JP2004209954A - 積層ポリエステルフイルムの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】寸法安定性が高くかつ縦、横両方向の機械的強度、ヤング率及び熱収縮率等の熱的特性のバランスに優れた積層ポリエステルフイルムの製造方法の提供。
【解決手段】互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる積層ポリエステル未延伸フイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルを構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定する。
【選択図】なし
【解決手段】互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる積層ポリエステル未延伸フイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルを構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリエステルフイルムの製造方法に関するものである。更に詳しくは、縦、横両方向の機械的、熱的性質のバランスに優れた積層ポリエステルフイルムの延伸法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層ポリエステルフイルムは、PETフイルムの有する、優れた熱的、機械的、物理的、化学的特性を保持させながら、特に、機械的特性(強度等)、光学的特性(光線透過率、ヘーズ等)、寸法安定性等に優れたフイルムである。従って、積層ポリエステルフイルムは、写真感光材料用途(カラーフイルム、X−線、印刷感材等)、磁気記録用途(オーディオ、ビデオ、フロッピー等)、電気用途(コンデンサー、電気絶縁材料等)、蒸着用途、包装用途等に適している。
【0003】
積層ポリエステルフイルムは、積層ポリエステル未延伸フイルムを最初に縦方向に延伸し、しかる後、最初の長手方向の延伸方向と直角な幅手方向、すなわち、横方向に延伸を順に行う縦・横逐次延伸法の他、最初に、横延伸を行い、しかる後、縦延伸を行う横・縦逐次延伸法、横・縦・縦逐次延伸法、縦・横・縦逐次延伸法、縦・縦・横逐次延伸法、又は同時2軸延伸法等が採用される。
【0004】
ところで、汎用のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等)フイルムの製膜プロセスでは、最初の縦延伸で長手方向に配向させ、引き続いてこれと直角方向に横延伸して幅手方向に配向させ、熱固定して、縦、横両方向の機械的強度(ヤング率等)、熱収縮率等をバランス良く確保する逐次2軸延伸製膜法が一般的である。
【0005】
工業レベルでの積層ポリエステルフイルムの製膜は、逐次2軸延伸法の特徴である優れた生産性(製膜スピードが速い)、優れた品質(特に良好な厚み斑、機械的強度、熱的性質等の優れた縦、横のバランス等)、及び従来生産設備(テンター法逐次2軸延伸製膜設備)の活用を抜きには考えられない。
【0006】
特開平06−240020に記載の発明中に、互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、1)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有しているか、又は、2)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有している、二層以上の積層ポリエステルフイルムに言及している。この積層ポリエステルフイルムは、特に機械強度が保持され、薄膜化が可能で、巻きぐせがつきにくく取り扱い性がよく、現像処理前の処理機器適性、現像処理に際しての処理機器適性に優れ、かつ現像処理後の巻きぐせ解消性にも優れ、小型カメラに用いて写真用支持体に好適で、さらには、用途は特に限定されず、強度を保持し、巻きぐせが付きにくく、巻きぐせ解消性に優れ、適度な巾手カールを持ち、取扱い性が優れた、印刷材料、磁気材料、包装材料またロール状にして使用することのできる材料等として有用であるフィルムを提供出来ると述べている。
【0007】
しかしながら、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる本発明の積層ポリエステルフイルムは、縦、横両方向の延伸によって発現する配向、言い換えれば結果として、フイルム長手方向、及び幅手方向の強度等のフイルム物性が、ポリエステルフイルムの配向挙動と異なる挙動を示す。すなわち、上述の共重合成分を含有してなる積層ポリエステル未延伸フイルムを、最初に、縦或いは横延伸して、長手或いは幅手方向に配向させ、引き続いてこれと直角方向に、横或いは縦延伸して、幅手或いは長手方向に配向させ、熱固定した共重合成分を含有した積層ポリエステルフイルムは、逐次延伸の後段の延伸がより支配的となる傾向にある。すなわち、縦・横逐次延伸或いは横・縦逐次延伸の場合、それぞれ第二段の延伸方向の強度、ヤング率は比較的保持されているが、第一段の延伸方向の強度、ヤング率等が予想外に低下している事実である。このことは、上述の共重合ポリエステルポリマー単独で製膜すると容易に確認される。この事実は、積層ポリエステルフイルムを構成する共重合フイルム層、すなわち、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる共重合ポリエステルフイルム層の最初の延伸での配向が、それに続く延伸で大幅に解消され、最初の延伸方向の機械的強度、ヤング率が低下し、後段の延伸方向の機械的強度、ヤング率、言い替えれば後段の延伸による配向が支配的となるためである。一方、積層ポリエステルフイルムを構成するホモポリエステル層、または、共重合成分含有量の少ないポリエステル層は、従来のホモポリエステルフイルム製膜時に近い挙動を示す。従って、積層ポリエステルフイルムの逐次二軸延伸製膜法では、縦・横の機械的強度・ヤング率等配向に起因するフイルム物性は、ポリエステルホモポリマーか、または、共重合成分含有量の少ないポリエステル層で付与され、共重合ポリエステルポリマーはその性質から、第二段の延伸による配向が支配的になるという事実である。従って、積層フイルム全体として見たときに、ホモポリエステル層と共重合ポリエステル層の組み合わせとしてその効果が発現するが、共重合ポリエステルポリマーの全体に占める割合にも依るが、縦、横又は、横、縦逐次二軸延伸において、後段の延伸による配向が、積層ポリエステルフイルム物性に大きく影響して、縦、横の機械的、熱的諸特性のバランスが崩れるので、縦、横の機械的、熱的諸特性をバランスよく確保する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた熱的、機械的、物理的、化学的、光学的特性を有し、寸法安定性が高く、かつ縦、横両方向の機械的強度、ヤング率及び熱収縮率等の熱的特性のバランスに優れた積層ポリエステルフイルムの製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に特定倍率で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に特定倍率で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が特定の数値以下となるように選定し、特定範囲の第二段延伸温度で延伸し、熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造法によって達成されたものである。
【0010】
すなわち、互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルフイルムが構成するガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造方法である。ここでTgは、積層ポリエステルフイルムを構成するポリエステルの中で最も高いガラス転移温度(℃)を表す。
【0011】
積層ポリエステルフイルムを構成する、ア)ホモポリエステル層、又は共重合成分含有量の少ないポリエステル層と、イ)共重合ポリエステル層は、一般に、延伸倍率の増加と共に配向がすすみ、屈折率の数値は縦、横の延伸倍率の増加と共に、延伸方向には大きく、厚み方向には小さくなる。
【0012】
積層ポリエステルの縦・横逐次2軸延伸の製膜では、ポリエステルホモポリマーの縦・横逐次2軸延伸製膜の知見から、縦・横の強度、ヤング率等がほぼバランスする延伸条件(延伸倍率、延伸温度、延伸スピード等)を採用している。しかしながら、得られた積層ポリエステルフイルムの縦、横方向の機械的強度、ヤング率は、ポリエステルホモポリマー単膜のそれと比較して、より横方向が支配的になっていることが明らかになった。
【0013】
ホモポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエチレンテレフタレートでは、ガラス転移温度等が異なるため、配向に及ぼす影響が異なり、厳密な比較にはならないとの思いもあったが、確認のため、同じ厚みの、ホモポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエチレンテレフタレート未延伸フイルムを用意し、同一製膜条件(同一延伸温度、同一延伸倍率、同一延伸スピード、同一熱固定温度)を採用して延伸、製膜し、縦、横両方向の機械的強度、ヤング率、屈折率を比較検討してみた。その結果、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対し2〜7モル%含有すると共に共重合成分としてポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対して3〜10重量%含有してなる共重合ポリエチレンテレフタレートは、ホモポリエチレンテレフタレートとの比較で、第二段の延伸が支配的であることが明らかになった。すなわち、ホモポリエチレンテレフタレートの第一段の延伸で、長手方向に延伸すると長手方向に配向し、引き続き、第二段の延伸で、長手方向と直角の方向に延伸すると、長手方向の配向が若干弱まるが、保持され、幅手方向の配向も確保される。ところが、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合は、第一段の延伸で、長手方向に延伸すると長手方向に配向するが、引き続き、第二段の延伸で、長手方向と直角の方向に延伸すると、長手方向の配向が大幅に弱まり、幅手方向の配向が大きくなる。この事は、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合、第一段の延伸で形成された縦方向の配向構造が、第二段の延伸で破壊され、横方向により配向した配向構造が形成されると考えるのが妥当である。すなわち、先の延伸で形成された配向構造が、後の延伸で破壊されて、新たな配向構造を容易に形成するのであろう。
【0014】
