JP2004210683A - ジアルコキシマグネシウムの製造方法並びにオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属マグネシウムとアルコールを触媒の存在下で反応させ固形物を得、該固形物とアルコキシチタン化合物を不活性有機溶媒中で接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去するジアルコキシマグネシウムの製造方法、並びに該製造方法により得られるジアルコキシマグネシウム(a)と4価のチタンハロゲン化合物(b)、電子供与性化合物(c)とを接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分、及び該固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と有機ケイ素化合物とから形成されるオレフィン類重合用触媒。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なジアルコキシマグネシウムの製造方法並びにポリマーの立体規則性および収率を高度に維持することができ、さらに微粉の少ない重合体を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分および触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有するオレフィン類重合用固体触媒成分が数多く提案されており、特にマグネシウム原料としてジエトキシマグネシウムを代表とするアルコキシマグネシウム化合物を用いて調製された固体触媒成分が、性能が高く工業的にも広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭63−3010号公報)においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素化合物およびチタンハロゲン化物を接触して得られた生成物を、粉末状態で加熱処理することにより調製した固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物よりなるオレフィン類重合用触媒とオレフィンの重合方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平1−315406号公報)においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸ジクロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物より成るオレフィン類重合用触媒と該触媒の存在下でのオレフィンの重合方法が提案されている。
【0005】
上記の各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂、脱灰工程を省略し得る程の高活性を有するとともに、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げているが、この種の高活性型触媒成分と有機アルミニウム化合物およびケイ素化合物に代表される電子供与性化合物とからなる組成の重合用触媒を用いてオレフィン類の重合を行うと、固体触媒成分自体の微粉および重合した際の反応熱による粒子破壊のため、生成重合体中に微粉が多く含まれ、粒度分布もブロード化する傾向があった。微粉重合体が多くなると、均一な反応の継続を妨げ、重合体移送時における配管の閉塞をもたらす等のプロセス障害の原因となり、また粒度分布が広くなると結果的に重合体の成形加工にまで好ましくない影響を及ぼすため、微粉重合体が可及的に少なく、かつ均一粒径で粒度分布の狭い重合体を希求する要因となっていた。
【0006】
この問題を解決する手段として、特許文献3(特開平6−157659号公報)においては、芳香族炭化水素化合物と四塩化チタンの混合溶液に、球状のジアルコキシマグネシウム、芳香族炭化水素化合物およびフタル酸ジエステルの懸濁液を添加し、反応させ、さらに四塩化チタンと反応させて得られる固体触媒成分を用いたオレフィン類重合用触媒が提案されている。
【0007】
また特許文献4(特開平6−287225号公報)においては、球状のジアルコキシマグネシウム、芳香族炭化水素化合物およびフタル酸ジエステルとの懸濁液を、芳香族炭化水素化合物と四塩化チタンとの混合溶液に加えて反応させ、得られた反応生成物を芳香族炭化水素化合物で洗浄し、再度四塩化チタンと反応させて得られた固体成分を乾燥させ、微粉除去処理行程を経て得られるオレフィン類重合用固体触媒成分が提案されている。
【0008】
さらに特許文献5(特開平6−287217号公報)において、球状のジアルコキシマグネシウム、芳香族炭化水素化合物およびフタル酸ジエステルとの懸濁液を、芳香族炭化水素化合物と四塩化チタンとの混合溶液に加えて反応させ、得られた反応生成物を芳香族炭化水素化合物で洗浄し、再度四塩化チタンと反応させて得られた固体成分を乾燥させ、微粉除去処理を施したのち、粉末状の非イオン性界面活性剤を添加する処理行程を経て得られるオレフィン類重合用固体触媒成分が提案されている。
【0009】
上記の提案は固体触媒成分自体の微粉を除去し、結果として生成した重合体の微粉量をある程度低減させるという効果は認められるものの、特にマイクロファインと呼ばれる超微粉重合体の発生は依然としてあり、さらなる微粉重合体発生の少ない触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
【0010】
一方、従来技術として、塩化マグネシウムやジエトキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物を、アルコキチタン化合物で全て溶解して均一溶液を形成し、その後析出させて固体触媒成分を調製する方法が知られている。
【0011】
例えば特許文献6(特開昭62−18405号公報)には、チタンのアルコキシ化合物、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸のジエステル、ハロゲン化炭化水素化合物、特定式で表されるチタンハロゲン化物を接触させて得られ、特定式で表されるケイ素化合物および有機アルミニウム化合物と組み合わせて用いられるオレフィン類重合用触媒成分が提案されている。
【0012】
また、特許文献7(特開平3−72503号公報)には、特定式で表されるマグネシウム化合物、テトラアルキルチタン化合物、および特定式で表されるケイ素化合物を加熱反応させ、ついで該反応生成物を特定式で表されるハロゲン含有チタン化合物および特定式で表される電子供与性化合物で処理することによって得られるオレフィン類重合用固体触媒成分が開示されている。
【0013】
