーガラス外周部からの組成物のはみ出しが1mm以上となる
×:充填用の空間が組成物で充填されていない
(5)流れ込み性:25mm×75mmのスライドガラス(厚み約1.2mm)上に、直径150μmの球状スペーサーを4隅に介して18mm×18mmのカバーガラス(厚み約0.5mm)を接着し、充填用の空間を作成した。60℃に保持した状態で、組成物をシリンジで一辺に滴下し、充填用の空間が組成物で充填されるまでの時間を測定した。
(6)分離未硬化物:75mm×25mmの鋼鈑(厚み約1.2mm)を、2枚張り合わせて、接合した上面に組成物を塗布した。これを常温で2時間放置した後、100℃の硬化炉で1時間加熱処理した。硬化後、鋼鈑を剥がして、接合面部分に粘稠な未硬化樹脂が存在するか否かを確認し、以下の基準で判定した。
〇:なし
×:存在する
(7)リペア性:下記の手順で行った。
(ア)エポキシ樹脂硬化物(5mm×13mm×10mm厚み)の一面(5mm×13mm)に樹脂組成物を0.3mm厚みとなるように塗布した。これを、35μm厚みのレジストを印刷したガラス基材エポキシ樹脂回路基板(0.8mm厚み)の所定の位置に搭載して、樹脂組成物の塗布面と基板のレジスト面とを接着し、100℃で60分間加熱硬化した。
(イ)加熱硬化処理後の上記基板を、200℃に加熱した熱盤上に基板が下側になるようにして5分間放置後、ピンセットでエポキシ樹脂硬化物を上方に引き上げ、基板から引き剥がした。基板側については、マイクロスパチュラで表面に残った組成物を、基板を傷つけないように除去した後、熱盤上から下ろして、アセトン溶剤で拭き取った。
(ウ)エポキシ樹脂硬化物側については、引き剥がした面(5mm×13mm)を観察し、組成物の残存率を計算した。各符号は以下の通りである。
◎:組成物残存率が30%未満
○:組成物残存率が30%〜70%
×:組成物残存率が70%を超えるとともに、基板側の回路やレジストに破壊が見られる
(8)接続信頼性:12mm×12mmのBGA(0.8mmピッチ、132ピン、半田ボール径0.46mm)を搭載した回路基板に組成物を充填して、ヒートサイクル(−40℃/85℃ 各30分間を1サイクル)で、500サイクル実施してBGAの接続の有無を確認し、以下の基準で判定した。
〇:処理前と同じ
×:処理後に導通異常が発生。
【0032】
表1、2から明らかなように、実施例1〜6はいずれも、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有する本発明の組成物であり、保存安定性、硬化性、充填性、流れ込み性、及びリペア性において良好な組成物が得られた。特に、実施例1〜3は、酸無水物としてグリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを配合し、キシレン樹脂の配合量も最適であったので、特に充填性、リペア性に優れたものとなった。
一方、比較例1、2はともにキシレン樹脂を配合しないものであるが、いずれもリペア性に劣るものであった。また、比較例3は、硬化剤として酸無水物の代わりにジシアンジアミドを用いたが、粘度が高く、硬化や流れ込みに時間を要し、分離未硬化物がみられた。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、 CSPやBGA等の半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される配線基板との間を封止するアンダーフィル材料に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有することを特徴とするものである。本発明の組成物は、保存安定性、硬化性、充填性、流れ込み性、及びリペア性に優れるものであり、半導体装置用アンダーフィル材料として有用である。
Claims (5)
- 半導体装置と、この半導体装置が電気的に接続される基板との間を封止するアンダーフィル材料に用いられる一液型エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂、酸無水物、及びキシレン樹脂を必須成分として含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記キシレン樹脂5〜40重量部を含有する請求項1に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記キシレン樹脂は、数平均分子量が290〜600である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記酸無水物の一部として、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート1〜20重量部を含有する請求項4に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
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