以上の観点に立てば、ホモポリエチレンテレフタレート等のホモポリエステルと、前述の共重合ポリエチレンテレフタレート等の共重合ポリエステルとの組み合わせからなる積層ポリエステルフイルムを従来の知見から製膜すると、共重合成分の種類、共重合割合、積層厚み、積層比等によって異なるが、長手方向の共重合ポリエステルの配向が失われるため、長手方向の機械的強度、ヤング率は、想定したものより小さくなる。一方、幅手方向の配向は、共重合ポリエステルが支配的となって、幅手方向の機械的強度、ヤング率は、長手方向に較べ、相対的に大きくなるため、縦、横の機械的強度、熱的バランスを失うことになる。このことは、第二段の延伸方向に片寄って配向したフイルムを製膜したことと同義である。このような傾向はポリエステル系フイルムにも弱く見られる傾向ではあるが、ホモポリエステル系に較べると、その程度は大きく、第二段延伸後に、第一段延伸時に保持されていた強度、ヤング率、言い替えれば第一段延伸方向の配向が大幅に解消される事を示す。この事は縦・横の強度、ヤング率を、ほぼ同等に、或いは縦・横両方向の強度、ヤング率が共にバランス良く保持したフイルムを製膜したいと云う目的からは外れるものである。
【0015】
前述の共重合組成、組み合わせからなる積層ポリエステルフイルムの製造法を採用すれば、縦・横両方向の機械的、熱的性質が共にバランス良く、かつ優れた積層ポリエステルフイルムを得ることが出来る。
【0016】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるフィルム物性値の測定方法を以下に記す。
【0018】
<固有粘度>
ウベローデ型粘度計を用いて行った。重量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、次式により濃度零に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0019】
<屈折率>
アッベの屈折計を用いて、α−ブロモナフタレンを中間液として、25℃で測定されるNaのD線に対する値を示す。屈折率はフイルムの幅方向(フイルム面内における第一段延伸と直角の方向)に変化することが多いが、本発明において採用する値は、該屈折率の最小値である。
【0020】
<引っ張り試験>
縦及び横方向の破断強度、ヤング率の測定は、オリエンテック(株)社製、テンシロンRTA−100を用い、室温で測定した。積層ポリエステル支持体の長手方向及び幅手方向に、1cm幅×15cm長さに切り出し、フイルム長が10cmになるように、テンシロンに把持して、100%/分のスピードで引っ張り、応力−歪曲線を描かせた。破断強度は、破断時の応力を引っ張る前のフイルム断面積で割って算出した。ヤング率は、応力−歪曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を求め、引っ張る前の積層ポリエステル支持体厚みの断面積で割って算出したもので、両者共単位はkgf/mm2で表す。積層ポリエステル支持体厚みの測定は、マイクロメーターを用い、7個所測定し、最大値と、最小値を除外し、それぞれの測定試料一枚当たりの厚みを、5点の平均値で、μm単位で表した。
【0021】
<熱収縮率>
試料フイルムを幅10mm、長さ250mm切り出し、約200mmの間隔で2本の標線を入れ、その間隔を正確に測定する(これをAmmとする。この試料無張力下で130℃の熱風オーブン中に30分間放置したのち標線間の間隔を測定し(これをBmm)、100×(A−B)/Aをもって熱収縮率(%)とした。
【0022】
−フィルムの形成素材−
本発明のフィルムは、ポリエステル層および/または共重合ポリエステル層を有する。
【0023】
−ポリエステル−
ポリエステル層を形成する素材としてのポリエステルとしては、ジカルボン酸とジオールとの繰り返し単位をを主構成成分とするものを言い、好ましくは芳香族二塩基酸とグリコールとの繰り返し単位を主構成成分とするポリエステルを挙げることができる。
【0024】
前記二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類などがあり、ジオールもしくはグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシレングリコールなどがある。なかでもテレフタル酸とエチレングリコールとを主構成成分とするポリエチレンテレフタレートと2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主構成成分とするポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0025】
また、ポリエステル本来の優れた性質を損なわない範囲で、これらの主たる繰り返し単位が85モル%以上、好ましくは90モル%以上の共重合体であっても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
【0026】
好ましいポリエステルの固有粘度としては、特に限定されないが、積層フィルム作製時の延伸性の観点から、0.45〜0.80が好ましく、特に0.55〜0.70が好ましい。
【0027】
−共重合ポリエステル−
共重合ポリエステル層を形成するのに用いられる共重合ポリエステルとしては、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分とし、ジカルボン酸とジオールとの繰り返し単位を主構成成分とし、好ましくは芳香族二塩基酸とグリコールを主構成成分とする共重合ポリエステルを挙げることができる。更に又、この発明においては、共重合ポリエステルとして、前記共重合ポリエステルと前記ポリエステルとのブレンド物をも挙げることができる。
【0028】
前記二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類などがあり、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシレングリコールなどがある。共重合ポリエステルとしては、なかでもテレフタル酸とエチレングリコールを主構成成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートと2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主構成成分とする共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0029】
また、共重合ポリエステルの好ましい固有粘度としては、特に限定されないが、積層フィルム作製時の延伸性の観点から、0.35〜0.75が好ましく、特に0.45〜0.65が好ましい。
【0030】
共重合ポリエステルにおける共重合成分としての金属スルホネート基を含有する芳香族ジカルボン酸は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは下記化1で示されるエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属例えばカリウム、リチウムなどで置換した化合物を挙げることができる。
【0031】
【化1】
【0032】
前記共重合ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分として、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を含有しているのが好ましい。
【0033】
前記ポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等やこれらの誘導体などを挙げることができる。使用することのできるポリアルキレングリコール類の分子量は特に限定されないが、好ましくは、300〜20,000、より好ましくは600〜10,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。特にポリアルキレングリコールが好ましく、このうち特に(a)式で示される表わされるポリエチレングリコールが好ましい。
【0034】
H(O−CH2CH2)n−OH (a)
また、ポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコールの末端−Hを−CH2 COORに置換した(b)式で示されるポリエチレンオキシジカルボン酸(R:Hまたは炭素数1〜10のアルキル基、n:正の整数)や、(c)式で示されるようなポリエーテルジカルボン酸(R’:Hまたは炭素数2〜10のアルキレン基、n:正の整数)などを用いても同様の効果が得られる。
【0035】
ROOCCH2−(O−CH2CH2)n−OCH2COOR (b)
ROOCCH2−(O−R’)n−OCH2COOR (c)
(b)式で示される化合物、(c)式で示される化合物いずれの場合もその分子量には特に制限がなく300〜20,000が好ましく、更に好ましくは600〜10,000であり、特に1,000〜5,000のものが好ましく用いられる。
【0036】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えばそのエステル形成誘導体が好ましく、アジピン酸、セバシン酸のエステルであるアジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチルなどが用いられる。好ましくはアジピン酸ジメチルである。
【0037】
本発明に用いられる共重合ポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていてもかまわない。
【0038】
−ポリエステルおよび共重合ポリエステルの製造−
本発明に用いられるポリエステルおよび共重合ポリエステルはともに、重合段階でリン酸、亜リン酸およびそれらのエステルならびに無機粒子(シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二酸化チタンなど)、有機架橋粒子(ポリメチルメタアクリレートなど)が含まれていてもよいし、重合後ポリマーに無機粒子などがブレンドされていてもよい。さらに重合段階、重合後のいずれかの段階で適宜に顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加してもかまわない。
【0039】
共重合ポリエステルを得るには、酸成分とグリコール成分とをエステル交換した後に、前述の共重合成分を添加し、溶融重合を行っても良いし、又、共重合成分をエステル交換する前に添加し、エステル交換した後に溶融重合を行っても良いし、または溶融重合で得られたポリマーを固相重合するなど公知の合成方法を採用することができる。
【0040】
このエステル交換時に用いる触媒としては、マンガン、カルシウム、亜鉛、コバルト等の金属の酢酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩等を挙げることができる。これらの中でも、酢酸マンガン、酢酸カルシウムの水和物が好ましく、さらにはこれらを混合したものが好ましい。前記エステル交換時および/または重合時に反応を阻害したりポリマーを着色したりしない範囲で水酸化物や脂肪族カルボン酸の金属塩、第四級アンモニウム塩などを添加することも有効であり、中でも水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、テトラエチルヒドロキシアンモニウムなどが好ましく、特に酢酸ナトリウムが好ましい。