しかしながら、これらの従来方法は、いずれも、マグネシウム化合物をアルコキシチタン化合物によって溶解し、次いで固体触媒成分を析出させる調製方法であるため、マグネシウム化合物の溶液から固体を析出させる工程が煩雑である。また、固体触媒成分の調製方法において多量のアルコキシチタン化合物を用いるため、析出した固体中にアルコキシチタン化合物が残存し活性などの性能が著しく低下してしまうという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−3010号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平1−315406号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平6−157659号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−287225号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平6−287217号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開昭62−18405号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開平3−72503号公報(特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の目的は、新規なジアルコキシマグネシウムを得ることが出来るジアルコキシマグネシウムの製造方法、および該ジアルコキシマグネシウムを用いて調製され、オレフィンの重合に供した際、ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持でき、しかも微粉が少なく粒度分布の均一な重合体を得ることができるオレフィン類重合触媒の成分となるオレフィン類重合用固体触媒成分並びに触媒を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、固体触媒成分を形成する際に生成する微粉、およびこれを用いてオレフィン類を重合した際の微粉重合体は、原料であるジアルコキシマグネシウムに起因することを発見し、さらに、金属マグネシウムとアルコールを反応させて、次いで不活性有機溶媒中でアルコキシチタン化合物と接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去することによってジアルコキシマグネシウムを得、該ジアルコキシマグネシウムを原料として用いることによって調製した固体触媒成分による触媒が、ポリマーの活性および立体規則性を高度に維持し、且つ極めて微粉の少ない重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、上記目的を達成するための、本発明によるジアルコキシマグネシウムの製造方法は、金属マグネシウムとアルコールとを触媒の存在下で反応させ固形物を得、次いで該固形物とアルコキシチタン化合物とを不活性有機溶媒中で接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去するジアルコキシマグネシウムの製造方法である。
【0018】
また本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記ジアルコキシマグネシウムの製造方法により製造されるジアルコキシマグネシウム(a)と4価のチタンハロゲン化合物(b)、電子供与性化合物(c)を接触させることにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【0019】
さらに、本発明のオレフィン類重合用触媒は、上記の固体触媒成分(A)、(B)下記一般式(1); R1 pAlQ3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物および(C)外部電子供与性化合物を含有するオレフィン類重合用触媒である。
【0020】
さらにまた、本発明のオレフィン類重合用触媒は、上記の固体触媒成分(A)、(B)下記一般式(1); R1 pAlQ3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(2); R2 qSi( OR3)4−q (2)
(式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物によって形成されるオレフィン類重合用触媒である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明によるジアルコキシマグネシウムの製造方法は、先ず、金属マグネシウムとアルコールを触媒の存在下で反応させジアルコキシマグネシウムである固形物を得る。
【0022】
本発明で用いられる金属マグネシウムは例えば、数十〜数百メッシュ、より具体的には100メッシュ程度の粉末状の反応性良好なものが好ましい。またアルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等であり、好ましくはエタノールである。金属マグネシウムと接触させ反応する前、上記アルコール中の水分は十分に除去しておくことが望ましい。
【0023】
また上記触媒としては、例えば、臭化メチル、塩化メチル、臭化エチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化物、ジエトキシマグネシウムなどのジアルコキシマグネシウム、沃素、酢酸エステルなどが使用される。この中でも特に沃素およびジエトキシマグネシウムが好ましい。
【0024】
金属マグネシウムとアルコールは、公知の方法で反応することができるが、好ましい接触反応方法としては、金属マグネシウムとアルコールの反応系への最終添加割合を金属マグネシウム/アルコール(重量比)=1/9〜1/15とし、) 前記最終添加割合の金属マグネシウムとアルコールを、アルコールの還流下の反応系に連続的または断続的に添加し、5〜80分間に亘り反応させ、次いで、アルコールの還流下に1〜30時間保持し、熟成反応を行い、固形物を得る。
【0025】
以上のようにして得られた固形物は上記反応で用いたアルコールを溶媒とした懸濁液のままでも、アルコールを除去し乾燥してもよい。その後、この固形物とアルコキシチタン化合物を不活性有機溶媒中で接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去する。
【0026】
本発明で用いられるアルコキシチタン化合物としては、一般式Ti(OR4)rX4−r(式中R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは1〜4の整数である。)で表されるテトラアルコキシチタン、およびトリアルコキシチタンハライド、ジアルコキシチタンジハライド、アルコキシチタントリハライドからなる化合物群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