【0041】
本発明のフィルムを形成するためのポリエステルまたは共重合ポリエステルには、種々の添加剤を含有せしめることができる。たとえば、染料などを混合して用いても良い。
【0042】
−フィルムの層構成−
本発明のフィルムは、前記したようにポリエステル層および/または共重合ポリエステル層を含有すると共に、層構造としては、二層、三層、四層などのように任意の数の層が積層された積層構造であっても良い。なお、本発明のフィルムを構成する「層」は、厚み2ミクロン以上であるものに限り、厚み2ミクロン未満の、例えば下引層などは、フィルムを構成する「層」とはみなさない。
【0043】
−積層構造のフィルム−
本発明のフィルムが二層以上の積層構造を有する場合には、一般的に、各層の厚みはその用途に応じて、用いるポリエステルおよび共重合ポリエステルによって適宜に決定し得るが、好ましくはポリエステル層の厚みの総和d1に対する共重合ポリエステル層厚みの総和d2の比が0.7≦d2/d1≦3程度である。
【0044】
積層構造のフィルム厚みの総和は特に限定されないが、6〜250μm程度が好ましい。
【0045】
また、フィルムにおける積層構造が二層、三層である場合を含め、四層以上の積層構成であっても良い。
【0046】
二層構成のフィルムにおいては、各層の厚みは互いに同じであっても相違していても良い。又、二層におけるポリエステルもしくは共重合ポリエステルの主構成成分の種類もしくは主構成成分の含有量が相違し、あるいは共重合成分の種類または共重合成分の含有量が相違しているのが好ましい。例えば、この二層構造のフィルムは、特に限定されないがポリエステル層と共重合ポリエステル層と、あるいは共重合ポリエステル層と共重合ポリエステル層とから成り立っていても良い。共重合ポリエステル層における共重合ポリエステルは、共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有することが好ましく、更にポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を含有することが好ましい。金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量は、全エステル結合に対して2〜7モル%であるのが好ましく、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸の含有量は、該反応生成物の全重量に対して3〜10重量%であるのが好ましい。
【0047】
二層構造のフィルムの場合、上記項目を適宜に調節することによって、該フィルムに巾方向におけるカール度を所定の値に調整することができる。
【0048】
巾方向におけるカール度の調整は、ポリエステル層と共重合ポリエステル層とを積層することによっても行うことができる。この場合、共重合ポリエステル層側が凹面になる。共重合ポリエステル層同志を積層したフィルムにおいては、膜厚、組成量を適宜に調整することにより巾方向におけるカール度を調整することができる。
【0049】
共重合ポリエステル層とポリエステル層とを積層すると、通常共重合ポリエステル層側が凹面になってカールする。又、ポリエステル層と共重合ポリエステル層とを積層する場合、ポリエステル層の厚みd3に対する共重合ポリエステル層の厚みd4の比が0.7≦d4/d3≦3、さらに好ましくは1≦d4/d3≦2であり、異なる二種の共重合ポリエステル層を積層するときには、共重合成分の含有量の多い共重合ポリエステル層が通常は、凹面になってカールする。
【0050】
本発明のフィルムが三層構成である場合、外層二層はポリエステル層と共重合ポリエステル層の組み合わせか、外層二層とも共重合ポリエステル層の組み合わせのいずれかからなる。
【0051】
三層構成の場合は、外層の厚みは同じであっても異なってもよいが、外層の厚みは異なることが好ましく、外層の内厚い外層の厚みをdAとし、薄いほうの外層の厚みをdBとすると、好ましくは、その比dA/dBは、とくに限定されないが、1.1≦dA/dB≦5、好ましくは1.3≦dA/dB≦3である。
【0052】
外層の厚みを異ならせることによって、巾手方向のカールないし巻きぐせカール度や回復カール度を所定の値に調節することができる。
【0053】
又、三層構成の場合は、該積層フィルムの外層である上下層を形成するポリエステルと共重合ポリエステルが、主構成成分もしくは、主構成成分量が異なるとか、共重合成分または共重合成分量が異なる、さらには固有粘度が異なることが好ましい。この場合、用いられる共重合ポリエステル中の共重合成分としては、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対して2〜10モル%、好ましくは2〜7モル%の割合で含有し、さらに共重合成分としてポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対して3〜10重量%の割合で含有することが特に好ましい。
【0054】
三層からなる場合はこれら上記の項目を適宜に調節することによって、該積層フィルムに巾手方向のカールや巻きぐせカール度ないし回復カール度を付与することができる。例えば、外層2層が共重合ポリエステル層である場合に、外層2層の共重合ポリエステルの共重合成分の含有量あるいは固有粘度がほぼ同じであるときには、膜厚の大きい共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。又、外層2層の共重合ポリエステル層の膜厚が実質的に同じである場合には、固有粘度が大きいかあるいは共重合成分の含有量の多い共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。外側2層が共重合ポリエステル層である場合にそれらの固有粘度が相違するとき、固有粘度の差ΔIVは0.02〜0.5、更に0.05〜0.4、特に0.1〜0.3であるのが好ましい。固有粘度の差ΔIVが前記範囲内にあると、外層2層の膜厚が大きく相違しないときに、外層が共重合ポリエステル層同士の組み合わせの場合には、固有粘度の大きい外層が凹面になり好ましい巾手カールを実現することができる。外層がポリエステル層と共重合ポリエステル層との組み合わせの場合、通常は共重合ポリエステル層が凹面のカールを有する。又、外層2層が同一の共重合ポリエステル層であり、中央の層も共重合ポリエステル層であり、しかも中央層の共重合成分が外層より多く含有する場合には、両外層のうちの膜厚の小さな共重合ポリエステル層側が、通常、凹面になりカールする。中央の層の両外層が共重合ポリエステル層で、中央層の共重合成分が外層より少なく含有する場合には、通常は、両外層のうち膜厚の大きな共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。
【0055】
以上に詳述したフィルムは、現在知られている各種の用途に応用することができ、特にロール状フィルムに用いられるポリエステルフィルムに有用であり、さらには、写真用支持体に有用である。
【0056】
本発明の三層以上の積層構造を有するフィルムの、写真用支持体として好ましい態様の一つとして、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対して2〜7モル%、好ましくは3〜6モル%、およびポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対し3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%を含有する共重合ポリエステル層を、複数の層で形成されるポリエステル層の片面又は両表面を構成する。
【0057】
二層以上の積層構造を有する本発明のフィルムは、次のようにして製造することができる。すなわち、例えばポリエステルと共重合ポリエステルを別々の押出機から溶融押出した後、溶融ポリマーの導管内または押出口金内において層流状で多層に接合せしめて押出し、冷却ドラム上で静電印加しながら冷却固化し、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸して、熱固定する方法、もしくはポリエステルまたは共重合ポリエステル単体および、積層フィルムを押出機から溶融押出し、冷却ドラム上で静電印加しながら冷却固化した未延伸フィルム、または該未延伸フィルムを一軸延伸した一軸配向フィルムの面に、必要に応じてアンカー剤、接着剤等をコーティングした後その上にポリエステルまたは共重合ポリエステル単体および、積層フィルムをエクストルージョンラミネートし、次いで二軸延伸を完了した後熱固定するエクストルージョンラミネート方法などがあるが、工程の容易性からは、共押出法が好ましい。
【0058】
この場合フィルムの延伸条件は、積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルが構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸する。積層ポリエステルフイルムの両表面を、共重合比率の異なる共重合ポリエステルで構成されている場合、両者共1.573以下となるように選定することが必要である。上述の、共重合比率の小さい共重合ポリエステルとの比較で、共重合比率の大きい共重合ポリエステルは、第二段の延伸で、フイルム面内における第一段の延伸方向と直角方向に大きく配向するからである。この事は、共重合ポリエステルは、第一段の延伸で、長手方向に形成された分子配向が、第二段の延伸で、脆くも壊され、幅手方向に分子配向するためであろうと推定される。従って、幅手方向に、より分子配向しようとする傾向を抑えて、縦、横両方向の機械的、熱的性質のバランスを採る意味でも、第一段の延伸で長手方向に極力分子配向させ、第二段の延伸で、幅手方向に抑え気味に分子配向させることが好ましい。
【0059】
本発明者は、これらの欠点を解消すべく鋭意検討の結果、(1)積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように延伸温度を選定して第一段延伸を行うならば、低温で延伸するため、延伸方向の配向が高く、かつ配向構造が強固となり、延伸温度が高い場合(従来法)と比較して、実質延伸倍率を高くしたことと同じになる。延伸温度が低くなる程、第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が減少する傾向にあるので、該屈折率が1.573以下になるようにするには、できるだけ低い温度で延伸するのが良い。
【0060】
片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムの該屈折率の上限が1.573で、下限が1.525程度になる温度を選べば、積層ポリエステルフイルム全体で見ても、延伸部と未延伸部とが混在しないフイルムが得られる。延伸斑の混在しない低温延伸限界温度は、共重合ポリマー種、成分比、積層ポリエステル構成比、延伸倍率等に依存し、変動するが、該屈折率が1.573以下になる延伸温度は、およそ120℃であり、下限は80℃以上である。
【0061】
以上のような方法で延伸した第一段延伸後の積層ポリエステルフイルムの片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下の一軸配向積層ポリエステルフイルムを、次ぎに該延伸方向に対し直角の方向に、延伸温度80℃以上120℃未満で、倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸する。
【0062】
第二段延伸温度に、このような低温を採用するのは、一軸延伸フイルムの結晶化度が極めて低く、このような低温での延伸で、第一段延伸による配向構造が失われず、併せて第二段延伸による配向構造を形成することが出来るので、縦・横の機械的強度、ヤング率のバランスのとれたフイルムを製造することが出来るからである。しかも工場での生産という観点からは、連続生産で延伸が円滑に行われ、破断も起こらず、厚薄斑も極めて小さいという利点がある。
【0063】
更に、他の理由としては、第二段延伸倍率を第一段延伸倍率よりも大きくする必要がなく、縦・横任意の配向度を有するフイルムを容易に得られること等の理由による。
【0064】
この第二段の延伸温度が80℃未満の場合は、フイルムの切断が発生し、120℃以上では、第一段の延伸方向の配向がかなり失われ、又第二段延伸方向の配向も稼げないので、縦・横の機械的強度、ヤング率が共に低いフイルムになる。この時、幅方向の厚薄斑も大きくなり好ましくない。
【0065】
従って、第二段延伸(第一段延伸方向と直角の方向に行う)は、第一段の延伸で形成された構造を若干破壊するとしても、その構造を十分保持しながら、第二段延伸による配向構造を併せて形成することが出来るので、縦・横の機械的強度、ヤング率のバランスのとれたフイルムを製造することが出来ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0066】
この時、二軸延伸する方法としては例えば、次の(A)〜(C)のプロセスを採用することができる。(A)未延伸シートをまず縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸する方法。(B)未延伸シートをまず横方向に延伸し、次いで縦方向に延伸する方法。(C)未延伸シートを1段または多段で縦方向に延伸した後、再度縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸する方法である。上述の内容を(A)(B)(C)のプロセスで実施するには、第一段の延伸で、低温の延伸温度、高い延伸倍率を採用すれば良く、引き続き、第二段の延伸で、高い延伸温度、低い延伸倍率を採用すれば目的とする共重合積層ポリエステルフイルムが得られる。
【0067】
上記延伸は、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性等を満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で行われることが好ましい。しかる後150〜240℃の温度範囲で熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造方法である。
【0068】
又、必要に応じて、縦熱弛緩、横熱弛緩処理等を施してもよいことは言うまでもない。
【0069】
上記に加えて、易滑性、接着性、帯電防止性能等の諸特性を付与するため、積層ポリエステルフイルムの少なくとも片面に、表面塗布(塩化ビニリデン塗布によるガスバリヤー性付与、インライン塗布による易滑性、易接着性付与等)を行っても良い。
【0070】
以上に詳述したフィルムは、現在知られている各種の用途、すなわち、写真感光材料用途(カラー、X−レイ、印刷感材等)、磁気記録用途(オーディオ、ビデオ、フロッピー等)、電気用途(コンデンサー、電気絶縁材料等)、蒸着用途(スタンピング、メタライジング等)に応用することができ、特にロール状フィルムに用いられるポリエステルフィルムに有用であり、さらには、写真用支持体に有用である。
【0071】
本発明の方法で得られた積層ポリエステル二軸配向フイルムは、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスがとれている。併せて、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないという特徴を持つ。
【0072】
以下に本発明の具体的実施例を述べるが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【実施例】1〜3
【比較例】1〜2
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール64重量部にエステル交換触媒として酢酸カルシウムの水和物0.1重量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行った。得られた生成物に5−ナトリウムスルホ−ジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸(略称;SIP)のエチレングリコール溶液(濃度35重量%)28重量部(5モル%/全エステル結合)、ポリエチレングリコール(略称:PEG)(数平均分子量:4,000)11重量部(8.5重量%/反応生成物の全重量)、三酸化アンチモン0.05重量部、リン酸トリメチルエステル0.13重量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(CIBA−GEIGY社製)を生成物ポリマーに対して1重量%になるように添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、0.5mmHgで重合を行い、固有粘度0.55の共重合ポリエステルを得た。
【0074】
この共重合ポリエステル及び市販のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65)を各々150℃で真空乾燥した後、3台の押出幾を用い285℃で溶融押出し、3層各層が表1に示す素材からなるようにTダイ内で層状に接合し、冷却ドラム上で急冷固化させ、積層未延伸フィルムを得た。この時、各素材の押出
量を調整し各層の厚さを表1
【実施例】1〜3
【比較例】1〜2に示すように設定した。次いで表1に記載の延伸温度、延伸倍率で、縦、横方向に逐次二軸延伸し、210℃で熱固定を行い、膜厚120μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0075】
該フィルムの延伸条件、及び第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率を表1、物性値を表2に示した。屈折率は、積層ポリエステル及び、単体ポリエステル、単体変性ポリエステル一軸延伸フイルムのそれぞれの表裏を構成するポリマーのドラム面に接触した面の屈折率をNd、その反対面の屈折率をNaとして表す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1,2の結果より、本発明の積層ポリエステルフイルムの製造方法は、縦・横共に機械的強度に優れ、かつバランスのとれたフイルムを作る事が出来ることを示している。一方比較例(従来製造法)は、縦方向にそこそこ延伸されているにもかかわらず、破断強度、ヤング率が損なわれ、横方向の破断強度、ヤング率が大きくなったフイルムであることが理解される。
【0079】
以上の結果から、積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸延伸を行い、次いで、該延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルを構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定して得られる本発明の積層ポリエステル二軸配向フイルムは、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスのとれたフイルムを得ることができる。また同時に、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないフイルムを製造することができる。
【0080】
【発明の効果】
本発明の積層ポリエステル二軸配向フイルムにより、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスのとれたフイルムを得ることができる。また同時に、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないフイルムを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層ポリエステルフイルムの製造方法に関するものである。更に詳しくは、縦、横両方向の機械的、熱的性質のバランスに優れた積層ポリエステルフイルムの延伸法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層ポリエステルフイルムは、PETフイルムの有する、優れた熱的、機械的、物理的、化学的特性を保持させながら、特に、機械的特性(強度等)、光学的特性(光線透過率、ヘーズ等)、寸法安定性等に優れたフイルムである。従って、積層ポリエステルフイルムは、写真感光材料用途(カラーフイルム、X−線、印刷感材等)、磁気記録用途(オーディオ、ビデオ、フロッピー等)、電気用途(コンデンサー、電気絶縁材料等)、蒸着用途、包装用途等に適している。
【0003】
積層ポリエステルフイルムは、積層ポリエステル未延伸フイルムを最初に縦方向に延伸し、しかる後、最初の長手方向の延伸方向と直角な幅手方向、すなわち、横方向に延伸を順に行う縦・横逐次延伸法の他、最初に、横延伸を行い、しかる後、縦延伸を行う横・縦逐次延伸法、横・縦・縦逐次延伸法、縦・横・縦逐次延伸法、縦・縦・横逐次延伸法、又は同時2軸延伸法等が採用される。
【0004】
ところで、汎用のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等)フイルムの製膜プロセスでは、最初の縦延伸で長手方向に配向させ、引き続いてこれと直角方向に横延伸して幅手方向に配向させ、熱固定して、縦、横両方向の機械的強度(ヤング率等)、熱収縮率等をバランス良く確保する逐次2軸延伸製膜法が一般的である。
【0005】
工業レベルでの積層ポリエステルフイルムの製膜は、逐次2軸延伸法の特徴である優れた生産性(製膜スピードが速い)、優れた品質(特に良好な厚み斑、機械的強度、熱的性質等の優れた縦、横のバランス等)、及び従来生産設備(テンター法逐次2軸延伸製膜設備)の活用を抜きには考えられない。
【0006】