【0027】
具体的には、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライドなどのトリアルコキシハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライドなどのジアルコキシジハライド、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライドなどのアルコキシチタントリハライド等が例示される。これらのうちテトラアルコキシチタンが好ましく、特に好ましくはテトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、最も好ましくはテトラエトキシチタンである。
【0028】
また懸濁液形成に用いられる不活性有機溶媒としては、上記アルコキシチタン化合物を溶解しかつマグネシウム化合物は溶解しないものであり、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソオクチルアルコールなどのアルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等が挙げられる。これらの中でもヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素化合物、エタノールなどのアルコールが好ましく用いられる。
【0029】
上記固形物とアルコキシチタン化合物を不活性有機溶媒中で接触させる際の条件は、接触温度が−20〜150℃、好ましくは0〜130℃、特に好ましくは30〜100℃、接触時間が1分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは30分〜3時間である。
【0030】
上記したアルコキシチタン化合物、例えばテトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタンは、ジアルコキシマグネシウムである固形物を溶解する性質を有している。本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、上記したアルコキシチタン化合物の性質を利用してなされたものであり、即ち、金属マグネシウムとアルコールとを触媒の存在下で反応させて得られた粉体状のジアルコキシマグネシウム(固形物)に、アルコキシチタン化合物を接触させる。ジアルコキシマグネシウムの表面に存在する微粉や表面の凹凸が、オレフィン類重合において生成する微粉重合体の主な原因であると考えられ、該接触を行い溶媒を除去する際に、ジアルコキシマグネシウムの表面をアルコキシチタン化合物によって一部溶解して、表面上の微粉や微粉の原因となる凹凸などを除去する処理を施すものと考えられる。
【0031】
上記不活性有機溶媒中で、上記固形物と上記したアルコキシチタン化合物とを接触させて懸濁液を形成する際、該固形物に対するアルコキシチタン化合物の量によっては固形物が全て溶解され、均一溶液を形成してしまい、目的とするジアルコキシマグネシウムを得ることができなくなる。従って、本発明の方法では、全ての固形物を溶解せず、固形物(固体のマグネシウム化合物)を残留させ、懸濁液を形成し、その後溶媒を除去して残留させた固形物を得る。従って、本発明の方法において、上記不活性有機溶媒中で、上記固形物と上記したアルコキシチタン化合物とを接触させる際の固形物およびアルコキシチタン化合物の使用量は、固形物1gに対して、アルコキシチタン化合物は0.01〜3ml、好ましくは0.05〜1.5ml、特に好ましくは0.10〜1.0ml、最も好ましくは0.05〜0.7mlである。また、不活性有機溶媒の量は固形物1gに対して、0.5〜100ml、好ましくは1〜50ml。特に好ましくは3〜30mlである。
【0032】
上記のように懸濁液を形成し、固形物の表面を処理した後、デカンテーションやろ過などにより懸濁液中の溶媒を除去し、また不活性有機溶媒により洗浄して、本発明のジアルコキシマグネシウムを得る。ここで、上述したようにジアルコキシマグネシウムである固形物がアルコキシチタン化合物と反応してマグネシウムとチタンの化合物を形成し、一部が溶媒中に溶解するが、本発明の方法では、懸濁液中の溶媒を除去することにより極力ジアルコキシマグネシウムには残留させないことが、微粉の少ない重合体を得るために好ましい。しかし、本発明のジアルコキシマグネシウムには、極微量のアルコキシチタン化合物などの不純物が混入することは避けられない。従って、本発明のジアルコキシマグネシウム中のチタン含有量は、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0033】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法においてはジアルコキシマグネシウムの表面の一部を溶解させてジアルコキシマグネシウムを調製しているが、該ジアルコキシマグネシウムを用いて調製されたオレフィン類重合用固体触媒成分によるオレフィン類重合触媒は、元来の触媒性能を維持したまま、微粉重合体の生成を極めて低く抑えることが可能となった。
【0034】
上記のようにして得られたジアルコキシマグネシウム(a)とチタン化合物(b)および電子供与性化合物(c)を接触させて固体触媒成分を調製する。このとき、このジアルコキシマグネシウムはその調製時に使用した不活性有機溶媒との懸濁液のまま、あるいは必要に応じて分離し乾燥してこの後の工程に供する。製造工程の簡略化を考慮すれば、分離、乾燥せず懸濁液のまま用いることが望ましい。ただし、不活性有機溶媒としてアルコールやエーテルなどチタン化合物(b)と反応するものを使用したときは、ジアルコキシマグネシウムを真空下あるいは加熱下で乾燥して十分に除去することが望ましい。
【0035】
上記のようにして得られたジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状である。このうち球状のジアルコキシマグネシウムは、固体触媒成分の原料として用いた場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0036】
球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
【0037】
また、本発明のジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0038】
また、本発明のジアルコキシマグネシウムの比表面積は、10〜100m2/g、好ましくは20〜80m2/g、特に好ましくは25〜50m2/gである。さらに本発明のジアルコキシマグネシウムの比表面積は、金属マグネシウムとアルコールを反応させて得られたアルコキシチタン化合物で処理する前の固形物の比表面積に比べて大きいことが特徴であり、該固形物の比表面積の5〜50%、好ましくは10〜30%増加する。