特開平06−240020に記載の発明中に、互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、1)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有しているか、又は、2)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有している、二層以上の積層ポリエステルフイルムに言及している。この積層ポリエステルフイルムは、特に機械強度が保持され、薄膜化が可能で、巻きぐせがつきにくく取り扱い性がよく、現像処理前の処理機器適性、現像処理に際しての処理機器適性に優れ、かつ現像処理後の巻きぐせ解消性にも優れ、小型カメラに用いて写真用支持体に好適で、さらには、用途は特に限定されず、強度を保持し、巻きぐせが付きにくく、巻きぐせ解消性に優れ、適度な巾手カールを持ち、取扱い性が優れた、印刷材料、磁気材料、包装材料またロール状にして使用することのできる材料等として有用であるフィルムを提供出来ると述べている。
【0007】
しかしながら、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる本発明の積層ポリエステルフイルムは、縦、横両方向の延伸によって発現する配向、言い換えれば結果として、フイルム長手方向、及び幅手方向の強度等のフイルム物性が、ポリエステルフイルムの配向挙動と異なる挙動を示す。すなわち、上述の共重合成分を含有してなる積層ポリエステル未延伸フイルムを、最初に、縦或いは横延伸して、長手或いは幅手方向に配向させ、引き続いてこれと直角方向に、横或いは縦延伸して、幅手或いは長手方向に配向させ、熱固定した共重合成分を含有した積層ポリエステルフイルムは、逐次延伸の後段の延伸がより支配的となる傾向にある。すなわち、縦・横逐次延伸或いは横・縦逐次延伸の場合、それぞれ第二段の延伸方向の強度、ヤング率は比較的保持されているが、第一段の延伸方向の強度、ヤング率等が予想外に低下している事実である。このことは、上述の共重合ポリエステルポリマー単独で製膜すると容易に確認される。この事実は、積層ポリエステルフイルムを構成する共重合フイルム層、すなわち、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる共重合ポリエステルフイルム層の最初の延伸での配向が、それに続く延伸で大幅に解消され、最初の延伸方向の機械的強度、ヤング率が低下し、後段の延伸方向の機械的強度、ヤング率、言い替えれば後段の延伸による配向が支配的となるためである。一方、積層ポリエステルフイルムを構成するホモポリエステル層、または、共重合成分含有量の少ないポリエステル層は、従来のホモポリエステルフイルム製膜時に近い挙動を示す。従って、積層ポリエステルフイルムの逐次二軸延伸製膜法では、縦・横の機械的強度・ヤング率等配向に起因するフイルム物性は、ポリエステルホモポリマーか、または、共重合成分含有量の少ないポリエステル層で付与され、共重合ポリエステルポリマーはその性質から、第二段の延伸による配向が支配的になるという事実である。従って、積層フイルム全体として見たときに、ホモポリエステル層と共重合ポリエステル層の組み合わせとしてその効果が発現するが、共重合ポリエステルポリマーの全体に占める割合にも依るが、縦、横又は、横、縦逐次二軸延伸において、後段の延伸による配向が、積層ポリエステルフイルム物性に大きく影響して、縦、横の機械的、熱的諸特性のバランスが崩れるので、縦、横の機械的、熱的諸特性をバランスよく確保する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた熱的、機械的、物理的、化学的、光学的特性を有し、寸法安定性が高く、かつ縦、横両方向の機械的強度、ヤング率及び熱収縮率等の熱的特性のバランスに優れた積層ポリエステルフイルムの製造方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に特定倍率で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に特定倍率で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が特定の数値以下となるように選定し、特定範囲の第二段延伸温度で延伸し、熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造法によって達成されたものである。
【0010】
すなわち、互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルフイルムが構成するガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造方法である。ここでTgは、積層ポリエステルフイルムを構成するポリエステルの中で最も高いガラス転移温度(℃)を表す。
【0011】
積層ポリエステルフイルムを構成する、ア)ホモポリエステル層、又は共重合成分含有量の少ないポリエステル層と、イ)共重合ポリエステル層は、一般に、延伸倍率の増加と共に配向がすすみ、屈折率の数値は縦、横の延伸倍率の増加と共に、延伸方向には大きく、厚み方向には小さくなる。
【0012】
積層ポリエステルの縦・横逐次2軸延伸の製膜では、ポリエステルホモポリマーの縦・横逐次2軸延伸製膜の知見から、縦・横の強度、ヤング率等がほぼバランスする延伸条件(延伸倍率、延伸温度、延伸スピード等)を採用している。しかしながら、得られた積層ポリエステルフイルムの縦、横方向の機械的強度、ヤング率は、ポリエステルホモポリマー単膜のそれと比較して、より横方向が支配的になっていることが明らかになった。
【0013】
ホモポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエチレンテレフタレートでは、ガラス転移温度等が異なるため、配向に及ぼす影響が異なり、厳密な比較にはならないとの思いもあったが、確認のため、同じ厚みの、ホモポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエチレンテレフタレート未延伸フイルムを用意し、同一製膜条件(同一延伸温度、同一延伸倍率、同一延伸スピード、同一熱固定温度)を採用して延伸、製膜し、縦、横両方向の機械的強度、ヤング率、屈折率を比較検討してみた。その結果、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対し2〜7モル%含有すると共に共重合成分としてポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対して3〜10重量%含有してなる共重合ポリエチレンテレフタレートは、ホモポリエチレンテレフタレートとの比較で、第二段の延伸が支配的であることが明らかになった。すなわち、ホモポリエチレンテレフタレートの第一段の延伸で、長手方向に延伸すると長手方向に配向し、引き続き、第二段の延伸で、長手方向と直角の方向に延伸すると、長手方向の配向が若干弱まるが、保持され、幅手方向の配向も確保される。ところが、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合は、第一段の延伸で、長手方向に延伸すると長手方向に配向するが、引き続き、第二段の延伸で、長手方向と直角の方向に延伸すると、長手方向の配向が大幅に弱まり、幅手方向の配向が大きくなる。この事は、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合、第一段の延伸で形成された縦方向の配向構造が、第二段の延伸で破壊され、横方向により配向した配向構造が形成されると考えるのが妥当である。すなわち、先の延伸で形成された配向構造が、後の延伸で破壊されて、新たな配向構造を容易に形成するのであろう。
【0014】
以上の観点に立てば、ホモポリエチレンテレフタレート等のホモポリエステルと、前述の共重合ポリエチレンテレフタレート等の共重合ポリエステルとの組み合わせからなる積層ポリエステルフイルムを従来の知見から製膜すると、共重合成分の種類、共重合割合、積層厚み、積層比等によって異なるが、長手方向の共重合ポリエステルの配向が失われるため、長手方向の機械的強度、ヤング率は、想定したものより小さくなる。一方、幅手方向の配向は、共重合ポリエステルが支配的となって、幅手方向の機械的強度、ヤング率は、長手方向に較べ、相対的に大きくなるため、縦、横の機械的強度、熱的バランスを失うことになる。このことは、第二段の延伸方向に片寄って配向したフイルムを製膜したことと同義である。このような傾向はポリエステル系フイルムにも弱く見られる傾向ではあるが、ホモポリエステル系に較べると、その程度は大きく、第二段延伸後に、第一段延伸時に保持されていた強度、ヤング率、言い替えれば第一段延伸方向の配向が大幅に解消される事を示す。この事は縦・横の強度、ヤング率を、ほぼ同等に、或いは縦・横両方向の強度、ヤング率が共にバランス良く保持したフイルムを製膜したいと云う目的からは外れるものである。
【0015】
前述の共重合組成、組み合わせからなる積層ポリエステルフイルムの製造法を採用すれば、縦・横両方向の機械的、熱的性質が共にバランス良く、かつ優れた積層ポリエステルフイルムを得ることが出来る。
【0016】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるフィルム物性値の測定方法を以下に記す。
【0018】
<固有粘度>
ウベローデ型粘度計を用いて行った。重量比が約55:45(流下時間42.0±0.1秒に調整)であるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒を用い、サンプルを溶かして濃度0.2、0.6、1.0(g/dl)の溶液(温度20℃)を調製した。ウベローデ型粘度計によって、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、次式により濃度零に補外し固有粘度[η]を求めた。固有粘度[η]の単位はdl/gである。
【0019】
<屈折率>
アッベの屈折計を用いて、α−ブロモナフタレンを中間液として、25℃で測定されるNaのD線に対する値を示す。屈折率はフイルムの幅方向(フイルム面内における第一段延伸と直角の方向)に変化することが多いが、本発明において採用する値は、該屈折率の最小値である。
【0020】
<引っ張り試験>
縦及び横方向の破断強度、ヤング率の測定は、オリエンテック(株)社製、テンシロンRTA−100を用い、室温で測定した。積層ポリエステル支持体の長手方向及び幅手方向に、1cm幅×15cm長さに切り出し、フイルム長が10cmになるように、テンシロンに把持して、100%/分のスピードで引っ張り、応力−歪曲線を描かせた。破断強度は、破断時の応力を引っ張る前のフイルム断面積で割って算出した。ヤング率は、応力−歪曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を求め、引っ張る前の積層ポリエステル支持体厚みの断面積で割って算出したもので、両者共単位はkgf/mm2で表す。積層ポリエステル支持体厚みの測定は、マイクロメーターを用い、7個所測定し、最大値と、最小値を除外し、それぞれの測定試料一枚当たりの厚みを、5点の平均値で、μm単位で表した。
【0021】
<熱収縮率>