【0039】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)は、一般式Ti( OR5)nY4−n(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、nは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
【0040】
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0041】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であり、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0042】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジイソプロピル、ジイソプロピルマロン酸ジブチル、ジイソプロピルマロン酸ジイソブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジエステル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機ケイ素化合物を挙げることができる。
【0043】
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステル及びその誘導体が重合時の対水素活性を向上させる点で好適である。このうち、フタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0044】
また、フタル酸ジエステル誘導体としては、下記一般式(3);
(R6)lC6H4(COOR7)(COOR8) (3)
(式中、R6は炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、R7およびR8は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R7とR8は同一であっても異なってもよく、また、置換基R6の数lは1又は2であり、lが2のとき、R6は同一であっても異なってもよい。)で表わされるものが好ましい。
【0045】
上記一般式(3)において、R6が炭素数1〜8のアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基であり、R6がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。R6は好ましくはメチル基、臭素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはメチル基または臭素原子である。また、置換基R6の数lは1又は2であり、lが2のとき、R6は同一でもあっても異なってもよい。lが1の場合、R6は上記一般式(3)のフタル酸エステル誘導体の3位、4位又は5位の位置の水素原子と置換し、lが2の場合、R6は4位および5位の位置の水素原子と置換すると好ましい。
【0046】
上記一般式(3)において、R7およびR8としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、またはイソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基が好ましく、エチル基、n−ブチル基、ネオペンチル基が特に好ましい。
【0047】
上記一般式(3)で表されるフタル酸ジエステル誘導体としては、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−エチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルが挙げられ、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0048】
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
【0049】
本発明においては、上記成分(a)、(b)および(c)を、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(A)を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物以外の飽和炭化水素化合物等を用いると、反応または洗浄の際、不純物の溶解度が低下し、結果として得られる固体触媒成分の触媒活性や得られるポリマーの立体規則性が低下する点で好ましくない。
【0050】
また、上記成分(a)、(b)、(c)または(d)の他に、固体触媒成分(A)の調製時にポリシロキサンを用いることもできる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm2/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm2/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0051】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3−ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、またジシロキサン以外のポリシロキサンとしてジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0052】
以下に、本発明の成分(A)の調製方法について述べる。具体的には、固形物(a)を芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ4価のチタンハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)を接触して固体成分を得る。各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0053】
以下に、本発明の固体触媒成分(A)を調製する際の接触順序をより具体的に例示する。