試料フイルムを幅10mm、長さ250mm切り出し、約200mmの間隔で2本の標線を入れ、その間隔を正確に測定する(これをAmmとする。この試料無張力下で130℃の熱風オーブン中に30分間放置したのち標線間の間隔を測定し(これをBmm)、100×(A−B)/Aをもって熱収縮率(%)とした。
【0022】
−フィルムの形成素材−
本発明のフィルムは、ポリエステル層および/または共重合ポリエステル層を有する。
【0023】
−ポリエステル−
ポリエステル層を形成する素材としてのポリエステルとしては、ジカルボン酸とジオールとの繰り返し単位をを主構成成分とするものを言い、好ましくは芳香族二塩基酸とグリコールとの繰り返し単位を主構成成分とするポリエステルを挙げることができる。
【0024】
前記二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類などがあり、ジオールもしくはグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシレングリコールなどがある。なかでもテレフタル酸とエチレングリコールとを主構成成分とするポリエチレンテレフタレートと2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主構成成分とするポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0025】
また、ポリエステル本来の優れた性質を損なわない範囲で、これらの主たる繰り返し単位が85モル%以上、好ましくは90モル%以上の共重合体であっても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
【0026】
好ましいポリエステルの固有粘度としては、特に限定されないが、積層フィルム作製時の延伸性の観点から、0.45〜0.80が好ましく、特に0.55〜0.70が好ましい。
【0027】
−共重合ポリエステル−
共重合ポリエステル層を形成するのに用いられる共重合ポリエステルとしては、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分とし、ジカルボン酸とジオールとの繰り返し単位を主構成成分とし、好ましくは芳香族二塩基酸とグリコールを主構成成分とする共重合ポリエステルを挙げることができる。更に又、この発明においては、共重合ポリエステルとして、前記共重合ポリエステルと前記ポリエステルとのブレンド物をも挙げることができる。
【0028】
前記二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類などがあり、グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシレングリコールなどがある。共重合ポリエステルとしては、なかでもテレフタル酸とエチレングリコールを主構成成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートと2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主構成成分とする共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0029】
また、共重合ポリエステルの好ましい固有粘度としては、特に限定されないが、積層フィルム作製時の延伸性の観点から、0.35〜0.75が好ましく、特に0.45〜0.65が好ましい。
【0030】
共重合ポリエステルにおける共重合成分としての金属スルホネート基を含有する芳香族ジカルボン酸は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくは下記化1で示されるエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属例えばカリウム、リチウムなどで置換した化合物を挙げることができる。
【0031】
【化1】
【0032】
前記共重合ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分として、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を含有しているのが好ましい。
【0033】
前記ポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等やこれらの誘導体などを挙げることができる。使用することのできるポリアルキレングリコール類の分子量は特に限定されないが、好ましくは、300〜20,000、より好ましくは600〜10,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。特にポリアルキレングリコールが好ましく、このうち特に(a)式で示される表わされるポリエチレングリコールが好ましい。
【0034】
H(O−CH2CH2)n−OH (a)
また、ポリアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコールの末端−Hを−CH2 COORに置換した(b)式で示されるポリエチレンオキシジカルボン酸(R:Hまたは炭素数1〜10のアルキル基、n:正の整数)や、(c)式で示されるようなポリエーテルジカルボン酸(R’:Hまたは炭素数2〜10のアルキレン基、n:正の整数)などを用いても同様の効果が得られる。
【0035】
ROOCCH2−(O−CH2CH2)n−OCH2COOR (b)
ROOCCH2−(O−R’)n−OCH2COOR (c)
(b)式で示される化合物、(c)式で示される化合物いずれの場合もその分子量には特に制限がなく300〜20,000が好ましく、更に好ましくは600〜10,000であり、特に1,000〜5,000のものが好ましく用いられる。
【0036】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えばそのエステル形成誘導体が好ましく、アジピン酸、セバシン酸のエステルであるアジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチルなどが用いられる。好ましくはアジピン酸ジメチルである。
【0037】
本発明に用いられる共重合ポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていてもかまわない。
【0038】
−ポリエステルおよび共重合ポリエステルの製造−
本発明に用いられるポリエステルおよび共重合ポリエステルはともに、重合段階でリン酸、亜リン酸およびそれらのエステルならびに無機粒子(シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二酸化チタンなど)、有機架橋粒子(ポリメチルメタアクリレートなど)が含まれていてもよいし、重合後ポリマーに無機粒子などがブレンドされていてもよい。さらに重合段階、重合後のいずれかの段階で適宜に顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加してもかまわない。
【0039】
共重合ポリエステルを得るには、酸成分とグリコール成分とをエステル交換した後に、前述の共重合成分を添加し、溶融重合を行っても良いし、又、共重合成分をエステル交換する前に添加し、エステル交換した後に溶融重合を行っても良いし、または溶融重合で得られたポリマーを固相重合するなど公知の合成方法を採用することができる。
【0040】
このエステル交換時に用いる触媒としては、マンガン、カルシウム、亜鉛、コバルト等の金属の酢酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩等を挙げることができる。これらの中でも、酢酸マンガン、酢酸カルシウムの水和物が好ましく、さらにはこれらを混合したものが好ましい。前記エステル交換時および/または重合時に反応を阻害したりポリマーを着色したりしない範囲で水酸化物や脂肪族カルボン酸の金属塩、第四級アンモニウム塩などを添加することも有効であり、中でも水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、テトラエチルヒドロキシアンモニウムなどが好ましく、特に酢酸ナトリウムが好ましい。
【0041】
本発明のフィルムを形成するためのポリエステルまたは共重合ポリエステルには、種々の添加剤を含有せしめることができる。たとえば、染料などを混合して用いても良い。
【0042】
−フィルムの層構成−
本発明のフィルムは、前記したようにポリエステル層および/または共重合ポリエステル層を含有すると共に、層構造としては、二層、三層、四層などのように任意の数の層が積層された積層構造であっても良い。なお、本発明のフィルムを構成する「層」は、厚み2ミクロン以上であるものに限り、厚み2ミクロン未満の、例えば下引層などは、フィルムを構成する「層」とはみなさない。
【0043】
−積層構造のフィルム−
本発明のフィルムが二層以上の積層構造を有する場合には、一般的に、各層の厚みはその用途に応じて、用いるポリエステルおよび共重合ポリエステルによって適宜に決定し得るが、好ましくはポリエステル層の厚みの総和d1に対する共重合ポリエステル層厚みの総和d2の比が0.7≦d2/d1≦3程度である。
【0044】
積層構造のフィルム厚みの総和は特に限定されないが、6〜250μm程度が好ましい。
【0045】
また、フィルムにおける積層構造が二層、三層である場合を含め、四層以上の積層構成であっても良い。
【0046】
二層構成のフィルムにおいては、各層の厚みは互いに同じであっても相違していても良い。又、二層におけるポリエステルもしくは共重合ポリエステルの主構成成分の種類もしくは主構成成分の含有量が相違し、あるいは共重合成分の種類または共重合成分の含有量が相違しているのが好ましい。例えば、この二層構造のフィルムは、特に限定されないがポリエステル層と共重合ポリエステル層と、あるいは共重合ポリエステル層と共重合ポリエステル層とから成り立っていても良い。共重合ポリエステル層における共重合ポリエステルは、共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有することが好ましく、更にポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を含有することが好ましい。金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量は、全エステル結合に対して2〜7モル%であるのが好ましく、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸の含有量は、該反応生成物の全重量に対して3〜10重量%であるのが好ましい。
【0047】
二層構造のフィルムの場合、上記項目を適宜に調節することによって、該フィルムに巾方向におけるカール度を所定の値に調整することができる。
【0048】
巾方向におけるカール度の調整は、ポリエステル層と共重合ポリエステル層とを積層することによっても行うことができる。この場合、共重合ポリエステル層側が凹面になる。共重合ポリエステル層同志を積層したフィルムにおいては、膜厚、組成量を適宜に調整することにより巾方向におけるカール度を調整することができる。