(1)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(2)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(3)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(4)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(5)(a)→(d)→(c)→(b)《中間洗浄→(d)→(b)→(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(6)(a)→(d)→(c)→(b)→《中間洗浄→(d)→(c)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(7)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(8)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)+(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(9)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(10)(a)→(d)→(b)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)+(c)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(11)(a)→(b)+(d)→(c)→《中間洗浄→(b)+(d)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
(12)(a)→(b)+(d)→(c)→《中間洗浄→(d)→(b)》→最終洗浄→固体触媒成分(A)
【0054】
なお、上記の各接触方法において、二重かっこ(《 》)内の工程については、必要に応じ、複数回繰り返し行なうことで一層活性が向上する。かつ《 》内の工程で用いる成分(b)あるいは成分(c)は、新たに加えたものでも、前工程の残留分のものでもよい。また、上記(1)〜(12)で示した洗浄工程以外でも、各接触段階で得られる生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄することもできる。
【0055】
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A)の好ましい調製方法としては、球状のジアルコキシマグネシウムとテトラエトキシシランを常温のヘプタン中で接触させ、懸濁液を形成する。その後溶媒を除去して固形物(a)を得る。この固形物(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物(c)を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行うことが望ましい。この固体反応生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体反応生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄および反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体反応生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)し、固体触媒成分(A)を得る。
【0056】
本願における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウムと成分(c)と沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)とから懸濁液を形成し、成分(b)と成分(d)とから形成した混合溶液を該懸濁液に接触させ、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0057】
本願における固体触媒成分(A)の最も好ましい調製方法としては、以下に示す方法を挙げることができる。上記ジアルコキシマグネシウム(a)と成分(c)と沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)とから懸濁液を形成する。成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)から混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加する。その後、得られた混合溶液を昇温して反応処理(第1次反応処理)する。反応終了後、得られた固体生成物を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)し、その後、新たに成分(b)および沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)を−20〜100℃で接触させ、昇温して、反応処理(第2次反応処理)する。反応終了後、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(最終洗浄)して、固体触媒成分を得る。
【0058】
上記の処理あるいは洗浄の好ましい条件は以下の通りである。
・低温熟成反応:−20〜70℃、好ましくは−10〜60℃、より好ましくは0〜30℃で、1分〜6時間、好ましくは5分〜4時間、特に好ましくは10分〜3時間。
・反応処理:0〜130℃、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜115℃で、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは1〜4時間。
・洗浄:0〜110℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは30〜90℃で、1〜20回、好ましくは1〜15回、特に好ましくは1〜10回。
【0059】
なお、洗浄の際に用いる炭化水素化合物は、常温で液体の芳香族炭化水素化合物あるいは飽和炭化水素化合物が好ましく、具体的には、芳香族炭化水素化合物としてトルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、飽和炭化水素化合物としてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、中間洗浄では芳香族炭化水素化合物を、最終洗浄では飽和炭化水素化合物を用いることが望ましい。
【0060】
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、芳香族炭化水素化合物(d)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。
【0061】
また本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが1.8〜8.0重量%、好ましくは2.0〜8.0重量%、より好ましくは3.0〜8.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物(c)が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。本発明の電子供与性化合物とその他の成分を使用してなる固体触媒成分(A)の総合性能を更にバランスよく発揮させるには、チタン含有量が3〜8重量%、マグネシウム含有量が15〜25重量%、ハロゲン原子の含有量が45〜75重量%、電子供与性化合物(c)の含有量が2〜20重量%であることが望ましい。
【0062】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、上記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0063】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては前記した固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じものが用いられるが、その中でも9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等のエーテル類、安息香酸メチルおよび安息香酸エチルなどのエステル類、また有機ケイ素化合物である。
【0064】
上記の有機ケイ素化合物としては、上記一般式(2)で表される化合物が用いられる。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0065】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5 −ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記したオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有し、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
【0067】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0068】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0069】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0070】
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0071】
予備重合を行うに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0072】
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に較べ、得られるポリマーにおいて、微粉が極めて少なくまた粒度分布が均一であり、かつポリマーの立体規則性および収率を高度に維持することができる。本発明のオレフィン類重合用触媒は、特に気相法によるポリオレフィンの製造プロセスに非常に有利である。
【0073】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
実施例1
〔ジエトキシマグネシウムの調製〕
窒素ガスで十分置換され、攪拌器および還流冷却器を具備した容量2リッターの丸底フラスコに粒径100メッシュ以下の金属マグネシウム微粉末5gと室温のエタノール125mlおよびヨウ素3gを装入し懸濁液を形成した。次いで懸濁液を攪拌しながら昇温して、エタノールの還流下で反応を開始させた。反応開始後、粒径100メッシュ以下の金属マグネシウム粉末5gとエタノール62mlを同時にフラスコ内に添加する操作を計4回、30分に亘って行った。添加終了後、エタノールの還流下で、攪拌しながら10時間保持した。(最終添加したマグネシウムは25gであり、エタノールは、373ml(約294.3g)であり、最終添加の金属マグネシウム/エタノール=1/11.8)。その後室温まで冷却した後、上澄みをデカンテーションし、真空乾燥して、約100gの球状の固形物を得た。この固形物のSEM写真を図1に示した。また、固形物の比表面積をBETにて測定したところ28.3m2/gであった。さらに、粒度分布を測定したところ11μm以下が8.2重量%であった。
【0074】
次いで、窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに上記で得られた固形物10g、常温のn−ヘプタン60mlを投入し攪拌し、その後テトラエトキシチタン1.25mlを挿入して攪拌して懸濁液を形成した。その後静置して上澄み液をデカンテーションにて除去し、さらに常温のn−ヘプタン100mlを投入し攪拌し、この操作を5回繰り返し、ジエトキシマグネシウム組成物とn−ヘプタンとの懸濁液を調製した。このジエトキシマグネシウムのSEM写真を図2に示した。また、固形物の比表面積をBETにて測定したところ32.3m2/gであった。さらにジエトキシマグネシウム中のチタン含有量を測定したところ0.16重量%であり、粒度分布を測定したところ11μm以下が7.2重量%であった。
【0075】
〔固体触媒成分(A)の調製〕
上記ジエトキシマグネシウムの懸濁液の上澄み液を除去し、これにトルエン50mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル2.4mlを投入して懸濁液を形成した。一方、窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加した。その後、混合溶液を昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、4.1重量%であった。
【0076】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス2.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)、生成重合体(a)のメルトフローレイトの値(MFR)、生成重合体の微粉(212μm以下)および粒度分布〔(D90−D10)/D50〕を表1に示した。
【0077】
なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g)
また、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合(重量%)とした。
また、生成重合体(a)のメルトフローレイトの値(MFR)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。
【0078】
実施例2
テトラエトキシチタン1.25mlの代わりにテトラブトキシチタン1.5mlに変更した以外は実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行った。その結果、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は4.3重量%であった。重合結果を表1に示した。