【0049】
共重合ポリエステル層とポリエステル層とを積層すると、通常共重合ポリエステル層側が凹面になってカールする。又、ポリエステル層と共重合ポリエステル層とを積層する場合、ポリエステル層の厚みd3に対する共重合ポリエステル層の厚みd4の比が0.7≦d4/d3≦3、さらに好ましくは1≦d4/d3≦2であり、異なる二種の共重合ポリエステル層を積層するときには、共重合成分の含有量の多い共重合ポリエステル層が通常は、凹面になってカールする。
【0050】
本発明のフィルムが三層構成である場合、外層二層はポリエステル層と共重合ポリエステル層の組み合わせか、外層二層とも共重合ポリエステル層の組み合わせのいずれかからなる。
【0051】
三層構成の場合は、外層の厚みは同じであっても異なってもよいが、外層の厚みは異なることが好ましく、外層の内厚い外層の厚みをdAとし、薄いほうの外層の厚みをdBとすると、好ましくは、その比dA/dBは、とくに限定されないが、1.1≦dA/dB≦5、好ましくは1.3≦dA/dB≦3である。
【0052】
外層の厚みを異ならせることによって、巾手方向のカールないし巻きぐせカール度や回復カール度を所定の値に調節することができる。
【0053】
又、三層構成の場合は、該積層フィルムの外層である上下層を形成するポリエステルと共重合ポリエステルが、主構成成分もしくは、主構成成分量が異なるとか、共重合成分または共重合成分量が異なる、さらには固有粘度が異なることが好ましい。この場合、用いられる共重合ポリエステル中の共重合成分としては、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対して2〜10モル%、好ましくは2〜7モル%の割合で含有し、さらに共重合成分としてポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対して3〜10重量%の割合で含有することが特に好ましい。
【0054】
三層からなる場合はこれら上記の項目を適宜に調節することによって、該積層フィルムに巾手方向のカールや巻きぐせカール度ないし回復カール度を付与することができる。例えば、外層2層が共重合ポリエステル層である場合に、外層2層の共重合ポリエステルの共重合成分の含有量あるいは固有粘度がほぼ同じであるときには、膜厚の大きい共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。又、外層2層の共重合ポリエステル層の膜厚が実質的に同じである場合には、固有粘度が大きいかあるいは共重合成分の含有量の多い共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。外側2層が共重合ポリエステル層である場合にそれらの固有粘度が相違するとき、固有粘度の差ΔIVは0.02〜0.5、更に0.05〜0.4、特に0.1〜0.3であるのが好ましい。固有粘度の差ΔIVが前記範囲内にあると、外層2層の膜厚が大きく相違しないときに、外層が共重合ポリエステル層同士の組み合わせの場合には、固有粘度の大きい外層が凹面になり好ましい巾手カールを実現することができる。外層がポリエステル層と共重合ポリエステル層との組み合わせの場合、通常は共重合ポリエステル層が凹面のカールを有する。又、外層2層が同一の共重合ポリエステル層であり、中央の層も共重合ポリエステル層であり、しかも中央層の共重合成分が外層より多く含有する場合には、両外層のうちの膜厚の小さな共重合ポリエステル層側が、通常、凹面になりカールする。中央の層の両外層が共重合ポリエステル層で、中央層の共重合成分が外層より少なく含有する場合には、通常は、両外層のうち膜厚の大きな共重合ポリエステル層側が凹面になりカールする。
【0055】
以上に詳述したフィルムは、現在知られている各種の用途に応用することができ、特にロール状フィルムに用いられるポリエステルフィルムに有用であり、さらには、写真用支持体に有用である。
【0056】
本発明の三層以上の積層構造を有するフィルムの、写真用支持体として好ましい態様の一つとして、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対して2〜7モル%、好ましくは3〜6モル%、およびポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対し3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%を含有する共重合ポリエステル層を、複数の層で形成されるポリエステル層の片面又は両表面を構成する。
【0057】
二層以上の積層構造を有する本発明のフィルムは、次のようにして製造することができる。すなわち、例えばポリエステルと共重合ポリエステルを別々の押出機から溶融押出した後、溶融ポリマーの導管内または押出口金内において層流状で多層に接合せしめて押出し、冷却ドラム上で静電印加しながら冷却固化し、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸して、熱固定する方法、もしくはポリエステルまたは共重合ポリエステル単体および、積層フィルムを押出機から溶融押出し、冷却ドラム上で静電印加しながら冷却固化した未延伸フィルム、または該未延伸フィルムを一軸延伸した一軸配向フィルムの面に、必要に応じてアンカー剤、接着剤等をコーティングした後その上にポリエステルまたは共重合ポリエステル単体および、積層フィルムをエクストルージョンラミネートし、次いで二軸延伸を完了した後熱固定するエクストルージョンラミネート方法などがあるが、工程の容易性からは、共押出法が好ましい。
【0058】
この場合フィルムの延伸条件は、積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルが構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸する。積層ポリエステルフイルムの両表面を、共重合比率の異なる共重合ポリエステルで構成されている場合、両者共1.573以下となるように選定することが必要である。上述の、共重合比率の小さい共重合ポリエステルとの比較で、共重合比率の大きい共重合ポリエステルは、第二段の延伸で、フイルム面内における第一段の延伸方向と直角方向に大きく配向するからである。この事は、共重合ポリエステルは、第一段の延伸で、長手方向に形成された分子配向が、第二段の延伸で、脆くも壊され、幅手方向に分子配向するためであろうと推定される。従って、幅手方向に、より分子配向しようとする傾向を抑えて、縦、横両方向の機械的、熱的性質のバランスを採る意味でも、第一段の延伸で長手方向に極力分子配向させ、第二段の延伸で、幅手方向に抑え気味に分子配向させることが好ましい。
【0059】
本発明者は、これらの欠点を解消すべく鋭意検討の結果、(1)積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように延伸温度を選定して第一段延伸を行うならば、低温で延伸するため、延伸方向の配向が高く、かつ配向構造が強固となり、延伸温度が高い場合(従来法)と比較して、実質延伸倍率を高くしたことと同じになる。延伸温度が低くなる程、第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が減少する傾向にあるので、該屈折率が1.573以下になるようにするには、できるだけ低い温度で延伸するのが良い。
【0060】
片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムの該屈折率の上限が1.573で、下限が1.525程度になる温度を選べば、積層ポリエステルフイルム全体で見ても、延伸部と未延伸部とが混在しないフイルムが得られる。延伸斑の混在しない低温延伸限界温度は、共重合ポリマー種、成分比、積層ポリエステル構成比、延伸倍率等に依存し、変動するが、該屈折率が1.573以下になる延伸温度は、およそ120℃であり、下限は80℃以上である。
【0061】
以上のような方法で延伸した第一段延伸後の積層ポリエステルフイルムの片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下の一軸配向積層ポリエステルフイルムを、次ぎに該延伸方向に対し直角の方向に、延伸温度80℃以上120℃未満で、倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸する。
【0062】
第二段延伸温度に、このような低温を採用するのは、一軸延伸フイルムの結晶化度が極めて低く、このような低温での延伸で、第一段延伸による配向構造が失われず、併せて第二段延伸による配向構造を形成することが出来るので、縦・横の機械的強度、ヤング率のバランスのとれたフイルムを製造することが出来るからである。しかも工場での生産という観点からは、連続生産で延伸が円滑に行われ、破断も起こらず、厚薄斑も極めて小さいという利点がある。
【0063】
更に、他の理由としては、第二段延伸倍率を第一段延伸倍率よりも大きくする必要がなく、縦・横任意の配向度を有するフイルムを容易に得られること等の理由による。
【0064】
この第二段の延伸温度が80℃未満の場合は、フイルムの切断が発生し、120℃以上では、第一段の延伸方向の配向がかなり失われ、又第二段延伸方向の配向も稼げないので、縦・横の機械的強度、ヤング率が共に低いフイルムになる。この時、幅方向の厚薄斑も大きくなり好ましくない。
【0065】
従って、第二段延伸(第一段延伸方向と直角の方向に行う)は、第一段の延伸で形成された構造を若干破壊するとしても、その構造を十分保持しながら、第二段延伸による配向構造を併せて形成することが出来るので、縦・横の機械的強度、ヤング率のバランスのとれたフイルムを製造することが出来ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0066】
この時、二軸延伸する方法としては例えば、次の(A)〜(C)のプロセスを採用することができる。(A)未延伸シートをまず縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸する方法。(B)未延伸シートをまず横方向に延伸し、次いで縦方向に延伸する方法。(C)未延伸シートを1段または多段で縦方向に延伸した後、再度縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸する方法である。上述の内容を(A)(B)(C)のプロセスで実施するには、第一段の延伸で、低温の延伸温度、高い延伸倍率を採用すれば良く、引き続き、第二段の延伸で、高い延伸温度、低い延伸倍率を採用すれば目的とする共重合積層ポリエステルフイルムが得られる。
【0067】
上記延伸は、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性等を満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で行われることが好ましい。しかる後150〜240℃の温度範囲で熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造方法である。
【0068】
又、必要に応じて、縦熱弛緩、横熱弛緩処理等を施してもよいことは言うまでもない。
【0069】
上記に加えて、易滑性、接着性、帯電防止性能等の諸特性を付与するため、積層ポリエステルフイルムの少なくとも片面に、表面塗布(塩化ビニリデン塗布によるガスバリヤー性付与、インライン塗布による易滑性、易接着性付与等)を行っても良い。
【0070】
以上に詳述したフィルムは、現在知られている各種の用途、すなわち、写真感光材料用途(カラー、X−レイ、印刷感材等)、磁気記録用途(オーディオ、ビデオ、フロッピー等)、電気用途(コンデンサー、電気絶縁材料等)、蒸着用途(スタンピング、メタライジング等)に応用することができ、特にロール状フィルムに用いられるポリエステルフィルムに有用であり、さらには、写真用支持体に有用である。
【0071】
本発明の方法で得られた積層ポリエステル二軸配向フイルムは、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスがとれている。併せて、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないという特徴を持つ。
【0072】
以下に本発明の具体的実施例を述べるが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0073】
【実施例】1〜3
【比較例】1〜2
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール64重量部にエステル交換触媒として酢酸カルシウムの水和物0.1重量部を添加し、常法によりエステル交換反応を行った。得られた生成物に5−ナトリウムスルホ−ジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸(略称;SIP)のエチレングリコール溶液(濃度35重量%)28重量部(5モル%/全エステル結合)、ポリエチレングリコール(略称:PEG)(数平均分子量:4,000)11重量部(8.5重量%/反応生成物の全重量)、三酸化アンチモン0.05重量部、リン酸トリメチルエステル0.13重量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(CIBA−GEIGY社製)を生成物ポリマーに対して1重量%になるように添加した。次いで徐々に昇温、減圧にし、280℃、0.5mmHgで重合を行い、固有粘度0.55の共重合ポリエステルを得た。
【0074】
この共重合ポリエステル及び市販のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65)を各々150℃で真空乾燥した後、3台の押出幾を用い285℃で溶融押出し、3層各層が表1に示す素材からなるようにTダイ内で層状に接合し、冷却ドラム上で急冷固化させ、積層未延伸フィルムを得た。この時、各素材の押出
量を調整し各層の厚さを表1
【実施例】1〜3
【比較例】1〜2に示すように設定した。次いで表1に記載の延伸温度、延伸倍率で、縦、横方向に逐次二軸延伸し、210℃で熱固定を行い、膜厚120μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0075】
該フィルムの延伸条件、及び第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率を表1、物性値を表2に示した。屈折率は、積層ポリエステル及び、単体ポリエステル、単体変性ポリエステル一軸延伸フイルムのそれぞれの表裏を構成するポリマーのドラム面に接触した面の屈折率をNd、その反対面の屈折率をNaとして表す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1,2の結果より、本発明の積層ポリエステルフイルムの製造方法は、縦・横共に機械的強度に優れ、かつバランスのとれたフイルムを作る事が出来ることを示している。一方比較例(従来製造法)は、縦方向にそこそこ延伸されているにもかかわらず、破断強度、ヤング率が損なわれ、横方向の破断強度、ヤング率が大きくなったフイルムであることが理解される。
【0079】
以上の結果から、積層ポリエステルフイルムよりなる未延伸非晶のフイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸延伸を行い、次いで、該延伸方向に対し、直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後のフイルム面内における延伸方向と直角方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルを構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定して得られる本発明の積層ポリエステル二軸配向フイルムは、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスのとれたフイルムを得ることができる。また同時に、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないフイルムを製造することができる。
【0080】
【発明の効果】
本発明の積層ポリエステル二軸配向フイルムにより、縦・横両方向の機械的強度、ヤング率が共に高く、かつバランスのとれたフイルムを得ることができる。また同時に、フイルム結晶化度が低く、透明性に優れ、厚薄斑が極めて少ないフイルムを製造することができる。
Claims (6)
- 互いに異なるポリエステル層のいずれか一種のポリエステル層が、共重合成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸と、ポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸とを含有してなる積層ポリエステル未延伸フイルムを、一方向に倍率2.7乃至5.0倍で第一段延伸を行い、次いで、該第一段延伸方向に対し直角の方向に倍率1.2乃至5.0倍で第二段延伸するに際し、第一段延伸温度を第一段延伸後の片面又は両表面を構成する共重合ポリエステルフイルムのフイルム面内における延伸方向と直角の方向の屈折率が1.573以下となるように選定し、第二段延伸温度を積層ポリエステルを構成するポリエステルの高い方のガラス転移温度Tg℃以上、(Tg+35)℃以下で延伸し、しかる後熱固定することを特徴とする積層ポリエステルフイルムの製造方法。
- 互いに異なる二種のポリエステル層を積層してなり、異なる二種のポリエステル層における、共重合成分として含有される、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の全エステル結合に対する比率が互いに異なることを特徴とする前記請求項1に記載の積層ポリエステルフイルムの製造方法。
- 異なる二種のポリエステル層を積層してなり、異なる二種のポリエステル層における、共重合成分として含有されるポリアルキレングリコール類の反応生成物に対する比率が互いに異なることを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルムの製造方法。
- 異なる二種のポリエステル層を積層してなり、異なる二種のポリエステル層における共重合成分として含有される飽和脂肪族ジカルボン酸の反応生成物に対する比率が互いに異なることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルムの製造方法。
- ポリエステル層の片面に共重合ポリエステル層を積層してなり、該共重合ポリエステル層が、共重合成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を全エステル結合に対し2〜7モル%含有すると共に共重合成分としてポリアルキレングリコール類および/または飽和脂肪族ジカルボン酸を反応生成物の全重量に対して3〜10重量%含有してなる前記請求項1〜4に記載の積層ポリエステルフイルムの製造方法。
- 三層の層を積層してなり、中央の層の両側に位置する二層の共重合ポリエステル層の厚みが互いに異なる前記請求項1〜5に記載の積層ポリエステルフイルムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003031748A JP2004209954A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | 積層ポリエステルフイルムの製造法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003031748A JP2004209954A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | 積層ポリエステルフイルムの製造法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
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JP2003031748A Pending JP2004209954A (ja) | 2003-01-06 | 2003-01-06 | 積層ポリエステルフイルムの製造法 |
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JP (1) | JP2004209954A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012018733A (ja) * | 2010-07-08 | 2012-01-26 | Teijin Dupont Films Japan Ltd | 塗布型磁気記録テープ用積層2軸配向ポリエステルフィルム |
JP2017204000A (ja) * | 2006-06-23 | 2017-11-16 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー | 多層光学フィルム、その作製方法及びそれを有するトランザクションカード |
-
2003
- 2003-01-06 JP JP2003031748A patent/JP2004209954A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017204000A (ja) * | 2006-06-23 | 2017-11-16 | スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー | 多層光学フィルム、その作製方法及びそれを有するトランザクションカード |
JP2012018733A (ja) * | 2010-07-08 | 2012-01-26 | Teijin Dupont Films Japan Ltd | 塗布型磁気記録テープ用積層2軸配向ポリエステルフィルム |
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