【0079】
比較例1
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに実施例1で得られた固形物(テトラエトキシチタン処理以降の操作をしていないもの)10g、トルエン50mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル2.4mlを投入して懸濁液を形成した。一方、窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加した。その後、混合溶液を昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、3.7重量%であった。
【0080】
〔重合触媒の形成および重合〕
上記のようにして得られた固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に重合触媒の形成および重合を行った。その結果を表1に示した。
【0081】
比較例2
窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに実施例1で得られた固形物(テトラエトキシチタン処理以降の操作をしていないもの)10g、とテトラブトキシチタン15mlおよびテトラエトキシシラン9mlを挿入して攪拌して、130℃に加熱し、フェノール16gのトルエン溶液を添加し、130℃で1時間反応させた。その後、−20℃まで冷却し、四塩化チタン30ml添加して均一溶液を形成し、次いで昇温して110℃になったところで無水フタル酸1.5g添加して1時間反応させ固形物を析出させ、その後トルエンで洗浄してマグネシウム化合物を含む固形物を得た。これにトルエン50mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル2.4mlを投入して懸濁液を形成した。一方、窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加した。その後、混合溶液を昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.1重量%であった。
【0082】
〔重合触媒の形成および重合〕
上記のようにして得られた固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に重合触媒の形成および重合を行った。その結果を表1に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
図2のSEM写真から明らかなように、本発明の方法により得られたジエトキシマグネシウムの表面には微粉の付着が少なく、テトラエトキシチタン処理以降の操作をしていないもの(図1のSEM写真)より表面が平滑であることがわかる。また、表1の結果から、本発明の固体触媒成分および触媒を用いてプロピレンの重合を行うことにより、高活性および高立体規則性を維持し、微粉重合体の発生が極めて少ないことがわかる。
【0085】
【発明の効果】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法により、新規なジアルコキシマグネシウムが得られる。また、該製造方法で得られたジアルコキシマグネシウムを用いて調製したオレフィン類重合用固体触媒成分による触媒は、ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持しながら、極めて微粉の少ない重合体を得ることができる。従って、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】テトラエトキシチタン処理以降の操作をしていないジエトキシマグネシウムのSEM写真である。
【図2】実施例1で製造した本発明のジエトキシマグネシウムのSEM写真である。
【図3】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
Claims (8)
- 金属マグネシウムとアルコールとを触媒の存在下で反応させ固形物を得、次いで該固形物とアルコキシチタン化合物とを不活性有機溶媒中で接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去することを特徴とするジアルコキシマグネシウムの製造方法。
- 前記アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項1に記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
- 前記触媒がヨウ素であることを特徴とする請求項1に記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
- 前記アルコキシチタン化合物がテトラアルコキシチタンであることを特徴とする請求項1に記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
- 前記アルコキシチタン化合物がテトラエトキシチタンであることを特徴とする請求項1に記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載される製造方法により製造されるジアルコキシマグネシウム(a)と4価のチタンハロゲン化合物(b)と、電子供与性化合物(c)とを接触させることにより調製されることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
- (A)請求項6に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(1);
R1 pAlQ3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物および(C)外部電子供与性化合物を含有することを特徴とするオレフィン類重合用触媒。 - (A)請求項6に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(1);
R1 pAlQ3−p (1)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(C)下記一般式(2);
R2 qSi( OR3)4−q (2)(式中、R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R3は炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
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